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ダイの大冒険のキャラがルイズに召喚されました3

1 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/13(日) 17:23:48 ID:5ua4XZNX
携帯でご覧の方は携帯ビューアのorz もしくは携帯用2chブラウザiMona をご利用ください
【orz】http://orz.2ch.io/top.html
【iMona】http://imona.net/
     _      ここは「ゼロの使い魔」と「ダイの大冒険」のクロスオーバーを妄想するスレよ。
    〃  `ヽ     避難所には職人さんが代理投下してほしいSSがあるかもしれないわ
    l lf小从} l /    投下中は空気読んで支援しなさいよ 荒らしはスルーだかんね
   ノハ{*゚ヮ゚ノハ/     職人さんは荒らし防止にトリップを付けてよね
  ((/} )犬({つ'      次スレは980か990を踏んだ人が立てること
   / '"/_jl〉` j      480KBを超えた場合も立てるのよ。 わかった?
   ヽ_/ィヘ_)〜′

●まとめサイト 
http://www33.atwiki.jp/dai_zero/
●避難所                        
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/11590/
●【代理用】投下スレ【練習用】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/11590/1215309408/

*******************************************************
*スレ運営について意見のある方は運営議論スレへどうぞ    . *
*http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/11590/1215878493 *
*******************************************************


2 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/13(日) 17:53:28 ID:0kab+pjY
2げっと

3 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/13(日) 17:54:56 ID:aPi3laxA
トピマス殿

4 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/13(日) 18:55:29 ID:KlaEK1E8
>>1 乙
ここも立派になったものだ。

5 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/13(日) 19:01:36 ID:dntnEB01
まぶしく燃えて >>1乙 してやるっ!

6 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/13(日) 19:16:02 ID:hUlxHSFf
>>1
今のは乙ではない。超乙だ!

7 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/13(日) 20:37:49 ID:au3R+Q7b
知らなかったのか、>>1乙からは逃げられない……!!!

8 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/13(日) 22:08:14 ID:U8TfxB+A
8回逃げて、全部クリティカルで>>1乙させてもらうぜ!

9 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/13(日) 22:54:16 ID:1kFPks9E
>>1


>>8
バグ技自重

10 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/13(日) 23:33:21 ID:m0SJY68i
なってねえな、ハドラー様もよ…!
スレ立てをかって出といて>>1乙しちまうとはなあ…

11 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/14(月) 08:24:36 ID:7enPp3KM
>>1


そういえば前スレ1000を見て思ったのだが、
おっさんの咆哮を認識したらほかの使い魔達は逃げ出すのかな



12 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/14(月) 09:50:38 ID:6Wr3asXt
>>11
本スレの最初のほうで7万戦でおっさんが咆哮上げたら敵方の使い魔たちが大混乱したってのはあったな

13 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/14(月) 10:30:54 ID:94EMv6w4
>>1


おっさんを正攻法で倒すのはほぼ不可能だろう。
ダメージを与えることはできても致命傷を与える方法が予想できない。

14 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/14(月) 11:03:44 ID:ZUxWHG7x
おっさんは最悪地面に潜ることもできるしな
しかしぼろぼろに痛めつけた後、アルビオンから突き落としたとしても一カ月くらいしたら怪我を治すのに時間がかかったとかいいながらひょっこり復活しそうなのはなぜなんだぜ?

15 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/14(月) 11:08:02 ID:7enPp3KM
七万戦の敵が全員最低基準がワルドな強さでも倒せそうに無いほどタフだからな・・・

16 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/14(月) 11:14:08 ID:NUUBJ0K7
マテ、最低限ワルドの強が7万って流石に対処しようがなくないか?
ワルドの強さ=三賢者でそれがが7万人とかだと割りとなんとかなりそーで困るがw

……かりにそんなのが7万いたら普通に世界が支配出来るよな、軍事力的に

17 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/14(月) 11:30:44 ID:T9Pdq/gX
そういや雑魚を蹴散らすならグレイトアックスよりも初期の真空の斧のほうが都合がいいな。

18 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/14(月) 14:17:05 ID:QksFqi8O
グレイトアックスでも

うなれ、『真空』

で、バギ系使えなかったっけ?

19 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/14(月) 14:42:47 ID:ZUxWHG7x
たしかバギ、イオ、ギラ系の効果でよかったよな
収束とかはかけられずとも三賢者くらいの威力はあったはず

20 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/14(月) 14:55:52 ID:8ksS7Ryg
斧の振り回しやすさだったら片手で持てる真空の方がいいかもしれんな

21 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/14(月) 15:00:56 ID:QksFqi8O
うなれ、『爆音』
うなれ、『真空』
うなれ、『轟火よ』

の三種の掛け声だから
イオ・バギ・メラじゃなかったか。

22 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/14(月) 18:10:34 ID:7enPp3KM
>>16
クロコのおっさんの防御力が高すぎるから一方的だと思うぞ
最終決戦後だとたぶんヘクサゴンスペルの数十倍の威力から攻撃が通るレベル

23 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/14(月) 18:17:35 ID:p+WyN4C0
>>16
逆に一般兵でさえ原作ワルドレベルの強さを持つ世界だと考えるんだ
そこそこ強いと言われるならもう烈風カリン以上だ!

24 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/14(月) 18:23:25 ID:6Wr3asXt
>>23
本物のワルドの立場はw

25 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/14(月) 18:26:03 ID:mMT8Sq8g
獣王激烈掌>>>>>>>>>獣王会心激>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>カッタートルネード(笑)だろ

26 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/14(月) 18:35:48 ID:sj68vSQu
ロモス武道大会のときの連中でもそこそこ活躍できそうな気がする。
つかダイ大に才人以下のキャラがいたっけか?

27 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/14(月) 18:38:47 ID:/8MP84td
烈風カリンはアバン(戦闘力のみ)と同じレベルだと思うけどな
偏在の有効度は無視できない。

28 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/14(月) 18:54:19 ID:84+zcjMm
>>26
ドラゴンキラー買ったおっさん。

29 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/14(月) 18:54:39 ID:NUUBJ0K7
>>26
えーと、戦闘力だけならロモス王とかの老人な王様くらい?
精神力補給や体力的にもきっついだろーな
人生経験とかで、有用差的にはサイト以上だろーけどw
しかし、ごく普通の文科系な学生以下のキャラを探すのは難易度が高いなw

30 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/14(月) 18:58:50 ID:G1JZkL/Z
ダイ逃亡時にテランで会った少年とか

31 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/14(月) 19:32:02 ID:B9/YNE2J
初期ポップが魔法使えなくなった状態ですら、サイトより絶対強いだろうしな。
サイトが体使うことの少ない現代社会でのほほんと生きてるのにたいして、
ポップは修行しながら旅を続けるだけの体力はあるわけで。

32 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/14(月) 19:35:13 ID:NUUBJ0K7
ポップだと、初期も初期、アバンに弟子入りしようと押しかけようとして家出したあたりで
ギリギリ比較対照になるかなー? くらいですかね?
鍛冶屋の息子な時点で現代社会人より体力はありそうだけどw

33 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/14(月) 19:40:05 ID:UOTM9ofL
>>27
仮に同程度の実力としても、その二人の間は潜り抜けてきた戦闘の質に決定的な差があるよね。
マンティコア隊隊長として当代最強レベルを誇り、基本的に自分より格下の相手との戦闘ばかりであったろうカリン様と、
勇者時代から周囲には剣や魔法において自分より優れた者たちが存在し、敵も明らかに格上ばかりを相手取ってきたアバン先生。
二人が対決した時、その辺の差がどういう形で現れるかは結構面白そう。

34 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/14(月) 19:45:43 ID:NUUBJ0K7
>>33
マテ、火竜を山ひとつぶんをまとめて相手にしてそれでも格下しか相手にしてないって
貴方の中で全盛期のカリンはどんだけバケモノなんだw

35 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/14(月) 20:55:00 ID:FsBR5Jx1
まとめサイト見たらかなり作品増えてきたね。
ところで皆はどの作品が一番お気に入りなんだ?俺はおっさんとマトリフだw

36 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/14(月) 20:56:57 ID:oq5YXx7J
>>34
しかし、知恵ある存在で格上を相手にしたことはほとんどあるまい。


技のレパートリーが異常に多いという意味でも、アバン先生が勝ちそうだな。
能力値的には似たようなものでも、
相手の切り札を事前につぶす戦術家としての才能や、心理戦などの経験の差、手札の数なんかは、
同レベル以上の相手との戦闘においては無視できないからな。

37 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/14(月) 21:07:23 ID:NUUBJ0K7
>>36
アバン先生って、知性ある格上相手に戦ったのってそんなに多かったっけ?
ハドラーとキルバーンだけのような気がするのだが……
仲間との模擬戦とかともに戦ったって意味なら同意

38 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/14(月) 21:11:02 ID:NUUBJ0K7
>>35
全部お気に入りなので選ぶのが難しいなw
どれか1個えらぶならおっさんかな?

39 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/14(月) 21:18:55 ID:VPFjvIIV
>>37
ドラクエでレベル1から勇者にふさわしくなるまでどれほど苦労したか、
自らの道のりを振り返るがいい


最初はスライムの群れでも格上だ

40 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/14(月) 21:36:54 ID:gyNKcq4x
どっちが強いかどっちが弱いかなんてどうでもいい
個性抜群のダイ大キャラたちがゼロ魔世界のキャラたちとどう絡むかが見たい

41 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/14(月) 21:55:19 ID:xvXh4Okz
そう言えば、ドラクエ世界の『お城の兵士』はどのくらいの強さなんだろう。
いくらなんでも自分の住んでいる町の周辺のモンスターに苦戦するはずは無いだろうけど……

42 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/14(月) 21:56:54 ID:uTX95L6n
>>39
アバン先生て城で料理人してた時点でかなり強くなかったっけ?
で、結局ハドラーに正面から勝てる強さになれず。

キルバーンに勝てるようになったのはメガンテ不発の後、不思議な
ダンジョンに挑んでたからだよね。

43 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/14(月) 22:05:10 ID:qvwHqdaF
>>35
ラーハルトのが好き、というか先が気になってるぜ。
あとハドラーのもいいな。

44 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/14(月) 22:20:59 ID:mMT8Sq8g
>>35
全部好き

45 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/14(月) 23:37:17 ID:oq5YXx7J
不思議なダンジョンにも強いやつは多かっただろうし、旧ハドラー軍にも相当の使い手はそれなり以上にいたはず。

アバン先生は、基本的に正面からぶつかり合う戦いはしない人だからねぇ。
出発点が全然違うので、異論はあるだろうが、戦い方はキルバーンと似ている気がする。

アバン先生の場合、楽をして勝つというのが基本。
そのために、なるべく事前に相手の力をそいだり、自分が有利になる状況を作ることに力を注ぐ。
最終的には自分で戦う点以外の戦術は似ていると思うんだが……

46 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/15(火) 00:05:46 ID:akAx/VRM
>>45
アバン先生が楽をして勝とうとした事が一度でもあったか・・・?
過去のハドラーとの戦いにしろ、キルバーンとの戦いにせよ。

正面から正々堂々と挑まれれば普通に戦うだろう。
もちろん魔法使ったり秘法使ったり、自分の持っている能力は最大限使うだろうけど。

47 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/15(火) 00:12:11 ID:74X5YCBf
>>39
カリンって最初から最強だったのか
カリンに修行時代とかって無いの?

48 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/15(火) 00:28:54 ID:XzC2YQ4d
>>47
原作ではかかれてないから不明。
まあ、そのうちタバサみたいにスピンオフで外伝でるかなあ?

49 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/15(火) 00:29:54 ID:7/dKbQN+
カリン「虎や狼が日々鍛錬などするかね?」

50 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/15(火) 04:21:17 ID:YvSq0f4w
そもそもアバン先生は万能の天才だからな
剣や魔法、戦術そして家事や発明と何でも出来る人だし
例えるならこっぱげの上位互換
たぶん多芸という面でかなうやつはゼロ魔はおろかダイ大にもいないんじゃない?


51 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/15(火) 06:19:15 ID:8SHn/q2h
避難所に鰐男氏とゼロの影氏の投下が来ていたので代理してみんとす
先ずは鰐男氏から

52 :鰐男代理:2008/07/15(火) 06:24:05 ID:8SHn/q2h
アクセス規制中である!(江■島■八調)


「もう逃げられんぞ」
「リザードマン風情が言ってくれる」
説明しよう!隠し鉱山に乗り込んだクロコダインとマチルダは
モーティマーを追い詰めていた
(ナレーション:大塚芳忠)
余裕綽々な台詞とは裏腹にモーティマーの顔は引き攣っている
何しろモーティマーの繰り出す魔法の悉くがグレイトアックスの一振りで
打ち消されてしまうのだ
まさにチート
「フ、どうやら私も奥の手を出さなくてはいけないようですね」
お、なんか男■デ■ー■みたいなことを言い出しましたよ奥さん
「ドロシーちゃん、カムヒア!」
モーティマーがパチンと指を鳴らすと
洞窟の一つからMS06ザクの駆動音のようなSEを響かせて
赤銅色の外骨格を持つ馬車ほどもある蠍の胴体から
燃えるような赤毛の見目麗しい女性の上半身を生やしたモンスターが現れた
「ほう、蠍女(スコルピオーネ)か」
「さあドロシーちゃん、やっておしまい!」
「鬼謝―――――――――――――――ッ!!!」
金属的な
それでいてどこか艶っぽい咆哮をあげて突進するドロシーちゃん
唸りをあげて繰り出される鋏をグレイトアックスで受け止めると
ドドンッ!
地響きとともにクロコダインの両足が5サントほど地面にめり込む
「おおう!なかなかのパワーだ」
思わず太い笑みを浮かべる鰐
普段は紳士だがやはりクロコダイン
強敵と書いて「とも」と呼ぶノリが大好きなのだ
「旦那、こっちはあらかた片付いたよ」
巨大ゴーレムで雑魚の皆さんを蹴散らしていたマチルダが声をかける
「おお、すまん。いや久方ぶりに歯ごたえのある相手なのでな」
蠍女の繰り出す両手の鋏と尻尾の毒針の嵐のような連撃を
グレイトアックス一本で捌きながらまだまだ余裕たっぷりな鰐
「ところでモーティマーは?」
「あ…?」
ついバトルに熱中して首魁の存在を失念していた鰐だった


53 :鰐男代理:2008/07/15(火) 06:28:13 ID:8SHn/q2h
「はっはっはっ今日のところは私の負けのようだ」
そしていつの間にか坑道のてっぺんに移動しているモーティマー
「二度と会うこともないだろうがごきげんよう!」
葉巻の火を導火線に着火し飛行魔法で飛び去るモーティマー
「ドロシーちゃん、君のことは忘れないよー」
彼方から軽薄な声が届くと同時に坑道に仕掛けられた火の秘薬が爆発する
小はミニクーパー大は九○式戦車ほどの岩塊が
捨てられた仔犬のような表情で空を見上げて立ち尽くす蠍女を押しつぶし
クロコダインとマチルダに迫る
「唸れ!真空の斧ッ!!」
グレイトアックスにはめ込まれた宝玉が輝き
斧の刃から生じた突風が竜巻となって舞い上がる
「出・力・最・大!!!」
クロコダインの小宇宙(コスモ)が燃える
荒れ狂う真空の刃が落下する巨岩を砕き切り裂き磨り潰し
無害な小石にして吹き散らす
突風が収まるとそこには掠り傷一つない一人と一匹
「さて、引き上げるとするかい」
「一寸待て」
あちらこちらとその辺を歩き回っていたクロコダインは
当たりをつけた場所の巨岩をどかしていくと
体節の方々から紫色の血を流してぐったりしているドロシーちゃんを引っ張り出す
「放っときなよそんな奴」
マチルダ姐さんは身内以外には割りとシビアである
「拳を交えるのも何かの縁だ、見殺しにするのも忍びない」
どこまでも男前な鰐
んでもって数日後
「あ〜熱いねえまったく」
ウエストウッドの森の小さな家では朝からマチルダの機嫌が悪い
「どうしろというのだ…」
なんともいえない表情のクロコダインの隣りには
「一生ついていきます」といった顔のドロシーちゃんがぴったりと寄り添っている
そして反対側では
「旦那、いや兄貴!どうか俺を舎弟にしてやっておくんなせえ!!」
マチルダを逃がしたことがばれて処刑されかかっていたところを助けられた
ブロンディが土下座していた
「いいこと考えた!俺と兄貴とフーケで3Pやれば俺達穴きょうだ…」
JET!
マチルダのジェットアッパーが炸裂した

今宵はこれまで


54 :鰐男代理:2008/07/15(火) 06:33:04 ID:8SHn/q2h
ttp://kissho1.xii.jp/7/src/7jyou13086.bmp

当方パソコンは素人なので今のところイラストはビットマップでしか作れません
アップロードした自作絵の扱いはwikiまとめ様に一任します

──────────────────────────────────────
以上代理終了
鰐男氏乙でございました

一時間ほど間をおいてゼロの影氏の代理をしてみんとす

ウィキ登録はリンクの貼り方がよく判んなくて挫折したよママン orz

55 :ゼロの影代理:2008/07/15(火) 07:34:59 ID:8SHn/q2h
やあ、一時間たったので代理投下に来ましたよ

────────────────────────────────
代理投下ありがとうございました!
しまった、「数分後、そこには足を踏まれて元気に飛び跳ねるルイズの姿が!」と書くのを忘れてた…。
やっぱり寄生虫…規制中なのでこちらに投下します。

第二章 影に吹く風

第一話 依頼、そして港町へ

 清冽な朝の空気を吸いながら一人の男が剣を握り舞っていた。
 人気のない庭の一角で黙々と剣を振り続けるだけなのに舞踏さながらの美を漂わせている。洗練された動きに一切遅滞は無い。
 やがて剣を地に突き刺し、軽やかな足捌きと共に拳を突き出す。
 ミストバーンはフーケ討伐後、早朝や空いた時間に訓練を行っていた。
 彼は最強と謳われる肉体を預かり、秘法によってあらゆる攻撃を無効化する無敵の存在だった。
 力任せに攻撃し、防御もせずに突っ立っているだけでどんな敵にも負けることは無かった。
 しかし今、秘法は解け、力も落ちている。今までの戦い方では駄目なのだ。
 召喚直後のように突然体が動かなくなるということは今のところないが、油断は禁物だ。ルーンの働きによって痛みを感じるようにもなった。
 武器を握れば身体能力が向上するのがガンダールヴの特性だが、安易に使う気にはなれない。
 怪しげな力に頼って主の体を内側から破壊するような事態は避けなければならない。
 一通り剣を振るってみたが、やはり格闘主体で戦うことになりそうだ。
 力を取り戻すべく彼はひたすら拳を振り続けた。

 ルイズは夢の庭を走っていた。彼女は叱られるたびに人の訪れぬ池とそこに浮かぶ小舟へと逃げこむのだった。
 やがて霧の中からマントを羽織った貴族が現れた。誰かはすぐにわかる。憧れの――。
 その時、周囲が暗くなったと思いきや明るさを取り戻し、彼女は困惑した。
 いつの間にか見たことも無い丘の上にいる。憧れの貴族の姿は無い。
 背を向けて立っているミストバーンが、振り返りつつ言葉を発した。その口元に浮かんでいるのは微かな笑み。
「お前は私の――」
「何、言って……?」
 問いかけると同時に目が覚めた。頭痛をこらえながら庭まで行く。
 ルイズの姿をみとめると彼は来い、というように手を上げて挑発してみせた。ルイズが地を蹴って正拳突きを繰り出す。
 最初の戦いのような不完全なものではなくまともな一撃を入れたいと彼女が言ったところ、指導を受けることとなった。
 メイジなのだから魔法での訓練を要求したのだが却下された。それに、いざという時のために体力をつけておいて損は無い。
 このまま続けていれば魔法を使わずに肉弾戦で活躍できるのではないか――そんな気さえしてしまう。
 ひとしきり爽やかな汗を流した後授業を受けに行く。
 授業を受けているとコルベールが飛び込み、授業中止を知らせたため生徒達が歓声を上げた。
 アンリエッタ王女が魔法学院を訪れると聞いて全員緊張と喜びに顔を染めている

56 :ゼロの影代理:2008/07/15(火) 07:40:09 ID:8SHn/q2h
実際に王女の姿を見ると皆一層興奮したようだ。反対にルイズは魂を抜かれたようにぼんやりしている。視線の先には凛々しい貴族の姿があった。
(あの男――)
 立ち居振る舞いに隙が無い。記憶の片隅に残しつつ部屋に戻るがルイズの様子はおかしいままだ。
 何事か尋ねるはずもなく控えているとドアが長く二回、短く三回ノックされた。
 ルイズが慌てたように立ち上がりドアを開くと、そこには真っ黒な頭巾をかぶった少女がいた。杖を取り出すと軽く振り、ルーンを唱える。
「どこに目が光っているかわかりませんからね」
 ルイズの顔色が変わる。
「あなたは……姫殿下!」
 慌てて膝を付くルイズとは対照的にミストバーンは落ち着き払って突っ立っている。
 幼い頃の思い出を語り合っていた二人だが、やがてアンリエッタが憂いを含んだ笑みを浮かべた。
「結婚するのよ、わたくし」
「……おめでとうございます」
 悲しい声に応じてルイズも沈んだ声音になっている。そこでアンリエッタは壁際に立っているミストバーンに気づいた。
「ごめんなさい、お邪魔だったかしら。そこの彼、あなたの恋人なのでしょう?」
「はい? 恋人? あれはただのつか……騎士っぽいものです」
 アンリエッタはきょとんとしている。
「騎士……ですか?」
「その通りです。姫様」
 アンリエッタの頭の出来では二人の複雑な間柄を説明したところで理解できまいと思い、中途半端な言葉で済ませた。

 ゲルマニアと同盟を結ぶため嫁ぐことになったと聞いて、ルイズが野蛮な成り上がりの国だと忌々しそうに吐き捨てる。
 アルビオンの貴族が反乱を起こし、勝利をおさめたら次にトリステインに侵攻してくるであろうことを説明すると腹を立てたようだ。
「恥知らずな!」
「ええ、反乱なんて愚かな……!?」
 彼女達は佇む青年から鬼気が噴き上がるのを感じて唾を呑んだ。きっと瞼の下の眼は炯々と輝いているだろう。
 彼は貴族達の言い分もハルケギニアの国際情勢も知らない。ただ、現状を力で変えようとするのを愚かだと決めつける態度に腹が立った。
 弱さゆえに奪われたものを力によって取り戻す。力こそが全てを支配する。
 魔界に君臨する主の信念は、どのような強敵に追い詰められたとしても変わらないだろう。自分より強い者が現れても、全てを捨ててでも強くなり、跳ね返そうとするに違いない。
 それを、何も知らない彼女達が簡単に否定する権利などない。
 二人が喉をおさえた。あまりの恐怖に息苦しさすら覚えている。
 彼が足を踏み出しかけた時、ドアが勢いよく開いた。
 入ってきたのはギーシュ・ド・グラモン。盗み聞きしようとしていたのだが、室内の空気が変わるのを感じて反射的に飛び込んでしまった。
 彼が見たのは――可憐な少女二名が蒼白な顔をして震えている光景だった。
「ゲエッ!? ぶ、無事ですか姫殿下!」
 ギーシュの鼻水を垂らした顔を見て著しく戦意が削がれたため彼は殺気を抑えた。
 沈黙が立ち込める中、アンリエッタが震えながら語り出す。

57 :ゼロの影代理:2008/07/15(火) 07:45:10 ID:8SHn/q2h
アルビオンの貴族はゲルマニアとの婚姻を妨げる材料を探している。
 ウェールズ皇太子が問題となる手紙を所持しているとアンリエッタが告げ、やはり頼めるわけがないと自分で否定するのを彼は冷ややかに見下している。
 主と己ならば「行け」の一言で――いや、それすらいらない――全てが事足りる。己の不幸に酔い、同情を誘うような言い方で頼みこむ様は滑稽に思えた。
 友情に燃えるルイズは輝く瞳で承諾し、ミストバーンに言い放とうとして言い淀む。先ほどの心臓を握り潰されそうな恐怖が蘇る。
「これはわたしに任された重大な任務だから、行かなくちゃ。あんたも……来てくれる?」
 人の心に疎いミストバーンとてこの任務がルイズにとって譲れないものであることはわかる。他でもない、ルイズが必要とされている。
 手がかりが殺されては困るため彼は沈黙と共に頷いた。
「姫殿下! その困難な任務、是非ともこのギーシュ・ド・グラモンに仰せつけますよう」
「あのグラモン元帥の? ……お願いしますわギーシュさん」
 名前を呼ばれ微笑まれたことに感動し、ギーシュはわけのわからぬ叫びを吐き散らして気絶した。
 ルイズはそんなものに目もくれず真剣な面持ちで姫と話している。
 アンリエッタはさらさらと手紙をしたため、苦しそうな顔をして末尾に一行付け加えた。さらに指輪――水のルビーを引き抜き手紙と共にルイズに渡した。

 出発の朝、ギーシュは顔をとろかしながら巨大なモグラに抱きついていた。彼の使い魔は地面を掘ってついていくつもりらしい。
 ミストバーン自身は少しもギーシュを認めていないのだが、仕事上の付き合いだと割り切るしかない。
 ふと薔薇の杖に視線を向けるとギーシュは胸を張った。
「ふっふっふっ……僕の杖はただの薔薇よりよっぽど美しくてね」
 ミストバーンが手に取って観察していると、懐からスペアを出して見せた。妙なこだわりがあるものだ。
 とりあえず戦力として計算しないことに決めた。
 ギーシュは再び使い魔と暑苦しい抱擁を交わしている。
「ああ僕の可愛いヴェルダンデ! どばどばミミズはいっぱい食べたかい?」
 いっそモグラと結婚すれば――ルイズの視線がそう語っているのにも気づいていない。
 突然ヴェルダンデが鼻を動かしルイズに突進した。押し倒し、鼻で全身を嗅ぎ回す。
 宝石が大好きなヴェルダンデは水のルビーに反応しているらしい。危険はないためミストバーンは放置していたが、一陣の風がモグラを吹き飛ばした。
 颯爽と現れたのは羽根帽子をかぶり口ひげを生やした男だ。
「同行を命じられているグリフォン隊隊長、ワルド子爵だ。婚約者に手を出させるわけにはいかなくてね」
 ギーシュと違い、魔法を除いても素晴らしい動きを見せるであろうことが身のこなしからわかる。
「このモグラ男はギーシュ。あの色白が騎士のようなもののミストバーンですわ」
 ワルドは白い歯を輝かせながら気さくに笑いかけた。男らしいフェロモンを醸し出しつつ彼に手を差し出す。
「僕の婚約者がお世話になっている。共に力を合わせ、任務を成功させよう」
 己の力量に自信を持ち、士気を上げるのも巧みだ。
 出発する一行をアンリエッタは祈るように見つめ、オスマンは鼻毛を抜いている。コルベールがフーケの脱獄を知らせても態度は変わらない。
 彼はミストバーンが異世界から来た事を、そこから吹く風がいかなる暗雲をも払いのけることを確信していた。

 学院から出発して以来ワルドのグリフォンは走りっぱなしだった。一刻も早く港町ラ・ロシェールへ到着したいようだ。
 彼はルイズに語り続ける。ルイズへの想いを。父が交わした他愛ない約束を。
 ほとんど会うこともなかったため忘れかけていた思い出が、突然形を取って突きつけられたため彼女は困惑していた。


58 :ゼロの影代理:2008/07/15(火) 07:50:31 ID:8SHn/q2h
港町の入り口に到着した途端、馬目がけて崖の上から松明が投げ込まれた。馬が暴れ、ミストバーンは宙で体をひねり優雅に着地し、ギーシュが無様に落下するのを放置する。
 あなたなら絶対手助けできましたよね、と眼で訴えられるが全く気にしていない。
 そこへ無数の矢が放たれるが彼は大半を掴み取り、投げ捨てた。さらに矢が飛来するのをワルドが風魔法で逸らすと同時に崖の上で悲鳴が上がる。
 烈風、次いで炎が巻き起こり男たちが転がり落ちてきた。怪我をしたのか動けないようだ。
 月を背にして見覚えのある風竜――タバサのシルフィードが地面に降りてくる。
「おまたせ。助けに来てあげたわよ」
 馬に乗って出かけようとする一行を目撃し、タバサを叩き起こして後をつけてきたのだ。ゴーレムとの戦いでミストバーンに惚れたらしい。
 隠しておきたい任務であるためルイズが邪険に扱うが、キュルケは少しも気に留めず早速ワルドににじりよった。
 が、全く動じない。彼女が標的をミストバーンへ変更したところで男達を尋問したギーシュが戻ってきた。
「子爵、あいつらはただの物盗りだと言っています」
 ワルドは納得したように頷いたがミストバーンは入れ替わるようにして男達に近づいていく。
 拷問か半殺しか皆殺しか。ルイズとギーシュが顔を蒼くして止めようとしたが、悲鳴を押し殺したような呻きが聞こえた後彼はすぐに戻ってきた。
「仮面を被った男と女に雇われたそうだ」
「どうやって訊いたの?」
 知りたいか、と目で問われたルイズ達は引きつった笑顔と共に疑問を呑みこんだ。

 宿で二人きりになるとワルドは熱っぽい口調と眼差しでルイズに語りかけた。
「君は失敗してばかりだったけど僕にはわかる。特別な力を持っているってね」
 ルイズは力無く首を振った。優しい言葉に喜びたいのだが、ゼロのルイズと呼ばれてきた期間があまりにも長すぎる。
 ワルドは自分の言葉を裏付けようとますます力を込めて続ける。
「彼が飛んで来た矢を握った時浮かび上がったルーン……あれはガンダールヴだ。君は偉大な力を持っているんだよ」
 瞳の炎を燃えあがらせ、ワルドは囁いた。
「この任務が終わったら結婚しよう。もう君は十六だ、ずっとほったらかしにしたことは謝るけど僕には君が必要なんだ」
 ルイズの頭に浮かんだのはミストバーンの顔だった。
 彼を放り出すことになるが、いいのか。――駄目に決まっている。
 彼女が呼び出したせいで仕えるべき主から引き離され、帰るあてもないまま仕方なく従うことになったのだ。無表情の仮面の裏でどれほど苦しんでいるだろう。
「わ、わたしまだ皆に認められていないわ」
「……君の心には誰かが住み始めたようだね。今返事をくれとは言わないが、この旅が終わったら君の気持は僕に傾くはずさ」
 ワルドはそう言って唇を重ねようとしたが、ルイズは押し戻し、自分の心に戸惑っていた。


以上です。
キレかけたミストの戦意をも減退させるギーシュって実はすごいかもしれない。

──────────────────────────────────────────────────────────────────────
以上代理終了
影さん乙でこざいました
展開速くていいなあw


59 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/15(火) 10:37:53 ID:teCTSlYr
ミスト、実は「鍛えて強くなれる」のがうれしいんじゃないかと言う気がしてきたぜ。
もちろん苛立ちの方が大きいんだろうけど。

60 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/15(火) 10:42:46 ID:SpViXlLD
>鍛えて強くなれる
ミストが言うと、ヒュンケルのような予備ボディを作っている最中に聞こえてしまいますよ。

61 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/15(火) 10:47:37 ID:teCTSlYr
>>60
逃げてー、ルイズ逃げてー!?

いやまぁ冗談はさておき、
体を変えるわけには行かない、でも体が覚えてる技は使えない、
だったら新しい技を磨くしかない。
って状態はミストにとって初めてのことだろうしね。

通じてるとは思ったけど一応。

62 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/15(火) 20:39:22 ID:cddQplGZ
いつみてもアンリエッタの行動は駄目すぎる
だれかアンアンを修正してほしい

63 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/15(火) 20:50:19 ID:cxbaoFC/
ああいう存在だからと割り切った方が良いんじゃないかと
思えてきた今日この頃

64 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/15(火) 20:55:23 ID:MTiq6pii
>>62
原作になぞった行動をとらない限り
ルイズや召喚した使い魔の知らないところで国が滅亡するから
修正すると話がオワタになるために多分無理

……まあ、フーケ退治をしなければ、アンアンも無茶は言わないと思うんだけどね
頼む気になったのも、幾多の貴族を出し抜いてきたフーケをうっかり捕まえてしまったからだし

65 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/16(水) 08:31:38 ID:+UgO1lI3
人がいない……支援したいが未だ投下出来るほど書けてないし……悔しいっ!ビクンビクンッ!
仕方がない。小ネタに走るっ!


 魔法が使えない魔法使い、『ゼロ』ルイズが使い魔として召喚したのは一人の執事でした。

 執事はとても働き者でした。朝早く起きると召喚された時に、手に持っていたベルを鳴らし、寮中の生徒たちを起こしに行きます。

 おかげで、寝坊をして朝食を食べ損ねる生徒はいなくなりました。

 手付かずの料理を見てコック長のマルトーさんが気分を悪くする事もありません。

 メイドのシエスタを始めとする学院の使用人達は大喜びです。

 執事の仕事は他にも様々です。使用人達に混ざって洗濯や掃除……料理を作る事だってあります。

 執事の作った料理はトリステインには無い味付けがしてありました。食べた人は皆揃って舌鼓を打ちます。

 それだけではありません。多分、それなりの年齢を得たので『あろう』執事の知識と教養は確かなものでした。

 時には元いた世界の知恵を活かし、新しい発想を思い付く事すらあります。

 学院の皆は執事と、そして召喚主のルイズを次々に褒めたたえました。

「『彼』は完璧な執事だよ!」

「ルイズがうらやましい……」

「あんな執事を召喚するとは……ふっ……もう、『ゼロ』とは呼べないな」

 ですが、『ゼロ』と呼ばれなくなった事はとても嬉しいのですが、ルイズは素直に喜べませんでした。それは使い魔の執事が原因でした。

 ……自分の使い魔は本当に良くやってくれている、とルイズは思います。

 執事として完璧な能力を持ち、頭も良い。

 時にはベルを剣に持ち替えて戦う事すら厭いませんでした。

 しかし、ルイズの気分は晴れません。一つだけ……。そう、たった一つだけ、使い魔には欠点があったのです――

 ――朝――

「ヒョッヒョッヒョッ。おはようございます。ルイズ様」

「…………モルグ……あんたね……。――毎朝毎朝っ!私を起こす時にその不気味な顔を近づけないでよーーー!」

「ヒョッヒョッヒョッ。この顔は生まれつきな物で。申し訳ありませんw」

 ――そう、執事は『腐った死体』だったのです。


 不死騎団長ヒュンケルの執事、モルグの召喚ネタでした。 ナレーションの元ネタは『奥様は魔女』から。

 あの気難しい時代のヒュンケルの世話をしてたっていうのは実は凄い事だと思うんだ。

 しかし自分の書くルイズはよく叫ぶ……何故だ( ・ω・ )

66 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/16(水) 08:33:56 ID:7sBz9u7R
投下乙

モルグさんは腐っているけどかっこいいな

67 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/16(水) 09:05:46 ID:PKbZFgvj
投下乙です……あんたが呼ばれたんかいっ!w
確かにヒュンケルの世話を出来るなら大抵の人の世話が出来そうですね
腐ってるケドw

68 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/16(水) 11:37:11 ID:hHtu4vD7
モルグさんか…このスレが出来たからこそ召喚されたキャラといえるなあ。忠誠心の高さを考えると使い魔としては適任といえますね。

69 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/16(水) 11:51:18 ID:7sBz9u7R
>>64
修正というのは作品の中で頬を殴ってでも考えを修正をするというほうの意味

ダイ世界でもソアラさんという結構修正が必要な王族の女性はいるが
アンアンはやりすぎ

70 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/16(水) 11:57:08 ID:XLUXKg7b
>>69
つまりアンアンをひっぱたけるようなキャラをアンアンに召喚させればいいんですね?

…誰だろう?

71 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/16(水) 12:19:10 ID:ndBvr/zJ
>>70
レオナならできる。

72 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/16(水) 17:31:08 ID:M3OR6MrI
職人の皆様乙であります。

まとめwiki更新しました。
まとめ残しがあったら教えてください!

>>ゼロの影様
第一章の追加しておきました。
ついでに作品目次のほうでも1〜2章という形で区切っておいて置きましたがあんな感じでよろしいですか?

>>鰐男様
画像のほうですが、近日中に軽い形式へとこちらで変換しまとめwikiの各話の横へ挿絵としてアップロードしようと思います。

>>虚無と獣王様
超短いおまけを載せようか迷いました!
載せちゃって良いですか?w

73 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/16(水) 18:25:14 ID:wypTadpK
まとめの方お疲れ様です。
執事ネタ書いた者ですが、リンクミスで内容がマトリフのものに
なってしまっていますので訂正お願いします。

74 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/16(水) 20:06:02 ID:M3OR6MrI
どふぁ(喀血

大変申し訳ありません!
マトリフ小ネタからコピって作ってたら肝心の中身の書き換えを忘れておりました・・・
たった今修正いたしました。
申し訳ありませんでした

75 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/16(水) 20:43:51 ID:wypTadpK
>>74
修正ありがとうございました(・∀・)
次の更新までには書き上げられたらいいなあ……

76 :虚無と獣王 ◆sP4al2/WBA :2008/07/16(水) 21:31:40 ID:vzOJqNmT
壁|w・) コンバンハ 虚無と獣王、略してキョムジューです

壁|w・) wikiまとめ様、いつもありがとうございます

壁|w・) あの埋めついでのおまけはシエスタがタイヘンヘンタイのようになっているのが心配なので

壁|w・) 是非とも登録をお願いします

壁|w・) シエスタファンの方、石は投げないで下さい

壁|w・) 次回の投下は土日を予定しています

壁|w・) レイナールの得意な属性が判らなくて詰まってますが

壁|w・) 風か火のどちらかだと思うんですけどね

壁|w・) 後で誤字と表現の訂正をします モンモモランシーて誰ですか

壁|w・) デハマタ

壁|=3 サッ

77 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/16(水) 21:40:38 ID:M3OR6MrI
>>76
タイトルが思い浮かばなかったので、あのような形になりました。
ご了承下さい

78 :キョムジュー#one:2008/07/16(水) 22:07:37 ID:vzOJqNmT
壁|w・) wikiの誤字及び表現の訂正をしました


大魔導師 → 大魔導士

モンモモランシー → モンモランシー

人の体に当たるのは銃弾ではなく、ミルフィーユであった → 人の体に当たるのは鉛の銃弾ではなく、甘い砂糖菓子であった。

第六話の改変小ネタ  → 虚無と獣王 第六話の改変小ネタ

あと細かい改行などを直しています


壁|w・) 正直なところ、こんなタイトルになるとは夢にも思いませんでした→タイヘンヘンタイ

壁|w・) 了承しました 是非ともこのままでお願いします

壁|w・) 石および生卵をぶつけないで下さい

壁|w・) デハマタ

壁|=3 サッ



79 :虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I :2008/07/16(水) 22:13:24 ID:vzOJqNmT
壁|w・) トリップ割れしてるよママン orz

壁|w・) 以降はこのトリップで投下します

壁|w・) ちゃんと出てるか超心配

壁|w・) 連投スミマセンデシタ


80 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/16(水) 22:14:54 ID:eo6UwlhC
壁|w・)がうざい

81 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/16(水) 22:18:46 ID:psAIr2S1
>>78
乙でした〜お疲れ様です

82 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/16(水) 23:34:52 ID:Xp5hBNid
正直あんまりコテつけて発言せんほうがいいと思うぞ。
必要最低限でいいと思う。

83 :ゼロの影代理:2008/07/17(木) 07:13:15 ID:0G9G8Ta2
避難所にゼロの影氏の投下あり。代理してみんとす。
7:15頃から

84 :ゼロの影代理:2008/07/17(木) 07:15:25 ID:0G9G8Ta2
いつまで規制されるのだろうorz

代理の人、まとめの人、ありがとうございます!
「すばらしい…!」です。

第二章の第二話、投下します。

第二話 白のアルビオン

 翌日ワルドがミストバーンに手合わせを申し込んできた。伝説のガンダールヴの力を試したいらしい。
 彼もワルドの力を見たいためあっさり了承した。ワルドが杖を構えるが彼は武器を持たないままだ。
「剣は?」
「不得手だ」
「いいから使いたまえ。何事も慣れだよ」
 彼が地に刺していたデルフリンガーを引き抜くとワルドが疾風のごとき速度で突きを繰り出しつつ呪文を紡ぎ出していく。
 詠唱が完成し、巨大な不可視の槌が横殴りに彼を吹き飛ばした。風に身をゆだねるようにふわりと着地する。
「君では僕に勝てないようだね」
 せっかくワルドが格好つけて挑発したのに彼は全く聞いておらず、デルフリンガーを眺め首をかしげている。
 まだ本気を出していないと知ってワルドは続けようとしたが、ルイズが必死に止める。
 機嫌を取っておくべきだと判断したのか、肩をすくめると去ってしまった。
 その後部屋のベランダに佇んで月を眺めているミストバーンへ、ルイズが声をかけた。
「あんたの世界では月が一つなんでしょ?」
「正確には、私の暮らす世界の上で見られる」
 帰りたいという熱は感じられなかったが、見せようとしないだけだろう。言ったところで今の彼女にはどうしようもないのだから。
 月のように冷たく凍えた光を放ち、決して手の届かぬ存在だと思わせる姿。
「この任務が終わったら帰る方法を探すわ。もし、もし帰れなかったら……」
 そこから先は言えなかった。彼の表情がかすかにゆがんだためだ。
「……お前には必要としてくれる者がいるのだろう」
 アンリエッタやワルドのことを言っているのだろう。ルイズは頷いたが、慌てて言葉を吐きだした。
「わ、わたしだってあんたを――」
「お前は私を必要としていない」
 今ここにいるのは自分でなくともかまわない。戦う者として役に立てば、強ければそれでいい。それならば代わりの誰かで十分だ。
 彼の心の言葉が流れ込んでくる。否定するより先に彼が口を開く。
「だが、大魔王様は忌み嫌っていた私の能力を……他でもない、この私の力を必要としてくださったのだ」
(本当に大切な“ご主人様”なのね)
 悔しくてたまらなかった。この青年に少しでも認められる日など来ない気がしたためだ。
 そして決意する。
(あんたはわたしが責任持って送り返すんだから……!)

85 :ゼロの影代理:2008/07/17(木) 07:19:40 ID:0G9G8Ta2
意気込んだ彼女は、胸に沈みこむ言葉の中にふとひっかかるものを覚えた。
「能力を? それってまるで――」
 道具だ。彼自身の心などどこにもなく、必要とされていないような言い草だ。
 言葉を続けられぬルイズに対し、ミストバーンはためらいなく頷いた。
「そうだ。私はあの御方の道具……お役に立てるならばそれでいい」
 自身をも道具と言い切る口調は誇らしさに満ちている。それは力を必要とされている、認められているということだから。
 ただの使い捨ての道具、取り換えのきく武器ではなく、唯一無二の道具、最高の武器としての自負がある。
「確かに力を認められたいって思うけど……できればわたし自身を認めてほしいわ」
 ミストバーンは意味を掴みかねたようだが、彼なりに理解した。
 ルイズはルイズとして認められたがっている。力に加え魂をも含めて認めてほしいのだろう。
 彼にとっては能力を必要とされるだけで十分だが、魂をも認めてくれる相手と出会えたらきっと手ごたえを感じるだろう。
 切り離せず忌避してきた力か、求めても手に入らぬ力か。
 力が全ての魔界の住人か、人間か。
 その差が考え方の違いを生み出しているが、共感できた。根底にあるものは似ているのだから。
「あの男はお前を必要としているのだろう」
 恋愛と主従関係は違うがワルドが彼女を必要としていることは確かだ。
「そう、ね。やっぱり――」
 その時、巨大な影が月を隠すように現れた。岩でできたゴーレムの肩に乗っている人物は囚われたはずのフーケ。その隣に白い仮面で顔を隠した貴族が立っている。
 フーケが復讐の予感に笑うと、ゴーレムの拳がベランダの手すりを粉々に破壊した。

 一階に駆け降りた二人だったがそちらは傭兵の集団に襲われていた。テーブルを盾に応戦しているが、魔法の射程外から矢を射られてしまう。
 やがてワルドが立ち上がり、半数に分かれることを低い声で指示した。
 タバサがそれに応じ、自分とギーシュとキュルケを指して囮、ワルド、ルイズ、ミストバーンを指して桟橋と呟いた。
 ルイズが何か言おうとするのをキュルケが押しとどめる。
「勘違いしないでね? あんたのために囮になるんじゃないんだから」
 わかってる、と言いつつもルイズはキュルケ達に頭を下げ、歩きだした。

 キュルケ達の奮闘によって傭兵達は炎に焼かれ混乱に陥った。
 舌打ちするフーケに仮面の男は好きにしていいと告げ、素早く姿を消した。彼女は面白くなさそうに鼻を鳴らし、入口へとゴーレムの歩を進めた。
(まったく……得体の知れないところがあるからただの傭兵はやめとけって言ったのに)
 倒す必要はなく分断すればいいということだったが、どうも仮面の男は彼らを甘く見ているようだ。
 ゴーレムがどうやって倒されたかはっきりとはわからなかったため、一行の――特にミストバーンの実力をフーケも測りかねている。
 まさか巨大なゴーレムを片手で殴り飛ばし、手刀で切り裂いたなどと彼女が考え付くはずもない。
「まあいいか……。あの不気味な男はいないし、借りを返させてもらうよ!」
 高らかに哄笑を響かせていたキュルケがゴーレムを見て苦々しく呟く。
「どうする?」
 男らしく玉砕だと唱えるギーシュへ、タバサは大量の花びらを出すよう命じた。
 フーケは花弁がゴーレムに纏わりつく様子を見てバカバカしいと吐き捨てたが、異臭に鼻をうごめかせる。
 花びらが『錬金』によって油に変わっていると気づいた時には炎球がゴーレムに飛び、包みこんでいた。
 かろうじて命を落とさずにすんだものの、髪は焦げ煤で真っ黒だ。




86 :ゼロの影代理:2008/07/17(木) 07:23:06 ID:0G9G8Ta2
「素敵なお化粧ね。普通のお化粧でもダーリンのすべすべお肌には敵わないから、ちょうどいいんじゃない、おばさん?」
 フーケもキュルケももう魔法は使えない。怒りに燃える盗賊は杖を捨て、殴りかかった。
「あの顔面神経痛男より劣るですってえ!? ちょっとばかり顔と肌はきれいかもしれないけど恋愛経験はこのフーケ様の方が断然上だよッ!」
 そもそも本体には性別が無いことを知らぬフーケの台詞を聞き、キュルケも負けじと殴り返す。
「そりゃ年だからでしょ!」
「違うッ! 勘だけど、あいつ絶対恋人いない歴イコール年齢だね! そんな男をダーリンと呼ぶあんたも大概――」
「あらそっちの方が燃えるじゃない! 永久凍土の心を融かす初めての女になるのよ!」
「僕は? ねえ僕の玉のようなお肌は?」
 ギーシュの問いかけは二人に完全に無視された。タバサがポンと肩を叩き一言呟く。
「お呼びじゃない」
 ギーシュの存在を忘れて元気に殴り合う二人であった。

 その頃ルイズ達は桟橋へと走っていた。ある建物の階段を上ると丘の上に出た。そこには巨大な樹が枝を伸ばし、船がぶら下がっている。
 樹の内部の階段を上っていくと彼らは後ろから追いすがる足音に気づいた。黒い影がルイズの背後に立ち、抱え上げる。そのまま地面へ落下するように敵は跳躍し、ワルドが空気の槌で打ち据える。
 ルイズから手を離した男は手すりをつかんだが、彼女は落ちていく。それをワルドが階段から飛び降り抱きとめた。
 仮面の男は体をひねりミストバーンの前に立った。杖を振ると空気が冷える。
 魔法が、来る。
 反射的に左手を振るった瞬間稲妻が彼の体を貫いた。フェニックスウィングでも完全には弾き切れなかったのだ。
「ぐああ……っ!」
 駆け巡る痛みに耐えながら疾走する。後退した仮面の男に向けてワルドが杖を振ると風の槌が男を吹き飛ばし、叩き落した。
 それを見たミストバーンが殺気も露にワルドに向き直る。
「何だい? 獲物を横取りしたことは謝るよ」
 痛いほどの沈黙と緊張が両者の間に流れるが、そこへルイズが慌てて駆け寄ってきた。
「だ、大丈夫!?」
 彼女の言葉にワルドから視線を外し、傷を確認する。左腕全体が焼け焦げ、青白い衣が無残な姿を晒していた。
 それを見た彼が震え出す。
「大変、何とかしないと――」
「何と……何という失態を! わ……私のせいだあああッ!!」
「……は?」
 ミストバーンはこの世界にいない主へ詫びている。完全に取り乱しているのは苦痛ではなく主への申し訳なさのせいだ。
 せっかくの心配が無駄になり、ルイズは頭痛と苛立ちを覚えた。
「今のは『ライトニング・クラウド』。風系統の呪文だ」
 そう説明したデルフリンガーにワルドが続けた。
「本来ならば命を奪うほどの呪文だぞ。腕だけですんでよかったな」
 ミストバーンは会話を完全に無視して異世界の主にひたすら詫び続けていた。

 風石を動力としている船に乗り込むとようやく気分を変えたようだ。
 青空に浮かぶ白い雲の上を飛ぶなど魔界では絶対に不可能だ。魔界の空にはかすかな偽りの光と厚い黒雲しかない。
 ルイズにアルビオンだと指差された方を見た彼は硬直した。巨大な陸地が空中に浮かんでいる。いくら絶大な魔力を誇る大魔王といえども同じことはできないだろう。
「浮遊大陸アルビオン。通称『白の国』よ」
 名の由来は大陸の下半分が白い霧に包まれているためだ。
(この地ならば、陽光を遮るものなど永遠に現れないだろう……)
 珍しく感傷に浸る彼とは対照的に船長は顔を蒼くしている。どうやら空賊が接近しているらしい。逃げ切れず、結局停船命令に従うこととなった。
 太陽に祝福された地に見とれていた彼は、船倉に閉じ込められてからずっと物思いに耽っていた。




87 :ゼロの影代理:2008/07/17(木) 07:27:03 ID:0G9G8Ta2
 ミストバーンが傷を確認すべく袖をたくし上げ、鋼鉄の籠手を外すとルイズが悲鳴を上げた。左腕の掌から肘まで酷い火傷が広がっている。
 ほとんど傷が癒えていないため再生能力もかなり衰えているらしい。
 彼の顔がかげり、どんより曇った声で呻きつつ頭を抱える。
「ああ、バーン様からどのようなお叱りを受けるか……」
「何言ってんのよ! 誰か、誰か来て! 水を……メイジはいないの!? 怪我人がいるの!」
 ルイズの必死の叫びとミストバーンの暗い姿で船倉内にはいたたまれない空気が充満した。ワルドが内心溜息を吐きながらルイズをなだめ、落ち込むミストバーンを励ます。
 ルイズが落ち着きを取り戻し、ミストバーンが立ち直ると心の底から問いかける。
「何で君が怒られるんだい?」
「私の身体はバーン様のものだからだ」
 答えてしまってから己のうかつさに気づき、顔から血の気が引いた。
 この世界に着てからずいぶん警戒心が弱まっていると今更ながらに痛感した。そもそも、いきなり大勢の人間に素顔を見られ、そのまま放置せざるを得なかったのだ。
 素顔を普段から隠しておけばいいのだが身に纏う衣は主から授かったもので、できれば常にその格好でいたかった。それに、額を隠すと視界が制限されてしまう。
 ハルケギニアが完全に別世界であり、戻る見込みは今のところ全くないことも原因の一つだ。
 だが、いくら精神的に不安定だとはいえこれほど危険な真似をしてしまうとは。
 悟られたら殺すしかないため拳を握り締めるミストバーンだったが、特に引っかかってはいないようだ。
「大事にされているんだな」
 勝手に納得している。安堵しかけたが、続くルイズの言葉に表情を変えた。
「バーン様と何か深い関係があるんでしょ? ミストバーンって名前で口を開けばバーン様のことばっかり。何かありますって言いふらしているようなものだわ」
 反論できずに彼は黙り込んでしまった。

 そこへ空賊が水とスープを運んできた。自分で応急処置をしようとしたが、動きはぎこちない。
 肉体が傷ついても治す必要などなく、主の体を預けられてからは怪我をすること自体なかった。回復呪文や再生能力の存在もあり、手当ての経験など皆無だ。
 見かねたルイズが布を奪い取って傷口を冷やしていくが、手つきは幾分マシな程度だ。
「慣れているそちらの男に任せればよかろう」
 突然ふられたワルドは頭を抱えた。
(この男、わざと言っているのか?)
 乙女心を粉々に踏み潰す言葉を聞き流し、ルイズは淡々と処置を進める。彼女の神経もかなり強靭になっているようだ。

 それから空賊の頭の前に連れてこられ、貴族派につくよう勧められたルイズは一蹴した。震えながらも、頭を真っ直ぐに睨んで。
 すると頭は豪快に笑い、変装を解いて本当の姿を現した。その正体はアルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダー。
 確認を求められ、指輪を外して近づけると虹色の光があふれ出した。それはアルビオン王家に伝わる風のルビーであり、ウェールズ本人だと示していた。
 ニューカッスル内の彼の居室へと向かい、手紙を受け取る。
 明朝非戦闘員を乗せたイーグル号が出発することをウェールズは告げ、帰るように促した。彼の軍は三百、敵軍は五万。彼は真っ先に死ぬつもりだ。
 ウェールズとアンリエッタが恋仲であることを悟ったルイズは悲痛な面持ちで叫んだ。
「閣下、亡命なされませ! 姫様は末尾で亡命をお勧めになっているはずですわ!」
「……ただの一行たりともそのような文句は書かれておらぬ」
 苦しげな口調が真実を告げている。アンリエッタの名誉を守ろうとしていると知って、ルイズはそれ以上何も言えなかった。
 やがて彼は最後となるであろうパーティーにルイズ達を招待した。




88 :ゼロの影代理:2008/07/17(木) 07:34:27 ID:0G9G8Ta2
以上です。

弱体化進行中。でないとワルドがすぐにやられゲフンゲフン

素顔のまま行動する理由が苦しいですが、ずっと顔を隠すのも違和感があり…。
原作での「額の本体で喋って口調変えればバレないんじゃね?」「一応参謀なのに沈黙を命じるって無茶だよ!」という疑問並みにスルーしていただけると嬉しいです。



代理投下終了。
いまさら素顔をさらしていた事に危機感を覚えるミスト萌え。
そんな貴方に
つ ミエールの眼鏡

89 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/17(木) 10:52:09 ID:MtHLtELZ
秘法が解けているとはいえ、大魔王の肉体がこの程度で大きく損傷するかな?
ミスト本人の力はともかく、さすがにバーンの肉体自体は弱体化させすぎでは・・・

毛ほどの傷がついただけだけどミストが取り乱して大騒ぎするので周囲は大怪我だと思いこむ・・・なんてのだとギャグになってしまうか

90 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/17(木) 11:05:05 ID:8cwjB/hZ
>>89
原作でもダイのライデインが効いたんだし、弱体化してるなら身体の外側
からでも効きそうな気がするけどな

生身バーンの凄さはその防御の完璧さにあるんであって、他キャラ
よりも肉体自体が特別頑丈ってわけではないと思うが
(原作でもポップのイオナズン?をわざわざ跳ね返そうとしてるし)


91 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/17(木) 11:19:59 ID:2c1X8C6K
いやいやカラミティエンドっつー肉体そのものを使った最強の武器がある以上、強度も並じゃないだろ。

92 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/17(木) 11:35:44 ID:HbrdlVo+
オリハルコンを素手で捻じ切ったりできる以上、
本気になった時の肉体強度はオリハルコン以上だと思う。

93 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/17(木) 11:38:23 ID:hW7gTmph
良くある設定ですけど、戦っているときは魔力とか気とかが充実しているからであって、普段はそれほどでもない、という可能性は無いんだろうか。
……象を蟻が一対一で攻略できるか、という問題はあるかもしれませんが。

94 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/17(木) 11:40:17 ID:oe+l22O/
レオナの不意打ちナイフ攻撃で傷が付いていたから
全体的に見るとあまり硬いほうではない

もしかしたらクロコダインやヒュンケルのほうが硬いかもしれない

95 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/17(木) 11:49:59 ID:HbrdlVo+
ヒュンケルも闘気無しだとレオナのナイフで切れるだろ。

96 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/17(木) 12:45:36 ID:hE8apYHI
また強さ談義か…

97 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/17(木) 13:25:31 ID:8cwjB/hZ
>>96
該当スレでやってくれという事ですね?わかります

つい反論してしまったがミストの人はガンダールブの力とは
反発するから弱体化してるんだ、って作中にあるんだしそれで
いいじゃんって思う。それをミストやルイズが創意工夫しながら
戦っていく展開なんだしね。原作基準に当てはめすぎの様な希ガス。

あまりにかけ離れてるならともかくこれくらいなら十分許容範囲だと
思うけどね

98 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/17(木) 13:36:36 ID:WH6NQ5df
TUEEEもヤだけど、弱すぎるのもヤ

という読者のわがままでつ


作者さん気にしないでね

99 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/17(木) 14:33:02 ID:uz0GeeAY
強さの解釈は人それぞれだからなあ
バーンの肉体は最強の手刀持ってるわりにゃレオナに傷つけられるとかで判断難しいし。

100 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/17(木) 14:38:23 ID:2c1X8C6K
検証するぐらいなら構わんだろ。目くじらたてなさんな。
まぁこのぐらい弱体化しないとゼロ魔側が太刀打ちできない。強力な制限の中、苦悩するミストと彼のバーンに対する忠義の姿勢なんか原作のイメージを巧く再現してると思う。
あとルイズが一部同調したり嫉妬したりなんてくだりもよいと思う。もう少し関係が進んで嫉妬むき出しにするルイズが早く見たいが。
個人的にはそう思う。

101 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/17(木) 18:29:42 ID:egBRVhue
>>100
検証だけならいくらでもして構わないとは思うけどね
>>89なんかは単なる揚げ足取りになってるから
こういう流れになったんじゃないの?

102 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/17(木) 21:05:51 ID:RdN4xCs0
遅まきながら、影の人、代理の人、乙でしたー!

>「私の身体はバーン様のものだからだ」

この発言の後、勘違いしたルイズとワルドが引き気味になったのを幻視したw

103 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/17(木) 21:36:04 ID:QsGHuGQm
ミストバーンが普段無口だったのは、口を開くとつい余計なことを喋ってしまう
ドジッ子だったから、と思えてきた。

104 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/17(木) 21:39:21 ID:Egzsh6Zp
確かにしゃべらなかった頃が一番秘密を守れていたのは確かだw

105 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/17(木) 21:49:15 ID:UhTsQGTW
>>103
ミスト萌えですねわかります

106 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/17(木) 21:50:28 ID:zWn8qUFl
普段喋り慣れていない人間が口を開くと、余計な事までしゃべるのは良くあることだ。
特に『悪役』であるなら、それは宿命のようなもの……

107 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/17(木) 22:30:38 ID:oe+l22O/
このスレで召喚されたキャラが元の世界から持ち込んだものは
どんなのがあるんだっけ?

108 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/17(木) 22:58:45 ID:UhTsQGTW
>>107
「召喚されたキャラが持ち込んだもの」限定ならダブルおっさんの斧くらいじゃね?
ハドラーのマントとかは「持ち込んだもの」にはいるのか微妙だし

ていうかまだ読みきれないほど作品があるわけじゃないし、まとめで読んできたらどうかな?

109 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/17(木) 23:05:25 ID:SDdHkouU
>>102
あっ、そういえばそのとおりだ。
なまじ美形だから余計に…

110 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/17(木) 23:23:15 ID:UArlVXQW
アッー!

111 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/18(金) 00:11:44 ID:iTIrlqlu
バーンプレスで闇の衣纏ったミストが自分にダメージ与えられる可能性あるの
ヒュンケルかアバンと言ってたけどおっさんは光の闘気使えなかったっけ?

112 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/18(金) 00:17:39 ID:htd3sZzb
>>111
そんなレアなもの流石のおっさんでも使えてたまるかw


113 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/18(金) 01:10:15 ID:UVlRwWSI
獣王会心激が光の闘気だったらミストさんが受け止められないじゃないか

114 :111:2008/07/18(金) 02:36:38 ID:iTIrlqlu
バーンプレスって何だよ・・・ort
バーンパレスね
ちょっとカイザーフェニックス喰らって来る

115 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/18(金) 08:09:04 ID:jGz/mAWm
最終段階のおっさんなら闘気が光化していてもおかしくはないな

116 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/18(金) 08:22:52 ID:NDhexbFX
光の闘気を使えたのはダイとアバン先生とヒュンケルとヒム、だけでしたっけ?
……長い間、魔法が使えないコンプレックスに苛まれてきたルイズなら闇の戦気を使えてもおかしくは無いけど。

117 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/18(金) 08:52:44 ID:Ku3Rv5Zn
>>116
暗黒の戦士ルイズですね?わかります

闘魔傀儡掌でギーシュを捕らえる黒ルイズを幻視した

118 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/18(金) 09:10:55 ID:WDCOFwNF
バーン様の鬼眼のパワーでルイズの系統魔法解禁
きっと虚無の担い手だから精神力も魔法の威力も桁外れだぜ!

「今のはフレイムボールじゃない、私の発火呪文よ」

119 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/18(金) 09:25:04 ID:rBX63X2F
なにそのカイザーフェニックス撃ちそうなルイズ

120 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/18(金) 09:43:19 ID:Ku3Rv5Zn
タルブ戦のエクスプロージョンがマジでフェニックス伝承になっちゃうかもなw

121 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/18(金) 11:55:04 ID:WiUgFrZI
鬼眼は低級モンスターを竜の騎士を押さえ込めるほど強化できるから考えてみれば恐ろしいな。
シルフィやフレイムをしんりゅう級にしてアルビオン艦隊殲滅とか平気でやりそうだ。

122 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/18(金) 13:08:23 ID:x+/Wnjc3
だから他のレートが全く違うドラクエ派生ゲーと混ぜるなと

123 :ゼロの影:2008/07/18(金) 17:41:21 ID:nB16Uog0
代理投下ありがとうございます!

ミストバーンはルーンの反発や他の要因によって肉体そのものの強度が落ちていて、気合を入れてもあまり硬くならない状態です。
しかしガンダールヴを発揮すれば力と速度はマシになります。
あまりに弱いとミストらしくなくなり、強いと…。
第三章と最終章の彼の強さ(弱体化)に関して修正する必要があるかもしれませんね…。

18:00頃に第三話投下予定です。

124 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/18(金) 18:04:56 ID:WDCOFwNF
いまのはメラゾーマではない、支援だ

125 :ゼロの影:2008/07/18(金) 18:05:39 ID:nB16Uog0
第三話 その名を永久に

 勇ましく悲しい者達の宴は明日滅びるとは思えぬほどに華やかであった。その中心には巨大な花瓶が据えてあり、大量の花が活けてある。
 ルイズは耐えきれず外に出ていき、ワルドがそれを追う。ミストバーンの元へウェールズが歩いてきた。
 彼の体から一瞬不穏な空気が立ち上り、ウェールズの目が細まる。
 刹那、両者の腕が閃光のように素早く動き、ミストバーンの拳はウェールズの眼前に、ウェールズの杖はミストバーンの胸に突きつけられていた。
 周囲の者達が気色ばむが、ウェールズが手を振って黙らせる。単に実力を図ろうとしただけだと知っているためだ。
 何事もなかったかのようにミストバーンが口を開く。一瞬の攻防でウェールズの実力を悟ったのだ。
「……不思議なものだな、人間とは。怯え助けを乞うばかりの者もいれば、死を恐れぬように振舞う者もいる」
「怖いが、守るべきものがあるからね」
 貴族派レコン・キスタはハルケギニアを統一しようとしており、理想を掲げている。しかし彼らは流される民の血も荒廃する国土も考えない。
 勝てずとも勇気を示さなければならない。それが王家に生まれた者の義務なのだから。
 そう語るウェールズの瞳には諦めでも絶望でもない輝きが宿っている。
 彼の覚悟は異世界の住人であるミストバーンにも伝わった。彼は譲れぬもののために命をかけて戦い、他の者達を照らそうとしている。
「……強き者には敬意を払うのが私の信条だ。お前の名を永久に心に留めておくことを約束しよう」
 その言葉の中には膨大な感情と本物の敬意がにじんでいた。ウェールズが目を瞬かせ、微笑む。
「ありがとう……!」
 アンリエッタには勇敢に戦い死んでいったと告げてくれ――そう言い残してウェールズは宴の中心へ戻っていった。
 新たな名を心に刻みこんだミストバーンはルイズにワルドとの結婚を知らされたが何の感慨もない。彼はただ傍らにいるだけだ。

 翌日、ルイズは夢の世界にいる心地でワルドとの結婚式を進めていた。ウェールズが見守り、神父の前でルイズとワルドが並んでいる。
 ルイズの身長ほどもある壁際の花瓶には城中の花が集められ、甘い香りをまき散らしていた。
 憧れていた相手。結婚という語から溢れる美しい煌き。だがそれらは現実のこととは思えなかった。
 心の内に広がる雲に耐えきれず、ルイズは唇を噛んだ。どうすればよいのかわからない。思い浮かぶのは、何故か青年の顔。
 彼はワルドから戦の準備を手伝うよう頼まれていた。結婚式に全く興味を抱いていないため外で働いているだろう。
 彼は、ワルドがルイズを必要としていると言った。その言葉が胸に残っていたが違和感が拭えない。
 決めるのは自分なのだ。結婚という問題の責任を、ミストバーンやワルドに押し付けることはできない。
 ワルドに対する想いはミストバーンの忠誠心の十分の一、いや五十分の一もないかもしれない。忠誠心と愛情は違うが、ワルドは心の中心にはいない。
 結論にたどり着くとルイズは自然と首を振っていた。
「ごめんなさいワルド。わたしあなたと結婚はできないわ」
 ワルドの顔に朱がさした。ルイズの肩を掴み、熱に浮かされたようにぎらつく目でルイズを射る。
「世界を手に入れるために君が必要なんだ! 始祖ブリミルをも超える君の才能が!」
 ルイズはその時悟った。ワルドが必要としていたのは、彼女自身ではなく魔法の力。それも、ありもしない才能を手に入れようとしていた。
 彼が認め必要としているものは、彼女の中には存在しない。
 引き離そうとしたウェールズが突き飛ばされ、顔を赤く染める。ワルドは手を離し、蛇のように双眸を光らせながら優しい笑みを浮かべた。
「駄目かい? 僕のルイズ」
「いやよ、誰があなたと結婚するものですか」
 ワルドは天を仰ぎ両手を広げた。
「目的の一つは諦めよう……二つ達成しただけでも良しとしなければ。一つ目は君を手に入れることだが、果たせないようだ」
 ルイズが嫌悪に満ちた目で睨みつける。
「二つ目はアンリエッタの手紙だ。そして三つ目は……ウェールズの命」
 ウェールズが杖を構えようとしたが、ワルドが閃光のように素早く杖を引き抜き、青白く光らせつつ胸を突く。

126 :ゼロの影:2008/07/18(金) 18:10:37 ID:nB16Uog0
 だが、胸の中央を貫くはずだった先端は逸れた。胸を切り裂かれたものの致命傷ではない。
 ワルドの手の甲には薔薇の造花が深々と突き刺さっていた。ワルドが花瓶へ杖を向け、空気の槌で粉砕する。その陰から悠然と姿を現したのは白い闇。
「なかなか洒落た真似をしてくれるじゃないか、君。気配の消し方も人間とは思えん」
 ワルドが薔薇を引き抜き床に叩きつけた。踵でぐりぐりと踏みにじる。かつてギーシュから取り上げた杖を花瓶の陰から投擲したのだ。
 ワルドに杖を向けようとしたウェールズを阻む。
「ゆけ……戦場へ……!」
 ウェールズは頷くと、風のルビーを渡して赴くべき場所へと駆け出した。
 ルイズが戦慄きながら怒鳴る。
「あなた、アルビオンの貴族派だったのね!」
「そうとも。ミストバーン、素直に敬意を表するよ。愚かな者達は捨てて僕と同じ『レコン・キスタ』の一員に加わらないか?」
 ルイズが怒りに燃える目でワルドを睨む。
「姫様への忠誠は……嘘だったのね! 姫様は信じてらしたのに」
 誰よりも、ルイズ自身が信じていた。憧れの相手を。淡い想いを抱いていた彼を。
「信じるのはそちらの勝手だ」
 冷たく言い放った裏切り者は邪魔者を消そうと杖を掲げた。その顔が強張る。
 ミストバーンの全身から純然たる殺気が立ち上っている。冷たい横顔からは、触れると切れそうなほどの怒り。
「忠誠を誓った相手を簡単に裏切り……私に薄汚い裏切り者になれと勧めるとは、な……!」
 彼にもわかっている。
 これは人間同士の問題であり、彼が口を出すものではないと。ワルドの行いを責めることはできないと。
 力こそ正義の魔界において、力を得るため――目的のために行動するのは正しいことだ。信じた者が、騙された方が悪い。見る目が無かっただけだと笑われる。
 ウェールズを早目に殺そうとしたのも王党派の士気を下げ、自軍の余計な消耗を避けるため。何も間違ってはいない。
 それでも彼には耐え難かった。
「ウェールズの全てを賭けた戦い……貴様如きに汚されてたまるものか!」
 どれほどワルドが強くとも、彼の心に名が刻まれることは永久に無い。
 ワルドが杖を上げ、ミストバーンが拳を構えると空気が戦いの前兆を示すように震えた。

 ワルドが杖を振るうと流水のようによどみなく呪文が完成し、巨大な空気の塊がミストバーンに叩きつけられた。その威力は手合わせの時とは比べ物にならない。
「どうした? 使いたまえよ、ガンダールヴを……全ての力を!」
 ガンダールヴの力を発揮すれば速度が跳ね上がるというのに使おうとしない。
 高らかに笑うワルドへ静かな声で問う。
「お前こそ使わんのか?」
 まさか全力を使わずに倒せるとでも思っているのか――そう言いたげな声だった。
 ワルドの顔が強張ったが、挑発に薄い笑みで応えた。
「ならばお教えしよう、風の最強たる所以――偏在を。ユビキタス・デル・ウィンデ……」
 呪文の完成と同時にワルドの体が分かれた。ただの分身ではなくそれぞれに意思と力が宿っている。
「やはりお前だったか……」
 彼はワルドと仮面の男の気配がよく似ていることを察し、警戒していた。自身が主の分身体を預かっているだけにそういった魔法の存在を予想していたのだ。
 興味の欠片もない結婚式に潜んでいたのも、手がかりであるルイズや認めたウェールズを殺させぬため。
 直前まで姿を現さなかったのは名を覚えるに値するか見極めようとしたからだ。
 ルイズはあまりの衝撃に動けない。
 認められたと思いこみ、全て否定された。大きな存在でなかったとはいえ絶望と悲しみは深い。


127 :ゼロの影:2008/07/18(金) 18:18:07 ID:nB16Uog0
 ワルド達が一斉に攻撃に転じると杖や魔法が身体をかすめる。万全の状態ならば全く問題にしないが、力が極端に落ちている今五対一では分が悪い。
 だがワルドは目の前の男が危険な存在であることを悟っていた。これほど強烈な殺気を放つ相手を侮っていると手痛い一撃をくらう可能性が高い。
 速やかに攻撃を叩きこもうと偏在が同時に詠唱を始める。ウィンド・ブレイク――猛る風が敵を吹き飛ばす魔法だ。ミストバーンはようやく剣を抜き、右手で構えた。
「剣で風を止められるものか!」
 ワルドが笑うがその眼が見開かれた。生じた風がデルフリンガーの刀身に吸い込まれていく。
 接近し、反応の遅れた偏在の胸を左手で貫き消滅させる。
「やはり魔法を吸収するようだな」
 彼は手合わせの時に魔法の威力が軽減されたことに気づいていた。
 闇の衣に封印されている時は呪文を吸収、増幅し打ち返す技を持っている。感覚が似ているため気づいたのだろう。
 フェニックスウィングが不完全な今ならば魔法を防ぐ有効な手段となり得る。
 だが、一体消されたとはいえ本体と合わせてワルドは四人。
「厄介な能力だが、吸収されぬ魔法で攻撃すればよい」
 その杖が細かい振動と共に青白く輝く。ウェールズを貫こうとした呪文エア・ニードル――杖自体が渦の中心であり、吸収はできない。
 鋭利な切っ先が四方から迫るのを受け流し、手で払い、かわす。相手が吸収できる魔法を使わないことを悟り、再び剣を納め素手で戦っている。
「何故君は戦う? それほどルイズに忠誠を誓っているのか?」
「我が主はバーン様ただ一人……」
 彼が戦っているのは誰の命令でもない。彼にはルイズこそが帰還の鍵を握るという漠然とした予感があった。
 手がかりのルイズを守るという“義務”と、ウェールズの邪魔はさせないという彼自身の意志だけで戦っている。

 ルイズは体の震えを押し殺し、目の前で繰り広げられる戦いを食い入るように見つめていた。
 裏切りの衝撃が徐々に薄れ、行動すべきだという思いが湧き上がる。
 しかし、何をすればよいのかわからない。足手まといにならぬよう引っこんでいるしかないではないか。自分はゼロのルイズなのだから。
 そこまで考え、ルイズは自分の両頬をばちんと叩いた。
(ええい! らしくないわ!)
 何もしないうちから諦めて保身を考えていては主人失格だ。もっとも、まだ主とは認められていないのだが。
(我が主はバーン様ただ一人……)
「もう、少しは気をきかせなさいよ!」
 悔しさと怒りがふつふつとこみあげ、あっという間に悲しみと恐怖を押し流す。
 ワルドはミストバーンに注意を向けている。いくらゼロのルイズと呼ばれているとはいえ意識から締め出すとは――完全に甘く見られている。
「わたしを……このルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールをなめるんじゃないわっ!」
 彼女はこめかみに青い筋を浮かび上がらせながら呪文を詠唱した。杖を振ると偏在の一体が爆発し、消滅する。
 本体と合わせてワルドは三人に減った。これで有利になると考えたルイズへ、近い位置に立っていた偏在が向き直り躍りかかった。

 ミストバーンは見た。ルイズへ凶刃が迫るのを。
 彼と主をつなぐ唯一の線が、一筋の希望の光が絶たれようとしているのを。
 ――主の元へ、戻れなくなる。
「ルイズ!」
 気がつけば、初めて叫んでいた。同じ闇を抱える者の名を。
 デルフリンガーを抜き放ち、ルーンを光らせつつ投げつける。
 ルイズは見た。ミストバーンが己の名を叫び、剣を抜いて投擲したのを。
 目の前に迫った偏在が胸を貫かれ消滅するのを。
 そしてその隙に、もう一体の偏在が彼の心臓を青白く輝く杖で貫いたのを――!


128 :ゼロの影:2008/07/18(金) 18:20:17 ID:nB16Uog0
以上です。次話は短くシンプルです。

憧れの婚約者が裏切り者で自分を殺そうとし、それを止めた相手が心臓刺されるのを目撃…トラウマになってもおかしくない。
薔薇が果たして狙い通りに飛ぶのか、棘もあるのにあっさり刺さるのかという疑問があるかと思われますがミストの力とギーシュの杖が凄いということで解決させてください。

もう少し…! もう少しで…!!

129 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/18(金) 18:26:15 ID:OI6Egu2T
>影さん乙
今回はかなりミストがミストらしいなあ〜
そしてそこで切るか!
続き早めに頼むぜ。でないと気になってしょうがない。

130 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/18(金) 21:34:43 ID:4XZWFHVh
影さん乙です
まああの体はたしか心臓3つあるはずだし死にはしないだろう
むしろやばいのはそこから電流流されることだが。若バーンにも効くからなあれは

131 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/18(金) 22:06:19 ID:hJxGSx9I
影の人、乙です。
忠誠心を捨てた者への嫌悪感と、死を賭して戦う強者への敬意。
強さが正義であるという思想にも触れつつ。
なかなかよいミストバーンでございました。

しかしとうとうバーン様の肉体に大きな怪我を負わせてしまいましたね。ワルド許すまじ。
続きをお待ちしてます。

132 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/18(金) 23:28:08 ID:TZF5PY7a
タキシード仮面様・・・・

133 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/19(土) 02:31:22 ID:/mUaJ1UD
影の人乙です!
展開の早さが心地よいなあ

wikiのほう更新しました。

>>鰐男様
挿絵ですが、目次ページの各話の横から飛べるようにしておきました。
ファイルはjpgへと変換し、wikiへアップロードしてあります。


更新してると書いてしまいたくなる・・・

134 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/19(土) 17:29:23 ID:FVd2Cdcn
こうして見ていると、基本的に一人だけが召喚されてますね……よくある「巻き添え召喚」が無いというか。
……最終決戦真っ最中のバーンパレスというのはどうだろう?

135 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/19(土) 17:52:04 ID:xlb3N6jH
そんな大変な時に召喚されたら、すぐ元の世界に戻らないと大変だと大騒ぎになって、
おとなしく使い魔やるどころじゃないし、のんびりもしてられないので学院に帰還方法探してもらうだけじゃなく、
自分から帰還方法を探しに出たり、場合によっては王族に直接交渉しに行ったりと、書くのが難しすぎるぞ。

136 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/19(土) 18:16:32 ID:pCxrVmfH
それだとダイ世界の地上が消し飛ぶんじゃないか?

137 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/19(土) 18:23:23 ID:E+UugUx0
じゃあ全てが解決した後って事で、
爆発する寸前のキルバーン人形を抱えたダイを召喚、
その日、魔法学院は消滅した。

138 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/19(土) 18:28:49 ID:3eGebHrD
鬼眼王バーンとダイ、キルバーンと閉じ込められた残りの皆さんを同時に召喚するのか

139 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/19(土) 18:30:00 ID:UMdbtVVA
そこまでいくとゼロ魔じゃなくてもよくなる

140 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/19(土) 19:00:39 ID:qOGb3xea
>>137
NT
「タイミングが大事(元ネタゼロの使い魔×ダイの大冒険)」

141 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/19(土) 19:03:28 ID:VsBFE8fE
>>140
しょーもないネタなので忘れてたけど、そんなのもあったなw

142 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/19(土) 19:04:45 ID:g/PY3ZZF
ダイ世界の住人達がハルケギニアを一方的に蹂躙するだけの話は不愉快だな。
ダイ大は好きだがゼロ魔も好きなんだ。

143 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/19(土) 19:27:21 ID:WOFZEn3o
ダイキャラのほうがはるかに強いから
ワルドさんやVS七万は省略して交流を重視したほうがいいな

144 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/19(土) 19:33:54 ID:E+UugUx0
>>140
自分で書いててどっかで聞いたよーなと頭ひねってたらそれか!
めちゃくちゃすっきりしました、ありがとう。

145 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/19(土) 19:41:35 ID:QUsPHbBg
逆にダイ世界の住人だと解決するのが困難なことって何だろ?

146 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/19(土) 19:52:23 ID:VsBFE8fE
>>145
政治と戦争と宗教問題だな
下手に力が有る、背景や信頼の無い存在が強引に解決しようとすると
悪化する事請け合いだろうし

147 :虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I :2008/07/19(土) 20:46:06 ID:ScnyD757
予約がなければ20:50頃から投下

148 :虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I :2008/07/19(土) 20:50:06 ID:ScnyD757
虚無と獣王
9 虚無と微熱 

ジャン・コルベールが学院長室のドアをノックすると、聞こえてきたのは入室の許可ではなく連続的な打撃音と不連続の苦鳴であった。
またか、と溜息をつき、許可のないままドアを開けると、中には部屋の中心で何かを引っ掴み、肩で息をしている二十代前半と思しき女が立っている。
「失礼します。オールド・オスマンは見えられますかな、ミス・ロングビル?」
「オールド・オスマンは不在です。年甲斐も節操もない妖怪セクハラジジイならここにいますが」
「おお、それは妖怪だったのですか。てっきりボロクズだとばかり思ってましたよ、はっはっは」
「ええ、新種の妖怪ですので王立魔法研究機関に知らせなくては……報奨金くらい出るかしら?」
「……お主ら、雇い主とか老人とかに対する敬意は……?」
ロングビルに掴まれている妖怪が何やら非難の声を上げたので、2人は思った事をそのまま口にした。
「おお!この妖怪は喋る事ができるのですな!大発見なのでどうでしょう、バッサリ解剖などしてみては!」
「それはとても良い考えですわ!そうすれば動かなくなったり喋らなくなったりしますし丁度いいですね!」
「マテマテマテマテ!お主らマジで言っとらんか!? 儂じゃ!オスマンじゃー!!」
二呼吸ほど間を置いて、2人は不思議そうに言った。
「ええ、知ってますが、それが何か?」
オスマンは床に体育座りで丸を描き始めた。
「なんじゃいなんじゃい、尻をさする位、秘書への可愛いコミュニケーションみたいなもんじゃないか、それを全く暴力での返事など老人に」
「ミス・ロングビル、打撃は体の正中線上に入れるとより効果的ですぞ」
「成程、参考になります。こうでしょうか?」
「ぐはぁっ!!」
鈍い打撃音の後、何故か床に寝転がっている上司にコルベールは声を掛けた。
「そんな所に転がっていると風邪をひきますぞ、オールド・オスマン。あと報告したい事があるので起き上がって貰えませんかな」
「そ、そうじゃな………」
流石に生命の危険を感じたのか、素直にオスマンは机に向かった。引き出しに常備してある水の秘薬を一気飲みする姿は、学院長という要職に就いているとは思わせないものである。
「で、要件は何かね?儂も忙しいんじゃ、端的に頼むぞ」
「先刻のアルヴィーズの食堂での騒動についてです。生徒たちへの罰として何を与えるべきか、教師たちの間で意見が分かれております」
何だそんな事か、と言わんばかりのオスマンに、コルベールは言葉を重ねる。
「大した事はないのだからお咎め無しで良いのではという者から、停学並びに保護者呼び出しの上厳重注意という者まで意見はバラバラ、まさに会議は踊ると言ったところでして」
このままでは纏まらないが、何時までも生徒たちに食堂の掃除をさせておく訳にもいかないので学院長の考えを聞きにきたという。
オールド・オスマンは鼻をほじりながら言った。
「お主はどう思っとるんじゃ?コッパゲール君」
「コルベールです!……数日間の自室謹慎と主要教科のレポート提出、ですか。保護者への連絡は不要でしょう、『今回は』という但し書きがつきますが」
「んー、まあそれでいいじゃろ。生徒たちにはお主から伝えておくように。で、話はそれだけかの?」
「実はもう一つあります───どちらかといえば、本題はこちらです」
そう言ってコルベールは懐から一枚のスケッチと一冊の本を取り出した。
「なんじゃ、『始祖ブリミルの使い魔たち』? 随分古臭い本を持ち出してきたもんじゃが、これがどうした?」
「こちらは先日の召喚の儀で呼び出されたある使い魔に記されたルーンをスケッチしたものです。それを踏まえた上で、このページをご覧下さい」
「─────!ミス・ロングビル。少し席を外してくれ」
これまでの言動からは想像もつかない、鷹の様な眼をしたオールド・オスマンに一礼し、ロングビルは退室しようとして、
「ちゅう」
足下に、より正確に言うならばスカートの中を覗ける位置にいるネズミ、すなわちオールド・オスマンの使い魔にしてもう一つの目を発見した。
「ミス・ロングビル、打撃の際は足を肩幅に開いて立ち、手は上にあげてから顔の少し下に、体を45度開いて腰を回し、真っ直ぐ打ち込むとより効果的ですぞ」
「成程、参考になります。こうでしょうか?」
「ごふぅっ!?」
粋な打撃が粋な急所に入り、粋な悲鳴を上げながら老人が粋な勢いで倒れこむのを見届けた後、粋な笑顔を残してロングビルが部屋から出ていく。
一応念の為に静寂の魔法をかけてから、コルベールは床に倒れこんでいる上司に詳しい説明を始めるのだった。


149 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/19(土) 20:52:56 ID:UMdbtVVA
待ってました待ってました

150 :虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I :2008/07/19(土) 20:54:18 ID:ScnyD757
結局ルイズたちに言い渡されたペナルティは以下のものであった。

・三日間の自室謹慎
・四系統魔法それぞれの基礎と応用に関するレポート提出
・中世〜近代トリステイン史の中から印象に残る人物を挙げ、その業績を纏める

露骨にゲンナリとした表情を見せる生徒が多い中、ルイズは処分が軽くすんで良かったと胸を撫で下ろす。
もし保護者呼び出しの措置でも喰らって家族が学院に来襲してきた日には、色々な事を覚悟しなければならないのだ。
因みに母親が呼び出された場合、覚悟の内容は己の死という事になる。
レポート提出が苦にならないと言えば嘘になるが、カッター・トルネードの直撃よりは遥かにましと言えよう。
実を言えば、意外な事に今回の騒動で一番反省しているのは、ギーシュでもギムリでもなくルイズであった。
使い魔に相応しい主になる、と誓った舌の根も乾かぬうちに今回の騒動と相成ったのは、クールダウンしたルイズを落ち込ませるのに充分な出来事だったのだ。
確かに最初に挑発してきたのはキュルケの方だが、その挑発に乗ってノリノリで騒ぎを拡大させてしまったのは自分である。
幸いクロコダインは「二度とはするな」の一言で許してくれたのだが、逆に言えば「二度目は許さん」という事でもあるとルイズは解釈した。
そもそもすぐにカッとなるのは、自分の中にある『理想的な貴族像』からかなりかけ離れていると言わざるを得ない。
そうだ、貴族たる者として、常に冷静である事を心掛けよう。ビー・クール、be cool。短気カッコワルイ。
そうルイズは心に誓い、同時にクロコダインを召喚してから誓い事が増えたなあと思うのだった。

一方、図書室では罰を喰らった男子生徒たちによる反省会兼レポート作成講座が開かれていた。自室謹慎? なにそれ美味しいモノ?
「いや、参った。本当に参ったよ僕ぁ。土下座しているのに全力ビンタだよ? 一瞬意識が飛んだよ、死んだ曾お祖父さまが川の向こうで手を振ってるんだ。あ、まだ振ってる」
両頬に赤い紅葉を張り付け、机に突っ伏しているのはギーシュ・ド・グラモンである。
「いいなぁ……バリアーもいいけど、僕もビンタ喰らいたいなあ……あぁ……ああ……!」
ギーシュの正面に座り、小太りの体をクネクネさせながらマリコルヌが顔を上気させた。
「オラそこぉ!ブツブツ言ってねぇでレポートの資料探せよな!こーいうの苦手なんだよ!」
レビテーションを使っての高い本棚の資料探しに苦心しつつ、鬱から復帰した肉体派のギムリが声を荒げる。
「ギムリ、そこは娯楽小説の棚だからレポートの資料はないと思うぞ? あと他二名は早急な現実復帰を勧告する」
ギムリにどうか一つと拝まれ、条件付きで手伝う事にしたレイナールが眼鏡の位置を直しながら言った。
「ああすまない、レイナール君。つい彼岸までイッてしまったようだよ」
「ええと、マリコルヌ、だっけか? ぶっちゃけイッたまま帰ってこなくてもよかったんだけどな」
レイナールではなくギムリが嫌そうな顔でぶっちゃけすぎな感想を漏らす。台詞を取られた形のレイナールだったが、感想についての否定はしなかった。


151 :虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I :2008/07/19(土) 20:58:29 ID:ScnyD757
「……しかしなんだな、なんだって君はここにいるんだね? 確かあの騒ぎには参加していなかっただろうに」
マリコルヌにやや遅れて現実世界に帰還したギーシュが、レイナールに疑問を呈した。
ギーシュとマリコルヌは同じクラスだったので互いの性分などは判っていたが、ギムリとレイナールに関して大した情報は知らない。相手の名前と属性程度の知識しかないのだ。
そんな4人がなぜ同じ机に座っているのかと言うと、周囲の目につかない場所にある机が1つしかなかったからである。
サイテー二股男と定冠詞付きのThe・真性、ピザ投げ鬱男に対する世間の眼は想像以上にイタイと、彼らは食堂掃除中に身をもって知った。
さておき、尋ねられたレイナールは肩をすくめて答える。
「手伝ってくれと頼まれたからね。まあギムリ一人じゃ3ヶ月あってもレポート提出は無理だから、後でぼくの実技演習に協力してもらう条件で手を打った」
「実技演習? 何の事だい?」
「ああ、こいつ『ブレイド』使いなんだけど、練習相手があまりいないんだよ」
机の上に山の如く積み上げられた資料を前にうんざりとした表情を浮かべたギムリの言葉に、ギーシュは感心したように言った。
「成程、確かにそうだろうね」
『ブレイド』とは杖に魔力を絡めつかせて刃と為す近接戦闘用の魔法であるが、その効力を生かすには剣の心得が必要であり、魔法学院では扱う者が少ない魔法でもあった。
極端な話だが、戦場において近接格闘を担当するのは主に平民であり、遠距離、つまるところ砲台としての役割を担うのがメイジである。
故に『ブレイド』等の近接攻撃魔法を使うのは魔法衛士隊や聖堂騎士といったエリートに限られる傾向があった。
「嫌なんだよなぁ。手加減しないし、常にこっちの行動を予測したような攻撃してくるし」
「おいおい、手加減はしてるし相手の行動予測なんて戦術の初歩だろ? さあ、雑談はこれ位にしておこう。ギムリ、トリステイン史のレポートに誰を挙げる事にしたんだ」
「……まず中世から近代が具体的にどの時代を指してるのかを教えてくれ」
「そこからか!いや、いい。ぼくが適当にピックアップする。『魅了王』アンリ三世なんかどうだ? 水精霊騎士隊の解散にも絡め易いし」
テキパキと指導を始めるレイナールと全く進んでいない自分のレポートを交互に見て、ギーシュは1つ提案する事にした。
「なあ、レイナール君。ぼくも後で実技演習に参加するから、こちらのレポートも手伝ってはくれないか?」
「……手伝いに関しては1人が2人になってもさほど変わらないからいいが、君は『ブレイド』を使えるのか?失礼だがそんなタイプには見えないけど」
「外見から人を判断するのは愚かな事だよ、というか君だって『ブレイド』の使い手には見えないぞ。
まあ確かにぼくは『ブレイド』を得手とはしないが、近接格闘に関して有効な魔法を得意としているんでね」
どこからか薔薇の造花を取り出して格好つけるギーシュだったが、観客は3名の男性なので全く意味がない。
因みにギムリは資料を何ページか捲っただけで眠りの園に誘われそうになっており、マリコルヌに至っては実技演習という言葉に何故かスイッチが入ったらしくハァハァ言いながら妄想の海にダイヴしている。
この国の将来に漠然とした不安を感じつつ、レイナールは取り敢えず歴史上の有名人を頭の中でピックアップする事にしたのだった。



152 :虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I :2008/07/19(土) 21:02:10 ID:ScnyD757
「ハァーイ、ルイズ。レポートは進んでるー?」
教師からの言いつけを律儀に守り、一歩も部屋から出ずにレポート作成に勤しむルイズの前に現れたのは隣室の住人にして先祖代々の仇敵、キュルケである。
自室謹慎何するものぞとばかりに食堂で夕食を平らげ、使い魔と共にアンロックの魔法で強引に鍵を開けて乱入した彼女にルイズはチラリと眼をやって言った。
「そういう貴女は進んでなさそうね、キュルケ」
素っ気ない返事にキュルケはおや、といった顔をした。いつもならここで食ってかかるルイズが思いの外冷静だったからだ。
これは一体どうした事だ。ムキになって反論してこそルイズ、冷静に反応するなど今は外出中のタバサだけで充分よ。とキュルケは勝手な事を思い、彼女が冷静さを保つ原因に想いを馳せた。
座学の秀才であるルイズがレポート如きに詰まる筈はないだろう。故に勉強疲れでツッコむ元気がない説は消えた。
机の隅に食器がある事から食事もどうやら部屋で摂ったようだ。故に空腹でツッコむ元気がない説は消えた。
では、残る可能性は1つ。
キュルケは再びレポートに戻ろうとするルイズの背に向けて言い放った。
「病気ね?」
「何いきなりエクストリームな事を言い出してんのよ!」
「なんだ違うのか。ざんねーん」
よしこれでこそヴァリエール、と心の中で思いつつ表情には出さないのがキュルケの流儀である。
「ま、元気そうで何よりという事よ。という訳であなたのレポートを参考にさせてくれなさい」
「ツッコミ放題のボケ発言をどうもありがとうツェルプストー。帰れ。部屋ではなく国へ」
「知識という物は広めてこそ価値があるのよ。栄養が頭にだけいって胸に行かない誰かには判らないかしら?」
「他人に教えられただけでは知識は身につかないわ。栄養が胸にしか行かなかった誰かには判らないわよね?」
ウフフフフフ、と笑いながら火花を散らしあう2人であったが、やがて溜息と同時に目を逸らしあった。不毛な会話に疲れたからである。
なにやってんのかしらと首を振り、課題に取り組もうとして、ふいにルイズは部屋の片隅にいるサラマンダーに気がついた。
「ねえ、それがあんたの使い魔?」
「ええ、フレイムっていうの。見て見て、この尻尾の大きさからして間違いなく火竜山脈出身だと思うのよ」
どうだ凄いでしょー、と言わんばかりのキュルケであったが、「へー、凄いわねー」というルイズの返事に拍子ぬけした様だ。
「なによ詰まんないわね。もっといつもみたいに「ムキー!」とか言って怒んないの?」
「怒った結果が今の謹慎と課題漬けでしょうが……。レポートならいつも一緒にいるあの小さい子に頼めば?」
「タバサ? それがあの子今出かけてるのよ、急用とか言って」
何時になく普通に進むキュルケとの会話の裏には、常に冷静足らんとするルイズの努力があった、というと大袈裟だろうか。
だが、冷静である事を努めた結果、ルイズはある事に気がついていた。
キュルケが絡んでくるのは何時も自分が何か失敗して落ち込んだりしていた時だったと。彼女との衝突が負けん気を生み、結果として自分は救われていたと。
(ああ、わたしはこれまで本当に余裕がなかったのね)
そう思ったルイズはキュルケに何か言おうとしたが、直ぐに中止した。
キュルケが本当に自分を励ますつもりで話しかけていたのか判らないし、今更そんな事を言った処で当のキュルケには笑われる気がした。
なにより真顔で礼を言うなど、余りに恥ずかしすぎるというものだ。
「ねー、いーじゃん見せなさいよー、減るもんじゃあるまいしー」
そんな思いを知ってか知らずかまだレポートに未練を見せるキュルケに、ルイズは仕方ないという顔を作って言う。
「あーもー煩いわね〜、提出期限の前にタバサが帰ってこなかったら、か、考えてもいいけどっ」
慣れない演技についドモってしまうルイズに、キュルケは真顔で彼女のおでこに手を当てた。
「ちょっと本当に大丈夫? 熱でもあるんじゃないでしょうね」
あまりに真剣なその表情に、ルイズは笑いをこらえるのに苦労した。



153 :虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I :2008/07/19(土) 21:03:02 ID:ScnyD757
以上投下終了
ギーシュ編はあと一回の予定

154 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/19(土) 21:03:26 ID:T6DueVb6
レイナール苦労人www

155 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/19(土) 21:10:43 ID:YDS4K4o+
乙であります
獣王による近接戦闘講座への伏線かっ

156 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/19(土) 21:15:28 ID:TPlyY6B1
おっさんの斧はブレイドくらいじゃ受けるのも難しいというか
重量だけで押し切られそうだ。

ともあれ投下乙。

157 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/19(土) 21:21:31 ID:c5PkxwOj
乙であります。
クロコダインに近接戦闘を教授してもらう……飛び散るワルキューレ、まさに獣王無双状態?

158 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/19(土) 21:27:18 ID:S26uqq5a
GJ

新たな魔法、「アックス」の複線かな?
腹で受けることによる「盾」の効果も付加するとかなり強力かつ便利そうだ。

159 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/19(土) 21:40:18 ID:LeehFE7m
投下乙

ギーシュ君辺りに闘気を覚えさせれば闘気+魔法の剣ができそうだな

160 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/19(土) 22:11:08 ID:5wiRIIi8
投下乙ー

>>「巻き添え召喚」
冒険が終わった後のチウが召喚ゲートに飲み込まれそうになって獣王遊撃隊の全員が一度に召喚されるとか考えた
でも初日で詰みそうだから無理っぽい
ゴメちゃんとビースト君抜きでも13体召喚になるし(新人の二人含む)

161 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/19(土) 22:18:11 ID:yj+m3RFn
おっさんに教えてもらうとか羨ましすぎるだろ常考

162 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/19(土) 23:33:37 ID:+Caf9UMe
>>160
ガンダーのくせに、他人の使い魔や獣を次々手下にしていく、ヴィンダーなチウですね。わかります。

163 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/20(日) 03:00:00 ID:Wo3On8lD
獣王の笛と神の笛か……
どちらの方が影響が強いのかな?
おっさんにもいえることだが。

164 :ゼロの影:2008/07/20(日) 06:31:34 ID:a1OEORhq
6:40頃に第四話投下します。

今回は短めです。

165 :ゼロの影:2008/07/20(日) 06:40:54 ID:a1OEORhq
第四話 命令

 “彼”は思案に暮れていた。
 腹心の部下が光の鏡に吸いこまれ、姿を消してから気配を探っている。しかし何も手がかりはなく、虚しく時間が過ぎていくばかりだ。
 魔界にも地上にもいない。ならば天界にいるのかと思ったが、“彼”の直感は異なる結論を下していた。
 あの忠誠心が服を着て歩いているような部下が己の元に帰ってこないのは、不可能な状況下にあるからだ。
 “彼”は部下の帰還を疑っていなかった。
 闇の衣を身にまとっている状態でも大抵の敵は簡単に滅ぼすことができ、ほとんどの攻撃が効かない。
 万一封印を解く事態になっても最強の肉体に秘法をかけて文字通り無敵の存在と化している。
 帰還を確信しつつも最強の肉体と最高の忠臣を一刻も早く手元に戻すため、“彼”は捜索を続けていた。

 軍の指揮を執っていたウェールズは突然ズキリと心臓が痛むのを感じ、胸を押さえた。本来ならばワルドの杖に急所を貫かれ死んでいたはず。
 それを救ったのはミストバーンだった。顔を合わせた時間こそ少ないが、確かに通じるものがあった。
(アンリエッタに、勇敢に戦い死んでいったと伝えるよう頼んだからね)
 あのままでは死んでも死に切れなかっただろう。散ることを決意した戦いの場へ送り出してくれた――どれほど感謝しても足りない。
(おかげで最後に格好がついた……)
 自分の名を心に留めておくと約束してくれた。彼がそう言ったからには永遠に忘れはしないだろう。
 ウェールズも、国民やアンリエッタ、ルイズ、そしてミストバーンを想いながら命尽きるまで戦い抜くつもりだった。
 彼らは今どうしているだろうか――考えかけたが、首を振って思考を切り替えようと努めた。
 自分の果たすべき役割を思い浮かべ、精神を集中させる。彼らに恥ずかしくない戦いぶりを見せようと。

 ルイズは眼前に広がる光景を信じられなかった。
 ミストバーンの胸が青白く光る杖で貫かれ、先端が背から突き出ている。心臓を貫通していることが明らかだった。
 傷口を広げるために杖が捻られると、口の端から血が滴り、首ががくりと垂れた。さらに深く押し込まれても声一つ上げず、両手は力なく下がっている。
「ミストバーン……!」
 初めて名を呼んだというのに返事は無い。
 杖が引き抜かれ、糸の切れた人形のように崩れ落ちる。倒れ伏した彼の体の下にじわじわと赤い染みが広がっていく。
(わたしの――わたしのせいで)
 彼女を守ろうとしたため隙が生じ、刺されてしまった。自責の念、後悔が膨れ上がりワルドへの怒りに姿を変える。
 杖を掲げたがワルドの方が早い。瞬時に魔法を放ち、ルイズを吹き飛ばす。床に転がった彼女はそれでも杖を構えようとしたが、壁に叩きつけらた。
 蒼白な顔になった彼女にワルドが苦笑する。
「だから! だから言ったではないか、共に世界を手に入れようと!」
 ルイズの目から涙がこぼれる。
 ミストバーンとの戦いの時はキュルケとタバサ、コルベールやギーシュがいて助けてくれた。
 ゴーレムの時はミストバーン達が共に戦ってくれた。
 今は――誰もいない。意地を見せても認めてくれる者はいない。
 苦痛と死の予感が彼女の意識を押しつぶし、恐怖へと染め上げていく。
「言うことをきかぬ小鳥は首をひねるしかないだろう? なあルイズ」
 残念そうに囁いたワルドが歩み寄る。ルイズは震えながら青年を見るが、やはり奇跡は起こらない。
 ワルドは怯えた獲物の様子に満足げな笑みを浮かべた。もはや邪魔者はいない。
 彼は完全勝利を――人生の成功を確信した。



166 :ゼロの影:2008/07/20(日) 06:45:03 ID:a1OEORhq
 だが、彼はいくつか過ちを犯した。
 まず一つは、ミストバーンにとどめを刺さなかったこと。万全を期すなら首をはねるか心臓をあと数回は刺すべきだった。
 二つ目は、気を緩めたこと。最大の敵を葬ったと思い込み、威圧感から解放された反動で彼は冷静さを欠いていた。
「主の所有物である体を、傷物にしてしまったな」
 三つ目の過ちは、不用意な発言。彼は言葉を重ね、知らぬうちに破滅の淵へと近づいていく。
「ルイズ……君も、彼も愚かだ。彼の崇拝する主も暴君か無能か……暗愚なのだろう」
 今、彼は最大の過ちを犯した。すなわちミストバーンの主を侮辱したのだ。
「あ……ああ……!」
 ルイズが震えながら声を絞り出した。声の調子が変わったことに気づいたワルドが振り返り凍りつく。
 ミストバーンが立ち上がっていた。口元と胸を真紅に染めた壮絶な姿で。
 目元は髪に隠され見えない。異常なまでに膨れ上がった殺気がワルドの肌を刺し貫く。
 偏在が杖を振るうが、避けたようには見えぬ動きで回避し、偏在の頭部をつかんだ。
 手に力を込め、風船の破裂するような音と共に握りつぶす。
「馬鹿な……急所を貫かれて何故動ける!?」
 ミストバーンは伏せていた顔を上げた。
 常に閉ざされていた双眸が開き、底知れぬ暗さをたたえた瞳が裏切り者を見据える。
 闇を切り取ったような眼がワルドの心を突き刺し凍てつかせる。
 彼は、恐怖に縛られ動けぬワルドに指を突きつけた。

 そして下される、死の宣告。

「……命令する。……死ね」

 彼は静かに、そして深く、怒っていた――。


167 :ゼロの影:2008/07/20(日) 06:47:27 ID:a1OEORhq
以上です。
逃げてー! ワルド超逃げてー!
ピラァ級の地雷踏んで…。

少年漫画のお約束「目を閉じているキャラは怒ると開眼し強くなる」発動。
この台詞が書きたくて書きたくて書きたくて最初からこらえてました。

…やりすぎないようにしないと。

168 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/20(日) 07:14:51 ID:9G4qaJk2
投下乙です。

>>…やりすぎないようにしないと。
 いや、この場合
「おいおい、そりゃやり過ぎだろ?」
ぐらいの描写じゃないとミストの怒りを表現しきれないんじゃないでしょうか?
生きたまま内臓引きずり出すとかしても物足りないぐらい怒ってるでしょうし。

169 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/20(日) 07:51:54 ID:TBZm2vpZ
むしろワルド殺っちまっても自然なくらいかもね。
その後の展開は色々変えることになるが、
ミスト召還となればそのくらいの変化はあるだろうってコトで。

170 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/20(日) 08:12:02 ID:LKUaiQYW
ゼロの影の人、乙です!

バーン様出たのって初めてだったよな。
これからミストバーン帰還に向かって何かしてくれるのかな。
でも帰ったら預かった体の損傷の事でミストバーンガクブルだけどなw

171 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/20(日) 08:24:44 ID:2aeQ3j5w
本編での空気さを考慮すると、ここで一思いに退場させた方が情けやもしれぬ?

172 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/20(日) 10:55:52 ID:NbQg/7Kd
バーン様ならミストを叱るより凍れる時の秘法すら解除したルイズの魔力に興味を持つかもしれんな。

バーン様が肉体の封印が解けたことを知る→そばにいるキルバーンも知る→ヴェルザーも知る→自分の封印も解除させようとヴェルザーがルイズをつけ狙う→ルイズをめぐって魔界大戦勃発、とかなったりしてw

173 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/20(日) 13:56:21 ID:rdLbzMlc
例の「一対七万」……もし「七万」が「1グループ」だった場合、ザボエラのようにザラキが使えるキャラはどうなるんだろう。
たった一人の敵が立ちふさがる光景をあざ笑いながら進撃するレコンキスタ兵。
だが、その「たった一人」が何かを呟くたびに突然、何十何百の兵士が死んでいく……伝説に残る地獄絵図だな。

174 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/20(日) 13:58:37 ID:1t01Bs7D
「キィ〜〜〜ッヒッヒッヒッヒ!」と高笑いを挙げる記す事も憚られる使い魔なのですね、分かります

175 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/20(日) 15:18:18 ID:UZHSEl+w
>>173
なんという記すことも憚られる・・・
案外核心を突いてるかもな、ルーンが心臓に出るらしいし。

176 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/20(日) 17:46:16 ID:wkqLdF3s
魔法が使えない魔法使いであるルイズ、彼女を理解してくれそうなのはやはり魔法が使えないダイ(初期)かな?
人でもエルフでもないテファの境遇を理解してくれそうなのは、やはり似た境遇であるラーハルト。
無能王と蔑まれながら、その実高い能力を持ち世界を操るジョゼフは、むしろマトリフ師匠。

……最近の活躍ぶりから、ヴィットーリオにはザボエラを。

177 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/20(日) 18:28:14 ID:2j1cbAGS
>>163
おっさんとヴィンダールヴの違いは
ヴィンダールヴ 強制洗脳的なもの
おっさん ウホッいい漢・・な魅了
だと思う


178 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/20(日) 19:00:04 ID:MJHtA1F0
>>173
ドラクエで、モンスター全部が1グループじゃね?
って言う程度には無茶があるかと、戦闘画面に出てくる最大数的に
つーか、普通にイオ系でも無理だろ、偽勇者が密集状態で使っても100単位程度しか倒せてないんだし

いや、地形を変えれるくらいの範囲攻撃なら楽勝で倒せそうだがw

179 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/21(月) 09:47:49 ID:MT1gWpHH
タバサに召喚させるならやっぱ竜つながりでダイかバランか?
…と、タバサの冒険読み返してて思った。

でもきゅいきゅいと絡めないのもそれはそれで寂しいな。

180 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/21(月) 10:12:06 ID:nLT5rojN
全く関係ないが、DQ5DSの勇者の妹、デフォルトの名前がタバサだった。

181 :ゼロの影:2008/07/21(月) 10:13:47 ID:0MFXUZoC
10:30頃に第五話投下してもよろしいでしょうか。

…薄々思っていたけどラブコメのラの字も無い。

182 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/21(月) 10:24:35 ID:zRCRpYUj
>>178
前思いついた短編で
イザベラがキルバーン召喚→

タバサと共に任務(吸血鬼退治)→

エルザを罠にはめ(ファントムイレイザーとかで)思いっきり後味の悪い
殺し方をしてご満悦のキル。不快な顔をするタバサ→

「ルーンのせいかなぁ。本来の力が出せないんだよねぇ」とか言いつつ
ジョゼフ暗殺してやるからイザベラ殺してくれない?と取引を持ち出すキル。
苦悩しつつ答えを保留するタバサ→

それを見ながら「そうやって苦悩したり自分の使い魔に裏切られたと知った
人間ってどんな顔するのかなぁ〜」と心底愉快そうなキル。
この男の顔は見たくないと思いつつも母の顔を思い出してしまい
取引の事が頭から離れないタバサ→

帰ってイザベラに報告。主の前では従順なフリをしているキルにぞっとしつつ
何かの決意を秘めて退室するタバサ

みたいなのを考えたなぁ。暗いし面倒だしでそれまでだったけどw





183 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/21(月) 10:26:51 ID:zRCRpYUj
>>179の間違いだった。そして影の人支援

184 :ゼロの影:2008/07/21(月) 10:32:34 ID:0MFXUZoC
第五話 虚無の影

 礼拝堂には恐ろしい殺気が立ち込めていた。それを発する者はただ一人。主を侮辱され、怒りをみなぎらせている青年だ。
 あまりの恐怖にルイズの精神の糸はぷつりと切れ、気を失っていた。
 ワルドの本能が全力で叫んでいる。早く逃げろと。
 とにかく呪文を唱えるしかない――詠唱しかけた瞬間、予想を遥かに超える速度でミストバーンが突進してきた。
 咄嗟に後方へ跳んだが左腕を掴まれ、その瞬間凄まじい力に骨が砕けた。そのまま花でも摘むようにねじ切られる。
「ぐああッ!!」
 激痛に叫んだが、罰はまだこれからだと苛烈な眼光が告げている。引き千切った腕を床に叩きつけ、踏み躙る。
 ワルドはその隙にフライを唱え、礼拝堂の天窓を破って飛び去っていく。城壁を越え、敵の軍勢の上を飛んで逃げるつもりだ。
 このまま走っていては追いつけない。
 即座に答えを弾き出した彼はデルフリンガーを手に取り強く握り締めた。ルーンが光ると同時に走り出す。
 その速度は生物が出せる範囲を超越していた。デルフリンガーがその身を光らせ叫ぶ。
「『ガンダールヴ』の強さは心の震えで決まる! とにかく心を震わせな!」
 彼が今までガンダールヴを使わなかったのは不確定要素が多いため。
 彼なりの誇りや戦い方に加え、主の身体である以上無茶な戦い方をして器を破壊するような事態を避けようとしていた。
 しかし今、彼はリスクだけでなく手に入る力も理解した。感情のうねりによって強くなるならば暗黒闘気と同じ。
 ならば――使える。どうすれば力を引き出せるか知っている。

 城壁へ走りよるとわずかな窪みに爪先を引っ掛け、重力を無視した動きで一気に駆け上る。
 ひらりと飛び越え勢いを殺そうともせずに地に降り立ち、その勢いで数人をまとめて叩き斬った。
 そのまま凄まじい速度で周囲の敵兵を薙ぎ倒し、遠ざかるワルドの姿を追う。突如戦場に乱入した異質な存在に兵士が向かい、切り倒されていく。
 白銀の髪をなびかせ、音もなく疾走し、無造作に命を刈り取っていく彼の眼にはワルドだけが映っている。
 立ちはだかる人間達など蟻の群れ程度にしか思っていない。彼の前には反乱軍しかいないが、どちらの兵でも容赦なく切り殺すだろう。
 力任せに剣を振るうだけだが訓練と純粋な怒りによって無駄な動きが削ぎ落され、刃は的確に人間を切り裂いていく。
 恐るべき憎悪の化身に兵達は怯え、浮き足立った。
 雷のごとき速度で一直線に戦場を駆け抜けていく彼へ魔法が放たれるが、大半はデルフリンガーが吸収し、残りは片手で弾き返した。
 ワルドはグリフォンに乗って逃亡していたが、戦場を切り裂く影の姿をみとめ、身を震わせた。
 彼を殺すためだけに、周囲の者を見境なく殺し、追ってくる。
 全身を自身の血と返り血で真紅に染め、氷の面に怒りと殺意のみ浮かべて。
「ば……化物……め!」
 ワルドは己の過ちを悟った。彼の主を侮辱し、恐るべき災厄を解き放ってしまった――。
 絶対的な恐怖と共にその姿が深く深く心に刻み込まれていく。
 グリフォンが速度を上げるのを見たミストバーンは敵兵の手から投槍をもぎ取り、全ての力を込めて投擲した。
 咄嗟にグリフォンを操ってかわしたが、もし直撃していたらグリフォンごと串刺しにされていたであろう威力と速度だった。
 逃げられたことを悟った彼は次に何をすべきかすぐさま結論を出した。
 手がかり(ルイズ)の確保。
 身を翻し、来た方へ駆け戻る。
 すでに敵兵の士気はズタズタだったが、災厄の再来に極度の混乱に陥った。ただ一人の若者の姿に歴戦の兵達が怯え、叫び、逃げ惑う。
 ミストバーンは今度は城壁を駆け上がらず、ただの跳躍で飛び越えて城内に戻った。


185 :ゼロの影:2008/07/21(月) 10:39:49 ID:0MFXUZoC
 ルイズの元へ辿り着いた彼の手から剣が滑り落ち、甲高い音を立てて床に転がった。
 激しく動いたため傷はまだふさがっておらず血を流し続けている。口からも鮮血がこぼれ、床に赤い染みが広がった。
 体がろくに動かない。激怒に任せガンダールヴの力を全開にした反動がその身を食らい始めている。
「おでれーた……心臓に穴開けられたまま暴れ回るなんてよ。相棒、氷みてーな面して熱い魂持ってんだな」
 返事はない。ルイズが生きていることを確認し、呼吸を整え、少しでも体力を回復させようとしている。
 時間は稼げただろうが、敵兵がいずれやってくるだろう。
「……どうする?」
「戦い抜き、バーン様の元へ戻る」
 答えに迷いはない。デルフリンガーは満足そうに笑った。
「それでこそ相棒」
 主の元へ帰るまで諦めるわけにはいかない。このままでは死んでも死に切れない。
 ルイズが唯一の手がかりならば、なんとしてでも守り通し敵を打ち破るだけだ。
 瞼を閉ざし静かに佇んでいると、礼拝堂の床が盛り上がりギーシュが姿を現した。
「どうやって来たんだ?」
 デルフリンガーの呆れた声に、ギーシュは胸を張った。
「シルフィードでアルビオンに着いたはいいが、勝手がわからなくてね。困っていたら僕のヴェルダンデが穴を掘ってきたんだよ」
 どうやら水のルビーのにおいに惹かれたらしい。
 キュルケは敵と自身の血にまみれたミストバーンの姿に驚いたようだったが、深く追求せずに状況を尋ねた。
 答えずに脱出するよう促し、ウェールズ達が戦っている方へ顔を向け、一瞬だけ動きを止めた。そしてルイズを抱え、穴に飛び込み城を後にした。
 次にワルドに会った時は、必ず殺すことを心に誓いながら。


 彼は反乱軍の兵士達から死神のごとく恐れられた。
 影のように静かに、確実に、あらゆる命を刈り取り飲みこむ様から彼はこう呼ばれることとなった。
 ――『虚無の影』と。


 ルイズは夢の中を彷徨っていた。忘れられた池の小船の上で揺られている。もうワルドはここには来ない。憧れた貴族はいない。
 彼女が泣いていると誰かがやってきた。現れたのは、白い衣に身を包んだ青年。
 一瞬視界が暗くなり、明度を取り戻すといつの間にか二人は丘の上に立っている。
「わたしはあんたの――」
 問いかけた瞬間彼女は目を覚ました。
 風竜の上にいること、キュルケ、ギーシュ、タバサが前に腰掛けていること、そしてミストバーンの手当てをしていることに気づく。
 彼女は気を失う直前の光景を思い出し、暗い気持ちになった。
 彼は確かに心臓を貫かれたのだ。立ち上がった姿はただの幻、願望に過ぎない。

186 :ゼロの影:2008/07/21(月) 10:43:15 ID:0MFXUZoC
「ミストバーンは……?」
 答えを聞くのが怖くて恐る恐るキュルケに問いかける。
「生きてるわ」
「そう……って、ええ!?」
 慌てて身を乗り出すと心臓の位置に惨い傷が刻まれているのが見えた。だが、うっすらとではあるがふさがっている。
「背中にもあったから貫通してたんでしょうね。生命力溢れてて素敵だわ」
「生きているのが不思議だよ、まったく」
「不死身」
 彼らの言葉を信じられずルイズは泣きそうな顔をした。
「でも、わたしのせいで――」
「確認してみればいいじゃない」
 ルイズが胸に耳を当てると、規則正しい鼓動が聞こえた。ほっと胸をなでおろし、そのまま脈動を聞いているとキュルケが頬を膨らませる。
「ちょっと、いい加減離れなさいよ」
「何ですってえ!?」
 喧嘩を買いかけたルイズだが、状況を確認すると顔を赤らめ、次に蒼白になった。
 手当てするため胸がはだけられており、肌に直接頭を押し当てる格好になっていた。両手も素肌に直に触れている。
 暴れた反動か同化がさらに進んだのか完全に意識が途絶えているため気づいていないが、もしばれたら素手でバラバラに引き千切られるだろう。
 慌てて服を元に戻し、一息つく。動揺していたため脈をとればいいことに気づかなかった。
「血の雨が降るところだったわ……!」
 ガタガタ震えるルイズに対し、キュルケはどこまでも楽観的だ。
「あーらシャイなのね、それでこそ――」
「今回はこの僕が役に立ったね! 少しは見直してくれたかい?」
 キュルケの言葉を遮りギーシュが気取る。ルイズは肩をすくめ、わざとらしく頷いた。
「ええ、可愛いヴェルダンデと杖はね」
 肩を落とすギーシュ、にらみ合うキュルケとルイズに対しタバサは唇の前に指を立て、静かにするよう指示した。
 怪我人が乗っていることを思い出し、慌てて口を押さえる。

 風が頬をなでる。人間ではない存在から吹く、全てを変えていく風が。
 ルイズはミストバーンの安らかな寝顔を見つめていた。常に目を閉じているため同じように見えるが威圧感は無い。
(優しく笑ってれば――)
 軽蔑や嘲りではない笑みを浮かべたら――そう考えかけた彼女は慌てて首を振った。彼が慈愛に目覚めようものならば、間違いなく世界が滅びる。
 ルイズはふと風の中に不吉なものが混じっているのを感じた。
 召喚直後に戦っただけのキュルケやギーシュは彼が人間ではないと知っても特に気に留めてはいない。
 だが、その殺気を幾度も浴びた彼女にはわかる。単に種族が違うだけではなく、今まで歩んできた道も価値観も全く異なることが。
 彼には殺人の禁忌など存在しない。数えきれぬ戦いと屍の上に立っている。どこかで歯車が狂っていれば殺されてもおかしくはなかった。
(……でも)
 青年に得体の知れない感情を抱きながらも、彼女は首を振ってそれを追い出そうと努めた。
 手がかりを守るためとはいえ命を救われたのは事実だ。主でもない人間のために、凄惨な傷を負ってまで戦った。
 今は――今はただ、この風を感じていようとルイズは思った。


187 :ゼロの影:2008/07/21(月) 10:51:31 ID:0MFXUZoC
 ようやく暗い淵から意識を引きずり上げたミストバーンは、身体が動かないことに気づき力無い声で主に詫びた。
「申し訳ありません……バーン様」
 すると、ルイズが呆れたように息を吐いた。
「いっつも謝ってるのね。怪我したけど戦ったのはあんたの力じゃない」
 本当は、命を救われた礼を言いたかった。だがどうしても言葉は出てこない。ぎこちない笑顔を向けるだけで精一杯だった。
 一方彼は、そういう問題ではないと思いながらも頬に風を感じた。
 それは虚ろな音を立てるのではなく、静かに心を吹き抜けていった――。

第二章 影に吹く風 完


以上です。
ワルドはすぐ登場予定です。
ミストバーンはウェールズの覚悟が別の意味で台無しになるのでやりすぎないでくれ頼むから。

拳だと片っ端から戦う感じで逃げる敵を全力で追うイメージがわきにくく、
怪力+ガンダールヴで切り裂きつつ高速移動が可能なデルフ(剣)で書きました。

188 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/21(月) 10:56:44 ID:onfzF1jn
>>180
PS版からタバサだよ。小説もそう。

189 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/21(月) 12:27:54 ID:GYGSkCVx
今回はミストがかっこよかった乙


190 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/21(月) 14:45:51 ID:u2oEeV/6
>>188
いや、小説版はポピーじゃなかったか。妹の名前。

それはともかくワルドうんがよかったねにげられて(超棒読み

191 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/21(月) 15:57:57 ID:8COfEH0z
>>188>>190
正確にはポピレア・エル・シ・グランバニアだぜ
愛称がポビーな

192 :188:2008/07/21(月) 22:37:30 ID:YeAIv29i
あれ?4コマ劇場かなにかと間違えたか?

193 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/21(月) 22:50:52 ID:ylFHp+pq
ヒムは意外とゼロ魔と相性いい気がするんだが、どうだろう?

194 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/21(月) 23:07:44 ID:TaR1LUB5
人間じゃない、希少価値高い、戦闘能力最高クラス、呪文は殆どが効かない、微妙に押しが弱い。
……ヒムって、ルイズ的にアタリだな。

195 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/21(月) 23:22:37 ID:aeZYlVVM
物語にするもの最高クラスに難しい気が・・・
誰とどう絡めるのがいいのかな、ヒムは

196 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/21(月) 23:26:34 ID:kX+HsG7f
テファに召喚され、契約すると胸に「12」のルーンが…。

197 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/21(月) 23:28:11 ID:TaR1LUB5
スレタイが『ダイの大冒険のキャラがルイズに召喚されました』だから
モンスターメーカー+のキャラがジョゼフに召喚されました
天空物語のキャラがティファニアに召喚されました
ロトの紋章のキャラがヴィットーリオに召喚されました――かな?

198 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/21(月) 23:33:55 ID:csL2abgG
ヒムは適当に学院でドタバタさせて「実を言うとな、好きになっちまったんだよ。この学院の連中を…」とか言わせればおk

199 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/22(火) 00:58:29 ID:Y0dQhM0r
ギーシュとの決闘でワルキューレを粉砕した後、

「男ならこっちで来いよ、大将!!」

200 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/22(火) 06:48:55 ID:7v3KpbRq
アッー!

201 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/22(火) 08:41:20 ID:hHRxuGrz
ヒムの昔語り(新鋭騎団のこととか)をヒントに、
ギーシュがワルキューレに改良を加える、とか?

男気を説いたり(拳で)
個人的にはヒムは学園でドタバタしてればいいと思うw

202 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/22(火) 11:26:17 ID:5I2Zv0mG
そしてどう間違えたかキングギーシュになって、それ見て鼻水垂らすヒムですね
わかります

203 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/22(火) 12:53:38 ID:hHRxuGrz
思ったけど連載っていっても、原作のストーリー部分をなぞる連載もあれば、
逆に日常パートのみを抜き出して1話ずつ完結の短編の連作?みたいな連載でもアリなんだよな?形としては

204 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/22(火) 16:01:25 ID:ItijK6w/
ゼロ魔の誰がヒムと拳で語り合えるのだ?

>>203
完全オリジナルもあれば、原作のサイトを召喚キャラに置き換えただけのもある。
それはまだいいが、ひどいのは原作の文章をほとんどそのまま写してるやつだな。

205 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/22(火) 17:46:01 ID:+JsWg0LO
>>201
チェスの駒風味のワルキューレか・・・
格闘主体のポーン、機動力重視のナイト、全身刃物なビショップ、巨体でパワー重視のルーク、
ここまではいいとして、クイーンはどうやればそれっぽくなるんだろうな。
防御捨てまくって速度だけを追いとめるべきか?

キングはギーシュ本人でいいだろう、キングじゃなくてハドラーのほう目指すようにヒムがしつけさえすれば。

あ、後これだけだと数が合わないな、しかし重複駒作ると余計キングっぽくなってしまうし・・・
ルークがでかい分消費が大きいって事でごまかすか。

206 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/22(火) 17:55:29 ID:REes/hac
ヒムはギーシュにハドラーのような指揮が出来るよう教育するつもりだった――だが現実とは無情なものである。
出来上がったのはキングマキシマム二世であった。

207 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/22(火) 18:08:25 ID:v2MphVvW
>>205
折角なので、半身が高温半身が冷却されてるフレイザードっぽいのと
多数の腕を持つワルキューレでハドラー作品コンプリートな感じにw

208 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/22(火) 18:13:02 ID:hHRxuGrz
>>205
数が合わないのは改良した分精神力消費が増えて
一度に錬金できる数が減ったとかそれらしいこと言わせとけばおk

>>207
多数の腕ってなんだっけと思ったらバルトスかw
フレイザードっぽいものを錬金するとしたらトライアングル以上じゃないと無理っぽくない?

209 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/22(火) 21:25:39 ID:ehr30De9
バルトスの名前で思い出した疑問があるのですが。
まさかいくら魔族でも腕が6本もあるのはいないよね?
あれってやはり人骨を合体改造でもしたんだろうか?

210 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/22(火) 21:42:44 ID:CNPKh3n5
天外2の死神兄弟みたいな感じで、複数の骨を組み上げて作られたのがバルトス……ゴーレムの一種、みたいなものだったのか?
でもそうすると、ハドラーの精神の一部が反映された存在には思えないし……フレイザードや親衛隊とは関係ないのか?

211 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/22(火) 22:16:04 ID:w8NP7Hsr
ドラクエ6に腕が4本ある「まおうのつかい」というモンスターならいる

212 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/22(火) 22:17:07 ID:w8NP7Hsr
アームライオンもいたわ

213 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/22(火) 22:56:47 ID:SQ9PdO3J
>>210
だけどハドラーが死んだらバルトスも死ぬんだし
バルトスが作られた時期のハドラーはそこまで性格悪くなかったんじゃない?

214 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/22(火) 23:03:45 ID:mf3MRAgZ
残虐ではあるが卑劣ではなかったとかアバン先生も言ってたしな。

215 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/22(火) 23:16:08 ID:mLs7bs8P
バルトスを召喚した場合、ゼロ魔世界ではゴーレムと認識されるん?それともガーゴイルなの?

216 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/22(火) 23:17:28 ID:0xZknQ8b
>>215
普通にゾンビだろ

217 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/22(火) 23:21:22 ID:F0JEdWxj
まあぶっちゃけると腕が6本の骸骨だしな
あれって眼はどうなってるんだ?眼球あるの?

218 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/22(火) 23:22:30 ID:tmB8pfzf
>>206
ギーシュが認識してワルキューレに命令→ワルキューレ動くとか、まさにキングと同じ能力だしなぁ。


219 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/23(水) 04:24:38 ID:wYJxWe5l
>208
フレイザードを構成しているのはたしか、
岩石魔人?+フレイム+ブリザードだっけ?
ゼロ魔に当てはめれば土+火+水で最低でもトライアングルは無いと無理だな

スクエアのオスマンなら創れなくは無いかもしれん
問題は創造主の性格を模した事でセクハラに目覚めそうなことか

220 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/23(水) 08:49:43 ID:r74B0KIX
>>219

セクハラまじん 1ひき
ロングビル 1ひき

セクハラまじんはロングビルのおしりをさわった

ロングビルはにっこりほほえんだ

セクハラまじんはおびえている

セクハラまじんはまひしてしまった


こうですか? わかりません。

221 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/23(水) 11:52:11 ID:Gr3LXBV8
オスマンがスクエアっていう明確な描写あったか?
ギトーがスクウェアってのは14巻で「風の遍在はスクウェア・スペル」という情報が出たことで、
間接的ながらもほぼ確定した事実柄として扱ってもよさそうに思うけど……。

222 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/23(水) 15:00:32 ID:96UdTwFJ
>>221
いや仮にも学園の最高指導者で「偉大なるオールド・オスマン」
といわれている奴がスクウェアじゃ無いというのはないだろ
300年も生きてるかもしれないらしいし

223 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/23(水) 16:35:20 ID:p7oW90Rp
明記はされてないものの、これでラインやトライアングルだったらソレはソレで逆に凄いなw
ただ、実力があるかは少し疑問だけどね……あれ? 考えてみたら魔法らしい魔法ってほとんど使ってないよーな?

224 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/23(水) 16:46:59 ID:nygiQLxd
能ある鷹はなんとやらってやつじゃね?

225 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/23(水) 17:53:36 ID:5JslispH
オスマンは実は300年どころか、6千年生きてる記す事すら(ry なやつでも不思議はないなw

226 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/23(水) 19:31:47 ID:GAvbxly5
長く生き過ぎたせいでトコロテン方式で若いころ覚えたスペルがですね

227 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/23(水) 20:19:47 ID:TyzVLb2Z
一応、地属性なのは公式ででてるが、たしかに、ランクは語られた無いね。

228 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/23(水) 20:26:21 ID:r74B0KIX
>>226
あっちは1051歳だ。

229 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/23(水) 20:54:17 ID:gbaBPzbb
確か、人間の脳が記録できる量って120年分くらいって聞いたような。
まぁリアルの話してもしかたがないけどさ。

230 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/23(水) 23:38:59 ID:hq/6Tlfg
カラダが覚えてるんだよ

231 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 10:05:36 ID:49N4iIYe
それだけだと、なんか卑猥に聞こえるなw

232 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 10:35:25 ID:RPf/7hI1
しばらく来ないうちに結構進んでた。orz

>>133
>wikiの人
鰐男氏の挿絵、色数多くないからjpgよりpngの方が軽くなっていいんじゃね?(50kb程度)
何より、折角の挿絵が画質落ちた上に180kbぐらいになるんじゃ勿体ないし。
変換もIrfanViewでググって一番上に来るページからDLして、ファイル>一括変換で簡単ですよ。

233 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 14:17:51 ID:vQ8SpfQM
遅くなりましたが、獣王9話と影9+10話の更新しましたー!

さらに>>232のアドバイスに従い、挿絵の形式をpngに変更して差し替えてあります

234 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 15:00:36 ID:Jb9hBH4A
>>233
乙です〜ン

過去ログ保管しないの?って聞こうとして一旦まとめ確認したら直ってたw
こちらも乙です

235 :ゼロの影:2008/07/24(木) 17:43:34 ID:8+5/R4lx
まとめの人乙です!

第三章の第一話、18:00時頃に投下予定です。

236 :ゼロの影:2008/07/24(木) 18:00:27 ID:8+5/R4lx
第三章 影差して

第一話 鳥の翼

 周囲の好奇の目に関わらず、いつものように授業中爆発を起こしたルイズはオスマンに呼び出された。
 王女とゲルマニア皇帝の結婚式の際に詔を読み上げる巫女として選ばれたのだ。
 『始祖の祈祷書』を渡され、肌身離さぬよう言われた彼女は誇らしい気持ちと詔など考えられないという戸惑いでいっぱいだった。
 ルイズが頭を抱えて悩んでいると、キュルケとギーシュ、そしてシエスタが近づいてきた。
「宝探しにいかない? 帰る手がかりを探してるんでしょ、フーケの時みたいなマジックアイテムもあるかもしれないわ」
 ルイズは気分転換のためあっさり了承し、ミストバーンの方をちらりと見た。
 胡散臭いが、今学院にいても状況は好転しそうにない。
 それならばわずかな可能性に賭けてみるのもいいだろう――そこまで考え、彼は複雑な気持ちになった。
(フン……まるで正義に目覚めた者のような言い草だな)
 それほど精神的に追い詰められていることに気づかぬまま頷く。
 ギーシュは異性にモテたいという願望を丸出しに参加を申し出、シエスタも連れて行けと叫ぶ。ギーシュ達は粗食に耐えられないだろう。
「でも遺跡や廃墟には怪物がわんさかいるわよ?」
「じ、自分でなんとかします」
 守ってもらいたいと思ったのだが、自分の手足を動かせと言われそうなため内心を隠しつつ答えたのだった。
 大きく頷き、キュルケが出発を告げた。

 廃墟となった寺院の近くの木の陰にタバサは隠れていた。
 突然爆発音と共に門柱の隣の木が発火し、異形の怪物たちが飛び出してきた。二足歩行の巨大な豚の姿――オーク鬼だ。
 騒ぎ合うオーク鬼達を見ながらタバサが使う呪文を検討していると、青銅の戦乙女達が姿を現した。焦ったギーシュが先走ったのだ。
 ワルキューレが突進し、槍を突き立てるが致命傷にはならない。周りのオーク鬼の棍棒が華奢なゴーレムを吹き飛ばし、叩き壊した。
 タバサのウィンディ・アイシクル、キュルケのフレイム・ボールが放たれるが二体葬ったにすぎない。
 さらに数体が爆ぜるがまだ多くが残っている。
 奇襲の失敗を悟ったオーク鬼達は人間のにおいを探り、走り出す。
 すると若者が影の中から姿を現した。剣を背負っているものの抜こうとせずにオーク鬼達の前に立ちふさがる。
 彼らの鈍重な頭に冷気が忍び寄る。獣の本能が今すぐ逃げろと大音量で叫んでいる。
 だが、それに従うだけの賢明さを持たぬオーク鬼達は突進した。
 先頭の一匹が棍棒を振り上げ、振り下ろそうとして止まる。単純な拳の一撃が頭部に叩きこまれ首の骨をへし折ったのだ。
 どうと倒れた巨体に目もくれず、次の一匹に低い姿勢で蹴りを放つと足を砕かれたオーク鬼がしゃがみこむ。その脳天へ踵落としが炸裂し、頭部を弾けさせた。
 一斉に襲いかかっても時の流れそのものが違うかのように優雅にかわされ、背筋の寒くなるような膂力の犠牲となる。
 過ちを悟る前にオーク鬼達は全滅した。



237 :ゼロの影:2008/07/24(木) 18:07:18 ID:8+5/R4lx
 戦闘を終え、キュルケ達はギーシュを睨んだ。作戦ではヴェルダンデの掘った落とし穴まで誘い込み、用意していた油に引火させ燃やしつくすはずだった。
 膝をつきうなだれるギーシュに影が差す。その主は地についたギーシュの手を踏みつけた。
 ぐりぐりと踏みにじり、氷雪の視線でギーシュを貫く。シエスタが止めようとするのをキュルケとタバサが制した。
「……人形が無ければ何もできんのか?」
 背を向けるミストバーンと、震えて唇を噛みしめるギーシュ。
 今彼らに話しかけるべきではない気がした。

 結局宝は見つからず険悪な空気になりかけた所でシエスタが食事の準備ができたことを告げた。
 ギーシュなどはシチューのあまりの美味さに感動し、
「この肉は……この肉はどうしたアァァッ!」
 と叫びルイズ達から「うざったい!」と一喝された。
「オーク鬼の肉ですわ」
 ぶほっと吹いたギーシュを汚いと責める余裕もなく、キュルケとタバサは固まっている。
「じょ、冗談です! ホントは野ウサギの肉です」
 彼女の慌てる顔で場が和みかけたが成果はゼロのままだ。
 宝は見つかりそうにないため次で最後にしようとギーシュが促すと、キュルケは一枚の地図を選んだ。
「これに決まりよ! お宝の名は……『鳥の翼』。場所はタルブの村ね」
「『鳥の翼』ってまんまじゃないかね」
 呆れるギーシュとは対照的に、シエスタがシチューを吐き出した。タルブは彼女の故郷らしい。
 その後シエスタに説明を受けたが要領を得ない。『鳥の翼』は一度使ったらなくなるものらしく使わせてもらえなかったのだ。
「ある日村に現れた私のひいおじいちゃんが、持っていたものらしいんですが……」
 真相を確かめるべくタルブの村へ飛び、シエスタの家に向かう一行が出会ったのは意外な人物だった。
 すらりと伸びた肢体が眩しい美女――盗賊のフーケだ。
 キュルケとタバサが杖を構え、ミストバーンが前進すると彼女は降参したように手を上げた。
「待ちな、あんたらに敵対する気はないよ」
 全く信用せず容赦なく攻撃を叩きこもうとするミストバーンへ、冷や汗を流しつつ敵意のないことをアピールする。
「ほんとーだって! 『虚無の影』相手に喧嘩売るほど命知らずじゃないから!」
「虚無の影?」
「そこの美肌につけられた名さ。怪しい奴だとは思ってたけど、まさか五万人の敵の中に突っ込んで暴れるなんてね」
 本人はワルドへの怒りに我を忘れはっきりとは覚えていない。だが兵士達の方は忘れたくとも忘れられない。
 たった一人の若者が影のように音も無く命を奪っていくのだ。
 飛び散る鮮血に白い衣と髪が映え、この世のものとは思えぬ姿だったと生き残った目撃者は語る。
 多くの人間に地獄を見せ恐怖の淵に叩きこんだ自覚など持たない彼は他人事のように聞いている。
「とにかく! 大人しくするから戦ったり通報したりはやめとくれよ」
 彼女は一度田舎にひっこむことを決意したらしい。破壊の筒はガラクタで復讐も果たせず、少々疲れたのだと言う。
 仮面の男からの報酬でしばらくは盗賊稼業も休んで大丈夫――肩をすくめる彼女に一同は疑わしげな視線を向ける。
「実は『鳥の翼』を狙ってんじゃないの?」
「ははっ! お偉い貴族様のうろたえた顔は見たいけど、平民から盗む気はないね。……まあ『鳥の翼』にはちょいと興味があるけど」
 早く実物を確認するためにもひとまず休戦するしかないようだ。

238 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/24(木) 18:13:02 ID:XYiHLcI3
支援

239 :ゼロの影:2008/07/24(木) 18:14:55 ID:8+5/R4lx
 フーケを加え歩いていくと、村の少年が駆け寄ってきた。
「おねえちゃん!」
「ねえ、ちゃん?」
 鼻で笑ったキュルケをフーケが殺気のこもった眼で睨みつけるが、少年がはしゃぐと二人とも表情を緩めた。
 ルイズやシエスタも笑い、タバサでさえ口元はかすかに綻んでいる。ギーシュはいつの間にか通りすがりの女性と話に花を咲かせている。
 和やかな空気の中で彼一人だけが浮いていた。

 シエスタの家に到着し、さっそく秘蔵の『鳥の翼』を見た一行は何とも言えぬ表情を浮かべた。
 文字通り鳥の翼が数枚箱に入っているだけだ。ルイズが一枚手に取り首をかしげている。
「名を知る者に与えよ、とひいおじいちゃんは言っていました」
「……キメラの翼だ」
 呟いたミストバーンにシエスタが驚いた。
「その通りです! どういった効果があるんですか!?」
「一度行ったことがある場所に移動できる。心に思い浮かべて――」
 言うなりルイズの体がふわりと浮き上がり――彼女は豪快な音と共に天井に激しく頭をぶつけた。
 床に落下し、後頭部を抱えてうずくまる彼女を見てシエスタはうろたえた。
 キュルケとフーケは笑いをこらえるのに全力を傾け、タバサもわずかに口元を緩めている。
 気まずい空気を破ったのはデルフリンガーとギーシュだった。
「でーじょーぶか? 痛そうな音だったなーオイ。見ろよ、天井にでっかいひびが入ってら」
「ちゃんと注意書きをつけておくべきだよ。室内で使うべからずってね」
 間の抜けた姿を見られた彼女は無言で立ち上がった。数秒後、ギーシュとデルフリンガーの悲鳴が室内に響き渡った。

 『鳥の翼』ことキメラの翼を全て譲られた彼は思案に暮れていた。
 シエスタが何の見返りも求めず純粋な好意で提供したためだ。
 それに、彼が人間でないと知っていながら普通に接している。怯えたのも最初だけだ。
 同行しようと思ったのも彼が恐怖すべき存在か見極めようとしたためであり、結論は
「人間じゃないってだけで怖がるのはおかしいって思ったんです。人間の中にだっていい人も悪い人もいますから」
 というものだった。そして耳が尖っているというだけで怯えたことを謝っていた。
 ギーシュ達も彼女と同意見らしい。
 アルビオンでの戦いを知らないからそう言っていられるのだが、あっさり受け入れているようだ。
 奇妙な人間達だと思いつつ、彼は手に入れたキメラの翼を眺めた。
 譲られた物の価値以上に、異世界とのつながりを――帰還の可能性を信じることができたのが大きい。
 思索にふける彼の、夕日に赤く染め上げられた草原に佇む姿は絵画を思わせた。
 食事ができたことを知らせにきたルイズがその光景に見とれたように息を呑んだ。言葉が自然と口からこぼれ落ちる。
「とっても……きれいね」
 普段何の意識もせずあって当然だと思っている太陽。しかし、このような時に実感するのだ。太陽は世界に欠かせぬものだと。
 この光景を決して忘れないだろう――ルイズは内心でそう呟いた。
 無言で頷いた彼の手がゆっくりと太陽に伸ばされる。まるで美しい宝石に触れようとするかのように。
 彼女は声をかけようとしたがその背に飲み込まざるを得なかった。

240 :ゼロの影:2008/07/24(木) 18:23:25 ID:8+5/R4lx
「バーン様も……美しいとお思いになるだろう」
 呟きはルイズではなく己へ向けられているようだった。
(あの御方の大望が叶えば……同じ光景を見られる)
 絶対にその日を来させてみせる。
 そしてその時主の傍らに立ち、主と同じ光景を眺めるのは彼しかない。
 元の世界へ一歩近づいたと言う想いが彼を感傷的にさせていたのかもしれない。
 主を思わせる赤く燃える太陽と、同じ色に染まった草原は心に深く刻み込まれた。

 平穏の日常の中へ戻ろうした彼らにアルビオンの宣戦布告の報が入った。
 戦の準備はできておらず、制空権が奪われている。現在タルブの村が焼かれていることを聞きオスマンは苦い顔をした。
 どうしようもないため王宮の使者と共に沈痛な溜息を肺から絞り出す。
 だが、彼は気づいていなかった。オスマンの居室を尋ねた使者の異常な慌てぶりに、ルイズが好奇心を発揮して話を盗み聞きしたことを。
「タルブの村が襲われているなんて――」
 ルイズは途方にくれたように地面を眺めた。穏やかな時を過ごした村が踏み荒らされるのを止めたい。
 だが手紙の時と違い、彼女自身が対処せねばならない問題ではないのだ。当然青年も余計な行動はしないだろう。
 しかし、予想に反して彼は行くつもりのようだ。
「まさか戦う気? あんたは人間のことなんかどうでもいいんでしょ?」
 沈黙とともに頷く。
 他の状況ならば人間が何千人何万人殺されようと関係ない。学院やルイズに害が及ばない限り戦わないだろう。
 だが、帰還の可能性を見せた場所を何も知らぬ人間が踏み荒らすのは気に食わない。
 そんな感傷だけでは動かないが、アルビオン軍の中にワルドがいる可能性を考え、行くと決めた。
 元の世界に戻る前に主を侮辱したワルドだけは必ず殺すと決意していたのだ。
 そこへどうやって嗅ぎつけたのか、ギーシュが全力疾走してきた。ぜえぜえと息を切らす彼の足元にはヴェルダンデもいる。
「ぼ、僕も連れていってくれ!」
 ギーシュがそう言うのを聞いてはルイズも退けない。
「わたしだって行くわ」
 いざという時に戦わなければ貴族が貴族たる理由がなくなってしまう。
 彼女の決意は氷のような声で却下された。
「お前は来るな」
 彼女の身を案じているわけではなく、手がかりが失われては困るということだ。
 言い募ろうとするルイズの前にギーシュが立ち、真っ直ぐ彼を見つめる。
「僕が……何とかする」
 ギーシュは無言の圧力を感じ取っていた。“任せろ”と宣言しておきながらルイズを守りきれなかったら生命と誇りが危機にさらされる。
 それでも、ルイズの矜持を守ろうとする意志を尊重したかった。同じ貴族なのだから。
 これ以上時間を失うわけにもいかず、ルイズとギーシュを連れて彼はキメラの翼を使った。



241 :ゼロの影:2008/07/24(木) 18:28:29 ID:8+5/R4lx
 タルブの村は混乱と悲鳴の叫びに満ちていた。
 すでに多くの人間は避難しているものの、逃げ遅れた者達がいる。親とはぐれた少年が泣きながら彷徨っていると、杖を持った人影が見えた。
 怯えて立ち尽くす彼に魔法を唱えようとはせず、手を差し伸べる。涙を流して動けない彼の髪をくしゃくしゃと手でかき回す。
「男の子だったらビービー泣くんじゃないよ。こっちに来な、あんたの親御さんもいる」
 泣きやんだ少年は涙を振りはらい、ようやく相手を認識した。最近村に訪れ、子供達の世話をしている女性だ。
「おねえちゃん!」
 もう一度頭を乱暴に撫でた彼女は少年を避難場所まで送った後引き返した。
 フーケは自嘲の笑みを浮かべていた。盗賊のくせに人助けなど、自分でも可笑しくなってしまう。
(フーケ様ともあろうものが、焼きが回ったのかね……?)
 それでも、年端もいかぬ子供を見捨てるほど非情にはなりきれない。
 家族の顔を思い出した彼女は頭を振り、なるべく被害を抑えようとゴーレムを出現させた。

 タルブの村に降り立った三人は空を見上げた。多くの竜騎兵、そして艦隊。巨大戦艦『レキシシントン』。
 竜騎兵達がこれ以上被害を振りまく前に、速やかに旗艦を落とさなければどうしようもない。
「どうやってあれに近づくの?」
 無言で新たなキメラの翼を取りだす。
 目に見えている場所ならば瞬間移動呪文の要領でいけるはず。キメラの翼で試したことは無いがやるしかない。
 自分も乗りこもうと意気込むルイズとギーシュから身を離し、淡々と呟く。
「お前とルイズは残れ」
 足手まといということか。悔しさに身を震わせるが一刻の猶予もない。
 非常時に備えて渡されたキメラの翼をしぶしぶ受け取り、頭を切り替える。
 ミストバーンがキメラの翼を使って上空に見える『レキシントン』号へと飛び、ギーシュとルイズは駆け出した。


242 :ゼロの影:2008/07/24(木) 18:29:47 ID:8+5/R4lx
以上です。

コルベール出番削られたよコルベール

243 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/25(金) 01:37:28 ID:papgGX/8
投下乙です
ミストがちょっとまるくなってるけどあの人殺るときは殺っちゃう人だからなー
しかしこれはまちがいなく次回は血の雨が降るw

244 :爆炎:2008/07/25(金) 10:17:41 ID:oCZEHA1h
影の人乙です。筆が早くてウラヤマシス。
人いない隙に俺もちょっと通りますよ
10:25頃に投下予定

245 :虚無と爆炎の使い魔:2008/07/25(金) 10:25:27 ID:WtigCKgp
ではいきます

 ――プロローグ――

 とある広い屋敷の中にある広場にて一人の少女が魔法を唱えた。
 ――結果は爆発。それを横目で見ていた使用人達は互いにひそひそと囁き会う。

「母親のカリン様も、長姉エレオノール様、次姉カトレア様も優秀なメイジなのにねぇ?」
「魔法が全て失敗する貴族なんて聞いた事もないね。……本当に貴族なのかしら?」
「もしかして拾わ…むぐ」
「滅多な事を言うな!誰かに聞かれでもしたら打ち首もんだぞ」

 そんな使用人達の言葉を少女は気にも留めず、淡々と魔法を唱え続けた。だがその努力が報われる事は無く、地面のあちこちに穴を作っていくだけである。
 それでも彼女はいつもの広場で魔法を唱え続けた。雨の日も、風の日も。
 魔法が使えない事で母や長姉に叱責を受け、悲しみの涙を流した日もそれが止む事は無かった。どこかで泣き腫らしたのであろう、赤い目をしながらも少女は、それでもいつの間にか広場で来ては、いつもの様に魔法を唱え始めるのだ。
 最初は影で笑っていた使用人達は、次第に何も言わなくなっていった。その心の内は、少女のひたむきさを哀れむ者。心の中でひっそりと応援の声を上げる者。反応は様々である。
 ある日、彼女の行動にどうしても疑問を覚えた使用人の一人が彼女に質問をした。「何故そこまでするのか」と。
 少女は答えた。「魔法が使えない者など貴族では無いわ。いざという時に民を守る力が無いのならそれは貴族では無い」
 だがその言葉を聞かされても、この物好きな使用人の心は晴れなかった。少女に追って質問する。

「ですが、それは戦があった時のみでございます。一生を平和に暮らした貴族の方々も少なくはありません。それに……」

 少しだけ言葉を発する事をためらった後、使用人が続けた。

「魔法の才無くも、自らの政治的手腕や商才を磨き、名誉ある位まで上り詰めた貴族の方も沢山いらっしゃいます。それに貴方はヴァリエール家の三女。戦に出る様な事などほぼ無いと思うのです。貴方がそこまでして魔法にこだわる理由とは一体何なのですか?」

 黙ってしまった少女を見て使用人は、出過ぎた事を言ってしまったかな?と思った。誰かに知られれば処罰も免れないだろう。
 だがそれについては使用人はあまり気にしていなかった。どうせいつかは家業を継がなければならない身である。少しぐらい早まった所で同じであろうと考え、少女の返答を待った。

 物好きだな、とは思う。この少女がやっている事は単に貴族の気まぐれなのかも知れない。だが――
 
 自分はこの報われぬ少女を哀れんでいるのだろうか?たかが使用人風情が、大貴族の娘に自分と同じく他の『道』もあるという事を説きたいのだろうか?そんな思いが胸の内に湧き起こる。

 考え込んでいた少女がようやく声を上げた。はっきりと通る、意思の篭った声だった。
「――――」
 少女の意識はそこで途切れた。


246 :虚無と爆炎の使い魔:2008/07/25(金) 10:26:25 ID:WtigCKgp
 ――第4話――

「……何でだっけ?」
 ついぞ見た夢の内容にルイズは疑問符を浮かべる。だがその問いに答える者は誰もいなかった。仕方なく自分で答えを導き出そうと、まずは襲い来る眠気に抗おうとする。が、
「まぁいいか」
 ルイズは早々に諦めた。夢は確か数年前の内容だ。直前のやり取りから察するに何か青臭い発言でもしたに違いない。そう思い直して再び目を閉じようとする。
「……?」
 上瞼が着地するぎりぎり前にルイズは、部屋に射し込む陽光がやたら明るい事に気付いた。そこから導き出される結論をしばし黙考した彼女が慌てて跳ね起きる。
「――ってこのまま寝たら遅刻じゃないのよ!」
 そう叫び、威勢良く立ち上がった。が、その瞬間全身に違和感を感じる。身体の節々がやたら熱く、筋肉がパンパンに張っている。
 跳ね起きた姿勢のままルイズは凍りついた。全身を脂汗が浮き出し、そして――

「痛だだだだああああ〜〜!!」

 昨日ルイズが召喚した使い魔との激戦は、彼女の身体を限界以上に酷使していた。
 いかな優秀な水メイジであろうと後から来る痛みは直せない。全身を襲う強烈な筋肉痛にルイズがベッド中をのたうち回った。

 ――シーツが皺まみれの無残な姿に変えられた頃、ようやくの思いでルイズは起き上がった。芋虫の様な動きでよろよろと着替えを完了させる。
 おぼつかない足取りで部屋を出たルイズは、廊下を挟んだ向かい側の部屋の主とばったり対面した。
「お、おはよう。ルイズ」
 対面の主がにこやかに微笑む。が、いつもと違いその顔はぎこちなさに満ち溢れていた。
 笑うだけで精一杯といったその笑みを見て、今の自分と同じ状態なのが一目で判ったルイズは挨拶を返す。
「おはよう。キュルケ。……その分じゃあんたもそうみたいね?」
「当たり前じゃない。……っていうかあんな戦いの後に何も無い方が不思議よ。コルベール先生も未だ回復してないって聞くし」
 キュルケの言葉にコルベールの名前が出た瞬間、ルイズは沈んだ表情になった。自分をかばおうとしてくれた教師の姿が胸に浮かび、申し訳無いという気持ちが湧き上がってくる。
 そんなルイズの顔にキュルケは慌てて取り繕おうとした。
「だ、大丈夫よ。どうやら精神的なものらしくて命には全然別状無いって聞いたから。貴方が無事契約できて先生もきっと喜んでる筈よ」
 そこで一旦切ると笑顔を作り、ルイズの顔を覗き込んでウインクをした。
 それを見てようやく顔を上げたルイズに満足すると、諭すような口調で続ける。
「……だ・か・ら!先生の為にもそんな顔しない方がいいわよ。……ついでに後でもう一度くらいお見舞いに行ってあげなさいな」
 キュルケの口調はまるで子供に言い聞かせる母の様であった。いつものルイズなら「人を子供扱いするな」と、まずは反発して来るに違いない。そんないつもの『お約束』をどこか期待しつつキュルケが反応を待つ。



247 :虚無と爆炎の使い魔:2008/07/25(金) 10:28:28 ID:WtigCKgp
「……そうね。そうするわ。……あ、ありがとう、……キュルケ」

 だが今日は違った。昨日までは考えられない事であったがルイズは素直にキュルケに感謝の言葉を述べたのである。
 顔を赤くしながら礼を述べたルイズを見て逆にキュルケが慌て出した。ルイズに向けて手を伸ばすと、赤くした顔で「い、いいいいいのよ別に」とそっぽを向く。
「か、かわいい……」
 しおらしい反応を見せたルイズへの素直な感想を独り洩らすキュルケだった。

 ――あのルイズが私に感謝の言葉を述べるなんてね――

 ようやく落ち着いて一息漏らすと、ルイズとの今までの関係を思い出したキュルケがしみじみとする。
 入学してからこっち、事ある毎に二人は衝突した。性格が水と油な上、家が仇敵同士だった事もあり、お互い最初の頃は本気で嫌っていた。

 ――……いつからかしらね?――

 先に態度を変えたのはキュルケだった。性格が合わないながらも、誇り高く、常に努力し続けるルイズの姿にいつしか胸中で応援する様になっていた。
 とは言えそれでこれまでの関係が急変した訳ではない。ルイズへの見方が変わっても、あくまで表面上はルイズをからかっている様な言い回しをする。
 だがその内容はこれまでと違ってルイズを励ましたりハッパを掛ける、といったものになっていた。
 当然の事ながらルイズはそんなキュルケの言外の気持ちには全く気付かず、その後も(表面的に)対立を繰り返す事になる。
 こういった回りくどい方法をとったのは本人曰く「ルイズの反応が面白いから」
 だが本当の所は『急に素直に接するのが照れくさい』というのが最大の理由であった。
 と言う事で、そんな傍から見れば下らない理由で、毎日の様に喧嘩をする二人を眺めていたタバサはやがて『二人は似たもの同士』という結論を出すに至ったのである。
 しかしそんな関係も昨日を境に変化が生じた様だった。

 ――まあ当然か。あの使い魔にとっては貴族だろうが平民だろうが等しく関係無いんでしょうし……。あんな状況で『家が仇敵』だから協力しないなんて言ってられないものね――

 キュルケはそう結論づける事にした。それほど、昨日の体験は強烈なものだったのである。
 ルイズがハドラーを召喚してから戦いが終わるまでの間、あの場にいた者が受けたプレッシャーは並大抵のものでは無かった。それは生物としての根源から来る恐怖感である。

『魔法の有無など関係無い。あの男が本気になれば我々人間など皆平等に無にされるのだろう』

 全員が等しくそういった思いを味わった。
 そんな中をルイズ達は戦った。貴族はおろか、始祖の時代から6000年もの間『この大陸を支配している』という人間としての価値観を根こそぎ剥ぎ取られそうな空間にて共に協力し合い、試練に打ち勝とうとした。
 一つの目的に立ち向かおうとした三人にとって、下らないわだかまりなどいつの間にか無くなっていた。そしてついには契約を成功させる。
 自覚こそ無いものの、あの一日を生き抜いた三人の関係は、今や幾多の戦場をくぐり抜けた戦友のそれへと変化していた。
 表向きこそ変わらないものの、以前と違ってルイズの方からも心の深い所では二人を信頼する様になっていたのである。



248 :虚無と爆炎の使い魔:2008/07/25(金) 10:29:11 ID:WtigCKgp
「それにしても……」
 ふっ、と目を柔らげたキュルケが独り呟く。
「……ずいぶん可愛くなっちゃったわよねぇ」
「……何の話よ?」
 キュルケの呟きは聞こえていたらしい。ルイズがしかめっ面で問い正した。
「貴方もちょっとは魅力的になってきたって事よ。ルイズ」
「いきなり何言い出すのよ……気持ち悪いわね」
「……まあこっちの魅力は相変わらず絶望的な様だけど」
「喧嘩売ってるのかしら?キュルケ」
 急に自分を褒め出したかと思うと、今度は胸を覗き込むキュルケにルイズは目元をひくつかせる。
「ふふっ、冗談よ。それじゃ先に行くわね」
 当の本人はどこ吹く風だった。
 にこりと微笑んだキュルケはそう言って素早く切り上げると、ルイズに背を向けた。使い魔のサラマンダーを従え、食堂の方向へと向かって行く。
 筋肉痛にはもう慣れたのか、それともやせ我慢なのか。その足取りは、普段通りのキュルケだった。
 そんなキュルケの一方的なやり取りに、ルイズはすっかり言い返す時期を逸してしまった。キュルケの背中を見つめ、喉まで出かかった言葉が虚しく沈んでいく。
「貴方も早く『彼』を連れて来ないと遅刻するわよ〜」
 10メイル程先に進んだキュルケが振り返らないまま、ルイズに忠告した。
「わかってるわよ!馬鹿!」
 やり込められたルイズが半ばやけくそ気味に叫ぶ。その声を聞いたキュルケは愉快そうに後ろ手を振ると、そのまま階段を降りて行った。
 キュルケが去った後も、若干頭に血が上っていたルイズはその場に佇んでいた。心を落ち着かせる様、自分に言い聞かせてようやく再起動する。
「いけない!本当に遅れちゃう」
 ルイズは焦るものの、いつまで経っても肝心の使い魔は起きて来なかった。収まった筈の血圧が再び上昇していく。
「……もうっ、ハドラーの奴……。ご主人様より起きるのが遅いなんて、使い魔失格よ!」
 そうは言ってみたルイズだが、同時に仕方無いかな、とも思う。
 あの使い魔の力に比べれば、自分など蟻の様なものだ。契約はできたものの、やはり今のままでは本当の主従関係には程遠い。そう考えて、ついため息を零す。だがその表情は沈んではいなかった。
「まあ、今の私じゃ仕方無いか……。でも、まだこれからよ。見てなさい!いつか成長した私を見て「お前に従おう」って言わせてやるんだから!」
 拳を握ってそう宣言し、気を取り直したルイズが自分の隣の部屋の入り口に立つと、そのまま扉を軽くノックした。

  この扉の向こうがハドラーの部屋だった。当然これには理由がある。
 ルイズは当初、『使い魔と主人は一心同体』の教えを律儀に守り、自分の部屋にハドラーを住まわすつもりだった。
 だが、ルイズに案内されて寮内を歩くハドラーを見た同じ階の生徒達が、詳しく言えば、昨日のハドラーによる大惨事を直に『体験』した者達が、皆一斉に「部屋を変えてくれ」と直訴したのだ。
 その為にルイズの周辺の部屋はキュルケを除き、軒並み空室となった。そのおかげで手近な部屋をハドラーに貸し与える運びとなったのである。
 ちなみに、それでも最初、ルイズは自分の部屋に住まわせようとしたのだが、ハドラーの身体がかなり大きい事、二人っきりで一つの空間にいると心理的なプレッシャーが半端無い事からすぐに断念した。



249 :虚無と爆炎の使い魔:2008/07/25(金) 10:30:00 ID:WtigCKgp
 ノックにも返事が無かったので、ルイズが試しとばかり扉を軽く押してみた。ギイ、と扉が開く。鍵は掛けていなかったらしい。
「ハドラー……。入るわよ?」
 一つ断るとルイズが部屋に入った。
 部屋の中は全体的に薄暗かった。たが締め切ったカーテンからは幾筋かの陽光が床を照らしており、見えない訳では無い。
 中に入ったルイズは部屋の様子が昨日と違う事に気付いた。

 ――部屋の中はからっぽだった。普段なら入ってすぐ目に入る筈のベッドやテーブル、クローゼット等が軒並み姿を消しており、床と壁、天井だけのがらんとした空洞が広がっていた。その中でルイズは、部屋の奥の中央に見慣れない物を見掛ける。
 椅子だった。元あった簡素な物では無く、王族や一流の貴族が使う様な、ソファに近い立派な造りの物である。
 その椅子にルイズの探していた使い魔――ハドラー――の姿が納まっていた。ひじ掛けに腕を着け、軽く俯いて目を閉じている。陽光差し込む部屋で静かに君臨するその姿は正に一枚絵の様だった。
 あまりに堂に入った光景につい見とれてしまっていたルイズだが、やがてかぶりを振ると、ドラーを起こした。

「ハドラー……起きなさい。ハドラー!」
「……む……」
 ルイズの声にハドラーが目を開いた。意識が覚醒し、その瞼が上がっていくにつれ、歴戦の戦士たる鋭い目つきへと変わっていく。
「何か用か?主よ」
 ルイズの姿を視界に入れたハドラーは静かに言った。落ち着いた様子からして、どうやら寝起きは良いらしい。さっきの眼光に少しだけたじろいでいたルイズは内心安堵した。
「ええ。悪いけどすぐ仕度して。朝食に間に合わないわ」
「朝食……?俺も着いて行くと言うのか?」
 値踏みするかの様にハドラーがじろりと見た。ルイズも負けじと精一杯虚勢を張って対抗する。
「そ、そうよ。貴方の食事も既に用意してあるわ。もしいらなかったのだとしても前もって言ってくれなかった以上は、着いて来るのが当然でしょ?」
 有無を言わせぬ強い口調であったのだが、いかんせんハドラーを見上げて必死に訴えるルイズの状況は、主というより元気のいい部下といった感じだ。それでも主たらんとするルイズの言葉にハドラーはつい苦笑する。
「そういう事か……。なら、ここは主の顔を立てておかねばなるまい」
 やれやれといった感じでハドラーが腰を上げた。対するルイズは些細なやり取りの筈なのにどっと気疲れた様子である。


250 :虚無と爆炎の使い魔:2008/07/25(金) 10:32:03 ID:WtigCKgp
「……ねぇ。そういえばここに元あった家具はどうしたの?」
 ふと、ルイズがこの部屋に入って以来、ずっと思ってた疑問を口にした。
「ああ、邪魔だったのでな。処分した」
 それが何か?とでも言いた気なハドラーにルイズは戦慄した。
 この学院の家具や調度品は、盗難や生徒達が勝手に部屋をいじくらない様、土のメイジ達によってがっしりと床や壁に溶接されている。
 しかもその上に破損や劣化防止の為に強力な『固定化』の魔法も掛かっていた。並みのメイジでは動かす事はおろか、かすり傷一つ着ける事すら不可能である。
 それが、何をどうすればあの大きさの家具が跡形も無く消えるというのだ?ルイズの精神的疲労が一段と増した。
「そ、そう……。じゃ、じゃあその椅子は?」
 止せばいいのにと思いつつ、ルイズは再度聞いた。半ば恐いもの見たさの心境である。
「俺の寝床が必要だったからな。昨夜色々と探していたのだがこれが一番良さそうだった」
 それを聞いたルイズがハッ、とした。この椅子に見覚えがあったからである。
 確か学院の応接室に置いてあった、高級貴族や王家の者を招待した時に使う特別な物だった筈だ。ついでに言えばあの部屋は普段は魔法で厳重に鎖錠されている。だが、それがここにあるとという事は……。
 自分の知らぬ所で使い魔がとんでもない行動をしていた事に気が付いたルイズはついにキレた。
「何で無断でそんな事すんのよ!もし見つかったら罰則どころじゃ済まないわよ!」
 つい怒鳴ったが、人間のルールなんてこの男にとっては関係無いだろう。実質処分を受けるのは監督不行き届けの自分だけである。
 そんなことを思ってルイズがぜいぜいと息をついた。朝から身も心も疲労しっ放しである。
 だがまだ肝心の動機を聞いていない。ルイズの尋問?はまだ続いた。
「……大体、寝床なら備え付けのベッドがあったでしょ?何でわざわざ椅子を持って来る必要があるわけ?」

「単純な事だがな……」

 ルイズの怒声にもしごく冷静だったハドラーが初めて声を上げた。凛とした、力ある一声である。
 突然空気を変えられてしまったルイズは、それまでの怒りもどこかに吹き飛ばされてしまった様だった。もしかしたらとんでもない理由があるのかも知れない。ごくりと喉を鳴らしてハドラーの言葉を待ち受ける。
「戦いに生きる者にとって柔らかなベッドなどかえって寝心地が悪い。他にも理由はあるが……大方はそんな所だな。それに、だ」
 もったいぶった様にハドラーが切った。
「それに……?」
 つられてついルイズが聞き返す。たっぷりの沈黙を込めた後、笑みを浮かべたハドラーが、冗談とも本気ともつかぬ口調で言い切った。

「――魔王は『椅子』(玉座)で寝る」


251 :虚無と爆炎の使い魔:2008/07/25(金) 10:32:55 ID:WtigCKgp
 朝食はつつが無く終わった。いつもはルイズが食堂に着くと、皮肉や嘲笑の二つ三つは飛んでくるのだが、今日は違っていた
 ハドラーがルイズと一緒に食堂に入った瞬間に周りのお喋りがピタリと止み、ルイズ達が席に着けば10メイル四方が綺麗に無人になる。
 上級生までもがそれに従っている事から、どうやら昨日の一件は学院中に広まっている様子であった。
 当然ルイズへの悪口等飛んで来よう筈もない。皆視線を合わさない様に下を向き、まるで明日死刑になるのを待つ囚人の様に『つつが無く』朝食を終えたのだった。

 ――これから無理言ってでも毎日来てもらおうかしら?――

 クラスメート達からのちょっかいを受ける事も無く、久々に落ち着いた気分で食事が出来たルイズはそんな事を考えていた。
 にこやかな顔をしながら教室へと向かうルイズだったがその最中、突然ハドラーがルイズを引き止めた。
「ここで一旦別れる事としよう」
「……え?」
 ハドラーの言葉を一瞬理解できなかったルイズだったが、すぐに反対した。
「だ、駄目よ。主人が教室にいる間は使い魔も傍に控えているのが普通なのよ!?」
 ましてや今日は使い魔を呼び出した次の日である。皆喜々として教室に使い魔を連れて来る事は容易に想像出来た。ルイズは焦った様にハドラーの意見を却下する。
 だがそんなルイズに黙ってかぶりを振ると、ハドラーは事実を突き付けた。
「ふむ。……だが、昨日の俺が何をしたのか、忘れた訳ではあるまい?」
「あ!」
 ハドラーに言われてようやくルイズは気が付いた。
 昨日ハドラーが唱えた魔法は非常に大規模であり、死人こそいなかったものの、負傷した者はかなりいた。中には同じクラスの生徒も入っていたかも知れない。
 それ以前に、昨日のハドラーの恐ろしさをを垣間見て平然としている者などまずいないであろう。

「……まあ、それでも着いて来いと言うのであれば「わ、わかった。わかったわよ!」
 どこか愉快そうに喋るハドラーをルイズは全力で遮った。そのまま今日何回目になるのかわからないため息を吐く。
「はぁ……。じゃあ、ここで一旦解散するわ。昼食前にまた落ち合う事にしましょう」
「ああ。ではな」
 ルイズの提案に頷いたハドラーはローブを翻し、そのままルイズとは別の方向へと歩いて行った。
 その背中をルイズは力無く見送った。自分の視野の狭さを自覚してしまい、思わず頭を抱える。
「ああ〜もう!……使い魔の方が状況を理解しているなんて、これじゃどっちが主人かわからないわよ!」
 恐ろしく強い上に、冷静で頭も切れる。昨日はああ言ってしまったものの、あの男を本当に自分に従わせられるのだろうか?
 早くも弱気になりかけたルイズはそんな事を考えながら、とぼとぼと教室へ向かうのだった。



252 :虚無と爆炎の使い魔:2008/07/25(金) 10:34:12 ID:WtigCKgp
投下終了。ようやく4話です。
なんか中途半端な所で終わってますが、設定の説明や
心理描写等、思ったより沢山書く必要が出てきたので
いったんここで切る事にします。早くギーシュまで辿り
着きたいなぁ。

ハドラーもプロットではもっと大人な感じだったんですが
あれ?それだと獣王の人ととかぶるんじゃね?と思い少々
変更。

『トリステインでのセカンドライフを割と満喫しているハドラーと
それに振り回されつつ何とか主人たろうとするルイズ』
みたいな構図で、進められたらいいなと思います。
でも基本はシリアスですが。ではまた ノシ

253 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/25(金) 11:09:04 ID:5cytgvPI
ぐっじょ!
その路線は楽しそうだね。

254 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/25(金) 11:11:39 ID:BqfLdL+4
乙であります。
既に恐怖を刷り込まれてしまったトリステイン魔法学園の新二年生とコルベール先生。
他の生徒と教師陣がハドラーの実力をどう見ているかでこれからの物語が全くの別物になりますね。

255 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/25(金) 11:15:21 ID:7KnQKNH/
影の人GJ!!
展開の早さに濡れた
次回のワルドの活躍に期待(死亡フラグとも

爆炎の人GJ!!
ハドラー様の余裕たっぷりな対応に萌えたw
あとはルイズがどこまで主として頑張れるか期待

256 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/25(金) 17:08:39 ID:5n6dERHH
それなら、応接室からパチってもしょうがないなw>魔王は椅子で寝る
ハドラーの学園生活か……想像しにくいな。がんばれGJ

257 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/25(金) 17:29:45 ID:D/aNHW+T
3年B組ハドラー先生は?
アバンが家庭教師やってたし

258 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/25(金) 17:37:02 ID:4jpdMvPD
>257
『では今日の宿題だ。各自、明日までに世界征服の方法をレポートにするように』

259 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/25(金) 17:48:49 ID:/R6ntVap
ミストバーンって魔族だし血液は青だよな?

260 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/25(金) 18:38:29 ID:xoE0jYGI
憑依されているバーンの体は魔族だが、
憑依しているミストはガス生命と暗黒闘気の集合体の中間らしい。

261 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/25(金) 18:44:26 ID:xoE0jYGI
ゴーストと暗黒闘気集合体の中間だったか

262 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/25(金) 18:46:34 ID:4jpdMvPD
バランが竜魔人に変わる時、モノクロだったが台詞から、血が人の赤から魔族の青に変わるという描写があった。
つまりバーンが魔族である以上、その血の色は青のはず。

263 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/25(金) 18:56:24 ID:/R6ntVap
言い方が悪かったな
「バーンの体」ってこと
>>262
だよな、サンクス

264 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/25(金) 21:36:37 ID:Xi4D18Zv
爆炎の人、影の人投下乙です。次回作に期待。
ハドラーと割るどの決闘とかどーなんだろw

265 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/25(金) 22:00:09 ID:0ZK2BKnY
爆炎氏乙。前回バトルはダイ大さながらのチームプレイを見てるようでよかった。新展開も面白そうで期待。

266 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2008/07/25(金) 22:00:52 ID:1jCWkuub
フレイザード召喚を書く猛者はいないのかな? 一番好きな悪役なんだが

267 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/25(金) 22:34:29 ID:FUzlhws/
バランが召喚されたらお父さんみたいになりそうだな

268 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/25(金) 22:57:19 ID:ThJs6I/h
若バランだとアンアンかカトレアと肉体関係になるな

269 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/25(金) 23:56:10 ID:1rY21HYi
>>268
それは国家滅亡フラグw

270 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/26(土) 01:02:12 ID:zPwyePiO
アン様にソアラの役はちょっと荷が重いかな。
優しく包容力があり芯の強い女性ということで、ちい姉さまが最有力候補。
次点で、(芯が強いとは言えないけど)ティファニアあたりじゃないかな。


カトレアはエルフの間者と疑われたバランを庇い、魔法衛士の手で焼き殺されます。
ティファニアは懇意にしていた商人に密告され、異端審問官による陵辱の果てに死亡。
そして、原作のバランへ……。

271 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/26(土) 01:31:15 ID:3q/GK4mU
ちいねえさまの方がドラマを感じるよな
でも同じ悲劇の繰り返しだと微妙なので、色々あっても認めて貰える展開になってほしい。

272 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/26(土) 02:07:24 ID:2JGpffFe
両親や姉妹たちには認めてもらえたが、テファの実家のごとく公爵家ごと異端審問で潰される光景が目に浮かびます

そして始祖ブリミルの名の付くものすべてが抹殺対象になるバラン

273 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/26(土) 02:27:37 ID:3q/GK4mU
しかしバラン様が大暴れしようとする前に烈風伝説が吹き荒れて相手がいなくなります。

274 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/26(土) 02:29:33 ID:GXWBohBR
>272
あの姫様の場合、
「愛し合う二人を引き裂くような真似、私にはできません!!」
とか言いながら認めかねん。

275 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/26(土) 03:17:02 ID:3q/GK4mU
夢見る乙女理論最優先のキャラだしなw

276 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/26(土) 04:07:49 ID:siCy+m5c
>>273
バラン様と烈風カリンが大暴れして、気付いたらヴァリエール大公国が建国されているとかw

277 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/26(土) 04:37:51 ID:3q/GK4mU
まさに「ヴァリエールには逆らうな」
ハルケギニアで最も喧嘩を売ってはいけない相手w

278 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/26(土) 14:48:26 ID:wzU7DCBn
ご両親の理解さえ得られればトリステンでは悲劇にはどーやってもなりそうな無いナ
むしろ、原作過去に飛ばしてアルビオンで某ハーフエルフ改め乳革命竜魔人に……

279 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/26(土) 16:06:46 ID:Sn0S3U4Q
竜魔人にならなければ見た目人間だしな
ゼロ魔の連中相手に竜魔人になる必要もないだろうしばれる可能性低いな

280 :ゼロの影:2008/07/26(土) 17:36:15 ID:oNqJnbLx
爆炎の人乙です!
ハドラーの余裕に痺れる。

ハドラーやロンと違ってバーンの血は赤かったと聞いたことがあるのですが間違っていたのでしょうか…。

第二話、17:50頃に投下予定です。

281 :ゼロの影:2008/07/26(土) 17:50:07 ID:oNqJnbLx
第二話 閃光のように

 竜騎兵達は旗艦へと光点が迫るのを見て首をかしげたが、正体を視認できず己の任務へと意識を戻した。
 無事に甲板へと降り立ったミストバーンは立っていた兵達をすぐさまなぎ倒し、風石の置かれた部屋を探す。
 巨大戦艦を拳で撃墜することはできないが、動力を破壊すれば落とせる。アルビオンに向かう際に耳に挟んだ知識が役に立った。
 謎の人物が侵入し次々に兵達を打ち倒しているという情報が飛び交うが、兵力を集めようにも狭い場所ばかりであっさり突破される。
 だが、廊下を走る彼の足が一瞬止まりよろめいた。倒れかけるのを壁に手をついてこらえ、再び走り出す。
 やがてそれらしき部屋の前まで足音も立てずたどり着き、扉を破ると同時にデルフリンガーの警告が響いた。
「まずい、相棒――!」
 まるで彼の行動を読み切っていたかのように空気の槌がカウンターで叩きこまれた。
 デルフリンガーを抜いて吸収し、室内の人物を見たミストバーンの顔からあらゆる表情が一瞬にして抜け落ちた。
 かわりに浮かび上がるのは純然たる怒り。
 そこには、兵士達と共に閃光のワルドが杖を構えて立っていた。


 一方、ギーシュとルイズは物陰に隠れながら敵兵の行動を妨害していた。
 今までならばワルキューレを七体出現させ即座に精神力を使い果たしていただろうが、オーク鬼達との戦闘で懲りている。
 ギーシュ一人が倒れるならばともかくルイズもいる。
 もし殺されるようなことがあればミストバーンがあの世まで来て引きずり戻し、拳の叱責とともにギーシュだけ冥府へ送り返すだろう。
 だが、彼らだけでは出来ることなどたかが知れている。頭を悩ませていると巨大な影が兵士達を相手に剛腕を振るっているのが見えた。
「フーケのゴーレムだわ」
 彼女が何故村を守ろうとするのかわからないが、力が必要なことは事実。一時的に手を組むしかない。
 体勢を立て直すため敵の集団が一度退いた隙に、フーケが隠れていそうな方へ呼びかける。
「貴族様に従うのは気に食わないねえ!」
 ルイズのこめかみが波打ったが、ギーシュは頭を深く下げ、叫んだ。
「土くれのフーケと呼ばれた貴女の力が必要なんです! お願いします!」
 貴族にあらずんば人にあらず、平民など貴族のためだけに存在すると考えていたギーシュの変わりようにルイズはあっけに取られていた。
 この変化は一体どうしたことだろう。もしや、身分不明のミストバーンに打ち負かされて真の強者とは何か知ったのか。
 盗賊風情に頭を下げるなどプライドが無いとしか思えないのに、ルイズは彼の姿に圧されていた。
 村を守るために彼女の力が必要だと知って手を尽くそうとしている。
「何でそこまで……」
 学院ならばともかく、タルブの村のために必死になって戦う義理などないはず。
 ルイズも強く止められていたら振り切ってまで行こうとはしなかっただろう。
 ギーシュの答えは力に満ちていた。
「そりゃもう可憐なヴィオレッタ、聖なるアリシア、優雅なガラテア――他にも多くの美しき女性達が暮らす村だからさ!」
 どうやら真に素晴らしい女性には貴族も平民もないらしい。いつの間にその境地にたどり着いたのか。
「モンモランシーに後で言いつけてやろうかしら」
 呆れるルイズに声が届いた。
「……小娘とボンボンに従うのは気に食わないけど、あいつらはもっと気に食わないから協力するよッ!」
 土煙で目をくらましている隙に岩陰からフーケが姿を現し、二人の元へ走り寄って来た。


282 :ゼロの影:2008/07/26(土) 17:58:29 ID:oNqJnbLx
 やがて敵の集団が再度攻撃してきた。
 今度は正面から挑まず回避に重点を置き、周辺にいるはずの操作者を探している。
 そのうちゴーレムが特定の方角を守るような動きを見せたため、兵士達はゴーレムの腕をすり抜けるようにしてそちらへ殺到した。
 術者さえ倒せば全て終わる。そう意気込んだ彼らの足元が崩れた。穴に落ち込み、異臭が漂っていることに気づく。
「はーい、ご機嫌いかが? ……とっとと降参しないと火だるまになるよ」
 ようやく彼らは臭いの正体に気づいた。油だ。焼き尽くされたくないため武器を捨てた彼らを拘束し、抜けだせないように檻を作る。
 それを見たギーシュがヴェルダンデに抱きつき頬ずりした。
 オーク鬼達の時と作戦は同じだが、ルイズとギーシュでは上手く誘導できないためフーケのゴーレムを使った。
 さらに、フーケは土のトライアングルクラスのメイジである。落とし穴の範囲を広げるのに役立った。
 ギーシュが成功に浮かれているとゴーレムの拳が彼に襲いかかってきた。ルイズが尻を蹴飛ばし、自分も地面に転がる。
 拳の先を見ると残党が襲いかかってきたところだった。
「気ィ抜いてんじゃないよっ!」
 鼻水を垂らしながらギーシュが頷く。
 ルイズは心が沈みこむのを感じていた。自分が使える魔法は爆発だけだ。意地を見せようと思っても役に立たない。
 何か自分に出来ることは――そう考える彼女は、心を励まそうと指に水のルビーをはめた。


 動力室の空気は異様に張り詰めていた。帯電し、今にも肌を焼きそうなほどに。
 ワルドは四体の偏在と共に立ち、笑みを浮かべた。左腕を奪い、消えることのない恐怖を刻みこんだ男に復讐できる。
 復讐より試練と言った方が近いかもしれない。ここで彼を殺さなければ、前へ進めないと知っている。
 ミストバーンが己へ突進するのを見て予想が的中したことを悟る。
 『レキシントン』号に乗り込み、艦内を荒らし回るような人物は一人しかいない。この艦を落とそうとする彼が目指す場所はここしかない。
 真っ先に主を侮辱した己を殺そうとするだろう。おそらく、誇りにかけてガンダールヴを使わず拳で戦うに違いない。
 それを読み切っていた彼は偏在達と連携して致命の一撃を叩きこもうとする。
 彼には覚悟があった。目的のためならば己をも駒とする覚悟が。
 己へと迫る拳を観察し、動く。常ならば目でとらえきれぬ速度だが、命をも武器とする彼には見えた。
 紙一重で回避すると偏在が腹部に空気の渦巻く杖を突き刺した。
 偏在は手で胸を貫かれ消滅したが、その隙に後退した彼は余裕をもって魔法を放った。
 『ライトニング・クラウド』を、突き立ったままの杖に向けて。
 雷が杖を通じて体内へ送り込まれた。凄まじい音とともに嫌な臭いが室内に広がり、兵士達が標的の死を確信する。
 だが不用意に近づいた兵士は頭部を掌撃で砕かれ息絶えた。
 その間に他の偏在が『ライトニング・クラウド』を再び叩きこむ。一瞬体が震えたもののミストバーンは杖を引き抜き投擲した。
 偏在の首に得物が突き刺さり消滅するのをワルドは視界の端で捉えていた。
 ――死なないならば、徹底的に殺す。
 怖くないと言えば嘘になるが退く気はない。恐怖のあまり逃げ出した自分が何より許せなかったのだから。
 それに、かつてと同じく激怒しているが――
(わずかばかり……動きが鈍い)
 冷静に観察するものの油断はしない。慢心の代償として腕一本を失い、甘さを思い知らされた。
 ミストバーンが本体を狙うのに対しワルドも攻撃しては退き、退いては応戦し、偏在達と力を合わせている。
 自身を駒とみなすだけの覚悟が彼らの連携を完璧なものにしていた。
 根源的な恐怖を植えつけた相手を消すことで過去を乗り越えようとしている。
「化物であろうと知ったことか」
 彼の道を進むためにどうしても倒さなければならないと知っている。

283 :ゼロの影:2008/07/26(土) 18:06:56 ID:oNqJnbLx
 義手を掴まれ捩じ切られてもワルドの眼光は苛烈さを失わない。次に右腕が狙われるのを察して得物を振るう。
 閃光のように杖が翻り、首筋に刃がめり込んだ。手を緩めず、踏み込みつつ一気に切り裂く。
 鮮血が床を叩く音と反撃の掌撃をかわす足音が軽やかに響き合った。
(僕と同じ間違いを犯すとはな……)
 遊び過ぎて計画そのものを台無しにするところだった。
 己の力量に自信を持つ者が陥る過失。復讐に溺れる影も例外ではない。
「人間を甘く見るなよ?」
 言い放つワルドの目は攻撃の機を窺い氷のように冷徹な光を放っている。
 最初から殺すつもりで攻撃すれば余計な傷を負うことも無かった。獲物に恐怖と苦痛を味わわせようという傲慢さが隙となったのだ。
 ワルドの言葉に過ちを悟ったミストバーンは拳を構え直した。殺意を新たにして。


 多くの敵兵の動きを封じたもののまだまだ戦いは終わりそうにない。
 魔法使いと言えども万能ではなく、射程外から矢を射かけられるなどしたら手も足も出ない。
 ルイズへ矢が飛んだがワルキューレが出現し盾となった。
「僕の前では! レディには指一本触れさせないッ!」
 聞きようによっては格好いいと言えなくもないが、顔が青いため締まらない。限界が近いはずだが膝を震わせながらも力を振り絞っている。
 ルイズへ次々と刃が迫るのをワルキューレを召喚して防ぐ。だが、とうとう蒼白な顔色で膝をついた。
 矢が降り注ぐのをフーケのゴーレムが手の平で庇ったが、数本がルイズへと飛ぶ。
 それを目撃したギーシュが目を見開いた。どこか苦いものを含んだ言葉が蘇る。
(……人形が無ければ何もできんのか?)
 このまま目の前でレディが傷つくのを見ていることしかできないのか。諦めるしかないのか。
(そんなのは――ごめんだね!)
 彼が彼であるために、最後の力を振り絞って立ち上がり――閃光のように飛び出し、己の身で食い止めた。肩を射抜かれ、倒れこむ。
「ギーシュ! 何で……?」
「薔薇に棘がある理由を……証明したかっただけさ」
 涙をこぼすルイズにギーシュは弱々しい声で囁いた。
「美しい頬を涙で濡らさないでくれたまえ。その真珠のような――」
「寝てんじゃないよ!」
 苛立ったフーケが瞼を閉ざしかけたギーシュの脇腹を蹴とばした。ぐえ、と呻いた彼の襟首を掴み、ルイズを伴って一度隠れる。
「このままじゃジリ貧だね」
 フーケももう長くはもたない。ルイズは拳を握りしめ、震えていた。
(……わたしだけが違うんだわ)
 フーケもギーシュもミストバーンも、皆譲れぬもののために戦っている。それなのに自分だけが何もできないでいる。
 彼女は自分の甘さを知った。タルブの村まで来たのも、何もせずにいる後ろめたさに耐えられなかっただけ。
 いざとなればミストバーン達が何とかしてくれるという甘えがどこかにあった。
 本当に何かを守ろうとする覚悟があるのならギーシュのようになりふり構わず行動できるはず。
 常に本人が突っ込めばいいというものではないが、いざという時に動けるか否かで戦い方は大きく変わる。
 泥にまみれたギーシュの顔にはある種の気高さがあった。それに引き換え自分は――。
 いつしか流れる涙は己への怒りと悔しさに変わっていた。

284 :ゼロの影:2008/07/26(土) 18:16:20 ID:oNqJnbLx
(力が――力が欲しい――!)
 命が削られようとかまわない。ここで戦わなければ貴族たる資格などない。
 心の底から力を求めながら地面を拳で殴りつけると『始祖の祈祷書』が落下し、風でページがめくれた。涙でにじむ視界に文字が浮かび上がる。
 書かれているのは四つの系統、そして零――虚無の系統について。選ばれた読み手が指輪を嵌めることで書を読めるとも書いてある。
「もしかして……わたしが読み手ってこと?」
 さらに読み進めると爆発(エクスプロージョン)について書いてあった。
 今まで失敗だとしか思っていなかったが、これこそが自分の力だったのだろうか。四つのどの系統にも属さない、虚無の――。
 信じられないがここで何も出来なければゼロのままだ。試してみる価値はある。荒い息のギーシュをちらりと見て覚悟を決める。
 キメラの翼で『レキシントン』号の上まで飛び、フライでさらに上空へ行くことをフーケに頼んだ。
 詠唱し、力を高めていく。

 ――エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド

 詠唱がルイズの中にリズムを作り出していく。体の中から何かが生まれ、行き先を求めて回転するような感覚が生まれる。

 ――ベオーズス・ユル・スヴュエル・カノ・オシェラ

 合図して飛びあがる。『レキシントン』号の上にまで達し、さらにフーケがフライで抱え上げる。

 ――ジェラ・イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン・イル

 呪文完成の瞬間、ルイズは己の魔法の威力と性質を理解した。 自分の魔法は眼下に広がる全てを巻き込み、消滅させることができる。
 だが、選択もすることもできる。殺すか、殺さないか。破壊するか、破壊しないか。
 ルイズは選び、杖を振り下ろした。眼下に広がる艦隊に向けて。


 艦内で戦う彼らまでも、太陽のような閃光が照らしだした。
 ワルドがほんの一瞬光に目を奪われた隙に、ミストバーンの手が左胸を貫き、そのまま一気に切り下ろした。
 身体を深々と切り裂かれたワルドの口から大量の血液が溢れる。血だまりの中に崩れ落ちたワルドはどこか遠い眼差しで呟いた。
「今のは……ルイズの、力だ」
 手に入れることはできなかったが――自分は間違ってはいなかった。心中で呟いたワルドの目から力が抜け落ちる。
 ミストバーンも誰が魔法を放ったのか悟っていた。今まで彼が見たどの魔法とも違う、異質なそれを。
 四つの系統のいずれにも属さない特殊な魔法ならば法則が違う元の世界でも使えるのではないか。
 最初は、何が何でも一撃を食らわせようとする意地を認めた。次に、努力する姿勢を、強敵が相手でも退かない誇りを認めた。
 他者に認められたい、必要とされたいという想いを知った。
 そして今、彼女は力を見せた。
 それは――彼女が真に認めるに値する相手になったということだ。
 彼女の魔法は風石の大半を破壊しており、残りはミストバーンが打ち砕いた。間もなく『レキシントン』号は落ちるだろう。
 艦内から脱出し、キメラの翼を使い地上に降り立つ。
 そして知った。彼女の魔法の威力を。
 『レキシントン』号だけでなく全ての艦が撃墜されていた。


285 :ゼロの影:2008/07/26(土) 18:21:38 ID:oNqJnbLx
以上です。
ボーウッド好きなのに出番なかったよボーウッド。

…反動で軽いノリの話を書きたくなります。

286 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/26(土) 19:11:29 ID:SEk1l30L
影の人乙でした
けど最近展開が早過ぎる気が…
特に今回はギーシュ、ワルドの覚悟やルイズの挫折から立ち直る
シーンなど皆カッコいい場面が多かったので、個人的には
二話くらいかけてじっくりと読みたかったなあと思いました。
生意気言ってスマソ。次も期待してます

>>285
短編や番外編フラグですね?わかります

287 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/27(日) 08:29:46 ID:arWmundC
影の人乙
やっぱ成長はダイ大のキーワードなんだなあ…ワルドですら例外ではなかったとは。

288 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/27(日) 18:34:47 ID:Zkwt3G1q
乙、ワルド、敵ながら見事。
しかしキメラの翼をこんなに乱用して大丈夫なのか?

289 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/27(日) 19:17:07 ID:tcjF3Lyf
祖先はルーラが使えなかったんだよ

290 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/27(日) 21:24:00 ID:QNE1mGuG
DQ3だと、ギアガの大穴が開いているときはルーラで別の世界への移動が可能だったんですよね。
……世界扉が開きさえしていれば、キメラの翼で帰れたかもしれないのに。

291 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/28(月) 01:52:03 ID:lt1kNKwA
>>290
ミスト「……ッ! そ、その発想はなかったわ……orz」

292 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/28(月) 10:58:53 ID:gB858d3m
そしてまたルイズに召喚されるミスト

293 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/28(月) 16:29:41 ID:K29T0rNr
ルイズへの忠誠心を持つミスト召喚小ネタ(予告風)を投下してもよいでしょうか?

294 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/28(月) 17:09:10 ID:MUdmXB61
>>260-261
ミストはガス生命とゴーストの中間のようなものらしい。
生きた暗黒闘気だから生物の体を乗っ取ることができる。

295 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/28(月) 17:19:32 ID:6h63vWo0
>293
ノープロブレム。
むしろ、大魔王バーンへの忠誠心がルイズに向けられた場合の姿を見てみたい。

296 :ミスト召喚小ネタ:2008/07/28(月) 17:29:21 ID:K29T0rNr
ゼロの霧〜予告風〜

「ルイズさまのお言葉は全てに優先する……!」
鉄壁の忠誠心!

「よくもギーシュの顔に十字傷刻んでくれたわね!?」
「お、落ち着いてモンモランシー!」
唸れ暴力!

「闘魔傀儡掌」
「か、体が動かない!」

「闘魔滅砕陣……!」
(ドン! ギリギリビキビキメキッ)
「やりすぎだってば! 眼球飛び出してるじゃない!」

「闘魔最終掌!」
「金属がゴリゴリ削られてるけど何あれ!? 何なのよ一体!?」
ほとばしる暗黒闘気!

「あんたの使い魔なんとかしなさいよ!」
「忠誠心たっぷりで強くて真面目なのはすごく嬉しいんだけど、暴走するのよね……」
ルイズに襲いかかる某魔軍司令以上のストレス!

「始祖ブリミルよ……! コッパゲの私が初めて祈ります。もし本当にあなたに生命を司る力があるのなら私の毛根を……私の毛根だけは生かしてください!」
ルイズの胃に穴が開くのが先か、コルベールの髪が全て抜けるのが先か!

「僕、この任務が終わったらルイズと結婚するんだ」
乱立するワルド死亡フラグ!

「僕は道を示さねばならないが、君達まで戦う必要はない……そうだろう?」
「……ウェールズ。その質問に対する私の答えは常に一つだ」
強者への敬意、認めた者との共闘――

「泣け!」
友情!(正確には主従関係)
「わめけ!」
努力!(気苦労が絶えないという意味で)
「そして……」
勝利!(後始末におわれる)
「バラバラになれッ!!」
少年漫画の王道をゆくドキドキハートフルコメディ!

(早く“ゼロのルイズ”の汚名を返上しないと絶対犠牲者が出るわ)

ハルケギニアに暗黒闘気の嵐が吹き荒れる……
『最高の使い魔、ミスト……! あんたに出会えて……よかった!』
ゼロの霧、近日公開予定!

…むしゃくしゃしてやった。だが反省はしていない。

297 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/28(月) 18:21:34 ID:FzAPyyc7
>>294
暗黒闘気の集合体ってことは、どうしてもミストの改心や善向きの思考は無いってことか。存在の否定につながるからな。

298 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/28(月) 18:24:23 ID:gB858d3m
ルイズを悪の道に染めてしまえばいいんじゃね!

299 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/28(月) 18:43:01 ID:GS+eTn2U
ルイズの悪って、一山幾らの高慢で中身のない悪党になるか、
信号無視や自販機の釣り銭泥棒、ピンポンダッシュに、
お菓子の袋のポイ捨てレベルの萌え悪党ぐらいしか想像できにゃ(ry

300 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/28(月) 18:44:37 ID:MUdmXB61
>>297
でも光の闘気と暗黒闘気の違いってよくわかんないんだよな。
ヒュンケルみたいに両方持ってるのもいるし、
ヒムは善悪関係なく決着をつけたいと思ったから光らしいし、
それなら体を鍛えて強くなった者には敬意を払ったり、バーンが必要としてくれたから従ってる
ミストも光の闘気が混じったりしてもおかしくないんじゃないか?

301 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/28(月) 19:12:08 ID:PF2qpkzE
魔界で生まれたから暗黒とか

302 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/28(月) 19:14:14 ID:gB858d3m
悪いこと考えていると暗黒
そうでないと光とか

303 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/28(月) 19:21:44 ID:K29T0rNr
ミストは
数千年間仕え続けてきた主→消滅に関して完全スルー
器にする目的とはいえ命を救い技を教えた弟子→裏切って殺しにくる
魂を認めてくれた尊敬する仲間→決闘も最期も見届けることができず
気の合う友人→人形
最後まで残った部下→ダニ
挙句の果てには寄生虫呼ばわりされるわ、最期は光の師弟の引き立て役みたいな描かれ方されるわ、扱いが…。
いくら敵とはいえちと酷い気もする。

304 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/28(月) 19:25:12 ID:f4t2ZIg1
主はまあ計画の真っ最中だからスルーしたのかもしれんが
扱いが酷いのは確かだな。


305 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/28(月) 19:26:35 ID:MUdmXB61
なぜか気のあった友人が実は主を暗殺しに来てました
ってのは結構なショックだよな

306 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/28(月) 19:34:58 ID:Gwvwh6KM
それでキル、というかピロロはミストのことをどう思ってたのかな。
鬼岩城崩壊でミストがキレかかったときはわざわざ止めにきたし、独り言の中にもミストを意識したものが多いから
意外と友情はあったのかもしれん。バーンとヴェルザーも別に敵対視してても憎みあってたわけじゃないみたいだし。
つかヴェルザーは黒の核で本気でバーンを倒せると思ってたのだろうか?

307 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/28(月) 19:35:56 ID:PF2qpkzE
気の合う友人てキル?
なら冥王からの使いって時点で暗殺云々は予想できそうだが

308 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/28(月) 20:39:58 ID:fsRI9wmp
最初から殺しに来てたのばれてたと思うんだが…

309 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/29(火) 00:06:50 ID:eLptRG4z
その話題、時々ループするよね

310 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/29(火) 04:50:22 ID:vk5B73c6
>>306
作中で奇妙な友情みたいなものがあった。とかいうセリフなかったか?
単に馬があったというの勘違いしているだけかもしれんが。
ピロロ本人は普通に主の違う友と思っていたんじゃね?時がくれば殺し合う仲でもあるが。

冥竜王はおそらく殺せると踏んだんだろう。そもそもバーンが本気モードでなかったら確実に
殺れるだろうし。本気モードになったとしてもそれほどの実力者がバーンに手傷を全く負わせずに
やられることはありえない、核くらって死ぬ程度には弱くなってるだろうと考えていたかも。
というか人間界で本気モードになること自体想定してなかった可能性もある。
あの方々からすれば人間とか取るに足らない存在だしなー

>>307
ミストは最初キルが来た時に来訪の理由をバーンの口から暗殺が目的だと聞いて
それであの態度を取るとはてな感じで感心してたはず。

311 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/29(火) 09:56:30 ID:bPDCjVX2
爆炎の中の者です。
話の腰を折ってすみませんがちょっと質問させてください。

現在ハドラーの番外編をぼちぼち書いてみてるんですが、禁呪法を使った
生物を出すのはフレイザードや親衛騎団以外は、よく考えるとオリジナル
キャラの扱いになってしまいますよね?

禁呪法の設定はネタ的においしいので使ってみたいんですが、フレイザード
だと武人になったハドラーでは原作の性格とかけ離れてしまい、親衛騎団
だとオリハルコンが必要になります。

ただ禁呪法で作った生物は創造主の性格に似るので、例えば鉄に禁呪法を
掛けてヒムと同じ性格のキャラができたとします。性格は原作準拠なので
OKだとしても、肝心のオリハルコンは使ってない為、実質オリジナルキャラ
になってしまいます。

番外編なので本編には一切出しませんが、ぶっちゃけ『鉄製のヒム』みたい
なものはこのスレ的にありなんでしょうか?
禁呪法ネタありきで話を作ってしまってるんで、NGならばっさり切ろうと思います。って事で意見をお願いします


312 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/29(火) 10:43:25 ID:NajKLlSo
俺はいいと思うけどなぁ。
素材が違っても魂の兄弟なヒム’でも、成長ハドラー準拠のフレイザードも、
パーソナリティーが原作キャラに根ざしてるもので、物語上自然な登場と動きをするなら十分かと。

313 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/29(火) 10:48:30 ID:sfiaJkFT
超魔生物と化したハドラーが再びフレイザードを作り上げた場合……マトリフ師匠が危惧した怪物が生まれるような気がする。

314 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/29(火) 12:49:00 ID:h2gzwkXr
>>313
超竜神……すまん、なんか変な電波が飛んできた

315 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/29(火) 13:10:00 ID:wZKICU+R
寿命が無茶長い魔族だったときや、対ダイのように寿命なんて関係ねーって、時と違って
さして危険も予期されない現状で、禁呪使う理由が有るならありだと思う
寿命を削ってまで作るのはソレはソレで美味しいし

316 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/29(火) 15:22:58 ID:osgkxj4B
別に禁呪法にこだわる必要はないと思いますけどね。
『鉄製のヒム』みたいな雑魚レベルで良いんなら、
ミストバーンが使ってた鎧兵士やデッド・アーマー、ガスト、シャドウのような暗黒闘気生命体でいいと思います。
ハドラーも魔王時代はがいこつやがいこつ剣士、ミイラ男、フレイム、ゴーレムといったモンスターを多数手駒にしてましたし、
がいこつやフレイムはしゃべったりしてましたから自意識もあるみたいですから。

それに金属が必要なら作ってしまえばいいんじゃないでしょうか。
ロン・ベルクによればダイ大世界にも錬金術はあるみたいですし。
何せキラーマシンをも生み出したハドラーのことですから、オリハルコンは無理でもそれなりの強度の魔法金属なら作れるかもしれませんよ。

317 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/29(火) 15:51:43 ID:NajKLlSo
>『鉄製のヒム』みたいな雑魚レベルで良いんなら、
あー、その、なんだ。
この部分を見るに、要点を勘違いしてるような気がするんだが。

318 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/29(火) 17:53:48 ID:UiDDB+6k
オリハルコンが存在する事にすれば万事解決じゃね?

319 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/29(火) 17:57:47 ID:qV84AKeZ
そこでデルフオリハルコン製>擬人化ですよ


320 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/29(火) 17:58:31 ID:4cBESzm7
トランスフォーマーとのクロスに、変形するデルフがいたな……あんな感じか?

321 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/29(火) 18:28:55 ID:K/7IqCR7
まぁでも仮にオリハルコン製ポーンの駒が手に入ったとして、
それに禁呪法かけた結果「ヒムと同じ性格同じ外見のポーン」が誕生したとしてもだ、
時系列的にオリジナルのヒムが別に存在している以上そいつはヒムじゃないわけで。

そういう意味だと素材が何であろうとオリキャラであることには変わりないから気にすることは無いんじゃなかろうか。

で、まぁ素材は316が言うようにハドラーが作れるってことにすれば、
鉄といわずもっと贅沢に鎧の魔剣なんかに使われてる魔法を受け付けない金属位までは出してもよさそうな?

と、ここまで書いて気づいたがヒムを除けば「復活した」って扱いにする事で同キャラ扱いもいけるな。
とは言えこの場合は逆に同じ素材じゃ無くても説得力出る気もする。
まぁあくまで一読者の意見ということで。


そういえば微妙に関係ないが、キラーマシンも魔法通じないみたいだけどあの金属製だったんだろうか。
もう一段階落ちるぐらいの金属がイメージ的には妥当かなという気もするが。

322 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/29(火) 18:31:38 ID:bPDCjVX2
爆炎の中の者です。
皆さんレスありがとうございます。とりあえずスレ的にはなんとかOKぼい
ので続きを書いてみようと思います。番外編なのでマトリフみたいに
中身の無い展開になりそうですがw

住人の優しさに感謝です。では失礼しました ノシ

323 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/29(火) 18:34:44 ID:d0XdGMGZ
オリハルコンまで行かずとも、メタルスライムとその仲間は攻撃魔法が効かない。
……つまりですね、はぐれメタルの養殖を始めてそれを素材に。

324 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/29(火) 18:38:07 ID:UiDDB+6k
まとめて逃亡ですね、わかります

325 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/29(火) 18:52:12 ID:6BwbA54f
むしろメタル系はオリハルコンって説も古くから有りましてね

326 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/29(火) 19:01:25 ID:LwvheRUl
はぐれメタルは逃げ出した。
しかし、回り込まれてしまった。
「知らなかったのかしら? 貧乳(大魔王)からは逃げられないのよ」

327 :ゼロの影:2008/07/29(火) 20:00:26 ID:vfNJwZxd
第三話を20:10頃に投下予定です。

展開の早さについてですが、最後まで書いてみたところ、最終章の途中からゆっくりになりますので最初の方を調整してみます。
今回の話と次話も少しゆっくりにしました。

328 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/29(火) 20:05:38 ID:+lenpF8y
>>326
せつこー! ( )を付ける所が逆やー!

329 :ゼロの影:2008/07/29(火) 20:10:24 ID:vfNJwZxd
第三話 予感

 ルイズの起こした“奇跡”によって勝敗はあっけなく決した。
 艦隊が全滅しても他に兵達は残っていたが、大半の者が戦闘を続行する意思を絶たれ、アルビオンは降伏することとなった。
 勝利の鍵となったルイズは己が虚無の使い手であることを知って不安に苛まれていた。
 突然現れた巨大な力をどう扱うべきかわからず途方に暮れたが、救いと言えるのはミストバーンの態度の変化だった。
 表向きには大して変わっていないものの今までは“仕事上の上司というだけの小娘”、“ただの手がかり”程度の扱いだった。
 認めていたのは努力する姿勢と強敵相手に退かぬ意地くらいだっただろう。
 しかし今は、どこか違う雰囲気があった。
 ある日ルイズはアンリエッタに呼び出され、“奇跡”について尋ねられた。
 少し迷ったもののアンリエッタへの信頼から『虚無』の力について話し、忠誠と共に捧げることを誓う。
 次いでアンリエッタはミストバーンの働きについても褒め、爵位を授けられぬことを詫びたが無愛想に遮られた。
「そのようなものは要らぬ。私が欲するのは……異世界についての情報だけだ」
「……わかりました。出来る限り私も協力しますわ。今は、これを」
 アンリエッタはポケットを探り、宝石や金貨を取り出し差し出した。
 彼には必要のないものだが、ルイズが手に押し付けるようにして受け取らせ、王宮を出る。

 人ごみの中を歩きながらルイズは考え込んでいた。
 いくら異なる世界から来たと言っても、ここまで身分や富、名声にこだわらないでいられるだろうか。
 相手が高貴な身分の者だろうと誰だろうと同じように接している。
 思えば、彼について知っていることなどほんのわずかだ。
 恐ろしく強いこと、己を高めようとしない者を見下すこと、氷のように冷徹であること、時折熱い何かを感じさせること。
 何より――主への絶対的忠誠心。それが身体的な強さ以上に彼の武器となっていることをルイズは薄々悟っていた。
 その半分でいいから自分に捧げてほしいと思わなくもないのだが、主一筋であってこその彼だと言うことを理解しつつある。
 自分なりの形で認めさせるしかなかった。


330 :ゼロの影:2008/07/29(火) 20:16:02 ID:vfNJwZxd
 意気込んで歩いて行くと占い師が声をかけてきた。大きな水晶玉に神秘的な装束、雰囲気満点である。
「何でも占いますよ。探し物、恋愛、金銭などなど。四大系統の魔法理論をベースに独自の解釈を加え応用発展させたもので――」
「へええ。当たるの?」
「そりゃもう!」
 延々と続きそうな文句を遮りルイズが尋ねると、占い師は胸を張って答えた。心を惹かれたものの、現在彼女の所持金はほぼゼロに近い。
 諦めかけてミストバーンの方を見ると、彼は受け取ったばかりの大量の金貨を石ころのように無造作に台に放り出した。
「これで足りるか……?」
 占い師は台に散らばった輝きに唾を呑みこみ、こくこく頷いた。
「多すぎるくらいでさ。じゃいきますかあ!」
 水晶玉を睨みぶつぶつ呟くのをルイズはうさんくさそうに眺めている。
「あんたが占いを信じるなんてね」
 元の世界でもごく稀に真実を見通す者はいた。
 目の前にいる人物がそうだとは限らないがどうせ情報は無い。駄目でもともと、ほとんど期待していなかった。
 やがて占い師はカッと目を見開き叫んだ。
「視える、視えるよ! 兄さんの帰りを待つ者がいて行方を捜してる。遠いところから来たんだろ」
「他にはわからないの?」
 口をとがらせるルイズに占い師は腕を組み、うーんと唸った。覚悟を決めたように頷く。
「しんどいからあんまりやりたくないけど……大枚はたいてもらったしサービスしとくよ」
 言うなり懐からペンと羊皮紙を取り出して広げた。指に先端を軽く突き刺し、血を滴らせる。
 瞼を閉ざすと腕が見えざる手に操られているように動き出した。さらさらと書きつけ、肩で息をしながら差し出す。
「はいどうぞ。何書いてるかは知らないから兄さんたちで読んどくれ」
 ミストバーンは羊皮紙を手に取り、かすかに顔をしかめた。
「何て書いてあったの?」
「読めん……」
 じゃあ私が、と言いかけるルイズにミストバーンは向き直り、真剣な口調で頼んだ。後で文字の読み方を教えてくれ、と。
 結果は本人だけが知りたいのだろうと思ったがどうやら違うらしい。学院の図書館で帰還の手がかりが無いか調べるつもりだと言う。
「何言ってんの!? あんなに本があるのに片っ端から読む気!?」
「このまま無為に過ごすことに比べれば……!」
 吐き捨てる言葉の中には焦りと苛立ちが混ざっている。彼は砕けんばかりに拳を握り締めた。
「もっと……もっと早く取り組むべきだった」
 後悔と己への怒りで身を震わせる彼にルイズが何も言えないでいると、占い師が指でつついてきた。
「嬢ちゃんも視てあげますよ。ま、こりゃ目ェ凝らさなくても視えるね。……諦めなさい」
「はあ!?」
 茶化すような表情が一転して真剣なものに変わった。口調も低く暗くなる。
「あの兄さんは人間じゃない。どこまでも深い闇から生まれた化物さ。とっとと別れて忘れるのが一番ですよ」
 占い師は立ち尽くすルイズに気の毒そうな視線を投げかけ、立ち去るミストバーンに営業用の笑顔で手を振った。


331 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/29(火) 20:22:28 ID:FlDCsgy2
支援なんだユォ

332 :ゼロの影:2008/07/29(火) 20:28:38 ID:vfNJwZxd
 学院に戻って早速特別授業を始めようとしたものの、いきなり壁にぶち当たった。
 ルイズとて魔法が使えない分勉強し、努力を重ねてきた。だが教師としての訓練を積んだわけではなく、どこから教えればよいのかわからない。
 貴族に相応しい言葉づかいは習っても日常会話で文法や体系を意識してはいない。
 改めて突きつけられると大洋へ小舟で乗り出すような気持ちになってしまった。
「わたしが代わりに読むってわけにはいかないの?」
「頭が魔界の大地の教師も協力している。私だけが何もせずにいるわけにはいかん」
 ひどい言われようだがルイズは華麗に聞き流し、溜息を吐いた。
「人に教えるのが上手くて、知識がある、か。……あ」
 ルイズは目を輝かせ、立ち上がった。
「キュルケとタバサに協力してもらいましょ。認めたくないけどキュルケは教えるの上手そうだし、タバサは本の虫で知識の塊だわ」
 ルイズ一人に任せてはどれほど時間がかかるかわからないと思ったため彼も頷いた。
 頼もしき助っ人、キュルケとタバサは二つ返事で了承し、特別授業が始まった。
「任せて、手とり足とり――何でもないわごめんなさい」
 順調とは言えない滑り出しだがキュルケとルイズが主に口を動かし、タバサが説明の難しい場所を簡潔に言い表す。
 たまにシエスタが茶や菓子を差し入れ、チームワークは抜群だ。
 やがて一通り教え終わったと思った教師達は試験を課すことにした。タバサに視線を向けると彼女は静かに「あなたならできる」とだけ呟いた。
 そう言われては誇りにかけて退くわけにはいかない。覚悟を決め、本を開く。
「ちょっと待って」
 重要書類を読むような表情の彼を制し、キュルケは指を立てて真剣な表情で顔を近づけた。美青年と美女が至近距離で睨み合う図が完成する。
「文字をただ読み進めるだけじゃ足りないわ」
 字の連なりの中から意味を読み取り、魂に刻む。
「呪文も同じようなものよ」
 律動と一体化し、『理解』することで真の力を発揮する。
「帰還の方法なんてパッと見てわかるようなものじゃないでしょうから『理解』が必要になるわ」
 しばし沈黙が漂ったが、彼女の言葉に偽りが無いことを知ったミストバーンは頷くと読書を再開した。
 読み終えるとキュルケの質問に難解な哲学書を読むような表情のまま答えていく。
 ルイズは口をぽかんと開け、タバサは本に目を落としていながらしっかりと聞き耳を立て、シエスタも扉の陰から盗み聞きしている。
(しゃ、喋ってる……!)
 必要最低限しか喋らない彼のことだ、てっきり頷くか指をさして答えるのだろうと思っていた。
 答え終えた彼が採点を求めるようにキュルケを見つめると、彼女はどこか爽やかな笑みと共に答えた。
「フフ……あなたの言語能力はもはや本家のあたし以上……ってのは言いすぎだけど予想以上だわ。すぐに図書館の本も読めるようになるわよ」
 ミストバーンは拳を握りしめ、確かな手ごたえを感じたようだった。


333 :ゼロの影:2008/07/29(火) 20:32:30 ID:vfNJwZxd
 早速易しめの本に挑み読みふける彼の姿を眺めながら、キュルケとルイズは雑談に花を咲かせていた。
 キュルケはタバサの帰省に付き合い、諸々の事情から水の精霊を退治することとなった。
 だがそこでギーシュとモンモランシー、ケティに遭遇した。惚れ薬をめぐって修羅場に発展したらしい。
 解除薬を作るには涙が必要なため精霊を守ろうとするギーシュ達と戦い、正体を知って杖を納めた。
 ギーシュ達を倒すわけにはいかず、かといって浸水を放置するわけにもいかない。
 話し合いを試みると盗まれたアンドバリの指輪を取り戻すよう頼まれたのである。
 盗んだ一味の中にはクロムウェルという名の人物がいることや、指輪には偽りの生命を与える力が秘められていることも知った。
「あと……色男に会ったのよね。誰だったかしら。金髪で――」
 うーんと唸り、手を叩く。
「あれはウェールズ皇太子ね。敗戦で死んだって公布があったけど生きていたのね」
 ミストバーンがウェールズの名に顔を上げた。彼の姿は心に深く刻まれており、忘れることはないだろう。
 勝ち目のない戦いに赴くというのに希望の光を瞳に宿し、誇り高い魂を持っていた戦士。
 死を確認していないがあの状況で生き延びられるとは思えない。だがキュルケが見違えるというのも考えにくい。
 その時ルイズの中でアンドバリの指輪とクロムウェルの名、ウェールズの存在が結び付いた。
「ねえキュルケ、その一行はどっちに向かったの?」
「首都トリスタニアの方角よ」
 聞いた瞬間に彼女は駆け出そうとしたが、止められて必死の形相で叫んだ。
「姫様が――危ない!」
 さっそくタバサの風竜で飛び、街道上に人の死体が転がっているのを発見した。
 生存者を見つけて話を聞くと、致命傷を与えたはずの相手が亡者の如く動いて攻撃してきたのだと言う。
 やがて草むらから現れた懐かしい影を見て、ミストバーンが内心を窺わせぬ表情で呟いた。

「ウェールズ……!」


334 :ゼロの影:2008/07/29(火) 20:33:46 ID:vfNJwZxd
以上です。

占い師はこの一話だけですので見逃していただけると嬉しいです…。

335 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/29(火) 23:03:22 ID:mFhF6oq0
頭が魔界の大地って…しばらく意味を考えてからワロタ

336 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/30(水) 04:25:10 ID:OtXPeYTg
魔界の大地扱いひでえw
せめてマルノーラ大陸あたりにしてやってくれw

337 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/30(水) 11:30:13 ID:9RbtrWWz
占い師はおk
こういうチョイキャラは話を盛り上げてくれる。インディジョーンズ的に。

338 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/30(水) 15:53:12 ID:32EFiFVJ
>>321
大きさもそのままの必要はない。
ハドラーの肩に乗るくらいの、ミニ親衛騎団を作ってマスコット化に

339 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/31(木) 07:00:21 ID:mFU71uD7
人がいないようなので小ネタ投下します。

ヒュンケル召喚小ネタ

「やり直しを要求します」
 ルイズは断固たる口調で宣言した。
 彼女は先ほど使い魔を召喚することに成功したばかりであるが、表情は喜びには程遠かった。
 なぜならば、呼び出した相手は人間の、それも平民であったからだ。気絶し倒れているため確認は取れなかったが、雰囲気で判断していた。
 それに何より――
「駄目です。早く契約なさい」
 きっぱり断ったコルベールの目は某魔影参謀より冷たい。普段の温厚さからは想像もできないほどの空気が迸っている。
 ルイズは首を振って倒れている人間を指差した。
「だって、半裸ですよ?」
 うつぶせに倒れている青年は上半身に何も着ておらず、鍛えられた肉体を披露していた。
 一歩譲って人間、百歩譲って平民であることは許せても、お嬢様育ちのルイズにとってさすがに半裸は許容範囲外だった。
 しかしコルベールは『炎蛇』の二つ名にふさわしい眼光で言い切った。
「半裸だろうと全裸だろうと関係ありません。やりなさい」
 散々爆発を起こした後であり、もうルイズに精神力はほとんど残されていない。ここで意地を張って留年にされようものなら死んでも死にきれない。
 彼女は仕方なく男の頭を抱えあげ、接吻した。


 ――やがて彼には『不死身』『奇跡』『一か八か』『変態』などの様々な二つ名がつくことになるが、記念すべき最初のものは『半裸』であったという。


〜続…かない?〜


340 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/31(木) 07:02:32 ID:mFU71uD7
ついでにもう一つ。

???召喚小ネタ

「やり直しを要求します」
 ルイズは断固たる口調で宣言した。
 彼女は先ほど使い魔を召喚することに成功したばかりであるが、表情は喜びには程遠かった。
 立っている青年の瞼は閉ざされ、白銀の髪や整った造作とも相まってどこか神秘的な雰囲気を湛えている。
 鍛え抜かれた体は素晴らしい膂力と敏捷性を備えているであろうことを容易に想像させる。
 高位の神官か貴族――否、王と言われても納得しそうな姿だが、ルイズはすぐさま元の場所に送り返したい気分でいっぱいだった。
 その理由は――
「駄目です。早く契約なさい」
 きっぱり断ったコルベールの目は某魔影参謀より冷たい。普段の温厚さからは想像もできないほどの空気が迸っている。
「だって、全裸ですよ?」
 目を閉じた青年は生まれた姿のまま立っている。
 お嬢様育ちのルイズでなくともさすがに全裸は許容範囲外だった。
 しかしコルベールは『炎蛇』の二つ名にふさわしい眼光で言い切った。
「他の使い魔も服を着ていないではないですか。やりなさい」
 散々爆発を起こした後であり、もうルイズに精神力はほとんど残されていない。ここで意地を張って留年にされようものなら死んでも死にきれない。
 彼女は仕方なく背伸びをして接吻した。
(いやあああぁぁぁぁ!)
 声にならぬ心の叫びがハルケギニアの青空に吸い込まれていった。


 その頃大魔宮では大魔王が訝しげな顔で周囲を窺い、苦々しげに呟いた。
「ミストバーン、お前に預けていた余の肉体が返却されていないが」
 その言葉を聞いた影が目を丸くし、うろたえる。
「そ、そんな!? バーン様……ッ!」
 勇者は好機を見逃すはずもなく剣を構え、突進した。
「さよなら……大魔王バーン!」
 こうして、大魔王は真の姿を取り戻すことなく敗北したのだった……。




341 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/31(木) 07:35:11 ID:HQXg9ggs
小ネタ乙でした
二つ目のにワラタw何と言うタイミングの悪さ。
あの後起き上がった若バーンが「やあ、僕は綺麗なバーンさ」っていう
展開を想像してしまいましたw

342 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/01(金) 16:56:04 ID:ds+D1yYz
ルイズが鬼眼召喚というのも面白そう

343 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/01(金) 18:38:59 ID:kSIaXrXc
鬼眼城召喚したら大変な事に

344 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/01(金) 18:50:12 ID:bRJeEP6v
スクウェアメイジ何人で長い時間かけて錬金した…と思ったら動くからゴーレム!?
みたいな騒ぎになるな。

345 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/02(土) 00:34:21 ID:owK9rhhv
けどあれって動力なんなんだ?
やっぱ魔力で動くのかね

346 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/02(土) 01:01:21 ID:OpVWelIb
バーン様が巨大な玩具って言ってたからきっとぜんまいとかだよ!

347 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/02(土) 02:45:06 ID:BZalRLUG
ミストとかあやしい影が座ってたイスに座ればおkなのじゃないだろうか

348 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/02(土) 05:31:00 ID:3pzC4kEi
あの椅子に座れば誰でもバーン様の超魔力の片鱗を味わえるというわけか

349 :ゼロの影:2008/08/02(土) 11:05:28 ID:3meejqnB
鬼岩城をぜひ操縦してみたい…。

11:20頃に第四話投下予定です。

350 :ゼロの影:2008/08/02(土) 11:20:21 ID:3meejqnB
第四話 偽りの生命

 ウェールズの後ろからアンリエッタが姿を見せるとルイズが悲痛な面持ちで呻いた。
「姫様! そのウェールズ皇太子は、アンドバリの指輪で蘇った亡霊です!」
 叫びを聞いてもアンリエッタは足を踏み出せない。タバサのウィンディ・アイシクルがウェールズの全身を貫いても、なお。
 現実から目を背けるように首を振り、苦しそうな声を絞り出す。
「お願いよ、行かせてちょうだい。偽者でもかまわない……私は誓ったのよ。水の精霊の前で、ウェールズ様への愛を」
「そうさ。通してくれたまえ」
 ルイズの杖が力無く下がった。他の者達もかける言葉が見つからない。彼女の想いを知って止めることなどできるはずが無い。
 胸の重くなる沈黙を低い笑い声が破った。
 ミストバーンがはっきりと口元に笑みを刻み、肩を震わせている。
「何がおかしい?」
 ウェールズの問いに彼は可笑しくてたまらぬと言うように笑い声を響かせた。
「フハハハハッ! 偽りの生命しか持たぬ人形風情が、ウェールズのような顔をするとは笑わせる」
 アンリエッタに指を突きつけ、告げる。どこまでも温度を感じさせぬ声音で。
「そこの小娘……私も似たような技を使うからわかるが、それは所詮躯にすぎぬ。……本物の生命を持つ者が、偽りの存在に安息を求めるとはな」
 彼女は気づいていないのだろうか。偽者と知りつつ従うことがウェールズへの侮辱になることに。
 彼にはレコン・キスタのやり方を責める権利はない。
 ただ、ウェールズではないモノがウェールズのように振舞うのが不愉快だった。彼の誇りを汚された気がしたから。
「あなたに……あなたにこの人を偽りだの人形だの言う資格があって!?」
 耐えかねたアンリエッタが叫んだ瞬間、放たれる空気がはっきりと変わった。
 まるで憎悪が人の形をとったかのように、彼の全身からどす黒いものが立ち上る。
 含まれているのは純度の高い怒りや憎しみ、それだけではない別の感情も見えた。
 ルイズの肌が粟立ち悪寒が走る。
 ――どこまでも深い闇から生まれた化物。
 その言葉が重く心にのしかかり、彼女は思わず自分の体を抱きしめた。
「どきなさい。これは命令よ」
 アンリエッタが精一杯の威厳を振り絞るが、叩きつけられた殺気に息を止め、呻きを漏らした。
「命令……? 私に命令できるのはバーン様だけだ!」
 絶対零度の言葉と共に走る彼を水の壁が阻み、その壁も爆ぜる。それを合図として戦闘が始まった。



351 :ゼロの影:2008/08/02(土) 11:25:43 ID:3meejqnB
 ミストバーンはデルフリンガーを使い瞬時に敵の四肢を切断し、心臓を破壊し、頭部を踏み潰した。
 キュルケが動けなくなった敵にとどめを刺していくが、その顔が曇る。
 雨が降り出したのだ。これでは炎が通じなくなってしまう。
 ルイズが焦りながら『エクスプロージョン』を連発しているとデルフリンガーが呆れて止めた。
 助言に従い『始祖の祈祷書』をめくると文字が浮かび上がっている。
 ディスペル・マジック。惚れ薬を解くのと同じようなものだ。
 詠唱を始めたルイズを中心に円陣を組む一行を見て、アンリエッタは悲しげに顔を曇らせた。行く手を阻む者は――許さない。
 ウェールズとアンリエッタが詠唱を始める。『水』、『水』、『水』、そして『風』、『風』、『風』。
 詠唱が干渉し合い膨れ上がる。王家のみ許されたヘクサゴン・スペル。二つの三角形が絡み合い、巨大な六芒星を竜巻に描かせる。
「あんなのまともにくらったらせっかくのお化粧が台無しね」
 笑みを浮かべてみせたキュルケが目を丸くする。ミストバーンが前に進み出たためだ。どこまでも平静な表情で、自分に任せろというように。
 彼はウェールズに名を覚えておくことを約束した。それは単なる字の羅列ではなく、深く『理解』し、永久に魂に刻みこむということだ。
 かつて決戦の地に導き、散っていった相手を見据える。
 おそらくウェールズは、亡霊が動き回ることに耐えられぬはず。
 巨大な水の竜巻の前に飛び出しデルフリンガーを使って受け止める。
「無茶すんなー相棒」
 呆れたような呟きが聞こえるが、無謀だとは思わなかった。
 なぜなら彼は『理解』しているのだから。
 ウェールズの心を。
 ルイズの力を。
 より恐ろしい、六芒星の真の力を。
 凄まじい水流に飲み込まれ、全身を砕かれるような痛みが意識を責め苛む。
 しかし彼は全く表情を変えない。小雨に打たれているような風情で悠然と立っている。
 彼を従えることなど不可能だと悟ったように竜巻は形を失い、崩れ落ちた。
 ミストバーンがゆらりと身体を動かし、生じた空間にルイズが『ディスペル・マジック』を叩きこむ。
 すると浄化の光が辺りを照らし、ウェールズとアンリエッタは倒れた。
 アンリエッタにとどめを刺そうと歩み寄るのを、ルイズが立ちはだかって杖を突きつける。
「お願い、やめて」
 彼を止めようと思っても言葉は通じない。力で――戦ってでも止めると決意した彼女の予想に反して歩みは止まった。
 力ずくでどかせることは簡単なはずなのに攻撃はこない。
(なんで……?)
 よく見ると顔色がわずかに悪い。原因は精神的なものなのか、それとも身体に異変でもあるのか。
 彼は攻撃に移ろうとはせずに立ったままだった。



352 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/02(土) 11:31:37 ID:WGUqO0El
ここまでかな? 投下乙!

353 :ゼロの影:2008/08/02(土) 11:37:02 ID:3meejqnB
 やがてアンリエッタは目を覚まし、震える手で顔を覆った。
「私は……何と言って謝ればいいの?」
 ルイズも言いたいことはあるだろうがぐっと飲みこみ、彼女を立ち上がらせた。
 アンリエッタが負傷者の怪我を癒し、夢を覚まさせた青年を探すと、彼はウェールズを見下ろしていた。
 何の言葉もかけず静かに、悼むようにただ立っている。
 だが、アンリエッタが近づくとウェールズの目が開いた。その眼には偽りではない真の輝きが宿っている。
 彼は驚愕したように息を呑み顔色を変えた。唇が動き、かすれた音が声にならず零れ落ちる。
「すまない、ミストバーン」
 ――せっかく最後に格好をつけさせてくれたのに。そう語るウェールズは穏やかに言葉を紡いだ。
「ありがとう……!」
 宴の時と同じ、死を目前にしながらどこまでも静かな眼差しだった。
 目の前で起こった事象は彼の理解を超えていた。
(奇跡が、起こったというのか!?)
 ――これは神の起こした“奇跡”とやらか。
 だとしたら、こちらの世界の神はよほど慈悲深いのだろう。少なくとも暇で気まぐれことは間違いない。
(馬鹿な……!)
 奇跡などというわけのわからないもので理が覆されてはならない。そんなことがあっていいはずがない。
 思考がバラバラに乱れかけるが軽く首を振る。
 彼に分かるのは、今アンリエッタと言葉を交わしているのが本物のウェールズであることと、己に奇跡は起こらないことだけだ。
 奇跡など信じるつもりはないが、ウェールズがウェールズとして死んでいくならばそれを送るしかない。
 最期の瞬間まで彼らしくあったと言えるのはきっと幸せなことだろう。彼の主も、最期の瞬間まで『大魔王バーン』であることを望むはずだ。
 ラグドリアンの湖畔まで移動し、二人の会話を眺めていると名も知らぬ感情が湧き上がってくる。
 目の前の光景は、体を持たぬ者には踏み込めぬ領域だと知っている。
 彼は言葉も無く立ち尽くしていた。


 その時“彼”の感覚の網に何かが引っかかった。
 己の影の気配をかすかに感じ、額にある第三の目に意識を集中させ探っていく。
 すると、一瞬全く知らぬ世界が映った。
 ここに己の部下がいる。
 今はまだ世界の像をわずかに捉えただけだが、いずれ影を見つけるつもりだった。


 学院まで戻ったミストバーンは占い師の渡した羊皮紙に目を通した。
 滲んだ部分が多く読める個所は少ない。落胆と安堵の混じった奇妙な気持ちが彼を包んだ。
『――が完全に食われる時、――が――、――を――。――の光が姿を現し、影を包む』
 羊皮紙から目を上げ、中庭を赤く染める落陽と長く伸びる影を見て、彼は何かが変わる予感を覚えた。

 光と影が巡り、風が吹き、王国に影差して物語は終わりへと加速する――。

第三章 影差して 完

最終章 太陽と影 へ続く

354 :ゼロの影:2008/08/02(土) 11:38:20 ID:3meejqnB
以上です。

最後まで書き上げたものの投下のペースがつかめません。
一気にいきたい気もしますが、最近のスレの速度的に投下の頻度を落とした方がよいでしょうか?

355 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/02(土) 13:45:32 ID:VL+Ao9qk
>>354
ペースとかは問題ないと思う。
大事なのは質よ質。
納得いくものが書けてればいいんじゃない?


356 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/02(土) 18:22:17 ID:CDpVGrWq
影の人乙!よかったよ。
最終章もいいモノが書けたと思ったら速度とか気にせず投下してくれ!

スレの速度が投下のスピードを決めるんじゃない、
投下がスレの速度を決めるんだよ!!!

357 :ゼロの影:2008/08/03(日) 10:38:36 ID:uG+JyrsQ
わかりました。少しでも良いものにできるよう修正して、納得してから投下します。
これだけではなんですので小ネタ投下。

フレイムA召喚小ネタ

『……メガンテ』
 ――ああ。
『貴様らぁ……っ、よ、よくも――を……!』
 オレは……死んだんだな。勇者との戦いでドジっちまって。
 ここはあの世か? 青い空、白い雲――立派な建物も見える。起き上がって辺りを見てみると人間のガキが周囲にわらわらいやがる。
 本当にあの世なのか、ここは。とりあえず攻撃しようとしたところで目の前の小娘がでかい声で叫びやがった。
「やった! 成功したわ! よろしくね」
「……は?」
 何言ってんだ、コイツ。おまけに周りの奴らも心温まる眼差しで見ている。
「とうとう“ゼロのルイズ”の汚名返上だな」
「春が来たのね。よく頑張ったわ」
「すばらしい……!」
 何だ何だ、このハートウォーミングな言葉は? いったい何なんだよ!
「わたしはルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。あなたは?」
「……フレイムA」
 そう、オレは勇者一行に挑んだもののヘマしちまって死んだはずだった。何でこんなとこにいるのかわからねえが、一刻も早く戦いに戻らなきゃならない。
 当然こいつらをサクッと片付けて……と言いたいところだがオレはフレイザード様みたいに強くねえ。
 よーく観察してみるとどうやら全員魔法使いらしい。その中にはオレの苦手なヒャド系呪文を使う奴もいるだろう。
 犬死する気はないからまずは状況を――
「あんたはわたしの使い魔になるのよ」
「ふざけんなッ!」
 いくら下っ端とはいえ栄光ある魔王軍の一員たるこのオレに、人間の――それも小娘が使い魔になれだと!? バカにするにもほどがある!
 だが、抗議しようとしたオレの口は小娘の唇でふさがれた。
 ……熱くねえのかよ? というかこれってキスってやつじゃねーか。
 そういやオレ、フレイムPにもブリザードBにもフられて、生きてきた中で恋人いなかったんだよな。でもこの小娘はためらわずオレにキスしてきた。
 ってことは、オレに気がある?
 よくよく見ると人間の中では可愛い方だと思う。多分気が合いそうだ。
 さよなら冬の時代。オレは人生の春と夏をエンジョイするぜ……って待て待て。いくらなんでも魔王軍としての誇りが――。
 でも、妙な紋様が光るとオレは変な気持ちになった。言われてみれば使い魔な気がしなくもない。
 ぎゅっと抱きしめられてオレは思わず頷いてしまった。

 ――こうしてオレの第二の人生が始まった。

〜たぶん続かない〜

バーン様、ミストバーン、マキシマム、そしてフレイムA。
どう見ても嗜好が偏りすぎです本当にr

358 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/03(日) 11:05:08 ID:sqJCLXUc


・・・ところで、一応人型っぽいとはいえフレイムの美醜感覚で人間にしては可愛い方っつーのは・・・・・・

どうなんでしょうねw



ルイズの性格はフレイザードばりに極端に振れるタイプでしょうが

359 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/03(日) 11:22:43 ID:DYUBwmPr
>>357
癒されたw

360 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/03(日) 11:50:39 ID:ej51xXJO
フレイムAかわいいよフレイムA

361 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/03(日) 13:31:26 ID:1OKaAtWl
フレイムAさん!
バルジ島で爆弾岩の上に着地してメガンテかけられたフレイムAさんじゃないですか!

362 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/03(日) 19:07:20 ID:MlOhaqjj
ドコのフレイムAかと思ったらバルジ島にいたなw

363 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/03(日) 19:38:12 ID:vaw8xukK
>>どう見ても嗜好が偏りすぎです本当にr

大丈夫、そんな貴方が我々は大好きです(笑)

364 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/03(日) 20:08:26 ID:JfknxK+U
ゼロの影の人投下乙。
そしてフレイムAさん!
実を言うと死亡キャラで投下できそう?と考えてましたが
全身炎にどーやってキスするよ?と思い止めた身としては涙ものです。
細かいところはキニスンナってことですね!

365 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/03(日) 20:28:04 ID:DYUBwmPr
フレイムの尻尾は燃えてるけど熱くない
きっとこれが答えなんだよ

366 :虚無と爆炎の使い魔:2008/08/04(月) 13:00:39 ID:MA7TIOrF
――二年虚無組・爆炎先生――


「突然ヴェストリの広場に集合だなんて何の授業かしら?」
 廊下を歩きながらルイズが呟いた。ルイズだけではない。前後左右を歩くクラスメート達も同じ内容を話題にしている。
 ルイズの隣で話を聞いていたキュルケは、皆の意見を代表するが如く答えた。
「さあ?でも『乗馬』の先生の代わりだから……きっと身体を動かす内容なんでしょうね」
 その言葉にルイズは納得した。二〜三日前に乗馬を教えていた教師が落馬してしまい、「しばらく馬に乗りたくない」等と言い出した為に、急遽、学院が代役の教師を探していた事は噂になっている。
 ルイズにとっては魔法を使わなくてもよい乗馬の授業が変わってしまった事はとても残念に思っていた。そこにいきなりヴェストリの広場に来る様に、とのお達しである。
 もしかしたら嫌な魔法実習の授業に変わるのかも知れない、などと考えていたルイズにとっては渡りに船だった。つい足も軽くなるというものだ。
「着いたわね。……けど、誰もいないじゃない」
 目的地に到着したルイズ達一同だが、広場は無人であった。馬はおろか、教師の姿すら見えない。場所を聞き間違えたのか?とキョロキョロする一同に突然張りのある声がした。
「来たか……では授業を始めよう」
 そう言って一人の男が空から降りて来た。全身を覆う黒いローブに頑強な兜。誰も見ても圧迫感を催すその姿は今や学院一の有名人に他ならない。
「は、ハドラー!……あ、あんた何してんのよ!?」
 クラスメート達が驚きにざわめく中、弾かれた様にルイズが叫んだ。どうにも事態が把握できない。誘われるままにヴェストリの広場にホイホイ来たら何故か自分の使い魔が「授業を始める」と言う。
 ルイズ自身、何を言ってるのかわからない。頭がどうにかなりそうだった。
 そんなルイズの様子にも、ハドラーはいつもと変わらぬ調子で答えた。
「ついさっきまで部屋で眠っていたのだがな。ここの学院長とやらが急に尋ねて来たかと思うと俺に代理で教師とやらの真似事をしてくれと言って来たのだ」
「オールド・オスマンが?」
 思わずルイズが聞き返した。信じられないといった顔である。
「俺の持つ知識や能力を期待して、との事だ。とは言っても、秘書とやらが王宮から代わりの教師を連れ帰る迄の間だけらしいがな。俺の好きな様にしてもらって構わんと言うので引き受けた」
「だからって……使い魔が教師なんて」
 尚も引き下がろうとしたルイズをハドラーは手で制した。
「それに……どうやら俺は一つ『借り』があるらしい」
「オールド・オスマンに『借り』?」
 ルイズの覚えている限りでは二人はほとんど顔を合わせた事が無い筈だった。ハドラーは一つ頷く。
「ああ、確か椅子…「あーあーわかった!わかったわ!」
 ハドラーの声をルイズが慌てて掻き消した。椅子と言えば応接室の『アレ』しかない。ルイズの顔が途端に青冷める。
「ルイズー!椅子って何の話だ?」
 話を聞いていたらしいクラスの何人かがルイズに問い正すも、物凄い形相で睨まれ、すごすご追い返された。それを無視して落ち着きの無い様子のルイズが大声でまくし立てる。
「と、とにかく、オールド・オスマンに任された以上は、例え使い魔と言えど教師は教師、授業は授業よ!サボったりしたらそれこそオールド・オスマンから叱責を受けるかもしれないわ!」
 ルイズが必死に取り繕った言葉は一応の説得力を発揮した様だった。「まあ言われてみれば……」と言った感じで他の生徒達もちらほら同調する。
 少しの後、どうやら全員の同意を得られた様だと判断したルイズは、ほっ、と胸を撫で下ろした。
「……それで、一体何の授業を教えるの?」
 自分の使い魔という事で、急遽クラスの代表に選ばれたルイズがハドラーに質問した。
「ふむ……色々と考えてはいたのだがな。この世界の魔法など俺は知らぬし、俺の知識や魔法を教えようにもお前達が扱うには実力不足だろう」 顎に手をやり、珍しく考え込んだ様子のハドラーが、やがてゆっくりと手を下ろす。
「……よって、やはり俺の得意な事を教えた方が為になると判断した」
 その瞬間ルイズの身体中から冷や汗が噴き出した。以前も体験したこの感覚が猛烈に嫌な予感を告げる。
 にやりと笑ったハドラーは高らかに宣言した。
「今日の授業は魔法及び近接格闘を駆使した戦闘術の訓練を行う事とする!」

『やっぱりいいいいいい!!』

 ルイズ以下全員の声が一つになった。


367 :虚無と爆炎の使い魔:2008/08/04(月) 13:01:41 ID:MA7TIOrF
「さて……」
 そう呟いたハドラーが自分のローブから小さな砂時計を取り出す。
「訓練内容は一対一だ。砂時計が落ちるまでに俺を倒すか、若しくはこの場から動かせたなら合格。また、俺の攻撃を最後まで凌ぎ切った場合も合格としよう」

『出来るか!!』

 いきなりの死刑宣告にルイズを始めとしたクラスの面々は青くなった。中には八つ裂きにされる自分を想像してしまい、失神する者まで現れる。
 そのあまりの有様にハドラーは「やれやれ」と呟くと、静かに説明した。
「心配するな。当然手加減はする。死人だけはださない様にと言われたからな」
「その『だけ』ってのがすっごい気になるんだけど……」
 ルイズの的確な指摘にもハドラーは何ら気にしていない様子であった。無言のまま、いつもとまったく変わらない顔で引き続き立候補者を募っている。
 周りを見渡して、誰も手を上げようとしない事を確認できたルイズは大きく息を吐いた。きっ、と顔を引き締めるとそのまま静かに手を上げる。
「ほう……まさか主が一番乗りとは」
 つい驚きの声を上げたハドラーにルイズが答える。
「このまま待っても時間の無駄だもの。自分の使い魔の事だし、まずは私が行くわ。……このままじゃ全員欠席扱いになっちゃうし。」 
 ルイズが杖を取り出し、その先端をハドラーに突き付けた。
「それに、私だって少しは成長したんだもの……。ちょうどいい機会よ!ここであんたに私の力を認めさせてやるわ!」
 ルイズの宣言にギャラリーの生徒達から「おーっ!」と声が上がった。ハドラーの口が吊り上がる。
「いいぞ!その意気だ主よ。では……」
 ハドラーが砂時計を置いた。
「「勝負!」」

368 :虚無と爆炎の使い魔:2008/08/04(月) 13:02:42 ID:MA7TIOrF
開始と同時にルイズが魔法を唱えた。ハドラーの足元が爆発し、派手に舞い上がった土埃が視界を隠す。
 契約の時の戦いで使った作戦をルイズなりにアレンジしたのだった。
「良し!あとは……」
 後ろへ距離を取ったルイズは決定打を放つ為に集中を始めた。だが――
「いい方法だが詰めが甘いぞ。――メラミ!」
 土煙の中でハドラーが呪文を唱えた。指先から生まれた炎がハドラーの周りを覆う。
 勢いよく燃え盛った炎の熱は周囲の土埃を一気に吹き飛ばした。そのまま姿が丸見えになったルイズにハドラーは容赦無く魔法を唱える。
「いやあああああ!!」
 悲鳴を上げるルイズを、無情且つ正確に魔法が直撃した。空中を優雅に三回転した後、地面にたたき付けられる。
「あ……あうう……」
 ボロくずの様な姿になったルイズが呻き声を上げると生徒達の顔が悲壮感なものになる。
「爆発で目くらましを作ったのは良かったのだがな……強力な魔法を使うにはある程度の『溜め』が必要になる。むやみに使うと手痛い反撃を食らう事になるぞ」
 虫の息と言った状態のルイズにハドラーは冷静に批評した。
「とかくこの『世界』では魔法を重視している様だが……。魔法には弱点も多い。使用するには多少の時間が必要な上、相手に接近されたり精神力が切れたら終いだ。これは相手にも言える事だがな」
 教師らしく講義を始めたハドラーを、皆黙って聞いていた。タバサなどは「成る程」と頷きつつ、メモを取ったりなんかしている。
 一方のルイズはダメージが深いのか、未だ呻き声を上げていた。
「だからこその接近戦だ。今の場合、強力な魔法など必要無かった。目くらましを掛けてすぐ、石でも握って後ろから殴り掛かるか、至近距離で死角から爆発でも起こせば、あるいは俺を『動かせた』かも知れん」
 呻き声が小さくなり、ルイズの顔色がいよいよ悪くなって来た。だがハドラーのターンはまだ終わらない。
「逆に、相手が強力な魔法を使おうとしても、咏唱の隙を突けば簡単に倒せる。相手の力が上の時こそ、そういう戦い方が必要になるだろう……。戦闘においては魔法だけが重要では無い事をゆめゆめ忘れるな」
「そういう……事は……もっと早く……言って……欲しかった……わ」
 講義を終えたハドラーにルイズは最後の力を振り絞って毒づくと、そのまま意識を失った。

  ――まあ、俺を『倒そう』とした意気込みは流石と言った所だったがな――

 思わずニヤリとしながら、主の健闘を内心で讃えたハドラーだった。



369 :虚無と爆炎の使い魔:2008/08/04(月) 13:03:43 ID:MA7TIOrF
「さて、次は誰が来る?」
 ハドラーの声に生徒達がびくりとした。先程まどとはまた違う静けさで、皆黙りこくっている。
「わ……。私、まだ死にたくないわ」
「激しく同意だ」
「くそう!……決めたぞ。この授業が終わったら、俺、あの娘に告白してやる!」
「おまwwwそれフラグ」
 実際ルイズは気絶しただけなのだが、実戦などまるで経験した事が無い生徒達にとっては、ハドラーが自分の主を何の躊躇も無く葬り去った?様に見えたらしい。
 ひたすら自分の境遇を哀れむだけの生徒達に珍しくハドラーはため息を吐いた。
「……ふむ。これでは埒が開かんな。仕方あるまい。代役を立てよう」
 そう言ってハドラーが別の方向へと歩き出すと、こないだの雨で出来た大きな水溜まりの前に立った。水溜まりの泥に触れたハドラーが何かの呪文を唱えると泥が変化する。
 あっという間に大人程の大きさに成長した泥の人形が完成すると、ハドラーは生徒達に向き直った。
「禁呪法……俺の魔力で生み出した人形だ。ギーシュとか言う小僧の使っていたゴーレムとやらに似たものだな。こいつに相手をしてもらう事にしよう」
 ハドラーが泥人形の肩を叩いた。人影の様に輪郭だけの顔がわずかに頷くと生徒達の方向へと歩いて行く。
 ハドラーと生徒達との中間で立ち止まると『掛かって来い』とばかりに仁王立ちになった。
「力は大分弱くしてある。さあ、誰か挑む者はいないのか?」
「……よし。僕が行こう」
 ざわつく生徒達の中、ハドラーの声に応じたのは先程名前の上がったたギーシュであった。若干緊張しながらも足取り確かに人形へと歩いて行く。
「また面白い相手が現れたものだ」
 ふっ、と笑うハドラーに対峙したギーシュは怯まず言い返す。
「確かに君は恐ろしく強いが……ゴーレムの腕前は未熟のようだ。僕の『ワルキューレ』をこんな泥人形なんかと比べられるのは面白くない。それに……」
 ギーシュの声がトーンを下げた。あの日の自分の姿を思い出し、端正な顔を歪ませる。
 「君とルイズにはこないだの件で醜態を晒してしまったからね。ここらで汚名返上といきたいのさ」
 ギーシュが再び顔を上げると、その目にはこれまでに無い雰囲気が漂っていた。

「……いいの?止めなくて。確か貴女の彼氏なんでしょ?モンモランシー」
 ギーシュの勇ましい宣言を他の生徒達に混じって聞いていたキュルケが声を掛けた。
「だから彼氏じゃないって。こないだの事もあるし」
 キュルケの隣に立つモンモランシーが素早く反論した。
 だが言葉とは違ってその挙動には落ち着きが無い。不安そうにギーシュを見たかと思えば、小声で「知らないんだから」と急にそっぽを向く事を何度も繰り返している。
 それに引き摺られて(彼女のトレードマークである)髪の縦ロールがくるくる動くのを見ながら、キュルケは取り合えずフォローしてやる事にした。
「まぁ見た目は本当に普通のゴーレムみたいだし、大丈夫なんじゃない?むしろケガでもしたら、これを機に仲直りするチャンスなんだし」
 キュルケの言葉は(特に最後の一言が)功を奏した様だった。『仲直り』の部分にやたら反論する以外は落ち着きを取り戻した様である。

 ――はぁ……カッコつけちゃって……ほんとバカなんだから――

 心の中でそう思いつつ、モンモランシーはギーシュの無事を祈った。



370 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/04(月) 13:03:56 ID:li79HmAp
っちょ、ハドラー様が教師ってw
支援するしかない!!

371 :虚無と爆炎の使い魔:2008/08/04(月) 13:05:33 ID:MA7TIOrF
 ギーシュは、ポケットから薔薇を取り出すと勢い良く振り上げた。花びらがいくつか宙を舞う。
 返す動きでギーシュが腕を振り下ろすと、花びらが七体の戦乙女をかたどった像へと変身した。
「油断はしない。最初から全力でいかせてもらうよ。行け!ワルキューレ!!」
 ギーシュの声に反応して青銅の乙女像達は次々と襲い掛かった。槍を手にした最初の一体が大上段に振りかぶって泥人形の頭を叩き潰そうとする。
  ――だが、泥人形は俊敏な動きで腕を伸ばすと、ワルキューレの槍をがっちりと掴んだ。ゴーレムの動きとはとても思えない程早く、正確な動きにギーシュを含めた生徒達の目が点になる。

  ――カッ!――

 その時、槍を掴む人形に突如『眼』が誕生した。ハドラーそっくりに鋭く見開かれた眼が静かに、ギーシュの方を向く。
「へぇ……。お前か?俺とやろうってのは」
「え!?」
 再び生徒達の時間が止まった。今の声は誰が出した?そんな思考がたっぷり頭をかけめぐり――

『ご、ご、ゴーレムが喋ったあああああぁぁぁぁ!!』

 結論の出た生徒達が一斉に答えを出した。当のギーシュも戦闘中という事を忘れたかの様にぽかんとした顔をしている。
「何だよ。人形が喋っちゃ悪いのか?」
 ニヤリとして人形が問うが、誰も答える者はいなかった。人形は、まあどうでもいいか、と言った様子で再びギーシュに話し掛ける。
「ギーシュ……だっけか?俺とやろうって心掛けは見上げたもんだがよ。こんな『オモチャ』の手を借りるってのは感心しねぇなあ」
 槍を受け止めている人形の手からバキンと音がした。いつの間にやら槍が真っ二つに折られている。
「男ならよ……」
 人形が目の前のワルキューレの腕を掴んだ。槍と同様の音を上げた後、ワルキューレの肩から先が綺麗に折れる。
「男なら……」
 人形の身体が突然輝きだした。同時に人形が拳を引くと、全身の光は人形の左手へと集まっていく。
「男なら、自分の拳で勝負して来いよ!――いくぜ!!ヒィィィトナックルゥゥゥ!!」
 光輝く人形の左拳がワルキューレに命中すると、凄まじい爆発が起きた。呆然として見ていたギーシュの足元に上空から飛んできた何かがくるくる回転しながら突き刺さる。
 ワルキューレの残骸だった。熱と衝撃でひどくひしゃげたそれは、元がどんな形だったのか、しばし忘れてしまう程に無残な姿へと変えられている。
 目の前の障害物を排除した人形は、ふんと鼻を鳴らすとギーシュの方へと近づいて来た。


372 :虚無と爆炎の使い魔:2008/08/04(月) 13:06:35 ID:MA7TIOrF
「う、うわぁぁぁ!!わ、ワルキューレーー!!」
 すっかり恐慌状態に陥ったギーシュが残りのゴーレムを人形へと向かわせる。だが――
「そいつは効かねぇと言っただろう!!」
 そう言って人形がワルキューレ達に飛び込んでいった。遅い来る青銅の像を自らの手足でいとも簡単にぶち倒していく。
 最後の一体を鮮やかな回し蹴りで地面に叩きつけると、ハドラーそっくりの笑みを浮かべた人形がギーシュに話し掛けた。
「どうしたよ……もう『手品』は終わりか?」
「な…ただの泥人形の筈だろ?それがこうもあっさり……」
 すっかり怖気づいたギーシュは、震えながら疑問を口にした。
「フン!泥団子と同じだ。土だって集めりゃ中々に固くなる。それにお前ら人間だって意識を集中すれば、普段はもろい身体でも通常以上のものになるだろう?それと同じ事を俺もしただけよ!!」
 泥人形の言葉にギーシュを含めたこの場の生徒達は戦慄した。理屈はわかるも、たかがゴーレムがそんな高等な格闘技術を使うなど聞いた事が無い。
ハドラー程では無いものの、この正体不明の生物に皆の表情が怯えの色に変わる。
「もう抵抗は無しか?……なら覚悟はいいかい?貴族のお坊ちゃんよ」
 ゴン、と両拳をぶつけながら泥人形がギーシュに迫った。怯えがすっかり恐怖に摩り替わってしまったギーシュは逃げる事もできずにその場から動けないでいる。
 ついにギーシュの前に立った人形が、ゆっくりと拳を振りかぶった――
「ち……ちっくしょぉぉぉーーー!!死んでたまるかぁぁぁーー!!」
 恐怖が限界に達したギーシュが壮絶な叫び声を上げた。貴族という事も忘れ、生存本能に駆られるがままに、なりふり構わず夢中で拳を
振るう。
 バァン!と子気味よい音を立ててギーシュのパンチが人形の頬に命中した。
「…………へぇ、やりゃあできるんじゃねぇか」
 攻撃を食らった筈の人形は嬉しそうな顔をした。ギーシュはと言えば、今自分のした行為を信じられない様子である。
「ぼ……僕は一体何を……。貴族ともあろうものが、まさか素手で殴りかかるなんて……」
 呆然とした様子でいるギーシュの肩に、人形がぽんと手を置いた。
「何言ってやがる。今のパンチは中々良かったぜ。気迫が篭ってて、あんなみみっちい像なんかとは大違いだ」
 その一言に、ギーシュの目が色を帯びた。
「え……?ほ、本当かい?」
「ああ……いいセンいってるぜ。お前もしかしたら拳士の才能があるかもな」
 そう言ってにやっと人形が笑った。それにギーシュも続き、やがて、二人の明るい笑い声が広場に響く。
 場の雰囲気が、先程の空気とは打って変わり、お互いの健闘を讃え合う爽やかなものになっていた。
「……だけどよ、まだ俺の攻撃は終了してないぜ?」
「え?」
 びしりとギーシュが凍りついた。
「まだ勝負は決まってないぞ。お前はまだ動けるんだからな。という訳で、今度は俺のターンだぜ!!」
「うぎゃぁぁぁぁぁ!!」
 ギーシュの叫びが再びヴェストリの広場に響き渡った。

373 :爆炎:2008/08/04(月) 13:08:58 ID:MA7TIOrF
「さて、時間も勿体無い。残った者全員で、こいつと戦うがいい」
 人形を作って以来何もしていなかったハドラーが久しぶりに言葉を発した。ハドラーと頷き合った人形が一歩ずつ生徒達へと近づいていく。
 生徒の何人かがギーシュの方向を伺う。
 そこには顔面をヒートギズモの様に変形させられたギーシュが、ルイズの隣で仲良く転がされていた。どこか呆れた様な顔をしたモンモランシーが治療の用意をしている。
 さながら遺体安置所の様な風景に、次に隣に並ばされるのは自分達か?と想像した生徒達は恐怖に陥る。
「に……逃げ……」
 何人かがそう思ったが時既に遅かった。いつの間にか回り込んでいたハドラーが両手を伸ばし退路をがっちりと塞いでいる。
「言い忘れていたが……どの道全員参加してもらうぞ。俺の授業に欠席は無しだ」
 ハドラーが威厳たっぷりに言い含めた。その振舞いは本物の教育者そのものと言った感じである。
 最後の希望が絶たれた事を知った生徒達は肩を落とした。どこからか悲しみの嗚咽が聞こえて来る。敬愛する王女が死んだ様な悲壮感が広場を漂った。
 やがてその声すら聞こえなくなると、突然肩を落としていた生徒達が無言で一人、また一人と起き上がった。まるで幽鬼さながらの感情が抜け落ちた顔をしている。
「逃げられない……もう、逃げられない……」
「私達もああ、なるのね……」
「あの娘に、告白したかったなぁ……」
「そのパターンは珍しいな……。まぁどの道一緒だが」
 思い思いに言葉を述べた生徒達はゆっくりと人形に向き直った。覚悟の完了した生徒達が一斉に雄叫びを上げる。
『うおおおおおおおおおお!!畜生!!いいさ!!やってやる!!殺ってやるぞおおおおおお!!』
「うむ。熱心だな」
 腕を組んでそう呟くハドラーを背に、目を血走らせた生徒達が壮絶な顔で突貫して行った。


374 :虚無と爆炎の使い魔:2008/08/04(月) 13:09:59 ID:MA7TIOrF
「終わった様だな」
 威厳たっぷりのハドラーの声に人形が頷いた。
 辺りはすっかり夕方になっていた。地平線の近くまで降りて来た太陽がトリステインの校舎を赤く、美しく染め上げている。
 その光景に視線を見遣る二人の伸びた影に隠れる様に、力尽きた生徒達が累々としていた。
 大小様々な傷をこしらえて突っ伏した生徒達を、モンモランシーを初めとしたクラスの水メイジ達が献身的な治療にあたっている。
 ルイズは戦いの途中で既に起きていた。ギーシュの隣で気絶していた為「ついでだから」とモンモランシーの治療を受けられたのである。
 とは言え、モンモランシーからいきさつを聞いた後は、自分にできる事は無さそうだと判断したルイズは、その後は今まで事の成り行きを黙って見ているだけだった。
「本人だけならまだしも……そのゴーレムまで強いって……もう何でもアリじゃない」
「まったくだわ。魔法は殆ど効かないし、ダメージを受けても土だから身体は修復できるしで……。とても代理ってレベルじゃないわよね」
 ルイズの横から突如声がした。思わずルイズが振り向くと、そこには何故か地面に伏せた格好のキュルケとタバサがいた。
「キュルケ!あんたいつの間に?ていうか大丈――!?……大丈夫……みたいね?」
 不思議そうな顔でルイズが訝しんだ。服が多少汚れてる以外、キュルケに変わった点は見られない。
「適当に倒されたフリをしてたのよ。あれだけの混戦だったもの。誰がやられたなんてわかる訳無いわ♪」
 あっけらかんとした様子でキュルケがネタばらしをする。それを聞いてルイズの目がタバサに向けられた。
 どうやら彼女も同様らしく、身体に異常は見当たらない。どこから持って来たのか、木の枝を両手に握っていたりもする。
 二人の状態を確認し、無事なのは喜ばしいものの、どこか不公平を感じるルイズは独りうなだれるのであった。
「それにしても彼……何考えてるのかしらね。こんな一方的な戦いじゃ授業でもなんでも無い――」
 ハドラーの方向に視線を向けたキュルケが毒づいた。が、
「一方的では無い。こいつには弱点もある」
 声がした瞬間、見事なまでの早業でキュルケとタバサが物言わぬ屍と化す。いつの間にかハドラー達が近くに来ていたのだった。
「弱点なんかあるの?」
 ハドラーの隣に控えている人形を見て、ルイズが思わず聞き返した。
「うむ。こいつは……水に弱い」
「ハドラー様の言う通りさ。まあ泥だから当然なんだけどよ。水にはあっさり溶けちまう。『ヒートナックル』も連続しては無理だしな。最終的にはお手上げだ」
 ハドラーの話に加わった人形はそう言って両手を上げた。ルイズは驚いた様に目ばたきを繰り返す。
「え……、じゃ、じゃあ」
「うむ。俺がこいつを作る所は皆見ている。ヒントは充分に与えた筈だ。もしそこらで治療に努めている水のメイジとやらが、始めから一丸となって攻撃に回っていれば……これだけの人数差だ、勝機は充分にあった」
 未だ倒れている生徒達にも聞こえる様に、大きく重々しい声が広場に響き渡る。ハドラーが何を言いたいのか、ルイズもようやく分かり始めて来た。
「……時には、普段の役割を交代させる事だって有り得ると言う事だ。実戦では何が起こるかわからん。見た目で相手を侮ったり、後方支援は水メイジの役目、と決め付ける様な、下らない固定観念は捨て去る事だ」
 ハドラーの指摘に思い当たる節がある何人かの生徒達は、びくりとしてうなだれた。中には四つん這いで大げさに落ち込む者もいる。
「――では授業を終了する!」
 立ち上がる者が誰もいない中、ハドラーが高らかに締め括った。



375 :虚無と爆炎の使い魔:2008/08/04(月) 13:10:44 ID:MA7TIOrF
「……ところでこのゴーレムって、一体どうするの?」
 ボロボロの姿でぞろぞろ引き上げて行く生徒達を尻目に、ルイズがハドラーに質問した。
「……おお」
「そう言えばそうだったな」
 今気が付いたとばかりの二人?の反応にルイズは身体の奥底からため息を吐いた。
「そうだな……授業とやらも終わった事だし、こんな中途半端な身体じゃハドラー様のお役には立てそうもねぇしな。誰かに水でもぶっ掛けてもらうとするか」
 そう言ってヘっ、と笑う人形にルイズは唖然とした。先程水が弱点と自分で言ったばかりである。それが意味するのは――
「そ、それって死んじゃうって事じゃない!だ、ダメよそんなの」
「何がダメなんだ?俺は元々土から生まれて来た。それが元通りになるだけだろう?」
 慌てて止めるルイズだったが、人形は言ってる意味がわからないといった様子で首を傾げる。
 どうにも理解してもらえない人形に業を煮やしたルイズは、助けを呼ぶ様にハドラーの方を向いた。人形の主は静かに口を開く。
「……ふむ。実を言えばお前が生み出されて来た事は俺にとっても予想外だったのだ」
 ハドラーの突然の告白にルイズと人形は頭に疑問符を浮かべた
「最初俺は、自己の意思が薄い、命令に従うだけの人形を作ろうとしたのだが……どういうわけかお前が生まれて来た」
 言いながらもハドラーはにっ、とした。目の前の人形はかつての自分の部下の一人にそっくりな性格をしている。
 禁呪法を使った時、懐かしい思いと共に、部下達の顔が確かに浮かんだ。それが目の前の人形の精神に影響したのであろう。ハドラーは胸中でそう分析する。
「ふふっ……ここに来てからというもの、俺もすっかり甘くなってしまったらしい」
 楽し気な顔をしたハドラーを、ルイズと人形は意味が分からないという目で見た。
「せっかく意思を持って生まれて来たのだ。その命、無駄にする事も無いだろう。お前の意思で自由にするがよい」
 ハドラーの言葉に人形は一瞬驚くものの、やがて丁重に頷いた。その光景にルイズはようやく安堵する。

なんかわからないけど、取り合えず丸く収まったみたいね」
 ルイズ達のやり取りを少し離れた所で見ていたキュルケがタバサに聞いた。黙ってタバサは頷く。
「ま、これでまた一段と学院生活が面白くなるんでしょうね。これから楽しみだわ♪……じゃ戻りましょうか」
「……まあ待て、そんなに急ぐ必要はあるまい。ゆっくりしていけ」
 身を翻した二人の肩に突然後ろから手が置かれた。ゴツゴツとしたその手に見覚えのあった二人は動きが止まる。
「あ、あら……いつの間にここへ?ず、随分お早いのね?」
「あやうく忘れる所だったのでな。さっきの戦闘の事でだが……」
 二人の肩に置かれた手が少々重さを増した。いや、そう感じただけなのかも知れないが。二人の顔から嫌な汗がとめどなく湧き出て来る。
「あの時俺は特にやる事も無かったのでな。誰がどの様な戦い方をしたのか一人一人観察していたのだが……ちょうど二人ばかり、戦いに一切参加してなかった事を、たった今思い出したのだ」
 肩の手がますます重さを増していく。二人の顔は顔面蒼白だ。
「よって、お前達二人には、後日『補習』を受けてもらう事にした。俺が直々にたっぷりと付き合う事にしよう」
 ハドラーの言葉に、ついに二人が崩れ落ちた。四つん這いになったキュルケは乾いた笑いを上げ、タバサは『人生オワタ\(^o^)/』のポーズのまま固まっている。
 そんな二人の様子を見ながら、『ハドラーGJ』と心の中であらん限り叫び続けるルイズだった。

 その後、ハドラーに『ヒム』と名付けられた人形は、ルイズの提案により魔法学院の衛士として働く事となった。
 衛士達も、雨の日以外は十分な働きをしてくれるこの人形に気を良くしたらしく、喋るゴーレムとの奇妙な交流は今も続いている。
 また、今回のハドラーの授業で壮絶な体験をした生徒達は皆何かに目覚めたらしく、その後、傭兵達によって魔法学院が占拠された時、ヒムと共に多大なる戦果を上げたりするのだが……それはまた別の話。




376 :虚無と爆炎の使い魔:2008/08/04(月) 13:12:15 ID:MA7TIOrF
番外編終了です。そういえば投下予告してなかったですね。すみませんorz

>>257 >>258氏のレスを見て自分の中に何かが降りて来た為
書いてみたんですが、勢いだけだとやっぱりgdgdになってきてしまい
話をまとめるのが大変でした(ヒムの設定も曖昧にしてるし)
あとヒムを土じゃなくて泥にしたのは本家DQのモンスターにいたからです。
同じ様なものですがw
でも教師のハドラーは書いてて楽しかったです。というかこれがやりたかっただ(ry
なんか色々すみません。ではまた本編にて ノシ

377 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/04(月) 13:16:10 ID:li79HmAp
乙でした〜
流石ヒム!泥の体でも熱い男だ!

378 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/04(月) 13:30:22 ID:li79HmAp
…って、今気づいたけど爆炎先生www

379 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/04(月) 14:55:10 ID:gGFzZLc2
……泥人形って「モンスター物語」の記述では高温で焼くと「パペットマン」に進化するんだよな。
!メンヌヴィル?

380 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/04(月) 15:15:30 ID:7XdFfIhZ
>319
おお、パワーアップフラグ!
少年漫画の王道じゃないですか。

381 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/04(月) 15:24:54 ID:PteVaEFc
おお、ハドラーに教師がこれほど似合うとは!
しかしヒムもこういうキャラクターならレギュラーでも問題無いと私は思いますよ。

382 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/04(月) 15:53:27 ID:wLKe4VuZ
>>379
なんという周到な伏線!?

383 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/04(月) 16:30:59 ID:xeBDqwXR
爆炎の人乙
ハドラーさんすげー学園ライフ満喫してらっしゃいますねww

384 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/04(月) 17:35:01 ID:KS6SltWT
マッドヒムGJ!段々進化していきそうで……楽しみ。
それにしてもこのハドラー、ノリノリである(アバン先生がみたら苦笑いしそうだ。)

385 :ゼロの影:2008/08/04(月) 17:40:49 ID:Wr+lUKY3
爆炎の人乙です。
ハドラーもヒムも熱い…!

17:55頃から最終章のプロローグと第一話をまとめて投下します。

386 :ゼロの影:2008/08/04(月) 17:55:28 ID:Wr+lUKY3
最終章 太陽と影

第零話 ゼロ

 ルイズは誰かの意識の中にいた。
 周囲には無限の闇が広がり“それ”は最初漂うだけだった。暗黒と融け合っては分離することを繰り返し、どこまでが己かわからぬままだった。
 やがて闇が薄れ、次々と光景が映し出されていった。延々と繰り広げられる血生臭い戦い、無数に連なる憎悪と怨嗟の声。
 “それ”は、己が魔界の深淵から――戦場の残留思念から生まれた闇の存在であることを知った。
 やがて“それ”は他者を乗っ取ることを覚えた。器を替えるにつれて意識が明確になり、言語を操り、体らしきものを形成していった。
 傷つかず痛みも感じない、滅びからは最も遠い体。苦労せず簡単に強くなれる体。
 だが、できることは憑依のみ。
 蔑視と嘲笑が降り注ぎ、彼女の心に同じ言葉が何度も響き渡った。
『寄生虫』
『偽りの生命』
 “それ”は否定できず、ただただ魂を握り潰した。
 いくら強い器を手に入れても、抜け出して次の器へ移るまでの間その力はゼロになる。
 自身は何の力も持たず何もできない。ゼロのままだ。
 己の体を嫌悪すればするほど、能力を忌避すればするほど、鍛え強くなれる者は輝いて見えた。
 意識が羨望に染まる。
(わたしと……同じ事を……!)
 他者に認められたい。ゼロのままで在りたくはない。
 満たされぬ心を抱えたまま暗闇の中をさまよっていた影は、永い時の果てに“天命”に出会うこととなる。

 ある時影は年若く覇気溢れる魔族に戦いを挑んだ。宿主の剣技や闘気を使い攻撃したが、一蹴される。痛みを感じぬ影は戦い続けるが全く通じない。
 その力は今まで出会った何者よりも強大だった。『最強の存在』――そんな言葉が脳裏をよぎるほどに。
 やがて不敵な笑みと共に相手が優雅に構えた。片手は天に、もう片方は地に。全身から魔力が陽炎の如く立ち上る。
 不動の構えに斬りかかったが掌撃であっさり弾かれ、手刀で深々と体を切り裂かれた。さらに火球呪文が不死鳥となって全身を焼く。
 器を完全に破壊された影は相手の体へと潜り込み、魂の回廊へ侵入した。
 進むうちに影は感嘆を覚えた。その肉体が極限まで鍛え抜かれ、膨大な魔力を有し、暗黒闘気も存分に振るえる最高の器であることを悟る。
 奥へ奥へと進む影へ周囲から言葉が滲んだ。
「お前は……いかなる器も操ることができるのか」
 声の中に侮蔑や嘲笑は含まれていなかった。今まで乗っ取ってきた連中と違い、寄生虫と罵るつもりはないようだ。
「素晴らしい能力だ」
 初めて聞いた肯定の言葉に戸惑い、尊敬の念をにじませながらも影は魂を砕こうとした。
 だが、内側から勢いよく灼熱の炎が噴き上がり影の全身を焼いた。
 温度を持たぬ偽りの光でも安らかな闇でもない、目映い輝きと激しい熱を持つ業火。
 地上を焼き尽くし、魔界の深い闇をも照らすような。
 苦痛に打ちのめされ、体外へかろうじて脱出した影に言葉が降り注ぐ。神託のように。
「お前はこれより余のために生きる。お前の生涯は余の物だ」
 忌わしい身体も、闇の中を彷徨った年月も、全てはこの時のため。
「お前は余に仕える天命をもって生まれてきた」
 その言葉は影の心に染み込み、光となって照らした。一言一句が魂の最も深き場所に刻まれた。
「余の……大魔王バーンの真の姿を覆い隠す霧となれ。ミストよ」
 忌み嫌っていた能力を認め、必要としてくれた主。
 求めていたものが与えられた影――ミストは跪き、忠誠を誓ったのだった。


387 :ゼロの影:2008/08/04(月) 18:00:54 ID:Wr+lUKY3
 それから彼はずっと主に仕え続けてきた。永遠に近い年月の間、ずっとその傍らで。
『私は……幾千年も前から元々一人だった! 一人でバーン様を守り抜いてきたのだ!』
 魂の叫びを聴き、彼女の心がズキリと痛む。
 彼の心の中心に位置するのは大魔王バーンただ一人。
 主から引き離され、帰る手段は無いと知らされた時の絶望と悲嘆は心を切り裂かれるようだった。
 罪悪感が膨れ上がり弾ける刹那、光景は別のものへ切り替わった。

 視界に鉄と血の色が広がった。
 丘が見える街道で青年が無数の敵と戦っている。息は荒く、全身を鮮血に染めながら。
 人間ならばすでに絶命している傷をいくつも刻まれながらも彼はひたすら拳と剣を振るっている。
 やがてその表情が陰り――地に倒れ伏した。絶望に囚われ、闘志を虚無に喰われて。
「――ッ!」
 ルイズは跳ね起き息を切らした。夢とは思えぬほど克明で鮮烈な光景。白い髪と衣が血に染まり、最後に彼は倒れた。
 次第にその身体を闇が包んでいく様まで、目を背けることも許されず見てしまった。
 傍らに眠る青年を眺める。夢と違って血に塗れていない端正な面は、差し込む月明かりを浴びて輝くようだ。
「……はあ」
 彼が死ぬなどあり得ない。別に戦闘に快楽を感じているわけではないのだ。
 主や己を侮辱した者には容赦しないが、ハルケギニアの問題に干渉するつもりはない。
「あんたのせいで目が冴えたじゃないのよ」
 安らかに眠る青年を殴りたくなったが睨みつけるにとどめた。
 胸の内に得体の知れない感覚が湧きあがる。
 いずれ彼と永遠に別れることになる――それは確信に近い予感だった。


388 :ゼロの影:2008/08/04(月) 18:07:02 ID:Wr+lUKY3
第一話 届かぬ翼

 ミストバーンは過去の世界をたゆたっていた。
 闇の中を彷徨っていた時代、主と出会った忘れがたい瞬間、そして仕えてきた数千年間。それらが万華鏡のように無数の色と形をとっては消えていく。
 彼は考える。自分は主から何を与えられただろうと。
 重要な、他の誰にも任せられない役目か。
 他者を近づけてはならぬ秘密か。
 最強の器を預かる機会か。
(――全てだ)
 名も、生きる理由も、主から与えられた。何より、認められたことで誇りを持てるようになった。
(私はまだまだバーン様のために働かねばならん……!)
 それなのに異世界に呼び出され、主を守ることができない――感情が膨れかけたが、目の前に光の扉が現れた。周囲を見回すといつのまにか小高い丘の上に立っている。
 この扉をくぐれば魔界に、主の元に戻れる。歓喜に身を震わせつつ歩み寄る彼の前に桃色の髪の少女が現れた。
 扉は長くはもたない。彼女の問う声を無視して前進したところで彼は目を覚ました。
 さっそく図書室に直行し、書物にかじりついて貪るように読む。砂漠に落ちた一本の針を探すような行為を、彼はやめようとはしない。
「どうしてそこまでするのよ」
「私がお傍を離れている間に、万一のことがあれば――」
 絶対に己を許せないだろう。
 答えには感情が揺れていた。人間ではない彼が見せる、人間のような一面だった。
 ルイズには何も言えない。彼女が呼び出してしまったのだから。
 せっかく夏季休暇中の清々しい朝だというのにルイズの気分は最悪だった。

 日に日に焦りと苛立ちが募るのが彼自身にもわかる。
 周囲の環境に慣れるまではそちらに注意を向けていればよかったが、立ち止まると暗い感情に飲みこまれそうになってしまう。
 行動しているという実感が欲しいだけ――現実から目をそむけた自己満足に過ぎない。
 偽りの安らぎの中に逃げ込もうとしたアンリエッタを笑ったが、現在の彼も似たようなものだ。
 訓練の時間になったため苦い想いを噛みしめつつ書物を置いて立ち上がる。
 訓練は毎日欠かさず続けている。
 だが、いくら拳を振るおうと良くて現状維持、召喚直後より確実に“レベルダウン”している。
 膂力や敏捷性だけでなく身体の強靭さ、再生能力まで大幅に減退している。もしかするとルーンによる反発以外にも原因があるのかもしれない。
 見かねたデルフリンガーが声を上げた。
「もうちょい力抜けって。十分強いんだから――」
「バーン様の体について誰よりもよく知っているのはこの私だ……!」
「そ、そうなのか?」
 力の低下を実感してしまうという意味だがデルフリンガーには理解できなかったようだ。
 それでも周囲に弱みを見せるような真似はプライドが許さなかった。
 数千年かけて培った忍耐力であらゆる感情を心の奥底に封じ込め、鍵をかけ、無表情の仮面で隠している。


389 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/04(月) 18:07:08 ID:oX1QI5Vc
しえん

390 :ゼロの影:2008/08/04(月) 18:12:53 ID:Wr+lUKY3
 結局大した成果もないまま夏休みが終わり、生徒たちは学院に戻った。
 今までと同じ日々が始まると思った彼らにもたらされたのはアルビオンへの侵攻作戦発布だった。ルイズも従軍することとなる。
 ミストバーンにとって人間達の争いなど関心の外に在ったが、学院とルイズが巻き込まれるとなれば話は別だ。
「あ、あんたはどうするの?」
 以前の彼女ならば「あんたも来るのよ」で済ませただろうが、帰還の意志が何よりも強いことを知っている。
 彼にはトリステインのために戦う義理も義務もない。だからこそ、行くと告げられたのは予想外だった。
「残って本を読んでいてもいいじゃない」
「お前を守らねばならない……」
 ルイズが死ねばわずかな可能性が限りなくゼロに近くなる。
 そのため彼は無関係の戦いに赴き、主ではない人間を守り抜かねばならない。
 ルイズの胸にどうしようもなく苦いものが広がった。

 総司令部にて行われた軍議ではルイズはすっかり駒扱いだった。
 戦争では当然のことだが、釈然としないルイズの脳裏にはミストバーンとの会話が蘇っていた。
(私はあの御方の道具……お役に立てるならばそれでいい)
 あの時彼女は“ルイズ”として認めてほしいと思ったが、評価されるのは『虚無』だ。戦いのための道具。
 同じ道具扱いのはずなのに彼のように誇らしげに言い切ることはできない。
(何が違うのかしら)
 ぼんやりと輪郭は見える。ド・ポワチエとの間には信頼も何もなく、引き離すことのできぬ影ではない。
 彼のために戦う気にはなれないが、アンリエッタやトリステインの皆のため――そう思うと少し力が湧いた。


 犠牲を出しながらもロサイスに上陸した六万の軍は陣を構えたが、予想に反してアルビオンの反撃は行われなかった。
 短期決戦を計画していたのだが敵は首都に立てこもったまま動かない。敵地で長期戦となると補給の問題が発生する。
 軍議を開いたはいいが頭の痛い事態であった。
 一気に首都まで攻め込むのは無謀であり、一つ一つ拠点を潰していては時間がかかりすぎる。
 シティオブサウスゴータを落とすことをド・ポワチエが発案すると、侯爵と参謀総長が同意を示した。
 ルイズとミストバーンも軍議に参加していたが発言することもなく立っている。
 やがてド・ポワチエはミストバーンに視線を向けた。影のように佇む青年からは気配が感じられず、彫像のようだ。
 どう扱うべきかわからず言葉を捜しているとルイズが代わりに答えた。
「彼はわたしの『騎士のようなもの』で、異世界から訪れたのですわ」
 ルイズは召喚について大雑把に説明を行い、こう締めくくった。
「元の世界に戻るための手がかりを探していますから、何か情報があれば教えていただけないでしょうか」
 ルイズは彼を戦いに巻き込みたくなかった。戦う理由がある自分はともかくとして、ハルケギニアの住人ではない彼まで危険な任務に投入されるのはおかしい気がする。
 本来ならばそういった思いを封殺し、駒として扱うのが正しいのだろうが、そこまで割り切れなかった。
 それを読み取ったド・ポワチエが渋面を作る。
「彼は五万の兵に突撃し、甚大な被害を与えた『虚無の影』だと言うではないか。その力、我が軍のためにふるっていただきたい」
「しかし――」
「戦場に来ておいて戦いたくないなどと言うつもりはない」
 情報と戦力の交換を条件にするつもりだ。
 ミストバーンの答えにド・ポワチエらはどこか作り物めいた笑みを浮かべ、その勇気を称えた。
 ルイズ達が出て行った後、ド・ポワチエはウィンプフェンに向き直り弾んだ声で言った。
「元の世界に戻りたがっている、か。もしかすると彼が鍵を握るかもしれんな」


391 :ゼロの影:2008/08/04(月) 18:17:08 ID:Wr+lUKY3
 それからルイズ達はいくつもの任務をこなしシティオブサウスゴータを制圧したものの、短期決戦というわけにはいかなかった。
 アルビオンは降臨祭の間の休戦を要求したのだ。結局受け入れざるを得ず、アンリエッタなどは苛立ちも露にマザリーニに詰め寄っていた。
 浮遊大陸アルビオンの冬は早く、厳しい。ルイズは暖炉の前で震え、知らぬうちに溜息を吐いた。
 彼は何もせず壁にもたれ、腕を組んで立っているだけだ。だが立ち上るものは重く、触れると押し潰されそうだ。
(顔青いわよ、大丈夫なの?)
 鈍感な彼女ですらそう言いたくなる顔色だが、気遣いの言葉は飲みこんだ。
 素直に言えないということもあるが、それ以上に人間の小娘に心配されたとあっては彼のプライドが傷つくだけだと知っている。
 認めたくない現実を突きつけられる苦しみは彼女も散々味わった。
 代わりに吐き出したのは、彼から感じる不吉なものを払拭するための問いだった。
「……ねえ、あんたは何者なの? 正体は――」
 言いながら彼女の心には夢の断片が浮かび上がっていた。
 霧に紛れはっきりと捉えることはできないが、ほんの少しだけ覚えている。実体を持たぬ不気味な姿を。過ごしてきた年月の重さと孤独を。
 しばらく待ったが自分のことを語ろうとはしないため、別方向から攻めることにした。
「あんたが忠誠を誓うバーン様って?」
 今度の沈黙は性質が違っていた。どんな言葉を使えばよいのかなかなか辿り着けないようだ。
「……地上を焼き尽くす炎のような御方だ」
 手の平を眺めながら紡がれる声には、言葉では表現できない想いが揺れていた。
「そして――太陽をも手中に収めようとしておられる」
「どういうこと? 太陽はみんなを照らすものじゃないの?」
 わけがわからず混乱している彼女に聞かされたのは信じられない話だった。
 かつて世界は一つであり、人間と魔族と竜族が血で血を洗う戦いを繰り広げていた。
 延々と続く争い憂いた神々は世界を分け、別々に住まわせることにした。脆弱な人間は地上に。強靭な体を持つ魔族と竜族は魔界に。
 魔界にはあらゆる生物の源である太陽がなく、荒れ果てた大地が広がっているだけである。
「あんたのご主人様は地上を征服して太陽の恵みを手に入れようとしてるのね」
 真の目的は征服ではなく消滅だが、それは明かされないままだった。
 消滅を確実にする下地作りや後の世に通用する軍の編成を考えれば、征服も目的の一つと言えるためだ。
 彼女は人間と対立する立場の青年に何と言葉を返せばよいのかわからなかった。

392 :ゼロの影:2008/08/04(月) 18:23:34 ID:Wr+lUKY3
「太陽の下で、皆で一緒に暮らすことはできないの?」
「不可能だ」
 答えは簡潔にして完全な拒絶だった。
 仮に人間が居住地を提供しても魔界の住人は従わず、力こそ正義という信念に則り攻撃するだろう。
 逆に、魔界の住人が大人しくしても人間は受け入れようとはしないだろう。
 人間同士でさえ争い続けてきたのだ。異種族相手ならばなおさら戦いは避けられない。
 ルイズには魔族を非難することも、地上の人間を批判することもできない。
 爆発しか起こせず力を持たなかったも同然の彼女は蔑まれてきた。手に入れた力で嘲った者を圧倒したら気持ちいいだろう。
 目の前の青年が人間ではないと知った時、得体の知れぬ感情が湧き上がったのも事実だ。
「人間が異質な存在を受け入れることはできん。バーン様も私も強者は種族を問わず認めるがな」
 では、自分は認められていないのか。踏めば潰れる虫けらとしか認識されていないのか。
 悲しさと悔しさがこみ上げて唇を噛んだ彼女へ声が響く。
「私の世界でもその魔法が使えるならば、お前は紛れもない強者だ。部下になればバーン様もお喜びになるだろう」
 強者だと言われて喜ぶべきなのにルイズは力無く首を振った。
 彼は単に種族や価値観が違うだけではない。今は利害の一致で大人しくしていても、いつ殺し合うことになるかわからない存在だ。
(どうすればいいのよ……)
 人間ではない。化物。異質な存在。受け入れられない。
 言葉が浮かんでは消えていく。少し近づいたと思った距離が遠く遠く隔たっているのがわかった。
「わ、わたしはあんたの――」
 尋ねようとした声は「反乱だ!」という叫びによって乱暴に遮られた。
 何の前兆もなく、原因すらわからぬ反乱はあっという間に連合軍を打ち破った。
 さらに、首都のアルビオン軍主力がシティオブサウスゴータ目指して動き出したという知らせがもたらされる。
 死神が見たら喜びそうな絶望の色が、王軍を染め上げていた。


393 :ゼロの影:2008/08/04(月) 18:25:17 ID:Wr+lUKY3
以上です。

しばらくアレな展開が続きます。
書いてて心が苦しく……実は少し楽しうわ何をするやめr

394 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/04(月) 18:38:05 ID:IB1QIpdX
影の人の投下が終わった直後に書くのは自分でも空気読めてないと思うが、

鉄より強い金属を進める連中が多い中、
あえて泥でヒムを作った爆炎の人の発想力すげぇ。

両氏とも乙です。

395 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/04(月) 18:47:26 ID:uyOVkTtp
ここで『ゼロ』つながりが出てくるのね…。
影の人GJです。

396 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/04(月) 19:24:42 ID:wLKe4VuZ
俺もそこは絡め方上手いと思った。

397 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/04(月) 20:45:07 ID:SvlJ9NOF
爆炎の人、影の人、両氏とも乙です
ハドラーはハイスペックすぎるなw
ハドラーって覇者の剣は持ってるんだったっけ?無いならデルフにも出番が

ミストは暗黒闘気の技さえ使えればもっと情報集めることができるだろうにな



398 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/05(火) 12:40:09 ID:PIo7oIiK
鰐男と獣王とラーハルトの人はどうしたのだろうか。続きが読みたい……

399 :鰐男:2008/08/05(火) 19:35:08 ID:vh0zGqvG
「最近ロクな仕事がないねえ」
ウエストウッドの森から馬で二日ほどの距離にあるドナイスットシャーの町
町はずれのパブ「略奪された七人の花嫁亭」で土くれのフーケことマチルダ姐さんは
酒瓶相手にクダを巻いていた
「しょうがねえだろ、ここんとこの内戦騒ぎで景気がいいのは傭兵ばかり。
“まっとうな”裏稼業の人間はみんなアルビオンを見限って下に降りてるよ」
そうぼやくのはパブの主人でこの地方の裏稼業を仕切る顔役
通称「サイコロ」(本名は誰も知らない)
「お前さんもさっさと飛び降りたらどうだい、例のスケベ爺のところなら
尻でも撫でさせてやりゃあいつでもまた雇ってもらえんだろ?」
「こっちにも事情があるんだよ…」
むっつりと酒瓶に写った自分の顔と睨み合うマチルダ
確かにアルビオンに留まっていてもジリ貧だ
だがいくら頼りがいのある鰐がいるとはいえいつウエストウッドも戦場になるか
わからない状況で家を空ける踏ん切りがつかない
そんなマチルダを尻目にサイコロは鬱憤晴らしとばかりに王党派貴族派平等に
罰当たりな言葉を吐いている
「まったくヤなご時勢だよ、レコン・キスタの連中こんな小娘まで懸賞金つけて
追い回してんだぜ」
店主が取り出した手配書を見て口に含んだワインを盛大に噴くマチルダ
大分ディフォルメされているが目に優しくない原色ピンクの髪と
こまっしゃくれた顔付きは間違えようがない
半年前まで学院長秘書を勤めていた魔法学校の名物生徒だった

400 :鰐男:2008/08/05(火) 19:35:50 ID:vh0zGqvG
同時刻
レコン・キスタの拠点の一つエジンバラ城
「では乾杯」
テーブルを囲んで祝杯をあげるクロムウェルと幹部達とそしてワルド子爵
ワルドの隣りには簀巻きにされたうえ猿轡をかまされたルイズがいる
「まったく大騒ぎをしたのが馬鹿みたいだよ、トリスティンからの密使がこともあろうに
わが方のスパイだったとは!」
おかしくてたまらないといった調子のクロムウェル
じたばたともがくルイズはフライパンで炒られる蜂の幼虫のようだ
「ではワルド君、ご苦労だが明日にでも皇太子のもとに赴き
手紙を回収してきてくれたまえ」
「それはいいですが別行動をとった連中はどうなっているのですか?」
そう、このSSのルイズとワルドは才人達とはラ・ロシェールで別れているのだ
「心配無用。港という港、街道という街道にこちらの手のものが目を光らせている。
奇跡でも起こらない限り…」
「起こったんだなあその奇跡が」
自信たっぷりなクロムウエルの言葉を遮るどこかのほほんとした声
「お前は!?!」
いつの間にか中二階へと続く階段の踊り場にデルブリンガーを抜刀した才人、杖を構えた
キュルケとタバサが並んでいる
「ふぁひほ(サイト)ッ!」
歓喜の叫びをあげるルイズ
目に涙まで浮かんでいる
(ああ今なら言える、本当は私アンタのこと…)
「よおルイズ、新手のダイエットか?」
(やっぱり駄犬ッ!!)
「やはり生きていたか、それにしてもここまで追ってくるとはな…」
憎々しげに才人を睨みつけるワルド
対する才人はどこまでも人を喰った態度を崩さない
「まあ色々あったけど詳しく説明してたら夜が明けちまう、キュルケがいて助かった
とだけ言っとくよ」
色仕掛けですね わかります
「さてそれじゃあ…」
才人はじつにさりげない動きでタバサの背後を取り白いうなじに
デルブリンガーの切っ先を突きつける
「杖を捨てろ」
その場にいた誰もが何が起こったのか理解できなかった
「え〜と、とりあえず起きたまま寝てるとか変な薬キメてるとかはないよな相棒?」
間抜けとしかいいようのない声を出すデルブリンガー
「ちょっと!これは一体どういう…」
再起動したキュルケの抗議を制するように才人の右腕が閃く
稲妻の速度で繰り出されたデルブリンガーの刃はタバサの着衣を切り裂き
新雪のように輝く肌に傷一つつけることなく少女を生まれたままの姿にしてしまう
そして逆手に構えた魔剣の刀身を瑞々しい張りに満ちたタバサの両腿の付け根に
押し当て感情の抜け落ちた声で繰り返す
「捨てるんだ」

【続く】

401 :鰐男:2008/08/05(火) 19:39:42 ID:vh0zGqvG
ttp://kissho1.xii.jp/7/src/7jyou13837.bmp

402 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/05(火) 20:45:13 ID:Jmqz4c2y
このスレはテンプレが機能してないの?

403 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/05(火) 21:11:28 ID:mi7UhjFQ
ワッフルワッフル

404 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/06(水) 08:19:13 ID:m7uw6MCG
此処はゼロ魔・ダイ大クロススレですけど、一般的なドラクエモンスターはありなんですかね。それともそれは本スレで?

405 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/06(水) 09:05:50 ID:2oS5Eh3W
>>404
獣王遊撃隊のメンバーやらフレイムAやらチウと闘ってた、うらぎりこぞう
みたいな明確なキャラクターがついた奴なら該当するんじゃないかな
ドラクエ世界がベースとはいえ最低限、原作に登場してないモンスターだと
本スレの方になると思う

406 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/06(水) 09:53:51 ID:GHvY9Fyp
スライム――最弱のモンスターだが、育つと本物の化け物になる。
MP消費無しの「しゃくねつのほのお」は脅威だし、最強呪文のマダンテだって覚えられる。

ジョゼフ「あの威力のエクスプロージョン、精神力は尽きたに違いあるまい。勝機は今ぞ!」
すらりん「ピキー!」
ジョゼフ「二発目だとぉ!」

407 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/06(水) 10:24:14 ID:MZpf5pU+
>>405

あの二体は、バアラックだって聞いたぞ。

408 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/06(水) 10:46:05 ID:2oS5Eh3W
>>405に思わず噴いてしまったww
でも思い切って、ロト紋や天空物語なんかも含めた「ドラクエ漫画のキャラが〜」
スレや、ゲーム・アニメも含めた「ドラクエ作品のキャラが〜」スレにすれば、
間口が広くなって盛り上がりやすいんじゃないかなあとは思う
ダイ大一作品だけでは召喚できそうなキャラがやや少ない上に、戦闘力が高すぎてゼロ魔世界
とのパワーバランスが取りにくいし、今以上の発展は難しそう
他にも総合スレだと多重クロスのネタもいけるかもね
アベル伝説のムーアとザボエラの鬼畜コンビ召喚とか獣王激烈掌と剣王震空呀の対決
とか見てみたいが
長々と妄想すまない。でもこのスレお気に入りだし、できれば長く続いていってほしいんだ……


409 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/06(水) 10:51:20 ID:2oS5Eh3W
>>405×
>>406
だった。スレ汚してごめんorz
>>407
そうなんだ。初めて知ったよ

410 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/06(水) 11:23:31 ID:4mBID8dk
>>408
間口っつっても
ロト紋とか本スレでもほとんど話題聞かないんですが…

411 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/06(水) 12:02:18 ID:JVS7BP7k
本スレで話題に出ないからこそ逆に、
ドラクエ好きが集まってると言ってもいいこのスレで解禁したら集まるんじゃね?

実際前のスレで「ダイの大冒険」キャラとは言いがたいドラクエキャラは有りかなとか、
そー言った話があった気がするし。

412 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/06(水) 12:18:07 ID:2oS5Eh3W
>>410
>>411の言う通りで、ロト紋云々の話じゃなくて、ダイ大のみに限らずドラクエ
キャラ全般を取り扱うスレにすればもう少し盛り上がるんじゃないかって事なんだ。
本スレは言うまでもないし、ジョジョスレも作中に出た登場キャラの多さ、スタンド
とゼロ魔世界の相性の良さもあって順調に続いてる
でも正直このスレだとダイ大キャラだけでは引き出しが少ないかなと思うんだわ


413 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/06(水) 12:26:08 ID:XZOpNdJo
ダイ大は別格で、ダイ大だからこそって面もあるのではなかろうか。

というか、原作ドラクエはプレイしたの4までだけど、
思い入れ感じるの1〜3までなんだよな…

414 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/06(水) 12:34:35 ID:D92ovzHd
>>413
5もやってみようぜ
DSででたし

415 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/06(水) 12:50:16 ID:XZOpNdJo
DS買わねばなんね

416 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/06(水) 13:14:19 ID:vpFvXdTr
一番思い入れが深いのは5な俺参上
単に最初にプレイしたドラクエだからなんだがw。

ドラクエ系全部OKになったらメインの生徒が全員スライム系を召喚する話とか作りたいなぁ。

417 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/06(水) 14:02:48 ID:4mBID8dk
>>412
スレを長く続けることが目的なの?俺はダイ大でのクロスが見たくてこのスレにいるんですけど

ダイ大好き=ドラクエ好きは確かに多いのかも知んない。でもドラクエ好き=ダイ大好きとはかぎらないよね?
あんまり間口広げすぎても最初はいいかもしれないけどそのうちダイ厨ウゼェとかなりそうでなんかな…

まあそこらへんはやってみないとわからんと思うけど
俺はやっぱりダイ大でのゼロ魔クロス話が好きだからこのスレ見てるわけで
人が増えるのは嬉しいことだけど、だからってむやみに間口広げられても…って感じなんですが

………俺だけ?

418 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/06(水) 14:07:38 ID:hyrzcdKy
直ぐに他のドラクエの設定とかと混同させる奴が沸くわけで
そう言うのへの抑止力にもなってるからここはダイだけで良い
混ぜたらギリギリの均衡で持ってるこのスレ崩壊して潰れる予感

419 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/06(水) 14:18:48 ID:2oS5Eh3W
>>417
いや正しい意見だと思う。厨扱いされるとか十分に有り得るし
でも今の流れ見てると職人さんの投下直後以外はまる一日レスがつかない時とかザラだし
雑談なんかは漫画板やキャラスレとかの方が盛り上がってるしね……
新しい長編職人さんも来ないしでなんか淋しいなあ→じゃあ統合すれば?って
思っただけなんだ。度々すまない

420 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/06(水) 18:23:37 ID:9nPchZ3t
小ネタレベルなら、別のドラクエ作品でもいいんじゃないかな?
ただ、多重クロスになるとバランス云々を気にする人が出てくるからまた別の問題になるかもしれないけど。

ルイズ「ねえ、アンタ。名前は? それになんていう生き物なの?」
ピエール「名はピエール、種族はスライムナイトです」
ルイズ「で、どっちが本体なの?」
ピエール「それが、作品ごとに体の一部だったり、マジックアイテムだったり、別のモンスターだったりと設定が色々ありまして」

421 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/06(水) 19:01:58 ID:Z0CR4Z9K
このスレでやる意味は無いとおもうけどな、ダイの大冒険とドラクエ全般ではかなり設定や世界背景がバラバラだし
素直に本スレでやったら良いのでは?

422 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/06(水) 19:45:51 ID:hyrzcdKy
あくまでもドラクエじゃなくてダイのスレだからやり炊けりゃ本スレへで俺もOKだと思う

423 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/06(水) 20:24:10 ID:D92ovzHd
だねぇ

ビィトとかバリバリ隊もあっちがいいかなー

424 :ゼロの影:2008/08/06(水) 20:59:38 ID:7GzW0Iv0
スライムナイトにも設定がいろいろあったのか…!

第二話、21:05頃に投下予定です。

425 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/06(水) 21:03:18 ID:XZOpNdJo
了解、バーン様の投下はすべてにおいて優先する!

426 :ゼロの影:2008/08/06(水) 21:06:06 ID:7GzW0Iv0
第二話 勇者の名の下に

 ロサイスに到着したウィンプフェンは本国へ退却の打診を行ったが、即座に却下された。
 突然連合軍の半数が寝返りド・ポワチエが戦死したなどと言われて信じられるはずもない。
 繰り返し訴え続け、許可が出たときには貴重な時間が浪費されていた。
 アルビオン軍主力の進撃が予想より早いことを告げられたウィンプフェンが頭を抱える。
「もっと……もっと早く撤退準備をすべきだった」
 保身に走ったせいで全軍の乗船は間に合いそうにない。丸一日足止めする必要があるが、七万の大軍を相手にしては不可能だ。
 空からの砲撃も駄目であり、重装備は失われ、打つ手は無いかに思われた。彼は考えに考え抜いて――閃いた。
「そうだ! “あれ”を使おう! 今ここで使わずしていつ使う! 伝令!」
 ルイズとミストバーンのいる天幕へと伝令がやってきたのは夕方になってのことだった。
「ミスタ、ウィンプフェン司令官がお呼びです!」
「わたしも――」
「いえ、ミス・ヴァリエールは来なくて良いそうです」
 嫌な予感がしたが逆らうわけにもいかず、彼女は檻に入れられた虎のように歩き回って待った。
 彼が司令部から出てくるのを見て慌てて駆け寄ったが、尋ねても答えず街外れへ行こうとする。
「どこに行くのよ。なんで――」
 ミストバーンはルイズに向き直ったが、やはり沈黙したままだ。その手が動いた瞬間ルイズの首筋に衝撃が走り、視界が暗くなった。
 近くにいた人間に彼女を船に送り届けるように伝え、町外れへ向かう。一度も振り返らず前だけを見据えて。

 時刻は少し遡る。
 司令部を訪れた彼に、ウィンプフェンは喜びを顔中ににじませながら芝居がかった動作で両手を広げた。
 部下達はなぜそれほど大仰な態度で接するのかわからず視線で尋ねあっている。
 ウィンプフェンは咳払いし、高らかに告げた。
「よく来てくれた。用件は他でもない、元の世界へ戻る手がかりについてだ」
 わずかに表情が動いたが、興奮を抑えるように拳に力を込める。
「先ほど入った情報によると、光り輝く扉が現れたらしい。召喚のゲートに似た、な」
 地図の一点を指し示す。
「この丘の周辺だ。行くかね?」
(夢が……告げたのか?)
 丘の上に光の扉が出現し、そこから元の世界に帰るという夢。託宣だと考えても仕方ないほど、ただの夢で片付けるにはあまりにも鮮烈なものだった。
 しかも一度だけではなく繰り返しだ。最近は毎日のように見ている。
 いずれハルケギニアを去るという確信に近い予感を抱いていたが、的中したのだろうか。
 証拠としてウィンプフェンは兵士の証言の書かれた書類などを出して見せた。
 目を通したミストバーンは今にも出て行きたい様子だったが、ウィンプフェンが渋面を作り唸る。
「今からでは敵と接触するかもしれん。いきなり攻撃されることはないと思うが慎重に行かないと……。駄目だった場合船に乗れんことになる」
「かまわぬ」
 背を向け、司令室を出ようとした彼を慌てて呼び止める。
「ミス・ヴァリエールにはこの情報を知らせるな。余計な時間を消費し、敵と接触したり扉が消えたりする可能性が高まる」
 返ってきたのは沈黙だけだった。



427 :ゼロの影:2008/08/06(水) 21:10:47 ID:7GzW0Iv0
 彼が出て行ったあと、部下達が顔を見合わせ恐る恐る発言する。
「本当によろしかったのでしょうか。いくら元の世界に戻るためとはいえ危険すぎます。接触の可能性はきわめて高く――」
 ウィンプフェンはにやりと笑い、腕を組んだ。
「いいのだ。むしろそれが狙いだ」
「それはどういう……?」
「アルビオン軍に情報を流しておいた。『虚無の影』が単騎で偵察に現れる、この機を逃すと被害は広がるばかりだから今叩き潰せと」
「な、なぜ!?」
「決まっている。足止めだ」
 兵士の一人が納得しがたいというように叫んだ。
「ならばなぜ、騙すようなことを仰ったのです!? 最初から殿を命じればよかったではないですか!」
 ウィンプフェンは嘲りと哀れみを足して割った表情で相手を見つめた。こめかみを指でトントンと叩き、ゆがんだ笑みを浮かべる。
「騙すなどとは人聞きの悪い。彼はトリステインの人間ではない、素直に従うはずもなかろう」
 以前彼の境遇を聞いた後、利用できるように証拠の類をでっちあげていた。それを今回使ったのだ。
 毒を飲まされたような表情の兵士達へ両手を広げる。
「『虚無』は未知数だ。うまく使えばさらなる大軍をも撃退できる可能性を秘めている。だが、使い魔の方はいくら強くとも兵士の力に換算できる」
 ここで使うのがちょうどいいということだ。完全に使い捨ての道具として扱っている。
「し、しかし……!」
 言い募ろうとする兵士は言葉を飲み込んだ。
 追い詰められたウィンプフェンは精神の均衡を手放しかけている。普段押し殺し、表に出さない本音を迸らせている。
 常の彼は慎重なだけでここまで言うような人物ではなかった。だが、極限まで高まった焦りや恐怖が彼を行動に踏み切らせた。
「素晴らしいじゃないか! 英雄! 救世主! まさに“勇者”だ!!」
 目を血走らせ、熱に浮かされたように叫ぶ彼とは反対に兵士達の面は凍っていく。
「彼がもし帰還したらどう言い訳なさるおつもりですか」
「嘘はついておらんのだ、責められるいわれは無い。せいぜい派手に暴れてから死んでいただきたいものだ」
 扉が現れた“らしい”と言っただけで断定はしていない。危険についても説明し、警告した。だから非難される筋合いはない。
 ルイズは名家中の名家の令嬢であり後で揉めることもあり得る。
 一方ミストバーンは異世界の住人で人間ではない。潰し合うだけ潰し合って死んでほしいというのが正直な気持ちだった。
「“勇者”の健闘を祈ろうではないか、諸君」
 己の正義を確信しきった口調に兵士達は項垂れた。
 誰かがしなければならないことをこんな形で押し付けたウィンプフェンも、止めようとしない自分達も、情けなかった。



428 :ゼロの影:2008/08/06(水) 21:15:46 ID:7GzW0Iv0
 馬を駆るミストバーンへ、背の剣が歯に物の挟まったような言い方で呟いた。
「なあ相棒、言っとくぜ。どーもキナ臭えから気をつけろよ。……調子悪いんだろ?」
 痛いところをつかれ反論できない――そんな沈黙だった。
 本来ならば力を抑えても脆い人体などひとたまりもない。だが、手加減したとはいえ人間の少女が気を失うだけで済んでしまった。
 時間が惜しいとはいえウィンプフェンを締め上げて真偽を確かめることもしなかった。
「なんで一人で行くんだよ。危ないことに付き合わせたくないってか?」
 デルフリンガーはそう言っているが説明する時間が惜しく、うるさいから黙らせただけだ。
 扉が見つからなかった時に最大の手がかりは“丘の扉”から“ルイズ”に戻る。アルビオン軍と接触し、殺されては困る。
 それを聞いてデルフリンガーはムッとしたようだった。
「……この冷血」
 デルフリンガーの呟きとともに日に照らされる丘の姿が見えた。
 丘に近づくにつれて、逸る気持ちを抑え馬の速度を落とす。敵軍の姿は見当たらず気配も感じないが、慎重を期すに越したことは無い。
(この身体はバーン様のものだからな)
 相手が人間だからといって喧嘩を売って回る気はない。速やかに戻れればそれでいい。
 周囲を確認しながら少しずつ進んでいく。
 丘の上に扉は無いようだがとりあえず登り、敵軍がどれだけ近づいているか、扉が近くに無いか確認するつもりだった。
「無かったらどうすんだ?」
「キメラの翼を使う」
 所持していた道具や貨幣は預けてきたが、いざという時のために残ったキメラの翼二枚のうち一枚を持ってきていた。
(だが――)
 そこから先の言葉を打ち消す。
 斜面をゆっくり登っていく間思考は取り留めもなくさまよっていた。
 思い出されるのは桃色の髪の少女。彼が人間の敵だと知って戸惑いを隠しきれない様子だった。
 このまま永遠に別れることになってもそう影響は無い。いずれ新たな使い魔を――害のない者を召喚し、契約するだろう。
 “ゼロのルイズ”と呼ぶ者もいるが、彼はルイズを“ゼロ”だとは思っていなかった。
 努力し、誇りを見せ、強大な力を得たルイズは尊敬に値した。彼女は自分の力で偉大なメイジになるだろう。
 そこまで考え、軽く首を振る。主の元へ戻ればくだらぬ感傷など消えるはずだった。
 ――主の元へ、戻れば。


429 :ゼロの影:2008/08/06(水) 21:17:01 ID:7GzW0Iv0
以上です。


それにしてもこのウィンプフェン、ノリノリである。
大魔王の腹心の部下を勇者(ついでに使い魔)呼ばわりする彼もある意味勇者。

430 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/06(水) 21:22:22 ID:DviTrbkR
乙〜
ウィンプフェンさんに死亡フラグがたったヨカーン

431 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/06(水) 22:48:17 ID:KiPqHEqR
お疲れ様ー
>>416でエロい事を考えたのは俺だけではないはず・・・

432 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/07(木) 00:28:39 ID:nozgPLOU
ドラクエにおける蘇生呪文は、戦闘不能ではなく死亡からの回復です。

偽りの生から解放され、再び安息の眠りに着くウェールズ。そして彼との約束を胸に立ち上がろうとするアンリエッタを見――
ホイミン「ザオリク」
ルイズ・アンリエッタ・ウェールズ「えぇぇぇぇぇぇぇーーっ?!」
これでは色々と台無しになってしまうな。

433 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/07(木) 00:32:20 ID:rTtkuxQS
ドラクエの回復魔法は色々とチートに近い。
ベホマ使える奴が居るだけで恐ろしい事になる。
シャナクでタバサ母回復もありえそうだ。

434 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/07(木) 01:08:01 ID:kyKDqhdv
>>432
スレ違いだが、コミック版のモンコレのラストを思い出してしまったではないか。

435 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/07(木) 01:09:24 ID:NIx64qjj
影の人乙です
はたしてミストは元の世界に帰れるのか、期待してます

>>433
まあだからこそダイ大も回復魔法と蘇生魔法は制限ついてたんだがな

436 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/07(木) 06:09:26 ID:FW1NJ7Hp
ゲームの便宜としての魔法だから普通のストーリーに使うには色々厳しくなるんだよな

437 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/07(木) 07:53:12 ID:3lDAP71k
キングスライムは通常よりも強いスライムが八体『合体』してなるものですが、実はアレは擬態的なものらしい。

ワルド「これが風の偏在だ!」
キングスライム「ピキー!」
ワルド・ルイズ「八匹に増えたー?!」
八匹のスライム「ピキキー!」
全体攻撃の灼熱の炎・八連撃……

438 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/07(木) 07:55:52 ID:3lDAP71k
合体が寄り集まったものであるらしいとはいえ、分離は大昔のコミックで見ただけだから公式か分からないんですけどね。

439 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/07(木) 08:38:37 ID:YlqLSodb
>>438
王冠外せば分離するらしい>8のイベントより

440 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/07(木) 09:20:57 ID:ueXdMsEi
キングスライムが分離した後のスライムが、もし、マダンテを習得していた場合……更に繁殖に成功した上、逃げ出したペットが野生化したなら?
人類はエルフと手を取り合ってスライム討伐を開始するやもしれぬ。

441 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/07(木) 11:11:39 ID:3Bc24jbv
>>433
キアリーでもいいならマァムでもタバサ母復活するよね。

442 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/07(木) 15:04:06 ID:v8R6QBp9
タバサ母って毒だっけ呪いだっけ

443 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/07(木) 15:26:26 ID:c5DVTltN
毒だろ

444 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/07(木) 15:48:07 ID:v8R6QBp9
ならキアリーだな

445 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/07(木) 15:57:09 ID:FW1NJ7Hp
イベント系の特殊強力毒には駄目ってパターンは必至

446 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/07(木) 16:01:11 ID:L6yu0wXM
ゲームでは同じ効果でも、どくけしそうじゃダメでキアリーが必要というのは一巻であったよね。
そう考えるとマァムのキアリーじゃタバサ母の毒には効果ないんじゃなかろうか。

447 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/07(木) 16:26:47 ID:xn4JLgzi
ダイの大冒険的には、マトリフがキアリー使ってる時に、厄介な毒使ってやがると愚痴ってたので
やっぱり毒の種類や強度で差があるんだろうなー

448 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/07(木) 16:52:29 ID:KucWnT+b
>>447
タバサママに盛られた毒は実はザボエラが生成した毒だったというフラグですか?

449 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/07(木) 17:04:47 ID:xn4JLgzi
エルフの毒≒魔族の作った毒と言うわけかw
確かにほぼ接触が無いエルフと異世界の魔族を混同しても可笑しくないし
ザボエラは色々な毒が使えると自称してたからはまり役だなw


450 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/07(木) 17:12:25 ID:mgYwM2Ux
でも、ヨルムンガンドの中身が超魔生物になりそうでヤバスw

451 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/07(木) 18:21:25 ID:IvjN/H/R
>450
超魔ソンビの可能性もあるのでは。
ただ、ザボエラの最後はどう考えても原作と変わらない気がするのは何故だ?

452 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/07(木) 19:10:18 ID:twddS1r3
>>451
待てwさすがに超魔ゾンビじゃゼロ魔キャラ太刀打ちできなくね?w
まあそうなった場合個人的にはサイトに何とかしてもらいたいところだが、サイトじゃどうがんばってもノヴァの二の舞…

453 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/07(木) 19:15:09 ID:v8R6QBp9
魔族といわけでロン・ベルクも紛れてるんだよきっと

454 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/07(木) 19:24:01 ID:twddS1r3
>>453
ああなるほど。それでサイトがロン・ベルクに師事するわけですね

……と思ったけど師事するならサイトよりギーシュのがはまる気がするな

455 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/07(木) 19:29:58 ID:mgYwM2Ux
デルフリンガーが鎧の魔剣なんだよ

456 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/07(木) 20:33:15 ID:v8R6QBp9
サイト酒瓶開けられないフラグ

457 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/07(木) 20:39:00 ID:SdtQ4u4r
>>455
小ネタに似たようなものがあったな。
正確にはルイズが『鞘』を呼び出してデルフと合体させたんだが。

458 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/07(木) 20:41:31 ID:mgYwM2Ux
ああ、なるほど。
そういう展開も燃えるな。

459 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/07(木) 23:56:06 ID:Bn07pEhq
ドラクエ7のイベントに出てくる『マナスティス』――これが使えるキャラがもし四人目として召喚されたなら?
戦うのはダイやバーンみたいな最上位キャラでもないと駄目か?

460 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/08(金) 00:05:00 ID:m8y5WAQA
その話は終わった

461 :ゼロの影:2008/08/08(金) 13:17:50 ID:uryQoDQ0
第三話、13:35頃に投下します。

462 :ゼロの影:2008/08/08(金) 13:35:13 ID:uryQoDQ0
第三話 陰りゆく太陽

 状況を確認しようと現実の景色に意識を集中させたミストバーンは、丘の頂に登り視界が開けた瞬間息を呑んだ。
 眼前に広がり草原を埋め尽くすのは、完璧に布陣し、攻撃態勢を整えたアルビオン軍だった。
 彼の姿を視認した瞬間、集団はまるで一つの生物のように行動を開始した。
 咄嗟に馬の背を蹴って宙に身を躍らせたが、点や線ではなく空間ごと押しつぶすような攻撃を回避するのは不可能だった。
 無数の風の刃が、氷の槍が、弾丸が、飛来する。
 空中で剣を抜いて振るうが体中に痛みが走り鮮血が滴った。かろうじて体勢を立て直し着地する。
「く……!」
 いきなり攻撃を食らってしまったのは致命的だ。万全の状態ならばともかく、あらゆる力が低下している今の彼だと大きな痛手となってしまう。
「何だァ!? いくらなんでも準備よすぎだろ!」
 敵が現れる時刻や方向を把握し殺意をみなぎらせて備えていた集団と、情報や戦意の少ない個人との差はあまりにも大きすぎた。
 気配を感じなかったのは身体の深刻な異変に加え、敵軍が魔法をかけていたためかもしれない。
「相棒、キメラの翼を使え!」
 言われるまでもなく使おうとした。だが、不思議な力にかき消され翼はそのまま残っている。
 彼が危惧していた通りになってしまった。大魔宮など逃亡を許さぬ場所が世界には存在する。
 アルビオン軍の力か地理的な要因かはわからないが、撤退という選択肢は消えた。
 彼に残されたのは、戦い抜き、生き延びる道だけだ。
「『虚無の影』だ! 殺せ!」
「正義は我らにある! 化物の息の根を止めろッ!!」
 今ここで絶対に滅ぼすという意志と共に殺到する。
 たった一人に向けて、七万の大軍が。

 拳と剣で立ち向かう彼にデルフリンガーが悲しげに呟く。
「ダメだぜ相棒……心を震わせなきゃガンダールヴの力は出せねえ」
 左手のルーンの光は今にも消えてしまいそうだ。ほとんど身体能力は向上しておらず、ワルドを追った時に比べるとあまりにも違いすぎる。
 原因は彼の心に在った。
 ウィンプフェンの情報に従って丘に向かったのは鮮明な夢を信じたためだ。いずれこの世界から去るという予感を抱いていたためでもある。
 それが裏切られ、限界まで張り詰めていた心の糸が切れてしまった。以前からあらゆる感情を無理矢理抑え込んでいた分反動も大きい。
 アルビオン軍は動きに精彩を欠く敵の姿に、好都合とばかりに襲いかかる。
「騙されて悔しくないのか!? 怒れよ!」
 デルフリンガーの必死の叫びも心の表面を滑り落ちていくばかりだ。
 垂らされた餌に食いついたのは焦りに目がくらんだ己の責任だ。
 騙されたなどと言うつもりはない。最初から信じていないためだ。
 どれほど信憑性の薄い情報でもわずかな可能性にかけて確かめずにはいられない。
 あのまま無視して船に乗っていても後悔に苛まれるだけだとわかりきっている。
 それに――力があれば跳ね返せる。ただそれだけの話だ。


463 :ゼロの影:2008/08/08(金) 13:42:35 ID:uryQoDQ0
 雨の如く氷の矢が降り注ぎ、風の刃が乱れ飛ぶ。炎の球が続けざまに打ち込まれる。
 吸収しきれず吹き飛ばされかけたところに背後から無数の武器が突き出される。刃の冷たさが熱、次いで痛みに変わり背中一面に広がった。
 体を捻って串刺しになるのは免れたが、傷は深く血が流れ出て行く。
 だがすぐに止まった。炎球が背中に直撃したためだ。
 傷が炎に焙られる激痛に呼吸が一瞬止まりかけたが、攻め寄せる敵に鉄拳を食らわせ数人まとめて吹き飛ばす。
 氷の矢が降り注ぐのを敵兵の体を掴み盾代わりにして防いだ。だが、その陰から次々に空気の槌や刃を撃ち込まれよろめく。
 倒れかけた所に槍が繰り出され、腹部を貫き標本のように地に縫い止めた。動きを止められた彼にあらゆる方向から氷の杭が迫る。
 槍を引き抜き振り払った彼の全身に氷柱が突き刺さり、鈍い音が連続して響いた。
 そこへ再度巨大な炎球が叩きこまれ氷を溶かし尽くす。腹部の傷口から炎が流れ込み、体内に熱が弾けた。
「ぐあぁ……ッ!」
 身を震わせながらも踏みとどまり、地を蹴って複数の敵を一気に切り裂き殴り飛ばす。
 追撃を跳躍して回避し、魔法が飛来するのを剣と掌で弾くが完全には防ぎきれない。
 体勢を崩し落下したところに襲い来る攻撃は嵐そのもの。
 ――死なないならば、徹底的に殺す。
 脅威を排除するという意志で彼らは一つになっている。
「このままじゃまずいぜ……相棒」
 デルフリンガーの囁きは戦場の喧騒の中に消えた。


 ルイズが目を覚ますと従軍していたクラスメートらが覗きこんできた。
「ここは?」
「出航準備中の船さ。アルビオン軍は遅れているらしいよ」
 アルビオン軍は進撃の速度を落としたらしい。それを聞いて虚ろな風が心をかけぬけて行く。何か大切なことを忘れている気がする。
 夢の世界で彼女はウィンプフェンと会話し、次に丘の見える街道で数多の兵を相手にしていた。
 ようやく使い魔と感覚を共有することができたのかもしれない。視線を巡らすが青年の姿は見えない。
「ミストバーンは……?」
「司令官から知らされたんだ。僕達を逃がすために一人だけ残ったって」
「――嘘よ」
 彼は人間が何人殺されようが眉一本動かさない。
 夢の断片がつながり、真実を知らせる。
 ウィンプフェンは彼の帰還への執着を、主への忠誠心を利用した。
 彼とて急に降ってわいた情報を怪しまないはずがない。簡単に帰る手段が出てくることはないとわかっている。それでも行かざるを得ないのだ。
(わたしの――わたしのせいで)
 限界まで追い詰められ、判断を誤った。巻き込みたくない一心で話したことが彼を死地へと追いやった。
 自分ならばまだいい。名誉のため、アンリエッタのため、トリステインのため、皆のため――戦う理由がある。
 しかし、彼には何も無い。主のためという正義すら持たずに戦い、死んでいく。
「行かなくちゃ……! 行って――」
 どうする。もう一人の彼女が囁いた。
 消耗しているためタルブの時のような規模の『虚無』は使えない。わざわざ殺されに行くようなものだ。
 何も言わずに気絶させ、勝手に行ってしまった相手のために命をかける必要などあるのか。
 どうせ化物――人間とは相容れぬ者だ。将来、彼女を含め学院の者達を殺そうとする可能性は十分にある。
 人間は異質な存在を受け入れられないと彼も言っていた。行動しなくても彼女を責めはしないだろう。
 何もしないことこそが最善なのだ。


464 :ゼロの影:2008/08/08(金) 13:48:20 ID:uryQoDQ0
「……でも」

『お前は努力して力を手に入れようとしているのだろう?』

「それでも、ねえ……!」

『ルイズ!』

「放っておけるわけないじゃない!」

 命を救われた。共に戦ってくれた。力になってくれた。何より――認めてくれた。
 今まで他者からずっと“ゼロのルイズ”と呼ばれ蔑まれてきた。彼が、彼こそが、初めて“ルイズ”と呼んでくれたのだ。
 彼に勇気を与えられた。それは誰にも否定できない真実だ。
(退かない……退くわけにはいかない! わたしはルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールなんだから!)
 もし彼がトリステインの者達に害を加えるというならば、その時は――
「全力で戦うだけよっ!」
 早速残された荷物をあさり、口元をゆがめる。
「甘いわね。まだキメラの翼が残っているじゃない」
 一枚しかないため、行けばトリステインに戻れない可能性が高い。
 だが、命を賭けるだけの、全てを捨てるだけの価値がある相手だと気づいたのだ。
「少しは報いなきゃ……死んでも死にきれないわ!」
 ルイズは立ち向かう覚悟を決めた。――彼女が彼女であるために。
 共有した感覚を思い出しながらキメラの翼を上空へ投げ上げると加速が全身を包んだ。
 空を翔ける間、彼女は戸惑っていた。
 今まで自分の気持ちにこれほど正直に行動したことがあっただろうか。
 認めさせたいという一念が作り上げた鎧は強固なもので、内心とは正反対の言動を導いたことも多々あった。
(あいつの影響かしら?)
 かつて見た夢が少しずつ蘇る。どす黒い思念から生まれ、体を持たぬ己を“ゼロ”だと感じていた。
 だが、その心には憎悪や羨望だけが巣食っているのではない。元は暗く濁った感情も忠誠心や敬意へと昇華されている。
 彼と過ごすうちに蔑視を跳ね返すための心の枷は少しずつ砕けていった。
(あいつが死ぬわけないわ)
 彼の強さの源は恐ろしいまでの膂力か、驚異的な身のこなしか。それとも常識を超えた生命力か。
 否。彼の最大の武器は――。
「きゃああっ!」
 ルイズは凄まじい衝撃とともに不可視の壁に激突し、地面に叩きつけられた。
 全身に激痛が走り、呻く。額が切れ、左眼から頬にかけて血が滴り痣のような模様を描いた。
「うう……!」
 骨が砕けそうな痛みだった。このまま意識を手放してしまえたらどれほど楽だろう。
「でも、あいつの味わった痛みに比べれば、こんなもの……っ!」
 丘はまだ遠い。泥にまみれながらも彼女は立ち上がり、走り出した。



465 :ゼロの影:2008/08/08(金) 13:56:00 ID:uryQoDQ0
 ミストバーンは数えきれぬほどの魔法と刃をその身に受けながら戦い続けていた。
 魔族の体はすぐに死ぬことを許さない。生命が削ぎ落される間も戦うしかなく、その姿が人間達の恐怖を煽り攻撃を苛烈にする。
 荒い息の中、少しずつ動きが鈍り表情も陰っていく。
 辺りが暗くなり彼の動きが止まった瞬間、槍が胸の中央――心臓を貫いた。引き抜くより先に乱暴に捻られ、穂先が体内で回転する。
「が……!」
 血塊が口から溢れ体が痙攣した。それでも柄を掴んで引き抜き、相手に突き立てる。
 が、今度は背から灼熱の塊が突き抜け、剣の切っ先となって姿を現した。深々と胸を抉られ血の花が周囲を彩った。
(バーン……様……!)
 破壊された心臓はこれで二つ。
 背に剣を生やしたまま、力を振り絞り裏拳を叩きこむ。その弾みで剣が抜け、乾いた音と共に地面に転がった。
 心臓を抉られても動く化物じみた生命力に周囲の兵士達は恐慌に陥り、絶叫しながら武器を振りかざす。糸が切れたように崩れ落ちた彼へと。
 しかし突然彼の体が跳ね上がり、獣のように俊敏な動きで兵達の少ない方向へ走り、丘の上へと駆け戻ってしまった。
 各隊の隊長は怯える兵士達をまとめ直すのに必死で追う余裕が無い。
 時間はかかっても隊列を整え、改めて殺すしかない。深手を負わせたことに違いは無いのだ。丘の上を睨み、己に言い聞かせる。

「はあ……使い手を動かすのは久しぶりだ。……どうしたんだよ、まだ戦いは終わってないぞ」
 デルフリンガーの言葉は心の奥に届くことなく滑り落ちていった。仰向けに倒れた彼の視線の先には――少しずつ陰りゆく太陽。
 日食が起こっている。
「立つんだ」
 何のために。
「戦え」
 その先に何がある。
「生き延びるんだよ!」
 主の元に戻れぬのならば、今死のうと後で死のうと同じこと。
 主の体を守り切れなかったという事実が意識を責め苛んでいるものの、力の源たる憎悪も湧かない。
 生きる理由そのものである主はこの世界には存在せず、戦い抜いても状況が変わるわけではない。
(戦う意味など……どこにもありはしなかった……)
 元の世界へ戻れぬならば何もかも無意味だという諦めが彼の心を支配していた。
 戦いしか知らないと語る彼が戦う理由を見失った時、力はゼロへ近づいていく。
 ルーンによって同化した今ならば、器が破壊されると同時に本体も滅ぶだろう。
 ハルケギニアを去るという予感の正体がようやくわかった気がした。
 ――人間に倒されて、この世界を去る。
 握りしめられた拳は震えている。本来ならば神の金属をも易々と砕き疾風のように駆けられるはずなのに、体を起こすことすらできない。
「勝利のために……何かを捨てることさえできん……!」
 かすれた声には悲痛なものがにじんでいた。言葉に合わせて血が口から吐き出される。
 生命が縮もうと魔獣になろうと、どんな手段を使ってでも強くなり敵を倒す――それも彼には許されない。
(何千年も仕えてきて……その最後が、これか)
 主のいない世界で、主とは関係のない戦いの中、認めてもいない人間達に殺される。
 偽りの希望に縋って死んでいくのも、偽りの存在には相応しいかもしれない。
 太陽が黒に喰われるにつれて、心も虚無に喰われていく。血潮が流れ出るにつれて、生命の火も弱まっていく。
 完全に太陽が隠れる時――命が絶えてしまう気がした。

 彼は静かに、そして深く、絶望していた――。


466 :ゼロの影:2008/08/08(金) 13:59:27 ID:uryQoDQ0
以上です。

ミストバーン絶望中。
キルバーンが見たら「ねえ〜っ!? いい表情するでしょう? ミストって」と言いそうです。

「ヒュンケルじゃないから死ぬだろこれ」と「ヒュンケルの闇の師だからすぐ復活してしまう」の境界に悩みました。

467 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/08(金) 17:52:07 ID:el4Z8Rlx


468 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/08(金) 21:09:31 ID:8g1qNYRK


長年見下していた人間にフルボッコされて殺されるのはキツイよな
しかし日食とは・・・フラグか

469 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/08(金) 21:27:56 ID:sgT7ml5J

続きwktkしすぎてしまう

470 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/08(金) 22:21:24 ID:XsdbBHh0
バーンという複線が残ってるが……どうなるか

どうでもいいけどルイズのセリフで一瞬真由子を思い出した

471 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/09(土) 08:07:09 ID:IX+V843A
>>470
ルイズ「それでも、ねえ…(中略)もうあんたの胸に穴なんてあいてないわ」
ですねわかります

「泥なんてなんだい、よ!」も今のルイズに似合うかも

472 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/09(土) 08:21:15 ID:bBbVe0XP
うおおおっ、続きっ続きがきになりすぎるううう!!>影

473 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/09(土) 08:27:20 ID:rpkcgboJ
>>470-471
デルフが人間だった時代の話が必要だな。

474 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/09(土) 20:08:17 ID:tp9DKZct
櫛で髪をとかすのか?

475 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/09(土) 20:53:34 ID:3sGfHyAc
デルフで髪をとかします

476 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/09(土) 21:03:38 ID:U99q3tvT
むしろデルフで髭を剃ります


名刀ですね

477 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/10(日) 11:03:56 ID:qyNxZty3
命がけですね、分かります

478 :ゼロの影:2008/08/10(日) 13:05:27 ID:0lmaEqfB
第四話、13:20頃投下します。

…今回の話が一番書きたかったかもしれません。

479 :ゼロの影:2008/08/10(日) 13:20:04 ID:0lmaEqfB
第四話 ゼロとゼロ

 胸に走る痛みに炎を思わせる赤髪の少女は眉をひそめた。彼女の名はキュルケ。アルビオン侵攻には参加せず、学院に残っていた。
 気がかりそうに見つめる青髪の少女――タバサに大丈夫というようにひらひらと手を振ってみせる。
「今ごろどうしてんのかしらねー」
 どうでもよさそうな表情と口調の彼女に、タバサはぽつりと呟いた。
「心配」
「まっさかあ!」
 途端にキュルケは大仰に眉を上げて否定してみせた。
「殺したって死ぬような可愛げないわよ、ヴァリエールもダーリンも」
「心配」
 淡々と指摘され、キュルケはほんの少し頬を赤く染めた。
「ち、違うわよ! ヴァリエールはイノシシみたいにつっかかるのが面白いし、ダーリンはもっとお近づきになりたいから死なれちゃ困るって程度で」
 それ以上追及せずタバサは本に視線を戻した。
 彼女はミストバーンにどこか近しいものを感じていた。怒り、憎しみ、そして孤独――。
 彼女はキュルケに出会い救われた。彼にはそんな存在がいるだろうか。
 どれほど深い闇も照らすような。どんな障壁も焼き尽くすような。
 もしキュルケを喪ったり二度と会えなくなったりしたらどうなるだろう。彼女はふるふると首を振り、想像を打ち消した。
 その時おそらく自分の心が死ぬであろうことを、彼女は悟ったのだから。

 船の上で学院の生徒達は安堵したように仲間と笑い合っていた。アルビオン軍の進撃速度は極端に低下しており、全軍乗船も間に合いそうだった。
 彼らの口に上るのは一人の英雄――否、“勇者”の名。
「すげえよな! 俺達全員を逃すために敵地に残って戦ってんだぜ!? ……おいギーシュ、どうしたんだよ? 活躍の場を奪われて悔しいのか?」
「やめとけやめとけ、七万の大軍相手じゃお前なんか鼻クソ以下だ」
 ギーシュは憂鬱そうな面持ちで首を振った。
「そりゃわかってるよ。僕が言いたいのは――」
 タルブの村での戦いの後ギーシュは名前で呼ばれるようになっていた。今まで顔もろくに覚えられていなかったため急激な変化に戸惑ったものだ。
 彼はウィンプフェンの語った内容に違和感を覚えていた。ミストバーンが他人の盾になるとは思えない。
 仮に戦うとするならば、自らを高める者の命を賭した覚悟が必要だとギーシュはぼんやり想像していた。
 だがウィンプフェンにそんなものがあるとは思えない。もしかすると、情報を操り彼を利用したのかもしれない――そんな気がする。
「トリステインの美しきレディ達を守るのは僕達の役目のはずだろう?」
「そんなこと言ったって、弱い奴が残っても仕方ないだろ」
「そりゃそうだけど……誰かに全部押し付けて知らん顔でいいのかね」
 苦しい時は力ある者にすがり、戦いが終われば手の平を返す。それで胸を張って生きていけるのか。
 もっと強くなって自分が戦えるようになりたい――ギーシュはそう思った。
「彼が“勇者”なら、僕達は――」
 そこまで言いかけて苦笑する。勇者という響きは彼には似合わない。麗しき女性以外のことを考えていたため頭が混乱しているようだ。
 薔薇の造花を一振りし、花びらを落として口にくわえ直す。
 それから彼は愛しのモンモランシーのことを想い、幸せそうな笑みをこぼした。



480 :ゼロの影:2008/08/10(日) 13:26:02 ID:0lmaEqfB
 徐々にアルビオン軍が体勢を立て直し、脅威を葬る準備を進めている。間もなく丘の上へと殺到するだろう。
 デルフリンガーが知らせるが立ち上がる力は残されていない。
 心臓二つを潰され、両腕は千切れかけてろくに動かない。全身に刻まれた無数の傷の痛みすら鈍く遠くなっていた。
 感覚がゼロへ近づいていく。だがそれは以前の状態に戻るのではなく、最も遠いはずの死がすぐそばまで迫っているということだ。
(バーン、さま……)
 自分が滅んでも主が立ち止まることは無いと知っている。振り返らず一人で己の道を歩んで行くだろう。
 体を返せないことだけが心残りだが、理想の器の中で死ぬのなら“寄生虫”にはもったいないくらいの最期だ。
「申し訳ありません……バーン様」
 彼は薄れゆく意識の中、繰り返し主の名を呼び、詫び続けていた。

 その時、ぽたりと雫が落ちた。いつの間にか視界に桃色の髪が揺れている。
「いっつも謝ってるのね」
 彼にはルイズが泥まみれになりながらここまで来た理由も、涙を流す理由も理解できない。不思議そうに眺める彼の顔に水滴が落下し続ける。
 その頬は深々と切り裂かれ、エルフに似た形の耳は半ばから千切れていた。髪も、肌も、衣も、血に染まっている。
(何が……何が“認めさせる”よッ!)
 悔しくてたまらなかった。
 一緒に行動することすら拒まれたことが。限界まで追い詰めてしまったことが。
 何より、ここまで傷つくのを止められなかったことが。
 弱さを見せようとしない彼にとって、血に塗れ倒れている姿を見られるのは屈辱以外の何物でもないだろう。
 彼女は涙を振り払い、誇りにかけて叫んだ。
「わたしが命を賭けてまで認めさせようとした大魔王の部下! それは熱い魂を持った誇り高き戦士よっ! 偽りのない忠誠心こそがあんたの最大の武器じゃなかったのっ!」
 ともに戦った時と同じく、その眼は真っ直ぐ彼を見据えている。器ではなく彼自身の魂を。
「正体が何だろうと! どんな姿だろうと! あんたはあんたよ……! わたしの騎士(シュヴァリエ)で大魔王の誇る忠臣――ミストバーンよ!」
 魂の奥底から絞り出される言葉が彼の心に染み込み、光となって照らし出す。
「あんたがゼロであってたまるもんですか……! 誰にも――誰にも偽りなんて言わせないんだから!」
 ゼロになりかけていた何かが眩い輝きとともに蘇る。不死鳥のように。

「そう、か」
 血のこびりついた唇がゆっくりと動いた。
 ここで諦めては主からの信頼を裏切ることになる。
 絶対に譲れぬものを、自ら“偽り”にしてしまうことになる。
 全てを与えられた恩を返していないのに、勝手に歩みを止める権利などない。
「少しは報いなければ……死んでも死にきれん」
 かすかに口元に笑みが浮かび、消えかけていたルーンが輝きを取り戻す。
(何故君は戦う?)
 命をかけて戦った敵の問いが蘇る。答えは、彼が尊敬し、その名を覚えた者と同じ。
「守るべきものが――在るからだ……!」
 身を起こし、立ち上がる。――彼が彼であるために。


481 :ゼロの影:2008/08/10(日) 13:32:20 ID:0lmaEqfB
 ルイズはその背を見て息を呑んだ。一目見たら永久に忘れられない惨い傷。背中だけでなく両腕も所々炭化し、体中に斬られ、刺され、焼かれた跡がある。
(あんたはわたしが責任持って送り返すんだから……!)
 絶対に死なせない。その一念で『始祖の祈祷書』をめくり、あるページを開く。そこに光る文字を読み進める。
(ほんの一瞬だけでいい……! 『虚無』の力よ湧き上がれっ! 今こそ……あいつの力になるためにっ!)
 息を吸い、精神を集中させる。極限まで研ぎ澄まされた神経が言葉を紡ぎだしていく。
 デルフリンガーが問う。
「……どうする?」
「戦い抜き、バーン様の元へ戻る」
 もう、迷わない。
 詠唱を背に敵の方へ足を踏み出そうとした時、声が聞こえた。
 何よりも望んでいた声が。
「――ミストバーン」
 弾かれたように顔を上げ、声の源――太陽を見つめる。天空の太陽は完全に隠れようとしていたが、彼の心を確かに照らしている。
 表情が驚愕に、次いで歓喜に染まり崩れ落ちるように跪く。
「あ……ああ……!」
 尽きぬ想いを込めて主の名を呼ぶ。
「バーン様――!」

 異世界の像を虚空に映し、腹心の部下を探していた“彼”は困惑した。
 発見したはいいが、秘法が解け、素顔も露になっており、器が徹底的に痛めつけられていたのだから。
 冷静に観察するうちに“彼”は施した封印が完全には解けていないことを知った。
 解けているように見えるが、召喚の衝撃でゆがみ、逆に力を極限まで抑え込んでいたのだ。ルーンを刻まれる前から身体を蝕む枷がつけられていた。
「ミストバーン」
 名を呼ぶと体がびくりと震えた。
「申し訳……ありません」
 彼は心から怯え悲しんでいる。帰還が遅れ、主の体を守れきれなかった失態に。
 “彼”にも叱責したい気持ちはあるのだが、今はそんな時ではない。
「余がお前に預けた力は……そんなものではないはずだ」
 “彼”は手を向け、魔法力を放った。移動や魔法の行使はできずとも、声や力を届けることは可能であるようだ。
 ねじれた封印が正しい形に戻り、項垂れていたミストバーンは力が湧き上がるのを感じた。
「言ったはずだ。お前は余に仕える天命をもって生まれてきた、と。余のためにまだまだ働いてもらわねばならん」
 己の体を忌み嫌い、鍛え強くなれる者を羨望した時――その能力を必要とし、生きる理由を与えてくれた存在。
(最高の主、バーン様……。あなた様に出会えて……良かった)

 彼には歪んだ封印やルーンによる反発だけでなく、他に精神的な枷があった。
 秘法が解けたため、主の体を敵の攻撃で傷つけてはならない。無茶な戦い方をして内側から破壊してはならない。
 それらの想いが動きを鈍らせていた。
 また、あらゆる感情を無理矢理抑え込み封じていたためガンダールヴや暗黒闘気も力を発揮できなかった。
 今、心の枷がルイズと主の言葉によって砕け散った。
 ルーンの反発も収まり、融け合い、昇華された。
 傷口からしゅうしゅうと白煙が噴き上がり、細胞がうごめき再生していく。
 闇の衣から血の染みが消え、美しく力に溢れた元の姿を取り戻していく。


482 :ゼロの影:2008/08/10(日) 13:37:53 ID:0lmaEqfB
 ――羊皮紙にはこう書かれていたかもしれない。
『虚無に心が完全に食われる時、少女が涙し、闘志を取り戻す。主という名の光が姿を現し、影を包む』

 ルイズは青年の全身から放たれる力を感じ、『始祖の祈祷書』の文面を思い起こしながらいよいよ高らかに詠唱した。
『破壊の力も解呪の力も持たぬが、あらゆる災厄から対象を守り抜く力を持つ魔法をここに記す。
 完全に日が食われる時のみ唱えることができ、いかなる干渉も受け付けぬ絶対不可侵の存在へと変える、その名は――』
「凍れる時の秘法(インビンシブル・マジック)」
 青い閃光――召喚の際に解かれ、再びかけられた秘法の光が完全に傷の癒えた彼を包みこんだ。

 時の流れをゼロにする魔法と、その術者である虚無の使い手ルイズ。
 主のために忌避する能力をも揮う、枷を打ち砕きゼロにしたミストバーン。
 ゼロとゼロ。
 互いの心の闇――“ゼロの影”を払い、認め合った者達。
 本来相まみえぬはずの二人が巡り合ったことによって起こる、限りなく奇跡に近い何か。

 隠れていた太陽が光を取り戻すにつれて、二人を中心に力が渦巻いていく。
「それでこそ余の半身よ」
 大魔王が満足そうに笑い、影が首を垂れる。
「お許し下さい……バーン様」
 ふがいない姿を晒した失態は戦いで償うしかない。ハルケギニアで詫びるのはこれで最後にすることを誓い、視線を太陽に向ける。
 完全に太陽が姿を現し青年を照らした。

 ――羊皮紙には以下のように書かれていた。
『太陽が完全に食われる時、時が凍り、失ったものを取り戻す。太陽の光が姿を現し、影を包む』

「バーン様……よろしいですね!」
「許す……! ミストバーン……!」

 掲げられた左手が、天高く輝く太陽に重なった。
 封印が完全に解かれ、神の領域に達した力が弾ける。

 魔界の頂点に立つ、最強の男。

 その半身が今、真の力を取り戻した――!



483 :ゼロの影:2008/08/10(日) 13:39:44 ID:0lmaEqfB
真・ミストバーン 降 臨 !!
さあッ! 刮目せよっ!!

ということで、ラスト一文が書きたくて書きたくて書きたくて書きたくて書きたくてようやく出せました。
ゼロの意味や中途半端に伏せられていた「凍れる時の秘法」「騎士(シュヴァリエ)」も。

少年漫画の燃えが大好きだということを実感しました。
少しでも燃えていただけたらこれほど幸せなことはありません。

484 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/10(日) 14:58:47 ID:NnAE1FYP
うおおおおおお!GJ!!
この瞬間を待ってたぜ!

485 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/10(日) 15:10:58 ID:xxE6iIEB
バーン様降臨ー!! ルイズが凍れる時の秘法をー!! 真・ミストバーン降臨ー!!!
そうか、そういえばあれ皆既日食の時に使うんでしたね。
時間をゼロにする虚無の魔法。うまく二つの作品を繋げましたね。お見事です。

でもこうなったらミストバーンが帰るのも間近なのかな。
(ミストバーンに傷をつけられる相手が居なくなったと思うので。)

気が早いかもしれないけど、どんなエンディングになるのか、期待してます。

486 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/10(日) 15:13:02 ID:fnccD7zb
GJ

下手したらルイズもバーン様に気に入られてバーンパレス行きを誘われたり

487 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/10(日) 15:26:15 ID:aAvO/9Nc
脳内スタジアム一杯に沸き起こるバーン様コールの嵐!
燃えた。

488 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/10(日) 19:16:22 ID:OJD+FInY
今までの展開でもやもやしてた部分が
今回の燃えですべて昇華されたぜい!!!
影の人GJ!

この見事なつなぎを出す為に今までがあったのだな。
ED期待してるよ〜

489 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/10(日) 20:46:09 ID:qyNxZty3
GJ


490 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/10(日) 21:21:23 ID:QIZiZsmc
この流れだと、是非バーン様の方に行ってもらいたい気もするw

491 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/10(日) 21:49:54 ID:TEEUF5nj
投下乙です
ついに力を取り戻したかー反撃ですな
まあ本来の力があるなら暗黒闘気だけでも十分なんだが。闘魔滅砕陣やるだけでも地上にいるやつらは倒せるなw

492 :虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I :2008/08/10(日) 22:55:26 ID:tpcWvqTV
影の方GJでございました。
久しぶりですが投下よろしいでしょうか?
予約なければ23時ごろから投下予定です。

493 :虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I :2008/08/10(日) 23:00:34 ID:tpcWvqTV
虚無と獣王
10 青銅と獣王 

フェオの月、ティワズのエオー、夜。
トリステイン魔法学院寮の一室に、酔っ払いが2人いた。
「でー?どーよあんなつかいましょーかんしたきぶんはー」
1人はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。
『微熱』の二つ名をもつトライアングル・メイジ、褐色の肌と情熱的な性格で男子からの人気が高い彼女は、今、確かに酔っ払っていた。
「のみがたりません!るいずさま、のみが!のめ!」
1人はシエスタ。
炊事・洗濯・接客技能に長け、毎年男子学院生内で密かに開催される『ボクのメイドにしたい使用人コンテスト』で上位に入る彼女も、又、確かに酔っ払っていた。
そんな2人を眺めている、部屋の主である筈のルイズ・フランソワーズ・ド・ラ・ヴァリエールは、今、頭を抱えていた。
彼女は考える。何故こんな事態になってしまったのか。そして、誰にこの事態を招いた責任の所在があるのかを。
食器の片付けにきたシエスタを呼び止め、少し話したいと思ったわたしが悪いのだろうか。
否。親しくしているメイドと話す事の何がいけないと言うのか。
話の中でシエスタの出身地を聞いたキュルケが悪いのだろうか。
否。話の潤滑油として質問したのだ、悪い筈が無い。
出身地を答え、実家から送られてきた特産ワインを『ひとつ』進呈しようとしたシエスタが悪いのだろうか。
否。純然たる好意で言ってくれた事だ。悪いと言っては罰が当たる。
へえ、それはいいわねと言ったキュルケが悪いのだろうか。
否。シエスタが進呈しようとしたのはわたしの筈だが、断るつもりもなかったのでまあ良しとしよう。
『ひとつ』を1本だと思ったわたしが悪いのだろうか。
否。普通『ひとつ』と言われたら1本だと思うだろう、酒量的に考えて。
あにはからんや、12本入りの木箱を『ひとつ』持ってきたシエスタが悪いのだろうか。
否。ていうか意外と力持ちよねシエスタ、重くなかった?
流石タルブの特産品、美味しいもんだからカパカパ開けて5本ばかり空にしたキュルケとシエスタが悪いのだろうか。
…………悪いよね、どう考えてみても!
1人は謹慎中、1人は仕事中、少なくとも人の部屋でワインをかっ喰らっていい立場ではない。
なのに口当たりがいいからと凄いイキオイで飲んでいくもんだから、取り残されたわたしはまだグラス2杯目だ。
つまり、あっという間に酔っ払ったこの2人が悪いのであって、わたしに責任の所在はない。以上証明終了!
微妙に現実逃避っぽい脳内会議を展開したルイズであったが、彼女はひとつ忘れていた。
────酔っ払いに、あらゆる理屈は通用しないという事を。
「なぁーにかんがえこんでんのー、そんなんだからむねにえーよーがいかないのよー」
いつの間にか背後に廻り込んだキュルケが、ルイズの胸を鷲掴みにする。
「ちょ、ちょちょ、ちょっとどこ触ってんのよキュルケ!」
「いや……胸を触ってる筈、なんだけど、その、ええと、ゴメンネ……?」
「なんでイキナリ素に戻ってんのよ演技か今までのはって言うか筈って何よ筈って!しっかりあるでしょうが胸が!謝るなー!」
「そうです!しつれいです!いくらひんにゅうでもさわればあるはずです!そう、ほんのすこしでも、なんサントかは!」
「……ごめんシエスタ、ちょっと黙っててくれる?」
「何サント、というか、正直1ルイズという新しい単位を制定したいわね。わたしとしては」
ルイズは思う。今ここで2人に『不幸な事故』があったとしても、わたしは無罪だと。
「そうだ、ふくのうえからだからよくわからないんですよ!むきましょう!くだもののごとく!」
「その発想は無かったわ!」
ルイズは迷わず机の上にあったインク瓶に『錬金』を掛けた。
魔法は当然の如く失敗。だが今回は失敗こそが狙いだ。
派手な爆発音に2人が気を取られた隙に、ルイズは脱兎の如く逃げ出したのだった。



494 :虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I :2008/08/10(日) 23:04:28 ID:tpcWvqTV
さて、自分の部屋から逃げ出す羽目に陥ったルイズであったが、困った事に行く当てがなかった。
寮の中をウロウロしていてもつまらないし、誰かに見つかって怒られるのもゴメンである。
こんな時に泊めてくれそうな友人はいない。強いて言うならキュルケとシエスタが友人と言えるのだが、2人とも今回部屋から逃げ出す羽目になった原因である。
ある程度時間を潰せば酔っ払い共は沈没するだろうが、夕食後なので図書室は既に閉まっており、自室謹慎中とあっては教師も頼れない。
しかし、いや待てよ、とルイズは思いなおす。コルベール先生なら、大丈夫かもしれないと。
彼の研究室は塔の中にはないので他の人間に見咎められる可能性は低い。
謹慎中の身ゆえ怒られるかもしれないが、そこはそれクロコダインの事を知りたがっていたので判ったことを報告に来たという口実が使えるではないか。
よし、即断即決即実行とばかりにルイズは塔を後にした。
この時彼女はまだ気が付いていない。
クロコダインの事について、コルベールに報告できる様な内容は殆ど無いという事に。

(注:これまでの流れ ・召喚→契約→案内→爆睡→起床→授業→爆発→説得→昼食→戦争→一喝→謹慎→酒盛→脱出←イマココ)

ルイズが自分の調査不足に気がついたのは、コルベールを前にしてからであった。
より正確に言うと、こちらの予想通り謹慎中でしょうと眉を上げる教師に使い魔についての報告があると言ってから、である。
うわどうしようと思いつつ今までの流れを高速で思い返すと、今日の授業の後でクロコダインがある意味とんでもない事を言っていたのに気がついた。
「先生。彼の居た処では平民でも魔法が使えていたようです」
「! 本当かね、ミス・ヴァリエール!」
「はい、確かにそのような事を言っていました。平民の出でありながら、若くして大魔道士の称号を手にした仲間がいるって」
ハルケギニアにおいて、メイジには1人の例外もなく貴族の血が流れている。
この地において貴族とは、即ち絶対無二の力である魔法を意のままに操る強者を指しているのだ。
クロコダインの言った事はこの大前提を反故にし、貴族のアイデンティティを打ち壊しかねない問題発言なのであった。
「ミス・ヴァリエール、彼が今、何処にいるか分かりますか?」
「え? た、多分厩舎の方に居ると思いますけど……」
ルイズは少し戸惑っていた。いつも優しい、口の悪い者に言わせれば頼りない表情のコルベールが、険しい顔をしているように見えたからだ。
「はは、わたしも彼の話を聞きたいと思っていた処でしてな。ちょっと案内して貰えますかな? 謹慎の件についてはちょっとだけ大目に見ますので」
そう笑うコルベールの顔は、いつもの見慣れた表情だった為、ルイズはさっき見たのは気のせいだったかしらと思った。



495 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/10(日) 23:05:10 ID:j5MapC6i
支援だ、支援

496 :虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I :2008/08/10(日) 23:09:24 ID:tpcWvqTV
前方から三体のワルキューレの剣を時間差で襲いかからせてみた。
手にした青銅の手斧で一体目と二体目の剣が弾かれ、三体目の剣は一旦受け、敢えて下に流してバランスを崩させた後で地面に叩きつけられる。
さらに一歩踏み込んで横殴りの一撃。同じ材質で出来ているにも拘らずワルキューレは二体とも腰から両断され、手斧の方には目立った傷もないのは何故だろう。
隙あらば襲いかからせるべき後方のワルキューレは、しかし動かせないままだ。
外見からは想像できないが相手の動きは実に素早く、片目が失われているにも拘らず全方位を見通しているかのような体捌きを披露している。
迂闊に動けば直ちに返り討ちにあうに違いない。
かといって攻撃を怠れば確実にこちらの負けだ。防御に徹した処で守りきれる可能性は低い。
ワルキューレは残り三体。自分の護衛につけていた一体も攻撃に回す。同時に三方から攻撃させれば、流石に一撃位は入れられる筈だ、多分。
さっきまで一緒に戦っていた学友たちは、残念ながら戦線を離脱している。
開始10秒で紙の如く散ったぽっちゃりと体育会系はともかく、委員長系眼鏡の彼は実に粘ってくれた。
こちらに攪乱を指示しておいて、ワルキューレ一体を盾に死角であろう左側から接近。
手斧で戦乙女は粉砕されるのは織り込み済みで、咄嗟の反応がしにくい零距離まで接近、ブレイドを喉元に突きつけるのが彼の狙いだ。
まあ、まさか相手が体を半回転させて尻尾で薙ぎ払ってくるとは予想できず、あえなく脱落組の仲間入りをしたわけだけど。
努力賞といったところかな? もっとも、全てはこのギーシュ・ド・グラモンの活躍のお膳立てをしてくれたと考えればいいのさ。
これはアレだな、タイトルロールは最後に登場すると言うか、華麗なる『青銅』の最大の見せ場というか、まあそんな感じ?
さあ征けぼくの戦乙女たち、強大な力を持つかの使い魔を倒したとあればモンモランシーは勿論、他のオンナノコたちだってぼくの魅力にクラクラってちょっと待ってくれ給えよキミ!?
踏み込みが早い!早いよ!こういう時は焦った方が負けってなんでワルキューレ持ってブンブン振り回してますかッうわこっちキタ────!!

「とまあ白熱した展開だったんだけどね、最後は潔く降参の意を示したという訳さ。言うなれば惜敗、だが次はぼくの勝利によって」
「ああハイハイ要は四人がかりで戦ったのにあっさり完敗したわけね」
ギーシュ・ド・グラモンによる独演会は、ルイズの無情かつ端的な一言によって幕を閉じた。
一緒に戦った三人までもが生暖かい目で見守る中、ギーシュはささやかな抵抗を試みる。
「ルイズ、その散文的な言い方はトリステイン貴族として些か問題があると思うんだ。もっと、こう、抒情的にというか」
「時と場合と相手によるわ」
発言事にいちいちポーズをつけるギーシュを見るルイズの眼は、売れない大道芸人を見るそれに等しかった。
「そもそも近接格闘訓練の描写にリリカルな表現は必要ありませんな。あと謹慎中という事実について申し開きがあるなら聞いておきましょう、散文的に」
「コルベール先生までッ!? いやでもルイズだって謹慎中の筈ではッ」
「わわわわたしはいいのよ先生の許可も得ているしっ」
「許可したのは事後承諾だった気がしますがまあいいでしょう。そもそも何故こんな事をしているのです、君たちは」
コルベールの問いに答えたのはそれまで沈黙を守っていたクロコダインだった。
「なに、こっちにきてから碌に体を動かしてなかったんでな、無理を言って運動不足の解消に付き合って貰った。あまり責めんでやってくれ」
平然とした顔でそんな事を言うクロコダイン、だが聞いていたギーシュ達が驚いた表情をしていた為、彼らを庇う発言だという事がコルベールには知れる。
それはクロコダインにも判っているようで、少し目を逸らしながらさりげなく話題を変えた。
「そういうお主らこそどうしてこんな処に? 何か用事でもあったか?」
「そう!昨日は学院の説明位しかできなかったでしょ? だからもう少しハルケギニアの事を知っておいて欲しいのと、あとクロコダインの居たところの話って碌に聞いてなかったから」
クロコダインは少し困ったように答える。
「別にそれは構わんが……こんな時間にか?」
「あ。」
考えてみればもうすぐ消灯時間である。確実に長話になるであろう情報収集に向いた時間帯ではなかった。


497 :虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I :2008/08/10(日) 23:13:42 ID:tpcWvqTV
「話は明日にでも出来る。今日はもう休んだらどうだ? 昨日に続いて色々あった事だしな」
「むー……」
確かにクロコダインの言う通りなのだが、問題は部屋にいる酔っ払いたちの言動だ。あとクロコダインの話を聞きたいというのもある。
ていうか自分の使い魔がなんでギーシュ達と訓練なんかしてんのよ、と少しキレそうになるが、そこは常に冷静にと誓ったばかりの身であるのでグッと堪えた。
「……確かにその通りですな。ミス・ヴァリエール、クロコダイン、明日の午後にでも私の研究室に来て頂けますかな?」
「構いませんけど、先生、授業は?」
「自習という事になりました。たった今、不思議な事に」
それでいいのか教職20年、とその場にいた生徒たちは全員そう思ったが口には出さなかった。
「さあ、部屋まで戻りなさい。ああ、ミスタ・グラモン、君たちもです」
「少し待ってくれないか、コルベール。ちょっと言っておかねばならん事があるからな」
クロコダインはそう言ってコルベールを制すると、ギーシュ達に向きなおった。
「さっき付き合って貰った『運動』についての事なんだがな、最初に突っ込んできたのは確かギムリと言ったか」
「え、あ、ああ」
「未見の相手に単独で正面から攻撃するのは頂けん。何も考えないで攻撃しているのがすぐに分る。せっかく仲間がいるのだ、連携する事を前提に動いた方がいい」
「……」
「だが、躊躇なく向かってくる度胸は買いだ。連携を意識する余り縮こまっては意味がないからな」
ギムリは少し考え込むような素振りを見せた。自分でも思い当たる事があるのだろう。
「次は、あー、マリコルヌか。敵を前にして怯えるな、とは言わん。だが決して竦んではならん。敵に向うにせよ、逃げるにせよ、体が動かなければ待っているのは己の死だぞ」
「……」
「言っておくが逃げるのは決して恥ではない。怯えるのもそうだ。オレも敵を前に震え、死を覚悟した事がある。守る者がいたから無理やり体を動かしたがな」
マリコルヌは信じられないと言った顔だ。目の前の使い魔が死を覚悟するような敵とは一体どんな化物なのか想像もつかない。
「レイナール。人形を囮にしてこちらの動きを読み、懐まで飛び込む動きは大したものだが、それは人間相手の動きでもある。ここにはオレの様な怪物はいないのか?」
「いえ、オーク鬼やトロール鬼といったモノが存在します。貴方の様な姿ではありませんし、知性も低いですが……」
「そうか。敵がどんなものでも戦う時は相手の姿をよく観察し、取りうるであろう戦法を推察しろ。リーチや歩幅から攻撃範囲を把握するだけでも随分違うぞ」
尤もこれは魔法というものを全く考慮に入れていないし、想像もしないような攻撃をしてくる奴もいるが、と断りを入れるクロコダインをレイナールは見つめる。
多分彼にも何らかの『隠し玉』があるのだろうと思いながら。
「最後にギーシュ、あの人形の制御はすべてお前がしているのか? それとも自動で動くものなのか?」
「ぼくが動かしているものだよ。基本的には命令をしておけばその通りに動くのがワルキューレ──ゴーレムだからね」
「姿形はどうなっている? 作れば皆ああいう凝った姿になるものなのか、自在に形を作れるのか」
「勿論メイジの思うがままに形を決定できるものさ。あんな優美な姿を作れるのはぼく位のものだけどね」
またもやポーズをつけるギーシュに、クロコダインは言う。
「確かに凝った造形だと思ったが、もう少し凝るべきところを考えた方がいいな」
「というと?」
自分の美意識に文句をつけられたと感じたのか、少しむっといた声を上げるギーシュ。
「作った人形の全てに剣を持たせていただろう。丁寧に長さも同じものを。弓は難しいだろうが、槍などは持たせられないのか?」
「あ。」
「レイナールにも言ったが、敵の攻撃範囲を予測しろ。相手の手の届かない場所から攻撃できればそれだけ有利になる」
「……」
「自分の守りに就かせていた人形がいたが、剣の代わりに盾を持たせてもいいだろう。最初から予備戦力のつもりだったのなら的外れな指摘だが」
予備戦力なんて考えてもなかった。これまで行ってきた決闘ではワルキューレを五体も出しておけば必ず勝てたし、当然武器の工夫などしないですんでいたのだから。
「だが1人であれだけの人形を制御できるのは大したものだ。使い方次第でいい働きをするだろうな」
クロコダインはそう言うと、青銅の手斧をギーシュに差し出した。


498 :虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I :2008/08/10(日) 23:17:07 ID:tpcWvqTV
「話が長くなってしまったが、これを返しておこう。なかなか使い勝手が良かった」
それは訓練前にギーシュが作ったものだった。持ち歩いている戦斧は手加減がしにくいとの理由から頼まれ、ワルキューレ一体分の精神力を使って生成したものだ。
「いや、ぼくじゃ使いようがないし、持っててくれて構わない。次の訓練の時にも必要だろう?」
「次?」
「おいおい、まさか勝ち逃げなんて考えてるんじゃないだろうね? 折角アドバイスまで頂いてるんだ、次に生かしてこそとするものだろう」
気障なポーズで気障な事を言うギーシュに仲間たちが追随する。
「確かに勝ち逃げは良くないなあ」
「ぼくたちは色々勉強になるし、貴方にとっても運動不足の解消になるでしょう? 魔法についてもある程度知る事が出来るでしょうし」
クロコダインは困ったようにルイズとコルベールを見た。自分1人で判断していいものか迷っているようにも見える。
先ず口を開いたのはコルベールであった。
「……まあ自主訓練に関してはこれまでも行われてきた事ですし、とやかく言うのも野暮というものでしょう。但し謹慎が明けてからにしなさい、示しがつきませんから」
次にルイズ。微妙に拗ねている。
「べっ、別に好きにしたらいいじゃないのっ。クロコダインがそうしたいんだったらっ」
明らかに本心は主である自分を優先してほしいと判る発言であった。
「ふむ。ではルイズには監督役としてきてもらうかな? 勿論参加してくれても一向に構わないが」
「いい考えね。しっかり監督するから覚悟しなさいよ!」
あっさり機嫌を直すルイズである。
(何を監督するんだ? ひょっとしてぼくたちをか?)
(なんかよくわからないけど確かに覚悟は必要かなあ)
(美少女貧乳鬼監督に思うさまに詰られる……イイネ!凄くイイヨ!)
取り敢えず表立っては異論は出なかったので、講師クロコダイン、顧問コルベール、監督ルイズ、参加者都合のつく有志による近接格闘研究会(仮)がなんとなく発足する事となった。
この会の主要メンバーが後の水精霊騎士隊の中核になる事は、この場にいる誰にも想像のつかない事である。

就寝時間間際、ルイズはそっと自室の扉を少しだけ開く。
中を窺うと、なぜか半裸のキュルケが机の下で潰れている。周囲には空き瓶が散乱していた。
ここからは見えないが、この分ではシエスタも恐らくは沈没しているだろう。
ルイズは極力音を立てないように部屋に入り、自分のベッドへ向かった。寝た子を起こすような事はしたくない、身の危険に関わるし。
そろりそろりと進むそんな彼女の肩を、ぽんと後ろから叩く者がいた。
ギギギ、と音をたてて恐る恐る振り向くと、そこにはイイ笑顔のシエスタがワイン片手に立っており、その足元にいつの間にか追加されたワインのケースが鎮座ましましている。
すっかり血の気の引いたルイズにシエスタはイイ笑顔のまま宣告した。
「のめ。そしてぬげ」
偉大なる始祖ブリミルよ。わたし何か悪い事したでしょうか。あと夜が明けるまで、わたし生きていられるでしょうか。
朝日が昇るまで、あと7時間。ははは、と乾いた笑い声が夜の闇に消えていった。


499 :虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I :2008/08/10(日) 23:19:12 ID:tpcWvqTV
以上で投下終了です。
今回はなぜか非常に難産で書いては消し、消しては書きをしているうちに間が空いてしまいました。
次回はフーケ編導入の予定。たぶん。

500 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/10(日) 23:22:10 ID:HeJYwayi
GJ!でもルイズ、ご愁傷様。

501 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/10(日) 23:27:47 ID:TbcGG9HO


破壊の杖は何になるのだろうか

502 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/10(日) 23:28:56 ID:pd5tnAdQ
おつかれさまー。GJです。
キュルケとシエスタ……酒乱か。

503 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/10(日) 23:32:56 ID:peB0sEHa
獣王の方、乙でしたー!
ワルキューレ戦をこういう形で持ってきましたか。GJです。
最後のオチにはしっかり笑わせていただきました。
しかし他の方のSSにもシエスタ酒乱っていうのがあったけど、
原作にそんな描写あったかしら??

504 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/10(日) 23:36:57 ID:OfT9vlVv
>>503
6巻、ヴァリエール邸にて飲酒描写有り。

あと獣王乙。

505 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/11(月) 00:06:59 ID:VfiSO3mX
獣王の人乙
おっさんがいい漢すぎる、保護者的な意味で
次回からフーケ編か。パワー勝負ですな

506 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/11(月) 00:57:57 ID:QxC0Y0e6
獣王さん乙。
待ってましたー!このSSのルイズは自分が我慢する事を覚えたせいか、
他人の無茶に巻き込まれる運命になりつつある気がするw

507 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/11(月) 08:58:28 ID:W/UaAJxj
ゴーレム相手にブロックみたいなことをするんですね?わかります
そして乙

508 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/11(月) 09:44:53 ID:43cpWyKD
獣王の人乙です

おっさんは戦闘訓練相手には良いでしょうね。
全力出してもOK、その後に問題点を指摘してくれるのだから。

にしても謹慎無視して何やってんだか。。。

509 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/11(月) 13:21:30 ID:bm7/N1xh
獣王の人乙です。
ここのルイズはいい子な分損な役回りになっていますね(笑)。
次はフーケ編とのことですがもしかしたら男子メンバーも行くのでしょうか。
でもその前に街には行かないんでしょうか。
できればデルフにも出てほしいので、ポップみたいな話し相手として。

510 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/11(月) 13:42:02 ID:nbK1y/eA
デルフいらねーよ。大体、町に武器を買いに行くイベントが発生しないだろ。無理に原作をなぞる必要はない。


511 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/11(月) 13:53:03 ID:J+4o2cvQ
あきらかに手のサイズにあってない上に
おっさんの場合、斧が使えなくても素手でも普通につよいからなー
予備武器としてもいらない子だよねデルフ……

512 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/11(月) 14:04:19 ID:Z7AH3SPW
クロコダインに弱点があるとしたら、魔法攻撃には耐えるしか防御方法が無い事くらいか。

クロコダインにデルフを持たせるには、彼に新しい武器を選ばせるだけの理由が必要になるかと。フーケが武器の必要性をもたらすだけの理由になるとは思えないが……?

513 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/11(月) 14:11:49 ID:Ce7iwBUQ
じゃあ偶々そこらへんを歩いていたデルフリンガーの上におっさんが転んで鎧とデルフが一体化する方向で

514 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/11(月) 14:15:29 ID:EQqDFi09
>>513
それってど根性ガエルってかデルフ歩けないからww

515 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/11(月) 16:29:06 ID:0KoJ3Wg0
ばっか、お前等・・・
デルフを斧に変更する、これでOKだろ。

516 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/11(月) 16:32:59 ID:koaN66ZU
左手に斧、右手に斧ですね
わかります

517 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/11(月) 17:22:05 ID:spdD9ool
そういえば、もういくつもSS見てきたが、デルフ自体の形を変えてるのは見ないよな。
せいぜい本家小ネタ「デルフリンガーの憂鬱」くらいだな。俺が知ってるのは。

518 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/11(月) 17:32:16 ID:FtjLdv1X
棍棒になったメロス
機械生命体になったディセプティコン

519 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/11(月) 17:35:05 ID:Awc/P5Tx
メスになった紙袋の使い魔
ブレードとして取り込まれたZONE OF ZEROなんかも形が変わったって言えそうだね

520 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/11(月) 18:35:17 ID:S51j0WXd
自在に形状変化できたら、それなんて黒杖になっちまうけどね
理力効果もガンダ効果とちと被ってるし

521 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/11(月) 19:20:56 ID:z6J9hj9j
>>512
会心撃で弾き飛ばす防御もあるぞ

522 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/11(月) 19:30:59 ID:dlkNfvRP
まあ要はデルフはおっさんが持てるサイズに変えときゃいいわけだしな
それにデルフとか無くても街に行くイベントは見てみたい

523 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/11(月) 19:59:42 ID:iAq5Dwpg
デルフってろくな使い手がいなかったから錆びた姿してたんだよな?
だったら錆びるんじゃなくて誰にも扱えなくなるくらい大きくなってても良くないか?
具体的にはおっさんに丁度良いくらいの大きさまで。

…ドラゴンころし並みに大きくなってそうだw

524 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/11(月) 20:07:12 ID:J+4o2cvQ
>>521
並みの魔法……どころか初期ポップの魔法でもやけつく息で吹き飛ばしてたなー

525 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/11(月) 20:29:57 ID:koaN66ZU
>>523
覚醒したらちっちゃくなるんですね
わかります

526 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/11(月) 20:40:34 ID:0KoJ3Wg0
>>524
それどころか、竜の騎士のライデインの直撃にも耐えてます。

527 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/11(月) 21:01:44 ID:J+4o2cvQ
>>526
魔法に対して対処手段が少ないけど、対処できずに食らったところで耐えられるってのが、おっさんらしいよなw
ギガブレイクを1発とは言え耐え切って、しかもベホマがあれば複数くらってもなんとかいけますってなにさーとw

528 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/11(月) 22:02:46 ID:xb82RS4v
ダイのパプニカのナイフみたいにサブウェポンとして使用させるのは?

529 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/11(月) 22:42:29 ID:S51j0WXd
デルフの柄握れずに指で摘むはめになるのがのがつかわれない理由の二番目くらいだと思ってたんだが

530 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/11(月) 22:43:04 ID:yTcUb/pB
フルパワーで使って刀身消滅ですねわかります。

531 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/11(月) 22:44:51 ID:opyPZ7Dv
>>獣王氏
1クレスポならぬ1ルイズですか?

GJ

532 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/11(月) 22:47:02 ID:J+4o2cvQ
サブウェポンなら、今回の青銅の手斧のように手軽に作ってもらえそうなんだよなー
原作だとルイズにそんなの望むのは酷だけど、他のメイジと仲良くなってると手軽に武器って手に入るし

533 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/12(火) 04:21:30 ID:IfXxDqVC
ううむ、しかしおっさんが来ると途端に雑談が弾むなあ。

534 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/12(火) 07:18:01 ID:gVyss4J6
SSの投下が来たらスレが活性化するのはあたりまえじゃないか。

535 :ゼロの影:2008/08/12(火) 08:08:01 ID:6KWAwTbd
獣王の人乙です。

第五話、8:15頃に投下します。


536 :ゼロの影:2008/08/12(火) 08:15:07 ID:6KWAwTbd
第五話 最強の存在

 凍れる時の秘法を唱えたルイズが倒れるのをこらえていると、天空から光が降り注いだ。
「余の力を分け与えてやろう。見せてみるがよい、力を」
 身体に力が湧きあがる。これならもう一つ魔法を唱えることができそうだ。
 さらに『始祖の祈祷書』をめくると新たな文字が浮かび上がっている。その色は他のものと違っていた。
 異質な力が流れ込んだことによって存在しないはずの文字が見えている――そんな感覚だ。
『異なる世界をつなぐ魔法をここに記す。光り輝くその扉の名は――旅の扉(ワールド・ドア)』
 彼女は詠唱を始めた。彼を元の世界に戻すために。
 力を取り戻したミストバーンはデルフリンガーを地面に突き立てた。
「そこで見ているがいい……」
「へっ、よーやく相棒から呼びかけてくれたのな。……遅ぇよ」
 もはや武器を媒介とせずともガンダールヴの力を最大限に発揮できるということだ。左手のルーンは太陽のように全てを照らす閃光を放っている。
 大魔王最強の武器は、己の肉体。彼は在るべき姿を取り戻し、存在そのものが武器となった。
 彼の心は晴れやかだった。まるで雲間から差し込める太陽のように。
 その姿が白い光と化し、迫るアルビオン軍を切り裂いていく。
 ただの拳撃が神の鉄槌となって兵士達を吹き飛ばした。
 無数の魔法が放たれるが防ごうとすらせずに飛び込み、突破する。白皙の美貌には傷一つついておらず、あれほど刻みこんだ傷は完璧に癒えている。
 驚異の連続にアルビオン軍の兵達は思考停止寸前だったが、恐怖に動かされ襲いかかった。
 しかし、無造作な手刀一発で空気が割れ、衝撃波が災厄の壁となって彼らを飲みこんだ。木の葉のように人間の体が軽々と宙を舞い、地面に叩きつけられる。
 今の彼はワルドを追った時と同じ――否、遥かに超える力を持つ。
 地面を力任せに殴りつけると巨大な亀裂が生じ、兵達の密集している所で火山の噴火のように爆発した。
 素手とは思えぬ破壊力に情報が錯綜し、兵達が逃げ惑う。

 ――あれは人型の兵器だ。
 ――あれは伝説のメイジだ。
 ――あれはエルフ最強の戦士だ。
 ――あれは神の遣わした調停者だ。

 無茶な内容の情報が飛び交うのも無理のないことだった。
 一瞬後には全く別の場所に現れ、死と破壊をまき散らして消える。まさに神出鬼没で、悪夢が具現化したような存在だった。
 炎球があらゆる方向から迫るのを、不死鳥の羽ばたきを思わせる掌撃が尽く弾き返し、術者を焼き尽くした。
 槍の穂先や剣の切っ先がたまに突き立てられるが1サントも通らず、刃こぼれするか折れるかのどちらかだ。
 ある者は鎧ごと手刀で切り裂かれ、ある者は武器ごと拳で打ち砕かれた。ある者は枯れ葉のように引き千切られ絶命し、ある者は血塗れの最期を迎えた。


537 :ゼロの影:2008/08/12(火) 08:21:00 ID:6KWAwTbd
「信じられんな」
 将軍のホーキンスはぼそりと呟いた。
 たった一人の若者に七万の大軍が怖れおののき、叩き潰されようとしている。その武器は両の拳だけだというのに。
 その一撃で天地が叫び唸る。魔の時代の到来を予感させる力に抵抗も忘れ、ただ見ていることしか許されない。
 伝説の力を見られるだけで、歴史の証人になれるだけで満足してしまうような青年の姿だった。
「勇者か――魔王か――」
 どこか安らかな諦めの気持ちがホーキンスを包んでいた。
 彼は将軍ではなく英雄に憧れていた。一人で不利な戦況をも覆す存在に。しかし、ミストバーンの戦う様を見ていると英雄という言葉すら虚しくなってしまう。
 どうすべきか必死の形相で訊いてくる副官に簡潔に答える。
「退却するぞ」
「バカな、相手はたった一人ですよ!?」
「その一人に滅ぼされようとしているではないか。……見事だ。今の彼の強さ、この世のものとは思えん」
 たとえ十倍の兵力があろうとも彼を殺せぬことをホーキンスはすでに悟っていた。
 今すべきことは敗北の決まっている戦いに兵力を投入することではなく、被害を出来るだけ抑えることだ。
 この光景を自分は決して忘れぬだろう――ホーキンスはそう呟き、大声で退却を指示した。


 アルビオン軍が退却を始めると、ミストバーンは主からの指示で追おうとはせず丘の上まで戻った。
 光の扉が現れ金の粒子をまき散らしている。その傍らには精神力を使いきったルイズが座り込んでいた。
 ミストバーンはちらりと視線を向けたものの、彼を救った相手に何の言葉もかけず扉に歩いて行く。
 そこへ大魔王の言葉が響いた。
「どうやらお前はその人間としばらく行動を共にしていたようだな。……そして、顔だけでなく力も見られた」
 今にも扉に触れんばかりに近づいていた彼の動きがピタリと止まり、少女を振り返る。
 大魔王の秘密に近づいた者は誰であろうと殺さねばならない。たとえ認め合った相手であっても。
 それを悟ったルイズは震えながら尋ねた。
「わたしを……殺すの?」
 ミストバーンはほんの少し俯いた。目元が髪に隠れて見えなくなる。
「あんたにとってわたしは帰るための手がかり……ただの駒にすぎなかったの?」
 彼女の心を静かな絶望が支配していく。彼を召喚してから、ずっと認められようと努力してきた。
 それも全て徒労に終わったのか。確かに通じるものを感じたのも偽りだったのか。結局元の地点から進んでおらず、ゼロのままだったのか。
 そんなはずはないと心のどこかで声がするが、ミストバーンの返事は――
「……ルイズ。その質問に対する私の答えは常に一つだ」
 顔を上げ、誇りとともに答える。
「大魔王さまのお言葉は全てに優先する……!」
 ルイズががくりと首を垂れた。疲れたような表情で、体を震わせながら俯く。
「そう……それがあんたの答えなのね」
 言いながら彼女は理解していた。彼にとって大魔王への忠誠こそが最上であり譲れぬものなのだ。
 それでこそ彼なのだと知っている。彼が彼であるために、どんな相手でも殺そうとするだろう。
 彼の左手の輝きが薄れ、ルーンは完全に消滅した。


538 :ゼロの影:2008/08/12(火) 08:26:39 ID:6KWAwTbd
(わたしはここで――)
 膝に力を込め、最後の力を振り絞って立ち上がる。
 フーケのゴーレムを力を合わせて倒し、ワルドに殺されそうになったのを救われた。
 『虚無』の力に目覚め、誰かから必要とされた。絶対に見られぬ光景を目にすることもできた。
 全ては彼を召喚したことから始まった。だから、最期まで彼を真っ直ぐ見つめているつもりだった。
(ああ――言わなくちゃ)
 ずっと言おうと思って言い出せなかったこと。
「ありがとう……!」
 命を救ってくれた。共に戦ってくれた。力になってくれた。何より――認めてくれた。
 目的が何であれ、救われたことに違いは無い。疎ましく思うこともあったが今では感謝している。
 率直な感謝の言葉にミストバーンは息を呑み沈黙した。その内心を窺い知ることはできない。
 彼女は杖を下し、残された力を振り絞って立ち続ける。
 もう爆発一つ起こすことができない。今にも倒れそうなのを気力で無理矢理こらえている状態だ。
 それでも、彼がトリステインの者達を殺すことだけは止めるつもりだった。召喚した者の責任として。

 彼女は杖を捨てて殴りかかった。全てが始まったあの時と同じように。
 彼は避けようとはせず突っ立ったままだった。拳が頬に吸い込まれ、爽快な音が響いたというのに彼女の拳の方が悲鳴を上げた。
 凍れる時の秘法がかかっているためいかなる攻撃も受け付けない状態にあることを忘れていた。
 解除しようにもある程度時間を置かないと不可能だ。彼に勝てる可能性は万に一つも無い。
 一撃をくらわせることができたのは指導成果の確認か、余裕の表れか。おそらくその両方だろう。
「……フム、見事だルイズ。威力、速度、ともに上昇している」
「ほ、褒められたって嬉しくないんだから!」
 そう言いながらもルイズは笑っていた。
 彼女は反撃の拳が迫るのを恐怖も感じぬまま見つめていた。
 こうなることも覚悟の上で、彼の元まで来たのだから。



539 :ゼロの影:2008/08/12(火) 08:31:25 ID:6KWAwTbd
 彼女にミストバーンの攻撃が届く刹那、動きが止まった。
 制したのは彼の主。
「待て」
 言葉を待つ二人へ楽しむような声が降り注ぐ。
「凍れる時の秘法を使い、異世界をつなぐ扉を作り出せる者などそうおらん。その気概も気に入った……余の部下にならんか?」
 話の流れについていけずルイズは呆然としたが、勧誘されていると知って目を瞬かせた。
 一度部下に引きこめば何らかの手を打ち、秘密を洩らされぬ自信があるのだろう。
(断れば殺される……わよね)
 しかし、大魔王に従うことは異世界での人間達との戦いを意味する。
 ハルケギニアには大切な者達がおり、トリステインのためにこの力を使いたい。だから彼女は首を振り、きっぱりと告げた。
「わたし、行けないわ」
 断られて怒るかと思いきや、大魔王は面白いというように笑っている。
「ふふ……まあよかろう。今ここでそなたを殺しては扉が消えるかもしれんし、他の目撃者を殺す時間もない」
 声や力を送ることはできても自在に扉を形成するには至らない。可能だとしても遥か先のこととなるだろう。
 一刻も早く全盛期の肉体と最高の部下を取り戻すべきだと判断したのだ。
 緊張の反動で意識がもうろうとするルイズの前で、青年は扉を潜ろうとしている。
「わたしはあんたの――」
 気づけば言葉が口から転がり落ちた。
 ミストバーンがわずかに振り返り、囁く。その口元に浮かんでいるのは、ルイズが初めて見る――。
「お前は私の――」
 その時光が彼を包みこんだ。太陽のような金色の光に飲み込まれ消えゆく背に、見たことなどないはずの大魔王の真の姿が重なった。
 音の消えた空間で、瞼を閉ざし、静かに別れを告げる。
 立場こそ違えど共感を覚えた相手へ。

 ――さよなら……ミストバーン。

 彼が消えた後に残されたキメラの翼を投げ上げると、今度はかき消されることなく彼女をトリステインへと運んでいった。


540 :ゼロの影:2008/08/12(火) 08:33:00 ID:6KWAwTbd
以上です。

「旅の扉」はバーン様+ルイズの力で作られた、「世界扉」の紛い物です。
次のエピローグで最後です。

541 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/12(火) 09:15:52 ID:U1aQ/j5r
GJ!以外に何言っていいかわからないぜ>影の人

542 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/12(火) 12:10:21 ID:f4lvzPd1
まさにGJ!
ミストバーンがルイズを殺そうとした瞬間は
「ああ、そうだよな。そうするよな。この男はミストバーンなんだから……」と一瞬絶望的に納得しました。
でもどうにかルイズが殺されなくてよかったw

最後のエピローグ、お待ちしてます。がんばって下さい。

543 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/12(火) 18:19:56 ID:5bMcXe7o
GJ以外に言葉が浮かばない

544 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/12(火) 19:58:40 ID:FOGc8q7a
>「大魔王さまのお言葉は全てに優先する……!」

この言葉がミストの証だよな
GJなんだぜ

545 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/12(火) 20:29:12 ID:HeJVgGKe
爆炎の中の者です。
まとめの方、本日の更新分に自分の番外編が掲載されて無かったみたいなので、また
都合の良い時に掲載してもらえたらありがたいです。
タイトルですが番外編掲載時の最初のレスの通り、二年虚無(ryでお願いします。
>>影の人
いよいよ次がエピローグという事で、一読者としてwktkしております。ミストとルイズに
どんな結末が待っているのか……蝶・期待してますね

546 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/13(水) 00:01:11 ID:nAqm9EKO
影の人乙です
やはりあの言葉こそミストのアイデンティティーを表してるな
もうすぐ終わりか……当初はミストなんか召喚して大丈夫だろうかと思ってたんだがここまできたんだな

547 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/13(水) 16:46:39 ID:VTkDw683
すごいな、とうとうここまで来たのか。
しかし、これだけの逆境にさらされながらも信念の折れないミストは本当にたいしたものだ。

548 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/14(木) 11:29:56 ID:xoShshm+
影氏獣王氏乙。
面白かったよー

549 :ゼロの影:2008/08/14(木) 12:48:42 ID:7FwOkfi6
ミストバーンを書くのは難しかったですが、それ以上に楽しかったです。

『ゼロの影』最終話、12:55頃投下します。

550 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/14(木) 12:51:07 ID:oDID7e0z
このスレ初めて来たんだけど、ここじゃポップは不人気みたいだな。
サイトとキャラが被るからかな。

551 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/14(木) 12:53:52 ID:q1raiClc
ポップが人気無いわけ無いだろう

552 :ゼロの影:2008/08/14(木) 12:56:04 ID:7FwOkfi6
最終話 誇りと影

「何か申し開きはありますか」
 冷厳な声がウィンプフェンの鼓膜を震わせた。王宮の主アンリエッタは可憐な顔に静かな怒りをみなぎらせている。
 向かい合う二人を感情を押し殺した眼で睨みつけているのは『虚無』の使い手のルイズ。
 ウィンプフェンは少女の眼光に圧されかけたが、己を鼓舞するように笑った。
「はて、何のことですかな?」
 澄ました顔に心が煮えるのをアンリエッタはこらえた。横に立つ友の方が何倍も耐えているはずだ。
「彼女の騎士(シュヴァリエ)を捨て石にしたことです」
「何を言われるかと思えば……私は彼の力を信じ、皆のためを思って行動したのですよ。味方を逃すために七万の大軍に立ち向かう。これほど栄誉ある任務はありません」
 大仰に手を広げる彼に射殺すような視線が突き刺さる。恩着せがましい口調に怒りの声が叩きつけられる。
「ならばなぜ、最初からそう命じなかったのです! “感謝しながら死んでいけ”と!」
 アンリエッタはウィンプフェンの中に同じものを見たからこそ、腹が立った。人の行動を見て初めてその醜さがわかったのだ。
 ウィンプフェンはミストバーンの忠誠心を、アンリエッタはルイズの友情を利用した。
 相手の死を望んではいなかったが、覚悟も無く自分の都合で死地に追いやったのは同じだ。
 眼をギラリと光らせたルイズは、言葉に詰まったウィンプフェンのひたいへ指を突き付け、声を絞り出していく。
「あんたにあいつを語る資格はない……!」
 直接殿軍を命じなかったのはミストバーンを恐れていたため。
 真実をぶつけ、命を賭けてでも説得する覚悟を持たなかったウィンプフェンは偽りの情報で自分が傷つかぬよう振舞った。
 本当に他者を思うならば、抗命罪で裁かれることを覚悟の上で撤退準備を始めたはずだ。
「あいつはもう元の世界に帰ってしまったわ」
「ほう、それはそれは……実によかった!」
 どこまでも悪びれない態度にルイズの目が光る。
「姫様、この男を殴らせて下さい」
 『虚無』は使わず、この拳で。
 ウィンプフェンが口元をゆがめる。所詮非力な小娘、全力で殴ってもたかが知れている。
 ルイズは嘲りの視線に拳を握りしめ床を蹴った。予想以上に重く鋭い一撃がウィンプフェンの頬を襲う。
「これはあいつの分よ」
 続いて顎に痺れるような衝撃が走る。
「これもあいつの分……!」
 彼女は目に涙を浮かべながら拳を振るい続ける。
「これも! これも! これも! これも! 全部ミストバーンの分!」
 まるで彼が乗り移ったかのような威力だった。日頃の訓練の成果であり、彼からのお墨付きである。
 また、アルビオン侵攻の間いくつも任務をこなしたルイズの眼光は一人前の兵士のそれになっていた。
 なおも拳を振るおうとした彼女をアンリエッタが止める。
「それ以上はおやめなさい。私もあなたに殴られなければなりません」
 その目に宿る覚悟を見たルイズは手を振り上げた。手加減なしの一撃に乾いた音が響き、アンリエッタが頬を押さえてよろめく。
 それを見たルイズはアンリエッタに抱きつき、声を上げて泣いた。
 怒り、悔恨、そして悲哀――苦い想いがあふれ、止められなかった。


553 :ゼロの影:2008/08/14(木) 13:00:09 ID:7FwOkfi6
 それからしばらくルイズは胸にぽっかり穴が空いたような気持ちになっていた。
 幾度か旅の扉を作ろうとしたが果たせなかった。おそらくこれからも成功することはないだろう。
 主の元へ戻った彼がどうなるのか確かめるすべは無い。
 彼の主も彼も考えを変えることは無く、人間も立ち向かうしかない。両者とも譲れぬもののために戦うだけだ。
 どちらが勝つのか、その戦いの先に何が待つのか、魔界に陽光がもたらされるのか――知ることはできない。
 地上と魔界の住人の間で争いが続く可能性が極めて高いとルイズもわかっている。
 それでもタルブの村で彼とともに見た夕焼けを思い出してしまった。
 そして、太陽の下で皆が笑う――そんな光景を夢見てしまった。
 生きとし生けるものには太陽が必要なのだから。

 同じ頃、タルブの村にまだ滞在していたフーケは空を見上げて溜息を吐いた。
 化物だと思っていた男は七万の軍に単身挑み、壊滅的な被害を与えたらしい。よく殺されずに済んだものだと思う。
(疲れてんのかねー)
 子供の相手をしながらぼんやり思う。
 盗賊として長く生活するうちに人間の汚い部分を散々見てその中に首まで浸かったはずだった。
 しかし時折求めてしまう。人の心の温かさや一欠片の光を。
「ははっ、本当に疲れてるようだね」
 らしくない、と笑いながら大きく伸びをする。
 何の警戒も必要とせず、大切な家族と平和に暮らせる――そんな世界を夢見てしまった。
「……まあ夢見るだけならタダだからいいか」
 強く思い描くことから行動につながれば。少しでも変わるならば――。
 呟きは青空に吸い込まれていった。



554 :ゼロの影:2008/08/14(木) 13:05:54 ID:7FwOkfi6
 大魔王の前に影は跪き、地に擦り付けんばかりに頭を垂れていた。すでに封印が施され、顔は隠されている。
 帰還までの話を聞いた大魔王バーンは黙って忠実な部下を眺めている。
 ミストバーンは失態の罰を受けようとしている。おそらく任を解かれ処刑されるだろうが、いかに厳しいものでも受けるつもりだった。
「……おそらくあの世界とつながることはもうあるまい」
 ルイズが旅の扉の形成に成功したのは大魔王から膨大な魔法力を与えられたためだ。二人の力が融け合い反応した、一時的なもの。
 最初に召喚のゲートが現れただけでも考えられないことなのに、旅の扉で戻ってくることができたのは幸運以外の何物でもない。
「さて、どのような罰を与えるべきかな」
 隠された素顔を衆目にさらし、力を見せ、器を破壊されかけた。戻るために目撃者を殺すこともできなかった。穏やかな口調が逆に恐ろしく、影は震えている。
 大魔王は威厳に満ちた声で命じた。
「面を上げよ」
 炎を宿した苛烈な眼光がミストバーンの心を射抜く。
 彼は目を逸らさなかった。
 全ては主との出会いから始まった。だから、最期まで主を真っ直ぐ見つめているつもりだった。
「お前にはいっそう働いてもらう。永遠に――余の傍らで、な」
 ミストバーンの目が丸くなった。容赦ない叱責と処刑を覚悟していたのに宣告はあまりにも予想外のものだった。
「罰として忠誠の報いには何も与えん……。初めて太陽が魔界を照らす瞬間を、共に見ることのみ許してやろう。……不服か?」
「い、いえっ!」
 数千年生きているとは思えぬ慌てぶりで必死に首を振る。。
 主の宣告は罰ではなく誇るべきことだ。全てを与えられているのだからこれ以上何かを望むつもりなどない。
「もちろん二度目はない。……しかしなかなか興味深い体験をしたようだな。余も行ってみたかったぞ」
 そして異なる法則の魔法体系を解き明かして我が物とし、優秀な人材を手に入れるつもりなのだろう。
「それもまた一興――そう思わぬか?」
「バ……バーン様!」
 側近のうろたえる姿に大魔王は声を上げて笑う。
 主の言葉にミストバーンは己が然るべき場所に戻ったことを実感し、力が湧き上がるのを感じた。
 ルイズによって失いかけた誇りを呼び覚まされ、在るべき姿を教えられたのだ。
 彼は主のために力を尽くすことを改めて心に誓った。
 ――誇りとともに。


555 :ゼロの影:2008/08/14(木) 13:10:08 ID:7FwOkfi6
 ルイズはミストバーンが去ってしばらく落ち込んでいたようだったが、やがて元のように振る舞うようになった。
 キュルケやギーシュもいつもどおり接していたが、時折気遣うような視線を向けた。
 やりきれない想いを抱えながらも視線に笑顔で応えることができたのは、彼の最後の言葉がルイズを支えているからだ。
 ほとんど聞き取れないほど小さくかすかな声だったが、確かに伝わった一言が今の彼女の誇りとなっている。

『お前は私の――』

「わたしはあんたの――」

 続きを胸の内で唱えると力が湧き上がる。
 ルイズは顔を上げ、太陽のように明るい笑みを浮かべてみせた。


ゼロの影 完

556 :ゼロの影:2008/08/14(木) 13:13:46 ID:7FwOkfi6
以上で『ゼロの影』完結です。

初めてのSS連載でしたが、最後まで書くことができたのも皆様のおかげです。
ダイの大冒険において台詞などを重ねる手法に惹かれたので台詞や場面を重ねています。
ですので、読み返して発見していただけると嬉しいです。


今までお付き合い下さりありがとうございました!

557 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/14(木) 13:42:31 ID:sVquD7Na
乙でした!
このスレ初の完結長編になるのかな?

558 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/14(木) 14:22:02 ID:532BSBY7
おめでとう!
当初は紆余曲折あったけど、脱皮してからは毎度楽しませて貰いました。
バーン様!バーン様!

559 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/14(木) 14:45:54 ID:lKp2fnKY
影の人お疲れ様、綺麗にまとめてくれてありがとう!

560 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/14(木) 17:46:31 ID:aqX0qFgi
影の人オツカレー

残りの鰐男と獣王と爆炎の人に期待します

561 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/14(木) 19:15:19 ID:h/8iBEK7
影の人お疲れ様です
毎回楽しみにしてました
最後まで書き上げたあなたに最上級の感謝を!

562 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/14(木) 19:54:51 ID:J4yB01xa
影の人乙でしたー!
始めの頃は「オイオイ、ミストバーン召喚なんて大丈夫なのか!?」と思ったものでしたが、
本当にいいもの読ませていただきました!!
時々書かれていた短編ももちろん好きです。
またいつかお目にかかれる日がくることをお祈りします。

563 :虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I :2008/08/15(金) 22:21:31 ID:jR5DnM4l
影の人GJアンド乙でした
難しい題材をハイスピードで投下し完結させるのは本当に凄いと思います
毎回楽しませてもらいました!

そんな訳で(どんな訳か 予約がなければ22:25頃から投下予定

564 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/15(金) 22:23:28 ID:98IHs3jX
支援

565 :虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I :2008/08/15(金) 22:25:03 ID:jR5DnM4l
虚無と獣王
11 生徒たちと獣王 

三日間の自宅謹慎を終え、ルイズたちは久しぶりに部屋から出る事を許された。
以下、謹慎中の出来事について。

謹慎中にワインを痛飲した者及び痛飲させられた者は、翌日全く記憶のないメイドに向かってひとしきり恨み節を吐いた後、揃って水の秘薬を持ってくるよう命じた。
当然二日酔い対策である。
一番飲んでいた筈のシエスタが、当日の記憶がない事以外全く酔いの跡を残していない事について、ルイズとキュルケは理不尽だと思ったが口には出さなかった。
頭は痛いわ気持ちは悪いわで、そんな元気すら湧いてこなかったからである。
幸い水の秘薬の効果によって二日酔いからは脱出できたが、その分想定外の出費に懐は寒くなった。

レポート作成の為に図書室に行くのは許可された為、謹慎組は自然とそこで顔を合わせる機会が多くなり、そこでも少しのトラブルが起きた。
王室に関しての参考文献を探していた筈のギムリが何故か学院の古い設計図を発見したり、
水兵について調べていたマリコルヌが突然ハァハァ言い始めたり、
ギーシュとモンモランシーが犬も喰わない痴話喧嘩を始めたり、
毎日図書室に入り浸っているタバサが煩い連中を纏めてエア・ハンマーでふっ飛ばしたり。
そのレポートに関しては、ルイズ・モンモランシーは独力で、キュルケは帰ってきたタバサの協力で、ギーシュ達はレイナールのアイディアをほぼパクッて終了させた。
出来に関しては推して知るべし。

自習にしてまでクロコダインの話を聞こうとしたコルベールは、無事に話は聞けたものの、後で学院長に知られ酷く叱責された。当たり前だが。
この時、クロコダインが東方ではなく異世界から来た事が発覚し、ルイズ・コルベール・クロコダインにはオスマンから厳重な緘口令が敷かれた。
異世界から来たクロコダイン、異世界にゲートを繋げたルイズの情報が外部に知られた場合、余り愉快な事態にはならないと考えられた為である。



566 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/15(金) 22:29:34 ID:98IHs3jX
支援

567 :虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I :2008/08/15(金) 22:30:07 ID:jR5DnM4l
「さて、そんなこんなで謹慎期間が終了した訳だけど」
フェオの月、ティワズのオセル、夕食後。
ヴェストリの広場に1人の少女が仁王立ちしていた。
桃色の髪にスレンダーな肢体、言わずと知れた『ゼロ』のルイズである。
彼女はいつもの制服姿ではなく、綿のシャツに乗馬用のズボンと活動的な服装で、手には何故か乗馬用の鞭を持っていた。
そして胸を張り、威厳に満ちた表情で告げる。
「監督として今回の訓練における意気込みをみんなに聞いておきたいと思います」
「その前に質問があるのだが」
ルイズの前に体育座りをしている男子生徒4人の中の1人、『青銅』のギーシュが手を上げた。
「なにかしら、ギーシュ」
「本当に監督をする気なのかい?」
「何か問題でも?」
質問に質問で返される。ギーシュはこの少女を如何に説得して監督降板してもらうか考えてみたが、彼女のこれまでの言動を顧みるに説得するだけ無駄だという結論を得た。
「いや、特に無いという事にしておくよウン」
「なら結構。ハイ、ではギムリから抱負を述べるように」
「それでいいのかギーシュ。というのはさておいて、取り敢えずいきなり突っ込むのはやめて連携をしたい。誰か指示を頼む」
ルイズは少し考えてから答える。
「確かレイナールと一緒のクラスよね? コンビで行動、その都度レイナールが指示という体制でいいかしら」
「まあそれが確実だろうな。了解」
「では次、マルコリヌ」
「情けないぞギーシュ。えーと、立ってるだけじゃダメだからとにかく動こうと思う……。だから、誰か指示してくれると助かる」
んー、とルイズは考え込んで、本人に誰の指示で動きたいか聞いてみる事にした。
「そうだね、最初はギーシュかレイナールに頼もうと思ってたんだ。『ゼロ』のルイズの指示で動くのなんて嫌だって。でも今のキミの服を見ていると何か悪し様に罵りながら指示を」
ルイズは彼に最後まで語らせず、強引に言葉を重ねる。
「レイナール、面倒を掛けるけど指示してあげて」
「……了解。正直気が乗らないけど、多分今の君ほどじゃないだろうし……」
「その通りよ。あと昔『戦場では常に前から攻撃が来るとは限らない』って言われたのを思い出したわ、何でかしら」
「頼むから実行しないでくれよ……。それにしてもヴァリエール家では娘にそんな事まで教育しているのかい?」
「いえ? わたしが小さい頃、親に話をねだった時に聞かされただけなんだけどね」
ルイズは軽く肩をすくめて見せる。
「そういえばヴァリエール公は無類の戦上手と父上から聞いた事があるよ。流石に戦場の機微に通じているんだなあ」
すっかり感心した口調のギーシュに、ルイズは訂正を入れた。
「教えてくれたのは母様なんだけど」
「あまり他人の家庭事情に首を突っ込みたくないんだけど敢えて聞こう。何故母親……?」
「ギーシュ。私の父様はこう言っていたわ。『宮廷でも家庭でも生き長らえるコツはただひとつ。自分より強い相手とは戦わない事だ』って。それを踏まえた上で、答えを聞きたい?」
「答えって何だい? ボクはシツモンなんてシテイナイヨ?」
カクカクと答えるギーシュを見て、ルイズはため息をついた。


568 :虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I :2008/08/15(金) 22:34:08 ID:jR5DnM4l
「貴方長生きするわきっと。って話が逸れたわね。えと、次はレイナール」
「どうかと思うなギーシュ。そうだね、前回で相手の攻撃範囲は大体判ったから、『ブレイド』の長さを伸ばしてみたいと思う。あとは連携の指示を上手くしないとなあ」
「『ブレイド』は最初から伸ばさず必要な時だけ長くすると効果的かしら。それと、連携については最初から上手くいく訳ないんだから気楽にね」
レイナールは少し感心したように言う。
「結構考えているみたいだね、ヴァリエール。他には何かあるかい?」
「それなりにはあるけど、まずは一戦交えてから、ね。さあ、皆の意気込みは分かったからそろそろ始めましょうか」
「いやいやいやちょっと待って! ぼくは? ぼくの意気込みや抱負は聞かないのかい!?」
慌てて抗議するギーシュ。呼び出してあったワルキューレが同じ素振りをする辺り、芸が細かい。
「仕方ないわね。じゃあ一応聞くけど」
「畜生覚えてろよ……。ワルキューレの武器にバリエーションをつけた。攻撃用に長槍と小盾、防御用には剣と大楯を装備させたんだ。今回は武器のみの変更だけど、いずれワルキューレ本体も用途に合わせて変更していく予定さ」
得意げに語るギーシュにルイズ達は驚きを隠せなかった。
「ちょ、ちょっと待って! ギーシュが至極まともな事を言ってるんだけど!? どどどうしよう、どうしたらいいの!?」
「そんな!! 二股がばれてひたすらおろおろしていたあの姿は擬態だったとでも!?」
「おお……お助けください、始祖よ……!」
「君たち、僕の家が代々軍人を輩出している事を忘れてないか……? 畜生、ホントに覚えてろよ……」
低い声でぶつぶつ呟くギーシュの横で、ワルキューレがその動きを正確にトレースしていた。正に高度な技術の無駄使いである。
しばらくして、一時の驚愕から何とか立ち直ったルイズが監督として改めて檄を飛ばした。
「さ、さあ! 何か有り得ない事が起こった気がするけど多分気のせいだから気にせず行くとするわよ!」
「「「了解!」」」
「畜生! ホンットに覚えてろよ!!」


569 :虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I :2008/08/15(金) 22:38:11 ID:jR5DnM4l
んな学生たちを見つめている影があった。
学院長の秘書、ロングビルである。
彼女には、今、深刻な悩みがあった。
それはオールド・オスマンのセクハラの所為でも、コルベールのアプローチとも言えない様なアプローチの所為でも、何か勘違いした男子学生(稀に女学生)からの恋文の所為でもない。
いや、正確にはそれらの事も悩みではあったのだが、深刻ではない。今のところは。
深刻なのは、彼女がとうに捨てた筈の祖国が現在内戦状態になっている事にあった。
内戦自体はどうでもいい。せいぜい互いに殺しあってくれれば重畳というものだ。
問題は、決して表舞台に出ることの出来ない者が身内に居る事である。
内戦でどちらの陣営が勝利したとしても、彼女が見つかればどうなるか、想像するまでもなかった。
出来る事ならば早急に彼の地を離れる必要がある。しかし、彼女と彼女と暮らす孤児暮らす孤児たちを戦火の及ばない場所に移し、生活を安定させるには大金が必要だ。
そして学院長秘書としての俸給では、そんな大金は捻出できない。
(意外とここは住み心地が良かったんだがねぇ)
屋根のある場所で寝泊まりが出来、出てくる食事は豪華で美味い。俸給だって悪い訳ではない。
ある目的の為に就いた秘書という仕事も、それなりに遣り甲斐はあった。
だがロングビルには判っている。自分のこの感情はただの感傷に過ぎない。義妹と同じ年代の子供たちを見た所為だろうか。
あくまで仮の姿である筈の『ミス・ロングビル』が、無意識のうちに定着しつつあったのかもしれないが、それは本来の自分ではなかった。
(そろそろ店仕舞いの準備をしないとねぇ)
そう思い、もう一度学生たちの方を見る。
小太りの生徒が足を縺れさせ、青銅の人形に激突していた。見ていた桃色の髪の生徒が何事か怒鳴り、眼鏡の生徒が頭を抱えている。
それは傍から見れば訓練ではなく寸劇の様で、相手をしていた気のいい(とロングビルは判断した)使い魔も苦笑しているのが判った。
その光景は、もしかしたら自分が世の中の事を何一つ知らなかった頃に過ごしていたかもしれない光景。
その光景は、もしかしたら隠れ住んでいる義妹が過ごせる筈だったかもしれない光景。
やはり寸劇のように見える訓練から目を逸らし、ロングビルは思う。
意外とここは住み心地が良かった、と。
やがて彼女は感傷を振り払い、中庭ではなく本塔を見つめる。
その眼は、獲物を狙う猛禽類のものだった。



570 :虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I :2008/08/15(金) 22:43:22 ID:jR5DnM4l
「どうしたの、クロコダイン?」
訓練が一段落し、ギーシュ達が地面にへたり込む中、1人元気な監督が己の使い魔に声を掛けた。
「いや、さっき誰かの視線の様なものを感じてな、気配を探ろうとしたんだが……」
そう言って周囲を見回す。
「気のせいだったか……?」
他人の視線など露ほども感じなかったルイズは「そうなんじゃない?」と気楽に答える。
「まあ、それにしても、だ」
地べたで荒い息をつく4人に、クロコダインは感想を述べた。
「接近戦を担当する人間が多すぎるだろう。ギーシュの人形や接近戦を学びたいレイナールはともかく、他の2人は後ろから魔法を使ってもいいんだぞ」
「ちょっと待って! いくら相手がドットメイジでも魔法が直撃したら怪我どころじゃ済まないわよ!?」
思わず声を上げるルイズに、クロコダイルは笑って答える。
「オレはここの魔法については素人だが、魔法で敵の動きを鈍らせたり目晦ましをしたりする事は出来ないのか?」
その言葉に、ルイズ達は車座になって話し始めた。
「どうだろう、つまり攻撃魔法じゃなくて、支援としての魔法という事かい? 授業ではそんなの習ってないと思ったけど」
「でも工夫次第でなんとかなりそうじゃないか? 土の系統魔法なら地面を錬金する事で足止めとか出来そうだ」
「相手の目の前で『着火』を使えば目晦ましになるのかしら……」
「風魔法で土煙を上げるとかでもいいんじゃないかな」
今まで考えた事が無かった魔法の使い道だけに、彼女らの会話も盛り上がる。
「戦う時に自分の有利な条件を多く作る事が出来れば生き残る確率はそれだけ高くなるだろう。逃げを打つ時も同様だ」
どすん、と座り込み胡坐をかくクロコダインに、ルイズは少し怒ったように言った。
「貴族は敵に背を見せないものよ、逃げるなんて以ての外だわ」
対して、クロコダインは窘めるように答える。
「それはそれで立派な考えだが時と場合によるだろう。例えばどうしても果たさねばならない目的がある場合、余計な戦闘を避け撤退するのも一つの道だ」
「むー……、それはそうだろうけど……」
些か納得のいかない主に、使い魔は笑顔を見せた。
「誇りを重んじる気持ちはオレにもよく分かるが、無理をして無謀な攻撃をしても良い結果は得られんぞ。命あっての物種とも言うしな」
「……」
理性では一理あると判断しても、感情がそれを許さない様子のルイズの顔を覗き込む。
「何も敵を前にして無条件で逃げろと言ってる訳じゃない。引けない戦いという物も確かに存在するしな。だが、何事にも柔軟な発想で臨んでほしいという事だ」
クロコダインはそう言うと、ルイズを肩に乗せ立ち上がった。
「きゃ!」
「今日はもうお開きにしよう。ルイズは寮の入口まで送っていこうか」
「え、でも、別に大丈夫よ」
ギーシュ達の手前もあり、赤面する顔を見られたくなくてそんな事を言うルイズだったが、
「そうもいかん。主をただ見送るだけではシエスタあたりに怒られそうだからな」
そう言われては断る事も出来ない。
怒った時のシエスタは妙な迫力があって怖いのをルイズは知っていた。酔った時はもっと怖い事も。
取り敢えず久し振りにクロコダインの肩に乗るのも悪くないと言い聞かせてみる。誰に言い聞かせているのか。自分にだ。
「も、もう、仕方ないわね! 送るからにはちゃんとエスコートしなきゃ駄目なんだからね!」
使い魔である獣人に無理を吹っ掛けるその態度は、どう見ても典型的な照れ隠しだよなあとギーシュ達は思った。


571 :虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I :2008/08/15(金) 22:45:11 ID:jR5DnM4l
以上で投下終了です

話が進行してませんが仕様です
次は進行するといいなあと思います(他人事のように

572 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/15(金) 23:08:49 ID:nKEbL30G
ほのぼの、ゆっくりとではありますが成長と話の進展が見られますね。
訓練にはそのうちキュルケやタバサも加わるのでしょうか。
モンモランシーは可能性はあるけどさすがにケティはもう出番はないのでしょうか。

後余計かもそれませんが訂正の指摘を。

>んな学生たちを見つめている影があった。
→そんな学生たちを見つめている影があった。

>思わず声を上げるルイズに、クロコダイルは笑って答える。
→思わず声を上げるルイズに、クロコダインは笑って答える。

573 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/16(土) 00:08:08 ID:1KteOPqP
獣王乙です。
ゆっくりでもいいと思いますよ。むしろ今の進行速度でも面白いのでおkです。
次はおマチさんですか…生きろw


574 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/16(土) 00:26:21 ID:WPsQc5Ll
獣王乙
おっさんはちょっとぐらいの魔法じゃ効かんから問題ないな
フーケのゴーレムはでかさは問題無いからあとはパワーか。

575 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/16(土) 00:34:10 ID:OJzL2E+Y
獣王さん投下乙です!
完結までの文字数規定や締め切りがあるわけではないですし、
内容もほのぼのとしたクロコダインとゼロ魔世界の住人のやりとりがいい感じだと思いますので、
自分で思う通りのペースで頑張って下さい。

フーケ戦、おっさんの技や力がどう発揮されるか楽しみ。

576 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/16(土) 00:36:47 ID:kFmSQ2No
投下乙

たぶんおっさんパワー>ゴーレムの重さくらいだよな・・・

577 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/16(土) 00:57:06 ID:RIurXmaa
今回は会話主体で寸劇調なのかな?
のんびりでもじっくりしっかりで行こうぜ的に応援してます。

578 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/16(土) 01:55:18 ID:Q6I7/x4f
クロコのおっさんを召喚したら殴られてルイズ脂肪。

579 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/16(土) 02:09:03 ID:EaL4cjPb
そういやおっさんって純粋な腕力で言ったらどれくらいあるんだ?
サイズとか無視してフーケのゴーレムとがっぷり四つに組んでブン投げるシーンが浮かぶ

580 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/16(土) 02:26:10 ID:AmloqSa9
アバンにメガンテ喰らった頃のハドラーよりは力がある。
各々が自らの得意とする分野では
ハドラー以上だから軍団長やっているみたいな事言っていたし。

581 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/16(土) 07:24:26 ID:TMC4HHeO
獣王さん、乙です。
フーケのゴーレムは巨体ゆえのパワーと、土製であるからの復元力がポイント。ちまちま削った所でサイズ的に意味は小さい。
一つの渦で足りるのか、二つ目の大渦を使うのか、それともグレイトアックスの真価が発揮されるのか。……それともルイズに撤退戦の意味を教えるのか。
フーケ戦、楽しみにさせていただきますね。

582 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/16(土) 07:44:19 ID:kFmSQ2No
おっさんの攻撃力は補正が加わるだろう現状だと
下手したら一発でゴーレムが消し飛ぶ可能性が高いな

583 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/16(土) 07:50:27 ID:RIurXmaa
ああ、G補正がプラスされると測り知れんなぁ

584 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/16(土) 09:12:45 ID:h5e4WxYw
斧の一振りで足一本破壊してこかして、再生しながら起きあがってきたとこにもっかい斧振るえば、ループに持ち込めるな

585 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/16(土) 11:21:29 ID:PeYlhgeo
しかもオッサン体力半端ないから、おマチさんが睡眠不足で倒れるまでループとかやれそうだし

586 :爆炎の名無しさん:2008/08/16(土) 12:15:22 ID:aA+L7hp1
影の人完結お疲れ様でした。ミストという難しいキャラを使いながらもあのハイペース。
凄いとしかいいようがありません。最後の盛り上がりも格好よかったです。
また次回作や小ネタを投下する機会があれば喜んでGJさせてもらいますw

獣王氏
おっさんの存在はダイスレな無くてはならぬ物。という事で帰還を心待ちにしてましたw
再びよろしくお願いします。

12:20くらいに五話を投下します

587 :虚無と爆炎の使い魔:2008/08/16(土) 12:19:33 ID:f13t5ZIK
――第5話――

 ルイズが教室に入るとキュルケ・タバサを除いた生徒全員がぞっとした表情で振り向いた。
 正確には傍に控えている筈のハドラーに対してである。
 そうやってしばらくルイズを観察すしていたが、ようやく隣に誰もいないのを認めた様だった。一人、また一人とルイズから視線を外していき、同時に教室の空気も穏やかなものに戻っていく。
 やがて全員がルイズから視線を外した頃、教室は元の雰囲気を取り戻した。
「何なのよ……」
 無言の詮索からようやく解放されたルイズは憮然として、居心地悪く席に着いた。
「は……はは、何だ。つ、使い魔がいないじゃないか。ルイズ!」
 座ったルイズに対し、生徒の一人からいつもの様に罵りの言葉が飛んで来た。
 だが今日は何だか歯切れが悪い様だ。特に『使い魔』の辺りが。
 そう思ったルイズだが、腹が立つ事は確かだったので、取り敢えず言い返す。
「うるさいわねマリコルヌ!昼まで自由行動にしただけよ!」
「そんな事言って、本当はどこかに逃げて行ったんじゃないのか?なんせ『ゼロ』だもんなぁ」
 いきなりの先制攻撃だった。マリコルヌの侮辱に歯噛みして悔しがるルイズだが、ふと何かを思い付く。
 突然笑顔でマリコルヌの方を向いたかと思うと、悪人顔で、にやぁっ、と口を歪めた。
「そうね……確かに証拠は必要よね。じゃあ、まだ時間はあるから今すぐ連れて来ようかしら?」
 ルイズの言葉は嘘だった。ハドラーとは昼食に落ち合う約束をしただけで、本人が今頃どこにいるかなど、ルイズは全くわからない。
 だが他の者はそんなやり取りがあった事など当然知らないのだ。ルイズの言葉が本当なら、近くにいると言う事になる。
 まさかそんな答えが返って来るとは予想していなかったらしく、ルイズのその一言でマリコルヌと呼ばれた恰幅の良い少年は椅子から転げ落ちた。青ざめた顔でぶるぶる身体を震わせる。
「い、いや……け、結構だよルイズ!」
 心底怯えた様子で返事をするマリコルヌにルイズが鼻を鳴らした。
「ふん。……怯えるくらいなら最初から言わなきゃいいでしょ」
 ルイズの言葉に全員が『ごもっとも』と呆れた様な冷たい視線をマリコルヌに投げ掛けた。中には「ルイズの言う通りだ!」と、珍しく同意する声も上がる。もっともそのココロは『薮蛇を突つく様な真似をするな』と言うものだったが。
 ともあれマリコルヌはすっかり意気消沈してしまった。そんな雰囲気がしばらく続いた後、教室の扉が開く。


588 :虚無と爆炎の使い魔:2008/08/16(土) 12:20:36 ID:f13t5ZIK
「皆さんおはよ……えーと、これはどうしたのかしら?」
 教師のシュヴルーズが見たのは、教室の真ん中で四つん這いになって肩を落とすマリコルヌと、それを冷たい目で見下ろす生徒達の姿だった。
 傍目にはイジメにしか見えない光景なのだが、何故か被害者である筈のマリコルヌは喜んで……いや、『悦んで』いる様であった。
「ああ、その糞塗れの豚を見る様な視線……なんて冷たいんだ。耐えなきゃ……!!今は耐えるしかない……!! 」
 だが言葉とは裏腹にマリコルヌの息は徐々に荒くなっていた。同時にそれを見つめる生徒達の目が更に鋭いものになっていく。
「駄目だ、視線に……抵抗できない……くやしい!でも……感じちゃう!」
 ビクビクッと身体が痙攣し始めたマリコルヌに、ついに(女生徒達の)限界が来た様だった。恐ろしい程無表情な顔になったキュルケが何も言わずフレイムボールを食らわせると、それを皮切りにクラスの(女)生徒全員が次々と魔法を唱え続ける。
 最後に唱えたタバサのウインド・ブレイクがマリコルヌを窓の外に吹っ飛ばすと、皆が額の汗を拭った。ゴミ掃除は完了したのだ。
「あの……これは一体……『さ、授業を始めましょう。ミセス・シュブルーズ!』
 にっこりと微笑みながら有無を言わせぬ(女)生徒達の迫力に、黙って従う他ないシュヴルーズだった。

 一人の欠席者を出して授業はスタートした。進級後、最初の授業という事で、今日は一年生の時の復習だった。
 シュヴルーズが目の前の石ころをピカピカ光る金属へと『錬金』し、それを見たキュルケが「ゴールドですか?」などと質問している。

 ――人間は生ゴミでいいのかしら?――

 ぼーっと先程の光景を思い出し、かなり危険な疑問が頭に浮かんだルイズだったが、はっ、としてかぶりを振る。
 きっと昨日から色々あり過ぎて疲れているのだ。そう結論を出したルイズは再度集中しようとするも、あいにく一部始終をシュヴルーズに見られてしまっていた。
「ミス・ヴァリエール。以前の復習だからと言って気を抜くのは良くありませんね」
「も、申し訳ございません!ミセス・シュヴルーズ」
 シュヴルーズが注意すると、ルイズは弾かれた様に席を立ち、謝罪した。だがシュヴルーズはそれだけでは不満といった感じで顔を曇らせたままである。
「いい機会です。ミス・ヴァリエール。ここにある石ころを、望む金属に変えてごらんなさい。集中すれば雑念も取れるでしょう」
 シュブルーズの言葉に再び全員が反応した。皆口々に「止めてくれ!」だの「せっかく直った傷がまた開いちまう」だの言い出す。
 皆の容赦の無い言葉にふつふつと怒りのゲージが上がっていくルイズの胸に、ふとキュルケとタバサの顔が浮かぶ。
 あの戦いを一緒に乗り切った二人ならきっと応援してくれる筈だ。そう思ったルイズが二人の方を向く。
 だがそこには現実が待っていた。
 ルイズが振り向いた先にいたのは、他の生徒と並んでシュプレヒコールを上げるキュルケと、机と椅子で黙々と防壁を作るタバサの姿だった。心の中にあった最後の何かがべっきリとへし折れたルイズは、静かにシュヴルーズに告げる。
「やります」
 そう宣言し教壇の方へと向かう。「やります」とは『やります』なのか、それとも『殺ります』なのか?それは誰にもわからない。だが、その決意の篭められた姿は、まるで死地へと向かう勇者の様な精悍さだった。
 しかし、ルイズを除く生徒達は思った「死地へ向かうのは俺達の方ではないのか?」と。


589 :虚無と爆炎の使い魔:2008/08/16(土) 12:21:40 ID:f13t5ZIK
 ルイズがついに教壇に立った。ルイズへの抗議はダメだったと生徒達は判断すると、今度はシュヴルーズへの説得を試みる。
「ミセス・シュヴルーズ。いけません!自殺行為です」
「この状況で何故理解しない?」
「ていうかさっきのマリコルヌの時に魔法使ってたじゃないですか!」
 だがシュヴルーズはそんな生徒達の声を一喝した。
「お黙りなさい!……ミスタ・マリコルヌの時は寄ってたかって魔法が使われていた為に良く見えませんでした」
 シュヴルーズは言葉を切るとルイズの方を向いた。
「……ですが、彼女が努力家ということは聞いています。ミスタ・マリコルヌもそうですが、何か至らない所があったからといって、クラスの全員で迫害するなど、貴族たる者のする事ではありません!」
「いやマリコルヌの時はルイズも参加し「失敗は誰にだってあります。それを乗り越えてこそ栄光を掴めるのです。ミス・ヴァリエール……。努力家の貴女ならきっと掴めると信じていますよ」
 誰かの指摘はどうやら届かなかった様だ。自らの言葉に半ば酔った様子で、シュヴルーズはルイズの両肩に優しく触れた。
「せ、先生……。わかりました。きっと……きっと!成功させて見せます!」
 そう言って目元を滲ませるルイズにうんうんと頷くシュヴルーズ。実に美しい師弟愛であった。
 だが今から命の瀬戸際を渡ろうとする生徒達にそんなものは関係無い。もはや説得は不可能と判断すると、皆一斉に机の下へと隠れ出す。
 クラス中が見守る中、静かにルイズの咏唱が始まった。

 ――シュヴルーズ先生の言う通りだわ。こんな事くらいで怯んでいたら、アイツを従わせる事なんてできっこない!――

 そんな決意の元、ついに詠唱が終わった。使い魔の顔を思い浮かべたルイズは今、万感の想いを込めて杖を振り――

 鉱山で働く男達がこぞって勧誘に来そうな程の、素晴らしい爆発が教室内に轟いた。
 防壁代わりの机が幾つも吹きとばされ、前列一帯の生徒達が焦げ臭い匂いを発していた。後列も後列で、爆発に興奮して暴れ出した使い魔達にてんやわんやである。
 そして爆心地の教壇では、丸焦げになって気絶したシュヴルーズと、あの爆発の規模の中、奇跡的とも言えるぐらいに軽傷で済んだルイズがいた。煙を吸ったのか二、三度咳込んだが、すぐにいすまいを正すと静かに告げる。
「あ〜……ちょっと失敗しちゃったみたいね」

『あるあ……ねーよ!!!』

 クラス一丸となった生徒達が鋭いツッコミをルイズに向けるのであった……。

 
 さっ……さっ……と、誰もいない教室でルイズが箒を掃く。
 あの後、騒ぎを聞き付けた他の教師達によって、授業は即刻中止となった。シュヴルーズは医務室に搬送され、元凶であるルイズには罰として魔法抜きでの教室の掃除を命じられたのだ。
 だが、魔法が使えないルイズにとっては同じ事であり、その言葉はかえって彼女を傷付ける結果となった。
 打ちひしがれた様子で立ち尽くすルイズに、クラスメイト達は恨みつらみの言葉を投げかけながらぞろぞろと教室から出て行く。
 キュルケとタバサも、ルイズの事は気になるが、今はそっとしておくべきだろうと判断し、そのまま無言で列に従った。
「はあ……」
 自分の情けなさにルイズはついうなだれた。強力な使い魔を手に入れた事で自分は調子に乗っていたのかもしれない。
 ハドラーと契約出来たからと言って、魔法を使える様になった訳ではないのだ。
 そうルイズの心が暗い思いに満ちていく。
「アハハ……そうよね。……考えてみれば、契約だってキュルケとタバサがいたからできたんじゃない。……私一人じゃ……何も……」
 そのままルイズは黙り込んだ。あの時、確かに実感出来た筈の小さな自信が胸の中でさらさらと崩れ落ちる。
 ――あの作戦を立てたのはタバサだった。危険な役目を自ら引き受けたのはキュルケだった。じゃあ、自分は?――
「……」
 ルイズの顔が苦しげに歪んだ。
 ――爆発がたまたま有効だったから自分はあの役割を与えられた。だはもし相手がハドラーでなかったら?……決まっている。自分など只の足手まといだ――
「あ……うっ……」
 言いようの無い悔しさ、惨めさが胸の中を掻き乱す。ルイズの目から思わず涙が滲み出す。
「爆発なんて……結局何の役にも立たないじゃない……」
 がらんとした教室で、打ちひしがれた様に立ち尽くすルイズだった。


590 :虚無と爆炎の使い魔:2008/08/16(土) 12:23:54 ID:f13t5ZIK
「……何をしている?」
 しばらくの間、鳴咽の声だけが響いていた空間に、突如別の声がした。慌てた様にルイズが振り向く。
「は……ハドラー?何で!?」
 泣いている姿を見られた気恥ずかしさから、ルイズが上ずった声を上げた。
「先程の場所で主が来るのを待っていたのだがな、あの赤髪の女が主の事を知らせに来たのだ」
「……キュルケが……そう」
 ルイズの顔が少し柔らいだ。いつの間にか昼食の時間になっていたらしい。キュルケのささやかな気遣いに、ルイズは心の中で感謝した。
「大まかな事は聞いた……魔法が使えない事もな」
 最後の言葉にルイズがびくりとした。ハドラーもそのまま口を閉ざす。
 しばらく重い沈黙が教室を支配した後、唇を震わせながらルイズが告げた。
「そうよ……私は魔法が使えない。生まれてこの方、一度も成功した事が無いの」
 ルイズの口元に自嘲の笑みが浮かんだ。
「それで、付けられたあだ名が『ゼロ』のルイズ。魔法学院の生徒が、貴族ともあろう者が魔法を使えないなんて、とんだ……お笑い種よね……」
 そう言ってルイズが俯いた。その顔は髪に隠れてよく見えないものの、身体を震わせ、痛いほど握り締められた拳は、今の彼女の心を明確に表していた。
「……泣いているのか?」
 ハドラーの問いにルイズは答えない。ただただ下を向き続けている。
 再び静けさの戻った教室に、不意に、ポツ……ポツ……という音がこだまし始めた。
「……どんな……どんなに努力しても……駄目だった。朝から晩まで魔法を唱え続けても!難解な魔法理論の本を丸暗記しても!……私には……何の魔法も……身に付かなかった」
 言葉を絞り上げるルイズの目には大粒の涙が浮かんでいた。涙は幾筋も頬を伝い、教室の床を不規則に打ち続ける。
 泣いても泣いても涙は止まらなかった。ずっと心に仕舞い込んでいた想いは、途切れる事無く地面へ落ちていく。
 力無く膝を着いたルイズは、目の前の使い魔の事も忘れて一人泣き続けた。
「――俺は」
 突然の声にルイズがはっと顔を上げた。ずっと黙っていたハドラーがいきなり喋りだしたのだ。
「俺は……人間ではない。そして、この世界の住人でもない。だから、この世界で言う貴族の常識とやらは、俺には分からん」
 突然脈絡の無い言葉をハドラーが口にする。だがその声はいつもより、はっきりとした力が込められていた。
「だが、召喚されたあの時、俺は事の一部始終を見ていた。魔法が使える筈の貴族とやらは、その殆どが無様に逃げ出し、魔法を使えない筈の主が、勇敢に戦う姿をな」
 ふふっ、とハドラーが笑った。
「人間とは不思議なものだ。俺にしてみれば、あの時の主は他の連中よりも、よほど『貴族』に見えたのだがな」
「え……?」
 『貴族』の言葉にルイズは思わず反応した。入学して以来、自分にとっては常に嘲笑と共に使われて来た言葉であり、肯定目的で他人に言われた事は、ついぞ無かった。呆気に取られた様子のルイズが怖ず怖ずと声を出す。
「もしかして……私を?」
 励ましてくれているのだろうか。半信半疑なルイズをよそに、ハドラーが再び口を開いた。
「主よ」
「……な、何?」
 急に呼ばれたルイズは若干焦った様に返事をした。
「主は魔法が使えないと言ったな。では聞こう。主に呼び出された俺は、一体何なのだ?」
 しごく真面目な様子でハドラーが質問した。
「……?」
 どういう意味なのかと考え込んだルイズが、突然ハッとした顔をした。
「そうよ!そうだわ――」
 ルイズの頭に昨日の事象が浮かび上がって来た。
 ――そう、サモン・サーヴァントの魔法はちゃんと成功したではないか。基礎中の基礎みたいな魔法だが、自分にも使える魔法は確かにあったのだ――
 顔を上げたルイズに、気付いた様だな、と言った顔でハドラーが頷き返す。

 ――そうだ、自分は決して『ゼロ』じゃない――


591 :虚無と爆炎の使い魔:2008/08/16(土) 12:25:09 ID:f13t5ZIK
 ルイズの瞳に再び光が戻った。むくりと起き上がり、目元の涙を拭う。
「質問に答えてもらおう。主は、『何を』召喚したのだ?……『ゼロ』の名の通り、何の力も無い者を召喚したのか?」
 ルイズははっきりと首を振った。
「では何だ?ただの使い魔を召喚したとでも言うのか?」
「それも……違うわ」
 真剣な顔付きのハドラーにも、一歩も引く事無く、ルイズは否定した。両者の間に、まるで迫真の舞台を見ている様な緊張感が漂う。
 少しの後、ふっ、と顔を和らげたハドラーは、満足そうに目を閉じた。
「……答を聞こう」
「私が召喚したのは……あなたよ、ハドラー。ただの使い魔なんかじゃないわ。強大な魔法と多くの知識を併せ持った、――私の知る中で、最強の使い魔よ」
 はっきりと言い放ったルイズに、つい苦笑を浮かべたハドラーが片目を吊り上げる。
「どうにも持ち上げ過ぎだな。俺にそこまで万能さは無い……だが、どうやら立ち直るきっかけ程度の力にはなった様だ」
「決して嘘は言っていないわ。それに、使い魔の実力は召喚主の実力に比例すると言われているの。だから……」
 自分への誓いを立てる為、ルイズが息を吸った。
「だから、自分が『ゼロ』と言われない為にも、尚更あんたを過小評価する訳にはいかないのよ」
 そう言って胸を張ったルイズは、真正面からハドラーと対峙した。真っ直ぐ自分を見据えるその目に、ハドラーが感嘆の声を上げる。
「ふふ……やはりいい目だ。奴らと同じ、決して諦めたりしない、不屈の精神が宿った……な」
 ハドラーの胸に、かつて幾度となく戦った好敵手達の顔が思い浮かんだ。急に遠い目をする自分の使い魔を、ルイズは不思議がる。
「その……『奴ら』って誰の事?」
「俺と戦い、俺を倒した連中の事だ。素晴らしい奴らだったぞ。野望と、自らの保身しか頭に無かった俺の生き方を変える程にな」
 懐かしむ様な顔で答えたハドラーの言葉をルイズは信じられない思いで聞いていた。この男を倒したと言う事も眉唾ものだが『保身』に走るこの男の姿など到底想像できないのである。
 疑わしげな視線を向けるルイズに、ハドラーは軽く笑った。
「いずれまた話そう。それより今は、主の腹の心配をしなければな」
 ルイズがハッとした。ハドラーがわざわざここに来た目的を思い出したのだ。
「そうだったわ!いけない、急がないと昼食抜きになっちゃう!」
 掃除による肉体労働も手伝い、空腹感にすっかり襲われたルイズが慌てて飛び出して行く。
 そんな主人の後を悠々と着いて行くハドラーだったが、教室を出た辺りで突然ルイズが振り返った。
「ね、念のため言っておくわ。さっきのはあくまでたまたまなんだからね。あんたは私の使い魔なんだし、あんたを従わせる事を諦めた訳じゃないんだから」
 まくし立てる様に喋ったルイズはそこまで言うと、何故か一旦言葉を切った。それと同時に、そわそわと落ち着き無い所作になる。
 主人の奇行を訝しむハドラーに、ルイズは顔を赤らめながら小さな声で告げた。
「でも……励ましてくれた事には感謝するわ。その……あ、ありがとう」
 最後は蚊の鳴くような声で言い放つと、ぷいっと顔を背けたルイズは、そのまま逃げる様な速さで歩き出した。
「ふっ、怒ったり礼を言ったり……。俺の主は随分と忙しい事だ」
 歩き去るルイズの後ろ姿を見つめながら、ハドラーは苦笑した。



592 :虚無と爆炎の使い魔:2008/08/16(土) 12:26:12 ID:f13t5ZIK
「ふう……」
 走るのを止めたルイズは一息付くと、そっと裏を振り返った。走った分の距離を隔て、悠然と自分の後を追う使い魔の姿に、先程のやり取りを思い出したルイズの顔が再び熱を持つ。

 ――嬉しかった――

 ルイズの胸に、温かい何かが込み上げる。ハドラーの言葉は、もしかするとほんの気休めの様なものだったのかも知れない。それでも、自分を認めてくれた事が、肯定してくれた事が、ルイズにとっては嬉しかったのだ。
 同時に、今のままではとてもハドラーの主人とは言えない事をルイズは痛感する。
勿論、力で敵わない事はわかっている。だがその上に使い魔に慰められる様な、情けない様相まで晒してしまう様では、とても自分の立つ瀬が無い。
 ハドラーから視線を外し、ルイズが決意も新たに前を向いた。
「もっと強くならなきゃ……身体も。心も。あいつに負けないくらいに」
 そう決心してルイズは再び歩き出した。心なしか力強くなった足取りで、食堂への道をずんずん進んで行く。
 行きの時よりも遥かに早く、目的地に着いたルイズが食堂の入口をくぐると、そこには多くの人だかりが出来ていた。
「何なのよもう!」
 通路を生徒達に遮られてしまい、自分の席に着く事すら出来ないルイズは憤った。と同時に、この騒ぎの原因は何かと気になり出しもする。
「どうした?」
 背伸びをして何とか騒ぎの原因を確かめようと頑張っていたルイズに、いつの間にか追い付いていたハドラーが声を上げた。だが、つま先立ちの状態で突然声を掛けられたルイズはバランスを崩してしまう。
「キャア」
 前の生徒を道連れにする形でルイズが豪快にすっ転んだ。倒れた拍子に打った頭をさすりながら、ルイズが抗議の声を上げる。
「何すんのよハドラー!」
「え……?ルイズの……使い魔!?」
 ルイズの声に反応したのは一緒に倒れた生徒だった。悲鳴の様な声を上げると、ハドラーの方を向いたまま、口をぱくぱくさせている。

「あ……ごめんなさ「うわあ!ル、ルイズの使い魔だ!」
 巻き添えにした事を謝ろうとしたルイズにまたも別の叫び声が響いた。声に反応した人だかりの生徒達の目が次々とこちらに向けられる。
「何だよ……って、う、うわあああ!」
 ルイズの後ろに黙って立つハドラーを見た生徒達が順番に声を上げた。それに伴って、まるで見えない壁が存在しているかの様にルイズの前の空間が割れていく。
「列が空いたようだな」
「空いたけど……これじゃあもう食事は無理よ」
 テーブルや椅子もあって、ただでさえ動きにくい食堂の通路である。そこに無理な形で列が割れた為、ルイズの席周辺は、今やすし詰め状態になっていた。
「はあ……」
 ため息を吐いたルイズは渋々と二分された人だかりの中を歩いていく。こうなったら騒ぎの元凶をとっちめるしかない。
 中心まで進んだルイズが見たのは、何故か頬に手形が付いた状態の(ルイズのクラスメートである)ギーシュと、それに必死で頭を下げている一人のメイドの姿だった。
「あんた達何やってるのよ!」
 昼食が食べられなくなった恨みも込めて、ルイズが叫ぶ。だが――
「ひっ!」
 突然のルイズの乱入に二人がみるみる顔を青くした。メイドのシエスタはルイズの声に、ギーシュはルイズの後ろに佇むハドラーの姿に、それぞれ怯えている。
「何よ……ちょっと聞いただけじゃない」
 ルイズが不満げに一人ごちた。これでは自分が悪役の様である。
「仕方無いわね」
 このままで話にならないと判断したルイズは手近な生徒を捕まえて、事の次第を聞いた。それによると――


593 :虚無と爆炎の使い魔:2008/08/16(土) 12:28:23 ID:f13t5ZIK
友人とのお喋りに夢中のギーシュがうっかり落とした謎の小鬢、それをデザートの配膳で近くを通り掛かったシエスタが拾って渡そうとした。しかしギーシュは何故か受け取りを拒否する。
 だが小鬢を見た友人の一人が突然声を上げた「その小鬢はモンモランシーの物じゃないか?」囃し立てる友人達を必死で否定するギーシュ。そこにケティという下級生の少女が現れる。
 どうやらギーシュはモンモランシーに内緒で彼女といい雰囲気になっていたらしい。しかし、彼女もまた、ギーシュからモンモランシーとの関係を知らされていなかった。
 「私の気持ちを弄んだのですね!」小鬢を見て裏切られたケティは涙を流して立ち去った。気まずい空気の中ギーシュは必死に取り繕う。
 だが、悲劇はこれで終わらなかった。モンモランシーが一部始終を見ていたのだ。ギーシュの態度に怒髪天を突いた彼女は強烈な平手打ちを食らわせ、ケティと同じく立ち去っていった。
 一層気まずくなった空気が漂う中、突然ギーシュはシエスタに怒鳴る「受け取りは拒否しただろう!あれで察しがつかないのか?」と。

「……とまあそんなこんなで彼女が平身低頭している時に君が来たんだよ」
「そう……ありがとう」
 身振り手ぶりを交え、何ともドラマチックな解説をしてくれた生徒にルイズは礼を言うと、ギーシュの方へと向き直る。
「予想はしてたけど……全部あんたが悪いんじゃない」
 びしっと指を突き付けて、ルイズは言い放った。「そうだ!」と周りの野次馬からも同調の声が相次ぐ。
 ルイズは内心怒っていた。ギーシュだけではない。何もせずにただ見ているだけの野次馬にもである。
 ハドラーは『自分こそが貴族に見えた』と言った。だか、それは裏返せば『他の奴らは貴族じゃない』と言っているに等しい。
 つまるところ、自分の使い魔は貴族というものに何ら敬意を払っていないのだろう。それが悔しいルイズは、だからこそ、ギーシュ達の横暴さに余計に腹が立った。
「こんなのただの弱い者虐めじゃない!貴族としてあるまじき行為よ!」
 周りにも聞こえる様な声量でルイズが非難した。だが当のギーシュはカチンとした様子で反論する。
「……それを君が言うのかい?『ゼロ』である君が!」
 そう、腹が立っていたのはギーシュも同様であった。
 メイドに怒鳴ってしまったのは、弾みだったのだ。八つ当たりであった事も、メイドを責める理由がお門違いであった事も充分理解している。しかし自分は貴族だ。簡単に頭を下げる事は自らの価値を安売りする事に繋がる。
 だからこそ、人目に付くここでは一旦メイドの方に折れてもらい、後でフォローを入れれば良いと考えていた。
 だがそんな中、突然ルイズが現れた。いきなり自分を非難したかと思えば、今度は魔法が使えない身で『貴族』を語る。
 いくら相手が女性であろうと『貴族』を侮辱された事には我慢ならなかった。


594 :虚無と爆炎の使い魔:2008/08/16(土) 12:30:15 ID:f13t5ZIK
「そ……それとこれとは」
「関係あるだろう?魔法が使えるからこそメイジであり真の貴族だ。その点君は、爆発なんて何の役にも立たない魔法、いや、そもそも魔法と呼べるか怪しいものしか使えない」
 『ゼロ』の言葉にびくりとしたルイズにギーシュは更なる追い討ちを掛けた。
「つまり……君に『貴族』についてとやかく言われる筋合いは無いって事だよ。『ゼロ』のルイズ」
「そ……それでも間違いは間違いよ」
 そう反論するも、ルイズの言葉に力は無い。魔法が使えない。爆発など役に立たない。全て事実だった。
 ギーシュの言葉が心に深く突き刺さったルイズは再び、自分の足元が崩れて行く様な錯覚を覚える。
 すっかり黙ってしまったルイズの様子に、組み易しと見たギーシュは、この際、矛先をルイズに変える事でこの騒ぎ自体をうやむやにしてしまえばいい、と考えた。だがその時――
「中々話がまとまらない様だな」
 今まで黙っていたハドラーが急に口を開いた。存在をすっかり忘れていたギーシュはその声にたじろいでしまう。
 一方のルイズも、ギーシュ同様にとまどっていた。主たる自分がこれ以上ハドラーに頼る真似はしたくない。
 そんなルイズの心中はハドラーにも分かっていた。自分が手を貸す事をこの少女は喜びはしないだろう。同時に、そんな気高い心を持っているからこそ、自分は付き従っているのだが。
 だが今現在、二人の考えは平行線を辿ったままである。これまでも、おそらくこれから先も、貴族の身でありながら魔法が使えない事は主の障害となり続けるに違いない。ならどうすれば良いのか?
 出方を待っている様子の二人にハドラーが告げた。
「俺の元いた世界では、こういった時に最適な方法がある」
「「本当!?」」
 二人の声がつい重なった。ハドラーの言う事が本当なら、願ってもない事である。
 先を促そうとした二人だが、何故かハドラーは不敵な笑みを返す。不審に思った二人を見渡し、使い魔は朗々と宣告した。

「決闘だ。双方とも、心往くまで存分に闘うがいい!」

「「……決闘?……って!!えええええぇぇぇぇぇぇ!?」」
 二人の放った仰天の声は、食堂中に轟き渡ったのだった。


595 :虚無と爆炎の使い魔:2008/08/16(土) 12:30:50 ID:f13t5ZIK
5話終了です。番外編と違ってこっちは真面目な話にするつもりだったのですが
どうにもマリコルヌが……。ドM設定面白すぎるw
次回はルイズ対ワルキューレです。戦闘描写が入るので少し時間が掛かるかも
しれませんがよろしくお願いします。では ノシ

596 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/16(土) 12:34:08 ID:kFmSQ2No
投下乙

マリコルヌハードや極がでそうだな

597 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/16(土) 12:35:27 ID:foZwgh/S
投下乙

>>596
見たくねえw
キュルケハードとか極なら見てみたいがwww

598 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/16(土) 13:15:02 ID:OJzL2E+Y
投下乙です。

爆炎の使い魔のギーシュ戦はギーシュVSルイズですか。
このまま決闘する事になるとルイズの苦戦は必至って気がしますが、
どういう結末になるか楽しみにしてます。

599 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/16(土) 13:47:32 ID:PmQL3wsT
GJです

「理力の杖」でも渡すのかな?
あれって、ゼロ魔の世界では「ブレイド」の効果のあるマジックアイテムって扱いになりそうだ。

600 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/16(土) 15:27:10 ID:1ch23zxb
爆炎の人GJです。
獣王の場合もそうですが、ダイ大スレでのルイズはかなり「当たり」な使い魔を召喚していますね。

話を考えていて疑問に思ったのですが、
○途中でルイズがダイ大の世界に行くのはアリか
もちろん、ルイズがダイ大の世界の価値観をいきなり否定したり『虚無』Tueeeしたりはしないです。

○自分で考えた敵を出すのは許容範囲内か
ゼロ魔やダイ大の既存のキャラにあてはめようとするとどうしても無理があるので。
二つの世界の人物が協力して倒す…という感じにしたいのですが。

原作から外れた展開はどこまで許されるのかわからなくなりました。

601 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/16(土) 15:36:51 ID:RIurXmaa
いや、ハドラー格好いいよハドラー!

そして、
>「お黙りなさい!〜良く見えませんでした」
これでスルーできるシュヴルーズは剛の者w

602 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/16(土) 15:49:20 ID:KhmEGUa0
乙でしたー。
どうもハドラーが『人間の可能性を見たがっている』ように見えますね。確かに力は比べるべくもないとはいえ、ルイズはダイやポップに通じるものがあるように見えますから、期待しているんでしょう。
……初期のポップとギーシュのヘタレ具合が重なって見えるのは気のせいだろうか。

603 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/16(土) 16:37:46 ID:Fq/jQtsJ
>>600
>途中でダイの世界へ
アリじゃないかな。そういう変化球もおもしろそうだと思う。
>自分で考えた敵
爆炎で泥人形のヒムが認められているからオリジナルは絶対にダメというわけではないけども
物語の根幹に関わる相手をオリジナルというのは難しいと思う。
ところでオリジナルというのはダイの大冒険、またはゼロの使い魔の世界観に沿った敵だよね?
そういう設定なら個人的には問題なく読むと思う。

>>602
ギーシュも一皮向けば凄い子になるんだよ。使い魔有能だし

604 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/16(土) 18:45:59 ID:foZwgh/S
まだ皮は剥けてないけどね。

605 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/16(土) 19:29:18 ID:exLLFASq
>>600
面白い、ある程度納得できる理由がある、この二つさえ揃えば誰も文句はないでしょう。

606 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/16(土) 21:23:23 ID:7m5Jn0qV
メインに絡まないようなオリキャラだったら良いだろうけど…
出ずっぱりなオリキャラはいらんね。

607 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/16(土) 21:50:03 ID:eoBAsPuS
村人Aまでなら許す

608 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/16(土) 23:08:57 ID:9C3RbHZj
ガーゴイルHまでならOK

609 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/16(土) 23:12:31 ID:hOZfl2+9
Hなガーゴイルと聞いて

610 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/16(土) 23:18:51 ID:dBxbPmOh
つまりHなタバサということですね

611 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/17(日) 03:15:56 ID:Fokg/0QT
例えばの話で火竜山脈辺りの溶岩から溶岩魔人みたいなの作り出したりできるのかな


612 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/17(日) 04:12:35 ID:6ReBVOgS
禁呪法使えば余裕じゃないか?作るだけの力と対価として命削らなくては
ならないが。

613 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/17(日) 10:01:58 ID:Zyit4XIy
・自分の寿命が尽きると創造物も死ぬ
・現在の自分の余生が不明
・作ったら確実に縮む

この状況下で作ろうとするかどうかだな、泥ヒムみたいに
軽く作るつもりが思いっきり自意識持って活動はじめましたならともかくw

614 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/17(日) 21:29:05 ID:pDaFr8zB
そこらへん魔族がわりと簡単に禁呪法使っちゃうのはやっぱ人間より寿命が長いからだろうな
そもそも魔族からしたら禁呪法という扱いじゃないのかもしれんが

615 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/17(日) 22:00:10 ID:IQQWUzvz
ハドラーかっこいいよハドラー
っつーかダイ大のキャラで外れなんかあんのか?まぞつぼとか?

616 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/17(日) 22:14:02 ID:k9LYRoqS
ダイ大のキャラでハズレと言うと……
……いなさそうだね、うん

617 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/17(日) 22:18:33 ID:Zyit4XIy
サブキャラだと大抵は当たりだよな
ルイズ的に考えると雑魚モンスターだったとしても(使い魔的に)大当たりだし
人間を呼んでも(肉体的には極普通の学生の)サイト以上なのは確定だろうしナ

逆にメインキャラが自己投影の痛いキャラになってて失敗してるよーなのがいたよーな
(そうでなくても、パワーバランス的に扱いにくそうだし)

618 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/17(日) 22:21:38 ID:ccOImeCA
ガルダンディーとか

619 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/17(日) 22:26:08 ID:Zyit4XIy
>>618
なんでだろう、ルイズと二人でツンデレ×2になって憎まれ口を叩きながら
割と良い関係になってそーな気がするのはw

620 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/17(日) 22:57:13 ID:oV6UsyeL
ザボエラは外れにしか思えない

621 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/17(日) 22:58:22 ID:eJ7qHdi0
>>620
そこでジョゼフor教皇が召喚ですよ。

622 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/17(日) 23:05:26 ID:6ReBVOgS
>>621
ジョゼフなら上手い具合に使いつつ最期はゴミのように始末するだろうな。
教皇は・・・・調教してきれいなザボエラか?どんなのだろう、想像がつかん。

623 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/17(日) 23:34:55 ID:ZMJhvLJr
一番外れはザボエラじゃないのだろうか?
よくてルイズが黒くなるぐらいだが。
最悪洗脳で操り人形か改造されかねんぞ。

まあ、反面教師的なお話やザボエラがハドラー並に覚醒する話も面白いかも試練が。

624 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/17(日) 23:38:47 ID:Zyit4XIy
逆に、もっとも相応しい使い魔がザボエラなルイズが
いったいどんなルイズなのか気になるな
周囲の視線とかが差別とかで、妙に意気投合して真っ黒ルイズとサボエラの暗躍物語になるのだろうか?w

625 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/17(日) 23:40:24 ID:6ReBVOgS
ルイズの人生終了と言う意味でのはずれは爆弾岩じゃないか?
とりあえず何か良く分からないモンスターを召喚→触ってみる→メガンテ
ルイズどころか至近距離にいたコルベールまで即死という最悪の事態に・・・

626 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/17(日) 23:58:01 ID:T5j8hPVv
>>614
身体的に負荷が大きすぎるから禁呪って側面が強いっぽいから、身体が丈夫なら禁呪じゃないのかもな

627 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/18(月) 00:16:14 ID:vv/yzCkw
>>625
序盤のハドラー、バラン、ヒュンケル、クロコダインなら確実にルイズ死亡エンドだな

口だけ喧しくて実力の伴わない人間にはかなり嫌悪感持ってる時期だろうし

628 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/18(月) 00:35:31 ID:8D290mN3
キルバーン(人形)を召喚したらピエロがいないから動かないのかな

629 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/18(月) 00:43:00 ID:olxABA72
>>628
操り方のわからない人形だけ召喚するルイズってのはかなりかわいそうな部類だな
っていうか黒のコア入ってるしマグマの血が流れてるし危なすぎるw

630 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/18(月) 00:44:39 ID:S7b4JhwX
序盤のクロコはルイズが意地を見せれば確率が低いが死亡エンドは回避できるかもしれん
ヒュンケルは序盤でも殺されはせんぞ。

631 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/18(月) 01:05:46 ID:8D290mN3
>>629
契約(キス)したら大火傷www

ヒュンケルは女性を大切にするんだっけ

632 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/18(月) 01:08:58 ID:Ti/LsnxC
あくまで女は殺さないだけで男は容赦しないからやばくないか

633 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/18(月) 02:05:07 ID:DoQDpzI1
ゼロ魔世界では、最初の方に出てきたライオンヘッドでもかなり当たりな使い魔?

634 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/18(月) 03:48:20 ID:JxrKIabe
そういや、昔読んだエニックスから出てた小説で
泥人形にメラミをしたら陶器の要領で焼けてパペットマンになった話がありましたが
泥のヒムにも同じ事したらクラスチェンジしますかね?

635 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/18(月) 06:10:27 ID:Mm8f9IQz
>>633
最高クラスの当たりだろ
スクウェアクラスの威力の炎(実際は魔法)を吐くからな

636 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/18(月) 11:01:37 ID:nluGeSLb
ところでこういう二次SSを書くときってキャラクターが登場するときには
人物の外見的特長や雰囲気みたいなのの描写ってやっぱり必要なのかな?
それとも互いの作品をある程度知ってる読者がほとんどだから少しでいい?


637 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/18(月) 12:02:51 ID:EAss9tYY
>>636
あった方がいいというよりあるべき物だと思うぞ。
特にここではダイ大側の描写は多い方が良い。
元が漫画で書き手と読み手でイメージが若干ずれる事があるから
ある程度読み進んであれ?と思われるよりは最初のうちに私はこう考えている
というのを文章で表現した方が良い。

638 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/18(月) 12:28:24 ID:+0U/StK5
>>635
逆に最低はゴロアかな。
小心者で出世欲ばかり強くて、おまけに中途半端に強力な能力を持ってる。
強い者にこびるタイプだからルイズとの相性はかなり悪いだろう。フーケやワルド戦なんかじゃ裏切りかねない。

639 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/18(月) 12:48:15 ID:YhiDxOVc
>>634
>>379-382の流れを見てくれ。
みんなその日を楽しみに待ってるんだぜ。

640 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/19(火) 01:33:12 ID:0dMVC4YA
>>636
しつこいのは要らない。
でも、初見同士のキャラの目線でどう感じたかみたいのはあって自然だし、
地の文での描写だって無くていいもんじゃない。自然さが大事だと思う。

641 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/19(火) 17:43:29 ID:PFhe+wgt
おっさんはワルド編の際どうやって移動するのだろう

642 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/19(火) 18:07:27 ID:SVx7tZ9Q
魔法の筒を取り出して、ガルーダを呼ぶんじゃね?

643 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/19(火) 18:08:37 ID:0dMVC4YA
むしろ魔法の筒に入って移動じゃね?

644 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/19(火) 18:37:49 ID:AxZR9Dys
獣王会心撃を地面に打って飛ぶんじゃね?
方向調整は獣王会心撃。

645 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/19(火) 19:03:39 ID:0dMVC4YA
そんな傍迷惑な移動砲はイカン
あと、下で追ってきてるギーシュが涙と鼻水垂らして逃げまどう

646 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/19(火) 21:05:47 ID:hC5gKBLp
ヘドラを追っかける
ゴジラじゃ無いんだから…

647 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/19(火) 21:15:22 ID:+0tpJWI1
>>646
ビール吹いちまったじゃねぇかww

648 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/19(火) 22:50:14 ID:arOyNGhL
>>646
へドラは知らんがゴジラはよーく知っている。
おっさんと違和感なさすぎw

649 :虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I :2008/08/19(火) 22:52:44 ID:ViP0Q9df
移動方法はもう考えていますです。

よければ22:55頃から投下開始します。

650 :虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I :2008/08/19(火) 22:55:48 ID:ViP0Q9df
虚無と獣王
12  幕間 『日常』 

ルイズがクロコダインを召喚してもうすぐ一週間が経とうとしている。
召喚の儀式から謹慎終了までは色々あって実に落ち着かない日々だった。
そんな主従の、フェオの月、ティワズのダエグはこんな感じで始まる。

クロコダインの朝は早い。
厩舎で寝泊まりする彼であるが、概ね日の出と同じ位に目を覚ます。
水場で顔を洗うと、クロコダインは学院の敷地を一周する。夜間何も異常がなかったかを確認する為だ。
夜の警備を担当している衛兵も既に彼の事は知っているので、欠伸を噛み殺しながら夜は何もなかったと話す。
使い魔たちは大体同じ時間に起きて来るので、朝の挨拶をしながら向かうのは中庭である。
今年度の使い魔で一番の大物(体長的な意味で)の風竜がいる時は他の使い魔たちと共に世間話に興じ、いない時はグレイトアックスを使ったトレーニングを行う。
最初は風竜がいる時もトレーニングをしていたのだが、やたらとお喋りな彼女が矢継ぎ早に話しかけて来る為、話し相手に徹する方がいいと判断した。
ここのところ竜の姿は見えなかった為、デルムリン島にいた時の様に斧を振るうクロコダインであったが、今日は広場に彼が着いたすぐ後に空から蒼い影が舞い降りてくる。
背に乗っているのは風竜の主である眼鏡を掛けた少女だ。
使い魔とは対照的に無口で無表情なその少女がクロコダインに黙って頭を下げる。
「ああ、おはよう」
朝の挨拶と判断したクロコダインがそう言うと、後ろに控えた風竜がきゅいきゅい!きゅーい!と人間には解読できない声を上げる。
「おはようなのね、王さま! シルフィおなかすいたのねー!」
風竜に限らず、他の使い魔たちも皆こぞってクロコダインの事を王と呼ぶ。
面映ゆいしお前達はオレの部下じゃないから止めてくれないかと言ってはいるが、聞き入れられた例はない。
「おはようシルフィード。もう少ししたら厨房までいくからそれまで待っていろ」
「ありがとなのね王さまー!シルフィがいくら言ってもお姉さまごはんくれないのねー!もうほんとにいじわるしてからにー!」
シルフィードと話した回数はまだ片手に余る程度だが、ここから怒涛の様な主への愚痴と惚気が始まるという事は学んでいる。
クロコダインは厨房へ行くのを少し早くする事にした。



651 :虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I :2008/08/19(火) 22:58:27 ID:ViP0Q9df
「よう! 今日は早いな『我等が声』!」
厨房裏口に現れたクロコダインを迎えたのはコック長マルトーのそんな一言だった。
もとよりマルトーはクロコダインに悪い印象を持っていた訳ではないが、先日の食堂パイ投げ事件は彼に何か感銘を与えたらしく、『我等が声』『我等が斧』などと呼ぶようになっている。
マルトーだけではなく下積みのコックたちやメイドまでそんな二つ名で呼ぶのだが、呼ばれる方はどう対応していいのか非常に困る。
面映ゆいしあれは子供の悪戯を叱っただけの事だから止めてくれないかと言ってはいるが、聞き入れられた例はない。
「シルフィードが腹を減らしていてな。何か食べさせるものはないか?」
マルトーは、なりはでかいがへんに子供っぽい印象の竜を思い浮かべた。
「ああ、あの青いのか。残り物で良きゃあ持っていってやってくれ。あんたの分はどうする?」
「オレはもう少し後で良い。毎日世話を掛けるな」
クロコダインの食生活は、召喚前より遥かに恵まれているといえる。食堂の一件以降はとても賄い食とは思えない豪華な料理が出てくるので有り難いが困惑もする。
「なぁに、遠慮はいらねえってもんさ。他でもねぇ、貴族の坊主どもにあんな啖呵が切れるアンタのメシなんだぜ。もっと豪勢にしてもいい位だ」
だからアレは少し叱っただけなんだがというクロコダインの主張は今回も聞き入れられず、逆に「謙遜する辺りが大人物だ」という評価しか得られなかった。

シルフィードに食餌を渡し、きゅいきゅいと喜ぶ声を背にクロコダインは学生寮へと向かう。
洗濯場を覗くが、シエスタは洗濯当番ではないらしく姿は見えない。
ルイズとはいつも学生寮の入口で待ち合わせをしている。もう起きているだろうかと思いながらクロコダインは歩を進めた。

まだ起きていなかった。
「うー……もう…食べられな……」
ベタな寝言ですね、とシエスタは思う。
彼女はいつもルイズを起こしに来る訳ではない。時間が空いていれば訪室するが、どちらかといえば仕事をしている事の方が多かった。
そろそろ起こそうか、と布団に手を掛けると、再び寝言が飛び込んでくる。
「…た、食べられないなんて言わせないんだからねっ……」
(夢の中でも素直じゃない、というか一体どんな夢……?)
疑問に思いつつ、シエスタは礼儀正しく掛け布団を勢いよく剥いだ。
「ぅひゃう!?」
愉快な奇声を上げて跳ね起きるルイズに対して一礼。
「おはようございます、ミス・ヴァリエール」
「シシシシシエスタ! ちょっとやっていい事と悪い事が!」
この起こし方は抜群に寝起きがいい、と脳裏に刻みつつシエスタは返事を返す。
「え、何か問題でしたでしょうか?」
不思議そうな顔をするシエスタにルイズは顔を真っ赤にして叫んだ。
「問題も何も、貴族相手の起こし方じゃないでしょ!」
「そんな!? 貴族様相手にするんですから物凄く丁寧ですよ! 田舎の弟妹なんかあんなもんじゃすみませんし!」
真顔で返されたルイズは思わず怒るのを忘れてしまった。
「いや、比べる対象が間違ってるような気がしないでもないんだけど、取り敢えず弟さん達はどういう扱いなの」
問われたシエスタは、んー、と天井をしばらく眺め、
「起きない場合はまず腕の関節を逆に」
「ゴメンネ、やっぱり言わなくてもいいわ」
「ちなみに寝ない場合は後ろに回って腰に手を回し後方にそのまま投げつけ」
「言わなくてもいいんだってばっ!」
田舎の平民マジ怖い、そう思うルイズであったが、単にシエスタの家が特殊だと知るのはもっと後の話になる。



652 :虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I :2008/08/19(火) 23:01:27 ID:ViP0Q9df
そんなこんなでルイズが制服に着替えて部屋を出る頃には、クロコダインは待ち合わせ場所に到着しているのが常だ。
「おはようクロコダイン! 待った?」
「おはよう、ルイズ。今来たところだ」
会話だけ抜粋するとデート前の恋人同士の様だが、実際にはピーチブロンドの華奢な少女と赤銅色の鱗の獣人が朝の挨拶をしているだけであった。
2人はこの時間に今日の予定を打ち合わせる。ルイズは当然のことながら授業に出るのだが、使い魔は別に出なくても構わないからだ。
ルイズの謹慎中、クロコダインはシエスタやマルトーに何か手伝えることはないか聞いて回っていた。ルイズからの許可も得た上の行動である。
2人とも大貴族の使い魔に仕事を振るのは躊躇われたのだが、本人が体を動かさないと落ち着かないと主張する為、薪を割ったり食材を運び込んだりといった力仕事を頼んだ。
クロコダインは何もしていないのに食事が出てくる生活はおかしいと考えており、どうもデルムリンでの生活が彼に勤労意欲というものを植え付けてしまった様だった。
昨日、つまりルイズの謹慎が明けて初めての授業にはクロコダインも付き添っている。
食堂で貴族の子弟を叱りつけた一件について使い魔如きが生意気なと反発する生徒も少なからずいるのだが、そういうのに限って表立って文句を言う度胸も無い。
これまでルイズを囃し立てる筆頭だったマリコルヌやモンモランシーも静かにしていた為、スムーズに授業は進行した。
教師たちにとって教室で睨みを利かす(様に見える)クロコダインは有り難い存在と言えるのかもしれない。
「それで今日はどうするの?」
「オレでも出来る仕事がないか聞いてこようと思う。なかったら授業に参加という事にしたいんだが」
「……授業はつまらなかったかしら」
わたしと一緒にいるのはつまらないのか、とは言えないルイズであった。
「単に体を動かしている方が性に合っているだけだが、そういう事なら授業を選択するとしようか」
もう少し素直に発言してくれと思いつつ、あっさり前言を翻すクロコダインであった。
「そそそ、そ、そういう事ってどういう事なのよ!?」
「どういう事なのだろうなあ」
結局主人に対しては甘く、今日も授業参観するクロコダインであったという。

放課後、ルイズはクロコダインと別れて図書室に向かった。
学院長とコルベールに許可を得て、教師しか閲覧できない『フェニアのライブリー』にも今の彼女は入る事が出来る。
ルイズが探すのは召喚に関する本だ。
クロコダインを必ず元いた場所に帰すと誓った身として、これは当然の事であるとルイズは考えていた。
しかし、相手は30メイルもの大きさの本棚にぎっしりと詰まった大量の本である。そして本棚は壁際に幾つも幾つも並んでいるのだ。
おまけに魔法が爆発という形でしか発動しないルイズは、高い場所の本を取る事が出来ない。
故に、彼女は助っ人を頼むことにした。
余り話したことが無い相手な上、ルイズとは違う意味での問題児で取っ付きにくい人物であったが、思い切って話を持ちかけると予想に反して快諾してくれた。
「待たせた」
そう言って現れたのは、クラスメイトのタバサである。
彼女に示した条件は、一緒に本を探し高い場所の本は取って貰う事、その代わりルイズが調べ物をしている最中はライブラリー内の好きな本を読んでいていいというものだった。
図書室の主、知識欲の権化たるタバサにとっては好条件だった様で、無表情ながらもどこか嬉しそうだとルイズは思う。
「悪いわね、都合のいい時だけで良いからよろしく」
「構わない。こちらも貴女に用があった」
「用?」
全く思い当たる節のないルイズに向かって、タバサはマントの影から一冊の小冊子を出した。
手にとって内容を確認したルイズは、愕然とした面持ちでタバサに問いかける。
「こ、これってまさか……! 噂には聞いていたけど、本当に実在したというの……!!」
タバサは頷き、言葉を重ねた。
「そう、『会』は実在する。わたしは会員として、貴女をスカウトに来た」
彼女が言う『会』とは一体何か。それを語るには女子寮で密かに語り継がれる噂話の事から説明しなければならない。



653 :虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I :2008/08/19(火) 23:04:27 ID:ViP0Q9df
いわく、トリステイン魔法学院には限られた女生徒しか入る事の出来ない秘密結社が存在する。
いわく、その結社の名称は『格差を是正し、資源を豊かにする会』というが、長い上にセンスが無い為『会』とだけ呼ばれている。
いわく、その『会』は古来からの民間伝承から最新の魔法理論まで調査し、研究を重ね、実践するエキスパートの集まりである。
いわく、『会』に入る方法は会員からのスカウトのみで、会員は決して『会』の存在を漏らしてはならない為、信頼できる人物にしか声を掛けない。

交友関係が広くないルイズにすらこの様な噂が届いていたが、学校にありがちな作り話だとばかり思っていた。
まあ、ホントにあるなら是が非でも入りたいと考えているのも事実だったが。
そんな噂話を聞いてから一年弱、今目の前にその会員と名乗る同級生が立っている。
「問おう。貴女は『会』に入る意思はあるか」
「答えを言う前に、ひとつだけ聞かせて」
ルイズは一旦言葉を切り、タバサに真剣な眼を向けた。
「どうしてわたしをスカウトしようと思ったの?」
答えるタバサもまた、真剣であった。
「アルヴィーズの食堂で、貴女の言葉を聞いた」
そう、ルイズは謹慎の原因となったあの騒ぎの中で、身体的特徴をあげつらう女生徒にこう言っていたのだ。

『どどどどうしてここここで胸の話題が出てくるのよ関係ないじゃないそそそんなに胸がありゃいいってもんじゃないわよ牛じゃあるまいし全くふんとにこれだからゲルマニアンはッ!』

騒ぎに加わる事なく、我関せずを決めこんでハシバミ草サラダを補給していたタバサの耳に、その言葉は凛とした響きを持って届いたのである。
いつの間にか、ルイズの瞳には涙が浮かんでいた。
わたしの言葉が聞こえていた。わたしの言葉を聞いてくれている人がいた。わたしの言葉で心を動かしてくれる人がいた。
その事が無性に嬉しかった。
「ありがとう、わたしをスカウトしに来てくれて。喜んで入会するわ」
ルイズは笑顔で礼を言うと、タバサはふるふると首を振る。
「わたしたちとしても、創設者兼名誉顧問の血縁者が入会するのは喜ばしい事」
返ってきた意外な言葉にきょとんとするルイズに、彼女は渡した小冊子を捲らせた。

『  序文
このハルケギニアの地には様々な格差が存在していますが、最も憎むべきはただ大きいだけの脂肪分を巨乳と尊び、微かな乳と書いて微乳と呼ぶべき存在を貧乳と称し蔑んでいるこの風潮であると言えます。
 わたしはこの現状を憂慮し、微乳でも誇りを持って生きていける社会を創造する為、この会を立ち上げました。
しかし、長年蔓延ったこの格差と風潮は一朝一夕で是正できるものではありません。
従って、個人の資源を最大限に発揮させる事で少しでも胸を大きくさせる研究も同時に進行させるのが、わたしが始祖より与えられた天命であると考えています。
わたしたちは揉まれれば大きくなるという古来からの民間伝承から、アカデミーで研究される様な最新の高度な水魔法による肉体改造までをも調べ上げ、その身で実践していかなければなりません。
恵まれし者達は、私たちの行動を見て笑うでしょう。しかし、嘆いてはいけません。
わたしたちの歩みは遅くとも、決して後退する事はなく、歩き続けてゆけば必ず約束の地へ辿り着くのですから。

ブリミル暦 6230年   エレオノール・アルベルティーヌ・ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエール  』

ルイズが床に突っ伏したのは言うまでもない。
結局その日、召喚魔法について調べる事は当然のことながら出来なかった。



654 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/19(火) 23:06:22 ID:klP1w3nE
ちょwwwエレオノール姉さまww

655 :虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I :2008/08/19(火) 23:08:39 ID:ViP0Q9df
夕食の後、昨日に引き続き有志による近接格闘訓練(もしくは使い魔の運動不足解消計画)が始まった。
但し、昨日と違うのは、女子生徒の見学者がいるという点だ。
「あんたたち何しに来たのよ」
監督ルイズの問いに最初に答えたのはキュルケである。
「えー、何か面白そーなことやってるから、ちょっと野次でも飛ばそうと思って」
けらけらと笑うキュルケの横で、本から目を離さずにタバサが言う。
「その付き添い」
さらにその横にはギーシュと一応仲直りしたと思しきモンモランシーがいて、
「万が一怪我したら直してくれって頼まれたのよ。かすり傷程度なら水の秘薬なしでもいいだろうし、魔法の実践にもなるし」
「へー? てっきりわたしはギーシュがついにルイズにまで手を出したかと疑ってここに来たのかと思ったんだけどー」
「そんなわけないでしょっ!」
「ていうかルイズにまでって何よまでって! あまりふざけた事言うと酒瓶持ったシエスタに部屋強襲させるわよ」
「うん、いいわよね魔法実践! がんばってモンモランシー!」
外野が馬鹿を言っている間にも、男子学生たちは順調に張り飛ばされていた。

反省会(もしくは今日のツッコミ)が終了し仲間たちが解散した後、ルイズはクロコダインに尋ねた。
「明日は虚無の曜日だからちょっと王都まで行ってくるけど、クロコダインは何か買ってきて欲しい物はある?」
本当は学院から出た事のないクロコダインと共に王都まで行くつもりのルイズであったのだが、二つの要因からそれは諦めざるを得なかった。
先ず、王都までは馬を使って移動するのだか、学院にはクロコダインが乗れる馬が無いという事。
学院には、というよりハルケギニアには、と言った方が正確なのだが。
体長3メイルの巨体を乗せて走る馬というのは、正直モンスターの類であろう。
次に、未知の獣人が王都に出現するのはあまり宜しくないという事。
使い魔慣れしている学院だからこそクロコダインも問題にならない訳で、逆に魔法に詳しくない平民が大多数の王都で問題なく過ごせるとは限らない。
下手すれば王城から魔法衛視隊が出動しかねないのだ。
そんな訳で、せめて何か希望の物があれば買ってこようというのがルイズの思惑であった。
「そうだな……。何が売っているのかオレには判らんが、長めの革紐の様な物があれば有り難いか」
クロコダインは傍らの戦斧を見ながら言った。
「こいつを持って歩く時は必ず片手が塞がってしまうのでな。丈夫な紐があれば背負う事も出来る」
「革紐かー……。馬具を扱う店なら置いてあると思うんだけど」
考え込むルイズの頭を撫でながら、クロコダインは言う。
「無理をする事はないぞ。大至急必要だというものでもないからな」
「いいわよ、わたしも乗馬用の小物とか見たいと思ってたし」
「そうか、では頼む」
そんな事を話しているうちに、就寝時間が迫ってきた。
昨日の様にルイズを肩に乗せ、クロコダインは学生寮を目指す。
こうして凸凹主従の一日は暮れていくのだった。


656 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/19(火) 23:10:18 ID:0dMVC4YA
実り無い研究ですなぁ…姉様のぺったんムネを見るに

657 :虚無と獣王 ◆8/Q4k6Af/I :2008/08/19(火) 23:11:56 ID:ViP0Q9df
以上で投下終了です。
怪盗フーケ颯爽登場の回を書こうとした筈なのですが、一体私は何の電波を受信したのでしょうか
貧乳バンザーイ

次回こそフーケ登場の筈です
電波を受信しなければですが

658 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/19(火) 23:15:18 ID:VbTKNK/L
そいやガルーダたんは普段は筒の中?それとも放し飼いかな?連れて来てればだけど

ともあれ乙!

659 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/19(火) 23:24:41 ID:PFhe+wgt
投下乙

最新の胸に関しての肉体改造魔法とはどんなのだろうか
あとルイズだけが街に行くって事はデルフさんはでれそうにないな・・・

660 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/19(火) 23:49:29 ID:AxZR9Dys
某マルガレタ……

なんでもね。

661 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/19(火) 23:56:06 ID:0dMVC4YA
あれは痛そうなので分別不能ぐらいにしとこうぜ…

662 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/20(水) 00:12:34 ID:BHKv2PsE
なんという貧乳の集い……
そうか、タバサもああ見えて気にしてたんだな

663 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/20(水) 00:21:52 ID:DaWhPcXE
エレオノール姉さま、いや、何も言いますまい……
シエスタ達や他の使い魔ともよい関係を築いているようで何より。
訓練も順調なようで。成果が発揮されるのはいつでしょうか。
他の生徒との模擬戦というのも見てみたい気もします。
それを機にメンバーが増えるとか。

664 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/20(水) 01:29:31 ID:bROK/IWP
いや 創立者エレオノール以降絶えることなく続いていることを考えれば
「エレオノール乳は各種活動で大きくなった結果である」
と考えていいのかも

665 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/20(水) 08:09:12 ID:9xCmmuXg
>664
きっと会員の皆さんは増量しているんですよ。
エレオノール姉様だけ、呪われているかのように変わらなかっただけで。

666 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/20(水) 14:19:33 ID:ConpuRzt
>>659
水を入れて膨らませ…



667 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/20(水) 15:07:53 ID:14hwttcg
パッt…もとい偽乳の発明で水メイジ大儲けですね。わかります。

668 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/20(水) 15:28:33 ID:ConpuRzt
>>667
エレオノール「私の研究によれば天然の巨乳に一番近いのは
液体を入れたやわらかいゴム袋を柔らかい肉と皮で包んだものです。
これから考えれば胸に液体を入れたゴム袋を埋め込めば誰もが巨乳になれる。
しかしながらそれを綺麗かつ内密に行う医療技術は現時点においては存在しません。
この技術こそが私が生涯をかけて追い求めるべき技術であると確信しています!」

シリコン豊胸風に…

669 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/20(水) 17:25:47 ID:cn9SY31V
もし、美容整形に関する医術書が『召喚されし書物』だったなら……革命は起きていただろうか。

670 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/20(水) 18:04:24 ID:bsK1TtIa
まさか姉さま、そのためにアカデミーに入ったのでは…

671 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/20(水) 21:22:50 ID:Y34VkIoL
逆に考えるんだ、
研究したからこそ、あそこまで大きくなったんだ
と、考えるんだ。

672 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/20(水) 22:04:38 ID:EyDEw8BX
なんだがエレオノールが ひゅーほほほっ!
とか夜中に叫んでそうだな。

673 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/20(水) 22:39:58 ID:jswl7GUg
研究する前は凹んでいたのか

674 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/20(水) 23:02:49 ID:2FFYomzT
えぐれていたん(ズゴバキメゴグシャアアアッ!!!)

675 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/20(水) 23:05:35 ID:O06PhEau
ダイの世界では爆乳こそなかったもののメインの女性陣はみんないい胸していたな。
おっさんがルイズを幼子と勘違いしたのも無理は…あれ誰か来たみt

676 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/21(木) 01:49:13 ID:rAzTihnr
クロコのおっさんはダイたちがピンチになると颯爽と現れて敵を倒す。
あれはマジでカッコ良かった。

677 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/21(木) 01:52:25 ID:FOl6bUk4
>>675
少年向けの基本。男は筋肉、女はムネです。

678 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/21(木) 03:09:19 ID:a00ijJr7
男か女かシルエットで区別するとき
一番わかりやい部分だからな。

679 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/21(木) 10:14:14 ID:fPBNCO5r
>>677
初登場時のマァムですね、わかります

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