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リリカルなのはクロスSSその70

1 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/20(金) 19:44:49 ID:xoQI4XVL
ここはリリカルなのはのクロスオーバーSSスレです。
ガンダム関係のクロスオーバーは新シャア板に専用スレあるので投下はそちらにお願いします。
オリネタ、エロパロはエロパロ板の専用スレの方でお願いします。
このスレはsage進行です。
【メル欄にsageと入れてください】
荒らし、煽り等はスルーしてください。
ゲット・雑談は自重の方向で。
次スレは>>975を踏んだ方、もしくは475kbyteを超えたのを確認した方が立ててください。

前スレ
リリカルなのはクロスSSその69
http://anime3.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1213099525/

*雑談はこちらでお願いします
リリカルなのはウロス感想・雑談スレ39(避難所で進行中)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/anime/6053/1213416975/

まとめサイト
ttp://www38.atwiki.jp/nanohass/

避難所
ttp://jbbs.livedoor.jp/anime/6053/

NanohaWiki
ttp://nanoha.julynet.jp/

R&Rの【リリカルなのはStrikerS各種データ部屋】
ttp://asagi-s.sakura.ne.jp/index.html

2 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/20(金) 19:45:39 ID:xoQI4XVL
【書き手の方々ヘ】
・作品投下時はコテトリ推奨。トリップは「名前#任意の文字列」で付きます。
・レスは60行、1行につき全角128文字まで。
・一度に書き込めるのは4096Byts、全角だと2048文字分。
・先頭行が改行だけで22行を超えると、投下した文章がエラー無しに削除されます。空白だけでも入れて下さい。
・専用ブラウザなら文字数、行数表示機能付きです。推奨。
・専用ブラウザはこちらのリンクからどうぞ
・ギコナビ(フリーソフト)
  http://gikonavi.sourceforge.jp/top.html
・Jane Style(フリーソフト)
  http://janestyle.s11.xrea.com/
・投下時以外のコテトリでの発言は自己責任で、当局は一切の関与を致しません 。
・投下の際には予約を確認してダブルブッキングなどの問題が無いかどうかを前もって確認する事。
・作品の投下は前の投下作品の感想レスが一通り終わった後にしてください。
 前の作品投下終了から30分以上が目安です。

【読み手の方々ヘ】
・リアルタイム投下に遭遇したら、支援レスで援護しよう。
・投下直後以外の感想は感想・雑談スレ、もしくはまとめwikiのweb拍手へどうぞ。
・気に入らない作品・職人はスルーしよう。そのためのNG機能です。
・度を過ぎた展開予測・要望レスは控えましょう。
・過度の本編叩きはご法度なの。口で言って分からない人は悪魔らしいやり方で分かってもらうの。

【注意】
・運営に関する案が出た場合皆積極的に議論に参加しましょう。雑談で流すのはもってのほか。
 議論が起こった際には必ず誘導があり、意見がまとまったらその旨の告知があるので、
 皆さま是非ご参加ください。
・書き込みの際、とくにコテハンを付けての発言の際には、この場が衆目の前に在ることを自覚しましょう。
・youtubeやニコ動に代表される動画投稿サイトに嫌悪感を持つ方は多数いらっしゃいます。
 著作権を侵害する動画もあり、スレが荒れる元になるのでリンクは止めましょう。
・盗作は卑劣な犯罪行為であり。物書きとして当然超えてはならぬ一線です。一切を固く禁じます。
 いかなるソースからであっても、文章を無断でそのままコピーすることは盗作に当たります。
・盗作者は言わずもがな、盗作を助長・許容する類の発言もまた、断固としてこれを禁じます。
・盗作ではないかと証拠もなく無責任に疑う発言は、盗作と同じく罪深い行為です。
 追及する際は必ず該当部分を併記して、誰もが納得する発言を心掛けてください。


3 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/20(金) 19:46:06 ID:xoQI4XVL
【警告】
・以下のコテは下記の問題行動のためスレの総意により追放が確定しました。

【作者】スーパーロボット大戦X ◆ByQOpSwBoI
【問題の作品】「スーパーロボット大戦X」「スーパーロボット大戦E」「魔法少女(チェンジ!!)リリカルなのはA'S 次元世界最後の日」
【問題行為】盗作及び誠意の見られない謝罪

【作者】StS+ライダー ◆W2/fRICvcs
【問題の作品】なのはStS+仮面ライダー(第2部) 
【問題行為】Wikipediaからの無断盗用

【作者】リリカルスクライド ◆etxgK549B2
【問題行動】盗作擁護発言
【問題行為】盗作の擁護(と見られる発言)及び、その後の自作削除の願いの乱用

【作者】はぴねす!
【問題の作品】はぴねす!
【問題行為】外部サイトからの盗作

【作者】リリカラー劇場
【問題の作品】魔法少女リリカルなのはFullcolor'S
【問題行為】盗作、該当作品の外部サイト投稿及び誠意のない謝罪

4 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/20(金) 20:28:17 ID:jYZAp7g/
>>1
乙です

5 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/20(金) 20:31:44 ID:lunZ8Vtg
>>1
スレ立て乙です

そして予約が無いようでしたら、9時から小ネタを投下しても宜しいでしょうか?

6 :Strikers May Cry:2008/06/20(金) 20:42:25 ID:h+A7ie61
その前に投下良いかい?

7 :Strikers May Cry:2008/06/20(金) 20:42:49 ID:h+A7ie61
いや、やっぱお先にどうぞ。

その後に投下しますわ。

8 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/20(金) 20:54:37 ID:9i/71dlb
先に前のスレ埋めろや。どんな超大作の小ネタだよ。

9 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/20(金) 20:54:39 ID:/CI0RRew
支援

10 :Strikers May Cry:2008/06/20(金) 20:57:03 ID:h+A7ie61
ってか前のスレ残ってる。 小ネタでしたら前のスレで投下されては?

11 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/20(金) 20:59:38 ID:Bcoi1U22
中島愛 Part3  ランカちゃん最高
http://ex24.2ch.net/test/read.cgi/voiceactor/1213702598/

12 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/20(金) 20:59:44 ID:lunZ8Vtg
すみません、小ネタと言っても37KBある為、此方で投下しようと思います
紛らわしい事を言ってしまい、申し訳ありません

13 :LYRICAL : HAZE:2008/06/20(金) 21:01:19 ID:lunZ8Vtg
ジェイル・スカリエッティ事件の収束より4年。
管理世界からの信頼を失った時空管理局地上本部は、各世界の治安維持の為に本局次元航行部隊、通称『海』へと権力の殆どを委譲せざるを得なかった。
しかし慢性的な人材の不足に喘ぐ本局の事。
優秀な人材は片端から『海』へと引き抜かれてゆく、長年の間に組織へと染み付いた所謂『伝統』から抜け出す事ができずに、地上統治に関する問題の解決は先送りにされ続けていた。
『海』と比較して余りにも質で劣る『陸』の戦力だけでの現状解決など望むべくもなく、『陸』の尽力を嘲笑うかの様に各管理世界に於ける状況は緊迫度を増し、更にはその状況を顧みない『海』の傲慢さにより陸士の犠牲は増えるばかり。
遂には管理局の在り方そのものが管理世界間で疑問視され始める事態となる。

しかし、管理世界の動きに翻弄され『海』内部で不毛な舌戦と『陸』に対する一方的な責任追及が開始された、丁度その頃。
複数世界の反動勢力が、現地の陸士部隊によって完膚なきまでに鎮圧される。
しかも制圧作戦の発動から最短で3日、長いものでも2週間という信じ難い短期間で。
局員の犠牲も決して少なくはなかったが、それを補って余りある『戦果』を叩き出したのである。

世論が挙って地上本部の変貌を取り沙汰する中、『海』は焦燥を強めていた。
一連の状況を同時に打破するだけの戦力を『陸』が秘匿していたのか。
それらの戦力を見落としていた失態、その責任は誰にあるのか。
元より各管理世界政府より友好的とは云い難い視線を向けられている『海』の事、それが今回の『陸』の活躍によって更に微妙な立場へと追い遣られるのではないか。
彼等の懸念は尽きなかった。

そんな本局の警戒を余所に『陸』の驀進は止まる所を知らず、結果として僅か半年の間に41の世界を完全平定するに至る。
その功績により発言権を増す地上本部とは裏腹に、特にこれといって目ぼしい成果を上げていない本局次元航行部隊に対する民衆の信頼は軒並み低下。
遂には多数の諜報員が『陸』へと送り込まれるものの、AAAランク以上の陸士は僅かに17名、裏に関しては特に情報は無いといった体たらくであった。

そして、新暦80年2月14日。
地上本部は各管理世界へと、人員の不足を大々的にアピール。
魔力因子保有者の絶対的少数と一定以下の文明レベルの2つを前提条件に、一部管理世界の統治を外部委託(アウトソージング)する事を発表した。
統治を請け負う組織とは、第97管理外世界に酷似した歴史を持つ、管理局統治下へと加わって間もないとある世界に存在する多国籍企業。

その名を『マンテル』社。
『トルーパー』と呼ばれる強化兵にて構成された私設軍隊を持つ彼等は、その世界『第208管理世界』に於ける政府側軍事活動のほぼ全てを請け負う巨大傭兵機構でもあった。
その全貌は謎に包まれてはいるものの、異常なまでの統率を誇る魔導師の大部隊と独自の次元航行部隊を有し、管理世界との接触前には周辺世界を実質的に統治下に置いていた程であるという。

そして何といっても、彼等を次元世界でも有数の屈強な戦士たらしめている、とある薬品。
五感を含む肉体的な能力を限界まで高め、果てはリンカーコアによる魔力素吸収速度すら劇的に増大させる、人の英知が生みし神の力。
究極のバイオ・ケミカル『ネクター』。
これこそが『陸』の魔導師達を勇士へと変えた、奇跡の薬剤であった。

『海』の反対意見を封じるかの様に、展開した各世界の情勢を急速に収めゆくマンテル社。
時には『陸』の部隊と共に反動勢力の鎮圧に当たり、その悉くを短期間の内に制圧してゆく、特殊素材のボディーアーマーと黄色のフルフェイス・ヘルメット、そして銃型デバイスを手にした軍隊。
彼等と陸士部隊の背面には一様に、奇跡の薬剤が満たされたバックパック『ネクターシステム』が、金色の光を放っていた。

同年8月7日。
地上本部とマンテル社は相次ぐ反動勢力の武装蜂起に関し、とある反管理局巨大武装勢力の暗躍を察知したと発表。
『プロミスハンド』。
司令官『スキンコート・メリノ』指揮の下、各管理世界で大規模テロリズムを引き起こし、公然と質量兵器を用いる凶悪犯罪者の集団。
第208管理外世界、地球でいう南米大陸に拠点を置くその組織を壊滅する為に、『陸』とマンテル社は大規模合同戦力を投入した。
半ば状況に取り残される形となった『海』は、世論の過半数が『陸』とマンテル社を支持する中、状況に抗う訳にもいかず済し崩し的に戦力を投入、ネクターシステムの庇護の下、プロミスハンド壊滅に向けて共同戦線を展開する事となる。


14 :LYRICAL : HAZE:2008/06/20(金) 21:02:22 ID:lunZ8Vtg
そんな中、彼女は『海』からの指令を受け、数人の執務官と共に第208管理外世界へと派遣された。
彼女『フェイト・T・ハラオウン』を含む彼等に課せられた任務は2つ。
マンテル社の技術の結晶、『陸』の劇的な変貌の要因たるネクター・システムの情報入手。
そして『陸』及びマンテル社に先んじての『スキンコート・メリノ』逮捕。

『海』の思惑を胸に第208管理外世界の戦場、南米ボア地区へと降り立った彼女は、其処で先んじて派遣されていた懐かしい顔触れとの再会、そして1人の『トルーパー』との出会いを果たす。
『ショーン・カーペンター』軍曹。
マンテル社地上空母『クイーン』艦内で、2人は初の邂逅を果たす。

誰も、想像だにしなかった。
彼等の出会いが、管理世界に存在する打倒すべき概念・・・所謂『悪』ではなく、その対極、『善』なる概念を破壊する事となるなど。



結果的に、既存の全ての『正義』を否定する事となる、崩壊の序曲であった事を予見する者は、誰一人として存在しなかったのだ。



地上空母『クイーン』甲板で、フェイトは親友達、そして嘗ての部下達と再会を果たす。

「フェイトちゃん、久し振り!」
「おー、来たなフェイトちゃん!」
「なのは! はやて!」

「フェイトさん!」
「こっちです、フェイトさん!」
「エリオ! キャロ! 2人ともどうして!?」
「人手不足という事で、急遽駆り出されたんです。僕もキャロもそれを承諾して・・・」

因縁の出会い。

「デュバルだ。モーガン・デュバル軍曹」
「フェイト・T・ハラオウン。時空管理局執務官です」
「知ってるよ。あの坊主とお嬢ちゃんの親代わりらしいな。ネクター・システムには慣れたか?」
「いえ、あまり」
「そうかい」

陽気なトルーパー達。

「こっちがウォッチストラップ、向こうがぺシー、後ろの奴がティアーだ」
「始めましてぇ、執務官!」
「こっちも始めましてだ、ハラオウン執務官」
「ティアーです、執務官殿」
「・・・フェイトで結構ですよ?」

常時、遠隔操作にて投与されるネクター。

『ネクターを投与します』

「・・・ッ! カ、ハッ・・・!」
「ッッアァァーッ! 相変わらずキッツイな、コイツはァ!」
「インスタントコーヒーの一気飲みよりキクぜ!」

ハイライトで浮かび上がる人間の影、研ぎ澄まされる集中力、膨れ上がる筋力、増大する魔力。

「プラズマランサー、ファイア!」
「どや、フェイトちゃん? ネクターの効果は」
「・・・凄い」


15 :LYRICAL : HAZE:2008/06/20(金) 21:03:26 ID:lunZ8Vtg
撃墜された輸送機パイロットが今際の際に残した、不可解な言葉。

「・・・パイロットになる前・・・何、してたと思う・・・?」
「後で聞くよ。大丈夫、直に救援が・・・」
「・・・ボクサー、だよ」

対立。

「パイロットの生死は・・・」
「シェーン、ハラオウン。お前ら、恋人は居るか?」
「・・・何ですって?」
「お前らが何かを想う時、それは『感情』に基づく不合理な行動となって現れる。『感情』なんてものは脳内で起こる化学反応と電気信号から生まれるものでしかない。
いいか、俺は生きて帰りたいんだ。お前らも含めて仲間全員でクイーンに戻って、皆で感謝祭にターキーを食いたいんだよ。下らない『感情』に振り回されれば皆、死ぬ事になる。それが嫌なら優先順位を付ける事だ」
「優先順位だって?」
「あのパイロットの生死は俺にとって優先順位が低かった。それだけだ」

行方の分からないプロミスハンド捕虜。

「はやて、捕虜の事だけど・・・」
「んー? 何や?」
「・・・戦場で無力化した後、彼等はどうなっているの? 陸士かマンテル兵が確保しているんだろうけど、何処へ移送されているの?」
「さあ・・・」
「さあ、って・・・」
「んー、良いやん、別に。マンテル社の方で管理してるみたいやし」
「みたいって・・・そもそも、はやてはどうして此処へ来たの!?」
「さあ・・・何やったかなぁ・・・」

『ネクターを投与します』

「って、またや! かーっ、キクなーこのネクターっちゅうんは!」

幻覚。

「・・・ヒッ!?」
「どうしたの、フェイトちゃん!?」
「フェイトさん!?」
「どう、って・・・2人とも見えないの!? この死体が!」
「死体・・・?」
「其処にも・・・其処にも・・・あそこにも、此処にも! 死体だらけじゃない!」
「・・・フェイトさん?」
「疲れてるんだね、フェイトちゃん。クイーンに戻って今日は休もう、ね?」
「ち、違う・・・疲れてなんか・・・なのは、エリオ!?」


16 :LYRICAL : HAZE:2008/06/20(金) 21:04:29 ID:lunZ8Vtg
幻聴。

「嫌・・・」
『嫌だぁぁぁぁッ! 死にたくない! 死にたくないィィィィッ!』
「嫌・・・嫌・・・」
『ヒィッ、イヒ・・・ヒィィッ、ィヒィィィィギイイイィィィイィィッッ!?』
「もうやめて・・・!」
『痛いぃぃッ! 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いィィィィィィッッッ!』
「嫌ぁ・・・!」

「フェイトさん、今日も何か変ですね・・・」
「うーん・・・でも、きっと大丈夫だよ。フェイトちゃんは強いから。キャロも良く知ってるでしょ?」
「はい」
「でもいざとなったら、私たちが支えてやらんとな」

『ネクターを投与します』

「ッ・・・て、キタぁ・・・!」
「相変わらず凄いなぁ、ネクターは・・・」
「あ、フェイトちゃんも治ったみたい」
「ネクター・システムに異常でもあるんでしょうか・・・?」

浮き彫りになる異常性。

「スキンコートが潜むとすればこっちだ」
「道を知ってるんですか?」
「そりゃそうさ! 前に一度来たんだからな」
「ウォッチストラップ、ペシー、説明してやれ」

「前に俺達が来た時、ヤツら丸腰だったんだ!」
「丸腰・・・降伏したんですか、彼等は?」
「違うぜ、執務官殿」

「丸腰ってのは『銃』に手が掛かってない状態の事だ」
「つまり」
「『銃』に手を伸ばす前に」

『ぶっ殺せ!』


17 :LYRICAL : HAZE:2008/06/20(金) 21:05:33 ID:lunZ8Vtg
プロミスハンド司令官、『スキンコート・メリノ』。

「こちらショーン、スキンコートを発見した」
「動かないで下さい! メリノ、貴方を逮捕します!」

「・・・私がスキンコートと呼ばれる由縁を?」
「・・・捕虜の生皮を剥ぎ、コートとして羽織ったと」
「宜しい、ではお嬢さん。君から見て、私はそんな大それた事のできる男に見えるかね?」
「・・・」
「因みに今着ているこれは綿100%だがね」

フェイトとシェーン、2人の目前で繰り広げられる狂気の行い。

「テメエは俺達のネクターを奪った、分かるな? 代金を支払って貰わなきゃあな! おい、何が相応だと思う?」
「そうっスね・・・コイツの『指』なんてどうスか?」
「イイね!」

「止めて・・・止めなさい! なのは、彼等を止めて!」
「おい、止めろデュバル! ペシー、ウォッチストラップ! 止めるんだ! 何ボサッと見てる、あんたらも止めないか!」
「大袈裟だよ、フェイトちゃん」
「そうそう、そんなんじゃ将来禿てまうで?」
「フェイトさん、落ち着いて。ちょっとした悪ふざけですよ」

「狂ってる・・・何もかも!」

罵倒。

「とっととクイーンに戻ろうぜ! このクソ野朗もそうだが、腰抜けどもを下ろさなきゃあな!」
「腰抜け!」
「そうだ、この腰抜けども!」
「まあまあ。フェイトちゃんも、カーペンター軍曹もちょっと疲れてるだけだよ」
「そやそや。本来のフェイトちゃんはこんなもんやないで?」
「フェイトさん、本当に大丈夫ですか?」
「関係ないね! コイツらみたいなのが戦ってる最中に平和主義者になるんだ! コイツらは『草食動物』さ! 俺達『肉食動物』に食われるだけのエサだ!」

「しかし軍曹! 代金として『人差し指』は貰いましたが・・・不足じゃないっスかね?」
「そうか? じゃあ何が良い?」
「『手首』くらいはいっちゃってもイイんじゃないっスか?」
「そうか! じゃあさっそく取り立てようじゃねえか!」

「そこまでだ」
「動かないで」

「・・・ああ? 何だよ、そんなモン抜きやがって。俺達を撃つつもりか、ええ?」
「フェイトちゃん、なんでバルディッシュを構えるのかな・・・危ないよ、ヘリの中でそんなもの構えちゃあ・・・」
「フェイトさん、どうして?」
「あっはっは! フェイトちゃんも冗談が過ぎるなぁ・・・流石に、笑えへんよ・・・?」

撃墜、そして逃走。

「聴こえるか・・・司令部」
「駄目・・・こっちからは通じてないみたい」

『司令部より全部隊。ショーン・カーペンター軍曹及びフェイト・T・ハラオウン執務官はコード『HAZE』と認定された。私情を捨てて抹殺せよ』

「・・・何だって?」


18 :LYRICAL : HAZE:2008/06/20(金) 21:06:37 ID:lunZ8Vtg
プロミスハンド、そしてメリノより語られる真実。

「これがマンテルの『銃』だ」
「嘘・・・」
「さて、これがデバイスに見えるかね?」
「質量兵器・・・!」

「マンテルと管理局が来るまで、此処には軍隊も魔法も存在しなかった。彼等は妊婦の腹を裂き、赤ん坊の唇を噛み千切り半身を火にくべ、逃げ惑う子供たちをバギーで轢き殺し、祈る老人たちを魔法で消し飛ばした」
「魔法が、無かった?」
「魔力に頼らずとも、次元進出は可能なのだよ、お嬢さん。それがマンテル社ほどの技術力を誇る大企業なら尚更だ」

「ネクターは兵士にとって都合の悪いもの、その全てを五感より『消し去る』。兵士の精神にストレスを与えるもの、全てを」
「・・・具体的には?」
「血、死体、悲鳴、腐臭・・・兵の精神を蝕むあらゆるものを、だ。魔導師に対してはマンテル兵の持つ質量兵器、そして知らぬ間に解除された『非殺傷設定』の情報もね」
「な・・・!」
「君達は其処から半歩ほど抜け出していた。ネクターにより検閲された『仮想』ではなく、『現実』を目にしていたのだ」
「じゃあ・・・あの死体の山は・・・悲鳴は・・・!」
「・・・それこそが『現実』だよ」

ネクターにより引き裂かれた絆。

「どうして裏切ったんですか! どうして、どうしてエリオ君を死なせたんですか、フェイトさん!」
「キャロ、違うの! エリオは死んでなんかいない、プロミスハンドに保護されているの!」
「・・・そうですか、スキンコートですね? スキンコートとその男に、騙されているんですね?」
「ち、違うの・・・お願い、信じてキャロ!」
「良く見ればその人、質量兵器を持ってますよね・・・マンテルのトルーパーのクセに! 『草食動物』如きがフェイトさんを誑かすなんて!」
「止めろ! ネクター・システムを外すんだ!」
「焼き殺しちゃええええぇぇェェェッ! フリードォォォォォォォッ!」

狂える世界。

「この戦争が永遠に続くといいな!」
「最強のワルに与えられる賞は無いのか? あれば俺の物だ!」
「あははははは! バリアジャケットも無いのに飛び出すなんて! 仲間の為かぁ、馬鹿みたい! あはははは!」
「人生最良の時だ!」
「簡単すぎて話にならないぜェェェェッ!」

「味方が死んでるのに・・・なんで・・・?」
「・・・死体が見えないんだ。昔の俺達みたいに」

座礁したコンテナ船に秘められた真実。

「臭うな・・・」
「死の臭いがする」

「ねえ、あれ・・・」
「・・・血、だな」
「これ・・・腐臭?」

「・・・お待ちしていました、カーペンター軍曹・・・ハラオウン執務官」
「ティアー? お前、ティアーか!? 皆、撃つな! 知り合いだ!」


19 :LYRICAL : HAZE:2008/06/20(金) 21:07:41 ID:lunZ8Vtg
嘗ての仲間より語られる真実。

「・・・ヒッ!?」
「これは・・・!」

「・・・死体ですよ。そっちがコート軍曹、それはランプトン下士官・・・上の箱に詰め込まれているのが、私の最初の訓練教官です」
「嘘だろ・・・!」
「現実ですよ。因みに向こうの5つのコンテナのどれかには、クイーンの食堂で友人になった陸士が4人ほど押し込められている筈です・・・ええ、そうです。此処にあるコンテナ全て、マンテル兵と管理局員の死体で一杯です・・・因みに、どの死体にも銃創は1つもありません」

「どう、して・・・」
「どうして? 決まってるじゃないですか、『ネクター』ですよ。撃ち殺されたんじゃないのなら、それしか考えられない。向精神薬、抗うつ剤、何とでも言えるが実際はそのどちらとも違う。俺達の為に『ネクター』があるんじゃない。『ネクター』の為に俺達が居るんだ」
「何を言っている? どういう事なんだ!?」
「マンテル兵と管理局員・・・両者に共通するのは『ネクター』の恩恵を受けている事です。誰かが死体を此処に隠し、『ネクター』への疑問を持たぬ様に兵達を管理している・・・自信を持って戦える様に」

「黒いアーマーのマンテル兵を見ましたか? あれは非合法活動の時のみに派遣される特殊部隊、ブラックオプスです。奴等が普段、何をしているかご存知ですか? 焼いているんですよ、植物をね」
「植物?」
「『ネクター』の原料です。他企業が『ネクター』を作成できないように・・・俺達下っ端が命懸けで戦っている間に、マンテルは製薬市場を独占しようと動いていたんです。しかも市場を広げる、唯それだけの為に管理局と結託して」
「そんな・・・!」
「地上本部が統治をマンテルに外部委託した世界・・・知ってますか? その半数には、『ネクター』の原料となる植物が群生しているんです。『陸』は絶対的な戦力を齎す『ネクター』の優先的供給を望み、マンテルはその市場独占を狙った。双方の利益が一致したんです」

「全ては金の為・・・金の為だ! 畜生! 金なんぞクソ喰らえだ! プロミスハンドが必死になるのも当然だ! 俺達は此処に居る権利すら無いんだからな!」
「待ってくれ・・・『ネクター』に毒性があるなら、何故俺達は生きているんだ?」
「・・・明日、死ぬかもしれない」
「・・・!」

「初めて会った日に・・・貴方達のネクター・システムを弄りました。ネクターの供給量を1つ2つ分減らした。ほんの少し、現実に近付けたんです。『ネクター』の見せる都合の良い夢から、ほんの少しだけ目覚めさせた。そして貴方達は、私の狙い通りに此処に来た」
「じゃあ・・・私達が、真実を知ったのは・・・!」
「単なる確率論ですよ。カーペンター軍曹、ハラオウン執務官。貴方達は私に最も近い位置で、私に背を向けていた。唯それだけの事です」

狂気の蹂躙。

「やめてええぇぇぇぇッ!」
「お願いだ・・・やめろ・・・やめてくれ・・・俺達は民間人だ・・・銃なんか持っていない・・・それは女房と赤ん坊なんだ・・・やめ・・・ヒ、が・・・が、ゲッ・・・」
「この薄汚いゲリラめ! 魔力も無いくせにギャアギャア喚くな!」
「嫌ぁッ! あなた、あなたぁッ!」
「うるっせぇんだよこのクソアマぁ! ビービー泣きやがってうるせえんだテメエのガキがよォ! 親子仲良く寝てやがれェ!」
「ああああああああぁぁぁああああッッ!?」

「どうして・・・どうして、こんな・・・どうして・・・!」
「戦わないのか?」
「殺せない・・・殺せないよ・・・!」
「君には『非殺傷設定』があるだろう」
「・・・!」
「生憎、俺達の銃にはそんなものは無いからな。早くしないとプロミスハンドもマンテル兵も皆、死ぬぞ?」


20 :LYRICAL : HAZE:2008/06/20(金) 21:08:48 ID:lunZ8Vtg
最悪の邂逅。

「皆・・・どうして」
「どうして、ってのはこっちの台詞やで、フェイトちゃん?」
「・・・なんで裏切ったのかな、フェイトちゃん?」

「このバカが・・・勝ち目なんぞ無いってのに、何でこんな事しやがった」
「ヴィータ・・・」
「悪いが、これも貴様自身の招いた結末だ。観念するのだな」
「ザフィーラ・・・」
「・・・残念ね」
「シャマル・・・」
「最早、語る言葉なぞ無い。来い、テスタロッサ」
「シグナム・・・」

「見損ないました、ハラオウン執務官」
「ティアナ・・・」
「キャロを傷付けたそうですね。それでも保護者ですか、フェイトさん」
「スバル・・・」
「大丈夫です、一瞬で済ませますから・・・痛みすら、感じる暇も無い程にね」
「ギンガ・・・」

「フェイトさん!」
「ッ・・・エリオ!?」
「此処は任せて! 行って下さい、早く!」
「そんな、無茶だよ!」
「良い物があるんです! 僕は大丈夫ですから、早く!」
「エリオ・・・!」
「良い息子さんじゃないか、お言葉に甘えよう。さ、早く」

「エリオ・・・? そう、あんたも裏切るのね」
「駄目じゃない、エリオ・・・フェイトちゃんは間違ってるんだよ? 貴方が諫めないでどうするの・・・ねえ、私の言ってる事、何処かおかしい? ・・・少し、頭冷やそうか・・・」
「しゃあないなぁ・・・エリオ、腕の一本は覚悟しいや?」

「まともに戦り合うつもりなんかありませんよ。僕だってバカじゃない」
「ほう・・・では、どうするつもりだ?」
「・・・こうします」
「ッ! あかん、散開!」

「高濃度の『ネクター』です・・・皆さんには悪いですけど・・・『地獄』を、見て貰いますよッ!」


21 :LYRICAL : HAZE:2008/06/20(金) 21:09:52 ID:lunZ8Vtg
そして、『夢』は醒める。

『ネクター・システムを破壊したんだな!』
「何故分かるんだ?」
『マンテル兵と管理局員の様子がおかしくなった。一目瞭然だよ』

「俺は・・・俺は、何て事を・・・俺は・・・」
「おい、しっかりしろ!」
「・・・執務官? 私・・・わたしぃ・・・」
「大丈夫、何も怖がる必要なんて無い! 直に落ち着くから・・・」
「俺・・・赤ん坊を火に・・・投げ込んで・・・!」
「・・・おい、何をするつもりだ? 止めろ!」

「お、おお、俺オオオオ俺俺おおオレ悪い事悪い悪い事ここ悪い事オオオオォォオオォオォ!?」
「止せ、銃を置け・・・ッ!?」
「・・・大尉? 大尉、血が! 血が一杯! 大尉、しっかりして下さい、大尉!」
「おい、正気に戻れ! もう死んでる、頭を撃ち抜いてるんだぞ!?」
「大尉!大尉!大尉!大尉!大尉!大尉!大尉!大尉!大尉!大尉!大尉大尉大尉大尉大尉大尉大尉大尉大尉大尉大尉大尉大尉大尉ィッ!」
「・・・ッ!」
「あ・・・うああアアアァああああぁぁァァッ!?」

「お願い、落ち着いて! もう敵は居ないの、戦いは終わったんだよ!」
「嫌あぁああああぁぁぁぁあああぁッ! 死なせてぇぇえええェェええぇェェッ!?」
「やめ・・・!」
「いぎ・・・ひぎうぅうぅう・・・ッ!」
「そんな・・・そんな!」
「・・・お母さん・・・ごめんなさい」

「アハハはぁあはハハァはははハハァァ!」
「嫌だよぅ・・・帰りたい・・・家に帰りたいよぅ・・・」
「血が・・・血が一杯・・・何で? 私、どうしてこんな事したの? ねえ、どうして・・・」
「ママぁ・・・ママぁぁぁぁ・・・」
「死ね死ね死ね死ねシネシネシねシネ死ねしねしねシネ死ね」
「えへへへへェ・・・スゴイや、みんな死んじゃうよぉ・・・ほらぁ・・・引き金引いてぇ・・・バァーッってするだけでぇ・・・!」

「・・・なに、これ・・・何なの・・・?」
「・・・耐えられなかったんだ。殺戮の記憶に」


22 :LYRICAL : HAZE:2008/06/20(金) 21:12:22 ID:lunZ8Vtg
因縁、そして親友との決着は『クイーン』にて。

「メリノの為に!」
「随分と大勢殺してきたな、マンテル、そして管理局! 今日はお前達が死ぬ番だ!」
「プロミスハンド!」
「報いを受けろ!」

「止めて・・・撃たないで! 彼等は戦意を喪失してるんだよ!? 殺す必要なんて無い!」
『いいか、ハラオウン執務官! 殺人者は夜が明けても殺人者なんだ! これも当然の報い、微々たる犠牲なのだ!』
「記憶に怯えて座り込んで、膝を抱えながら子供の様に泣き続ける人達を片端から殺すのが正義なの!?」
『そうとも! 彼等は殺人者だ! その罪は彼等自身の命を以って償う他ない!』
「・・・ッ!」
『恐れるな、ハラオウン執務官! 感情に振り回されてはいけない! 感情とは脳内の化学反応と電気信号が起こす動物的本能に過ぎない! それをコントロールした時にこそ『勇気』が生まれるのだ!』
「それは・・・!」
『急ぐんだ! 今、ミサイルがクイーンに向かっている! 一刻も早くブリッジを制圧して脱出しろ!』

「デュバル・・・!」
「このクソッタレの畜生どもが! お前らみたいな自分の感情すらコントロールできない奴等が居るからこんな事になっちまったんだ!」
「なのは!?」 
「・・・みんな、みんな裏切っちゃった・・・ねえ、フェイトちゃん・・・フェイトちゃんは平気なの? 私達、知らない間に大勢の人を殺しちゃってたんだよ?
みんな、プロミスハンドに寝返っちゃった・・・こんなに殺しておいて、今更だよね」

「もう止めろ、デュバル、高町一尉! ネクター・システムは停止した! もう馬鹿げた戦いは終わりだ!」
「どの口でそれを言いやがる! 俺の仲間を殺しやがって! 俺はお前達も含めて、皆で生き残りたかっただけなのに! お前達を守ろうとしたのに!
大義の為に戦う訓練をしてきたのに突然、世界は間違っている、自分達が正しいなんて言われて信じられると思うか!?」
「プロミスハンドは私達を救ってくれた! エリオや皆も! マンテルと管理局は、そんな彼等を虐殺したんだよ!?」
「お前達はスキンコートの本当の狙いを分かっていない! 奴が聖人君子に見えるか!? いいや! あのクサレ野朗はお前達を利用して俺達を皆殺しにしようとしてるだけだ! 『ネクター』を奪う為にな!」
「スキンコートなんて居ない! それはマンテルと管理局が創り上げた虚構だ!」

「100人中98人が正しいと言えば、統計上『普通』であるといえる。残る2人がお前らだ。お前達は『動物』だ。脳内の化学反応と電気信号、アドレナリンとセロトニンに良い様に踊らされる『猿』なんだよ!」
「知ってる、フェイトちゃん? はやてちゃんも、ティアナも・・・スバルもギンガもキャロも、ヴォルケンリッターの皆でさえ、記憶のフラッシュバックに精神を蝕まれてるんだよ・・・?
はやてちゃんとキャロ、スバルにヴィータちゃんは特に酷い・・・多分、もう二度と正常な精神には戻れない」
「・・・嘘」
「嘘じゃないよ・・・はやてちゃんは自分の爪を歯で剥ぎ取っては肉を噛んでいるし、キャロは血が滲むまで腕を抱え込んで、ずっと何か呟き続けてる・・・
スバルは泣き喚きながら体が壊れるまで暴れまわった後に、両脚をプロミスハンドに撃たれて意識を奪われた。
ヴィータちゃんは瞬きもしないで自分の手を見詰め続けてる・・・眼球が乾燥して、瞼の内から血が溢れ出ても、ずっとね・・・」
「・・・嘘だ!」
「もう『ネクター』に頼るしかないんだよ・・・『ネクター』は全てを忘れさせてくれる・・・たとえそれで死ぬ事になっても、私は皆に『普通』の人として生きて欲しい・・・だから!」
「・・・なのはッ!」

「邪魔するなら・・・死んで貰うよ・・・フェイトちゃん、カーペンター軍曹!」
「・・・負けない・・・なのは! 私は、みんなを取り戻す!」
「俺達は2人、お前達も2人だ。この場合、統計的にはどっちが『普通』なんだ、デュバル?」
「・・・生き残った方だろうな」

23 :LYRICAL : HAZE:2008/06/20(金) 21:13:37 ID:lunZ8Vtg
そして、憐れなトルーパーは地に伏せ、エースオブエースもまた永遠に翼を失う。

「ヵ・・・ァ・・・シェ・・・シェーン・・・」
「・・・何だ?」
「・・・ママには・・・言わないで・・・くれ・・・」
「・・・分かった」

「なのは、しっかりして!」
「本当は・・・分かってた・・・自分が、何をしたのか・・・分かった時に・・・私は、飛ぶ権利を・・・無くして、たんだね・・・」
「なのは!」
「あ・・・あはは・・・『ネクター』の、過剰・・・摂取、だよ・・・フェイトちゃんの・・・所為じゃ、ない・・・」
「嫌・・・イヤ!」
「・・・フェイトちゃん・・・ごめんね・・・あの子を・・・ヴィヴィオを、お願い・・・フェイト・・・マ・・・マ・・・」
「なのはぁ・・・ッ!」
「・・・おや・・・すみ・・・なさい・・・」
「嫌あああぁァァァッ!?」



弾道ミサイルの着弾により、爆発、崩壊する『クイーン』。
プロミスハンドのヘリ内部よりそれを見詰めるシェーンとフェイトの目には、虚ろな光が点っているだけだ。
マンテルと管理局は、確かに正しいとはいえなかった。
寧ろ非人道的な行いを為してきた事は明らかだ。

だが、果たして自分達の選択は正しかったのか。
数百人のマンテル兵、管理局員を直接その手に掛けたシェーン。
ネクター・システムの破壊により、間接的に数万の人間を自殺、或いは精神崩壊へと追い遣ったと自責するフェイト。
無論、システムを破壊したのはシェーンも同様であるし、延いてはプロミスハンド全体による作戦行動であったといえる。
しかし、フェイトは自身を責め続けた。
最愛の家族、そして親友や嘗ての部下たちが精神を病み、今この瞬間も絶望と苦痛の最中にて溺死せんとしているというのに、自らの正義と勝利に酔える程、彼女は人間性を捨てている訳ではない。

「・・・全てが明らかになれば」

唐突に、シェーンが口を開いた。
虚ろな目を彼へと向け、フェイトは言葉の続きを待つ。

「マンテルは終わりだ。『陸』も、君に『ネクター』の調査を指示した『海』も・・・唯では済まないだろう。最悪、管理世界の秩序が崩壊するかもしれない。だが『ネクター』は消える。それで良いじゃないか」

その言葉に、フェイトの瞳が徐々に生気を取り戻してゆく。
それは、希望の光だ。

そうだ、何を絶望している。
はやてやキャロがもう元には戻らないなどと、誰が決めた。
もう、『ネクター』に心身を蝕まれる事は無いのだ。
強引であろうと何であろうと、彼女達を現実へと引き戻すのが私の役目ではないのか。
此処で全てを諦めたら、ヴィヴィオを託して逝ったなのはに顔向けできないではないか。

「2人とも、良くやってくれた!」

確固たる意思を取り戻したフェイトとシェーンの前に、操縦席よりメリノが姿を現す。
デュバルに切断された人差し指の痛みも気にならないのか、興奮に顔を上気させて2人へと熱く語り掛けた。

「やあ、メリノ」
「・・・これで目的は達成しましたね、メリノ。マンテル社は兵力の一端を失い、貴方達が流す情報によって『ネクター』の真実が知れ渡れば、組織全体が崩壊するのも時間の問題でしょう」
「ああ、そうだ! 我々は勝利した! マンテルも管理局も、これで終わりだ!」
「なぁ、メリノ」

突然、シェーンは剣呑な声色でメリノへと語り掛ける。
フェイトはその声に違和感を覚えたが、メリノは気付かないかの様に声を返した。


24 :LYRICAL : HAZE:2008/06/20(金) 21:15:22 ID:lunZ8Vtg
「何かね、英雄! 皆、君達を待っている! 英雄の凱旋だ!」
「俺達がマンテルを離れる直前・・・あんたらは撃墜したマンテルの輸送機から、『ネクター』を運び出していたな。あれを、どうした?」
「ああ、そんな事か」

そしてメリノは、誇らしげに語りだす。
フェイト、そしてシェーンの心を裏切る、最悪の思想を。



「兵士達に健全な精神を保障するというのならば、『ネクター』も捨てたものではないと思わんかね? マンテルや管理局は『動物』だった。彼等は『ネクター』という宝を生かし切れない『猿』だったのだ。
兵士達の意識を意図的に封じ、現実を見せなかった結果がこれだよ。私はもっと上手く『ネクター』を扱える。理想的な国家建設の為にね。そうだ、私なら自由意志も残した上でネクターを投与するよ」



銃声が1つ、ヘリの爆音に紛れて消えた。



3年後、指導者たる『ガブリエル・メリノ』を失ったプロミスハンドは、新たに2人の指導者の下、現体制打倒の為にマンテル社、そして管理局を相手取り大規模次元間戦争を引き起こす事となる。
管理局崩壊の序曲を奏でる事となるこの闘争の裏には、『ネクター』と呼称される薬剤と、それを巡る管理局とマンテル社、プロミスハンドの3組織間に於ける暗闘が絡んでいたという情報もあるが、全ての組織が内部情報と共に崩壊した今、その真相を知る術は残されていない。

時に、新暦117年。
管理局体制の崩壊と共に、次元世界は再び混沌の時代へと踏み入った。
嘗て管理外世界と呼ばれた、魔力を有しない数多の次元世界が覇権国家として台頭してゆく中、魔法の存在は徐々に忘れ去られ、質量兵器と科学技術が次元世界を埋め尽くす事となる。



誰も、知る事は無い。
次元世界を支配していた秩序、正義を打ち倒した者達が、嘗てトルーパーと呼ばれた1人の兵士と、その同志として戦場を駆け抜けた閃光の魔導師によって率いられていた事など。
彼等と、嘗て機動六課と呼ばれていた魔導師達の集団。
そして数多の質量兵器によって武装した強大な軍隊によって、管理世界の秩序が打倒された事実を、知る者は居ない。
プロミスハンドと呼ばれた一大武装勢力、その頂点に君臨した2人の人物の名。



『ショーン・カーペンター』
『フェイト・T・ハラオウン』



自らの目的を果たした彼等。
その末路を知る者は、最早誰1人として存在しない。


25 :LYRICAL : HAZE ◆xDpYJl.2AA :2008/06/20(金) 21:18:51 ID:lunZ8Vtg
投降終了です
クロス元はPS3のFPS『HAZE』です
3時間ほどで書いた短編の為、色々と荒いですが、ゲームのストーリーとリリカル世界を掛け合わせてみました
地上本部強化案で『ネクター』投与ってどうかな、と考えたのが発端です


そしてR-TYPEの方ですが、近日中には投下できると思います
暫く入院していたので、これが復帰作となりますが、なるべく早く本編を投下できるよう心掛けますので、どうかもう暫くお待ち下さい



26 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/20(金) 21:22:29 ID:/CI0RRew
GJ!!です。
まさに悪魔の薬wはやてやヴォルケンズなんか洒落にならないだろうなぁ。
贖罪のために管理局で頑張ってたのに、最後にやった事が虐殺なんだもん。

27 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/20(金) 21:33:17 ID:qKNdSBIj
GJ
検索かけてみましたけどスパイクの新作ですか
薬と聞いてガレリアンズを想像してしまった


28 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/20(金) 21:39:37 ID:B1UUX+TL
なぜかスプリガンを思い出した
あれってソーマだよな?

29 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/20(金) 21:52:33 ID:GjVawceX
乙です
R-TYPE、楽しみに待っていますのでお体に気をつけて頑張って下さい。

30 :×DOD ◆murBO5fUVo :2008/06/20(金) 22:01:13 ID:pT+mAXd0
>>25
投下乙。お大事にです。





シャリオ「スバゲッチュ最新話を22:15くらいからお届けしたいの! 今回はなのなの成分五割増なのっ!」

予約の方は大丈夫でしょうか。

31 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/20(金) 22:01:54 ID:2oPbRaqK
GJ

ネクターが実際にあれば、便利だろうな
『殺人』に対する禁忌は、物心ついてからの洗脳みたいなものだから、
外すのに手間がかかるし、外したら外したで社会不適合になってしまう。
ネクターを上手く使えば、戦争神経症と無縁の優秀な兵士を促成できる




32 :Strikers May Cry:2008/06/20(金) 22:06:00 ID:h+A7ie61
俺は前スレに投下したんで、進路に問題はありませんぜ〜。

33 :スバゲッチュ 第三話 Aパート 0/7 ◆murBO5fUVo :2008/06/20(金) 22:15:27 ID:pT+mAXd0
では開始します。
10KBほどのため前スレだと入りきらないかもしれないので、こちらに。
名前欄のとおり七分割です。

34 :スバゲッチュ 第三話 Aパート 1/7 ◆murBO5fUVo :2008/06/20(金) 22:16:52 ID:pT+mAXd0
 城門はひとりでに開かれた。
 どこの城門かというのは言うまでもなく、訓練スペースに出現した「スバル城」のことである。
中にピポスバルがたくさん潜んでいるらしい敵の本拠地、居城だ。
 その高くそびえる門が今、ティアナの目の前で、まさにおいでませ状態で開ききっていた。

「入ってこい、ってことね……上等じゃない」

 敵から何の音沙汰も説明もないのは恐らく、先ほどそのために出てきたピポスバルを問答無用で
「ゲッチュ!」したからだろう。捕まると分かっていてホイホイ出てくるアホはいないらしい。
 お陰で捕獲数は一人増えたが、転送してしまったため尋問の機会は失われた。城の内部の詳細が
分からないしピポスバルどもの正確な位置も不明だ。ここから先は未知の領域、相手の土俵で戦う
ことになる。
 罠もあるかもしれない。
 しかし望むところだ。チビスバルが被っているピポヘルは本来知恵を与えるアイテムらしいが、
少なくとも知力であのアホどもに負けるはずがない。
 というか負けてたまるか。

「悪いわね。アンタにも、結構苦労させちゃうと思う」

 シャリオが助っ人とやらの迎えに行ってしまったため通信の相手がいなくなり、ティアナは手の
なかにある銃に語りかけた。

『Don't worry.』

 ティアナは不敵な笑みを返した。プログラムとはいえ、頼もしい応えだ。
 クロスミラージュを片方だけ引き抜き、空いた手にゲットアミを握りしめて歩を進める。片手の
仕様、ワンハンドモードへ切り替える機械音声を聞きながら、門の向こうへ足を踏み入れた。

「増援はまだ来ないし、アテにし過ぎちゃいけない。大変と思うけど……百人斬り、いくわよ」

 門を越えると、扉があった。立派な門に劣らぬ巨大な扉だった。ピポスバルらしき拙い落書きや
「←ティア」と書かれた先にある棒人間や、壁から続く赤青黄のカラフルかつカオティックなペイ
ントがなければ、荘厳と言って差し支えないサイズの扉だった。
 それも門と同じように、ティアナの前で開いていた。その先は暗闇で、灯りは無いようだった。

「……迷ったら負け、ね」

 足が止まりかけた刹那、呟いてからティアナは歩みを再開した。臆した感情があったのでなく、
単に暗闇に戸惑いを覚えたのだった。だがそれも束の間で、扉を越えて完全に城の中に入る。中は
外観の巨大さから想像していたが、とてつもなくだだっ広い空間のようだった。入口から淡い光が
射し込んではいるものの、奥には到底届いていないらしかった。

35 :スバゲッチュ 第三話 Aパート 2/7 ◆murBO5fUVo :2008/06/20(金) 22:17:58 ID:pT+mAXd0
 しばらく進むと、その光も途絶えた。暗く広大な空間。
 感触から察するに、足元はコンクリートだろうか。
 そんな分析をしながら、漆黒の闇の中でティアナは立ち止まった。魔法を探知させているクロス
ミラージュが反応しないことから、奇襲の可能性はないと判断したのだ。
 そうして息を吸い、口を開く。

「ほら、来てやったわよ! 暗がりに隠れてないで、さっさと出てきたらどう?」

 次の瞬間、ティアナは目を腕の下に覆い隠した。暗闇に馴れはじめていた目に、唐突に光が突き
刺さったのだ。しかし馴れきってはいなかったのか、視覚はものの十秒程で正常を取り戻した。
 まず足元を確認する。回復した視神経に入ってきたのは、やはりコンクリートの灰色の地面だ。
訓練用のバーチャルステージが使われていない時地面に張られているパネル……とは違うらしい。
あれはもっと光沢がある。

(手の込んだコトを……!)

 おそらく訓練ステージのデータを勝手に弄ったのだろう、とティアナは推測した。城の外観も、
たぶんそうだ。アホスバルのくせに生意気な。
 と思ったら。

「これって…………?」

 完全に復活した視界には、見覚えのある光景が広がっていた。
 コンクリートの支柱が立ち、壁面に青空がのぞく隙間が開いているその場所は、言うなら廃墟と
呼ぶにふさわしい建物だった。しかし、ただの廃墟ではない。
 間違うはずがない。ティアナがスバルとともに挑戦して失敗し、機動六課へのスカウトを受ける
切っ掛けとなった、あの場所だ。
 Bランク昇格をかけた、廃墟で行われたあの試験。その会場がそのままに、ティアナの目の前に
広がっていたのである。

『どう? どう、ティア?』
『あのときといっしょの、そのまんまになってるでしょっ!』

 どこからか声が聞こえるが方向が分からないし、肉声ではなく機械を介した音声になっている。
訓練スペースのシステムを利用しているのだろうとティアナは思った。たしか、放送機能があった
ような気もする。

「……なるほど、そういうことね」

 ティアナは言った。何となく、ピポスバルたちの意図を理解した。
 要するに嫌がらせ。
 あるいは弱点、と言った方がいいだろうか。
 自分が失敗したあの試験。その状況を再現することによって、精神的な動揺を誘おうという魂胆
なのだろう。そうティアナは考えた。

36 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/20(金) 22:19:16 ID:eEydtW7T
支援!

37 :スバゲッチュ 第三話 Aパート 3/7 ◆murBO5fUVo :2008/06/20(金) 22:20:21 ID:pT+mAXd0
 なるほど確かに悪くはない。人間という生き物は自分の失敗と向き合うことが嫌いだ。そして、
それはティアナも例外ではない。
 だが。

「この程度で今のわたしが動揺すると思ったら、大間違いなんだから」

 あの時とは違う。
 強がって、突っ張って、一人で強くなるって思ってた、あの頃とは違うのだ。

『じゃあティア、いくよっ! いくからねっ!』
『ぜんいんみつけてつかまえないと、でれないからねっ! にげちゃだめだからねっ!』
「誰が逃げるっての。このアホスバル!」

 右手に銃を、左手に網を持ち、ティアナは精悍な顔つきでキッと前を見据え、無人の廃墟の上を
歩き出した。





 ただそれはそれとして。
 とりあえずはともかくも。

「さて、ここにお団子があります」
「えっ、おだんご!?」

 柱の影から早速一匹が釣れた。これは思ったより楽かもしれないと思うティアナだった。



 魔法少女リリカルなのはStrikerS外伝
 スバゲッチュ   第三話「疑惑のピポスバル」 Aパート

38 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/20(金) 22:21:25 ID:HcYqrhvN
団子で釣られんなw支援

39 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/20(金) 22:22:19 ID:/KQ1b62K
GJ
これで副作用がなければ(暴走する) 
ネクターはまさしく人間を兵器に変える(殺人への禁忌や身体能力の向上)薬だ。

40 :スバゲッチュ 第三話 Aパート 4/7 ◆murBO5fUVo :2008/06/20(金) 22:22:48 ID:pT+mAXd0



 少し時を遡る。といっても本当に少しだけ、ほんの五分ほど前のことである。
 ティアナがいざスバル城へ乗り込まんとしているその時、シャリオは助っ人としてミッドにやっ
て来るエージェント――ソリッド・スネークを迎えるべく、自室から出てオフィス内の移動を開始
したところだった。
 機動六課管轄の施設内に直接転送、という手段も無いわけではなかったし、タイムロスを避ける
為にもそうしたいのは山々だったが、もし万が一なのはやフェイトに見つかったら一発でアウト。
事情を話すとそのあたりを配慮して、オフィス近くの森で落ち合えるように調整してくれたキャン
ベル大佐には、今後全く頭が上がらないと思う。
 後にしたデバイス開発室も、今度こそ何も漏れたり盗られたりせぬよう万全のセキュリティをか
けた上厳重にドアをロックしてあった。外部から侵入される心配は無用。
 これはティアナのゲットアミから転送された五匹のピポスバルが、開発室内に残っているからと
いうこともある。ただこちらは、一応ロープでイモムシみたいにぐるぐる巻きにしておいたうえ、
デバイス(どういうわけかピポスバルに合わせて小型化していた、マッハキャリバーとリボルバー
ナックル。特にリボルバーナックルについては、クイントがそのあまりの変わりように草葉の陰で
泣いているに違いない)を没収し隠しておいたため、たぶん安全。というか場を離れる以上これを
超える対策は無理、とシャリオはみていた。

「急がないと、なの。ティアナが疲れきっちゃう前にっ、なの!」

 言いながら、目立たず見つからぬよう歩みを速めていく。
 基本を重視し体力をも念頭に置き、ランニングをはじめとした基礎体力や運動能力の強化を取り
入れたなのはの教導を受け続け、日々成長していくティアナの体力を疑う訳ではない。
 でも相手が約百人のチビどもとなるとそうも言ってられない。
 一刻も早く、増援が必要であった。一人頭百人と五十人とでは、やはり負担が段違いである。
 しかし。

「あっ」
「え? ……え、えぇぇっ」

 ここで問題が起きた。
 ピポスバルが脱走したとかティアナが「ゲッチュ!」をサボり始めたとかそういうチャチなこと
では断じてなく、いやそれでも結構困るのだが、問題はもっと直接の窮地として、道すがらやって
きた。
 なのはやフェイトといった最悪の相手ではないが、廊下でばったり出くわしてしまったのである。

「シャーリー!」
(ぎぎっぎぎギンガさん!?)

 どういうわけかオフィスに来ていたギンガが、曲がり角の向こうからひょっこり現れた。手の中
に小包のようなものを持って、ぱたぱた廊下を駆けてくる彼女がいたのである。

41 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/20(金) 22:24:00 ID:C1MF3K8C
支援

42 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/20(金) 22:24:17 ID:XkElOMIs
支援


43 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/20(金) 22:24:27 ID:qKNdSBIj
なんというおバカw支援

44 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/20(金) 22:24:45 ID:/KQ1b62K
スネークネズミに構うな支援

45 :スバゲッチュ 第三話 Aパート 5/7 ◆murBO5fUVo :2008/06/20(金) 22:25:15 ID:pT+mAXd0
「どっどどどっどどどどうしてここにっ」
「出向の話が来てるんだけど、一足早くオフィスを案内してくれることになったの。なのはさんや
 フェイトさんにも挨拶しておきたくて」

 知り合いを見つけたというギンガの様子とは正反対に、シャリオは目も当てられないくらい狼狽
した。だって、これはマズい。大変マズい。
 何を隠そうギンガは、実はスバルの姉なのである。現在妹の身に起きていることが知られたら、
追及されるに決まってる。
 いや確かにそれは然るべき行為であるし、本来ギンガはシャリオが真っ先に現状を知らせるべき
スバルの身内なのだが、そういうことはギンガの口から出た名前によって頭から消えた。
 敵の、ピポスバルの手には例の「はずかしいしゃしん」とやらがあるのだ。頼み込めばギンガは
黙ってくれるかもしれないが、もし万一誰かの地獄耳に入りでもしてみろ。確実に御注進である。
 事件をなのはやフェイトに知られ、そこに手が伸びようものなら、紛うことなくそれは死の罰を
意味するのだ。大袈裟でも何でもなく、主に砲撃的な意味で。

「ところで、スバルがどこにいるか知らない? 買って来てって頼まれてたものがあるんだけど」
「ひぇ!? さ、ささぁ、午後は訓練ないみたいだから、自室で休んでると思います、なのっ!」

 そんなふうに考えまごついているうちに出遅れて、シャリオは「逃げる」という選択肢を失って
しまった。
 そしてこんなときに限って、尋ねられたのはよりによってスバルの居場所である。ツイてないと
しか言いようがない。シャリオは必死に誤魔化しを試みた。

「でも、そう思って行ってみたけど、スバルもティアナもいなくて。きっとあの子のことだから、
 訓練スペースか森で自主トレしてるかもって。どうかな?」
「くくくく訓練スペースにはいないと思います、なの! たぶん森、そう森の中なのっ! いまは
 たぶんスバルも集中してるから、わたしが預かって渡しておきますなのっ!」
「そ、そう? あ、でもそういえば今、森は蜂の巣駆除中で入れないとかなんとか」
(あああ駄目だ喋れば喋るほどボロがボロがっ、ていうか何それ! ハチさんのばかばかばか!!)

 生まれてこの方、これほどテンパったことがあるだろうか。
 生まれてこの方、これほど節足動物を恨んだことがあるだろうか。
 あるわけがない。特にハチの方は。
 しかしとにかく、シャリオは超必死だった。かつてないほど必死だった。
 その気迫の結果か、神が彼女に微笑んだのか。

「じゃ、じゃあ、これ、お願いするね。確かに、今会いに行ったら邪魔になっちゃうだろうし」

 ギンガは口を開くのを止め、なんと手にしていた包みを渡してくれたのだ。
 助かった! 受け取りながらシャリオは思う。これで何とかなった。後は立ち去ってスネークを
呼んでくるだけだ。生き残った!
 が。

「……えっと、シャーリー?」
「ひゃいっ! な、な、何でしょうか、なのっ」
「それで、どうしたの? さっきからその、『なの』って」
「あ」

 いかん。

46 :スバゲッチュ 第三話 Aパート 6/7 ◆murBO5fUVo :2008/06/20(金) 22:26:52 ID:pT+mAXd0
「こっ、こここれはそのっ、えと……い、今の機動六課での流行、最先端のしゃべり方なの!」
「……りゅ、流行?」
「ほほほホントなの、ホントにホントなのっ!」

 口をついて出た言葉。一見すれば大嘘っぽいが、実際嘘八百である。

「そ、そうなんだ……」
「そうなんです、なのっ! 嘘偽りなく超本当なのっ! あまりの愛くるしさにスイーツ(笑)が
 泣いて謝るくらい、オフィス内なのなの口調禁止令が出ちゃうくらいとんでもない代物なのっ!」
「……え? じゃあ今、その喋り方はマズいんじゃ……」
「あ、そ、それはそのあうあうぁぅぁっ」

 隠し通せるかと思った途端に、なかなか素敵な墓穴である。

「でも……確かに、ちょっと可愛い……かも?」
「で、でしょっ、なの! それはもう可愛いって評判なのっ! 何か何ていうかとにかくっ」
「な、なるほど……でも、世の中何が流行るかわからないって言うし。知らなかった……」

 しかしギンガは何とか納得したようで、機動六課メンバー奥深しと頷いてくれている。
 スバルの居所については頭から抜け落ちているようで、シャリオはやっと心の底から安堵した。
今回の事件がバレたら、自分もそうだが間違いなくスバルにも迷惑がかかるだろうし。
 それにもし根掘り葉掘り問われていたら、それを誰かに聞かれていたらと思うとオモシロすぎて
笑えない。まさに寿命が縮まる思いだった。もちろん星光崩壊的な意味で。

「じゃ、じゃあ、私は急ぎますのでこれで、なのっ!」
「あ……ちょ、ちょっと待って」

 待ちたくないです。
 とは言えないので、はやる思いを抑えて踏みとどまる。
 回しかけた首をギンガに向け直すと、スバルに比べて大人っぽい印象の彼女にしてはめずらしく、
もじもじとした仕草でシャリオの方を見つめていた。
 少し待つと、ひとつ深呼吸。
 そうした後で、まるで何かを決心したかのように前を向き言った。

「その、私もどうかな、って思って……な、な、なの」

 シャリオは固まった。

「………………へ?」
「……な、なにもそんなに呆けなくたって……そんなに似合ってないかな……な、の」
「あ、いや、そういうわけじゃ……なの」

 唖然として石化していると、似合っていないと勘違いしたのか顔面を真っ赤にして俯くギンガ。
 流行とか最先端とか、超絶可愛いとかいうのを、どうやら本気にしてしまったらしい。説得され
たとかそういうレベルではなく、どこから見ても完璧に信じきっている。
 いったいなんだ。なんなんだこの流れ。

47 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/20(金) 22:27:33 ID:/KQ1b62K
uma探求クラブ 会長少佐&シギント支援

48 :スバゲッチュ 第三話 Aパート 7/7 ◆murBO5fUVo :2008/06/20(金) 22:28:05 ID:pT+mAXd0
「う。意外と、難しいな……なの。もうちょっと自然に、なの。こ、こうかな、なのっ」

 そうこうしているうちに、「なのなの口調」を頑張ってマスターしようとするギンガ。その様は
なんというか一生懸命で、見ていてどこか微笑ましい。
 シャリオは思った。ギンガさん、なんかめちゃくちゃおもしろい。

「もっとすらすら言うといいの。無意識で言えるように、何度も練習するといいです、なのっ!」
「そ、そっか、なの……ねぇシャーリー、自然に言えるまでどのくらいかかったの?」
「まるまる1ヶ月もかかったの! それはもう超絶凄まじい艱難辛苦の連続でっ」

 いつか悪い男にでもコロっと騙されるんじゃなかろうかと思いながら、つい調子に乗ってしまう
シャリオだった。





「……大佐。確かこの任務、緊急じゃなかったのか?」
『そんな筈は……シャリオ君も、確かに切羽詰っていたんだが……』

 そして放置され、無線でキャンベルに問いかけるスネーク。
 ティアナのもとに増援が届くには、まだ少し時間がかかるようであった。

49 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2008/06/20(金) 22:28:20 ID:9FBe7Re8
しえn「

50 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/20(金) 22:28:42 ID:XkElOMIs
なの支援

51 :スバゲッチュ 後書き ◆murBO5fUVo :2008/06/20(金) 22:29:24 ID:pT+mAXd0
・シャリオ必死、超必死
・ギン姉がnanonano.exeに感染したようです
・スネーク放置プレイ


の三本でした。ギン姉かわいいよギン姉。
では失礼します。支援レスありがとうございました。

52 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/20(金) 22:32:44 ID:HcYqrhvN
GJなの!

53 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/20(金) 22:34:21 ID:XkElOMIs
GJ、いいセンスだ

54 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/20(金) 22:34:23 ID:qKNdSBIj
GJ!
不審者ってレベルじゃない必死さw
あれは感染するものなのかw
スネーク、返事をしろスネーーーークw

と感想も三本にしてみた。

55 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/20(金) 22:38:01 ID:D88IciXT
GJ!
ううぅ、なのなの可愛いよう〜

56 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/20(金) 22:40:32 ID:h+A7ie61
ギンガ可愛いなぁ・・・ってか! なんでそんな口調をわざわざ言うんだwww天然か?
あとシャーリー、スネーク忘れんなwww!!

ともかく、こいつはGJなの!!

57 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/21(土) 00:02:54 ID:0bLaUYY+
>LYRICAL : HAZE
うっ…! ひ、ひでぇ…(戦争モノ映画っぽい表現で)
元ネタは知らないんですけど、そんなことは全く問題にならないくらいショッキングな内容でした。
いや、かなり高レベルな作品なんですけど、この場合レベルの高さが逆に内容のグロテスクさを強烈にしていて、ホント面白かったんですけど、読んだ後しばらく動けなくなりましたね。
この辺、R-TYPEの話と共通してるな、と。
良い意味でエグイ。熱血バトルを王道で行くリリなのでここまでダーク要素を溶け込ませるのはまさに驚異的です。
っていうか、今回の短編で何が怖いって、暴走するなのはやキャロ達ではなく、ネクター打ち込む時のはやてが一番怖いよ…なんていうか日常の中で既に狂気に犯されてるのすごいリアルに伝わってくる…(汗
本当に、すごい面白いんだけど同時にコイツは劇薬だぜぇ。

>スバゲッチュ
そんな暗黒神話の後には、何も考えずにおバカな話でお口直し。っていうか、何この両極端な良作の連続投下w
ついにティアナの戦いが始まった! 相変わらず脅威なのか容易なのか分からん敵勢力のピポスバですがwwなんか前も似たような手でおびき出されてなかった?w
そして、今回一番の見所は合流フラグktkrなスネークを差し置いて、色んな意味で全開だったシャリオとギンガでしょうjk!
『なの』という語尾一つで、ここまでそれぞれのキャラを活かしながら萌えさせてくれるとは…見事と言わざる得ない。
普段からノリのいいシャリオは強制的に『なの』になったせいで四苦八苦する姿が笑いと微笑ましさを誘うし、普段の真面目なキャラの一方で流行(嘘)に頑張って乗ろうとしちゃうギン姉がとても萌えます。お腹一杯です。本当に(ry
やっぱりスバゲッチュはリリなのクロスの新境地じゃね?ww

58 :ネオシャドームーン:2008/06/21(土) 02:10:20 ID:9gs9OJoB
「もしもユーノ君がバットマンだったら」予想図
バットマン/ユーノ・スクライア ・・・夜の世界のミッドチルダを守る謎のヒーロー
その正体は時空管理局所属無限書庫司書長兼ミッドチルダ考古学士会所属考古学者ユーノ・スクライアである。
実は彼は本編では明かされていないが、ある財閥の御曹司であったが両親をジャック(後のジョーカー)という
チンピラに殺害され、以来親戚に引き取られ、考古学を学ぶようになっていた。その後、なのは達と出会い、いろいろあって
ミッドチルダの学者になったが、彼は増えつつあるミッドチルダシティーの凶悪犯罪に対し、昔両親を殺された事を思い出した
事で自分と同じ思いをする人間を出したくない気持ちになり街の平和を守る為、バットウィングというフルフェイスタイプ(顔を隠す)
デバイスや武器を実家の財力で完成させる。以来、バットウィングを装着する事でバットマンになり犯罪者達と戦う様になった。
またなぜモチーフがフェレットではなくコウモリなのかというと彼は幼い頃興味本位で入った洞窟で迷子になり、執事のアルフレッドが
救出にくるまでずっと泣いていた。その時、泣き声に驚いたコウモリの群れが一斉に自分の周りを飛び廻り、その時のコウモリに恐怖を感じたという。
つまりコウモリは彼にとって恐怖の象徴であり、自らが恐怖の象徴であるコウモリになる事で悪人達に自分と言う恐怖を与えるのが目的だそうだ。
その証拠に逮捕された悪人達は法廷で、巨大なお化けコウモリが!とか、あの怖ええコウモリ野郎に襲われたと証言しており、バットマンはミッドチルダの
犯罪者には確かに恐怖の存在になっていた。また一度、時空管理局に同行を求められるが、自分の秘密を守る為逃げたこともある。だがジョーカー死亡後は
時空管理局は彼の功績を評価し自分達の手に負えない犯罪者が現れたらバットシグナルというサインでバットマン(ユーノ)を呼ぶようになった。
ちなみに彼の名台詞で有名なのは「地獄にいくのはかまわないが、先に刑務所に行け!」である。

59 :-THE REQULIMER-:2008/06/21(土) 16:04:02 ID:HCVdF6H5
うっかり新スレ立ってたことに気付かず、前スレに投下しちまったぜ。
とりあえず調子に乗って嘘予告書いてきた。
できれば本編も書きたいが、いかんせんネタがもうちょっと欲しい。

というわけで改めて投下しますぜ。

60 :-THE REQULIMER-:2008/06/21(土) 16:04:50 ID:HCVdF6H5

「シャリオ、状況は?」
「あんまり芳しく無いですね。
 例の落着物――を狙ってだと思うんですけど、
 所属不明の勢力が集結しつつあります」

 彼女がキーボードを叩くと同時、モニターに映し出されたのは、
 様々な装甲を身に付けた小人のような――異形の存在。
 いや、武器を手に握って集団で行動しているならば、或いは――

「……軍隊?」

「かも、しれません。
 それと気になる情報が一つあって――」

 続いてモニターに映し出されたのは、一つの単語。

「解析できたのは、この言葉だけでしたけれど。
 通信を傍受した結果、何度も何度も繰り返されているんです」

 フェイトは、記憶していた。
 聖王教会のカリムから、はやてを通じて齎された情報。
 恐るべき予言。或いは管理局の終焉を告げる文書。 
 それを齎す、悪鬼の如き存在の名――

 幸いなるかな 忌むべき者ども
 災いなるかな 死せる王よ
 鉄の鎧 鉄の槍 鉄の意志 持つ
 一人の 兵 によりて
 数多の 海を 守る 法の船
 中つ大地の 法の輪 打ち砕かれん 
 称えよ栄光 仰げよ武勲
 伝えよ千年の後までも
 その名―――……

「リクレイマー……ッ」



 * MISSION HISTORY
 > LOADING ......
 【−任務履歴−】
 【ローディング】


 薄暗く、静寂に満ちた室内に、微かな光が灯った。
 続いて腹の底に響くような、機械の唸る音が響く。
 それに伴い、光源が一つ、二つと次々に数を増していき、
 ついには"それ"を照らし出す程にまでなっていった。
 "それ"は棺桶のように思えた。
 戦いに戦いを重ねて、ようやく兵士がたどり着く平穏。
 しかし"彼女"は、その穏やかな時間を壊さねばならない。
 一瞬の躊躇の後、"彼女"はその棺桶を起動した。 

《…………よく眠れた?》

「ああ。キミが管理していた割には。
 ………………状況はどうなっている?」


61 :-THE REQULIMER-:2008/06/21(土) 16:05:36 ID:HCVdF6H5
 * EXPLORE DERELICT
  RING HABITAT
 > COMPLETE
 【−放棄された環状構造体を調査せよ−】
 【完了】


 パラシュートもつけず、"それ"は崖の上から飛び降りてきた。
 次の瞬間、異形の軍隊に包囲されていた機動六課の面々は、
 緑色をした"それ"が、装甲服を纏った人型である事を知る。

 自分達を護る立ち位置に降り立った彼に対し、
 異形の軍勢はまるで悪魔でも見たかのようにざわめき、怯え、そして――。

「ッ!」

 恐怖を殺すために、その手に握り締めた武器を発射した。
 迸る電流によって気体が圧縮、荷電され、淡い光を放つや否や、
 全ての生物を焼き尽くす程のプラズマ粒子の雨が、瞬く間に降り注ぎ――。

「まだ終りではない」

 展開されたバブルシールドの中から、恐るべき声が響き渡った。

 全身をすっぽりと覆った緑色の第六世代ミョルニル・アーマーは、
 およそあらゆる実弾兵器を弾く装甲と、プラズマ粒子を防ぐフィールドを備え、
 装着者の筋力を、その骨組織の限界まで強化する機能をフル稼働させている。
 更に、周囲の世界を反射して煌くヘルメット。
 その内部には液晶ディスプレイに無数のデータが投影されている。
 仮に装着者の情報処理能力が低くとも、"同乗"しているAIには何ら問題はない。

 そして恐るべきは両手に握られた武器。
 MA5Bアサルトライフルおよび、M6Dハンドガン。
 人類の存亡を巡る戦いに投入された最新鋭の装備であり、
 管理局世界において最も忌むべき存在――つまり質量兵器であった。

 男はそれを手馴れた様子で――そして的確な判断力で――操ってみせた。

 次の瞬間、その鋼鉄の塊が、圧倒的な量の鉄の雨を吐き出した。
 それは次々に異形の兵士の装甲を貫き、肉を穿ち、
 管理局世界の魔法では有り得ない、圧倒的な数の死を生み出していく。

 無論、この時は誰も、この男こそがリクレイマーだとは知らない。
 だが、それに近い事実を、生き残った機動六課の面々は理解していた。

 ――つまり。

 この男に、敵など存在しない。

62 :-THE REQULIMER-:2008/06/21(土) 16:06:11 ID:HCVdF6H5
 * DESTROY HOSTILE
  GROUND FORCES
 > COMPLETE
 【−敵対する地上勢力を撃退せよ−】
 【完了】



「ったく。どうしてテメェはそう高い所から飛び降りちまうんだ!」
 小さな赤毛の少女が、男に対して軽口を叩く。
 悪くない気分だった。寡黙だが、為すべき事を果たす男。
 長い戦いの日々にあっても、こういった人物に巡り合えるのは稀だ。
 肩を並べて戦うに値する男。背中を預けるに値する男。
 悪くない。それがヴォルケンリッター全員に共通する感想だった。
 だけど、とヴィータは付け加える。
 ――なに考えてんだかわかんねぇーところ以外は、だ。
 其処だけは我慢できなかった。



 * MEUTRALIZE ADAPTIVE
  PARASITIC LIFEFORM
 > COMPLETE
 【−寄生生物を無力化せよ−】
 【完了】



「HALO、フォアランナーの遺産、第二のアーク。……そしてリクレイマー」

 ジュエル・スカエリッティ博士は、全てを掌の上で弄ぶ。

「果たして管理局はどう動くだろうね。
 あまりにも大量のロストロギアの存在に。
 もっとも――大量のロストロギアが、何故、同じ場所に存在するのか。
 そのことにはきっと、誰も気付かないのだろうけれど」
 
 数学的に有り得ない。彼は笑いながら呟いた。
 実に好奇心がそそられる。
 何よりも、あのリクレイマーという存在に。
 魔法技術を使わない、完璧な戦闘機人。
 是非とも――手に入れたい。

「……ナンバーズに襲撃、してもらうとしようか」

 己の欲望の為に。己の夢の為に。己の好奇心を満たす為に。
 ジュエル・スカエリッティは世界を弄ぶ。

63 :-THE REQULIMER-:2008/06/21(土) 16:06:37 ID:HCVdF6H5
 * OUTWIT ANCIENT
  A.I. CONSTRUCT
 > COMPLETE
 【−古代文明のA.I.の裏をかけ−】
 【完了】



「あたし、あたしは……もう誰も傷つけたくないから!
 ――死なせたくないから!
 だから………強くなりたいんですッ!!」

 その訓練の傍観者である男は、彼女に対しての解答を持っていなかった。
 成程、彼は確かに苛烈な経験を経て、ここに立っている。
 男はしかし、それが自分だけの力では無い事を知っていた。
 海兵隊の戦友や、多くの友人達のお陰で、彼は生き延びてこれたのだ。
 ましてや、自分を天才だと思ったことは一度も無い。
 …………そして同時に、常人であると思った事も、無い。

 遺伝子的な改良は元より、ホルモン交換、毛細血管、
 更には神経系統の調整などが施された結果、
 彼の肉体は、外見以外およそ人類の範疇を超えている。
 無論、其処までの道のりが平坦であった筈も無い。
 14歳の時に経験した神経改造では七十五名の同胞達のうち、
 十二人が副作用により永続的な障害を持ち、三十人が命を落とした。
 適合したのは三十三人。その仲間達も、今では彼一人しか生きていない。
 つまり、彼は凡人ではなかった。ある筈がなかった。
 人類の存亡を巡る争いに投入されるべく生み出された、
 いわば最終兵器、最後の希望のような存在であったからだ。

 だが、そんな自分が果たして其れ程までに強いのだろうか?

 目の前で、見えない所で、何人もの戦友が死んでいった。
 彼らをHALOや戦場から、連れ帰ってやる事はできなかった。
 故に――男は、この少女の、血を吐くような思いに対し、
 何一つとして回答する事はできない。

 ただ、搾り出すような一言だけがあった。

「……容易い事ではない」

64 :-THE REQULIMER-:2008/06/21(土) 16:07:11 ID:HCVdF6H5
 * STOP DESTRUCTION
  OF HUMAN RACE
 > COMPLETE
 【−人類の滅亡を阻止せよ−】
 【完了】



 《聖王のゆりかご》即ち"第二のアーク"。
 それが起動すれば、文字通り次元世界は完全に壊滅する。
 阻止しなければならない。何としてでも。その為に彼らは集まったのだ。
 調停者アービターに率いられた、エリート族。
 今まで、人類種のみとしか出会った事の無かった管理局において、
 史上初の異種族との接触は、瞬く間に軍事同盟へと変化した。

 そして――今、その同盟は最大の危機に瀕している。

「糞、なんて数だ! これじゃあ――勝てるわけが……ッ」
 
『落ち着け、クロノ提督。――敵の数はどれ程だ?』
 
 激昂しコンソールを叩くクロノと対照的に、
 エリート族の艦隊指揮を一手に引き受けるシップマスターは、
 落ち着いた仕草で、彼の動作をやんわりと警告した。
 いついかなる時にあっても、指揮官というものは余裕を見せていなければならない。
 其れでこそ、部下の兵士達も余裕を持って戦闘する事ができるのだから。
 これに答え、瞬く間にクロノは平常心を取り戻す。――慌ててはいけない。

「……申し訳無い、ラタス・ヴァドム・シップマスター。
 コヴナントの艦艇総数は此方の――……。
 此方の、およそ三倍。――圧倒的な数です」

 実に素直な反応。
 ラタスは笑みを浮かべている自分に気がついた。
 このクロノという人物。良いシップマスターになるだろう。
 惜しむらくは経験が足りていない事。
 それさえ満たしてやれれば――。
 
 ラタスは僅かな時間、モニターを眺めていた。 
 《聖王のゆりかご》を護るべく集結したコヴナント艦艇。
 それを示す赤い光点は、味方を示す光点を遥かに上回る数であり、
 モニターの大半が赤色に染まりつつある。
 およそ楽観できる状況ではあるまい。

『三倍、か』

 だが次の瞬間、この白い装甲を纏った爬虫人類の猛者は、
 クロノ・ハラウオンを震撼せしめる言葉を発した。

『ならば対等だ。――攻撃を開始する』

65 :-THE REQULIMER-:2008/06/21(土) 16:08:01 ID:HCVdF6H5
 * GETBACK THE KIDNAPPED
  DAUGHTER OF HER
 > IN PROGRESS
 【−攫われた彼女の娘を奪還せよ−】
 【進行中】



「わぁーっ!リインと同じ、ユニゾンデバイスさんですーっ!」
《……A.I.とデバイスは違うんだけど――……》


「これが私の全力全開ッ!
 ディバイィィィィン―――バスタァァアアァアァァァッ!!」
《ねえ、貴方も武器の名前を叫んでみたら?》
「遠慮しておこう」


《コヴナントの武器はフィールド貫通能力を持っているの。
 だからバリアジャケットは布切れと同じ。効果は殆ど無い。
 真正面からの攻撃は、あまりにも危険すぎる》
「でも、それは向こうも同じなんだよな? だったら――」
 だったら――そうだ。互角だ。
 いや。互角以上だ。
 なんたって奴らと自分とじゃ、覚悟が違う!
「吼えろッ! グラァァァフッ! アイゼェンッ!!」


「フラッドの寄生対象を無くすことで、拡散を防ぐ?」
『………わからないか?
 "第二のアーク"が起動すれば世界が滅びる、という意味だ』


『どーしたんだー、スバルー?ティアー?』
「ねえ、スバル」
「どうしたの、ティア?」
「グラント達ってさ、結構アンタに似てるわよね」
『似てるのかー?』


「ぐ、軍曹! ど、どうして生きてるんですか!?」
「悪いなエリオ。 そいつぁ軍事機密だ」


『慌てる事は無い。じきに奴がケリをつけに来る』


《おお、私は天才だ!》


「援軍? それって―――まさか………」
《ええ。"彼"――マスターチーフよ》


66 :-THE REQULIMER-:2008/06/21(土) 16:08:45 ID:HCVdF6H5



《ティア。貴女は才能ばかり気にするけど――大事なのは、そこじゃない》
「…………え?」
《それは、未来を信じる事。ヒーローを信じ抜く事》



『HALO -THE REQULIMER-』



《チーフ、失敗したらどうするか教えてあげたら?》
「失敗はしない」

67 :-THE REQULIMER-:2008/06/21(土) 16:11:31 ID:HCVdF6H5
以上ここまで。
HALO×リリカルなのは。
マスターチーフ5インチフィギュアと、figmaなのはさんを、
ゲットして並べて握手させてと色々遊んでる内に、色々燃え滾って。
だって同じサイズなんだから遊び倒すに決まってるじゃないか!

もちっとネタが溜まれば本編書きたいのぅ。

68 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/21(土) 17:42:36 ID:SsMYyyUG
GJ!!でしたっっ!!
これは続きがかなり気になりますが、何よりマスターチーフが原作プレイ者としては格好良くてステキです。
SFスキーとして感涙ー。

69 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/06/21(土) 17:53:18 ID:SsMYyyUG
投下を18:00より開始しますー。

70 :闇の王女 ◆yZGDumU3WM :2008/06/21(土) 18:01:30 ID:SsMYyyUG
魔法少女リリカルなのは 闇の王女 第七章後編

クロノ・ハラオウンは、忙しく職務に追われていた。
仕事は、百隻近い次元航行艦隊の指揮――おそらく、管理局の艦隊の行動としては過去最大――であり、個人が負う責務としても多大なものだ。
本来ならば、時空管理局の<海>トップである3提督が指揮を取るべき場面だったが、クーデター時の混乱で指揮系統は無茶苦茶になり、
3提督の安否もわからない状態だった為に、臨時の指揮官として前線部隊の指揮に当たることになったのが、クロノ・ハラオウンである。
誰もこの青年の能力を疑わずに、不自然なほど早く艦隊の指揮権は若き提督の手に渡った。
現在の彼の任務は、ロストロギア<聖王の揺り篭>攻略――撃墜もやむなし――と、クーデターを行った艦隊司令官、ウルリッヒの拘束であった。

――リン、リン、リン

クロノが艦隊への指揮に没頭していると、不意に時計が約束の時刻を知らせた。

「そろそろか……」

呟きと共に、クロノは通信をかけた。
すべてを、創りなおす為に。


血の錆び臭い匂いが、狭い室内に立ち込めていた。暗室である。
灯といえるものはモニターから放たれる光だけで、その大半がロストロギア<聖王の揺り篭>を映し出していた。
ぴちゃぴちゃと血の滴るコンソロールを操作しながら、男は鼻歌を歌う。

「メーリさんの羊ぃ、メーリさんの羊、となぁ」

倒れ臥した老人達――男が二人、女が一人――いずれも一撃で斃され、血の海を室内に作り出している。
男のアームドデバイス《イナクト》のソニックブレイド――銃剣型のそれを一閃した結果が、この惨状だった。
ぴくり、と片割れの男の手が動き、か細い声が掠れたように洩れた。

「き……貴様……誰の差しがね、だ?」

「あーあー、まだ生きてたのかよ。しぶとい爺だなぁ。あれか、3提督ってのは権力欲だけじゃなくて生命力もゴキブリ並みか?
同情するぜ、可哀そうになあ! 飼い犬に手を噛まれるどころか噛み千切られちまったんだからよぉ!!」

「飼い犬……裏切……っただと?」

死に逝く老人の呟きを耳にしながら、男はからからと笑い、データスティックにコンソロール内の情報をすべて写し終えた。
それを抜き取り、藍色の防護服のポケットに収納しながら、畳み掛けるように言う。

「逝っちまいなぁ、爺ぃぃ!」

銃剣と銃器が一体化した《イナクト》のダークブルーの外殻を、止めを刺すべく振り上げたとき、通信音が入った。
少しばかり舌打ちすると、デバイスの空中展開式モニターを起動させた――見せ付けるように。
モニターの向こうに映るのは、黒い髪の精悍な顔つきの青年だ。提督服を着込み、殺風景な自室と思しき場所から通信しているらしい。
老人は――ラルゴ・キールは弱弱しく顔を上げ、驚愕に皺の刻まれた顔を強張らせた。
男は無頓着にデバイスを弄びながら、クライアントと話す。

「おうおう、なんだい? 今さくっとぶっ殺すとこなんだけどよ」

『ゲイリー・ビアッジ、少し彼と話がしたい。いいか?』

「かまわねえが、短く頼むぜ? 奴さんたち、ちぃとしぶといからな。ああ、あと、本業の名前で呼んでくれ。
アリー・アル・サーシェスってなぁ」

男――サーシェスはそう言うなり、モニターをラルゴに見やすいように調節した。
空中展開式モニターに若き提督の姿が映る。その姿は凛々しく、とても暗殺を命じた男の顔とは思えなかった。
時刻は深夜を回っているが、《次元の海》に浮かぶ時空管理局本局にとっては関係のないことだ。
サーシェスは愉快そうにくつくつと笑い、机に腰掛けた。死に掛けの老人とクライアントの会話を楽しむ腹づもりである。


71 :闇の王女 ◆yZGDumU3WM :2008/06/21(土) 18:02:15 ID:SsMYyyUG
「さあて、たっぷり楽しませてくれ? つまんねえ殺しだったからよ」

ラルゴの眼には、既に一人の男の姿しか映っていない。己に付き従う、クライドの倅。
ハラオウンの小僧だった。現在は3提督の権力を背景に、<海>で提督の職についている男。
それが、何故――?

「き、貴様……クロノ・ハラオウンッッ! 何のつもりだっ、わしやレオーネ、ミゼットを消してどうする――」

『あの子を利用すると言った時から、許せなかった。その命令につき従った自分自身さえ……僕は、未だ許せそうに無い』

ラルゴが、可笑しそうに笑った。吐血しながらの、ぞっとするような冷笑。
嘲りと諦観の入り混じった、なんとも嫌ぁな笑みだった。

「――そうか、貴様、あの娘のことで、まだ……ククク、死地に赴いた彼奴をどうすることも……できまい……」

『器量の小さいことだ――そんなことだから、貴方達は僕みたいな人間に消される。
伝説の3提督ともあろう人が、ただのつまらない人間の僕に。それが、天命だというのなら僕は全うするだけです』

不意にラルゴは押し黙り、その皺の刻まれた顔を歪めた。
つくづく不愉快な小僧だった。
自分達――3提督が最高評議会に祭り上げられて、どれだけ不愉快な行いに手を染めざるをえなかったか、わかった上でこう言っているのだ。
どんなこともやった。魔導師制度の導入。違法魔導師の登用による勢力の拡大。嘱託魔導師の大量雇用。政敵の抹殺。
質量兵器の禁止による、管理社会の構築――すべて、管理世界が生き残る為に必要だったから、行ったのである。
危ういパワーバランスの上に成り立つ管理世界群の維持には、時空管理局がもっとも強い力を保持し続ける必要があったから。

「わしらを消して、どうするつもりだハラオウン……? 最高評議会のザルバートの犬にでも……」

クロノが初めて表情というものを見せた。
それまで能面のような無表情さを保っていた顔が崩れ、代わって沸いたのは悲しみ。
失うもの、失われるものに対する哀悼の念だった。

『まさか――貴方達を消すということは、貴方達に代わってこの世界群を統べるということだ。
老害の域に達している最高評議会には、いずれ退場してもらいます。それが、今の管理世界の刷新に繋がる唯一の道だから』

「馬鹿な……新たな管理世界を……創りあげるとでもいうのか……?」

きっ、と前を見据えながらクロノは言い放った。
黒い髪が一連の動きに揺れ、風がふいているかのような錯覚を見る者に与えた。
その黒い瞳は限りなく強い決意を秘め、大切な何かの為に戦い続けるという意志を感じさせる。
にやにやとしながら問答を聞いていたサーシェスも、少し驚いて眉を動かした。

『それが必要なら――僕は、全てを背負う』

老いた顔に狂気にも似た憤怒を浮かべながら、吐血した。

「……精々上手くやれよ……この世界は……わしらが――」

サーシェスに目配せをし、最後まで言わせなかった。
あまりにも、見苦しい妄執だったから。

「くたばりぞこないは死んじまいなぁ!」

――ゴトリ

頚動脈を切断された身体が血飛沫を噴きながらゆっくりと倒れこみ、やがて生あるものは暗殺者以外にいなくなった。
うーん、と伸びをしながら、爽やかと言ってよい笑みを顔に張り付かせた。
防護服を解除、仕立ての良い黒いスーツ姿に戻ったサーシェスは、モニター越しにクロノに話しかけた。

72 :闇の王女 ◆yZGDumU3WM :2008/06/21(土) 18:03:27 ID:SsMYyyUG
「さあて、奴さん達が亡き者となり、管理局はあんたを中心に動くってわけだ。
これからもよろしくお願いしますよ、提督殿。こういうときは、仕事の実入りがよくってねぇ……」

クロノは能面のような無表情さを取り戻し、言った。
もはや、なんの感情も篭っていない冷え冷えとした声だった。

『ああ。ご苦労だったアリー・アル・サーシェス。報酬は例の口座に振り込んでおく。君は職務に戻っておいてくれ』

「了解……っと」

通信装置を切りながら、血塗れのオペレーションルームから堂々と出る。
サーシェス――否、時空管理局嘱託魔導師ゲイリー・ビアッジは、真顔になると心底楽しそうに呟いた。
ああ、好きで好きで堪らない。人殺しが、そして何より戦争が大好きな、餓鬼のような顔だった。

「<聖王の揺り篭>か、いいねえいいねえ。楽しくなってきたじゃねえか――こいつは戦争だぜ。そりゃもうとんでもねえ規模の、な」


爆音が鳴り響いた。遠く、遠雷のように耳に残る音。
その音は分厚い<聖王の揺り篭>外殻を突き破る為に用いられた地殻貫通弾の炸裂音であり、
煙と粉塵が立ち昇るぽっかりと開いた穴に向け、灰色の髪の毛の兵隊達が降下していく。
都市迷彩の施された防護服がはためき、暗い穴の底に吸い込まれていく。
皆、まったく同じ顔の兵士達は、人工的な遺伝子サンプルから生成された戦闘機人――半機械化された人間だ。
手には黒塗りの銃身――自動小銃。12.7ミリ機関砲弾を連射する、常識外れの大口径携帯型機銃である。
対人戦ではなく、戦闘型自律機械ガジェットドローン及び、敵性戦闘機人との戦いを想定した、狂気じみた装備だった。
管理局が是とする次元犯罪者の捕縛など想定していない、あくまで対象の抹殺に特化した兵装。

その光景を冷ややかに見据えながら、クイント・ナカジマの複製は、息を吐いた。
青い長髪が鮮やかに揺れ、身体にフィットする防護服をはためかせる。
両腕に装備した《リボルバーナックル・レプリカ》が回転――背後に回りこんでいた不可視の戦闘機械ガジェットドローンW型の鎌を、
真っ向から受け止めていた。
高周波振動する鎌とリボルバーナックルの間から火花が噴出し、空気を焦がした。
右手でガジェットW型の鎌をすべて受け止め、左手を振り上げ叫ぶ。
シューティングアーツの形――その名は。

「ナックルダスタァァァ!!」

圧縮された魔力が拳に宿り、一撃でガジェットW型を半壊させていた。
ぼろぼろと多脚兵器の手足がもげ、内部の機械が粉砕された装甲からはみ出て人間の内臓のようにのたくった。
それでも、聖王の武器として造られたこの無骨な兵器は、立ち上がろうともがき――砕け散った。
女の踵がメインセンサーを踏み潰し、機能を停止した戦闘兵器が爆散――跳躍し、穴に飛び込んだ。
魔力の足場、ウィングロードを形成し、螺旋回廊状に構築したそれの上をローラーブーツ《マッハキャリバー》で駆け下りる。
念話で戦況を確認。

(こちら、チームリーダー。戦況はどうか? A1、応答せよ)

(チームリーダーへ、こちらA1。現在25名が敵性機動兵器ガジェットドローンと交戦中)

(こちらB1。敵の戦闘機人が出てきました。現在B分隊25名で応戦中、射撃タイプです)

冷静に思考――答えを導く。

(予想の範囲内だ、敵中枢まで近い証拠――突破せよ)

(了解)

もはや、戦闘に必要な記憶以外を封印された女は、娘のことも、最愛の夫のことも思い出さずに、ただ戦い続ける。
この<揺り篭>に乗る抹殺対象の一人に、同じ遺伝子を持つ娘スバル・ナカジマがいることも知らず、無表情な兵器として。
運命の歯車は回転し、最も残酷な噛み合わせを選択しようとしていた。

73 :闇の王女 ◆yZGDumU3WM :2008/06/21(土) 18:05:09 ID:SsMYyyUG
銃声、銃声、銃声。鋼を撃ち抜く高初速の弾丸が飛び、空薬莢が映画さながらに地面へ落ちる。
赤い髪の少女二人が、遮蔽物――撃破されたガジェットドローンの巨体――に隠れながら、応戦していた。
少女達の名は、ノーヴェとウェンディ。共に、ジェイル・スカリエッティに生み出された人造生命であり、戦闘機人だった。
ナンバーズ。そう呼ばれる機械仕掛けの身体を持つ兵士達。それが、今窮地に立たされている。
乱れ飛ぶ機関銃の弾丸は天井や床、壁面を穿ち、二人が隠れているガジェットV型の外装もぼろぼろだ。

「しゃらくせえ! これでも食らえっ!!」

つり目の少女、ノーヴェが右腕を突き出し、無茶苦茶に篭手――ガンナックルからエネルギー弾を発射した。
高密度のプラズマを弾丸状に集束して発射する機構。
機銃並みの連射速度で弾幕が放たれると、銃器を手にした魔導師と思しき兵団は若干怯み、魔力障壁を展開。
プラズマが障壁にぶち当たり消え、イオン臭が漂う。動きが、止まった。
その一瞬を、ノーヴェの相方、ウェンディは見逃さなかった。

「ウェンディ!」

「任せるっす!」

手にした射撃武器内蔵型ライディングボードを構え、砲撃形態に変形させる。
銃口がやや伸び、放熱機構が露になる――《エリアルキャノン》発射形態。
ウェンディの体内の反応炉が唸りを上げて起動し、手を伝ってエネルギーをライディングボードに流し込む。
刹那、砲撃機構がエネルギーを集束、擬似的に砲撃魔法をエミュレート。

発射――目も眩むような閃光。

集束エネルギー砲が爆心地にいた魔導師を飲み込み、その身体を障壁ごと蒸発させた。
防護服が蒸発し、灰色の髪の毛が焼け付き、機械の強化骨格が丸出しになり――体内の反応炉が弾けた。
灼熱が爆ぜ、目を焼く炎が巻き起こる。
この際に発生した衝撃波で何人かの魔導師が壁に叩きつけられ、呻き声も上げずに倒れ込んだ。
ウェンディは呆然と立ちすくみ、呟く。

「……え? なんなんすか?」

「馬鹿っ!」

立ち尽くすウェンディにノーヴェが体当たりをし、物陰に引きずり倒す。
瞬間、馬鹿げた量の12.7ミリ弾が吐き散らされ、ウェンディの頭部があった空間を掃射した。
思わず喚いた。

「馬ッ鹿! 何突っ立ってんだよ?!」

何時もならにへらにへらと笑って返すウェンディが、らしくもなく目元を潤ませて言った。

「あいつら、戦闘機人っす! あたしたちと同じ動力炉を積んでる――」

ライディングボードを盾にして立ち上がり、ノーヴェは無言で銃火を放った。
弾幕にライディングボードが凹んでいくが、気にもせずに撃ちまくる。
プラズマと鉄鋼弾が宙を舞い、機銃の箱形弾倉に着弾。火薬が爆ぜ、暴発した弾丸の嵐に身を砕かれた魔導師――いや、戦闘機人が倒れ込んだ。
その千切れかけた腕からは機械のケーブルと強化骨格が覗き、血は極々微量流れ出るのみ。

「ッッ! てめえらはぁ、何なんだよ、コンチクショウ――ッッ!!」


74 :闇の王女 ◆yZGDumU3WM :2008/06/21(土) 18:05:44 ID:SsMYyyUG
ウェンディを、そして己を奮い立たせるように叫んだ。
涙を金色の瞳から流し、

「敵があたしらと同類だからって、どうしたぁっ! やらなきゃ、みんな、ドクターもチンク姉も死んじまうんだっ!」

喚きながら撃ち続ける。空気を焦がすプラズマの弾丸は、魔力障壁を展開しながらじりじりと前進する兵士達に押されていく。
仲間の死にも動じない灰色の兵士の一人が、小脇から物騒な代物を取り出した。
掌サイズの円筒形。消滅半径20メートルの、プラズマ爆雷――着弾と同時に超高熱を放つ質量兵器。
ノーヴェはウェンディを無理矢理立たせるなり、後ろへ向けて全速力で駆け出した。
追従するウェンディはまるで事情がわからずに、ライディングボードを背負って盾代わりにしながら走る。

「ど、どうしたんすかぁ?!」

「どうしたもこうしたも、爆弾だっ! 障壁張れないあたしらじゃ、どうしようもないだろっ!」

投擲――二人の背中へ向けプラズマ爆雷が投げつけられ、背後で、閃光が弾けた。
爆音が耳を潰し、激痛が脚を焼いた。ノーヴェは頭から倒れ込み、「うあ……」と小さく悲鳴をあげた。
突然倒れ込んだ仲間に目を向けたウェンディは、無残な傷跡を目にして呻いた。
爆発で吹き飛んだ破片が、鋭くノーヴェの右足首を抉っていた。機械の骨格が覗き、人工筋肉は千切れている。
出血が抑えられているのが幸いだったが、とても歩行できる状態ではない。

「ノーヴェ! 大丈夫っすか?!」

「ウェンディ……お前だけでも逃げろ……あたしはもう駄目だ」

「馬鹿なこと言うなっす! あたしのライディングボードなら――」

運べる。そう言おうとした瞬間、銃撃の嵐が吹いた。
12.7ミリ機銃弾の顎(あぎと)が容赦なく二人の身体を襲う――咄嗟に背負ったライディングボードを盾にしのぐが、
銃撃は徐々に十字砲火へと姿を変えつつあった。包囲されかけている――どうしようもない恐怖がウェンディの脳髄を走った。
ノーヴェは鬼気迫る形相でウェンディを後方へ押し飛ばし、激痛のはしる足首に鞭打って立ち上がり叫んだ。

「ノーヴェ?!」

「行けよ! ウェンディ――さあ、かかってこいっ! てめえらの相手なんざ、あたし一人で十分だっっ!」

それは、仲間を逃す為の身を挺した時間稼ぎ。
IS始動――天井の高い<聖王の揺り篭>内部だからこそできるブレイクライナーの機動。
エアライナーと呼ばれる道が空中に形成され、その上を滑るようにしてローラーブーツ《ジェットエッジ》で駆け抜ける。
空中を飛翔するようにして走り出したノーヴェに、灰色の戦闘機人たちは銃器を向けた。
だが――遅すぎる。
右足首を焼く激痛を痛覚カットでしのぎながら、跳躍。自ら足場を飛び降り、着地と同時に踵落としを見舞う。
ごきゃり、と首に打撃が入ったことを確認しながら、ガンナックルを乱射。魔力障壁を張った敵目掛け、
ブレイクギアを回転させた一撃でまた一人倒した。ぜぇぜぇと息を荒げ、咆哮しながら襲い掛かる。

「うおおおおおぉぉぉぉおおおおおおッッ!!」

銃撃を、避ける、避ける、避ける。
ジェットの炎を《ジェットエッジ》から噴射させ、空中に飛び上がる。
それだけで、嫌な汗が止まらない――痛覚をカットしても幻痛が脳に伝わる。
拳が魔力障壁を貫通し、灰色の戦闘機人の顔面を叩き潰した。
付着した血をものともせずに、なおも襲いかかろうとし――

――銃撃がその身を貫いた。

わけもわからずに血を吐きながら倒れ込み、そのまま身体の中を駆け巡る灼熱に呻こうとするも、
出てくるのは赤黒い血だけ。身体から溢れた血がボディスーツを汚し、しなやかな肢体を血の海に沈めた。

75 :闇の王女 ◆yZGDumU3WM :2008/06/21(土) 18:06:23 ID:SsMYyyUG
「かはっ……逃げろよ……ウェンディ」

「ノーヴェェェェェッッ!!」

背後で上がる悲鳴を聞きながら、ゆっくりとこちらに止めを刺すべく迫る足音に向け、中指を立てた。
絶対に、屈しない。それが、ノーヴェの矜持だった。

(ごめん……チンク姉……生き残れそうに、ないや……)

つう、と血塗れの頬を目から零れ落ちた涙が伝い落ちた。
死神の白骨化した手が、終わりを告げる笛の音――銃声を吹こうとする。
だが、終わりは訪れなかった。何時だって、奇跡は起きない――けれど、人が掴み取った必然はある。

「IS――<振動破砕>ッッッ!!」

唐突に壁が砕け散り、粉塵の向こうから現れた影が、ノーヴェに銃口を向けていた二人の戦闘機人を殴り飛ばした。
反対側の壁まで吹き飛ばされ、銃器を粉砕された機人二人は沈黙――行動停止。
阿修羅のように仁王立ちした青い髪の少女が、白いコートをはためかせた。
右手の、鉤爪状の白銀色の義腕が開かれ、振動波で己に飛来した銃弾をすべて塵に変える。

「ごめん、ノーヴェ。遅くなったけど――」

にこっ、と笑いながら鋭く獣の牙のように尖った右手を構えた。
白いコートは青地で刺繍が施され、神々しくすらあった。ボディスーツの上から羽織られたそれが、翼のようにノーヴェには見えた。
戦う為に造られた身体――全てを壊す為の力。
だけど。きっと――不屈の心はここにある。

「――助けに来たよ」

「バーカ……遅え、よ……」

憎まれ口を叩きながら、ノーヴェの顔は笑っていた。がくん、と意識の途切れた彼女の身体を抱き上げながら、
青い髪の少女は――スバル・ナカジマは、神妙な顔で敵の兵士達と向き合った。
怒りも、悲しみも、すべてを飲み込んで――怖くない。もう、自分の力が怖くない。
だって、今この瞬間――家族を、助けることができるんだから。

「ここからは、あたしが相手だっ!! もう誰も、傷つけさせないっっ!!」

スバルの咆哮――揺るぎない決意と共に。
姉も、母も、誰一人として傷つけずに、制圧してみせる。
それが――

「あたしの矜持だっっっ!!!」

76 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/06/21(土) 18:10:26 ID:SsMYyyUG
そうだ、鉄人……お前は兵器なんかじゃない……道具でもない。
僕らは同じ父さんを持つ、《正太郎》なんだ……!!

そういうノリでございます。
感想等いただけると大変ありがたく手前は思います。
ではでは。

77 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/21(土) 18:29:51 ID:/dTGARNA
GJでした!今回はなのは以外の話でしたね。
舞台裏ってとこでしょうか。こういう話も好きなです。
出てきた暗殺者は元ネタがあるんでしょうか?
次回はスバル中心の話なのかな。
フェイト達サイドもあるでしょうし、それぞれの物語って感じですね。
未だ出番のないヴィヴィオがちょっと怖かったりします。

ゲッターロボ昴のほうも読みましたが、面白かったです。
エリオがw確かに奴はツンデレですねw
エリオが逞しくなりそうです。

後、ルーテシア対超力兵団に期待してます。
ルーが格好良かったです。
格好良い主人公は素敵ですね。
探偵って言葉も。

では続きを待ってます。

78 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/21(土) 19:10:42 ID:/dIfUn3G
>>76
ひろしに吹いた。ハムさんが出てきた時点で微妙に予感はしてたがマジに出るとは。

79 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/21(土) 19:13:10 ID:oWcYG+lV
GJ!!です。
>>77元ネタはガンダムOOという作品の戦争大好きな野原家の大黒柱ですw
暗殺者がサーシェスとは思いませんでしたw
さぁ、あとはコーラサワーだけですねッ!!www

80 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/21(土) 19:23:45 ID:BX2ONU9r
GJ
アリーが出てくるとは…

81 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/21(土) 19:39:34 ID:sxeLaUlY
とりあえず前の二人は予告くらいしろと…

82 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/21(土) 19:44:29 ID:mLmHoXKT
>>81
前の奴はともかく後の奴は前スレで予告してたぞ?
こっちでも投下前に一言欲しかったが

83 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/22(日) 14:37:16 ID:T2VitWmQ
短パンマン…

84 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/22(日) 15:54:14 ID:mI6q37wV
はじめましてなのですが、投下してもよろしいでしょうか?

85 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/22(日) 16:04:39 ID:IGhEhc76
>>84
とりあえずクロス作品を教えて欲しいかな支援。

86 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/22(日) 16:05:20 ID:Lg7VMuB7
支援!!!

87 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/22(日) 16:06:17 ID:XwVcQTeY
支援

88 :リリカルルーニー ◆fhLddwC5FM :2008/06/22(日) 16:08:59 ID:mI6q37wV
「世界樹の迷宮T」とのクロスです。
現在チェック中ですので、17:00ごろに投下します。

コテトリがうまく出てる事を祈りつつ(戦々恐々)

89 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/22(日) 16:16:36 ID:HvX22pmu
UでなくTか
ドラマCDなのか小説なのか
それともオリジナルなのかは気になるところ

90 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/22(日) 16:19:55 ID:mRjQc3zT
まあ、五層がネタになるしな。

91 :リリカルルーニー ◆fhLddwC5FM :2008/06/22(日) 17:00:38 ID:mI6q37wV
時間になりましたので、投下させていただきます。

以下注意事項
1.「世界樹の迷宮T」とのクロスです。
2.視点が世界樹側なので、なのは側の出番が……(涙)
3.時期は「A's」のちょっと前あたりが中心です。
4.世界樹のネタばれが少々あります。
5.タイトルは「炎、氷、そして、光」。10レス分です。

それでは、始まります。

92 :炎、氷、そして、光(1/10) ◆fhLddwC5FM :2008/06/22(日) 17:01:36 ID:mI6q37wV
 白い月の照らす中、私は一人、巨木の元で瞑想をしていた。
 ……いや、瞑想というには、心が熱くなりすぎる。少しも平静でいられない自分に、今更ながら苦笑が漏れる。
 仕方がないのかもしれない。今日こそは彼女に逢える。そんな予感がする。そんな時に、「平静で居ろ」と言う方が無理だろう。
 とは言え、別段約束があるわけでもない。いや、そもそも、「彼女」が何者なのか、何処に居るのか、それどころか名前さえも知らない。
 だからこそ「予感」。そして、それは何度も裏切ってきたものでもある。
 今までにもあった事だ。こんな予感があり、ただ一人待ち続け、夜が明けて落胆とともに帰る。それは、何度も繰り返した儀式。
 だが、それでも構わない。ただ、彼女に逢えればいい。それだけでいいのだ。
 だからこそ、ここで待つ。約束も何もない彼女を待ち続ける。
 ここ――世界樹の下で。


93 :炎、氷、そして、光(2/10) ◆fhLddwC5FM :2008/06/22(日) 17:02:10 ID:mI6q37wV
 故郷を離れた私は、「武者修行」という名目で旅を続けていた。
 かつては「無双の剣士」と言われ、道場では右に出る者はおらず、外に出ても、数合の内に相手を叩き伏せていた。
 そんな私が旅に出たのも、「強い者と戦いたい」という内なる欲求からであった。
 「自分が何処まで通用するのか試してみたい」という想いからなのだが、改めて振り返れば、「戦闘狂」と呼ばれても仕方がない理由だ。我ながらあきれる。
 そう言った故か、自らを困難におくことを常とし、平穏を歩まぬよう心がけた。
 先立つものが足りないといって、護衛の仕事を買って出た事もあった。遺跡や未踏の洞窟があれば挑み、賞金首が居ればそれと戦った。あえて街道筋を離れ、盗賊団を叩きのめした事など一度や二度ではない。
 すべてが困難というわけではない。しかしながら、戦場に身を置き続けることこそ、自分の欲求にかなうものだ、と思っていた。
 だからこそ、その日も街道から外れ、深き森の中へと分け入った。そこで、あのような出逢いがあるとも知らずに……


94 :炎、氷、そして、光(3/10) ◆fhLddwC5FM :2008/06/22(日) 17:02:48 ID:mI6q37wV
 始まりは、何かを叩きつけるような音だった。そして、倒れる音とくぐもった悲鳴。
「……つまらんな。その程度か」
 ……近いな。
 どうやら、何者かが戦っているようだ。ややもすれば、一手願えるかもしれない。己を鍛える絶好の機会。見逃すのも惜しかろう。
 そう思い音のしたほうへ足を向けると、まさしく、二人の女が対峙していた。
 いや、「対峙していた」というのは適切ではない。一人はすでに、地に背を預けているのだから。
 倒れているのは、ぼろぼろになった紫のローブを纏った、ウサギのぬいぐるみを掻き抱いた少女。己を縛る鈴のついた鎖が、彼女がカースメーカーであることを表している。
 それに対するは、桃色の髪をポニーテールにした剣士。鞘に入ったままの剣を突きつけ、凛としたたたずまいではあるが、どこか悲しげな瞳で睨みつけている。
「くっ……」
 少女の弱々しい呟きと共に、鈴の音が響き渡る。涼やかなるその音色は、透明感とは裏腹に、四肢を縛り付ける力と成る。だが……
「無駄だ」
 その一言と共に剣士の振るった剣は、少女が差し伸べた腕を、差し出した鈴ごと払い飛ばす。
 少女のくぐもった声。剣士の怪訝そうな顔。あたかも、強いと思った敵が弱かったかのような。
 太刀筋から察するに、あの女剣士は強い。それに対し、少女は、カースメーカーとしては優秀かもしれないが、「闘う」という事については、術者の常か、たいした事はないのだ。
 ましてや、アルケミストのように事象を操るのではなく、直接脳を揺さぶるのが彼女たちの術。意思で押さえ込んでしまえば、ただ鈴を鳴らしているだけにしか見えない。
 あの剣士、少女が強いと聞き及んで襲い掛かったのであろうが、予想外に抵抗がないせいか、少々戸惑っているようだ。カースメーカーの術を知らなければ、これも仕方がないだろう。
「何をしようとしているのかは知らんが、その程度では、私には通用せん」
 やはり、カースメーカーの事は知らないらしい。しかし、術をかけている事にすら気付かないとなると、よほど意思が強いのであろうか。
「では、賭けたものを渡してもらおうか」
 その言葉に耳を疑う。
 あれほどの剣士が、追いはぎの真似事? それも、あんな少女をいたぶってまで?
 ……何やら込み入った事情がありそうではあるが、はてさて、どうしたものか……
「まだ……」
 なおも鈴を構え、術を使おうとする少女。しかし、痛みのためか、その手が震えているのが見て取れる。それを見た剣士の顔に、呆れと罪悪感が浮かぶ。
「そうか……ならば」
 しかしその顔は、次の瞬間には決意と敬意に変わる。
 ゆっくりと、鞘に入ったままの剣を振りかざす。
「容赦はせん」
 振り下ろす。向かう先は一人の少女。ゆえに……
 硬い物がぶつかる、鈍い音がした。


95 :炎、氷、そして、光(4/10) ◆fhLddwC5FM :2008/06/22(日) 17:03:21 ID:mI6q37wV
「もう、それくらいにしておいたらどうかな、剣士殿?」
 なぜこんな場所に居て、こんな事をしているのか。私は自問した。
 目の前には、驚愕に目を見開く女剣士。視界を移せば、同じような表情を浮かべた少女。
 そして、鞘に納まったままかみ合う、剣と刀。
 そう。彼女の剣を止めた。少女をかばうために。
 だからこそ気付いた。目の前に居る剣士の強さに。
 背筋を走る寒気と、わずかばかりの後悔が、私を包み込む。割り込みはしたが、少女を守りきれるだろうか?
 しかし、こうなってしまっては、一戦交えることになるだろう。その覚悟は、すでにできている。
「……仲間か」
 剣士がつぶやく。確かに、このような事をしては、そう思われても仕方がない。
「いいや。ただの通りすがりだ。
しかし……」
ちらりと、震える少女を見る。
「いかなる故かは知らぬが、此度は貴女に非があるように思えてな。
 理由如何によっては剣を引くが、教えてはもらえんか?」
「……見ず知らずの、しかも、私の邪魔をするものに語る道理はない」
 強い意思のこもった声。
「そうか……ならば」
 果たして、剣を引いたのはどちらが先か。
「貴女は、この者から何かを奪いたい。私は、この者を守りたい」
膨れ上がる剣気は、どちらが先か。
「互いの主張が相対する以上、闘るしかなさそうだな」
 そして、構えたのはどちらが先か。もはや、どうでもいいことだった。


96 :炎、氷、そして、光(5/10) ◆fhLddwC5FM :2008/06/22(日) 17:03:47 ID:mI6q37wV
「とりあえず、名前を聞いておこうか」
 それは、戦いの礼儀。しかし、
「お前の名前に興味はない。ゆえに、私も名乗る気はない」
 返ってきたのはそっけない返事。
「ならば」
 抜き放たれた剣と刀。言葉で語り合えぬ不器用者同士の、数少ない会話の道具。
「参るっ!」
 駆けたのは同時。しかし、振るわれた刃は、わずかとは言えこちらが速いっ!
「ふっ!」
「はあぁぁっ!」
 鋭い呼気と共に繰り出した胴を薙ぐ一撃はしかし、裂帛の気合と共に跳ね上げられた剣によってはじかれる。そして、その刃はそのまま振り下ろされ、
「ちぃっ!」
 体捌きで鎧の肩に当て、そのまま滑らせる。
「ほぉ。なかなかやるな」
 見れば、剣士の左肩にわずかに血が滲んでいる。はじききれなかったがゆえに、切っ先が掠った痕。しかし……
「そちらこそ」
 強気に笑って見せたが、左腕に残る痺れ。それを悟られぬよう刀を握るが、やはり、左の握りは甘い。
 初撃は、向こうに軍配が上がったか。しかし、剣速はこちらが上。ならば、そこに活路を見出すのみ。
 相手の技量からすれば、こちらも数撃入れられるであろうが、もとより、「肉を切らせて骨を絶つ」ことこそ、われらブシドーの闘い方。多少の攻撃を受けたとしても、倒れる前に倒せばよいだけのこと。
 なればこそ……再び疾しる! 狙うは袈裟懸けの一撃!
「ちぃぇいっ!」
「おぉぉっ!」
 双方鋭い踏み込み。狙う左肩と、狙われる右脇腹。共に無防備とも言える捨て身の打ち込み。しかし剣速はやはり、私のほうが上。先に殺るっ!
キィィッ
 打ち込んだ刀はしかし、耳障りな音と共に、桃色の光を放つ半透明の壁に止められる。これが故の捨て身かっ!
――ふざっ!
「っけるなっ!」
「なにっ?!」
 四肢に力を込め、強引に斬り裂く。剣戟を受け、吹き飛ばされる。肉を斬り、骨を砕かれる。衝撃。
「かはっ!」
 木にぶつかったと気付くより早く、肺から空気が吐き出される。地面に広がる赤。納刀。顔を上げる。睨む、ただ鋭く。迫る敵。跳ね上がる刃。
「おおぉぉっ!」
「くっ!」
 躱す。僥倖。僅かに足らず。爆ぜる鉢金。しぶく血。翻る刃。追撃。反撃。抜刀。牽制。されど、必殺!
「ぬっ?!」
 首を狙った一撃はしかし、痛みのためか、僅かにそれる。辛うじて腕に当たるが、斬るには弱く、ただ弾くのみにとどまる。それでも、狙いをそらす役には立った。禍福は糾える縄の如し、とはこのことか。
 三度の追撃を警戒し、納刀と共に後ろへ下がる。それと同時に、腹を掠める風一陣。やはりと言うか、三撃目があったか。
「かはぁっ!」
 息吹を一つ。身体に残る激痛が、ほんの少しとは言え和らぐ。まだ闘れる。
 間合いが離れたことにより、互いの動きが止まる。しかし、向き合ったまま弓を引くがごとき緊張感。

97 :炎、氷、そして、光(6/10) ◆fhLddwC5FM :2008/06/22(日) 17:04:17 ID:mI6q37wV
「……なぜ、そこまでする?」
 不意に、剣士が問いかけた。
「その者は、お前とは無関係のはずだ。そこまでして助ける理由が、何処にある?」
「……確かに、な」
 そうだ。見ず知らずの者だ。「一手願えれば」と思って見に来たに過ぎないし、ここまでぼろぼろになってまで対峙する必要などないかもしれない。だが……
「だからと言って、ここで引けば後悔するだけだろう。守ろうとした者を見捨てて逃げた、とな。
 逆に、ここで引かねばならん理由の方が思いつかん。私はまだ、立っているのだからな」
 そう。私はまだ立っているのだ。そして、後ろには守るべき者がいる。前には、倒すべき敵がいる。手の中には、振るうべき牙がある。
何故に引かねばならんのか。
「……そうか」
 剣士が剣を下ろす。しかし、剣気は衰えず。むしろ、膨れ上がる。
「だが、こちらも時間をかける訳にはいかんのでな。
 ……この一撃で終わらせてもらう」
 ガコォンッ!
 何かが爆ぜる音。それが剣から発せられたのだと気付いたのは、筒状の何かがはじき出されたときだった。
 剣が、炎に包まれた。
「な……」
 思わず、声が漏れた。
 同じような技を持つブシドーはいる。しかし、剣士がそれを使うというのは、初めて見る。
 だが、こちらも呆けている場合ではない。首討ちが不発に終わった今、必殺の技を放とうとする相手に同じ技を再び、と言うのは危険すぎる。そもそも、納刀してまで蓄えた力は、鞘をつかむ手にその片鱗を見せている。
 鋭く研ぎ澄まされた冷気が、今まさに弾けんとしている。
 炎を纏った剣を、八双に構える。冷気を纏った刀を構えたまま、僅かに身を沈める。
 すでに、互いに間合いの内。一度振るえば、互いを殺傷せしむる距離。そして……
「紫電……」
「すぅ……」
 剣士が呟き。私が息を吸い。そして……
「一閃っ!」
「せぃやぁっ!」
 銀光が走る。


98 :炎、氷、そして、光(7/10) ◆fhLddwC5FM :2008/06/22(日) 17:04:42 ID:mI6q37wV
 目を開けたとき、最初に飛び込んできたのは、心配そうな少女の顔だった。
 その後ろにある空の蒼が優しく、背中にある草の感触が暖かく、頬を撫でる風が心地よく……
――負けたのか……
 あの抜刀の一撃は、全てを凍てつかす氷の刃は、「抜刀氷雪」と名付けられたあの技は、私にとって首討ちに並ぶ――そして、より確実性のある――必殺の一撃だった。
 だが、それをもってしても届かなかった。並ぶ事すら出来なかった。
 あの剣士の技――「紫電一閃」と言ったか――は、骨を断ちに行った私に対し、髄を斬ったのだ。手に残る感触と、肩に残る熱さが、結果を物語っている。
――負けた――
 悔しさと惨めさに蹂躙されながらも、その事実だけは、なぜかすんなりと受け入れられた。だが……
「大丈夫?」
 目の前にいる少女が、その感情を隠させた。これ以上の醜態をさらしたくない、という気持ちが、何よりも勝った。
「……酷い事をされなかったか?」
 少女の青白さと、己の感情を押し隠すために、尋ねずにはいられなかった。だが、少女はふるふると首を振り、ただ一言答えただけだった。
「大丈夫だった」
――嘘だ。
 傍目から見ても辛そうにしている事が判る。だが、それでも本人はそれを隠そうとしている。
――守れなかった――
 静かに身を起こす。何事もなかったかのように。何事もないかのように。
「そうか。それは良かった」
 顔を上げ、少女と目を合わせる。安心したかのように、微笑みかけるために。
 それでもなお、視界が滲むのを止める事は出来なかった。
 少女の顔色が。弱々しい微笑が。心配させまいと振舞う心が。その全てが、私の心を砕いていった。
 彼女は耐えていると言うのに。気丈に振舞っているというのに。心配かけさせまいとしているのに。そして、私を心配していると言うのに。
「うぅ……」
 視界が滲むのを、顔が歪むのを、嗚咽が漏れるのを、止める事が出来なかった。
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 情けなくて、悔しくて、惨めで、許せなくて。
「何が『無双の剣士』だっ! 何が『最強』だっ!
 守ると決めたもの一人守れずっ! 相手の実力も測れずっ! 易々と倒れておきながらっ! どの口が戯けた事をほざくっ!
 何のための強さだっ! 己の約すら守れぬものがっ! どれ程の者だと言うのだっ!」
 これほど感情を発露させたのは、いつ以来だっただろうか。ただ子供のように、何もかもをぶちまけながら泣くなど、人前でする事ではないと思っていた。
 それでも、止められなかった。だからこそ、気付かなかった。
 感情のままに、支離滅裂に喚き散らす私を、少女はただ、優しく抱きしめてくれていた事に。


99 :炎、氷、そして、光(8/10) ◆fhLddwC5FM :2008/06/22(日) 17:05:11 ID:mI6q37wV
「でも、倒れなかった」
 少女がささやいた。
「ぼろぼろになっても、倒れなかった。だから、私は大丈夫だった」
 その暖かさに包まれ、ただ泣き続けた私は、どれだけ幸せだったのだろうか。
「あなたは私を助けてくれた。見ず知らずの私を。だから……」
 大きな声ではない。力強くもない。それでも、不思議と心に沁み込む声。
「今度は私の番。私があなたを助ける。
 今は弱いから、無理かもしれないけど……」
 そして、決意に満ちた声。
「必ず、あなたを助けられるようになるから」
 顔を上げる。そして、目に飛び込んでくる少女の顔。何処までも澄んで、力強くて、眩しくて。
 だから、その胸にもう一度顔を埋める。その温もりを確かめるように。
「強く……なりたいな」
「うん」
 彼女は許してくれた。助けられなかった私を。
「なれる……かな?」
「なれるよ。絶対」
 そして、認めてくれた。こんな、未熟な私を。だから……
 ゆらりと立ち上がり、涙をぬぐう。いつまでもこんな顔をしているわけにはいかない。
「……一緒に……来てくれるか?」
「うん」
 守るべき者がいるのだから。守ってくれる者がいるのだから。
 差し出した手を、少女は掴んだ。それは、一人旅の終わりであり、二人旅の始まりだった。


100 :炎、氷、そして、光(9/10) ◆fhLddwC5FM :2008/06/22(日) 17:05:36 ID:mI6q37wV
 それからと言うもの、二人は常に一緒だった。町で。遺跡で。街道で。さまざまな者たちと闘い、互いが互いを守りあい、補い合うことが当然の事になっていた。
 そしてたどり着いた街、エトリア。
 世界樹の迷宮によって栄えるこの街で、長が抱いていた懸念。それは「迷宮を踏破されることで、この街は寂れるのではないか」と言うもの。それ故に、私達にまわされた依頼。それが「冒険者たちの妨害」。
 長の懸念を理解できたが故に、私はこの依頼を受けることにした。連れ合いは乗り気ではなかったが、共にこなしてくれた。
 だが、それも長く続かず、ある冒険者たちによって私たちは倒された。そして、その冒険者たちによって、迷宮は踏破された。私の未熟さを、再び痛感させられた。
 うれしい誤算はいくつかあった。その一つは、長の懸念が外れたことだ。踏破された迷宮ではあるが、そこに挑むものは後を断たなかったのだ。一時期ほどではないとは言え、それでも、この活気を失うのはまだまだ先になりそうだ。
 それと、私たちの処遇だ。あれだけの事をしたのだから、私たちを糾弾する事は出来ただろう。だが彼らは、それを語る事はなかった。そして、語る事のないまま、北の果てに新たに見つかった世界樹の迷宮へと旅立った。
 そして私たちは、一介の冒険者として、このエトリアに残っている。北へ行く事を勧められたが、なぜかその気にならなかった。
 そのときから想っていたのかもしれない。再び逢えるのではないかと。互いの名前すら知らない、桃色の髪をした剣士に……


101 :炎、氷、そして、光(10/10) ◆fhLddwC5FM :2008/06/22(日) 18:00:17 ID:mI6q37wV
 白い月の照らす中、私は一人、巨木の元で瞑想をしていた。
 幾度となく繰り返した過去への旅路。それを破ったのは、聞き慣れない――それでいて待ち望んでいた――足音だった。ゆるりと顔を上げたその先に……
「このような場所にいたとはな」
 彼女はいた。あの時と同じ姿で。あの時より険の取れた顔で。
 自然と笑みがこぼれる。
「壮健そうで何よりだ」
 立ち上がりながら、彼女に応える。
「いろいろとあったがな。それでも、何とかやっている」
「それはお互い様だ。
 それで? 何の用かな?」
 言わずもがなの問いかけ。互いの出で立ちが、これから起こる事を如実に表している。
 それでもなお、口にしてほしかったのだ。我々が望む、この一時を。
「なに。近くを通りかかったときに思い出してな。
 ……あの時、そなたを見くびっていた事を、な」
 笑みを浮かべながら、彼女は答えた。しかしその瞳には、剣呑な光が宿る。
「ほぉぅ。ならば、なんと詫びる気だ?」
 全身を弛緩させる。だがそれは、いつでも動ける証になる。
「生憎と、口でどうこう言うのは苦手でな。このようなやり方しか思いつかん」
 スラリッ、と剣を抜き放つ。
「互いに不器用、と言うことか」
 体を沈め、柄に手をかける。
「……今宵の月は贅沢だな」
 思わず呟く。
「ほぅ、何故だ?」
 面白そうに剣士が尋ねる。
「これほどの剣舞を独り占めできるのだぞ? これを贅沢と言わずして、なんと言うのだ」
 あの剣士の腕は判っている。だが、私とて無駄に過ごしてきた訳ではない。あちらはともかく、私とて一流という自覚はあるのだ。
「確かにな。……なかなか風流な事を言う」
 剣士が笑う。そして……
 互いの剣気が膨れ上がる。
 この時をどれほど待ち望んだか。この張り詰めた緊張感が、あまりに澄んだ闘気が、実に心地よい。
「そういえば、まだ名乗ってなかったな」
 頭の高さまで持っていった剣を水平に構え、剣士は告げる。
「私は烈火の騎士、ヴォルケンリッターが将、シグナム。そして我が剣、レヴァンティン」
「いまだ無銘を振るう身だが……私の名は」
 軽く息を吸い、はっきりと告げる。
「氷の剣士、レン」
 そして、銀光が舞う。

102 :リリカルルーニー ◆fhLddwC5FM :2008/06/22(日) 18:00:57 ID:mI6q37wV
以上です。

出演は
主人公:レン
剣士:シグナム
少女:ツスクル
ウサギの人形:ツクロッタ
でした。

Uに関しては現在構想中です。
出来るかどうかは、私のやる気次第、と言う事で。

それでは、また。

103 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/22(日) 18:33:47 ID:S+FDdMIM
GJです。
剣戟が静かな感じが良いですね。
そしてうっかり少女とウサギのぬいぐるみで、ヴィータかと思ってしましました。

104 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/22(日) 18:50:42 ID:HvX22pmu
乙&GJ

105 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/22(日) 19:40:58 ID:lH2fgAxj


Uがあるならカボチャ祭とかに期待

106 :THE OPERATION LYRICAL:2008/06/22(日) 19:46:24 ID:Va9haJpV
MGS4が面白すぎて筆が全然進まなかったぜ!
と言う訳で2015ごろに投下したいのですがよろしいでしょうか?

107 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/22(日) 19:47:04 ID:WR9HEzoN
ok

108 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/22(日) 20:00:02 ID:cl4bgX2A
《高度制限を解除。貴機の幸運を祈る。》

109 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/22(日) 20:04:06 ID:cj8w52xc
オメガ11、イジェークト!

110 :THE OPERATION LYRICAL:2008/06/22(日) 20:15:07 ID:Va9haJpV
時間になったのでオメガ11、交戦!

ACE COMBAT04 THE OPERATION LYRICAL


第12話 取引材料


渦巻く陰謀――翻弄されるのはリボン付き。


「臨時査察――?」
市街地及び海上でのガジェット迎撃戦後、はやての漏らした言葉にフェイトは眉をひそめていた。
「うん、地上本部から」
「地上本部の査察って言うと……すごく厳しいことで有名だよね?」
はやては俯きがちに頷いた。ただでさえ機動六課は突っ込み所の多い部隊である。かと言って、今更シフトや配置変更を行うのは部隊の
運用に大きな悪影響をもたらすのは目に見えていた。
「ふぅむ……一応、査察を回避する方法はあるんよ」
「え!?」
はやての思いがけない一言に、フェイトは思わず驚いた。
「査察の通達と同時に、レジアス中将から連絡が来てな――メビウスさんを、貸して欲しいそうや」
「メビウスさんを……?」
異世界からやって来たエースパイロットの名が上がり、二人は怪訝な表情を浮かべた。
「目的はやっぱり……」
「間違いなく、あの新兵器――って言う必要もないか。独自開発したって言う戦闘機の、アドバイザーをやって欲しいんやろな」
迎撃戦の最中、突然姿を現したレジアス中将指揮下の戦闘機部隊、それに高度な情報収集力を持った空中管制機。エンジントラブルで窮
地に陥っていたメビウス1の救援にやってきてくれたのは、他ならぬ彼らだった。
「最近六課に対する批判をやめていたのは、そのため?」
「やろうなぁ、こっちのご機嫌取ってゆくゆくはメビウスさんを、ってつもりやったんやろうけど」
今回の戦闘でそれが早まった、と付け加えて、はやては渋い顔をする。
「おまけに、メビウスさんを貸してくれたら今後六課に対する批判や圧力があれば、優先して擁護してくれるそうや」
「ずいぶんサービスしてくれてるけど……メビウスさんに、この件はもう?」
「一応伝えたけど、どうなんやろな……どうも人を取引材料にするのは嫌やな」
とは言え、はやては本人からF-22のトラブルは深刻だと聞いた。もしかしたら、エンジンを丸ごと交換の必要があるかもしれない、と。
今は六課の技術陣総出で修復、併せてエンジンそのもののコピーを建造しようとしているが、どちらにせよ飛べないメビウス1は戦力外
と言っていい。ならば、六課に少しでも役に立つ方向に――そこまで考えて、はやては自分の考えに対してひどい嫌悪感を抱いた。
漂流者として保護されるはずの身なのに、ここまで戦ってくれた仲間を、あたしは売る気か――!?

111 :THE OPERATION LYRICAL:2008/06/22(日) 20:16:22 ID:Va9haJpV
そのメビウス1は、シグナムの運転する乗用車の後部座席で、首都クラナガンの道路を走っていた。
「すまねぇな、俺の用事なのにわざわざ車出してもらって」
運転するシグナムにメビウス1は詫びの言葉を言ってみたが、大して気にした様子もなく、彼女は慣れた手つきでステアリングを動かし
ていた。
「何、高町を聖王医療院に送るついでだ」
「にゃははは……本当ならそれは私が言う台詞ですよ、メビウスさん」
助手席に座っているのはなのは。彼女の方は彼女の方で、ガジェット迎撃戦にて保護された女の子が気になって、収容された聖王医療院
に出向くそうだ。
事の発端となった女の子の保護とレリックの確保には成功した機動六課だったが、今回姿を現した召喚師の少女に融合騎、さらに女の子
とレリックを載せたヘリの撃墜を目論んだ二名の女性は、途中介入してきた地面に溶け込む能力を持つ女性によって取り逃がしてしまっ
た。そして、メビウス1のF-22のエンジントラブル。併せて出現した地上本部所属を名乗る戦闘機部隊。
現在彼が向かっているのは、その地上本部だった。
「しかし大丈夫なのか、一人で? 何ならついて行くが……」
「ガキじゃあるまいし、大丈夫だよ。向こうも迎えを出してくれるそうだからな」
地上本部は初めてのメビウス1にシグナムが気にかけてくれてくれたが、彼は断った。事前に向こうには連絡を入れてある。
――まずは、会ってみないとな。実際に行くかどうかは、その時決めればいい。
命からがら帰還し、重大なトラブルを抱えた愛機のことで頭を痛めているところに、はやてから伝えられた地上本部への出向と言う話。
何でも親玉のレジアスとか言う男は、自分のことを大層お気に入りのようで、是非戦闘機部隊のアドバイザーをお願いしたいそうだ。

"もしメビウスさんが行ってくれたら、機動六課は査察を回避できる"

苦々しげな表情と共にはやてはそう言った。不本意なのは当然理解できた。レジアスは有能な男だがその手段は時として強引で、穏健な
本局、強硬な地上本部という組織間の対立が出来上がっているらしい。
どこにでもこういうのはあるんだな、とメビウス1は思う。所属するISAFも正式名称は独立国家連合軍、要するに国家間の軍事同盟だ。
前線で兵士たちが必死になって戦っているはるか後ろで、各国の首脳たちは自国の利益のために動いている。当然、衝突や確執もあった
ことだろう。
「着いたぞ、ここが地上本部だ――」
深く考え込んでいると、シグナムから声をかけられてメビウス1ははっとなる。窓の外に、高層タワーとその周囲を取り囲む数本のタワー
がそびえ立っていた。ここがその地上本部らしい。
「立派なタワーだねぇ……ありがとう、帰りの足はこっちで確保するよ」
「分かった。私たちは、予定通り聖王医療院に向かう」
「何かあれば、連絡してください。それじゃあまた後で、メビウスさん」
車を降りて、シグナムとなのはに別れを告げたメビウス1は地上本部を見上げる。
鬼が出るか蛇が出るか――行ってみるか。

112 :THE OPERATION LYRICAL:2008/06/22(日) 20:18:15 ID:Va9haJpV
地上本部に入ったメビウス1はレジアスの副官を名乗るオーリスと言う女性に案内され、彼の執務室へ向かうことになった。
「……しかし、地上本部と言うだけあって、なかなか立派な建物ですな」
特に会話もなく、淡々と案内されることに一人気まずいものを感じたメビウス1はオーリスに声をかけた。
「ええ、指揮管制能力としては十分なものがあります――もっとも、動くべき戦力は本局に比べて不足していますが」
特に深い意味もない言葉を投げかけてみたのだが、意味深な返答をされてメビウス1は答えに詰まった。どうやら本局と地上本部の対立
は相当深いもののようだ。
「ですが、もうその心配はありません。魔力資質のない人間でも、空戦魔導師と互角以上に戦える力が手に入りましたから」
「……戦闘機のことですか。まさか、質量兵器の使用を禁ずる管理局があんなものを配備されるとは」
「あの戦闘機は質量兵器ではありませんよ? 随所に魔法を応用した技術を投入してますから――あなたが飛ばしているものと同じように」
「…………」
どうも自分のことは調べ尽くされているらしい。返す言葉が見当たらないまま、メビウス1はレジアスの執務室に到着する。
部屋に入ると、恰幅のいい髭面の男が待ち構えていた。この男がレジアスなのだろう。
「よく来てくれた、私がレジアス・ゲイズだ」
「どうも……ISAF空軍第118戦術戦闘飛行隊、現機動六課所属、メビウス1です」
いっそのこと"お会いできて光栄です"も付け加えておくべきだったか?と胸のうちで呟きながら、メビウス1は敬礼してみせた。レジア
スも答礼し、「まぁかけたまえ」とソファーに彼を案内する。
「君の噂はよく聞いているよ。次元漂流者の身でありながら、この地で起きている事件の対応に協力してくれているそうだな」
「いえ……戦闘機についていた国籍マークが、元の世界の敵国のものだったので、協力したまでです」
お世辞のようなレジアスの言葉に適当に返事。まずはこの男がどんな人物か見極めるのが大事だ。
「いや、それにしても君はよくやってくれているよ……魔力資質が無いにも関わらず活躍する君の姿は、私に希望を与えてくれた」
「それはどうも……その希望とやらが、戦闘機ですか?」
核心を突いたメビウス1の発言に、レジアスは堂々と頷いて見せた。
「失礼ですが、あの戦闘機はどこから手に入れたんです?」
「どこからも何も、我々が独自に開発したものだよ」
嘘だな、とメビウス1は考えた。戦闘機の開発はそう短期間で行えるものではない。おそらくは彼も自分と同じように、この世界に飛ば
されてきた戦闘機を使用しているのだろう。もしくは、何らかの形でデータを手に入れてそれを元に複製したか。
「……そうですか。まぁ、いいでしょう――で、俺に戦闘機のアドバイザーをやって欲しいと?」
「はっきり言ってくれるな。その通りだよ、我々は開発はできてもその運用方法はまだ手探りに近い。是非とも、君のようなベテランに
指導してもらいたいのだ」
本題に入ったところで、メビウス1は自分自身に質問をする。果たしてこの男は信用できるのか、と。
機動六課の皆は腹黒さが一片たりとも感じない、悪く言えばお人好しばかりだったが、それゆえに心置きなく協力する気になれた。
だが、この男は確実に裏がある。地上本部の代表とだけあって、権謀呪術に長けていないとやっていけない部分もあるのだろうが、そこ
がまたメビウス1の判断に影響を及ぼしてくる。

113 :THE OPERATION LYRICAL:2008/06/22(日) 20:20:45 ID:Va9haJpV
「……もちろん、タダとは言わんさ」
メビウス1の心中を察してか、レジアスが口を開いた。やはり何かしら企んでいるらしい。
「六課の査察についてでしたら、聞いております。俺はそれを含めて、あなたに協力するか否か考えてます」
「いや、それだけではない。君個人に、プレゼントしたいものがあるのだよ」
思わず、メビウス1は眉をひそめた。レジアスは立ち上がり、「ついて来たまえ」と執務室を出ようとする。メビウス1も後を追った。
彼の後に連なって歩くと、エレベーターに乗り込み地下に移動。エレベーターを降り、レジアスは目の前にあった厳重にロックされた扉
に暗証番号を入力して、中に入った。
「君はたしか、前回の戦闘で機体にトラブルが発生したそうだね?それで、今は飛べない身になっている」
「よくご存知で。それで?」
「君に、こいつをプレゼントしよう」
地下室の、天井のライトが点灯される。その瞬間、メビウス1は視界に映ったものを見て表情を一変させた。
「……F-2だと!?」
単発だが大出力を誇るF110エンジンに、必要な性能をコンパクトに収めた機体。F-2A支援戦闘機が、彼の目の前に駐機されていた。
「どうだろう? F-22にははるかに劣るだろうが、これもなかなか優秀な戦闘機だ。君には、これに乗って私の戦闘機部隊を指導してやっ
て欲しい」
どこか信用ならない、だが笑みを浮かべるレジアスの顔を、メビウス1は睨んだ。確かにF-22ほどではないが、翼の無い今の自分にはこ
の機体は喉から手が出るほど欲しい。
だが――これに乗ると言うことは、この男に手を貸すことを意味する。それは何故だか、六課の皆を裏切ってしまうような気がした。
目の前の力か、それとも仲間との絆か。物言わぬ鋼鉄の翼を見上げて、メビウス1は思考の海に沈んでいった。

「……ラーズグリーズ?」
聖王教会。六課設立の本来の目的――カリムの預言のことを、なのはとフェイトに説明しようと彼女たちを連れてきたはやてだったが、
そのカリムの口から、最近また新たに予言が加わったことを知らされた。
「そう、ラーズグリーズ……私もこの単語は初めて聞きました」
予言について解説するカリム自身、この新たな預言は正直どう解釈していいか分からないらしい。
前回はやてが聖王教会を訪れた時も、このようなことはあった。追加された預言は"恐ろしい御稜威の王が蘇り、救うべき者を無償で救
う"という内容だった。
そして今回のものは――"歴史が大きく変わる時、ラーズグリーズの悪魔はその姿を現す"――ただ、それだけだった。
はやては視線をずらし、なのはとフェイト、さらに六課後見人のクロノを見てみるが、誰も彼もが怪訝な表情を浮かべるばかりだった。
「とりあえず悪魔、と言えば……」
「ああ……」
「なるほど」
「ふむ」
「ふぇ?」
突然皆からの視線が集中して、なのはは当惑気味な声を上げる。確かに、一部からは"管理局の白い悪魔"と言うありがたくない二つ名で
呼ばれているが、本人は理解できていない様子だった。
「な、なんでみんなこっち見るのかな?かな?」
「いや、何でもないよぉなのはちゃん」
とぼけた返事でお茶を濁すはやてをなのははジト目で見るが、 そこはクロノが軽く咳払いして、話の話題を逸らす。
「――とりあえず予言の方は置いておくとして、はやて。以前頼まれたことを調べてみたんだが」
「あ、うん。どうやった?」
クロノは以前調べるようはやてから頼まれた、レジアスの新兵器たる戦闘機について、詳細をまとめた端末を開く。
「まず……皆の知っての通り、新兵器は戦闘機だった。自己開発と彼らは言っているが、その割りに開発予算の請求が僅かしかない。た
ぶん、どこからか戦闘機そのものを手に入れたか、データだけ手に入れて生産したか」
クロノが端末を操作すると、レジアスが前回の戦闘で繰り出したF-14の詳細なデータが皆の前に浮かび上がった。
「これって、どう見ても質量兵器では……」
「僕はそれは思ったよ。ただ、アコースの調べによれば随所に魔導技術を組み込んで、そういった指摘を回避してるらしい……メビウ
ス1のように」
もっともな疑問を口にしたフェイトに、クロノは用意していた回答を出した。その言葉には、どこか刺がある。
「……あと、知っているだろうが、レジアス中将はメビウス1を地上本部に引き入れるつもりらしい」
「あぁ、確かに来とるよ、その話。判断は本人に任せとるけど」
言葉を途中で区切って、はやては一つ、ため息を吐いた。
「任せとるけど……これは、仲間を売ったも同然やな」

114 :THE OPERATION LYRICAL:2008/06/22(日) 20:22:00 ID:Va9haJpV
数日後のことである。
機体の各部に、異常は見当たらない。まだ真新しいコクピットも、事前にマニュアルを熟読したためか、各種操作に手間取ることはなかっ
た。嘆くべきは、これが自分で選んだとはいえ、レジアスの手のひらに自ら飛び乗ることになったということか。
まぁ、これで六課が少しでも救われたのなら――。
誘導員の指示に従って、メビウス1は機体を滑走路端にタキシングさせながら、自分に言い聞かせた。どうせあのまま六課にいてもF-22
はいつ飛べるようになるか分からないし、地上本部の厳しい査察を受けて問題点が浮上し、最悪六課そのものが解体されるような結果に
なるよりはよほどマシである。
「Mobius1 Cleared for takeoff」
通信機を通じて、耳に入ったのは六課の副官と航空機用の管制官を兼任してくれているグリフィスの声ではなく、地上本部所属の女性オ
ペレーターだった。高い声は聞き取りやすいが、それが余計にメビウス1の肩に重い事実となって圧し掛かる。

"どうして地上本部になんか行くんですか"

かつて対峙した若き銃士の言葉が、脳裏をよぎる。事情を説明したが、彼女は理解を示しつつ、納得が行っていない様子だった。
「――Mobius1?」
「あ……Roger.Cleared for takeoff」
返答がないため呼びかけてきた管制官に返事をして、メビウス1はエンジン・スロットルレバーを押し込む。F110エンジンが咆哮を上げて、
機体は一気に加速していく。
日の光を浴びて、輝いて見えるリボンのマークはいつもの通りだが、機体は青い迷彩が施されたF-2Aだった。

115 :THE OPERATION LYRICAL:2008/06/22(日) 20:24:34 ID:Va9haJpV
投下終了。
と言う訳でレジアスフラグです。
なんでF-2なのかと言うと、私の趣味・・・・・・いや、嘘です、半分は。
原作のゲーム中では好きな機体を選べるので、F-22に縛るのもアレかな?と
思って今回一時的に機種転換させてみました。

116 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/22(日) 20:30:50 ID:lH2fgAxj
レジアスフラグGJ
F-2カッコイイよF-2

>>地上本部になんか
や、君は2年ほど陸にいなかったか?w

117 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/22(日) 20:37:44 ID:cj8w52xc
GJですた。
陸出身者にもレジアスや地上本部を嫌う人がいるのねw

118 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/22(日) 20:40:01 ID:HC4+CDws
ラーズグリーズでF−14ってもしかして・・でもそうなると年代が少し合わないなあ

119 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/22(日) 20:47:23 ID:bwUQrAK5
>>118
まぁ、いいじゃんw二次創作だし。

120 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/22(日) 21:03:25 ID:hp2IOUki
>>112
>機動六課の皆は腹黒さが一片たりとも感じない、悪く言えばお人好しばかりだったが、それゆえに心置きなく協力する気になれた。
まあ、六課は作戦のさの字も必要としない方々ばっかりですから、結果的にそうなりますわな。


121 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/22(日) 21:21:30 ID:cl4bgX2A
F-2か…ゼロだとXMAA積んで対空戦闘もバッチリだぜ。
もちろん俺もかなり使ったぜ。
ラーズグリーズ……預言は後半部も来るのか?
レジアスの部隊の誰かなのか?それとも……
ともあれナイスキル!GJ!!

122 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/22(日) 21:28:38 ID:S+FDdMIM
GJ!
仲間のためを思い、地上本部行きを決めるメビウス1
男ですね。帰ってくる日が楽しみです。

123 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/22(日) 21:39:35 ID:GGksnFPo
GJ
メビ1にはレジアスの人柄とか陸の実態も知って欲しいな
どちらかに偏るのではなく双方の懸け橋になる事を祈って

124 :名無し@お腹いっぱい:2008/06/22(日) 23:09:42 ID:sNLAGuDI
ブービー(敢えてこっちで)登場フラグー!?
GJ!どうせなら鬼神も出しちゃえ!

125 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/22(日) 23:15:35 ID:cuLkSA+3
GJ!
ナイトレーベンとオーロラを(ry

126 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/23(月) 01:41:09 ID:SiaxGWGn
GJ!架け橋とかいいねぇはじめてだよ

よし、ラスボスは黄色の13じゃなくてなのはとフェイトを落とした鬼神で
イメージ的に鬼神はエスコン最強だと思っている

127 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/23(月) 01:55:55 ID:FEjgbHDJ
鬼神=メビウス1=グリフィス1─電脳化→ネモ
    └→少年=ブレイズ

こういう相関図だと信じている俺にしてみれば
メビウス1は結構年配の人間なんじゃねえかな、とか

128 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/23(月) 08:13:22 ID:uZGG4chr
>>118
いいから、エスコン5のパッケージ表側を見る作業に戻るんだw

129 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/23(月) 09:24:57 ID:ikgY/y89
>>128
パッケージどころかゲーム機本体もない自分はどうすればよいのでしょうか……
……PS3もXbox360も高杉

130 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/23(月) 09:36:43 ID:FMIXLFhl
>>129
つ イメージ検索

131 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/23(月) 11:14:48 ID:9kgxKkk5
PCのモニターでPSのゲームしてー。
スレ違いだけど

132 :名無しんぼ@お腹いっぱい:2008/06/23(月) 16:23:37 ID:0ki+yeUb
>>129
5はPS2だよ。箱ででてるのは6でPS3では……出てたっけ?

133 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/23(月) 16:32:01 ID:ZcbxVloK
出てないねぇ…DLCが美味すぎて今のところ出す気無いんじゃない?

134 :リリカル×リリカル ◆.k7TdiLwT2 :2008/06/23(月) 16:41:20 ID:Eruns22B
1700に投下予約します

135 :リリカル×リリカル ◆.k7TdiLwT2 :2008/06/23(月) 17:01:37 ID:Eruns22B
 夕餉前という時間だからだろうか。旅館の売りのはずの温泉には、クロノの他に人影は一つもなかった。
 広い湯船というのは、それだけで心を開放的にさせる。例え手足を伸ばしても、それを妨げるものは何もない。
鼻腔をくすぐるのはヒノキの香りだろうか。温泉の効果もあいまって、入浴者の心を安らがせる。
 外を一望できるガラス張りの窓は何らかの処理がなされているのだろう。立ち込める湯気で曇ることもなく、
夕映えを存分に受け入れていた。とはいえ、真に景色を楽しみたいというのなら、露天へと赴くべきなのだろう。
きっと今外を見れば、茜に染まる山々を見ることができるに違いない。
 しかし、クロノには景色を堪能しようなどという心積もりはかけらもなかった。そんな余裕などどこにもなく、
広いはずの湯船を独占しながらも、その小さな体をさらに小さく丸めていた。理由も知れぬ心の震え未だ治まる
気配を見せていない。
 アルフが言う、悩みを吹き飛ばすような効果はそこにありはしなかった。このまま上がっても、きっとフェイ
トたちの顔を曇らせてしまうだろう。
 お湯を手の中で遊ばせながら、クロノは空も見えぬ天を仰いだ。

 いつまでたっても帰ってこないクロノを念話で呼び戻し、そして帰ってきたの様子を見た時のフェイトたちは
絶句した。何しろ、クロノは歯の根も合わぬほど小刻みに体を震わせ、顔面を蒼白にしていたのだ。
 ジュエルシードで何か起きたのかと問えば違うと言い、かといってその理由を尋ねても口を閉ざすだけ。なん
でもないとクロノは言い張ったが、、それで心配するなというほうが無理だった。フェイトなど、探査を任せた
自分のせいだと泣きそうにすらなっていた。
 だが、アルフは違った。強情な子供――実際年齢はこの中で一番下だが――を相手にするの慣れていたのだ。
 暖かいお風呂、おいしい食事、ゆったりとした時間。それに付き添ってくれる誰か。彼女は経験上、それらが
あれば大抵の問題は解決できることを知っていたのだ。
 惜しむらくは、そこまで求めるのは酷であろうが、クロノが抱えた問題が尋常でないと気付けなかったことか。
 尤も、繰り返すように彼女の中心はあくまでフェイトだ。かけられた優しさは、クロノの調査が予想を遥かに
上回るほど芳しいものだったことと、必ずしも無関係ではあるまい。あくまで彼に分け与えられたのは余分だ。

 だからこそ、クロノにとっては心地よいものだったのだが――

 手の平は掬ったお湯がたゆたう水鏡。映る己の顔を見てクロノは一人自嘲した。孤独は嫌なくせに、誰かと触
れ合うこと恐れてる。
 きっとそれは、どうしようもなく無様で見苦しいに違いない。
 涙のように毀れる雫が、一つ、二つと水面を打つ。
 しかし、その一人の静寂もそう長くは続かなかった。それも当然だ。いくら夕餉前とはいえ、ゴールデンウ
ィークの宿泊施設ともなれば、今まで一人でいれたこと自体が奇跡に近い。
 来客を示すがらりという扉の開く音が室内に響く。そちらにクロノが目を見やれば、そのがっちりとした体の
至るところに裂傷や切り傷――それも恐らくは刀傷――の痕を残した壮年の男性がいた。
 士郎だった。股間こそ白いタオルで隠しているが、全身をくまなく覆う傷跡は隠せはしない。酷い火傷の痕も
ある。一般人なら、一度は目を向け、そのすぐ後には逸らしたくなるだろう。正視に耐えないほどではないが、
やはりどうしても醜い。
 それを理解してか、士郎はクロノの存在を認めると、その顔に困ったような笑みを浮かべる。


「お、先客がいたか。こりゃ参ったな

 頭をかく士郎にクロノは小さく頭を下げた。士郎が思っていたほど、クロノは全身傷跡だらけの士郎を見ても
恐れてはいない。その風体に僅かに目を見開いたものの、九歳らしからぬ落ち着きで、ああ、この人はこういう
人なんだ、と純然たる事実を受け入れただけだ。



136 :691:2008/06/23(月) 17:02:24 ID:Eruns22B
「いやあ、見苦しいものを見せてしまって」

 言う士郎にはどこにも卑屈はない。
 傷跡の古さからすれば、一年や二年はおろか、十年の月日ですら追いつくまい。これまで、彼はどれだけ似た
ような状況を経験してきたのだろう。慣れるまでには、常人ならば多くの時間を必要とする。
 そしてその長き時間は、心をすり減らし、慣れとは違う諦めへと人を貶めるだろう。
 それでも士郎は朗らかに笑う。だからきっと、士郎は初めから辛さなど感じていなかった。己に恥じるところ
などなく、その上で人にそれを押し付けない気配りができる繊細さも兼ね備えていた。傷だらけの体とはまるで
正反対だ。
 しかし、士郎の内心などクロノの与り知らぬことで、関係もない。せいぜいがわずかばかりの気遣いと部屋に
戻らないための口実として、今すぐ後にしないだけ。
 それでも、士郎にとってはそれで十分だったらしい。木椅子に座って鼻歌交じりに体を洗い始める。

「ごめんね、本当にこんな傷だらけのおじさんが入ってきちゃって。あ、でもヤクザじゃないから安心して」

「いえ、お構いなく」

 本心からの言葉だった。構って欲しくなかったし、気にも留めていなかった。
 仮に。もし仮に、クロノが一人でヒドゥンに立ち向かわなかった。そんな未来があったとして。そのクロノが
記憶を持ったままこの場にいれば、きっと今この状況は成り立たなかったろう。
 だが、今ここにいるのはたった一人の記憶を失った少年だ。そのきざはしを捉えはしたが、記憶は未だ霧の中。
 クロノは、士郎に何の関心も抱いていない。
 そう、あくまでクロノは、だ。

「いや、何。さっき逃げられちゃったからね。二度も驚かせたらまずいかな、と思ったんだよ」

 士郎は違う。彼は昼下がりに走り去った誰かが少年であることを、そしてその少年が今目の前にいるクロノで
あることを知っていた。気配と一瞬見えた後姿、それに残された足跡。それだけ情報があれば、現役を退いたと
はいえ仮にも御神流皆伝。わからなければその不破の名が泣く。
 驚愕がクロノを襲った。混乱は素直に肉体に現れ、体を強張らせる。

「ああ、いや、ごめんごめん。本当に驚かせるつもりはなかったんだ」

 その気配を察したらしい。鏡もないというのに、後ろ越しで士郎は詫びた。

「いえ……僕も、その、僕の方こそいきなり……ごめんなさい」

 まさか相手に面と向かって逃げたとも言えずクロノは口を濁した。事実そうであっても、言葉にしては相手に
失礼ではあるし、その理由を問われても答えられないからだ。

「それじゃあ、お互い様ってことで」

 言って士郎は桶で体についた泡を流す。会話をしていたにしては、恐ろしく早い。特別急いでいた様子はなか
ったのだから、これが普段なのだろう。
 泡にまみれた白いお湯が排水溝へと流されていく。

「っと、失礼して」

 ああ、いいお湯だ――と士郎は喉の奥から搾り出すような呻いた。瞳こそ閉じていないが半眼で、頭の上には
手ぬぐいを乗せている。
 クロノとしても同感だったが、そもそもお湯の良し悪しというものがわからないので、その声を聞き流した。
 自分に向けられたわけではないというのに、ともすれば答えたくなるような気安さが士郎の声にはある。
 気まずさとも違う居心地の悪さを持て余して、居住まいを正す。全身をお湯に投げ出す士郎とは正反対に背筋
を伸ばした。

137 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/23(月) 17:03:00 ID:RvR6UaS3
支援?

138 :リリカル×リリカル ◆.k7TdiLwT2 :2008/06/23(月) 17:03:03 ID:Eruns22B
「そんな肩に力を入れて……疲れないかい?」

「いえ、普段と同じですから」

「そっちの方が疲れそうだな。もっと楽にしたらどうだい。若いうちからそんなだと、年を取ってから大変だぞ。
 家の娘なんか、ああ、君と同じ年くらいなんだけど、お風呂に入るとまるでバターみたいに溶けちゃって。
 ……最近一緒に入ってくれないんだけどね。息子の方も早くに一緒に入るの嫌がったし。まったく、子どもと
一緒にお風呂に入る親の喜びってのをわかっちゃいないんだ」

 聞いてもいないというのに一息でそこまで言う士郎。軽く冗談めいた口調ではあるが、そこはかとなく本気な
のか。悔しさのようなものが時折見え隠れ手している。大の大人だというのに、それこそどこか子供じみていた。
 クロノは笑おうとして。

「ってまあ、俺がこんな傷だらけのせいってのもあるんだけどね」

 そして士郎が漏らした呟きにその笑顔を引っ込めた。悲しみに濡れていたというわけではない。ただ純粋に事
実を告げるようで、そこに感情の意図はない。だからこそ、浮き彫りにするかのように憂色に包まれていた。
 多分それは、悲しいことなのだろう。少なくともクロノはそう感じていた。

「その傷を――」

 だから気付けば、クロノの口は独りでに動いていた。

「いえ、傷だけでなく、その傷から生まれた悲しみを、なくしたいと思ったことはありませんか?」

 言葉の意味をクロノは理解していない。ただ突き動かされるままに言っただけだ。だが、茫洋な言葉ではない。
それにしては真実味がありすぎる。
 士郎はその子供らしからぬ口調に一瞬驚いた顔を見せたが、しばらく思案して、こう言った。

「なくしたい、と思ったことはないな。この傷は俺の剣士としての修練の証で、護衛として誰かを守ったという
誇りだ。そりゃあ、悲しいと思ったことがないわけじゃない。綺麗な体だったら子供たちと一緒にもっと風呂に
入れたかもしれないし、銭湯やプールにだって普通に行けたかもしれない。
 それでも、この傷も自分の一部だ。
 なくす、ってことは失うって事だからね。自分を失くしたくまで傷を消したいとは思わないよ」

 つまりそれは、記憶のないクロノには失くすべき自分もないということで。
 もしかしたら、自分すらも失くしてしまっているかもしれなくて。
 しかし、それはとうに承知のことだった。胸を痛めはするが、崩れ落ちるほどではない。では何故クロノは顔
色を失っているのか。本人にはわからない。覚悟していたはずなのに、なぜ自分はこうまで傷付いているのか。

「そう……ですか。いきなり変なことを言ってすみませんでした」

「いや、いいってことよ。それにしてもなんだ。もし悩みがあるなら、おじさんが――」

 わからないから、逃げ出した。

「あ、おい、ちょっと!」

 かけられる声を無視して、逃げるようにして湯殿を後にする。
 悩みなど、言えるわけがない。傷などさらけ出せるはずもない。

 悲しみに、耐えられるるはずがない。

 クロノは知らない。今顔を歪めているのは、士郎のせいなどではなく、彼自身が己を断罪をしているが故とい
うことを。
 湯上りの肌に、流れる風の感触はやけに冷たかった――

139 :リリカル×リリカル ◆.k7TdiLwT2 :2008/06/23(月) 17:07:06 ID:Eruns22B
以上です。
今回はお風呂に入っただけ。
相変わらず話が進みません。
ちなみに予定では、士郎と恭也が一緒に入ってきて、士郎が恭也と似ているなーとか言う発言をする予定でしたが、
記憶を失ってなお恭也と似ているのか、などといった疑問が浮かんだので泣く泣く変更
原作とのクロスを意識している私には団長の重いでした

140 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/23(月) 17:54:05 ID:5I6NDhU8
>>139
GJなんだが、まずは誤字をどうにかしようか。

141 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/23(月) 19:02:05 ID:pchd0vUS
GJ!!です。
クロノの精神描写が凄く面白かったです。


142 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/23(月) 19:49:13 ID:Z07qUIwq
GJ!
士郎さんの体の傷をこのように使うとは、凄いですね。

143 :リリカル×リリカル ◆.k7TdiLwT2 :2008/06/24(火) 21:33:26 ID:oi+ZuWL5
【告知】

クロスSS運営議論スレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/anime/6053/1208574847/

にて、避難所およびウロス感想・雑談スレ、ひいてはまとめwikiの運営に関する議論が進行中です。
範囲が避難所内に留まらないことから、こちらの方(クロススレ)にご報告をいたします。
ぜひご意見をお寄せください。皆様のご参加をお待ちしています。

【議題】

・ウロススレのテンプレ作成(*)
・避難所で許容するSSの内容のライン
・web拍手更新の停止に伴う、感想専用スレの是非についての議論
・18禁ネタの保管の扱い(wikiはアダルトコンテンツを禁止しています)
http://www1.atwiki.jp/guide/pages/30.html#id_689a74e1

(* http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/anime/6053/1208574847/201
に新テンプレの仮案が提案され、現在賛成多数です。ご参照ください。)

144 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/24(火) 21:35:15 ID:oi+ZuWL5
コテを外し忘れました
決して他意はありませんので、見なかったことにしてください

145 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/24(火) 21:46:36 ID:nf8LC6wl
このうっかりさんめ!

146 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/24(火) 23:31:04 ID:nujUDCtk
今日は議論してるから投下は無しですね

147 :リリカル×リリカル ◆.k7TdiLwT2 :2008/06/25(水) 03:55:57 ID:K3+8CqOL
気を取り直して、投下します
予約はないので、すぐにしても大丈夫ですよね?

148 :リリカル×リリカル ◆.k7TdiLwT2 :2008/06/25(水) 03:57:22 ID:K3+8CqOL
 朗々たる月が怪しく山野を照らす。ジュエルシードの白光も相俟ってこの一部だけはまるで夜を忘れたかのよ
うだ。しかし、クロノの顔面が蒼白なのは、その光のせいではない。
 アルフの予想に反し――あるいは予想通りといったところか――、クロノの調子は夕飯はおろか、ジュエル
シードを前にしても戻ることはなかった。
 顔色を曇らせ、言葉少なく。悩みの一つでも口にすれば、アルフはもとより、フェイトも安心できただろう。
 しかし、クロノは口をつぐんだまま、何一つ己の弱さを漏らすことはなかった。それに飽き足らず、目的はあ
くまでジュエルシードの探索だと嘯き、それ以上の追求を避けたのだ。
 否定できないことを知っての発言だった。逃げ道としては最善で、何より最悪だ。水の中で光り輝くジュエル
シードを前にして、その気分の悪さは一層増している。
 心配が嬉しくなかったわけではない。確たる自己を持たぬ自分にかけられる優しさは、クロノにとって唯一と
言っていいほどの救いだ。だからこそ、それを遠ざけた。
 救われていはいけない、とどこか心の片隅で知っていたのだ。何も告げぬ自分に、何も知らぬ自分に救われる
価値などないと、他ならぬクロノ自身が断じていた。

「おっほう。さっすが、ロストロギア。すごい魔力だ」

 ことさら明るく言うアルフの言葉に、はっとクロノは正気を取り戻した。言い訳にジュエルシードを使ったの
だから最悪でもその役目だけは遂げねばなるまい。封印はフェイトが行うが、そのサポートや、万が一の事態に
備えるのがクロノの役割だ。
 両手で持つロッドに力を込め、光の柱を厳しく見据える。バルディッシュから伸びる魔力の帯が氾濫するジュ
エルシードの力を絡めとり、徐々に不活性状態へと持ち込んでいく。
 その様はまるで機織のようだ。ともすれば、あらぬ方に手を伸ばしそうになる魔力の帯を、フェイトの魔力が
そっと撫で上げ、綿密に一つの模様を紡ぎ上げる。強引に力で押し付けるでもなく、むずがる赤子をあやすよう
に、フェイトはジュエルシードを封印する。
 実際、フェイトはこれまでアルフと二人、あるいは単独でジュエルシードを封印してきたのだ、今更クロノが
出張る余地はない。ほどなくして。何事も起きることなく光は穏やかに収まった。フェイトの手に、青の宝石が
握られる。封印は完了した。
 フェイトの頬が、僅かに緩む。アルフもジュエルシードを手に入れたことを喜び囃し立てていた。目的の品を
手に入れた二人の気には、本人たちでは意識できないほどだが、かすかに緩みが生まれていた。
 だからだろう。こちらに向かってやってくる魔力反応に、クロノはいち早く気が付いた。

「フェイト、アルフさんっ! 何か来る!」

 その何か、など今更問うまでもない。散策用の硬く踏み固められた山道を上がってきたのは、白い防護服に身
を包んだ、現地の魔導師だった。肩に使い魔らしき小動物を乗せ、僅かに息を弾ませている。
 その姿を一目見た瞬間に、クロノは呼吸を忘れていた。S2Uを取り落とさなかったことこそが不思議だった。
あるいは、取り乱さなかったのは、あまりの衝撃ゆえか。
 昼間の邂逅はクロノにとって感謝すべき幸運だったのかもしれない。さもなければ、今この瞬間、平静を取り
繕うことなど出来なかったろう。あくまで、外見だけではあったが。

「あーら、あらあらあら」

 笑うように、歌うように、アルフの楽しげな声が響く。そこに込められた敵意に反応したのだろう。盾にでも
しようとしたのか、白の少女はデバイスを両手で前に掲げた。
 本来、デバイスをそのように構える必要などどこにもない。純然たる魔力行使に、構えなど必要ないからだ。
 つまり、少女は恐怖を感じていたのだ。笑みとは本来攻撃的な動作である。危険を前に両手を突き出すように、
その意味を正しく理解して、間に何か置かなければいけないと本能で判断していた。
 その少女が戦う姿勢を見せた瞬間、クロノの心臓は、一瞬、鼓動を打つのを、止めた。
 この衝撃は何物にも例えられまい。クロノ・ハーヴェイという存在そのものが、眼前の光景の全てを否定して
いた。呼吸も、鼓動も、流れる血液さえもその働きを忘れ、全身全霊で叫んでいた。
 違う、と。

149 :リリカル×リリカル ◆.k7TdiLwT2 :2008/06/25(水) 03:58:35 ID:K3+8CqOL
「私、親切にも言ったよね。いい子にしてないと、がぶっと行くよって!!」

 言い終わるや否や、アルフが本来の、狼としての姿を取り戻す。獣の咆哮が月夜に響き、肌はおろか聞く者の
心までをも震わせる。
 少女と、その肩の小動物もまた、その鎖からは逃れられなかった。体を強張らせ、一瞬動きを忘れる。
 その隙を、アルフが逃すはずもなかった。

「フェイト、クロノっ! あんたらは先に帰ってなあっ!」

 そして高く跳躍する。少女たちに襲い掛かるために。フェイトはその様子を冷たく眺め、そしてクロノは手を
伸ばした。いったい何故、何のために。わからぬまま空手を伸ばす。

「っくうっ!!」

 獣としての本能からか。いち早く硬直から抜け出した小動物が、少女の肩から飛び降り、障壁を展開させた。
 構築から展開までが、恐ろしく早い。瞬間で作られたというのに要点を抑えた障壁の強度は、即席はおろか、
正式な手順を踏んでのものと比較しても遜色ないに違いない。
 事実、強靭な肉体を持つアルフの爪と牙でさえ、未だに魔力の壁を突破できないでいた。
 魔力と魔力がぶつかり合い、紫電を撒き散らせる。木で出来た橋のあちこちは焼け焦げ、吹き荒れる風が木の
葉を舞い上げる。まるで小型の竜巻が踊っているかのようだ。

「こいつは僕が抑える。君はあの金色の子をお願いっ!」

 小動物が叫ぶ。

「させるとでも思ってんの!!」

 アルフが叫ぶ。

「させて、みせるさっ!!」

 結界越しににらみ合いながら、二匹は意地と意地をぶつけ合っていた。しかし、その均衡は長くは続かない。
その強固な結界の術式の一部が、徐々にではあるが書き換えられていたのだ。無論、その強度を保ったまま。
 アルフではなく、他ならぬ術者自身の手によって。

「いけないっ!!」

 その術式の狙いを、一目でクロノは看破した。捕縛結界だ。術式そのものを反転させ、強固な結界をアルフを
閉じ込める檻へと変換させる。冷静であればアルフとて気付いたに違いない。しかしフェイトを引き合いに出さ
れた今、アルフの頭には血が上っていた。強引に結界を押し破ろうとし、そしてその瞬間に檻に閉じ込められる。
 その結果、何が起きるか。
 クロノとフェイト。少女と小動物の二対二の戦いが始まるに違いない。

「……めだ」

 心の底から恐怖に震え、クロノは呟いた。

「だ……め、だ」

 怖い、怖い怖い怖い怖い。
 戦うことが怖いのではない。

「だ、めだぁぁぁああああ!!」

 少女が戦う姿を見ることが、何よりも恐ろしい!

150 :リリカル×リリカル ◆.k7TdiLwT2 :2008/06/25(水) 03:59:21 ID:K3+8CqOL
「なっ!」

「インターフェア? いや、これはディスペル!!」

 アルフと、小動物が驚きの声を漏らした。アルフは突如障壁が消え失せたことに。小動物は、自信を持って構
成したはずの結界を解呪されたことに。特に、小動物の驚きは一際大きなものだった。構成の一部であった捕縛
結界だけならば理解できよう。障壁の一部を削ることも不可能ではない。だが、完成された防御結界にまで干渉
はおろか、術式そのものをキャンセルするなど、尋常なことではない。
 こと補助、防御に関して、小動物はおよそ一流を誇れるほどの腕前だ。この場にいる誰の攻撃だろうと、その
結界を一度で打ち抜くことは不可能だろう。それを、いくら攻撃を受けていた上からとはいえ、完全に解呪する。
 一流を超え、天才の域に達した魔技だ。

「は、あ。はぁ、は……あ」

 それをなしたのが、デバイスに寄りかかりながら喘いでいる少年だと、誰が想像できよう。その線の細さとは
裏腹に、彼はこの場にいる誰よりも卓越した魔道技術を持っていた。

「アルフさん、下がって」

「あいよ」

 此度ばかりは、アルフも素直に頷いた。強引に攻めて罠に嵌りそうだったのだから当然だ。フェイトの前に降
り立ち、四肢を地面へと食い込ませる。その様はまるで我が子を守る母親のようだ。
 だが、その決意が気高ければ気高いほど、少女らにとっては立ちふさがる障害の大きさを意味している。尤も、
乗り越えられない壁を、障害と呼べるのであればの話だが。
 顔を硬く強張らせ、一触即発の空気が辺りに漂う。
 圧倒的に有利なのはフェイトらだ。数はもとより、その技量ですら少女らを上回っている。精神的な余裕から、
アルフは牙をむき出しに笑みすら浮かべていた。フェイトも無表情にデバイスを構えている。
 ただ一人、クロノだけは戦意を見せていなかった。荒かった呼吸を治めると、す、とデバイスを地に向けた。

「……帰るんだ。君たちは、君は、戦っちゃ、いけない」

 それは、この場にいる誰の予想も裏切っていたに違いない。
 今戦えば、ほぼ確実に少女らは打ち倒せるのだ。これほど好機は、そうそう得られるものではない。ジュエル
シードを奪うならば、これ以上の選択肢はないはずだ。
 だというのに、クロノは少女らを、いや、少女を見逃すと言っていた。

「何言ってるんだい、小坊主! あいつらはジュエルシードを持ってるんだよ! それをみすみす見逃すような
真似、できるはずがないじゃないか」

 到底、聞き逃せる内容ではない。アルフは唾を飛ばしながらクロノに食って掛かった。先程助けられていなけ
れば、それこそ牙を首筋に食い込ませていたに違いない。フェイトもその顔に困惑を浮かべていた。少女らもだ。
 ただ一人理解されぬ考え。いや、考えなどない。ただ感情に突き動かされるまま、クロノは首を横に振る。

「今奪っても……意味がない」

 だが、感情とは裏腹に、思考はどこまでも冷静だった。理解されぬ何かを口にするのではなく、誰もが納得で
きる理屈を、心にも思っていないというのにすらすらと口にする。

「彼女たちがまた一つでもジュエルシードを見つけてしまえば、僕らはまた奪わないといけない。だったら……、
今奪っても、意味がない。無駄な、労力だ」

 だから、この場は見逃しても構わない――と息を付く。
 それは、もしジュエルシード全てを集めるとなれば、正論だった。いま一つや二つその数を手にしたところで、
さほど意味はない。最後の一つ手に入れるまで、堂々巡りが繰り返されるだけ。徒労に過ぎない。
 だが、その理屈には大きな穴が二つある。

「はっ、そんなの、ジュエルシードを集めようって気がなくなるぐらい痛めつければいいだけさ!!」

「それに、一つでも多く、少しでも早く、母さんに届けないと」

151 :リリカル×リリカル ◆.k7TdiLwT2 :2008/06/25(水) 04:00:20 ID:K3+8CqOL
 そう。クロノの発言はあくまで全てを、迅速に集める場合に限ったことだ。それも敵である少女らに、ある種
信頼にも近い何かに頼った不確かなものに過ぎない。
 少女らがジュエルシードを集め、それをどこかに隠したらどうなる。その先が、フェイトらの手が届く場所だ
とは限らない。今確実に叩き潰しておくことが、最もリスクが少ない方法だ。フェイトにとっては辛い選択だが、
母親と秤にかければ、たやすく非情に傾く。そしてフェイトの決定はアルフの決定だ。
 つまり、戦いは避けられない。
 それを理解したクロノの顔が苦しく歪む。手が白くなるほどデバイスを硬く握り締め、何か、何か他に方法は
ないかと思考を走らせる。それでも、それは見つからない。見つかるはずがない。
 求める物が同じなら、奪い合う以外に方法はない。言葉だけで解決できる問題ではない。
 それでも、否定したいのだ。彼女が戦うことを。

「……それじゃあ、賭けよう。お互いのジュエルシードを全部。一対一で、勝ったほうが全てを得る」

「フェイト!?」

 そのクロノの必死さが伝わったのか。数的優位までも捨てて、フェイトは一対一を申し出た。
 とはいえ、アルフは驚きはしたが、それほど無茶な賭けではない。フェイトはただの魔導師ではなく、指導を
受けた優れた戦闘技能者だ。同年代の少女相手ならば、一対一で負けはない。

「数は。こちらは二つ」

「こっちは三つだよ」

 何より、オールオアナッシングであれば、数で劣るフェイトらが譲歩すべきだろう。そして、譲った上でなお
その優位は覆らない。それを理解しているのだろう。少女も、小動物も喜ぶ気配は欠片も見せていなかった。
 そして、この賭けを拒否すれば、今度こそフェイトもアルフも、迷いなく彼女ら叩き伏せる。逃げ道はない。

「っく……」

 噛み締めたクロノの歯の隙間から、悔しみの吐息が漏れた。フェイトが真実譲歩したのは、少女らにではない。
そう見えるだけで、実際はクロノに向けたものだった。であれば、クロノはこれ以上口を挟むことなど出来ない。
 これが限度一杯なのだ。
 そもそも叩き伏せればいいだけなのだから当然だ。
 だから、これはクロノの我が儘に過ぎず、それを受け入れてもらった以上、クロノにはただ戦いを眺めている
ことしか許されない。何より、少女は既に戦いを受け入れた。


 その言葉に、重々しくも頷いた。
 この戦いを見届ける義務がクロノにはある。フェイトの弟子として、この状況を作り出した張本人として。
 固唾を呑みながら、空中を飛び交う金と桃色の軌跡をじっと眺める。戦況は圧倒的にフェイトが有利だった。
速度を活かし死角へと回り込むと半月の斧先を叩きつける。
 幸いにして、あるいは不幸にしてか、少女に有効打は一撃として入っていないが、それも時間の問題だろう。
インテリジェントデバイスの判断によって辛くも回避はしているが、術者本人は反応すらできていない。
 徐々にではあるが、切っ先は少女を捕らえ始め、その白の防護服を散らしていく。後一寸、後半寸。切っ先が
肉に食い込めば。非殺傷設定とて、その質量や衝撃そのものは消去しきれない。まともに一撃が入れば、少女の
体には深い傷跡が残るだろう。少なくとも、フェイトの一撃にはそれだけの魔力が込められている。
 きっと、それは悲しいことだ。
 温泉でであった男性の言葉がクロノの脳裏をよぎる。傷も含めて、自分自身の一部だと彼は言っていた。でも
それは、悲しみがそこにあることを否定していないのだ。
 理解した途端、クロノは全てがどうでも良くなった。少女を悲しませたくないという一念だけが体中を支配し、

152 :リリカル×リリカル ◆.k7TdiLwT2 :2008/06/25(水) 04:00:45 ID:K3+8CqOL
「なのは……」

 そして飛び出そうとした瞬間、小動物が、焦りを含んだ声で少女の名を呟いた。体が、凍る。名を、聞いた。
白の魔導師の、少女の名だ。見たこともない少女の、会ったこともないはずの、少女の名。
 だというのに、何故、何故、こうもクロノの心を縛り付けるのか。ただ一言、その名を口にすらしていないと
いうのに、耳にしただけだというのに、どうして指先一つ動かせないのか。
 戦いは、佳境に入っていた。高速戦闘で一通り相手を翻弄したフェイトが距離をとって、砲撃魔法を打ち込む。
なのはは相殺するように同じく砲撃魔法を放っていたが、クロノにはわかる。あれは囮だ。
 拮抗し、なのはの砲撃が傍目には押しているように見えるだろう。それは事実だ。しかし、フェイトにとって、
砲撃はそれで決まれば御の字といった程度の布石にしか過ぎない。打ち合いはしても、それで相手を打ち倒そう
などとは考えていない。
 反対に、なのははその一撃にあまりにも集中しすぎていた。相手に当てるのではなく、砲撃を押し返すことに
ばかり気を取られている。押し切ったとしても、相殺した一撃では大してダメージも見込めないというのにだ。
 経験の差が如実に出ていた。

「なのは……すごい……」

 それは小動物も同じだ。砲撃の派手さと込められた魔力の大きさにばかり目を取られ、戦術にまで頭が回って
いない。ただ二人。アルフとクロノだけが、この後のフェイトの勝利を確信していた。

「ああ、すごい。でも、甘いね……」

「……やっぱり、彼女に戦いは」

 向いていないんだ――心の中でだけそう呟いて、クロノは手の平で顔を覆った。遮られた視界の先で何が起き
るか。既に勝敗は決した。ならば、これ以上見ている必要などない。
 程なく、ジュエルシードは全てフェイトのものになるだろう。そして、なのはという少女は持っていた全ての
ジュエルシードを失うのだろう。
 その時、きっと彼女は悲しい顔をするに違いない。それを、見たくはなかった。
 しばしの沈黙。それまでの戦闘がまるで嘘だったかのように、夜の風に梢がさわさわと騒ぎ出す。フェイトが、
勝負を決めたのだ。
 地面を青白く照らす光は、月ではなく、封印状態のジュエルシードのものだろう。

「帰ろう、アルフ……それにクロノ」

 降り立つと同時に告げられた言葉に、クロノは頷いた。アルフもまた狼ではなく人の形態に変身する。もう、
ここに用はない。彼女たちに、用はない。

「これ以上、君は戦うべきじゃない」

 背中越しに、クロノは言葉を投げつけた。顔を見ては言えない事もある。フェイトとて同じだ。彼女は、人を
傷付けて平気でいられるような人間ではない。

「私たちの前に、もう現れないほうがいい。次は、止められないかもしれない」

 そうして、去る。これ以上の会話は無意味だ。譲れないなら、これ以上馴れ合うべきではない。

「待って!!」

 マントを翻すフェイトに、なのはの必死な声が掛かった。一瞬その声にフェイトは足を止め、しかし、それを
振り切るように、飛行魔法でその場を後にした。
 クロノとアルフもも、同じように空を飛ぶと、夜の森へと溶けていく。

「お名前を――!!」

 背後から響く声は、まるで毒のように胸の奥にまで深く染み込んだ。そう、彼女は毒だ。フェイトと、そして
クロノをおかしくする。
 その猛毒が、優しさという名を持っていることを二人は知らない。
 今は……まだ――

153 :リリカル×リリカル ◆.k7TdiLwT2 :2008/06/25(水) 04:05:53 ID:K3+8CqOL
以上です
温泉はちゃhかっと終わらせるつもりだったのに、あまり話を進められませんでした

原作でフェイトはジュエルシードを一個しか賭けなかった理由
個人的には、「次」をなのはに期待していたのだと思います
全部取ろうと思えば取れたはず
だというのに、相手がまだ持っているかもしれないのに奪ったのは一つだけで、
「次は止められないかもしれない」
来るなといいながら、そもそも自分でその次を想定している辺り、猫の時点で結構気にしてたんだなー、と

154 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 13:29:53 ID:euWBNCdv
GJ
まさかなのはとの出会いがこんなにあっさりとは予想外
ジュエルシードの数の違いとか含め、これからどうなるか気になります

155 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 16:53:12 ID:o0lRqVI5
GJ!!です。
まさか、ここで2個奪うとはw
本編のなのはとフェイトの流れとは乖離し始めたので楽しみです。

156 :魔術士オーフェンStrikers:2008/06/25(水) 18:08:15 ID:sfsSCJAn
魔術士オーフェンStrikers第八話、完成したんで今日の九時くらいに投下したいんですがよろしいでしょうか?

157 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 18:31:51 ID:yZvYrhZd
>>156
投下大歓迎!!待ってました。
でもsage忘れ注意だぜ

158 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 18:53:56 ID:w7D4Q1jI
お待ちしております!
その時間帯に支援できるかどうか分からないけどw

159 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 19:56:34 ID:A3n7KxBF
最近来ないなーと思ってたら来る不思議!

160 :魔術士オーフェンStrikers:2008/06/25(水) 21:01:39 ID:sfsSCJAn
え〜、では投下させていただきます。

…また下げ忘れてたorz
俺って奴は何でこう…。

161 :魔術士オーフェンStrikers:2008/06/25(水) 21:04:20 ID:sfsSCJAn
魔術士オーフェンStrikerS 第八話

「スターズ01、スターズ02、及びライトニング01、制空権獲得しました!」
「ガジェット弐型散開!これより追撃戦に入ります!」
「スターズ03、スターズ04、二両目のガジェット全て撃破!これより三両目の制圧に取り掛かります!」
照明が無い、代わりに壁に備え付けられている大きな画面から漏れ出る光で室内の輪郭を形どっているここは機動六課作戦司令室、通称ロングアーチ。
持ち場の座席に腰掛け、せわしなく手元のパネルを叩きながら通信士であるシャリオ・フィニーノ、ルキエ・リリノ、アルト・クラエッタの三人が現場の状況を逐一報告する。
「今の所は順調ですね」
「ん、そやね…」
彼女達の報告を聞きながら作戦模様を映し出し続けているディスプレイの正面に座る機動六課部隊長八神はやて、そしてその傍らに佇む部隊長補佐であるグリフィス・ロウランがそう呟く。
と、彼女の声音に芳しくない物を感じたのかグリフィスが周りに聞こえないくらいの声量ではやてにこっそり話しかける。

「…八神部隊長、やはり休まれては如何ですか?顔色が優れませんよ?」
「え、そうかなぁ?」
「ええ。作戦が終了したらまた後処理で忙しくなるでしょうし…。幸いここまでは問題無く進んでますし後の指揮は私に任せて…」
どうか休んでいてくれませんか?とグリフィスが彼女に薦める。だが彼女は首を左右に振ると正面のディスプレイに向き直る。
「ありがとうな。でもウチなら大丈夫やって、これくらい。それに今ウチが眠いから抜けまっせ〜、なんて理由で離脱したらみんなの士気に関わるやろ?」
「それは…そうですが…しかし、」
グリフィスが尚もはやてに反論しようと身を乗り出す。と、
「あれ?」
はやて達の前方で淀み無く報告を続けていたシャリオから突然、疑問符のようなものが上がる。
「どうした?」
彼女の声にグリフィスがいち早く反応する。

「ええと、さっきまでレリックの魔力反応に隠れていて気付かなかったんですが…レリックのすぐ近くにほんの微弱ですが別の反応を感知しました」
「なんだと!?」
シャリオのその言葉に室内に僅かな緊張が走る。当然だ。この反応がもしガジェットの物ならばレリックはすでに敵の手の中にあるという事になる。

「貨物車両はまだ破られてないんじゃなかったのか!?」
「は、はい。ガジェットが侵入した痕跡はありません」
「じゃあ、なぜ!?」
焦りも露わに声を荒らげるグリフィスをはやてが嗜める。
「落ち着いてぇな、グリフィス君。まだその反応が敵のもんやと決まったわけやないんやから…」
そう言うとはやてはアルトにサーチャーに列車内の映像を出すよう指示を送る。
彼女は頷き手元のパネルを数回叩くと、現場の隊員達を映していた正面の大きなモニターが薄暗い貨物列車内の映像に切り替わる。
「これは…」
サーチャーに映し出されたものを見たはやてが誰にともなく呟く。いや、彼女だけではない。その場に居合わせた全員が予想外の光景に困惑の色を浮かべていた。
「人、ですね…」
これまたグリフィスが誰にともなく呟く。彼の言う通りモニターに映されたのは初老の男性だった。いや、よく見れば初老というほど高齢でもない。
せいぜい壮年と言った所か。恐らく豊かに蓄えた口周りの白髭と白髪が見た者に老人というイメージを抱かせるのだろう。
服装の方はシンプルな白いマント―――いや、あれはローブだろうか?―――を纏っている。
上から下まで真っ白の、恐らく真近で見れば肌すらも白いのではないかと思う程全身を異様なほど白で染め上げたような男。その男が密閉された貨物車両内、つまりはレリックのすぐ近くに佇んでいた。


162 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 21:05:14 ID:YoiwA/Fw
しえん

163 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 21:05:21 ID:yZvYrhZd
支援

164 :魔術士オーフェンStrikers:2008/06/25(水) 21:07:38 ID:sfsSCJAn
「どういう事だ…?どうやってあの中に……。いや、それよりも列車を襲撃したのはガジェットだけのはずじゃ……」
皆の疑問を代弁するようにグリフィスが一人、顎に手を当てながら唸る。彼の言う通り、エンゲージ前に行った広域スキャンでは確かにガジェット以外の反応は確認出来なかった。
(でも現に肉眼で確認出来てもうてるからなぁ…。サーチャーの故障やろうか?)
そっちの方が自分達にとっては大問題であるが…。そんな益体もない感想を胸中で呟きながらはやてが皆に指示を出す。
「うん、あの人が何者なのかは今は置いておこう…。とりあえずフォワードの皆には貨物車両内にアンノウンが居るって事を伝えて現状のまま任務続行。
隊長陣にも同じ事を伝えてガジェット全機撃墜後に出来るだけ早くレリック回収のフォローに向かってもらって」
「「了解!」」
はやての指示に通信士二人が頷く。しかしあとの一人、シャリオだけは聞こえていないとばかりに先ほどから手元のパネルを叩き続けている。
しかし淀みなく正確に動くその指とは違い彼女はその顔になにか深刻な色を浮かべていた。
「シャーリー?」
その様子を怪訝に思ったのか、彼女の隣に座るルキエが彼女の愛称で呼びかける。
「………ウソ」
しかしやはり彼女は手を止めない。何か認めたくない物に抗うように一心不乱にパネルを叩き続ける。

「……シャーリー、どないしたん?」
どう見てもただ事ではない彼女の様子にはやてがやや心配げな声音で問いかける。と、唐突にシャーリーの手が止まった。
彼女は何か信じられない物でも見るような目でサーチャーに映る男に目を向けると
「……この人…生きてません」
やはり信じられないというような口調でそんな事を口にした。
「生きてない?」
グリフィスがオウム返しに聞き返す。
「何を…どう見ても死んでいるようには―――」
「おかしいと思ってスキャンし直したの…。広域じゃなくて貨物車両内に限定して…」
グリフィスの言葉を遮るようにシャーリーが捲くし立てる。その顔はすでに困惑を通り越して恐怖に染まっていた。
「そうしたら…何回調べ直しても、生体反応なんか出ないの…。体温も…心音も…レリックの反応と微弱な魔力反応だけで、後は何も…」
それ以上は続けられなかったのかシャリオは口を噤んで押し黙ってしまった。

「……ステルスのように自分の反応を隠すレアスキルか何かでしょうか?」
静まり返るロングアーチの中、グリフィスがサーチャーに映る男から目を離さずに呟く。そんな彼にはやてが少し驚いたような眼差しを向ける。
「グリフィス君はリアリストやねぇ…」
「そ、そうでしょうか…。ですが幽霊や怨霊よりもそっちの方が私は怖いと思いますが…」
「う〜ん、でもそれやと魔力反応が出てる理由に説明がつかへんし……これはホンマに、」
幽霊かもしれへんね―――
はやてがそう冗談交じりに口に出そうとした矢先、何の前触れもなく画面の男の姿が『消失した。』


165 :魔術士オーフェンStrikers:2008/06/25(水) 21:11:02 ID:sfsSCJAn
「ッッ!? も、目標見失いました!」
「転移魔法!?そんな、魔法陣も敷かずにあんな一瞬で…!?」

まばたきをした次の瞬間に消えていた。そう言っていいほど唐突に、本当に唐突に消えてしまった男にシャリオ以外の隊員達も男の異常性にうすら寒いものを覚える。

「……………ほんまに幽霊かもわからへんね…」
完全にタイミングを逸したジョークに笑いを返せる者は今この場には一人も居なかった。

◇  ◆  ◇  ◆

その頃ロングアーチ内が軽い小パニックに陥っている事など知る由もなく
列車上、モノレールの後方から各車両のガジェットを殲滅していたオーフェンとライトニングス二名が第八車両―――目標のレリックが保管されている一つ前の車両でその足を停滞させていた。

「デカイな……」
オーフェンが眼下に開いている大穴を―――そこから覗いている物体を視界に納めたまま呟く。(ちなみに穴はオーフェンが魔術で開けた)
そこには今までのカプセル型のガジェットよりも遥かに巨大な球状のガジェットが列車内でこちらに背を向け道を塞ぐ様に鎮座していた。
「はい……」
「新型ですね……」
自分の横で同じように下のガジェットを見下ろしながらエリオとキャロが返してくる。二人の姿はいつもの訓練着とは違い、それぞれ専用のバリアジャケットにその身を包んでいた。
聞けばこれは午前の訓練終わりに出動がかかった事により急遽、なのはから手渡されたデバイスによるものらしい。前からこちらを目指しているであろうスバル・ティアナに関しても同様との事だ。
(ったく、俺があの張り切り妖精に絡まれてる間にかよ…。いいご身分だぜ…)
まぁ、それに関しては自分が蒔いた種でもあるのであまり強くは言えないのだが…。

………とまれ、話を戻そう。
見たところこの車両のガジェットはあのデカブツ一体のみ。つまりあれを壊せばもう目標のブツは目の前だ。なら―――
「あの、オーフェンさん」
話を戻そうとした矢先に横槍を入れられた…。横のエリオを半眼になりながら睨みつける。
「あんだよ…」
「え、えっとですね。ちょっと気になっただけなんですけど、何でぼく達屋根の上なんかに乗ってるんでしょうか…」
こちらの目つきに若干怖気づきながらエリオがおずおずと口を開く。
「いや何でってお前、そりゃこっちのが楽で安全だからに決まってんだろ…」
「楽…?」
「上から俺とフリードで狙い打ち、討ち洩らした奴をお前が下に降りて叩く。ここまでずっと同じ戦法で来てるじゃねえか。いまさら何言ってんだ?」
「……………………」
エリオが無言で背後を振り返る。そこには例えようもないほど破壊し尽くされ、例外無くドス黒い煙を吐き出し続けるモノレール車両の成れの果てが合計6両、ガタガタと壊れかけの車輪を鳴らしながら健気に付いてきていた。
10両目なんか天井がまるまる無くなっている。…誰の仕業かは言わずもがな、だ。


166 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 21:11:59 ID:yZvYrhZd
まぁ、魔術で直せるしなw
支援

167 :魔術士オーフェンStrikers:2008/06/25(水) 21:14:17 ID:sfsSCJAn
「…………安全の代償としては被害が大きすぎる気がするのはぼくの気のせいなんでしょうか……」
「まあ、それはそれとしてだ」
ジト〜、とした目を向けてくるエリオから目を背けて―――ちなみに背後の光景の方も頑なに見ないようにして―――オーフェンが急に話を逸らす。
「ご、ごまかした!誤魔化しましたよね、今!?」
「どうやらこの車両のガジェットはあのデカブツだけみたいだな。アイツを壊せばもう目標は目の前なわけだ」
「そ、それに安全っていうけど下でガジェットと一緒にオーフェンさん達の攻撃にさらされてるぼくはちっとも安全じゃない気が…。ていうか現にオーフェンさんの魔術でぼく何回か吹き飛ばされてますし」
「でも問題はアイツが今までの奴と同じなのかって事だよなー。何かしら違うモノ持ってんなら危ないし」
「何で無視するんですかぁ!?」
しかしエリオもなかなか食い下がる。よく見れば彼の髪やら服やらは煤(すす)で真っ黒だった。そんな彼の方に半眼を向けながらオーフェンは軽くため息を吐く。
「はぁ、んな事言われてもなぁ…。アレはお前が背後の注意を怠ったのが悪いだろ。俺が後ろのガジェット掃ってやってなかったらお前今頃煤だらけどころか血まみれだぞ」
「うっ……」
その言葉にエリオがわずかに後ずさる。
ちなみにキャロは先ほどからそんなエリオとオーフェンを交互に見比べながら「あう…あう…」と何やらゴニョゴニョ言っている。
多分「喧嘩は止めてください」的な事が言いたいのだろうが…。と、
「どうやらいつまでもダラダラと喋ってる場合じゃなさそうだな…」
「え?」
「見ろよ」
疑問の声を上げる二人にオーフェンは顎で前を見るように促す。
すると今まで置物の様に微動だにしなかったガジェットが緩慢にだが動きを見せていた。その場を移動はせずにただスー、と横に回転し始めたのだ。
「油断するなよ…」
ジリ…、と体重を踵に預けいつでも飛び退ける体勢で横の二人に忠告する。
「とりあえず先手は譲るぞ。今までの奴らと違うんだったら下手に動くより出方を見極めてから攻撃に回った方がいい」
こちらの言葉に二人が頷いた事を気配だけで確認すると相手の初手を迎え撃つための魔術の構成を頭の中に描いておく。
(さぁ、どう来る?)
三人が身構える中、丁度180度反転した所でガジェットがその動きを停止させた。
正面を向き、他のガジェットと同じく目の役割をしているらしい中心に備え付けられてる黄色のレンズがこちらに向けられる。
その直後、あるいはほぼ同時にガジェットの身体の一部が開き、そこから猛烈な勢いで何かがこちらに向けて飛び出してきた。
「っ、我は紡ぐ光輪の鎧!!」
少々面食らいながらも、動作は滑らかにあらかじめ作り上げておいた防御のための構成を解き放つ。
瞬間、突き出した手の平からまるでいくつもの光の輪を紡ぎ合わせたような防御壁が展開し、ガジェットが放った一撃を受け止めた。圧力に押されながらも何とか踏みとどまる。
(何だ、ありゃ。腕…か!?)
防御壁越しに相手の得物を確認する。分厚いベルトを幾つも連結させたかのような極太の二本の『腕』。それがガジェットの両脇からこちらに向けて真っ直ぐ伸びていた。
「オーフェンさん!!」
このままでは危ないと思ったのかエリオが奔る。二本のアームを食い止めているオーフェンの横をすり抜け、一直線にガジェット本体へと肉薄する。


168 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 21:15:43 ID:YoiwA/Fw


169 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 21:17:17 ID:t5ezNfUF
久し振り・・・いやもはや懐かしい支援

170 :魔術士オーフェンStrikers:2008/06/25(水) 21:17:53 ID:sfsSCJAn
「はあああああああ!!!」
裂帛の気合でもって刃に雷を蓄えたストラーダを渾身の力で振り下ろした。
ガギィッ!と金属同士がぶつかり合う音の後、ストラーダの刃先から凄まじいまでの雷撃がガジェットに向けて叩き込まれる。
「ッ、硬い…!」
だが通らない。エリオの電流を纏った斬撃は奴の装甲を切り裂くどころか傷つける事すら敵わなかった。どうやら図体がデカイ分、強度の方もかなりの物らしい。そして次の瞬間、更なる驚愕が彼を襲う。
「………ッ!!」
それはどういった現象なのか。エリオの魔力によって強化されていたのだろう、薄い黄色の光に包まれていたストラーダからみるみる魔力が拡散していく。それに伴って辺りに撒き散らされていた放電も止まってしまう。
「そんな…」
そしてそれはガジェットに肉薄しているエリオだけに留まらない。後方でいつでも支援魔法を行える様に備えていたキャロにまで及んでいた。彼女の足元に構築されていた魔方陣が同じように粒子となって消えていく。
「AMF!?」
「嘘、こんな所まで…!?」

広範囲にまで及ぶAMF(アンチ・マジック・シールド)。それがこの現象の正体か。障壁を維持しながら考察する。
…だがこれが隠し玉だとすればとんだ肩透かしだ。なぜならあの装置は魔導師を封殺するための物。力の顕現に魔力を必要としない魔術士である自分にはなんら脅威を与える事は出来ない。
「エリオ、下がれ!」
展開させている障壁でアームをいなしながら叫ぶ。すると(経験からか)それだけでこちらの意図を悟ったのかエリオが俊敏な動作で列車の最後方まで飛び退きガジェットから間合いを離す。―――魔術の及ぶ範囲外まで。
(よし…!)
それを確認してから改めて障壁を消し去り、超高難度の構成を全力で編み上げていく。
…ここは急斜面の山岳地帯、更に付け加えれば高速で走行中の列車上だ。さっきまでのガジェットならともかくエリオの攻撃で傷一つ付けられないような奴を屠れる程の高威力の熱衝撃波など放てば自分達の足場ごと爆砕させかねない。
「我が契約により―――」
ゆえに求めるのは単純な破壊とは別ベクトルの威力。自分の力を限界ギリギリまで支払い、作り上げる魔術にそれを実現させる力を付与していく。
ガジェットは変わらず、伸ばしたアームを自分目掛けて振り下ろしてくる。だがオーフェンはそれを完璧に無視した。狙うはガジェット本体、その中央。このタイミングならこちらの方がわずかに速い!
「―――聖戦よ終れ!!」

―――――きゅぼっ!!

瞬間、彼が突き出した両手から極光が走る。熱衝撃波とはまた性質が違う、ただの光。その閃光が音も無くガジェットの中心を抉る。そして光が消えた時、
ガジェットの中央から上半分にかけて―――光が突き刺さった部分―――が、ごっそりと『消失』していた。
「……ふぅ。ま、こんな所か。案外あっけなかったな…」
突き出していた両手を下ろし、繰り手を失い振り下ろされた勢いのまま在らぬ方向へ吹き飛んでいくアームを見送りながらオーフェンが呟く。
「うわぁ…」
と、後方からキャロが―――ついでに下の方からもエリオが―――呆気に取られた声を上げてくる。
そんな二人の様子を見てオーフェンが苦笑を洩らす。そういえばいつもの訓練じゃこんな大魔術は見せた事がなかった。驚くのもまぁ、当然だろう。
「ほら、さっさと降りようぜ。エリオが待ってる。まぁこの先はもう戦闘も無さそうだし、興味あるんなら後で解説くらいはしてやるからよ」
「え、えっ?きゃあ!」
そう言ってキャロを腕に抱えると、オーフェンはモノレール上から室内へと飛び降りた。両足だけで問題なく着地を決めると、脇に抱えていたキャロを床に下ろしてやる。
「ス、スミマセン…」
「おう」
突然抱きかかえられて驚いたのか、それとも大声を出したのが恥ずかしかったのか、赤面しながらやや俯きがちにポツリと言ってくるキャロの頭を帽子の上からぽんぽんと一、二度叩いてやる。
最後にフリードが翼を羽ばたかせながら降りてくるのを待つと、オーフェンは報告の為にロングアーチへと通信を送る。
『こちらオー…スターズ05。列車後方のガジェットは全部片付けたぞ。これから目標の確保に向かう』
『……………』
しかし無応答。開いた回線からは返事が返ってくる気配はない。
『おーい…』
『………………………』
もう一度呼びかけてみるがやはり何の反応も返ってこない。


171 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 21:18:20 ID:YoiwA/Fw


172 :魔術士オーフェンStrikers:2008/06/25(水) 21:20:57 ID:sfsSCJAn
「っかしーなー。念話の送り方ってこうじゃなかったっけか?前になのはから教わった時は上手くいったんだけどな…」
「どうかしたんですか?」
一抹の虚しさを覚えながらそんな事を一人ぶつぶつ呟いていると横からジャケットをクイクイ、と引っ張られた。
見れば隣を歩いているエリオが何かあったのか、と眉根を寄せた心配顔でこちらを見上げてきていた。
エリオの更に横でキャロも同じような顔でこちらを窺っている。
「ああ、大した事じゃねえよ。ただ、」
まだ念話ってのに慣れてなくてな、と。苦笑しながらそう口にしようとしたその時、
「キュクルー!!」
こちらの言葉を遮るようにキャロの隣を飛んでいたフリードが―――この動物特有の鳴き声なのだろう―――喉に舌を絡ませるような鳴き声を上げた。
その鳴き声につられて全員が足を止め、フリードの方に視線を向ける。
「どうしたの、フリード?」
キャロが自分の相棒へと問いかける。だがフリードはそんなキャロの方には見向きのせず、喉の奥でウ〜と唸りながら後方を、今自分たちが歩いてきた方向へと厳しい視線を送り続けている。
(何だ…?)
さすがに様子がおかしい。そう思いながらフリードの視線を辿る、が特に際立っておかしな物など見当たらない。
あえて言えば自分がついさっき破壊したガジェットが転がっているくらいしか目立った物は―――

「…気付かれてしまったか」
ぼそりと、どこからか深い声が聞こえた。
「っ、誰だ!!」
誰も居ない虚空から発せられたその声に多少ならずも驚愕しながらオーフェンはエリオとキャロを自分の背後に押しやり、声が聞こえた方向へと叫ぶ。
「誰だ…か」
するとそんな自嘲を込めた呟きと共に何の前触れもなく目の前の空間が蜃気楼のようにぐにゃりと歪む。
「それは困るな。君が憶えていてくれなくては…。この世界での私は何者でもなくなってしまうよ」
「……お前」
やがてそれが輪郭を映し出し、人の形を為す頃にはオーフェンは今度こそ決定的な驚愕に目を見開いていた。
記憶を探るまでもない。以前と全く変わらない紳士然とした態度に立ち居振る舞い、容姿に口調。その男は前に自分が出会った頃となんら変わらない姿で彼はそこに立っていた。
そう、オーフェン自身が彼を滅ぼす前と変わらない姿のままで………。
「…なるほど。その顔からするとどうやら忘れられているという事はないようだ。では、改めて―――」
そこで一旦言葉を区切ると男はローブの下から右腕を差し出し、芝居がかった仕草でその腕をゆっくり胸元に置くと歌うように再び言葉を紡ぐ。
「久しい…いや、『この私』とは初対面か。初めましてと言うべきかな?まぁ、いずれにしろ変わりないようで何よりだよ、鋼の後継…」
「何でお前がここに居る?」
ほぼ反射的にオーフェンが相手の言葉を遮るように早口で捲くし立てる。遮りたかったのは奴の馴れ馴れしい口上なのか、咄嗟に紡がれた昔の自分の二つ名の方だったのかは考えないようにした。
それにどのみちもう遅い。自分の背後でキャロが「鋼の…?」と小さく呟いているのが聞こえる。
それを誤魔化すように小さく舌打ちしながら質問に答えるでもなく、ただ薄い笑みを浮かべる目の前の男を睨みつける。
だがダミアンはそれを気にした風もなくゆっくり視線を巡らせると中心部を大きく抉られ今はもう完全に機能を停止しているガジェットの方へとその相貌を向ける。
「……情報破壊による存在意味の消失、か。確か黒魔術における究極形の一つだったな」
「なに?」
「アレには君への対策にと耐熱処理を施した金属を使ったとか自慢げに語っていたが…。ふん、どうやら当てが外れたようだな」
「……おい、一体何の話を―――」
急に話の方向を変えたダミアンを怪訝に思い言葉をかけようとしてハッとなる。


173 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 21:22:02 ID:YoiwA/Fw


174 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 21:23:21 ID:yZvYrhZd
さすがに原作終了後のオーフェンじゃ、大魔術も実戦で使えるんだな
支援

175 :魔術士オーフェンStrikers:2008/06/25(水) 21:25:14 ID:sfsSCJAn
「待て、俺への対策だと?それに『語っていた』ってのは一体誰の事だ」
「…………………」
黙してこちらの反応を待つダミアン。そんな彼へと追求の為、苛立たしげに口を開きかける。と、その時、
『ロングアーチから各隊員に通達!目標第七車両にて不審人物を確認、後にその反応を…反応をロストしました!
現在サーチャーにて追跡中!今、人相を送りますからもし遭遇した場合は―――』
「……………………」
いきなり繋がった通信から早口に捲くし立てられるシャリオの声にその問いは阻まれる。だが、同時に彼女の横槍は問うまでもなく奴に関する疑問の内の一つを氷解してくれた。
すなわち、奴がここにいる理由。人相など確認するまでもない。恐らくこの男がこの列車襲撃の実行犯と見て間違いない。
(わからねぇのは動機くらいのもんだが…これは考えるだけ無駄だな。材料が少なすぎる…)
「オーフェンさん…」
声に振り向く。と、エリオとキャロはすでに険しい面持ちでそれぞれ自分の獲物を構えていた。先の奴と自分とのやり取りと今の報告とで彼らもこの男を完全に敵だと認識したらしい。
…これでまだ十歳そこそこだと言うのだから末恐ろしい。
そんな二人に頷き返しながらオーフェン自身も五感を尖らせ始める。
『エリオ、シャリオへの報告任せるぞ』
「え、あっ、は、ハイ!』
突然念話で話しかけられ狼狽しながらも返事を返してくるエリオを尻目にその場を一歩踏み出し、ダミアンと対峙する。
「状況はおおむね理解出来たようだな」
厳かに告げてくるダミアン。そういえば心が読めるみたいな事を言ってたっけか…。
「…いんや、分からない事だらけだね。もう一度同じ事を聞くが何でお前がここにいる?お前は…」
「そう、死んだはずだな。それは間違いない」
「ならっ!」
なぜここにいるんだ、とそう続けようとした言葉が唐突にこちらに差し向けられたダミアンの右手に遮断される。
「まぁ、待て。君にも色々と疑問があるのだろうが、実は私も君に聞きたい事がある。だがここでは些か話しにくいのでな…。悪いが少し付き合ってもらうぞ」
そうダミアンが呟き軽く腕を振る動作を行うと次の瞬間、オーフェンの姿がまるでコマ落としのようにその場から消失してしまった。
「っ、オーフェンさん!?」
その異常を目の当たりにしてキャロが悲鳴じみた声を上げる。実際は転移魔術を行っただけなのだが魔方陣も敷かずにあんな一瞬で行える転送魔法などミッドにもベルカにもありはしない。
それを踏まえればキャロの取り乱しようもまぁ、当然と言えるだろう。なにせ彼女から見たら突然人が消滅したように見えたのだろうから。
「さて…」
そんな彼女を尻目にダミアン自身もオーフェンを追うように転移を行い始める。―――が、
『SONIC MOVE!』
その思惑を阻むように電子の篭った低い声と共に疾風の如き速さでダミアンに肉薄したエリオのストラーダが彼の鼻先数cmの所に突きつけられた。
「オーフェンさんに何をした…」
槍を突き出した体勢のままでエリオが眼前の男を問い詰める。押し殺したその声にはハッキリとした敵意が篭っていた。
「…………」
しかし男は気にした風もなく、視線すら彼と合わせずただ黙って虚空を見つめている。その目は傍目から見ても分かるくらいにどうしようもなく冷めていた。
そしてエリオはその目の意味を本能的に悟る。
(相手にされてない…。この人の中では僕達は『居ない事』になってる)
カッと、一瞬で頭の中が怒りで真っ赤になる。
「ッ、馬鹿にするな!!」
叫びと共に男の腹部目掛けて突き入れられるストラーダ。だが、

「帰りきたる。痕の多い獣の檻。大にしてうねり、小にしてわめく」

だがそれよりもなお速く男が唄を紡ぐ。エリオがそれを呪文だと認識する前に、彼の身体は横殴りに吹き飛ばされ、なす術もなく壁に叩きつけられていた。


176 :魔術士オーフェンStrikers:2008/06/25(水) 21:28:14 ID:sfsSCJAn
「エリオ君!!」
崩れ落ちるエリオにキャロが慌てて駆け寄る。
「う…あ、だ、大丈夫、立てる…よ」
衝撃に息を詰まらせながらも彼女に答えるようにストラーダを杖にしてヨロヨロと立ち上がる。
背中を強く打っていたがそれ以外は外傷らしい外傷は見当たらない。どうやら自分が食らったのは衝撃波などの類ではなくただ単に吹き飛ばされただけらしい。
ハッと気付き、列車内を見回す。ダミアンの姿はどこにも見受けられない。
「……あの人は?」
傍で気遣わしげに自分を見ている少女に尋ねると彼女は小さく首を左右に振った。
「エリオ君が吹き飛ばされた後、すぐに消えちゃったの…」
「くそ、一体どこに…!」
キャロに肩を借りながらエリオが悔しげに呟く。が、すぐに気を取り直すように首をブンブンと左右に振る。
(落ち着け、こんな時に熱くなったって仕方ないじゃないか!)
そう自分に言い聞かせると何度か深呼吸を繰り返し、気持ちを落ち着ける事に成功する。するとエリオは次の車両―――レリックが保管されている貨物室に目を向けた。
「エリオ君?」
「オーフェンさんなら…きっと大丈夫だよ。先にレリックを確保しよう」
その言葉にキャロが身を硬くする。
「えっ、でも、オーフェンさんは…」
「うん、僕も心配だけど、あの人、さっきオーフェンさんに聞きたい事があるって言ってた。多分戦う事が目的じゃないと思うんだ。
ならきっとオーフェンさんは生きてる筈だし、今起こった事は全部通信の向こうの人達も見てる。今頃ロングアーチのみんなが探してくれてるよ」
「う、うん…」
流暢な口調で話しながらもその実、頭をフル回転させながらエリオは必死に即興の行動指針を立てていく。キャロに気付かれないように。
「なら僕たちは僕たちに出来る事をやらなきゃ。ここでレリックを回収出来ればみんなの心配を一つ減らせる。…大丈夫だよ、もし万が一戦いになってたとしてもオーフェンさんが負けるわけないって」
「うん…うん、そうだよね!」
その言葉にキャロも今度は強く頷いてくれた。そんな彼女にエリオも笑顔を見せると、二人で荒れた車内を走り出す。
…本当を言えば何の根拠もない理論だ。あの男の言葉を信じられる根拠などどこにもないし、オーフェンさん自身あの人を確実に敵だと見なしてた。少なく見積もっても戦闘になってる可能性の方が高いように思える。
(…ああ、弱気になってるなぁ。フェイトさんやオーフェンさんならもっと自信を持って行動できるのかもしれないけど、と)
そんな考えに没頭している間に二人は貨物車両のドアの前へとたどり着いていた。
「………………」
無言でキャロへと視線を送る。彼女が小さく頷くのを確認するとエリオはドアを破壊しようとストラーダを構える。
そして突貫しようと一歩踏み込んだその瞬間―――

「ウオラアアアアアアアアああああああああああああ!!!!」
まるで狙ったかのようなタイミングで、凄まじいプレッシャーを纏った一撃が天井をブチ破って自分たちの頭上へと降りかかって来た。


177 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 21:29:59 ID:HGk4ypzF
支援

178 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 21:31:08 ID:Fo9/uoXU
支援!!

179 :魔術士オーフェンStrikers:2008/06/25(水) 21:31:14 ID:sfsSCJAn
「っ、ストラーダ!」
『SONIC MOVE!』
脅威を感じるのとほぼ同時、咄嗟にキャロの手を掴むとゼロタイムでソニックムーブを発動、後方へと鋭く跳躍して難を逃れる。
(新手…!?)
ズガァン!と、一瞬前まで自分たちが立っていた床が踏み砕かれる音を聴きながらキャロを腕に抱き直し、ソニックムーブの効果が切れると共に床に着地すると片手に持ち直したストラーダで牽制するように今は離れている相手へとその切っ先を突きつける。
そんなエリオに苛立たしげな視線を送りながら襲撃者がゆっくりと立ち上がる。
「チ、外したか…。殺ったと思ったんだけどな。すばしっこいガキだぜ」
「…女の人?」
エリオの言うとおり、その姿は以外にも年若い少女のものだった。整った容姿と相反するように顔には不機嫌そうな表情を浮かべ、目の前の彼らを見据える釣り目がちの双眸の奥では金色の瞳が爛々と燃えている。
そして何よりも目を引くのは薄闇の中でもなお映える炎のように真っ赤な頭髪。ショートに揃えられたそれは元々活発そうなイメージのある彼女によく似合っている。
だがそんな美少女と呼んで差し支えない彼女の格好は不釣合いなほど物騒極まりないものだった。
全身をピッタリと覆うブルーのボディースーツはまだいい―――むしろ良い―――として右手には簡易的なガンナックル
両足にはスバルと同種のモノだろうローラーブーツに、更にこれまたスバルのリボルバーナックルに備え付けられているモノと同様のスピナーがギャリギャリと火花を散らしながら回転している。
…完全武装と言うほかに例えが見つからない程の完全武装だった。

『キャロ、気を付けて…』
『は、はい…!』
キャロを自分の背後に庇いながら襲撃者と対峙するエリオ。そんな彼らを見て彼女はフン、と不機嫌そうに鼻を鳴らす。
「てめぇ等がこっちって事はタイプ・ゼロは反対側か。くそっ、おいしいなぁチンク姉…」
何やらブツブツとボヤキながら彼女は背後にある貨物車両のドアに左手に握っていた何かを貼り付ける。するとそこを軸に緑色をしたゼリー状の膜が展開され、あっという間に貨物車両全体を覆ってしまった。
「なっ!」
「結界…!?」
「…あのジジイの話が済むまでてめぇ等の足止めしとけってのがドクターの命令だからな。念の為にだよ。ったく、いくら命令だからって何であんな奴の為にアタシがここまでしてやんなきゃならねぇんだ…」
「ちょっと待って下さい―――」
独り言のようにブツブツと呟かれた彼女の愚痴にエリオがハッとした表情を見せる。
「あん?」
「僕たちの足止めが必要って事は、ひょっとしてオーフェンさん達はあの中にいるんですか?」
エリオの視線が結界の中に向けられる。
「だったらどうする?」
「……押し通らせてもらいます」
ストラーダを相手に向けて水平に構える。キャロも慌てて距離を取り支援魔法のための魔方陣を展開し、ここで退くつもりはないと相手に示す。
「―――ハッ!おもしれぇ、やってみろよ!」
それを見て取った赤毛の少女はここに来てずっと不機嫌そうだった表情を初めて崩す。
笑みだった。口元を釣り上げ犬歯を剥き出しにするような獰猛な笑みを彼女は浮かべていた。
「ノーヴェってんだ。ああ、覚えなくていいぜ?どうせてめぇ等―――」
立てた親指で自分を指し示し、更にその指をグイ、と下へ向けるとノーヴェ自身もまるでスタート前のスプリンターのように深く身体を沈みこませる。そしてそのまま

「ここでくたばっちまうんだからなぁ!!」

咆哮と共に彼女は己が愛機「ジェットエッジ」に熱を吹かせ一気に獲物へと踊りかかっていった。


180 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 21:34:47 ID:YoiwA/Fw
sienn

181 :魔術士オーフェンStrikers:2008/06/25(水) 21:35:13 ID:sfsSCJAn
その頃―――
『状況を教えて下さい!一体今何がどうなってるんですか!?』
先の全隊員への通信から数分後、リィンは列車の停止を一時中止し、ついさっき通ったばかりの道を逆走していた。
『えっと、ライトニング分隊、スターズ分隊、七両目を挟んで共に先ほどとはまた別に現れた未確認人物と交戦中です!』
『またですか。もう未確認人物ばっかりですね…』
その報告にリィンはこめかみを指で押さえながらため息を吐く。途中でティアナ達と別れ、列車停止のために単独で先頭車両へと向かったのが仇になったか。
まったく、途中までは順調な任務のはずだったのに気が付けば不測の事態の連続だ。
『オーフェンさんは?』
『そ、それが…連れ攫われてしまいまして…』
『はぁ!?』
少なからず頼りにしていた仲間のあんまりと言えばあんまりな現状に思わずすっとんきょうな声を上げてしまう。
『張られた結界の中からオーフェンさんの反応が出ているので多分、第七車両に…』
『ああ、もう!』
思わず頭を抱える。事態がどんどんややこしく、かつ自分たちにとって悪い方向にばかり転がっていく。
『了解です!リィンもすぐ現場に向かうのでティアナ達になんとか持ちこたえてくれるよう伝えてくださいです!』
『了解!』
(まったくもう!ついさっき『お願いします』って頼んだばっかりなのになんて頼りにならない人なんですか!)
通信を切ると胸中で黒づくめの同僚を罵りながら更に速度を上げる。

(……無事でいて下さいよ…)

初陣は更に激化の一途を辿っていく。

魔術士オーフェンStrikers 第八話 終


182 :魔術士オーフェンStrikers:2008/06/25(水) 21:37:20 ID:sfsSCJAn
八話目これにて投下終了です。支援してくれた方、ありがとうございます。
やっぱ月一ペースが自分的に限界っぽいっス…。

さて、今回は中ボスを軽く屠って大ボスに挑むまでって感じですか。ライトニングメインのせいかエリオが目立つ目立つ。しかしその煽りを食ってキャロが若干空気気味…。
まあ、まだ覚悟完了してない状態だし、ね。
そしてリィンに「THE 役立たず」の烙印を押されかけているオーフェンは果たして名誉挽回出来るのか?ノーヴェの反対側で頑張ってくれてるはずのチンク姉に出番はくるのか?
次回、初陣編(もしかしたら)ラスト。楽しみにしていてくれたら幸いです。


183 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 21:41:53 ID:YoiwA/Fw
GJ!
ついにオーフェンとダミアンが接触!エリオも活躍!
この作戦終了後に白魔術のこと聞いたら6課はどう思うのかなあ。

184 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 21:43:30 ID:HGk4ypzF
乙!
ダミアンの正体不明さにびびる様子が面白かった。

185 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 21:49:06 ID:yZvYrhZd
GJ!!
月一でも楽しみにしてるからがんばってください

186 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 21:50:49 ID:A3n7KxBF
GJ!支援できなくてサーセン!!
THE・役立たずww酷いwww

187 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 21:58:06 ID:t5ezNfUF
>>182
GJでした!!
ついに2人のこの世界においてのイレギュラーが邂逅しましたか。
次回めがっさ楽しみです!
うん。>>183の言うとおり白魔術って管理局側からすればレアスキルの範疇に入るシロモノですよね。
てか6課で対抗できる人間がどうしても考えつかないのですが。




188 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 22:05:35 ID:IFErTr3L
>>182
GJです。幽霊みたいな奴ですか。
お払いで成仏してくれるとうれしいのですが。

189 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 22:09:58 ID:YoiwA/Fw
>>187
しかも精神士だもんなあ。

190 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 22:12:50 ID:NT47L/tD
オーフェンの人、GJでした!次も楽しみに待ってますよ。

キエサルヒマの現状を知ったら、ダミアン切れそうですよね。とっても楽しみです。
つーか、やっぱりオーフェンは自分の専門分野とか言ってなかったか。言えるわけも無いか。
事情説明とかで、本格的に物語が回り始めていきそうな予感です。


オーフェンが指導してるってことは、スバルとかエリオなんかの前衛要員は、
攻撃くらっても目を閉じない訓練とかしてるんだろうか?

柱に縛り付けられて棒で殴られたり

191 :魔術士オーフェンStrikers:2008/06/25(水) 22:24:22 ID:sfsSCJAn
たくさんの感想&GJどうもです。
正直ダミアンってマイナーかな〜ってビクビクしてたんですけど知ってくれてる方が結構いてくれてほっとしてます(笑)
>>187
腐っても大陸最強の一角ですからね。
それだけに「虚像」での堕ちっぷりにはビビりましたがw
そこら辺のバランスも考えて話を進めて行こうと思います。

192 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 22:43:47 ID:10Ix13O2
GJ!
ここまできたらいっそコルゴンも出してほしい。
原作ではなかった対決をぜひ!!

193 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 22:48:40 ID:gmVg5Muc
GJGJ!
ナンバーズの早期投入はやっぱり、燃えるなぁ!

194 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 22:55:46 ID:f83QF2Ck
>オーフェンStS
なにこれぇぇー!? いきなりボスクラス来ちゃったよぉぉ!
しかも、これって何気に新鮮な組み合わせじゃないですか? ノーヴェとエリオ&キャロコンビの対決なんて二次でしかお目にかかれねえwなんというサービスw
新型ガジェットが予想通りオーフェンに瞬殺されて「あーはいはい、しばらく敵はナッシング!」とか余裕こいてたらいきなりピンチで吹きました。
しかも、まだ初出撃で機動六課のレベルはまだ初期状態。苦戦必至かと。これは手に汗握りますよー、なんか台詞的に最初はボロ負けフラグっぽいのも見えるし。
でも、エリオ君が意外と男前なので、ひょっとしたら…という期待をはずせません。
若いうちは血気盛んが一番。それに、オーフェンがいなくても冷静だった点がまた頼もしいですね。
オリジナル展開に、先の予想がまったくつきません。次回が楽しみで仕方ないですw

195 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/25(水) 22:57:19 ID:f83QF2Ck
ところで、次に予約ってないですかね?
空いてるなら、Stylishの十六話を23時10分ごろに投下予約したいんですが。

196 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 23:03:17 ID:YHnVW2Qs
GJ!結局投下中に支援できませんでしたがorz
エリオ頑張れ。一番まともにオーフェンにツッコミ入れられるのは君だと信じている!

197 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 23:06:02 ID:nX9txXes
ティアナVSなのは!!
どっちが勝つか、支援!!

198 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 23:08:25 ID:M0OYHpl2
キタ━━━(゚∀゚)━━━ッ!!!

199 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/25(水) 23:12:36 ID:f83QF2Ck
うへぇ、投下数の区切り作ってたら時間になっちゃった(汗
まあ、あまり重要ではないので、容量だけ。約45KBです。投下数はたぶん20以内。
それでは、投下します。

ティアナ対なのは決着!

200 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/25(水) 23:13:40 ID:f83QF2Ck
 最近、考え込むことが多くなった。



 ――あたしは、何を目指しているのだろう?



 こんな風に考える切欠は何時だったか。
 訓練校に入った時? そこを卒業した時? それとも、Bランク魔導師の試験に合格した時?
 違う。

 <機動六課>に入隊した時だ。

 そこから、自分の人生は大きく動き始めた。
 一歩一歩の小さな歩みが、途端に大きく足を跳ね上げ、追い風に乗って走り始めた。
 遠く仰いでいた『何が』見え始める。
 だからだろうか?
 自分の行き着く先を、とりとめもなく考える時間が増えた。
 決まっている。決まっている筈だ。
 漠然とした目的で、凡人の自分がここまで辿り着けるはずがない。
 苦しみに膝を着き、悔しさで地を這った時、自分を支えたのは不変の誓いだった。

 受け継いだこの<弾丸>で、兄の目指した正義を貫き通す。

 その為の手段は明白で、目指すべき頂もハッキリと見えていた。
 しかし、実際にその道を走って気付く――。
 自分の行く道には、どうしようもなく多くのものが転がっているという事実に。
 それは障害であり、足を引っ張るものであり、煩わしいものであり――また同時に、支え、導き、癒してくれるものでもあった。
 それらに触れながら、時には抱えながら、少しずつ自分の荷物を増やしながら走っていく。
 重くなどない。むしろ――。



「――ィアナさん。あの、ティアナさん?」
「え?」

 我に返ったティアナの視界にキャロの心配そうな顔が映った。
 物思いに耽っていたらしい自分の信じられない気の抜きようを戒めると、それを表には出さず周囲を見回す。
 木々が並ぶ見慣れた訓練場の風景が目に入り、ティアナは自分の状態を冷静に理解した。

「ごめん、ボーっとしてたわ」
「ティアがボーっとするなんて、相当のことじゃない? やっぱり疲れが溜まってるんだよ」

 自分と同じ分量の自主練習をこなしながらも、こちらはますますエンジンが掛かっているような高揚した様子の傍らでスバルがパートナーを案ずる。

「違うわよ、フォーメーションを考えてたの。アンタが物を考えないからあたしが脳みそ酷使することになるんでしょうが」
「ひどっ! まるでアホの子みたいに言わないでよ!」
「違うの?」
「何、その心底不思議そうな顔!」
「もしもし、入ってますか? ナカジマさん、お留守ですか?」
「痛っ! 痛い、やめてたたかないでノックしないでっ!」

201 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/25(水) 23:14:25 ID:f83QF2Ck
 叩くとコンコンいい音を立てる頭の中身を割りと本気で心配しながら、ティアナはスバルの追及をかわせたことに安堵していた。
 無理をしているのは自覚済みだ。
 他人の心配事となると勘の良いこの相棒には、あまり踏み込んで欲しくなかった。
 彼女の好意が煩わしいなどとは思わない。
 ただ、他人事の薄い言葉だと思えるほど、自分はスバルに心を許していないわけではないのだ。
 その時ふと、ティアナはつい先ほどまで考えていたことを思い出した。
 道を進む上で巡り合った、他人との数奇な出会い。
 スバルと、そしてエリオやキャロ。高町教導官を始めとした、多くの先達たち……。

「ティ、ティアナさん……よろしかったら、その……これ」

 弱弱しく差し出されたドリンクのボトルを一瞥し、ティアナはそれを持つ少女の小さな手を辿った。
 ロクに相手の顔も見れないほどの緊張で真っ赤に染まり、それでも拒絶される恐れと純粋な好意でドリンクを渡そうとする健気な姿がある。
 ティアナは時折見る、キャロのそういった人と関わろうとするささやかな勇気を微笑ましく思い、笑顔でボトルを受け取った。

「ありがとう。喉渇いてたのよ――ゲブォハッ!?」

 スバルに言わせれば『デレ』であるらしい貴重な笑顔でボトルを煽り、次の瞬間ティアナは奇怪な声と共に口と鼻の穴からドリンクを逆流させた。
 史上最悪の毒を含んでもこうはならないという凄惨な姿でのた打ち回り、スバルとエリオは硬直し、それを成した張本人のキャロは自らのへの恐怖で小さな悲鳴を上げた。

「ティアァァァーーー!? どうしたの、何が起こったの!?」
「……何コレッ!?」

 鼻から奇妙な液体を垂れ流したティアナは鬼気迫る形相でキャロに食って掛かった。
 その異様な迫力に哀れな少女は危ういところで失禁するところであった。

「ス、スポーツドリンクですぅ……オリジナルブレンドの」
「セメントでもブレンドしたっての!?」
「よく分からないですぅぅっ! シャーリーさんに教わったまま混ぜて……っ」

 あのマッドメガネめ、スケボーのように隊舎内を引き回してやる!
 罪の無い無垢な少女から確信犯へと怒りの矛先を転換させたティアナは強く誓った。

「あの……ごめんなさい。ティアナさん、疲れてるみたいだから、栄養が付く物をってわたしが頼んで……」

 必死に言い繕うキャロの表情には涙と、自分の為したことへの深い後悔が滲み出ていた。
 頭を抱えたくなるような理不尽な気持ちがティアナの心に湧き上がる。
 何処か他人から一歩退いていようとする少女の歩み寄りを、自分は拒絶してしまったのだ。そこにやむを得ぬ事情があるにせよ。
 ああ、畜生。やってらんない。そんな悪態を吐きながら、体は勝手に動く。
 キャロの抱えるボトルを奪い取ると、その凶悪な中身を一気に喉の奥へ流し込んだ。

「ティア、死ぬ気!?」
「無茶ですよ!」
「ああっ、ダメです……っ!」

 周囲が口々に止める中、ティアナは不屈の精神でその粘液を飲み干した。

「……キャロ」
「は、はい!」
「クソ不味いわ」

 呻くように吐き捨てると、ティアナは空になったボトルをキャロに渡した。

「次は、普通のドリンクを頼むわね」
「……はいっ!」

202 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 23:15:01 ID:czUR3UEL
支援しない・・・なんて言える訳ないだろ!

203 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/25(水) 23:15:52 ID:f83QF2Ck
 そっぽを向いて投げ捨てられたティアナの言葉の意味を理解し、キャロは満面の笑顔で頷いた。
 様子を見守っていたスバルとエリオの顔にも自然を笑みが湧いてくる。
 それから、気分の悪さとは裏腹に体調は異常なほど回復したのは決してあの呪いのドリンクの効能などではなく偶然だと思いたい。



 気が付けば暖かなものに囲まれていた。

 同じ志を胸に宿す仲間達。
 目指すべき指針となって、行く先の空を飛ぶ英雄。
 この背を預ける唯一の相棒。
 そして――。



『―――がんばれよ。お前ならやれるさ』



 この出会いの数々はある種の幸運であると、認められる。
 多くの大切なものに自分は恵まれているのだ。

 ――だが、そうした優しい日々の中でも決して忘れられない過去があった。

 兄は死んだ。
 両脚と左腕を失い、酷く綺麗な死に顔が現実感を与えてはくれなかった。
 残された右腕にはデバイスが握り締められていたらしい。最後までトリガーを引き続けて。

 決して無くならない現実がある。
 兄が命を賭して放った弾丸は届かず、撃たれるべき者が今まだこの世界でのうのうと生き続けているという現実が。  

 過去と未来。
 どちらを優先させるべきか。
 答えなど出ない。きっと誰にも。
 ただ考えるのだ。
 この満ち足りていく日々の先で、夢を叶え、頼れる仲間と共に自らの信じる正義を成し、いずれ兄の仇を正当な裁きの下で打ち倒す――そんな理想の傍らで、否定に首を振る自分がいる。
 それも一つの選択なのかもしれない。
 でも、ダメだ。
 どうしても出来ない。
 穏やかで優しい日々の中、まるでぬるま湯に浸かる自分を戒めるように脳裏を過ぎる兄の死を、ゆるやかに忘却していく事など。
 それは愚かしいのかもしれない。過去に捕らわれているのかもしれない。
 だけど。
 ただ一つ。報われるものが欲しい。
 『無能』『役立たず』と罵られ、その死を悼まれることも無く死んでいった兄の魂に捧げられる何かが欲しい。

 その為ならば、仲間よりも、幸福よりも――これから続く優しい日々よりも。
 ただ一発の<弾丸>が欲しい。
 全てを貫く魔の弾丸が欲しい。




204 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/25(水) 23:17:41 ID:f83QF2Ck
 どちらの道が正しいかなど分からない。
 ただ、どちらが幸福かは明白だ。
 それでも尚、考え続ける。



 そして今、一つの答えが出ようとしている――。






魔法少女リリカルなのはStylish
 第十六話『Shooting Star』






 実出動僅か2回の新人魔導師と前線に立ち続け多くの新人を導いてきたベテラン魔導師。
 Bランクにされて間もない飛行魔法未修得の陸戦魔導師とリミッター付きとはいえ実質S+ランクの空戦魔導師。
 その二人が戦えばどうなるか?
 予測など容易い。決着は火を見るより明らかであった。
 少なくとも、その戦いを見守るほぼ全ての者達が予見していた。

 ――しかし。では、この緊迫感は一体何だ?

 誰もが固唾を呑んでいた。
 空気が張り詰め、ピリピリと乾燥している。
 戦闘の意志を明確にしたなのはとティアナの対峙に、全ての物事が息を潜めている。
 緊張の糸は緩まず、切れもせず、ただギリギリのところでピンと張り詰めていた。
 それは、この二人の拮抗を意味するのではないか。

『結果は見えている。しかし――』

 誰もが予想し、しかし心の片隅でそれを疑う気持ちを抑えることが出来なかった。

「――いくよ、ティアナ!」

 静かな対峙をなのはの宣告が崩した。
 油断を戒めるような緊張感がなのはに全力で戦うことを忠告していた。そして、だからこそ確実な手段を取る。
 先制攻撃として<ディバイン・シューター>の魔法を瞬時に展開した。まずは様子見だ。
 <ウィングロード>の限定的な足場で、飛行能力を持たないティアナには誘導性を持ったこの攻撃さえも脅威となる。
 油断ではない。が、上手くすれば一瞬でカタが付く。なのははそう思っていた。
 なのはの周囲に桃色の光弾が幾つも形成される。
 そして――次の瞬間<銃声>と共にそれら全てが弾け飛んだ。

「な……っ?」

205 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 23:19:57 ID:yZvYrhZd
支援!

206 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 23:21:00 ID:Fo9/uoXU
全力で支援!!

207 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/25(水) 23:21:58 ID:f83QF2Ck
 なのはの驚愕は、状況を見る者全ての心を代弁していた。
 形成とほぼ同時に他の魔力との衝突で相殺されたスフィア。桃色の残滓が空しく周囲を散っている。
 なのはは、それを成したティアナの姿を凝視した。
 突きつけられた二つの銃口から薄い白煙を上げ、不敵な笑みを浮かべる彼女の姿を。

「撃ち落とされたの!?」
《Positive.》

 レイジングハートが無機質に肯定した。
 ほぼ全ての射撃魔法に言えることだが、発射には『魔力を集束しスフィアを形成して放つ』という過程が存在する。誘導という術式を付加するならば尚更だ。
 ティアナはその一瞬のタイムラグを突いたのだった。どんなに強大な力でも発生の瞬間は小さな点である。

「訓練で嫌と言うほど味わいましたから。高町教導官の誘導弾は、一度放たれれば飛べない私にとって脅威です」

 しかし、その一瞬を見極め、正確に行動出来るかと問われればやはり疑わざるを得ない。

「だから、撃たせない」

 目の前の現象が、ティアナの言葉のまま簡単な話でないことはなのはにも理解出来た。
 可能にした要素は幾つか在る。
 ティアナの魔力弾は魔導師の中に在って異質だ。どんな射撃魔法よりも弾が速い。
 誘導性を一切捨て、過剰圧縮による反発作用を加えた実弾並の弾速を誇るティアナの魔力弾だからこそ、相手の行動に反応してから撃ってもなお先手を取れたのだ。
 だが、数も出現位置もランダムな標的にそれを全て命中させたのはティアナ自身の磨き上げた腕前に他ならない。
 それは魔導師ならば――どんな射撃魔法にも命中率に多少なりとも弾道操作による補正を入れている、なのはですら及ばない射撃能力だった。
 その力に戦慄し、同時になのははそんなティアナを想う。
 何故、その自分の力を誇ってくれないのか。

「溜めのある魔法は命取りだと忠告しておきます!」

 駄目押しのように告げ、ティアナは魔力弾を発射した。
 実弾に匹敵する弾速を人間の動体視力で捉えられるはずもない。魔力反応、銃口の向きによる弾道予測、反射神経、全てを使ってなのははそれを回避した。
 防御ではなく回避。咄嗟の判断だったが意味はあった。あのまま場に留まって射撃の応酬をしていれば、近くにいたスバルを巻き込んでいただろう。
 今のティアナは他人を配慮する余裕や甘さなど持ち合わせていない。あの<悪魔>を撃った時のように。
 なのはは<ウィングロード>の足場から飛び出し、そのまま飛行してティアナの死角に回り込みながら狙い撃つ。
 チャージ時間を短縮した<ショートバスター> さすがにそれを止める猶予は無かった。
 しかし、ある程度威力を犠牲にしてなお脅威的なその砲撃を、ティアナは半身を反らした紙一重の動きで避けた。
 髪を掠めて肌のすぐ傍を圧倒的な魔力の奔流が走り抜けていく。その瞬間に瞬き一つせず、表情はただ不敵に笑うだけ。

「――狙いが甘いですよ、教導官」

 カウンターのようにティアナの魔力弾が放たれた。
 威力も魔力量も遥かに劣る、しかしただひたすら硬く速い弾丸が、飛行するなのはの機動予測地点へ正確に飛来した。
 成す術も無く肩に命中し、走り抜ける痛みと衝撃になのはは小さく呻いた。
 なのはのバリアジャケットは長時間の展開を目的とした軽量の<アグレッサーモード>を取っているが、それでも魔力に底上げされた基本防御力は一般魔導師のそれを上回る。
 その防御が砕かれていた。
 直撃を受けた肩の部分が破れている。一見すると布のようだが、付加された特性を考えればそれは鎧を撃ち砕いたに等しい。
 訓練の時とは違う。手加減も配慮も無い。
 明確な意思と決意の下の戦いで、鉄壁の防御を誇る高町なのはが受けた久方ぶりのダメージであった。

「命中率を誘導性に頼りすぎです」
「……やるね」

208 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 23:23:30 ID:sfsSCJAn
支援支援!!

209 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/25(水) 23:25:20 ID:f83QF2Ck
 ある種の快挙ですらあるその結果を誇りもせず、ティアナは油断無く銃口を突きつけたまま皮肉げに言った。
 それが挑発であることは分かっている。しかし、なのはは悔しげに笑わずにはいられない。
 油断しないと言いながら、心の何処かでタカを括っていたのだ。自分は有利だ、と。
 そんな自分を嘲笑う。
 そして認めた。
 もはや目の前の少女は、完全に<敵>である、と。
 自らも工夫し、力と技を駆使して打ち倒さなければならない相手なのだ、と。
 そうでなければ、何を言ったって自分の言葉は彼女の決意を1ミリも動かせやしない。

「教導官の強さは認めますが、アナタの認識だけで何もかも測れると思わないことです。だからアナタのこれまでの訓練は……」
「ティアナ、今回はよく喋るね」

 更に挑発を続けるティアナに対して、なのははむしろ嬉しそうでもあった。

「普段も、それくらい気安く話しかけてくれてよかったのに」
「……黙れ」

 感情が露わになる前に冷徹な仮面を被り直し、ティアナは無慈悲な射撃を開始した。

《Accel Fin》

 急加速。
 初弾を回避した瞬間、移動先を読んだ第二射が正確無比に飛来する。
 なのはは咄嗟にラウンドシールドを展開してこれを防ぐ。
 更に数発の弾丸が障壁を叩いたが、さすがにその防御を貫くことは出来なかった。
 やはり高町なのはの防御力は鉄壁。本気で守りに回れば、ティアナの攻撃力では突破出来ない。
 その事実にティアナは舌打ちし、同時にすぐさま思考を切り替えて両腕に魔力を集束し始めた。
 自分の射撃は一度なのはの障壁を抜いている。要は状況とタイミングだ。必ず一撃を通せる瞬間がある。それを捉える。
 戦意を衰えず、むしろ集中力を高めるティアナの前でなのはがシールドを解除した。
 もちろん撃たない。これは隙ではない。必ず何らかの意図がある。
 その予想に従うように、なのはがレイジングハートをティアナに突き付けた。

「今度はこっちからいくよ」

 当たるか。
 直線射撃なら回避、誘導弾なら迎撃。いずれの行動にも瞬時に移れるようティアナは身構える。
 そんな万全の態勢を前にして、今度はなのはが不敵に笑う番だった。

「――フェイントだけどね!」
《Accel Shooter》

 目を見開くティアナの視界で三条の閃光が空を走った。

210 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/25(水) 23:26:52 ID:f83QF2Ck
「何っ!?」

 タイムラグ無しに<ディバイン・シューター>より更にチャージ時間を必要とする<アクセル・シューター>を放ったという事実。
 集中して見ていたが、狙うべき魔力スフィアの形成は確認されなかった。
 驚くティアナを尻目に、なのはの『背後』から鳳仙花の種のように飛び散った三つの魔力弾が空中で軌道を変更し、標的目掛けて一斉に襲い掛かった。
 手遅れだと思いながらもティアナは答えを知る。
 なのははシールドで防御した際、障壁の輝きで視認を妨害しながら、更に自らの背後で魔力を練り上げていたのだ。攻撃の前動作を隠し、同時に射線を体で遮れるように。
 今更もう遅い。恐るべき誘導性を持つ魔法は放たれてしまった。
 回避が不可能ならば、スバルのような機動性も持たない自分が逃げ切ることもやはり不可能。
 クロスミラージュが自らの判断でシールドを展開し、そうと意図せず両腕に集束していた魔力を防御力の後押しとする。

「うわぁっ!」

 シールドが魔力弾を受け止める。
 しかし、カートリッジの魔力増加無しにしてもその威力は凄まじかった。
 一発目がシールドごとティアナの体を揺るがし、二発目が盾に亀裂を入れ、三発目がついに砕く。
 互いに相殺し合う形であったが、反動でティアナの体は<ウィングロード>から弾き出された。
 咄嗟にアンカーを撃ち出し、頭上に走る別の足場まで移動する。
 その間、致命的な隙でありながら、なのはは追撃を行わなかった。
 それは、ティアナが最初の攻撃でスフィアを撃ち抜いた後、一瞬無防備になったなのはをそのまま撃たなかった理由と全く同じである。

「――視野を広く持つように、って教えたよね?」

 睨み付けるティアナの感情的な視線を戒めるように、なのはは言った。

「一歩退いて、相手を観察することも重要だよ。魔力の動きにも気をつけて。ティアナは五感を鍛えてる分、その辺の感性が鈍いよ」
「う、うるさいっ!」

 仮面が剥がれ落ち、苛立ちとそれに隠れた羞恥がティアナの顔に浮き彫りになる。
 意外と激情家なんだな。やっぱりヴィータちゃんと気が合いそう。
 クールな少女の新しい発見に、場違いな感心と納得を抱きながら、それを心の片隅へ追いやって、なのはは更なる戦闘の為に行動を開始した。

「お話――聞かせてっ!」







211 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 23:27:00 ID:/D2j0yhw
支援するかしかあるまいw

212 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 23:30:26 ID:/D2j0yhw
あれ?
投下終り?

213 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/25(水) 23:30:49 ID:f83QF2Ck
「驚いたな……。ティアナ、なのはとしっかり渡り合ってるよ」

 ビルの屋上でキャロ達と共に上空の様子を見上げていたフェイトは思わず呟いていた。
 思う事は多い。
 二人の戦闘までの経緯はしっかり聞き及んでいた。ティアナの言い分も分かるが、なのはの普段の苦労を知る側としてはその意思を汲んで欲しいというのが本音だ。
 だが今は、そんなどちらが正しいとか味方するとかいう話は置き、ただ純粋に感心せざる得ない。
 ティアナの意志は、なのはの意志に決して劣らない。
 彼女にはそれほどまでに強い決意があるのだった。
 それ故にぶつかり合わねばならないという現実が、どうしようもなくやるせないものではあるのだが。

「……フェイトさんは、どっちが勝つと思いますか?」

 フェイトの漏らした呟きを聞いたエリオが躊躇いがちに尋ねた。

「それは、どっちに勝って欲しいって聞きたいんじゃないかな?」
「……そうかも、しれません」
「エリオはどう?」
「ボクは……ティアナさんを、応援したいです」

 意外にも、エリオはフェイトの眼を真っ直ぐに見返して明確な答えを告げた。
 保護者であり恩師であるフェイトに対して、何処か一歩退くような遠慮を見せるエリオには珍しい我を貫く姿勢だった。

「勝てば、ティアナさんはきっと孤独になります。スバルさんに言ったことは本心じゃないって信じてますけど、でも望んだ結果だとは思います。
 でも……それでもティアナさんが自分の目標の為にそれを本当に望むなら、ボクはそれを叶えて欲しい。
 その上で、例えティアナさんが独りを望んでも、ボクが勝手について行くだけですから。あの人が、未熟なボク達を信じて、導いてくれたように」
「そっか……」

 そのことにショックなど受けない。むしろ嬉しく思う。
 エリオにも、そうして貫くべき意志と守るべき大切なものが見つかったのだ。
 自分にとってなのはと過ごした10年がそうであるように、エリオにとってティアナや他の仲間と乗り越えた苦楽こそ、月日の長さを超えた大切な経験なのだろう。
 人との付き合い方はそれぞれ違う。
 確かに、自分やなのははティアナのことをエリオ達に比べて知らない。
 だからこそ、二つの意志は相反するのだ。

「わたしは……」

 ただ黙って、悲痛な表情で戦闘を見上げていたキャロが、震える声で呟いた。

「どっちにも勝って欲しくない。ううん、勝ち負けなんてどうでもいい。
 なのはさんとティアナさんが無事なら……戦うのをすぐに止めてくれたら、それでいい……」
「キャロ……」
「だって! おかしいですよ、こんなの……だって二人ともいい人です。優しい人です。敵じゃないんですっ!」

 キャロは涙を流し、誰にもぶつけられない訴えを嗚咽と共に吐き出していた。
 親しい人達が戦い合うこと――キャロにとって、それ自体が既に<痛み>であった。

「どうしてですか、フェイトさん? 戦うって、悪い人を倒す為や、大切なものを守る為にすることでしょ?
 ティアナさんは悪い人じゃないし、なのはさんは何かを壊そうとしてるわけじゃないっ。じゃあ、戦わなくていいじゃないですか!」
「違うよ、キャロ。これは……」
「嫌だよ、エリオ君……こんなのやだ……」

214 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 23:31:22 ID:sfsSCJAn
超支援!

215 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/25(水) 23:32:13 ID:f83QF2Ck
 縋り付くキャロを、エリオはただ弱弱しく支えることしか出来なかった。
 フェイトもただ痛ましげに見つめ、告げる言葉が無い。
 幼いながらも呪われた人生を経験してきた。その上で差し出された手に救われ、再び人を信じ、仲間の暖かさに癒された。その無垢な少女にとって、これがこの戦いへの答えだった。
 キャロの言葉はあまりに純粋で、単純だ。
 だが、真理でもある。
 フェイトとエリオは目が覚める思いだった。
 ああ、そうだ。どんな事情があれ――親しい人達が傷つけ合うのは嫌だ。胸が痛む。
 なのはが、そしてティアナもきっとそうであると。
 二人は改めてこの戦いの厳しさと悲しさを知った。

「そうだね、キャロ。痛いことだよ、戦うって……」

 フェイトはキャロの頬を伝う涙を優しく拭った。かつて、初めて彼女と会った時そうしたように。
 だが今流れるこれは悲しみの涙だ。

「嬉しい時にも流れるけど、やっぱり苦しい時や悲しい時に涙は出るんだ。私もそれを見たくない。でも……」

 キャロの顔をそっと自分に向け、視線を合わせて囁くように告げる。

「それが<人間>だから――。
 どうしても分かり合えなくて、気持ちはすれ違って……それでも感情をぶつけ合いながら歩み寄っていくのが、人間だけが出来る戦い方だから」
「人間だけが、出来る……」
「涙を流せるってことは、心があるってことだよ。
 これは、その心の戦い。どっちが悪いとか良いとかを決めるんじゃない。多分正しい答えなんて無い、それ以外を決める戦いなんだ」

 後はもう何も言わず、フェイトはただ黙って空を見上げた。
 止めること無く、横槍を入れることも無く、ただ見届けなければならない。この戦いの決着を。
 なのはとティアナ。
 かつて、自分となのはが戦った時のように、この決着でこれまでの何かが変わる。
 それがより良い未来への分岐なのか、最悪の道への一歩なのか。それは分からない。
 10年前、自分が戦った時。向けられたなのはの想いを否定した。完全な拒絶と敵意を持って戦い合った。
 あの日のことは、多分一生引き摺る負い目だ。それは似たような境遇で戦ったヴィータも同じだろう。
 だが、あの戦いは必要だった。
 あの時に、自分は岐路を得て、選び、そして今此処にこうして立っている。
 だから後悔は無い。あの時の決着と出た答えに。それだけはハッキリと言える。

「なのは……」

 フェイトは心苦しさと同時に、不謹慎ながら喜びも感じずにはいれらなかった。
 今のなのはは、あの頃のなのはだ。そのものだ。
 管理局としての正義ではなく、次元世界を統べる秩序でもなく――ただ一人の人間としての想いを信じて戦っている。
 迷い、悩み、それでも自分なりに考えて、傷付きながらも信じ続けて前進する。まるでヒーロー。
 子供の頃から、その眩しい姿にずっと憧れていた。
 組織は多くの人々を助けられるかもしれない。
 でも、たった一人の為に全身全霊を賭けて救おうとする君が好き。

「つらい戦いだね。でも……頑張って」

 やっぱり君には――自分の信じるままに飛ぶ、自由な空が良く似合う。






216 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 23:34:31 ID:/D2j0yhw
別に支援してしまっても構わんのだろう?

217 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 23:35:02 ID:Lq7zD7Lj
さぁどうなるのやら、支援

218 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 23:36:18 ID:czUR3UEL
支援支援

219 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 23:38:33 ID:YS1kw1z1
支援します!

220 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/25(水) 23:38:58 ID:f83QF2Ck
「クソ……ッ!」

 放った魔力弾が再び障壁に弾かれるのを見て、ティアナは悪態を吐いた。
 これが本来の実力の差なのか。
 あっという間に戦況は一方へ傾いた。
 なのはは強力なシールドを前方に展開し、先ほどと同じ方法で背後から誘導弾を連装ミサイルのように撃ちまくっている。
 ただそれだけ。魔法の運用一つで、戦闘は一方的な展開となりつつあった。
 ティアナの魔力弾はシールドを貫けず、弾速を驚異的な誘導性で補ったなのはの魔力弾は目標を執拗に追い詰める。
 硬い盾と高い火力があれば、つまりはそれだけで戦闘は決する。
 理不尽を嘆かずにはいられない理論ではあったが、ある種の真理でもあった。だから高町なのはは強いのだ。
 それに、まさにこれこそがティアナの求める純粋なパワーでもある。
 それを手に入れる為に、負けるわけにはいかない。

「クロスミラージュ、少し無理をさせるわよ」
《No problem.Let's Rock,Baby?(お気になさらず。派手にいきましょう)》

 無機質な電子音声のクセに随分と小気味のよい言葉が返ってくる。
 思いの他頼りがいのある返答に、思わずティアナは苦笑した。

「OK! 火星までぶっ飛ばしましょ――カートリッジ!!」
《Load cartridge.》

 消耗した魔力を一時的にカートリッジで補う。
 再び放たれた数発の魔力弾が見えた。
 自動追尾の誘導性は単純な回避運動では振り切り辛い。無理な軌道変更を何度も繰り返してようやく成功させたと思えば、次が来る。
 何度かの攻防でティアナはそれを理解していた。
 効率はともかく、反撃に転じれるだけの効果的な方法が必要だ。
 魔力を消耗し、弱点が露見する危険性もあるが、これしかない。
 ティアナは一つの魔法を選択した。

「フェイク・シルエット――<デコイ>!」

 ギリギリまで魔力弾を引き付け、回避に移る瞬間に幻術魔法を発動させる。
 ついさっきまっで居た場所に、残像のように残された幻影のティアナへ向かって誘導弾が殺到した。
 視認と自動追尾さえ誤らせる幻術を使った、戦闘機のような文字通りの囮(デコイ)だった。
 一瞬の回避には効果的である。しかし、結局はその程度の効果だ。
 本来の<フェイク・シルエット>は幻影を動かしたり、複数行使することで戦術的な効果すらも見込める魔法である。
 ティアナにとって、この魔法は未だ習得出来ぬ不完全な魔法だった。
 今のでそれを、なのはに見抜かれたかもしれない。
 リスクは大きかった。だからこそ、見返りは最大限に活かす。

「うぉおおおおおおっ!!」

 獣のように駆け、吼えながらティアナは空中のなのはを狙い撃った。
 シールドに弾かれるのも構わず、とにかく攻撃の手を休めずに移動しながら、防御のカバーが無い側面へと回り込む。
 なのはは冷静に観察し、察知していた。
 その動きがフェイクであることを。
 本命は、撃っていない左手に集束し続けている魔力だ。二段重ねの<チャージショット>の貫通力はシールドすらも射抜く可能性がある。
 固定砲台と化していたなのはは、ようやく移動を開始した。
 しかし、ティアナの命中精度と魔力弾の弾速は全速飛行であっても逃れ切れるものではない。

221 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 23:39:21 ID:t01ItKzN
バジリスク頭発射支援

222 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/25(水) 23:40:45 ID:f83QF2Ck
「捉えた!」

 確信と共に、ティアナは左手に宿した魔力の暴走を解き放った。
 雷鳴のような雄叫びを上げて、凶悪な銃火が炸裂する。スパークを撒き散らしながら、弾丸が展開された障壁に殺到した。

「<バリアバースト>!」

 狙い済ましていたなのはは、まさにその瞬間仕掛けを発動させた。
 バリア表面の魔力を集束して爆発させる。
 子供の頃から技術向上し、バリア付近の対象を弾き飛ばす攻性防御魔法へ昇華した代物だったが、なのはは今、あえて対象を無差別に設定して実行した。
 魔力弾の激突と同時に発動し、障壁を貫かれる前に、爆発により自分自身を弾き飛ばして距離を取る。
 無茶苦茶だが、その思い切りの良さが回避を成功させた。
 吹き飛びながらも空中で姿勢を安定させ、近くにあった<ヴィングロード>の足場に着地する。
 そして、すぐさま<ショートバスター>による反撃を放った。
 砲撃の隙間をティアナは駆け抜ける。
 そう、ティアナは攻撃が失敗しても走り続けている。
 なのはは彼女の走る足場の先を目で追い、その<ヴィングロード>が自分の元まで一本の道で繋がっていると知ると、内心で戦慄した。
 まさか、計算通りか?
 回避し、ここに着地することまで狙ってのことか――!
 肯定するように、接近するティアナの両手には銃剣型のダガーモードになったクロスミラージュがあった。
 なのはは感嘆せざるを得ない。なるほど、大したものだ。

「でも、終わりだよ。ティアナ!」

 なのはは余裕を持ってシールドを展開し、背中に魔力スフィアを形成した。
 ティアナには一瞬でも高機動を行う手段が無い。確かに、接近戦には絶好の位置に追い込んだが、タイミングが速すぎたのか、ただの駆け足では全くスピードが足りなかった。
 間合いに到達する前に、迎撃は十分間に合う。
 シールドは接近戦の持ち込み方次第でどうにかなるかもしれないが、そもそも誘導弾が放たれれば近づくことすら不可能だ。
 僅かに間合いに届かぬ位置でなのはは魔法を完成させ、全てを終結させるべく解き放った。
 数条の閃光がティアナに殺到する。

「――Slow down babe?」

 眼前に迫る決定的な攻撃に対して、ティアナは不敵に笑い返して見せた。

「そいつは、早とちりってヤツよ!」

 右手を突き出す。
 カートリッジ、ロード。薬室に弾丸を込めるが如く。

《Gun Stinger》

 銃声代わりの厳かな電子音声。魔力を集中させた銃剣の切っ先を前に突き出し、ティアナ自身の炸薬が点火された。
 脚部に圧縮して溜めていた魔力を爆発させた反動で、無謀な突進は凶悪なまでの加速を得る。
 次の瞬間、ティアナの体は前方へ弾け飛んだ。

「でぇやぁああああああーーーっ!!」

 自らを弾丸と化した突撃。残像を残すほどの加速で<ヴィングロード>を滑走し、飛来する魔力弾の隙間を一直線にすり抜けて、先端の刃がついになのはのシールドを捉えた。
 激突のインパクトが周囲の空気を震わせ、更に続く力の拮抗が火花を散らす。
 矛と盾がせめぎ合い、魔力で構成されながらも金属的な悲鳴を上げ続けた。

223 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/25(水) 23:43:32 ID:f83QF2Ck
「すごいね、ティアナ! いつの間に、こんな魔法覚えたのっ!?」

 絶対的な魔力差を埋めるティアナの突進力に顔を歪めながら、それでもなのはは感嘆を抱かずにはいられなかった。
 戦いが始まって以来、ティアナはあらゆる予想を覆し続けている。

「魔法じゃありません! それに、あまり誇れる力じゃない……!」

 渾身の力で魔力刃を障壁の内側へと押し込みながら、ティアナは自身の限界を悟られぬよう、歯を剥いて笑った。
 冷や汗が滲む。この技は、あまり長い間パワーを放出し続けるものじゃない。あくまで一瞬の爆発力を得る為のものだ。
 拮抗は長くは続かないだろう。

「これは……<悪魔>の力です!!」

 無茶を承知で、空いている左手のクロスミラージュにカートリッジのロードを命じた。
 激しい魔力放出を行う中、強引な方法で供給された魔力が痛みを伴って全身を駆け巡る。
 マグマが血管を通り抜けるような錯覚を味わいながら、その勢いを全て右腕に注ぎ込んだ。銃口から伸びる魔力の刃が輝きを増す。
 凶悪なその光は、ついにシールドを打ち破った。
 しかし、それだけだ。
 刃が障壁を貫通し、銃口が抜けて銃身の半分も食い込んだところで、ついに力尽きた。
 ダガーの刃はなのはの胸元で僅かに届かず止まっている。もはやこれ以上の後押しは無理だ。
 その結果にティアナは――笑った。
 そして間髪入れずに吼える。

「クロスミラァァァージュッ!!」
《Point Blank》

 撃発。
 シールドを突破した銃口から、このほぼ零距離でダガーに蓄えていた魔力を利用した<チャージショット>がぶち込まれた。
 力を溜めた銃身を槍のように突き刺し、そのまま発砲するまさに狂気の連撃(クレイジーコンボ)
 実銃の放つマズルフラッシュに等しい魔力光の炸裂が指向性を持って前方に噴出し、直撃を受けたなのはは声も無く後方へと吹き飛んだ。
 バリアジャケットのリボンの部分がバラバラに弾け飛び、確実なダメージを引き摺って、なのははたたらを踏みながら後退を止める。
 ティアナ、もはや狩りに集中する獣のように、一片の油断も躊躇も無くただトドメを刺すべく追撃した。

「ぁ……っ、あっ、あ゛あっ、あああああああああああっ!!」

 躍動する体から荒い呼吸音と共に漏れるこの恐ろしい声は何なのか。ティアナ自身さえ一瞬気付かなかった。
 この一撃がティアナにとっても全身全霊を賭けた勝負であったことは間違いない。
 賭けには勝った。だが多くのものを支払った。
 一瞬の爆発力に全てをつぎ込み、これを逃せば元々平凡な魔力量しか持たない自分に持久戦は出来ない。
 接近戦で全てを決める。

「墜ちてもらいます!!」
「……っ、そうも、いかないよ!」

 焦点の合わないなのはの視線が、僅かに戸惑いを見せた後、素早く接近するティアナを捉えた。
 ダガーの刃が十字に交差する。ハサミと同じ構えを取ったティアナはなのはの首を刈り取るように腕を突き出した。
 交差の一点にレイジングハートを差し出し、なのはは辛うじてそれを受け止める。

224 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 23:43:45 ID:yZvYrhZd
スーパー凡人タイム支援

225 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/25(水) 23:47:05 ID:f83QF2Ck
《Stop fighting! It is your obligation,Cross Mirage.(戦闘中止しなさい。クロスミラージュ、アナタの責務です)》

 デバイス同士が接触した瞬間、レイジングハートとクロスミラージュも意思を交わしていた。
 過剰な戦闘継続と、相手の危険な精神状態を考慮したレイジングハートが冷静な命令を下す中、クロスミラージュは変わらぬ電子音声で答える。

《Sorry,My senior.My answer is……Fuck you!(申し訳ありません。私の答えはこうです……糞喰らえ!)》

 予想外の、機械的な発声にそぐわない痛烈な返答だった。
 レイジングハートに顔があったなら、きっと面食らっていたに違いない。クロスミラージュに手があったのなら、きっと中指を立てていただろうから。
 主の意思も、デバイスの意思さえも相反し合った。
 二人は激突を続ける。
 体格的にも二人の筋力は大差無い。力比べを無駄と切り捨てたティアナは、素早く刃を引いて攻め方を変えた。
 拳銃にナイフの生えたような通常の短剣とは使い勝手の違うそれを、驚くほど滑らかに振り回して、小さく、細かく斬りつけて来る。
 射撃戦主体とは到底思えぬ巧みさであった。
 なのはは冷や汗を浮かべながら、迫り来る剣閃をかろうじてデバイスで捌き続けた。
 ティアナの攻撃が技術に裏づけされたものなら、なのはの防御は経験によって支えられている。
 決して理の通った動きでは無く、無駄もあり、しかし長年戦い続けてきた経験の中にあるヴィータやシグナムを含む接近戦のエキスパートとの記憶が、迫る刃に対応するのだ。
 全身を緊張させ、それでいてくつろいだ動きは、シビアな判断の連続である近接戦闘において理想的な態勢である。

「ビックリだな、ティアナってばどんどん隠し玉出すんだもん!」
「アナタに対して有効だから付け焼刃で振り回してるだけです! でも、今は私の出せる力は全て出して証明すると決めましたから!」
「なるほど! じゃあ、この勝負はわたしの負けかもねっ!」

 ガギンッ、と鉄のぶつかり合う音を立て、再びデバイスは噛み合い、一瞬の拮抗が出来上がった。
 互いの武器を境に、二人の視線が交差する。

「――ティアナを甘く見てたのは認めるよ。
 でも、だったら尚更どうして? こんなに強いのに、ティアナはまだ力が欲しいの?」
「欲しいですね。例え悪魔に魂を売ってでも……<悪魔>を殺す為に!」
「そんな矛盾を持ってる時点で、間違ってるって気付かないの? そんな考えは、ティアナを不幸にする! 孤独にしちゃうんだよ!!」
「独りで戦う、誰も助けてくれなんて言ってない! どうしてアナタは私を止めるんですか!? 
 私はただの部下です! 別にアナタの10年来の友人でも、家族でもない! お節介程度の気持ちで、私の生き方まで干渉されたら、いい迷惑なんですよ!!」

 もはやほとんど罵声のようなティアナの訴えが、なのはの心を揺るがした。

「わたしは……」

 心が痛い。だが、こんな痛みなど自分勝手な感傷だ。
 そうだ、結局どこまでいってもティアナにとって自分の言動は余計なお節介に他ならない。
 それでも――ここで引き下がれない理由は何だ? 目の前の少女を、このまま独りで行かせたくないと思う、自分を突き動かすこの衝動は一体何なのか?
 自分の心を表現出来る言葉を必死で探すなのはの頭とは別に、その胸に宿る熱い何かが一気に込み上げて、口から突き出した。

「――ティアナが、好きだから」
「え?」

 一瞬、激しい力と意思の衝突が何処かに消え失せた。
 呆けたようなティアナの顔と、無意識に出た自分の言葉を認めて、なのはは今や完全に納得した。
 そうだ。これだ。

226 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 23:47:44 ID:Xy3M0/LC
凡人……勝てーーーーーーーーっ!!
支援!!


227 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 23:49:15 ID:E0sPFugc
支援!!

228 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 23:49:42 ID:czUR3UEL
支援ベイビーイェヤァー

229 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/25(水) 23:50:08 ID:f83QF2Ck
「初めて会った時、相棒を見捨てずに背負って走り続けるティアナの必死な顔を、カッコいいと思ったから」

 つらつらと、これまでの迷いが嘘のように想いが言葉となって流れ出た。

「初めての訓練の時、ティアナの撃った弾に宿った魂の強さに、憧れたから」

 教導官としての責務。
 上司としての責務。
 そんなもの、どうだっていい。

「初めてわたしの訓練に意見してくれた時、自分だけの決意を持つ真っ直ぐな眼を見て、もっと知りたいと思ったから」

 高町なのはという一人の人間として付き合いたいと、思ったのだ。

「だから、ティアナ――今のアナタの姿がわたしには我慢出来ないの」

 それは正しいのか、悪いのか。
 そんな考えはもはや空の彼方へ捨て去って。なのはは今、一人の少女として、断固として言い切るのだった。

「そんな、身勝手な……っ」
「ゴメンね。フェイトちゃんやヴィータちゃんの時もそうだったけど、わたしって結構わがままなの」

 絶句するティアナの前で、なのははあどけない笑みを浮かべて言った。

「そう言えば、わたしが勝った時の条件って言ってなかったね。
 ティアナが勝ったら、うんと強くなるように訓練メニューを変更する。
 わたしが勝ったら――今度こそ<なのはさん>って呼んでもらうよ。親しみを込めてね!」

 名案だとばかりに、得意げに言うなのはの顔はどう見ても管理局所属の一等空尉の顔ではなく、年相応の人懐っこい少女の笑顔であった。
 思わず釣られて浮かべそうになった苦笑を噛み殺して、ティアナは鋭く睨みつける。

「だったら、まずは勝ってからにしてもらいましょうか!」

 クロスミラージュの銃身とレイジングハートの持ち手が交差していた一点に向けて、膝を蹴り上げる。
 全く想定していなかった方向からの衝撃に、力の拮抗は崩れ、二つのデバイスは弾けるように離れ合った。
 両手は宙を舞い、互いに無防備な懐を晒した二人だったが、その一瞬を想定していたティアナだけが一手早く動いた。
 下腹に向けてダガーの刃を突き入れる。擬似的にとはいえ人を刺す行為に一瞬の躊躇もない。
 バリアジャケット越しに感じる手応え。ティアナは何故か取り返しのつかないことをしてしまったような絶望を感じながら、必勝の瞬間にほくそ笑む。
 なのはの腕が、ティアナの腕を掴んだ。

「ジャケットパージ!!」

230 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 23:50:43 ID:Lq7zD7Lj
支援!

231 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 23:50:58 ID:YS1kw1z1
支援、進行ーーーーっ!

232 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/25(水) 23:51:58 ID:f83QF2Ck
 そう叫んだなのはの言葉の意味が一瞬理解出来ない。
 だが、何か答えを出す前にティアナの体は突然の衝撃に後方へ弾き飛ばされた。
 上着の部分を構成する魔力を瞬間的に解放することで周囲に衝撃波を放ったこの<ジャケットパージ>は、かつて親友のフェイトが使用していたものだった。
 全く予想していなかった反撃に吹き飛ばされるティアナ。揺れる視界で、なのはの射撃体勢を捉える。
 必死にクロスミラージュの銃口を突き付けた。

「く……っ!」
「レイジングハート!」

 互いのデバイスの先端に灯る魔力の光。交差する視線。狙いは完璧。
 放たれる、今。

「シュートォ!!」
「Fire!!」

 二色の魔力光がすれ違い、互いの標的を同時に直撃した。
 奇しくも、二人とってこの戦いの中で初めてクリーンヒットを相手に与えていた。

「ティア! なのはさん!?」

 意識を刈り取るほどの互いの一撃に吹き飛ばされ、<ウィングロード>の足場から落ちていく二人を見て、それまで呆然としているだけだったスバルが我に返る。
 深くなど考えない。二人を救う為、魔力を振り絞って更に<ウィングロード>を形成し、伸ばす。
 二人の間を中心に一本の青い道が伸び、落下する二人の体を受け止めた。
 スバルが安堵のため息を吐く中、二人は倒れ伏したまま動かない。






233 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 23:52:04 ID:zCxj7ITt
支援

234 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/25(水) 23:53:43 ID:f83QF2Ck
 モニターには倒れたままのなのはとティアナが映っている。
 息を呑むようなその場の静寂が、ヴィータの元にまで伝わってきていた。

「……信じられねえ。リミッター付きとはいえ、相手はあのなのはだぞ」
「先に言うなよ。正直、俺も信じられないってのが本音さ」

 この時ばかりはダンテも茶化す事無く、神妙な様子でヴィータの言葉に同意していた。
 ティアナと最後に会って約三年。
 確かに彼女は魔導師として鍛える為の施設に入り、その為の日々を過ごしてきた。
 だが、その日々を経たとしてもわずか三年という時間であそこまで人は変わるものなのか?
 機動六課に入って以来の付き合いでしかないヴィータにとっては、この変貌はより衝撃的であった。

「努力だとか詰め込みの自主錬だとかでどうにかなるレベルじゃねえぞ。
 特に、最後のあの銃剣使った突撃。瞬間高速移動とか肉体強化とか、完全にスバルやエリオみたいな近接戦型魔導師のスキルじゃねーか」

 感嘆というよりも畏怖するような響きで呟き、ヴィータは傍らのダンテを睨み上げた。

「……おまけに、どっかで見た技だったな」

 初めて共闘した夜、目の前の男が使った技をヴィータは鮮明に覚えていた。
 突進と刺突を合わせた一撃。だが、威力や効果はそんな単純なものではなかった。まさに絶大だ。
 爆発的な初動は、自分やシグナムでさえ反応することが難しいだろう。あれは一種の技だった。ダンテは自然体で近接戦型魔導師のスキルを備えている。
 ティアナの使った技はまさにそれをベースに発展したものと言ってよかった。

「確かに、アイツには何度か見せたことがあるがね。だが、分かるだろ? 見よう見真似で出来るもんじゃない。おまけにアイツには向いてないんだ」
「……そりゃそうだよな。確かにアイツの体つきは格闘向けじゃねえ。けど、だったらますます解せねえだろうが」

 言いくるめられ、渋々頷きながらもヴィータは合点のいかない表情を見せた。

「近接技の類は単純な魔法の習得で出来るもんじゃねえ。
 機動力強化や筋力強化にしても、基になる部分の適応、その為の肉体改造――どれも一朝一夕で出来るもんじゃねぇんだ。
 こりゃ、努力とか才能の問題ですらねーぞ。時間的に無理! ティアナの野郎、まさかヤベー薬でもやってんじゃねえだろな?」

 ヴィータはさして考えもせず冗談染みた呟きを漏らしたが、ダンテの表情が僅かに揺れたのを彼女は気付かなかった。
 そうしているうちに、モニターで変化が起こる。状況が動き出したのだ。
 ヴィータは再びモニターに釘付けになり、戦いの結末に意識を集中させた。
 その傍ら。ダンテはモニターから眼を離し、肉眼では見えない遠くの訓練場での戦いを見据える。

「……あのじゃじゃ馬、まさかここまで踏み込んでたとはな」

 笑い飛ばしてみようとして失敗し、苦々しいものがダンテの口元に浮かんでいた。

「深入りするなよ、ティア。お前は<人間>なんだ――」

 ダンテの言葉は風に溶け、遠いティアナの下へ流れていく。
 状況を鮮明に映すモニターの中、ついに二人の戦いは終着へ向かおうとしていた。






235 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 23:53:49 ID:t01ItKzN
おめえら最高だよ支援

236 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 23:54:31 ID:r39qibAz
支援


237 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/25(水) 23:56:20 ID:f83QF2Ck
「くっ……ぁあ……っ」

 力を振り絞り、なのはは両手を着いて上半身を持ち上げた。
 腹のど真ん中にはティアナの魔力弾の直撃を受けた跡がしっかりと刻み込まれている。まったく、あの態勢で恐ろしい命中率だ。

「久しぶり、かな……こんなにキツイの」

 苦笑しながら力の入らない両足を無理矢理立たせる。
 ダメージは予想以上だった。
 近接状態から逃れる為とはいえ、<ジャケットパージ>は発動と同時に無防備な状態を晒す危険な方法である。
 上着部分を失ったことで大幅に防御力の落ちたバリアジャケットは、ティアナの魔力弾の貫通力を緩和し切れなかった。
 模擬戦でここまで必死になったのは、本気のシグナムとの一戦以来だ。

「ティアナは……」

 なのはは自分の立つ<ウィングロード>が一直線に伸びる先を見つめた。
 ティアナは倒れたままだ。意識は戻っているらしく、両脚を震わせ、両腕を動かしながらもがいているが、立ち上がれていない。
 ダメージはティアナの方が深刻だった。
 砲撃魔導師とも呼ばれるなのはの<ショートバスター>の直撃は、それほどまでに脅威なのだ。
 ティアナは言うことを聞かない自分の体に絶望した。

「あたしが――負けるの?」

 悔しさと共に、弱音とも取れる言葉が漏れる。
 それを見下ろすなのはは、手を差し伸べることもなく、ただ強く言い捨てた。

「どうしたの? それで終わりなの?」

 言葉とは裏腹に、嘲りなど欠片も無く、叱責するような厳しさでなのはは告げる。

「立ちなさい! ティアナ、アナタの力はそんなものじゃないはずだよ?」
「うる、さい……っ!」

 なのはの言葉にティアナの頭が一瞬で煮えくり返った。
 湧き上がってきた怒りを両脚に注ぎ込み、力として立ち上がる。ここで這い続けることは、何よりも許せない屈辱だ。

「アンタなんかに、あたしの何が分かるってのよぉぉ!!」

 折れた牙を剥きながら立ち上がった。
 ティアナの仮面、もはや跡形も無く崩れ落ち、無残なまでの感情が剥き出しになっている。
 怒り、妬み、焦り、悔い、憎しみ――ハッキリとした視線。だが、なのははそこから眼を背けない。

「分からない。でも、わたしはアナタを止めなきゃならない。例え、アナタを傷つけることになっても」

 幾度目かの対峙。
 しかし、二人は言葉も交わさずに確信し合った。
 次が、最後だ。

238 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 23:56:27 ID:zCxj7ITt
時空神像支援

239 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 23:58:03 ID:Xy3M0/LC
人間が悪魔の血を……ティアナ将来どうなるんだろう?
サイッコウな戦闘にいよいよ決着が支援!!

240 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/25(水) 23:58:14 ID:f83QF2Ck
「……クロスミラージュ」
「……レイジングハート」

 下向きに構えられたお互いのデバイスが、お互いの主の意のままにカートリッジをロードした。
 供給される一発分の魔力。
 そう、次の一発で決める。
 奇妙な沈黙が落ちた。
 嵐の前の静けさが最も表現として合っている。更に適する状況を表すならば『銃を構える寸前で止まった決闘の瞬間』が最も正しい。
 自分が最後まで信じる射撃魔法を武器に、二人は同じ盤上で賭けに出ることを同意していた。

 張り詰めた空気が、限界に達する。

 ティアナとなのはが、自らのデバイスを相手に向けて振り上げた。
 一挙動、なのはが遅い。
 疲れ果てて尚、ティアナの抜き撃ちは神速であった。クロスミラージュのガンサイトがなのはの眉間を捉え、ティアナは躊躇無く弾丸を解き放つ。
 放たれた魔力弾は、その音速に達する速さで一直線に走り――なのはの手の中に吸い込まれた。

「あ――」

 目を見開き、驚愕に支配されたティアナに許された発声はそれだけだった。
 待ち構えていたかのように、発射と同時に動いたなのはの空手が飛来する魔力弾を防護フィールドで包み込み、受け止めていた。
 虚しく四散する魔力の残滓が舞う中、瞬き一つしないなのはの眼光がティアナを捉えている。
 右手のレイジングハートが、ティアナより一瞬遅れてその穂先を標的に向けた。

「シュート」

 囁き、念じる。
 轟音と共に砲撃が放たれ、なのはの最速砲撃である<ショートバスター>が為す術も無いティアナを貫いた。
 魔力の奔流が過ぎた後、左半身のバリアジャケットを消失させ、ティアナが力なく膝を着いた。
 もはや、戦いを続けられはしない。
 戦闘は終了したのだ。なのはの勝利によって。

「ティアナ……」

 僅かにふらつく足取りを叱咤して、なのはは今にも倒れそうなティアナの下へ歩み寄った。
 ギリギリの勝負だった。元より、正面から撃ち合いなどして自分に勝機があるなど思っていない。
 なのはがティアナの射撃を防げたのは、勘と、運と、何よりもその判断力によるものだった。
 散々自身の魔力弾を撃ち込みながらもそれに耐えてきた自分のバリアジャケットをティアナは警戒していたはずだ。
 狙うならば、一番ダイレクトにダメージを送り込める頭部を狙って意識を狩りに来る――そう踏んで、ティアナの射撃を誘導した。
 後は自身の持ち得る感覚やセンサー全てを頭に集中して待ち構え、そしてなのはは賭けに勝ったのだ。

「わたしの、勝ちだよ」

241 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 23:58:57 ID:yZvYrhZd
よくがんばった!
支援

242 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/25(水) 23:59:55 ID:M1lz6hG8
ここで一発逆転がありそうに見えるwww
師炎

243 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/26(木) 00:00:38 ID:3jC5LDuX
 ティアナの目の前で、なのははそう宣言した。
 それを聞き、持ち上げた顔の中。ティアナはまだ笑みを浮かべていた。

「まだ決着なんて……ついてませんよ、教導官。私の意志は折れていない」
「何言ってるの、ティアナはもう戦えない!」
「なら、待ちます。このまま何もしないなら、少しずつ呼吸を整えて、体力を回復させて、動けるようになったらもう一回襲い掛かります」
「そんなこと……っ!」
「そんな面倒な真似をさせたくなかったら、しっかり決着を付けてください。高町教導官」

 ティアナの言葉に、なのは息を呑んだ。
 ドドメを刺せ――ティアナはそう言っている。

「……降参して、ティアナ」
「言いません。もうダメです、その段階は過ぎました。私はもう決めましたから」
「ティアナ、意地を張らずに……っ!」
「その気遣いは、一体何の為のものなんですか!?」

 倒れる寸前とは思えないティアナの一喝が響いた。
 彼女の瞳にだけは、いまだに激しい炎が燃え続けている。

「高町教導官! アナタは卑怯だ、そうやっていつも深く踏み込む決断を避ける! 優しさだと思ってるそれは、壁なんです!
 私はアナタの笑顔には惑わされない! 私の本気に対して、本気で応えようという気がないなら最初から関わらないで下さい! 今は優しさなんて必要ないんですよ!!」

 息も荒く、それでもティアナは血を吐き出すように言葉を投げつけた。
 その全てがなのはの心を抉る。
 ティアナを含めて、これまで多くの訓練生に教えてきた全てに自信が無くなっていく。
 間違っていたとは思えない。でも――確かにわたしは、壁を作っていたのではないか。

「……さっき言ったことは嘘ですか?」

 今度は静かに、ティアナが尋ねた。

「本当なら撃って下さい。
 私は本気だから止まりません。本気なら止めて下さい。撃って下さい。この戦いの答えを決めて下さい――<なのはさん>」

 なのははカッと眼を見開いた。
 心が痛み続ける。苦悩が巡り続ける。だが今、迷いだけは抱いてはならない。
 何かを堪えるように引き締めた口元。弱弱しくも立ち上がったティアナを睨み据え、レイジングハートを構えた。

「――全力全開でいくよ、ティアナ」
「望むところです」

 コッキング音と共に二発のカートリッジがロードされる。
 十二分な溜めによって、最大級の魔力が強大なスフィアを形成、凶悪な光を胎動させた。
 その圧倒的な存在を前に、射線上のティアナはむしろ穏やかな表情すら浮かべていた。
 今、この戦いから始まった全てが終わる。

244 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 00:01:24 ID:QXFpsl01
いや此処はスクライドの最終回風に引き分けだろw
支援

245 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 00:02:34 ID:dLsc9EtR
ティアナ格好良すぎww
惚れちゃいそうだよ
支援


246 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/26(木) 00:03:16 ID:f83QF2Ck
「<ディバインバスター・エクステンション>!」

 なのはの叫び、あまりに悲痛に響き。

「シュゥゥゥーーートォォッ!!」

 渾身の力と想いを込めて、なのはは泣き叫ぶように絶叫した。
 高密度で圧縮された魔力が一瞬でティアナの体とその意識を飲み込む。
 多重構造物を貫通するほどの対物集束砲は光の帯を空の彼方まで届かせ、その凶悪な輝き知ら示した後、ゆっくりと消えていった。
 斜線上にあったただ一人の対象物であるティアナは、バリアジャケットを跡形も無くに吹き飛ばされ、訓練着の状態に戻っていた。
 意識などあの光に全て焼き尽くされ、そのまま崩れ落ちる。
 もはや、立ち上がることはない。目を覚ますのに丸一日は必要だろう。
 今度こそ、戦いは終わった。
 勝者となったなのはは、倒れたティアナを呆然と見下ろしていたが、やがて踵を返してフラフラと歩き始めた。

「模擬戦はこれまで。二人とも、撃墜されて……」

 誰に告げているのか分からない呟きは、そのうちすすり泣くような声に変わっていく。
 数歩進んだところで力なく膝を着き、両手で顔を覆った。

 様子を見ていたフェイトが飛び出し、いつの間にかバインドの解かれていたスバルが弾けるように駆け出した。
 その戦闘を傍観していた者全てが、慌てて行動を始める。このあまりに痛ましい結末に。
 もう、見ていられない。



 ティアナ対なのは、決着――。





to be continued…>





<悪魔狩人の武器博物館>

《剣》リベリオン

 ダンテの愛用する剣。父から譲り受けたもの。
 長身のダンテ自身に匹敵する程の長さと肉厚の刀身を持つ巨大な剣。悪魔の頭蓋骨を連想させる装飾が特徴。材質不明。
 頑強で切れ味もあるが、それ自体は単なる剣に過ぎない。
 その真の特性は、ダンテの力を唯一完全に発揮出来る媒介であるという点である。
 並の得物ならば伝播させるだけで崩れ落ちる真紅の魔力を刀身に宿し、更に強力な攻撃として具現化させることが可能。
 ダンテの魔力を帯び続けていたせいか、彼の意思一つで手元に戻ってくる特性も兼ね備えている。
 また、武器としてだけではなく、ダンテの<真の力>を発揮する為の鍵としても在るらしいのだが――?
 髑髏の装飾は、ダンテの状態に応じて形状が変化するらしい。

247 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 00:04:22 ID:BVY/eMu7
支援!!

248 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 00:04:23 ID:QXFpsl01
投下乙でした〜〜〜〜〜w

249 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 00:11:08 ID:ULkxNDL0
やはり、なのはが勝ったか……orz
リミッター付で『全力全開』とは笑わせる( ゚д゚)、ペッ
もはや、存在自体がティアナに喧嘩売ってるとしか思えんな

あと、いちいちなのはの肩を持つゲボ子uzeeeeeeeeeeeeeeeeee!

250 :魔法少女リリカルなのはStylish ◆GJQu3lVpNg :2008/06/26(木) 00:11:16 ID:3jC5LDuX
今回は言える。全力全開、投下終了!
途中でさるさん喰らって臆病な投下間隔になってしまいましたが、ラストバトルではみんなの支援に押されてなんも考えずに投下しました。
本当に支援ありがとう!w

ティアナのなのはの確執はこれにて決着です。あとはアフターケア。
ここまでギスギスフィーリングに付き合ってくれてありがとう。全然スタイリッシュじゃなかったよね。でも、これがティアナだからw
次回もどっちかっつーとリリなの色強めでいきます。ダンテも活躍の場作るけど。
この二人の場合って、もう思いっきりやった方がよかったと思うんですよね。フェイトの時みたいに。
個人的になのはさんは公務員より正義の味方になって欲しかったですw
戦闘シーンに関しては独自解釈とノリだらけなので、深く考えずにDMCの音楽なんか聴きながら読むと宜しいかと。
それでは、いろいろ言いたいけどあとは全部次回にて。なのティア待っててねーw(ぉ

251 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 00:11:42 ID:mMAXJUSO
投下GJ!
やっと和解かな?続き待ってます

252 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 00:12:02 ID:dLsc9EtR
投下乙でした。
正直今回の展開はもうカッコよすぎです!!
マジで最高でした。
こんなティアナをアニメでも見てみたかったです。
次回以降の展開が気になるところですが、とにかくこんな素晴らしいSSを読ませていただきありがとうございました!!

253 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 00:13:26 ID:yZvOlbTE
GJ&乙
ティアナかっこいいよティアナ
これからの2人の関係がどう変わってくのか気になるところですネ
一瞬最後はSLBぶっ放すかと思ってしまったけど

254 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 00:13:42 ID:usRF4D8k
二人ともかっこ良過ぎるだろう……ああ、そうだよ、最高だよ!!

255 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 00:15:47 ID:v+66s1FF
結局は本編通りか

256 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 00:16:14 ID:KQpN4/Kx
GJ! 今回もカッコ良すぎ! 素晴らし過ぎです!
最高の一戦をありがとうごいました!
なのはさんもティアナも漢前過ぎるぜ!

257 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 00:18:28 ID:8vBi6Xhz
GJ!
スケボーのようにってあれか
シャーリーさんが摩擦的な意味合いで死んじゃうからw

所詮、人間は独りだと言った魔法少女がいたな
一人で飛べなければ意味がないとも
まあ、飛べなくても歩けばいいのですがね
彼女なら空だろうと海上だろうと歩いていけるだろうと期待

258 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 00:19:05 ID:ZkELCCPb
GJしかし勝利者はおらず 、ただ戦いに疲れ果てた者達のみ。
お互い譲れぬ信念。最高でした。

259 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 00:19:11 ID:8sDlRUyy
まさかティアナがなのは相手にここまでやるとは思わなかった、今回はあえてティアナGJ!と言おう。
そして誘導弾のでがかりを潰すというやり方に思わず某人間災害なガンマンを思い出したのは俺だけか? 内藤スキーな氏ならイメージしていそうな戦法だ。
きっと彼のような射撃練習してんだろうな、毎朝。
クロスミラージュのアメリカンな対応にもびっくり、ってかFな単語を認識してるってやっぱティアナの影響なんだろうか? だとしたら彼女の将来が心配、女の子はもっと言葉遣いに気お付けなさいな。

しかしこのティアナは時空神像使ってるご様子、ダンテの言葉からすると人間はあんま使わないほうが良さそうな代物らしいのでその辺も心配。

ってかなんか心配だらけだ、でもまあティアナの力へ渇望と暴走が癒されてくれると嬉しいな。
まあつまりは総じてGJ!! 次回も期待してます。

260 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 00:20:25 ID:SmrU0Hph
GJ!!
しかしなんて悲しい決着なんだ。
この後ティアナはどの道を選ぶのか。なのはは自分のティアナからの思いをどう受け止めるのか。
むぅ、まったく予断を許さないぜ…。

261 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 00:23:40 ID:0hg50gES
GJ
 ものすごく面白く話しには文句のつけようもないですけど、アレだけやってたった一日のノックダウン…
”リリなの”ってやっぱ戦いにおける緊張感が地味にそがれる設定なんだな

262 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 00:24:33 ID:MX/17VJv
やはり人間では悪魔には勝てないのか… GJ! 乙でした!!

263 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 00:35:10 ID:U4Pq0c4O
本編どおりなんて言ってるアホは百万回読み直せ

264 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 00:49:17 ID:QXFpsl01
>>250
投下乙w
あと正義の味方はいかんぞ
某弓の人や魔術師殺しの人みたいに磨耗しちまう
まぁそんななのはも見てみたいんだけどねw

265 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 00:49:50 ID:sOloKHFZ
GJ!!です。
情けはいらぬ、止めをさせなティアナにニヤニヤしましたw
意思と意思のぶつかり合いがとても良かったです。
こんな、なのはを本編でも見たかった。

266 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 01:52:02 ID:s9+Uzvb2
口当たりのいい言葉を吐いてるだけじゃ相手に伝わらないってことか

267 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 02:24:39 ID:ZMxqhzcT
なるほど!? つまりなのははエヴァンゲリオンのミサト的キャラなんですね、アンチ派が増えるわけだ。いっそこのまま和解無しでラストまで突き進んで欲しい。

268 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 03:08:52 ID:c2wD4Vjf
>>262
吹いただろうがww

269 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 03:27:41 ID:aevaabMF
誇り高いガンスリンガーガールに敬礼ッ!
もう和解とか温い事無く突っ走れ!

しかしティアナが思いっきりハイな状態なのに、どこか上から目線のなのはさん……
やっぱアンタ何も解ってないだろw

270 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 05:42:26 ID:wh/K4Gjf
なのはが上から目線と責める人が多いが19の小娘に期待しすぎでない?
とくに師匠もなく一般的な訓練だけでここまで成長してるのなら十分だと思うよ。

271 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 06:33:54 ID:QMeFLWVX
>>270
本編じゃその19歳の小娘が全肯定されてたけどね。

まぁ、これ以上は設定議論スレかウロス行きだな。

272 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 07:41:03 ID:XvpywT0U
>>271
だから何?
今は本編がどうこうは関係ないだろ。

あとなのはが上から目線とか言ってる奴等は百万回読み直せ

273 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 07:54:05 ID:ddJA/eP3
>>270
期待されるような立場に、自ら進んでなったんだから。

274 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 09:04:50 ID:ULkxNDL0
>>270,272
キモい。信者死ねよ

275 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 09:22:54 ID:v+66s1FF
>>263
結局なのはが勝つ
本編通りじゃないかな?

276 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 09:36:53 ID:pZz5vCJJ
>>274
口の悪い人だなぁ。まだいたんだこんな人

277 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 09:53:32 ID:rp50j6+x
>>257
>海上だろうと歩いていける
烈海王ですか?

278 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 09:58:25 ID:AYo1Mr5h
想像して吹いちまったじゃねーかwww

279 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 09:59:31 ID:NJxZY9q9
>>250
GJ!
相手に攻撃を撃たせないというのでWA4のガウンが思い浮かんだ。
これはきっとクロスミラージュの発射の反動で空を飛ぶ伏線w

280 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 10:12:13 ID:h+iibEvd
>>274
お前がきもいよ
ヘイトが見たきゃエヴァSSでも読んでろ

281 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 10:42:01 ID:zwHpz7fr
誘導

>本音で語るスレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/anime/6442/1213606868/

282 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 13:01:56 ID:i0bmO+iR
スバルはずっと拘束されてたのかよ

283 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 13:40:30 ID:ZkELCCPb
スバルテラ放置プレイw


284 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/06/26(木) 17:48:18 ID:xeFyFCX1
6時からリリカル殺生丸14話を投下します。
ちょっと時間が早いが、33KB11分割なので、みんな支援頼むZE☆(ぉ

285 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 17:53:51 ID:27JPOjzW
>>246
遅まきながらGJ!
よくこれだけの戦術を思いつくなんて凄いっす!
>脚部に圧縮して溜めていた魔力を爆発させた反動で、無謀な突進は凶悪なまでの加速を得る。
ティアナが百錬自得の極のオーラを使ったのかと思ったよww

286 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 17:58:36 ID:mMAXJUSO
しえん

287 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/06/26(木) 18:02:26 ID:xeFyFCX1
少し遅れましたが、投下行きます

288 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/06/26(木) 18:03:20 ID:xeFyFCX1
地上本部の廊下。
1人の小人が宙に浮きながら、意気消沈とした様子でうつむいていた。
結局、自分には止めることはできなかった。
否――止めようとしてしまったのが問題だった。
ゼストがこの戦いの果てに、自身の死を求めていることは分かっている。分かっているつもりだった。
あのどこか不器用だけど頼りになる武人は、己がいずれ死に逝く存在であることを受け入れている。
故に、ルーテシアとも必要以上に接することができずにいた。
自分がいなくなれば彼女は悲しむから。自身が保護者としての責任を果たせなくなるのが怖いから。
しかし、実際のところは逆なのかもしれない。
自分の行く先に死が待ち構えているから、ルーテシアから逃げているのではなく。
あの幼い少女から逃げるために、ゼストは死を求めているのかもしれない。
よくよく考えてみれば、てんで駄目な人間だなぁと彼女は思う。
彼は本当に駄目な人間なのだ。戦いに関しては、この上なく頼りになる人間であることは確かなのだが。
空戦S+ランクのストライカーたるゼスト・グランガイツは強い。戦場においては、肉体的にも、精神的にも。
常に堂々とした姿勢を崩すことなく、いかなる相手をもその必殺の剛槍で退けてきた、一騎当千の強者だ。
しかし、それはあくまで戦いに限ったこと。
ひとたび戦いが終われば、どうしようもなくうじうじしてばかりいいる、思いっきり駄目な人間なのだ。
スカリエッティに殺された部下達のことを、自分の焦り故の犠牲だと自身を責め続けて。
その忘れ形見とも言えるルーテシアと共にあり続ける自信もなくて、真っ向から向き合うことができなくて。
それならいっそ完全な孤独になればいいのに、それもできないから、こんな小さな融合騎と馴れ合って。
歴戦のベテランの貫禄を漂わせておきながら、その実は何とも情けない存在だった。
それでも、しかし、であるが故に。
彼女は――烈火の剣精アギトは、ゼストを慕っていた。
ただ単に強いだけでは、結局のところ、人を惹きつけることはできやしない。
もしもゼストが完全無欠な勇者であったとしたら、彼女は彼にこれほどまでに共感することも、心配することもなかっただろう。
ゼストは弱い。どうしようもないことでひたすら悩み続けてばかりの、馬鹿で根暗な駄目親父だ。
しかし、だからこそ、アギトは彼を受け入れた。
彼は自分にとっては命の恩人だ。ただ実験を施されるばかりだった自分を、あの研究所から助け出してくれた。
そして今は――その恩に報いたい。ゼストが弱い人間だというのならば、せめて自分がその部分を守ってやりたい。
強い部分ばかりしか持たない英雄でないからこそ。弱さを抱えた人間であるからこそ。
アギトは彼の傍にいたいと、心から思い続けていた。彼の願いを叶えてやりたいと、全力で戦い続けることができた。
しかし、彼女は願ってしまった。
死んでほしくないと。1番最後の願いだけは、あの男には叶えてほしくはないと。
理性では分かっていたことだ。それがゼストの望みなのだと、精一杯に納得させたはずのことだった。
しかし――アギトはあの時、ゼストの意志に背いてしまった。
どうしようもない奴だと思う。彼の願いを捻じ曲げてどうすると思う。
だが、もう彼女には、自身の願いを――ゼストのではなく、己自身の、生き続けてほしいという願いを否定することはできなかった。
とはいえ、それも今となっては手遅れかもしれない。既にあのシグナムという騎士が、ここを突破してしまった。
確かに彼女は、どことなくゼストに似たいい騎士だとは思う。身に纏う空気が他の俗な連中とは違うし、話の分かりそうな雰囲気もある。
だが、彼と似ていてはいけないのだ。武人ではいけないのだ。
それではゼストの命は救えない。最後に認めた相手との全力の戦いの果てにある死――騎士としての名誉を知っていては救えない。
シグナムならば、助ける道は選ばないだろう。ゼストの意志を汲み取り、そのまま戦ってしまうだろう。
それでは彼は死んでしまう。もうほとんど戦う力の残っていない彼では、彼女に勝つことはできない。
だからといって、こんなちっぽけな自分にはゼストは止められない。どうすればいい。どうすれば彼を救うことができる。
「――ゼストがいるのは、この先か」

289 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/06/26(木) 18:04:21 ID:xeFyFCX1
その声を聞いた時、アギトは思っていた。

この男がミッドへやってきたのは、偶然ではなかったのではないかと。
強く気高く美しき銀髪の魔人が、次元の壁を越えてこの世界へと流れ着いたのには、きっと意味があるはずだと。

「頼む。旦那を……あたし達の『親』を、助けてくれ」

哀れな死人騎士を救うために、彼はこの地に舞い降りたのだ、と。


魔法妖怪リリカル殺生丸

第十四話「斬月」


時空管理局地上本部の長官室は、さながら1つの巨大な書庫のような様相を呈していた。
上等な机の両脇は、さながら断崖絶壁のごとき本棚と、それら全てを生める膨大な書籍が支配している。
数百年に渡る時空管理局の――特に、この次元世界の首都たるミッドでの、あらゆる案件の情報が納められたデータバンク。
この地で起こった事件に限った情報においてならば、
本局に存在する、全ての次元世界の知恵を内包した「無限書庫」にすら匹敵する集積量であろう。
そしてその巨大な紙の谷間の中心にあるデスクには、1人の男が腰掛けていた。
地上本部長官、レジアス・ゲイズ中将その人である。
膨れ上がった身体は一目で肥満体だと分かるほどだ。
しかし、その厳ついひげ面とかっちりと刈り込まれた髪型が、彼をそこらのぐうたらな中年親父とは大きく隔てていた。
地上本部の青い制服を一部の隙もなく着込み、険しい表情には一種の貫禄すら宿している。
「オーリス……お前はもう下がれ」
低い声が響いた。熊のような容貌から、それこそ熊のごとき太い声が。
「それは貴方もです」
冷静な反論は、すぐに返ってきた。
レジアスの細い瞳の先には、1人の女性が立っている。金髪をショートカットにまとめ、目には眼鏡をかけていた。
長官付の秘書、オーリス・ゲイズ。実の父親に似ず、スマートな印象を受ける女性だ。
「貴方にはもう、指揮権限はありません。ここにいる意味はないはずです」
混乱に満ちたクラナガンの戦場は、その駒こそ地上の陸士部隊たちではあったが、動かす指揮官はもはやその長ではない。
過去の案件などから、レジアスにはスカリエッティと通じているという疑惑がかけられている。
故に彼は、今回の戦闘における指揮権を剥奪されていた。
前線指揮は、本局戦力に当たる機動六課が執っている。陸士部隊はギンガとスバルの父、ゲンヤ・ナカジマ三佐が動かしていた。
つまり、レジアスがここにいる意味はない。完璧な足手まといというわけだ。
そしてそんな無意味な椅子に座った結果の死など、実子が親に望むはずもなかった。
「わしはここにおらねばならんのだよ」
それでも、レジアスは引き下がることなく、静かに反論を反論で返す。
待たねばならなかった。
今は無事といえど、いずれは戦火に巻き込まれるかもしれない、この法の塔に居座ってでも。
この戦場には、恐らくあの男が来ている。自分に会うために刃を振るっているであろう男がいる。
誰よりも心を許した親友が、この場所で出会うことを望んでいる。
であれば、どうしてここから1人逃げることが許されようか。
「きゃっ!」
轟音。次いで衝撃波。
長官室の壁を砕く波動に、ピンクのロングヘアーを持った若い女性局員が身体をちぢこまらせた。
もくもくと立ち込める煙の中、1つの人影が歩み寄ってくる。
「手荒い来訪ですまんな、レジアス」
白き粉塵の中から響くのは、レジアスと同じ中年男性の、低く堂々とした、よく響く声音。
「構わんよ、ゼスト」
襤褸を纏った死人騎士――ゼスト・グランガイツが、槍を構えて立っていた。

290 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/06/26(木) 18:05:21 ID:xeFyFCX1
「ゼスト……さん……?」
この異常事態において、不気味なまでにごく自然と交わされた会話。
その一連を見届けたオーリスは、怪訝そうな表情でかの騎士を見つめていた。
以前から話は聞いていたが、こうして会うのは初めてになる。彼女が管理局へと入局したのは、彼が死亡した後なのだから。
「オーリスはお前の副官か?」
眼鏡の美人秘書の姿を一瞥して、ゼストが言った。
戦乱の最中でありながら、これまたひどく落ち着いた声色で。
「頭が切れる分、わがままでな。子供の頃から変わらん」
受け答えるレジアスの言葉もまた、さながら中年男達の世間話と変わらない調子だ。
久々に出会った、旧友同士であるが故に。それも来ることが分かっていたとなれば、なおさらだった。
「聞きたいことは、1つだけだ」
言いながら、ゼストが懐から紙のような何かを抜き取り、レジアスの手元へと放り投げる。
大きな手のひらに取られたそれは、2枚組の写真だった。
僅かに年季の入った、セピア色の写真。茶色い制服に身を包んだ男女の一団は、今は無きゼスト隊の集合写真。
「8年前――俺と、俺の部下達を殺させたのは、お前の指示で間違いないか?」
聞かれることは分かっていた。
あの時ゼスト達が追っていた戦闘機人事件の黒幕は、レジアスだった。それは真実だ。彼らの疑念に間違いはなかった。
ゼストが生きていた頃から、レジアスはこの地上本部の戦力不足を嘆いていた。
本局が担当する事件と、一次元世界のミッドで起こる事件。その規模の違いは理解している。
しかし、だからといってこの世界の戦力を削るという結論に至ることは、到底許すことはできなかった。
事件の規模が違うからといって、小さな世界の小さな区画が蹂躙されることなど、許されるはずがない。
だから、力を欲した。
魔導の才も、人材を教育する力もない自分でも、局内でのし上がっていけば、この現状は変えられる。
この声が本局に届くようになれば、地上本部も変えていける。
「共に語り合った俺とお前の正義は……今はどうなっている」
そんな彼に声をかけたのは、かの最高評議会だった。
思えばあそこから、全ては狂い始めていたのだろう。
量産システムさえ整えば、優れた兵士達を容易に大量生産できる戦闘機人技術。生命倫理に反した、禁忌の技術。
自らの打ち立てた法を破らんとする老人達の言葉に動かされ、自分はあの麻薬のような計画へと手を伸ばした。
そこから先は言うまでもない。過剰なまでの軍拡だ。
数々の強力な防衛兵器。そしてあの巨大なアインヘリアル。全て最高評議会の指示によるもの。
自分の夢は果たされたはずだった。だが、手にした力はあまりに大きすぎた。自分はここまでの物を欲していたのではない。
何より、もはやその夢の中に、自分の意志は介在していない。夢に操られるマリオネット――それが今の自分。
そして挙句の果てに、今こうして、飼い犬にさえも手を噛まれる結果に陥ってしまった。
「お前に問いたかった。俺はいい……お前の正義のためならば、殉じる覚悟があった。
 だが、俺の部下達は、何のために死んでいった?」
もう1つの写真は、レジアスとゼストのツーショット写真だった。
かつて2人、互いの理想を語り合った、今よりも少し若い自分の姿と、今と変わらぬ友の姿。
自分のしてきたことは間違いだった。あの時評議会と手を切っていればよかったのだ。それは認めよう。
「どうして、こんなことになってしまった。
 俺達が守りたかった世界は、俺達の欲しかった力は――俺とお前の夢見た正義は、いつの間にこんな姿になってしまった」
嗚呼、だがこれだけは理解してほしい。
お前達を迎撃したのは、自分の指示によるものではない。あの男の――スカリエッティの暴走だ。
わしはやっていない。わしの意志の届かぬところで、奴らはお前達に牙を剥いたのだ。
言い訳にしか聞こえないかもしれん。
だが、これだけははっきりと言わせてくれ。
「ゼス――」
――ぶすり。
「がッ!」
開きかけた口を塞いだのは、背中を貫く鋭い痛撃だった。

291 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/06/26(木) 18:06:22 ID:xeFyFCX1
「な……!?」
突然の異変。机上に置かれたセピアの写真が、鮮血の真紅によって染められる。
咄嗟に動くゼストの身体。しかし、それ以上動かない。緑に輝くバインドが、騎士の身体を拘束した。
「父さ――うあああぁぁぁっ!」
思わず事務的な口調をかなぐり捨て、1人の娘に戻ったオーリスが駆け寄る。
瞬間、その身を痛烈な衝撃が襲った。不可視のエネルギーはスマートな肢体を弾き飛ばし、本棚の書籍をいくつか散乱させる。
その場に立っていたのは、あのピンクの髪の局員だ。
ゼストの来訪に身をすくめたあの若き士官が、機械的な表情と共に、鋼鉄の爪でレジアスの背を貫いている。
「お役目ご苦労様です」
冷たい声が響いた。
桜色の長髪を走る、淡い閃光。刹那、その髪色は眩いばかりのブロンドへと変わる。
引き抜かれる凶刃。くぐもった唸りと共に、レジアスの肥満体が机へと突っ伏した。
「貴方はもう、ドクターの今後にとってお邪魔ですの」
瞬間、女は変異する。
管理局員の制服はたちどころに姿を消し、現れたのはあの無骨なナンバーズスーツだ。
次いで、顔立ちの変化。纏う気配すらも、それに応じて様変わりした。
この女は違う。今まで見てきた、その服を着たどの兵士達とも違う。
ディエチのような冷静沈着なスナイパーでもない。トーレのような豪胆な武人気質の戦士でもない。
1番近い冷酷無慈悲なクアットロとも、微妙に違う。どことなく醸し出される妖艶な色香は、あのどこか子供っぽい少女には存在しない。
すなわち、自分の知らない戦闘機人。
これまで一度も顔を合わせることのなかった、スカリエッティの隠密。
ナンバーU・ドゥーエ。
「さぁ、これにて貴方の役目も復讐も終わりです」
ぺろり、と。
金属の光沢を放つ鋭利な五指を、なまめかしい動作で女の舌が這った。赤黒い血液が、ゆっくりと舐め取られていく。
相対するは、険しい色を宿したゼストの顔。
救えなかった。まだ戦闘機人の1人や2人くらいならば相手にできたはずの自分が、何もすることができなかった。
レジアスは死んだ。自分の目の前で。まだ何一つ聞き出せていないというのに。
結局また、自分は大切な人間を守ることができなかった。
8年前のあの時に、クイント達大勢の部下を死なせてしまったように。ルーテシアの母たるメガーヌを、スカリエッティに奪われたように。
あの時自分が、もっと多くの敵を倒せていれば。
そもそもそれ以前に――一刻も早くレジアスを悪道から引き戻したかったからとはいえ、事を焦って攻め込むことさえしなければ。
今回にしたって、この光の縄に捕らわれるよりも早く動くことができれば。
後悔はいつだって、結果の後に訪れる。
「いつでもそうだ……俺はいつも、遅すぎる……!」
無念だった。
ストライカー級の力を有しておきながら、何一つ成し遂げることができない自分自身が。
湧き上がる憤怒の矛先は、目の前の妖艶な殺戮者へと。
無骨なアームドデバイスの切っ先は、ドゥーエの余裕とは裏腹に、強固なバインドを一撃で粉砕する。
「――ぬおおおおぉぉぉぉぉっ!」
鉄色の剛槍が風を切る鋭い音と、女の肉を切り裂く不快な音と、身体が背後の壁に激突する鈍い音。
それらは、ほぼ同時に鳴り響いていた。

292 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/06/26(木) 18:07:27 ID:xeFyFCX1
地上本部の廊下の中で、殺生丸の銀糸が揺れる。
優美なる様相を持った大妖怪と共に駆けるは、小さな融合騎アギトの翼だった。
既にゼストが向かった長官室には、シグナムが突入したという。
加えて、先ほどから漂い始めたのは血と油の混ざった死の臭いだ。その臭いは、ゼストのものとは異なっていた。
間違いない。向こうで既に事は起こっている。
少なくとも2名が、あの長官室の中で命を落としている。それも片方は戦闘機人。何事も起こっていないと考える方がおかしい。
故に、急がねばならなかった。少なくともアギトはそうだった。
そして今回に限っては、殺生丸も同様の意志の元に動いていた。
あれにここで死なれては、色々と寝覚めが悪くなる。らしくないと思いながらも、殺生丸は歩を進めていた。
ゼストは死に急いでいる。彼が自然の輪廻から外れた、本来なら生きているべきではない人間なら、それも当然だろう。
しかし、それでは駄目なのだ。彼は生きていなければならない人間だった。
何故なら――
「!」
不意に、何かの砕け散る音がした。
刀や槍の切っ先が、断ち切られるような鋭い音。誰かのデバイスが破壊されている。
ほとんど満身創痍のゼストに、至って健常な身体のシグナム。どちらが有利なのかは、火を見るよりも明らかだった。
ごう、と。
故に、殺生丸は疾駆する。
大気の壁を真っ向から打ち砕くかのような、強烈な爆音を立てながら。
純白のたてがみは激しくはためき、猛毒の五指は空気を焦がし、額の蒼月は風すら切り裂く斬月へと。
猛烈な加速。もはやアギトには追いつけない。
一陣の烈風と化した白銀の妖怪は、その腰へと手を伸ばす。
炎の魔剣を振り上げる烈火の将と、己が拳を突き出す死人騎士。
それらが見えるや否や、殺生丸は音もなく鋭利な双刃を抜刀した。
右手に構えるは己の剣。
左手に構えるは父の剣。
外敵をことごとく打ち砕く爆砕の牙は、触れればシグナムを容易に切り裂くだろう。
亡霊をことごとく昇華する天生の牙は、触れればゼストを容易に冥府へ帰すだろう。
その場の全員が知覚するよりも遥かに速く。
静かに。しかし確かに。
2振りの白刃は、猛り狂う両者の喉元へと突きつけられていた。
「……そこをどけ」
しばらく目を丸くしていたゼストだったが、状況を把握すると同時に、苦々しげに眉をひそませながら言い放った。
「できぬ相談だ」
しかし、殺生丸は全く取り合わない。いつもの偉そうな口調と共に、ゼストの要求をつっぱねる。
いつもそうだった。この男を従わせることなど、本質的には誰もできやしない。
誰よりも高くとまり、誰よりも他を拒絶するこの銀髪の魔人は、誰かの意志に流されることはない、超然とした存在だった。
彼とゼストの意見は真っ向から対立している。それを聞き届けるはずもなかった。
「俺の役目は終わった。……最期ぐらい、自分の身勝手に……誇りに殉じさせてはくれ――」
それがゼストに残された、たった1つの望みだった。
輪廻を曲げ、生き方を曲げ、正義さえも曲げながら、全てに嘘をついて生きてきた男。騎士の風上にも置けないことは、自覚していた。
故に、ゼストはこの戦いで死ななければならなかった。
最期にこれと認めた相手と、正々堂々と一騎討ちの末に敗北するために、失った誇りを取り戻すために。
スカリエッティも戦闘機人達も管理局に敗北し、彼らに従う必要がなくなったという、今だからこそ。
「――笑わせてくれる」
最期の懇願は、しかし、終いまで言い切ることすら許されなかった。

293 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/06/26(木) 18:08:31 ID:xeFyFCX1
「人間ごときが誇りなどと……身の程を知れ」
淡々とした語気に宿るは、零下のごとく冷たき矜持。
誇り高き妖怪の貴公子は、厳然とした態度でゼストを突き放す。
そうだ。ゼストはあくまで人間なのだ。
いかに歴戦の勇士と讃えられようと、いかに優れた魔導の力を持とうと、所詮は下等な人間であることに変わりはない。
少なくとも、この卑小で脆弱な人間を忌み嫌う、殺生丸にとっては。
彼からすれば、そんな人間などが偉そうに「誇り」を口にすることすら、許されざることなのだろう。
「それに、お前の役目はまだ終わってはいない」
そしてそのことすら、この話の本筋というわけではなかった。
「お前は奴らの『父』だろう」
ようやく追いついたアギトの方へと視線をちらと向けながら、言った。
殺生丸は知っている。
父親に先立たれる者の気持ちを。
まだ果たしていないことが山ほどあった。交わすべき刃が山ほどあった。
そして結局、彼の願いは叶わなかった。
――偉大な大妖怪たる父を超える、という願いは。
彼は別段、父親に愛情を抱いていたわけではない。
殺生丸にとっての父は、超えるべき壁。誰よりも強く、誰よりも高き――それこそ彼以上に並外れた、絶対的な力の象徴だった。
一見すれば、歪んだ家族関係にも見えるだろう。一種狂っているとさえ見えるだろう。
しかし、一般的に子が父に抱く愛情と、彼が父に抱いた対抗心――「執着」という点ではどちらも同じ。
そのどこに差があると言うのだろう。
そしてその執着は、あのルーテシアにもあるに違いなかった。当然、アギトにとってもそうである。
右も左も分からぬ自分と共に、永きに渡って母のために旅した男。
実験動物の日々から自身を解き放ち、外の世界を教えてくれた男。
それはまさしく、ルーテシアらにとっては、彼女を支えた「父性」に違いないではないか。
「………」
微かに、ゼストの太い眉が動く。
そしてそれから、観念したように拳を引くと、そのまま黙りこくってしまった。
結局のところ、逃れることはできなかったということか。
ゼストは怖れていた。ルーテシアと深く関わることで、親としての責任を強いられることを。それを果たせないことを。
しかし、それはかなわなかった。どうやらいつの間にか、自分は不覚にも愛されてしまったらしい。
不安はある。この身体がどこまで続くのか。どこまで生き続けなければならないのか。
それでも反論する気にはなれず、遂にはそのまま閉口した。
「この戦いは私が預かる」
すっ、と、死人騎士の喉から天生牙の刃が下ろされた。研ぎ澄まされた刀身は、腰の鞘へと収められる。
しかし、右手の刃はそのままに。殺生丸の手に握られたまま、爆砕牙が構えられる。
あらゆる敵を蹴散らす凶暴な切っ先は、かつて共に斬り合った烈火の将へと。
「……いいだろう。私も、お前とは決着をつけたいと思っていた」
シグナムの口元が、不敵に歪んだ。
愛刀レヴァンティンを構え直し、殺生丸へと応じる。
あれから1週間。一日千秋の思いで待ち続けていた、あの時の地上本部での戦いの続き。
爆砕の牙を携えし、白銀の妖怪。
炎の魔剣を構えた、烈火の騎士。
互いに無言のまま、言葉に代わって百万の闘気の刃がぶつかり合う。銀色と桜色の髪が、壁に開いた穴から吹き抜ける風にたなびく。
その場に立ち込めるのは、両者の実力を考えれば驚くほどの静寂。であれば、これこそが嵐の前の静けさというものか。
――きん、と。
無音の世界に真っ先に投げ込まれたのは、乾いた金属音。両者の剣は、同時に振り下ろされていた。
爆砕牙とレヴァンティン。共に常人の太刀筋を遥かに超えた剣呑な一撃が、凄まじい速度と共に真っ向から激突する。
刹那に煌くは細かな火花。黄金と蒼穹の視線が、刃を挟んで交錯した。

294 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/06/26(木) 18:09:29 ID:xeFyFCX1
「爆砕牙に対応できるようになったか」
微かに感心したような響きを込めて、殺生丸が呟く。
1週間前の陳述会の日、炎の魔剣は爆砕牙にまるで歯が立たなかった。
斬りつけた対象にまとわりつく、破壊の妖気を振り払うこともできず、結果シグナムは消極的な攻めを余儀なくされていた。
それが今はどうだ。目の前の刀身に込められた魔力とやらは、あの時を大きく凌駕している。
爆砕牙のエネルギーに屈することなく、こうしてつばぜり合いを続けているのが何よりの証拠だ。
「フッ……機動六課隊長格にかけられた、能力限定――それを解除させてもらった」
刃の先でシグナムが笑う。
今の彼女が発揮できる魔力量は、あの時よりも遥かに高い。
二段階の魔力リミッターから解き放たれた守護騎士は、Sランク魔導師にすら匹敵する能力を発揮する。
もはや余計な邪魔は何もない。烈火の将・シグナムの、真の全力全開だ。
「フン」
――そうでなければつまらん。
声にならない呟きが聞こえたような気がした。
爆砕牙の神速の太刀が振り上げられる。輝く妖気。切り裂かれる空気。鳴り響く轟音。
痛烈な破壊力と切れ味の込められた一刀を、しかしおくびもひるむことなく、レヴァンティンは受け止めた。
衝突はそれだけに留まらない。休む間もなく、互いの刃が交互に繰り出される。
一合、二合、三合。十重二十重と繰り返される剣戟。きん、きん、きん、と、絶え間ない金属音がリズムを打つ。
銀と桜の糸を揺らした2人の剣士は、さながら洗練された演舞を舞うかのように踊り狂った。
「たぁっ!」
瞬間、裂帛の気合と共に、シグナムが魔剣の切っ先を叩き込む。並の騎士なら知覚すらかなわない、疾風の突き込みだ。
ふわり、と。
しかし、貫かれるべき殺生丸の身体は、ゆっくりとした動作で宙に舞う。
上等な純白の衣とたてがみを翻すその姿は、さながら伝承の仙人のごとき様相を伴い、背後へと着地。
叩き込まれるのは反撃の刃だ。
「!」
横薙ぎに一閃。
渾身の力を込めた一刀が、思いっきり振り抜かれた。
これは受け止められない。このタイミングでレヴァンティンを繰り出したとて、対応するだけの力は込められまい。
反射的に理解したシグナムは、弾かれたようにその身を屈ませる。
後頭部を殴りつけるのは、刀身の妖気が放つ強烈な衝撃波だ。太刀筋の煽りを受け、背後で本棚の書籍がいくらか散乱した。
それでも、何もしないわけではない。頭を襲った圧力の痛みを堪えながら、カートリッジをロードさせる。
排出された空薬莢に、灼熱の業火を灯した魔剣の姿が映し出された。
「紫電……一閃ッ!」
雄たけびが上がる。立ち上がる勢いを利用し、烈火の剣を携えたシグナムが、勢いよく殺生丸へと飛び掛った。
ゼストとの戦いで、髪を結い上げていた黄色いリボンは断ち切られている。
殺生丸の視界一面に、美しき剣姫の桃色のロングヘアーが広がっていた。
優雅な姿から繰り出されるのは、一撃必殺の破壊力を宿した斬撃だ。
牙を剥くレヴァンティンの炎熱。迎え撃つ爆砕牙の妖気。激突する力の奔流が、周囲の大気さえも歪ませる。
迫り来る灼熱の連撃。それら全てを、殺生丸は己が刀で着実に受け止めていく。
そしてある瞬間、シグナムが炎の魔剣を思いっきり持ち上げた。一撃で勝負を決さんとする、渾身の一振りの構え。
しかしそこにこそ、穴が生じる。
攻撃に全神経を集中させた結果、彼女のガードはがら空きだ。
普通の人間ならば突くことすらできない、針の穴のような一瞬の隙。鉄壁の防御のブランク目掛けて、爆砕牙の凶刃が放たれた。
豊満な女の肢体を捉えるかと思われた一撃は――虚しく空を切った。

295 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/06/26(木) 18:11:05 ID:xeFyFCX1
何が起こったのか。
己が五感を総動員して事態を把握しようとする。故に、シグナムの隙は殺生丸の隙へと摩り替わった。
わざと相手にフェイントをかけ、繰り出された攻撃をバックステップで回避したシグナムは、そのまま本命を叩き込む。
「はあぁぁっ!」
躍動する筋肉。煌く刀身。舞い散る火花。
十分な力の込められた一撃は、態勢を崩した殺生丸の身体を、あっさりと背後の本棚へと叩きつける。
飛び散る無数の本。紙と活字のカーテンが、シグナムの視界を遮った。
書籍の群れから勢いよく飛び出したのは、殺生丸の白き着物だ。
『Sturmwinde』
レヴァンティンの機械音声が響く。剣に纏った業火はその姿を消し、新たに顕現するは一陣の風。
書物の絶壁をなぞるかのように飛行する妖怪目掛けて、不可視の刃を解き放つ。
無数の陣風が、凄まじい速度と切れ味をもって殺生丸へと殺到する。
どん、どん、どん、と。彼の後を追うかのように背後に走る、衝撃。攻撃が着弾する度、書類の束が紙吹雪となって舞った。
追いすがる陣風。駆け抜ける殺生丸。遂には白銀の魔人は大きくカーブを描き、シグナムの遥か後方へと着地する。
(やはり足は奴の方が速い!)
(手数では奴の方が上……か)
一瞬の視線の交錯。二度目の戦いを迎えた両者は、今一度瞬時に互いの力量を見極めていた。
パワー、技術、防御力、それら全てにおいては全くの互角。
しかし、純粋な移動速度では殺生丸が凌いでいた。ギア・エクセリオンすら僅かに超える速力ならば、無理もない。
そして、攻撃のヴァリエーションではシグナムが勝る。そこは多様な力を発揮する魔法使いの長所のようなものだ。
「くっ!」
次の瞬間、床を滑る具足の音と、左の爪から伸びた緑の光は、同時に烈火の将へと襲い掛かってきていた。
禍々しき妖気が線の形を成し、猛烈な速度でシグナムへと迫る。緑光の鞭の先端は、音速にすら迫るスピードだ。
ほとんど条件反射にも等しき反応で、これを回避。白と桜色の騎士甲冑が、天井の高い空中へと飛び上がった。
再びロードされるカートリッジ。鳴り響く重厚なコッキング音。瞬間、レヴァンティンは激変する。
片刃の刀身は両刃となり、刻み込まれるは細かなスリット。
「飛竜一閃!」
灼熱の魔力を纏った刃の竜蛇が、空を切り裂く咆哮と共に顕現した。
烈光に輝く妖気の蛇と、業火に煌く魔剣の蛇が、今再びこの場所で相まみえる。
光の鞭とシュランゲフォルムは真っ向から衝突し、その身を歪め、そのまま複雑にもつれ合った。
凶暴な破壊力と共にのたうち回る2頭の大蛇は、凄まじい爆音を立てながら床を抉り、壁を叩き割り、書庫を焼き尽くす。
さながら長官室は、巨大な嵐に引っ掻き回されたかのような惨状へと様変わりを遂げていた。
否、嵐という表現は間違いでもないだろう。
戦国乱世の中でもほぼ最強に近い実力を持つ大妖怪、殺生丸。
空戦S-ランクを保有する百戦錬磨の守護騎士の長、シグナム。
であればこの2人の闘争は、それこそ天変地異にすら匹敵する威力を秘めた激戦に他ならなかった。
「すげぇ……」
いつの間にかゼストのすぐ隣まで来ていたアギトが、食い入るようにその戦いを見つめながら呟く。
小さな彼女の目の前では、爆砕牙とレヴァンティンが再びぶつかり合っていた。
巻き起こる強烈な剣風は周囲の炎すら揺らし、書物の残骸すら吹き飛ばす。
これほどまでの戦いを、アギトは今までに目にしたことはなかった。
「よく見ておけ、アギト」
故に、ゼストは口を開く。その視線を目の前の激戦へと促す。決して、一分一秒たりとも見逃すな、と。
ほとんど死にかけにも等しき身体だった自分のそれとは違う、この戦いを。
「これが本当の――Sランク同士の戦いというものだ」
魔法の力を手にした人間の、真実の頂点にある戦いというものを。

296 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/06/26(木) 18:12:51 ID:xeFyFCX1
渦中で繰り広げられるは、凄まじいパワーとスピードで展開される剣戟戦だ。
一瞬の隙が、文字通りの命取り。0コンマ1秒のタイムラグでさえ、容易にその身を滅ぼす結果を生むだろう。
そして、もはやそのような初歩的なミスがないことは、互いに分かりきったことでもあった。
これ以上、小手先だけのつばぜり合いは無意味だ。このペースでは、それこそ永遠に終わることはない。
故に、この一撃で雌雄を決する。
(己が持てる)
(最大の技で)
――決着をつける。
両者の思考は光の速さでシンクロし、自然とその間に距離が取られていた。
腰から純白の鞘を抜き放つと、シグナムはそれを手元のレヴァンティンと組み合わせる。
弾き出される空薬莢。炎の魔剣の、刃と連結刃に続くもう1つの姿が解放された。
天をも貫かんほどの絶大な威力を有した神弓――ボーゲンフォルム。
眼前の敵を射抜く一撃の破壊力と貫通力に特化した、レヴァンティンのフルドライブモード。
片や殺生丸は、その人間離れした美貌の眼前に爆砕牙を据える。
複雑な幾何学文様の刻まれた刀身に宿るのは、蒼き光。
その手の牙のみならず、自身のものさえ込められた妖気が、目にも鮮やかな輝きを放ち始める。
収束されるエネルギーは、これまでの斬撃すら遥かに凌ぐ、暴力的なまでの総量に達していた。
「いかん!」
はっとしたように、ゼストが目を見開く。
恐らく殺生丸は、何かとてつもない技を仕掛けるつもりだ。これまでの爆砕牙とも、光の鞭とも、そして毒華爪とも異なる何か。
この距離で放つとしたら、それこそ高町なのはの砲撃クラスの一撃か。
そしてその対象たるシグナムの背後には、この部屋の主の机がある。鮮血の中で事切れた親友の姿がある。
「オーリス! そこから離れろっ!」
レジアスのすぐ横の本棚に身体を打ち付けられていた娘に向かって叫ぶと、自身はデスクへと駆け出していた。
目の前の旧友は既に死体だ。それは分かっている。
しかし、いくらもはや助からないとはいえ、唯一無二の友の遺体が、攻撃の余波を受けて無残に蹂躙される姿は見たくなかった。
その肩に肥満体の身体を預けさせると、一刻も早くその場から逃れるために、全速力で走り出す。
ゼスト達が攻撃圏外ギリギリのラインから出るのと、殺生丸がその力の名を叫ぶのは、同時だった。
「――蒼龍破ッ!!!」
刹那、世界は炸裂する。
鼓膜を突き破らんとするほどの轟音と、網膜を焼き切らんとするほどの閃光。
最強の妖怪が最後の最後に見せた、最大の奥義。
爆砕牙の刀身から解き放たれた膨大な妖気が、猛烈な衝撃波と剣呑な刃となってシグナムへと肉迫した。
蒼き光は、さながら無数の巨大な龍のごとき形へと固められ、広い長官室を余すことなく蹂躙する。
怒り狂った龍神達の姿は、神々しささえ纏うほどの眩さを放っていた。
とはいえ、見とれている場合ではない。雄たけびと共に襲いかかる蒼龍は、シグナムを食らい尽くさんと凶悪な牙を剥いているのだ。
両脇を穿った妖気が、タイルの床へと深々と爪痕を残し、強烈な風圧でその顔を容赦なく叩いていく。
台風の真っ只中に放り込まれたような心地だ。否、その龍神の鋭さを考慮すれば、雷雲とでも呼ぶべきか。
持てる身体能力の全てを引き出し、狂える龍を回避していく。けたたましい音と共に、背後のガラスは全て粉々に叩き割られていた。
ちらと横目に見た瞬間、それらの波動の1つが、見知らぬ戦闘機人の屍――ドゥーエを飲み込んでいた。
防御手段などあるはずもない死体は、ただの一撃で跡形もなく蒸発させられる。
久々に、ぞっとするような感触がシグナムの背筋を襲った。
おぞましいまでの一撃だ。こんなもの、一度でも食らえばただでは済まない。掠めただけでも重傷だろう。
故に、早々に決着をつけなければならなかった。この殺意の龍達が、彼女の四肢を食い尽くす前に。
目がくらみそうになるほどの妖気の光を見据え、レヴァンティンへと魔力の矢をつがえる。
引き絞られる弦。細められる瞳。地に落ちる2つの薬莢。
狙うは、この百雷のごとき光の中の一分の隙間。この破滅の光を放つ、あの魔人へと。
――そこだっ!
ちら、と。
視界の中に、殺生丸の姿が映っていた。
「翔けよ――隼ッ!!!」
『Sturmfalken』

297 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 18:17:03 ID:PV5oTkgf
支援


298 :リリカル殺生丸・代理投下:2008/06/26(木) 18:42:42 ID:mMAXJUSO
放たれたのは白銀の一矢だ。
視界全てを覆い尽くさんまでの蒼穹の光の中に、一瞬にして銀色の線が駆け抜ける。
音すらも置き去りにして、猛る龍神の鱗を切り裂いて、魔力の矢が猛烈な速度で殺生丸へと殺到する。
「ガァ……ッ!」
隼のくちばしは、あやまたず妖怪の胸元を捉えていた。
僅かに吐き出される唸り。折れ曲がる体躯。あの超然たる麗人の表情が、この世界に来て初めて苦悶に歪んだ。
中心から僅かにずれたシュツルムファルケンは、内包された莫大なエネルギーで殺生丸の心臓を殴りつける。
音速で飛来する、魔力コーティングを受けた矢の一撃だ。非殺傷設定といえど、その痛みはそうそう耐えられるものではない。
殺生丸の苦痛を反映してか、充満していた蒼龍破もまた、急速にその威力を弱めていく。
最大奥義同士の戦いは終わった。あとはとどめの一撃を食らわすだけだ。
フォルムチェンジ。神弓は魔剣へと姿を変える。両の手に握られた柄。踏み出す足。
「だああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――ッ!!!」
咆哮。
桜色の髪を揺らしながら、消えかけた龍神達の合間をかいくぐり、シグナムが猛然と殺生丸目掛けて突貫した。
「―――ッッッ!!!」
見る見るうちに近づいてくる烈火の騎士を、殺生丸もまた、凄絶な眼光をもって睨みつける。
猛獣のごとき唸り。強引に立て直される態勢。揺れる銀髪とたてがみ。投げ捨てられる矢。
鳴り響いたのは、金属音。
振り下ろされたレヴァンティンのとどめの一太刀。迎え撃たんとする爆砕牙の反撃の一太刀。
2つの刃が真っ向から激突。魔力と妖気の反発。衝撃波にぶれる視界。
剣姫の喉笛の寸前に添えられていたのは――冷たい刃の気配。
一瞬の早業で引き抜かれたもうひとつの牙、天生牙。
無音が訪れる。
あれほどまでに騒々しく鳴り響いていた戦の音は、たちどころにそのなりを潜める。
広大な書庫を舐め回す炎の中、相対する2人の剣士。
閉じられた口。流れる沈黙。
ざあざあ、と。
不意に、耳元で音が響いた。
湿気。
長い髪を伝う水。
ようやく起動したスプリンクラーは、さながら夜の雨に似て。
「――私の負けか」
壮絶な戦いの幕切れとなったのは、驚くほどに淡々とした、シグナムの言葉だった。
「……いくつか、聞きたいことがある」
天生牙をシグナムに向け、爆砕牙でレヴァンティンを受け止めながら、殺生丸が口を開いた。
「何だ」
「スカリエッティが捕らわれた今……ルーテシアとアギトは」
「当然、我々管理局が責任を持って預かる」
それが第一の確認だった。
自分で端末を動かすことはできない殺生丸だったが、道中でアギトから聞くことで、あの科学者が既に拘束されていたことは知っていた。
故に、問いかける。この戦いの果てに、あの幼い少女達はどうなるのかと。
そして返ってきた答えは、シグナムがゼストに対し、固く約束したことだった。
「ゼストも入れろ。その中にだ」
次いで放たれたのは、要求。当のゼストの瞳が、意外そうに見開かれた。
「分かっている」
当然、シグナムに断るいわれなど、どこにもありはしなかった。

299 :リリカル殺生丸・代理投下:2008/06/26(木) 18:43:26 ID:mMAXJUSO
「そして」
殺生丸の口は閉じることなく、次なる問いかけを発する。
「貴様ら管理局は、この私を元の世界に帰すことができるのか、できないのか」
それが彼にとっては、もっとも重要なことだった。
そもそもこうしてあの大嫌いなスカリエッティに従う形になり、ルーテシアらと行動を共にした動機はそこにある。
全てはあの時から始まった。
忌まわしき奈落との戦いに臨もうとしたその瞬間、いきなり飛ばされたこのミッドチルダの大地。
倒すべき敵を倒せず、救うべき者を救えず、ただ苛立ちと共に過ごした4年の歳月。
全ては、元の戦国の世へと帰るために。
しかし、スカリエッティは逮捕されてしまった。次元世界を移動する手立ては失われた。
ならばこの管理局ならば、自分を元の世界へ帰すことができるのか、と。
「……誓おう」
返答は、それだけで十分だった。
強き意志を込め、固く誓った。ヴォルケンリッターが将、シグナムの名のもとに。
共に死力を尽くして戦った、恐らく最強の敵たるこの男への、最大限の礼儀として。
真摯な青いまなざしが、殺生丸の黄金の瞳を、まっすぐに見据えていた。
しばらくの沈黙の後、喉笛を狙っていた天生牙の刃が下ろされる。爆砕牙もまた、静かに鞘へと収められた。
「――貴様が勝負を捨てていなければ、結果は分からなかったが」
そして、不意に、呟く。
意味を図りかねたシグナムは、レヴァンティンを引き戻しながら、怪訝そうな表情を浮かべる。
「これは元より斬れぬ刀だ」
言いながら、天生牙を鞘へと戻す。
あの世の存在を断ち切ることのできる癒しの刀、天生牙。しかし、そこにも弱点があった。
霊的存在への絶大な切れ味を持つが故に、この世の存在への切れ味が犠牲となった。
たとえそこらに散乱している書籍のページであろうとも、このなまくら刀には切り裂くことはかなうまい。
ようやく意味を察したシグナムは、自分が最後の最後でハッタリをかけられたことに気付き、内心で僅かに憤慨した。
じと目で睨む烈火の将を尻目に、殺生丸は粉砕された壁に向かって歩いていく。
その外に広がるのは、広大なクラナガンの街並みだ。かつてゼストとレジアスが、守ろうとした世界があった。
しかし、今そこは戦火に染められている。その中心にあるのが、遥か上空の聖王のゆりかご。
「どうする」
殺生丸の背中に向かって、ゼストが短く問いかける。
「……行くぞ」
返答は、これまた短かった。
スカリエッティは既に敗北している。ルーテシアらを縛る人質は無意味となった。おまけに、元の世界へ帰る手立ても確保できた。
全てが万事、殺生丸の望む形へと帰結していた。
ならばこれ以上、あの忌々しい無限の欲望の言葉に従う道理などありはしない。
わざわざあのような無礼で卑小な小者に付き合ってやる時間は、もうこれで終わりだ。
もはやお前は必要ない。ここで手を切ってやる。いいや――最後にこれまでの借りをまとめて返してやる。
鋭い金の双眸は、浮遊する巨大な戦艦を見据えていた。

300 :反目のスバル@携帯 ◆9L.gxDzakI :2008/06/26(木) 18:43:37 ID:hk/U1ZEG
さるさんくらったよorz
というわけで、どなたか代理スレに書き込んだ続きを投下してくださると嬉しいです。既にまとめにはのっけてありますのでー

301 :リリカル殺生丸・代理投下:2008/06/26(木) 18:44:30 ID:mMAXJUSO
投下終了。殺生丸対シグナム、これにて決着です。
ここまで続けてきた熱血ホイホイも、残すところあと1話となりました。
次回でゆりかご戦に決着をつけ、そしてあとは最終話めがけて一直線です。

今回殺生丸の必殺技として、劇場版アニメ限定の奥義「蒼龍破」を出させていただきました。
もうお気づきかもしれませんが、この殺生丸、設定の方は原作とアニメを組み合わせた形になっているのです。
容姿(主に右肩の毛皮の長さ)と中身、および来歴は原作版、戦闘スタイルはアニメ版。
今まで当然のように使ってきた光の鞭は、アニメオリジナルの技なんだな、これが。

あと、今回シュツルムファルケンを殺生丸が左胸にくらったのは、
原作で犬夜叉が桔梗に封印されたシーンのオマージュだったりします。


さるさんくらったアッー!

というわけで、久々に代理スレを利用させていただきました。
これを見てくださった方、どなたか続きを投下してくださいませ。お願いします。

302 :反目のスバル@携帯 ◆9L.gxDzakI :2008/06/26(木) 18:44:44 ID:hk/U1ZEG
と思ったら代理の方がいた! ありがとうございますですー!

303 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 18:56:09 ID:mMAXJUSO
投下乙です、支援できなくてすいませぬ
やっと完結か、戻ったらお義兄さん通い婚かなw

304 :リリカルなのはDHS ◆Y2c93Cv37M :2008/06/26(木) 19:42:15 ID:ODRNxB4J
投下ご苦労様です。完結がたのしみですよ。


さて、九時に投下の予告をしたいと思います。今回の容量は16Kくらいでしょうか。

305 :リリカルなのはDHS ◆Y2c93Cv37M :2008/06/26(木) 20:58:02 ID:ODRNxB4J
急ですが、時間変更を報告させて頂きます。11時頃に投下予定にしたいと思います。
よろしいでしょうか?

306 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 21:01:01 ID:8vBi6Xhz
誤字修正?
どちらにせよ、問題ないと思う
ゆっくり仕上げればいい

307 :リリカルなのはDHS ◆Y2c93Cv37M :2008/06/26(木) 21:12:43 ID:ODRNxB4J
>>306
出来上がってはいるのですが、何分、改行が多いので、小刻みなレスになり、数も多くなりそうでしたので、ちょっと過疎ぎみの時の投下は危険かと思ったのです。
問題がなければさっさと投下してしまいますが・・・・・・

308 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 21:15:27 ID:5xdr2Isp
だいじょうぶ、だいじょうぶ。
いっちゃえ

309 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 21:18:42 ID:wn1a56Ql
笑って落とせばいいさベイビー

310 :リリカルなのはDHS ◆Y2c93Cv37M :2008/06/26(木) 21:21:01 ID:ODRNxB4J
それなら行かせて頂きます。支援の方よろしくお願いします。


あの日から、己の右手には悪魔が宿った。その時は己が身を呪い、信じてもいない神を呪い殺したくなった。
しかし、今は違う。あの事件で自分はやるべき事を見つけた。伝説の血を持っていることを知った。かけがえの無い友を得た。そして愛する人を守り続けると誓った。
剣と銃を以て悪魔を滅ぼす。それが今のやるべき事だ。


魔法少女リリカルなのは DEVIL HUNTERS  第3話「悪魔」

「・・・・・・・・」
「ティア・・・・・・・」
あれからすぐ、はやての指示通り、リィンとフォワード陣は合流した。スバルの腕の中にはレリックのケースがあるが、彼女とティアナ、そしてリィンの3人の表情は優れなかった。
「すみません。はやて部隊長。逃げられてしまいました。」
苦い表情で改めて謝罪するティアナ。
「過ぎた事はもうええ。それに、今回はきちんとした記録が残せたしな。すぐに足取りはつかめると思うわ」
苦笑しながらフォローする。しかし、はやての言ったある言葉にティアナは反応した。
「『今回は』?・・・・・以前にもこのような事が?」
「そうや。連続ロストロギア強奪事件。紅い服に質量兵器、背中のアームドデバイス。犯人の男の特徴なんやけど、今までのはあっさりやられて記録がうまく残らんでな」
管理局内部で問題になっている事案を明かすはやて。「あまり周りには言わんといてな。結構デリケートな話題みたいやから」と付け加えたが。
「でも、3人はようやってくれたわ。記録が取れただけでもお手柄や。重大な手掛かりが得られた訳やし、あんまり悲観せんでええよ」
にこりと笑いかけながら言われた『お手柄』という言葉に表情が明るくなる3人。
「そうや。そんな暗い顔してたらあかんのや。誰にでも上手くいかないときはあるし、物事がそうなんでも完璧にいくのも珍しい事や」
心を持ち直し、真剣な顔で耳を傾ける3人。それにライトニング隊の二人も同様に耳を傾ける。
「納得がいかんなら次で挽回すればええ。わかった?」
「「ハイ!!」」
「ハイです〜!」
やっと3人の元気が取り戻される。エリオとキャロもそれを笑って見ている。
「ええ返事や。ほんならリィンとスターズは中央のラボまでレリックの護送お願いしようか。あとライトニングには現場での引き継ぎ、お願いな」
「「「「「「はい!!」」」」」
5人の威勢の言い返事が響く。
「はやてちゃん。名演説だね」
「うん、部隊長らしさが出てるね」
それを見ていたなのはとフェイトが口を揃えて褒める。
「いややわぁ、2人共、茶化さんといて〜」
「「「あはははははははははは!」」」

311 :リリカルなのはDHS ◆Y2c93Cv37M :2008/06/26(木) 21:22:09 ID:ODRNxB4J
和やかな雰囲気を取り戻した彼女らだったが、そこで誰一人、異変に気づくことは無かった。ある異変を。
車両内。薄く光っていた魔法陣はますます色を濃くし、その力を強める。そしてそれは現れた。

虫、虫、虫、虫、虫、虫、虫。
すぐに踏みつぶせそうな小さな虫、だがその数は床を黒く染めるほど。大軍をなし、ある目標へと向かっていく。
ある集団は運転室へと、そして残りはダンテが見逃したコンテナへと。
その中に納められていたのは、古ぼけた人形と、継ぎ接ぎだらけで刃の付いた悪趣味な布袋だった・・・・・・・・・・・・・・


「えへへへ・・・・」
ハプニングはあったものの、任務自体は成功。先のはやての演説により、元気を取り戻したスターズとリィン達面々。ティアナとスバルが、確保したレリックを持って迎えのヘリへと向かう。
そしてそれを微笑んで見守るなのは。もっとも、なのはとて隊長。逃走した男の事についてきちんと頭が回っていた。フェイトに聞いた話ではかなり話題に上っていた人物らしいが、確保も時間の問題だろう。
よくも悪くも彼女は管理局に絶対の正義を信じていた。きちんとした記録が残ったのならそれは確保できるだろうと。
「さあ、いこうか。フェイトちゃん。後はよろしくね」
「うん。わかった」
三人に続いてなのはもヘリに搭乗する。別れ際に親友への言葉を忘れないあたり二人の仲の良さがうかがえる。
「ヴァイス君、お願い」
「うぃーっす」
ヘリへの足場は消え、ゆっくりと機体が上昇していく。やがてすぐにその姿は小さくなる。思いのほかヘリの速度というものは速いものなのである。

「エリオ、キャロ。お疲れ様。あとはゆっくり待とうか」
「「はいっ」」
引継ぎまでの時間、慌ただしかった中やっと訪れた穏やかな時間。地元の管轄の局員を待つ間、談笑でも始まる雰囲気の中、異変は起こった。

「え?」
「きゃっ!」
突如、リニアレールが動き出す。その加速は穏やかなものではない。無理に速度を上げようとする荒々しい動き。慣性に体を揺られキャロが小さな悲鳴を上げる。
「大丈夫?・・・・・・でも、なんで」
しかし、傍にはエリオがいる。転倒には至らなかった。そして湧き上がる疑問。車両の制御は取り戻したはずだ。
「はやて。なにが起きたの?」
すぐさまロングアーチへの照会をするが返ってきた答えは
「こちらでも把握できてない。誰かが動かすわけ無いしな。原因不明や」
向こうでも異変に驚いているようだ。
「フェイトちゃん、3人で運転室に行ってもらえるか?」
はやてが指示を出す。なにかおかしい。得体の知れないものを感じ、運転室の確認を命じる。
「わかった。二人とも、行くよ!」
「「は、はい!」」
突然の事に慌てる二人、しかし、体は動き始めてるのは訓練の賜物といったところか。
「何かが変だ。すぐに運転室へ・・・・・・・っ!?」
すぐに向かおうとした瞬間、奴らは現れた。

312 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 21:22:14 ID:FJMaxi3M
>>301
てっきり冥道残月破でると期待してたのに…
ちょっと残念。

313 :リリカルなのはDHS ◆Y2c93Cv37M :2008/06/26(木) 21:25:22 ID:ODRNxB4J
重要貨物車両から湧き出てきた何か。目を凝らせばその奇天烈さに目を疑うだろう。
刃の付いた手足を持つ人型をした布袋。成人男性よりも大きな体躯を持つ操り人形。そして闇に覆われた獣達。
およそこの世のものとは思えない異形達が笑いを上げ、叫びを上げて迫ってくる。
「何・・・・あれ・・・・・」
フェイトも思わず言葉を失う。目の前の不可思議さに。だが、それも僅かな時間の事。すぐに思考は切り替わる。
「はやて!!」
「私も知らん!!正真正銘アンノウンや!!」
一気に慌ただしくなる指令室内。指揮官としてはやてはこの状況に指示を出さなくてはならない。
「シャーリー!反応はどうなってる!?」
「魔力反応のみです!どれからも生体反応はでていません!!」
「なら・・・・・・」
重要貨物車両から出てきたのが気になるが、今は1分1秒も惜しい。モニターの向こうでは少しずつ近づいてくる異形達をライトニング隊の3人が警戒している。
「遠慮なくしかけてええ!生体反応がないなら殺傷設定でもかまわん!正当防衛や!!」
その言葉を聞いたフェイトはキャロとエリオに指示を出す。
「2人はバックアップで。やれる?」
「「は、はい!!」」
飛び上るように返事をする2人。大丈夫そうには見えない。足が震え、顔色が悪い。それをみたフェイトは
「キャロ。エリオをフリードに乗せたまま遠距離からの攻撃のみで戦って。絶対に近づいちゃダメだよ」
「わ、わかりました!」
すぐさまフリードが車両から距離を置く。何が起きるか分からない、予想外の事態だ。新人をぶつけるには危険だとフェイトは判断したのだ。

しかし、いつもの様子ではないのはフェイトも同じであった。彼女にもその重圧はかかっていた。
得体のしれないプレッシャー。その理由を彼女らは今は知る由も無かった。

『悪魔』。それは闇の住人達。その存在はあまねく生きるものに恐怖を与える。その虚ろな存在は人間の心を蝕む。
未知なるもの、深い闇への恐れ、それはすなわち心の奥底に刻まれた原初の恐怖。たとえ世界を違えようとも、あらゆる人間の心の奥底にそれはある。
そしてそれを打ち破るには、類い稀なる強き心を持つこと。己が使命を掲げ、己が誇りを持つ者が悪魔と戦う事が許される。

「二人には・・・・・・触れさせない!!」
その黒金の戦乙女はその数少なき者に属していた。幼き己が子供代わりの小さき戦士達。それを守るためなら自らが死地へと飛び込もう。自らがその拳を振りおろそう。
今ここに、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンは悪魔を狩る権利人となった。

「はああああああああああああ!!!」
先手必勝。まずはスピードを以て牽制を交えた攻撃。受け身(パッシブ)ではなく積極的(アクティブ)に相手の力量を測る。
手に持たれたバルディッシュからは魔力刃が突き出ている。地球において『クレセントアクス(三日月斧)』を意味するその名の通りではなく、そこにあるのは死神の鎌。
刃がスピードに乗る。布袋の異形・・・スケアクロウは無残にその身を切り裂かれ、断面からはおびただしい程の甲虫が飛び出す。絶命の際に破裂を伴い、不気味な体液をまき散らして消滅する。
「うっ!?」
そのおぞましさに思わず神速を緩めてしまうフェイト。その隙を奴らは逃がさない。
巨大な操り人形・・・・マリオネットはその手に持った無骨なナイフで彼女を切り裂かんとする。その動きは緩慢。だが、およそ人間の動きとはかけ離れ、数体が重なるように連撃を繰り出す。
思いのほか、フェイトには厄介に感じられた。
体を回転させ、まるで独楽のごとく迫る人形達。刃物を伴ったそれはまるで電動カッターの如く。
大味な攻撃の隙をぬい、大きくスウェーで回避する。しかしフェイトも弱者ではない。右の手に握られたバルディッシュの刃を内側に向け、体を傾ける。
スウェーで偏った重心のバランス。そのまま後に倒れこむような形をとり
「やあああああああああああああああ!!!」
先に着いた左足を軸に大鎌を一気に振りぬく。

314 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 21:26:04 ID:wn1a56Ql
悪魔が出るぞ支援

315 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 21:26:29 ID:WxsJ4dDo
>>275
いや、俺は三期否定派だけど、この展開はいいと思うよ。




316 :315:2008/06/26(木) 21:28:05 ID:WxsJ4dDo
更新忘れてたぁぁぁぁ!!なにやってんだ俺orz
支援

317 :リリカルなのはDHS ◆Y2c93Cv37M :2008/06/26(木) 21:29:11 ID:ODRNxB4J
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!」
人形であるマリオネットに声を出すことなど出来るはずがない。だが、そこに確かに叫びが聞こえた。刃と同じように三日月を描いた軌跡の後には、切り裂かれ、バラバラと崩れていく人形達。
「はっ!」
すぐに体勢を整え、鎌を振るう。スケアクロウ3体が胴体部分から本体の虫と液をまき散らし、そして破裂する。
こちらに迫ってきた群れは片付いた。呼吸を整えようとしたフェイトであったが、そうはいかなかった。まだ、闇の獣が残っている。
「フェイトさん!!」
エリオの叫びを聞き、その場を離れる。今まさに居た所に降ってきたのは先の闇に包まれた獣・・・・ムシラである。
獰猛な獣はその強靭な跳躍力を以てフェイトに襲いかかってきた。人形や布袋とは違い、確実なスピードを持った相手だ。
「くっ・・・・・・・!」
苦渋の表情を浮かべるフェイト。彼女の超スピードをもってすれば決して倒せない相手ではない。だが、何故その表情を浮かべるか。
「あそこから・・・・・・・・・」
「魔法陣から続々と・・・・・・召喚魔法の一種か?それに見たことのない魔法陣や。しかもこっちで簡易解析もできん」
モニターしているはやての言葉が示していた。視線の先には、血の色に染まった魔法陣から続々と湧き出る獣達。その数10を超えている。
「数が多い・・・・・・」
幾らフェイトといえど、2桁を超す敵に迫られたら捌き切れる保証はない。非殺傷設定を解除している為に砲撃を放てばリニアが崩壊する。必然と接近戦を強いられる。
状況は不利だ。援護があれば別だがキャロとエリオはプレッシャーにあてられている。安全の為にも戦わせたくない。自分が無事でも2人がやられたら元も子も無い。フェイトは自分で打破すると決めた。

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!」
おぞましい叫びを上げながら迫る獣達。
3体が突っ込んでくる。ステップで避け、カウンターを叩き込む。切り裂かれたのは2体、1体届かなかった。だが、1体だけなら。
「フォトンランサー・・・・・ファイア!!」
距離をとっての単発の魔力弾攻撃。槍を模したそれは猛スピードでムシラに迫り
「よしっ!」
確実にその存在を消滅させた。
しかし、安堵する暇はない。まだ敵はたくさんといるのだ。今度は6体。しかも僅かにタイミングをずらして襲いかかる時間差攻撃。
「くっ!」
咆哮を上げ、鋭き爪が振るわれる。直撃こそ無いものの、一つ一つの攻撃がバリアジャケットを掠める。
強固な耐久力を誇るはずのそれは容易に切り裂かれ、今や地肌が見え隠れしている。その事実に驚くが、そんな暇は無いのだ。猛激の前に、フェイトの動きが止まる。
「数が多い分・・・・・避けにくい!」
群れの攻撃はじわじわと彼女へ致命傷を与えるべく迫ってくる。予想だにしなかった苦戦。浮かぶ表情は・・・・苦い。
後へと下がったフェイト、そしてムシラの群れはとどめを刺さんと跳躍する。重力の力すら利用した多重攻撃。意地でも防ごうと身構える。


318 :リリカルなのはDHS ◆Y2c93Cv37M :2008/06/26(木) 21:30:21 ID:ODRNxB4J
「フリード!ブラストレイ!」
「行けええええええええええええええええええええ!!!」
その時だった。破滅の光が悪魔を飲み込み、神速の槍撃が悪魔を貫いたのは。
「え?」
エリオとキャロ、そしてフリード。後に控えさせたはずの2人と1匹がこの戦いへと参加したのだ。
「エリオ、キャロ・・・・・・・」
驚愕の表情を浮かべるフェイト。当の2人は力強く答えた。
「フェイトさんが傷ついていくなんて、もう我慢できません」
「確かに怖いです。でも、私達もお手伝いがしたい。フェイトさんの力になりたい」
「グァァァァァァ!!!」
勇気を出してその足を前に進めた彼ら。確かに言うとおり未だにプレッシャーに押されている。
だが、己が大切な人を守るため、大切な人の力になるため、幼き彼らは一歩を踏み出した。闇の恐怖に耐え、闇を屠る為に。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
一時の沈黙。フェイトは2人には出てきて欲しくないと思っていた。未だ彼らは幼い。いくら管理局の部隊に属していると言ってもこのような戦いの場にはでて欲しくなかった。
だが、2人の言葉には確固たる決意があった。大切な人を守りたい。それを押し込めることなど彼女にはできなかった。
「うん。2人の言いたいことはわかったよ。だから・・・・・・・無理はしちゃだめだよ?」
エリオとキャロの決意をフェイトは微笑みをもって受け入れた。それに2人の表情も明るくなる。
「「ハイ!!!」」
返事を聞いたフェイトは改めて前を向き、獣の群れを睨みつける。
「ずっとこのままじゃキリが無い。最前まで突っ切る。2人とも出来る?」
それは愚問だった。フェイトは二人をやわに育てたつもりはないし、エリオとキャロも否と答えるわけが無かった。
「「行けます!!!」」
「うん。言い返事だ。それじゃ・・・・・・・・行くよ!!!」
その言葉とともに動いた。
「フリード、お願い!!」
「グァァァァァ!!!!」
竜の口から放たれる光は群れの中心を消滅させる。
「エリオ!」
「ハイ!!」
大鎌と長槍が怯んだ敵をなぎ倒しながら突き進む。
今、3人に打ち合わせなど不要。皆、心で理解している。キャロがきっかけを作り、残り二人が自慢のスピードで突撃。信頼し合っている3人にはすぐに行動できた。
進路上に立ちふさがる敵はなぎ倒す。通り過ぎた魔法陣は消え、また新たに前方から獣の群れが現れる。それでも同じことの繰り返しだ。
竜が突破口を開く。鎌と槍が貫く。闇の住人達は3人の前になす術なく消えていく。人間が持つ心の力、意志。それは悪魔を滅ぼす絶対的な力。
時間にして僅か、すぐに3人は目的の最前車両へと到達する。
「はあ・・・はあ・・・・すごいね2人とも。訓練の成果通りどころかそれ以上だよ」
乱れた息を整えながら感嘆の言葉を出すフェイト。それを聞いた2人の表情はうれしそうだった。
「ははは・・・・これもフェイトさんのお陰です」
「えへへへへ・・・・・・」
大切な人の力になれた。それがどうしようもなく2人には幸福だった。

319 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 21:32:31 ID:sJ5mT9up
久々のリアルタイム支援

320 :リリカルなのはDHS ◆Y2c93Cv37M :2008/06/26(木) 21:32:31 ID:ODRNxB4J
「それじゃあ、運転室に入らなきゃだけど、入口から入るのは危険だね。強引だけど、天井に穴を開けて・・・・・・?」
「「・・・・?」」
いざ突入しようとした時だった。その場に響く音。何かを殴打するような無骨な音。何事かと思い3人が目を向けた時
「2人とも、離れて!!」
視線の先には盛り上がるリニアの屋根部分。今にもそれははち切れんばかりに歪み、それは姿を現した。
ガジェットの新型に匹敵するかの如き丸々とした巨大な体躯。真黒に染まったその布には至るところから鋭き刃が伸びている。
メガ・スケアクロウ。それがその布袋の異形の名だった。体から生えるは処刑用の刃、それが血を求め、怪しく煌く。
「さっきの奴より・・・・大きい?」
「大きい・・・・・」
「フェイトさん!エリオくん!下がってください!・・・・フリード、ブラストレイ!!」
その姿に言い知れない悪寒を感じたキャロがフリードに命じる。竜の口に収束された炎は一直線に目標へと襲い掛かる。だが
「効いてない!?」
体をひっくり返されたメガ・スケアクロウ。だが、じたばたともがいていた体もすぐさま起き上がる。ダメージが薄いのかそれとも耐久力が大きいのか。
「接近戦で倒すしかないかも。エリオいける?」
「は、ハイ!」
「キャロ、ブーストお願いできる?」
「解りました!」
眼前の敵を見据え、力を込めるフェイトとエリオ。キャロの補助魔法によってその体に力がこもっていく。スタートの準備はできた。後は一撃を決めてやるだけ。
その下半身が今まさに地を蹴りだす刹那であった。
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!」
余りにも耳障りな笑い声。さっきからぱったりといなくなったはずの小さな3体の布袋・スケアクロウがまるで這い出てくるように、突如現れた魔法陣からやってくる。
「!!!!」
悪い意味での絶妙のタイミング。突然の事に崩れた態勢は致命的な隙を生み出した。
ほとんどそばと言っていい程の地点に現れた敵。3人には四肢に付いた刃を向けるスケアクロウの動きが、いや、すべての物がゆっくりと見えた。血で錆びた刃が迫る。

「Die(おっ死ね)」

三発の轟音。其れが止んだ時、3人の目の前には刃は迫っていなかった。代わりに見えるのは体に穴を開け、中身を溢して消滅していくスケアクロウの姿。

一体どこから。背後を見たフェイト。そして続いたエリオとキャロが見た者は。

右手を布に吊り、左手に握られた巨大な拳銃を此方に向ける銀髪の青年の姿があった。その銃口の先からは、未だ硝煙が立ち上り、火薬の匂いが鼻腔を刺激した気がした。

彼こそもう一人の『狩人』。万夫不当の魔剣士の血を継ぐ誇り高き戦士。

されどその『切り札』、未だ姿を現さず。

To Be Continued・・・・・・・・・・


321 :リリカルなのはDHS ◆Y2c93Cv37M :2008/06/26(木) 21:33:53 ID:ODRNxB4J
おまけ:坊やの悪魔講座

スケアクロウ?はっ。あの馬鹿みたいにワラワラ湧いてきやがるくそ虫どもかよ。
あいつらは見た目は出来の悪い見世物小屋のピエロみたいな感じだけどよ、あれは一体の悪魔ってわけじゃねぇさ。魔界の甲虫が集まって袋に入ってるのさ。
それが一体の生き物みたいに動きやがる。全く、ウザいったらありゃしねぇよ。
腕や足に処刑場で使われていた刃物が付いててな、トリッキー、俺からしてみればピョンピョン馬鹿な動きにしか見えねえがともかくまともな動きじゃねぇってことだ。
集まればウザいが、まとめて吹き飛ばしてやれば訳はねぇよ。
俺はそんなことよりも、虫が集まってるが故に死ぬときに破裂して中身飛び散らせる方が厄介だ。気味の悪い体液まき散らしやがって・・・・・・・バッチィぜ。
ま、こんなところだ。解ったろ?じゃあお家に帰りな。悪いな、閉店だ。


322 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 21:34:21 ID:wn1a56Ql
ヘイヘイ、露払いはまだか!(支援

323 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 21:37:49 ID:wn1a56Ql
投下乙ですー。
露払い1号登場。しかし便利すぎる奥の手はまだ封印ですか。
まぁ、アレ使えばすげぇ強いですからな。次回こそはネロ君の大暴れを楽しみにしてます。

324 :リリカルなのはDHS ◆Y2c93Cv37M :2008/06/26(木) 21:39:23 ID:ODRNxB4J
投下完了です。
思いのほか、ネロを出すタイミングが難しく、難産でした。ま、でも予告通り、後ろからズドン!と現れるところまでもっていけましたが。
次回も戦闘。坊やの悪ガキっぷり炸裂です。


次回予告
坊や、脱ぐと早い人にちょっぴりご立腹。ニート侍見参、坊やにイクシードブンブンされて生足つかまれて・・・・・・・・・

325 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 21:56:37 ID:YFgRbqRK
乙です。
しかしDMCのクロスが多いなぁ、嫌いじゃないけど。
みんな似たノリになるから、もっと超展開的なのが読んでみたい。

326 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 22:01:55 ID:mMAXJUSO
GJ!
坊やに期待

327 :名無しんぼ@お腹いっぱい:2008/06/26(木) 22:11:01 ID:+s9nUwMk
>>312
ちゃんと更新して投稿しろよ
それと爆砕牙持ってるんだぞ、冥道残月破はとっくに失くしてる
支援でもないのに的外れなタイミングで書き込まないでください

328 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 22:15:08 ID:8vBi6Xhz
GJ!
ニート侍w
DMCも社会的に働いてない人多かったな

329 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 22:45:44 ID:Q1T3XegU
殺生丸見て

あれ? レジアス蘇生は?

330 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 22:54:15 ID:wn1a56Ql
>>329
どうでもいいのでハブられました。

331 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 22:54:34 ID:uhVkEnOv
>>301
GJです。殺生丸最後の大暴れが凄そうですね。



332 :リリカル! 夢境学園 ◆CPytksUTvk :2008/06/26(木) 23:41:22 ID:MgSQEkVC
どうもお久しぶりです。
11時50分からちょっと新作の中篇を投下してもよろしいでしょうか?
一応殆ど書きあがっているので、手直しなどをしたりしながら連載をしていく予定です。

クロス元は一応投下後に発表させてもらいます。

予約はないですよね?

333 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 23:44:12 ID:05Ypae3s
支援します。予約はないみたいです。

334 :リリカル! 夢境学園 ◆CPytksUTvk :2008/06/26(木) 23:50:39 ID:MgSQEkVC
そろそろ時間ですので投下開始します。容量は10KB未満。さほど時間は掛からないつもりです


 ああ、今日も視界の片隅で道化師が踊っている。
 青白い仮面を付けたキミ。
 死人のような笑顔を被ったキミ。
 何故そんなにキミは踊るの?
 何故そんなに笑い声を上げるの?

 遠くで、耳元で、彼方で、目の前で、道化師が囁くのだ。

「こんにちは、***」

 昨日も、今日も、明日も――
 きっときっと踊っている。

 狂気をリュートのように奏で上げる声と共に。



 雨が降り注ぐ。
 びちゃびちゃ、びちゃと。
 空には曇り空。
 崩れた瓦礫が、舞い散る埃が、土が、何もかも涙のように雨に流され、溶けている。

「雨、か」

 壊れた場所。
 誰も居ない、気配無き都市。
 そこは見捨てられた場所。
 廃棄都市。
 そう呼ばれる一角で、改造した外套を纏い空を見上げる者が居た。
 それは黒髪の青年。
 どこもでも冷たい瞳を浮かべ、雨に濡れた顔もその冷たさも気にする事無く、彼は空を見上げ、額を、瞳をも叩く雨を気にする事無く見上げていた。
 瞳から流れる雨水。
 それは目じりを伝い、頬を流れ、顎から滑り落ちる。
 まるで泣いているかのようだった。
 ただただ沈黙の中で、青年は泣いているかのように雨に打たれていた。

「明るいな」

 雨に打たれる青年は呟く。
 薄暗闇で、雲に覆われた空を見上げて、それでもなお彼は明るいと呟く。
 何故ならば厚い、厚い、雲の向こうに僅かに差し込む太陽の輝きが見えたから。
 分厚き壁があろうとも、僅かな隙間を見つけてその灼熱を振りまく太陽。
 その輝きは、久しく“青年が忘れていたものだった”。
 ばちゃ、ビチィと踵を返した青年の足元で泥が跳ねる。
 ぬめる地面を踏み締めて、彼は改造外套を翻すと、その手に持った四角いケース――医療カバンと呼ばれるものを握り締めて歩き出した。
 彼を待っている者の元へと。
 彼は足を運ぶのだ。

 彼は医者なのだから。

 ただし巡回という言葉が頭につく類のものだけれども。

335 :リリカル! 夢境学園 ◆CPytksUTvk :2008/06/26(木) 23:51:24 ID:MgSQEkVC
 


 
 声が出ない。
 息が出来ない。
 暑い、熱い、暑い。
 まるで陸上に居ながら溺れているような感覚。
 肺が爛れて、焦げ付いてしまったような苦しい感覚。

「苦しいよぉ」

 胸を押さえ、汗を吹き出しながら、ガタガタと薄汚れた毛布に包まった少年が呟く。
 まるでそれは誤って日に焼けたアスファルトの上に飛び出してしまった魚のようだった。
 暑い、熱い熱に焼かれ、呼吸が出来ずに悶え苦しむ。
 ガクガクとブルブルと尋常じゃない震えを見せながら、少年は苦痛の声を洩らした。

「大丈夫か?!」

「頑張れ! ほら、水飲めるか?!」

「駄目だよ、あの“先生”が水は飲ませちゃだめだって」

 薄汚れた少年を取り囲むのは三人の子供。二人の少年に、一人の少女。
 彼らもまた薄汚れた格好とボロボロな衣服に身を包んでいた。
 彼は家がない、親がない、金もない、ストリートチルドレンと呼ばれる子供達。
 廃棄都市に住む、住民権のない違法な存在。
 けれど、彼らはたった一人の仲間のために涙を浮かべ、必死になっていた。

「うるさい! そんな、先生なんて信用出来るか! どうせ、藪医者だろう?!」

 水を飲ませようとしてした少年が、それを止める少女に怒声を上げる。

「ち、違うよ! せ、先生はちゃんとしたお医者さんだよ!」

「は! ちゃんとした医者? ちゃんと治してくれるような上等な医者は、俺たちみたいな奴らは診ないんだよ。高い金を請求して、払えなかったらバイバイだ」

 唇を噛み締めて、少年が呟く。
 それは怒りを堪えた表情。
 どうしょうもない現実に怒り狂い、それでもどうすればいいのか分からない。そんな顔。

「で、でもあの先生は――」

「うるさい!」

 少女が言葉を告げようとするのに、少年は怒声と同時に反射的に振り上げてしまった手を閃かせようとして――

「やめたほうがいい」

 その手が、止められた。
 大きな、少女よりも大きな人影が伸ばした手によって。

336 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/26(木) 23:52:05 ID:XUhC83Xw
うおおおお!
WEBノベル完結記念支援!!!


337 :リリカル! 夢境学園 ◆CPytksUTvk :2008/06/26(木) 23:53:24 ID:MgSQEkVC
 
「なっ? 誰だ、あんた――」

「先生っ!」

「え?」

 喜色を浮かべて喜ぶ少女に、少年は先生と呼ばれた人物に目を向ける。
 それはまるで医者のようにも見えるし、別のものにも見えた。
 灰色の改造外套を纏い、針金のように細い体をした青年の体はいかにも頼りなく、そしてとても若いように見えた。
 三十、いや精々二十代半ばになったばかりと思しき青年。
 まだ若者といってもおかしくない見かけ。
 それに少年は不審そうな目を浮かべ、そして先生と呼ばれた青年は足を進める。

「彼、かい?」

「はい」

 もう一人の少年が濡れた布切れを額に当てている、その横に膝を着ける。
 苦しげに、息を吐いて、そして悶え苦しむ少年に先生と呼ばれた青年は僅かに指と目を走らせると。

「重度の肺炎、だな。濡れた体のままで、しかも栄養不良で抵抗力が落ちていたようだね」

「っ、治るのかよ!」

 青年の言葉に、リーダー格と思しき少年が突っかかるように叫んだ。
 しかし、青年はそちらに振り返る事無く、ただ苦しむ少年の額に手を当てた。

「君は、治りたいか?」

 息を荒げる中、ぼやける視界の中で届いた不可思議な問い。

「?」

 それに少年は苦しみの中で呟いた。

「しにたく、ない、よぉ……」

 涙を流し、必死に命にしがみ付く言葉。
 それは見守っていた少年たちと少女に悲痛な表情を浮かばせ、そして青年は――

「わかった」

 右手を翳す。
 苦しむ少年の胸に翳すように。

「君は治る、直して見せる」

「っ、それならさっさと――」

 手を翳し呟く青年の態度に、少年が焦ったように声を上げようとして――息を止めた。
 見えた翠色の輝きに。


338 :リリカル! 夢境学園 ◆CPytksUTvk :2008/06/26(木) 23:56:02 ID:MgSQEkVC
「驚かないで」

 それは青年の右眼に浮かぶ輝き。
 複雑な幾何学的な光の紋様が空中に浮かび上がり、同時に青年の右手もまた同じ色の輝きで満たされる。

「ま、魔法?」

 それは時折廃棄都市で見かける魔導師が使う光にも似ていて。
 けれども、違うものだった。

「違う」

 青年は手を翳したまま、無表情に否定する。
 そんな美しいものではないのだと。
 そんな奇跡ではないのだと。
 彼は否定する。

「ただの【現象数式】(クラッキング)に過ぎない」

 彼の瞳は見ている。
 少年の病巣を。
 悪化し、もはや腐り落ちんとする肺を次々と正常な部位に“置換”していく。
 彼の数式の前に、手遅れだったはずの病気は治っていく。否、直っていく。
 それはデータを直すことに近い。
 数学的に言うならば、本来ならば3になっている場所が1であり、その場所を3に置き換える。
 ただそれだけ。
 それが彼のやっていることだった。

 そして。

「これで、いい」

 手の光が消えた時、彼の右眼もまた翠色の光を失っていた。

「これで、いいって――」

「あれ?」

 パチリと目が見開かれる、病気だった少年の瞳。

「も、もう苦しくない?」

 戸惑いながら、彼は顔を動かす。
 息を吸う――大丈夫。
 熱――微熱はあるものの熱くない。

「な、治った! 本当に治った」

 病気だった少年が腕を上げて、かすれた声で喜びの声を上げた時。

「お、おい、本当に治ったのか?」

「もう大丈夫なのか?!」

「よかった……」

 少年達が、少女が、倒れていた少年を抱きしめる。
 生きていてよかったと。
 命の喜びを抱きしめるように。

339 :リリカル! 夢境学園 ◆CPytksUTvk :2008/06/26(木) 23:57:16 ID:MgSQEkVC
「先生っ!」

 そして、役目は終わったとばかりに立ち上がり、去ろうとした青年にかけられる少女の言葉。

「ありがとうございました!」

「いや、僕はたいしたことはしていない」

「少ないですけど」

 ゴソゴソとポケットをあさり、精一杯の紙幣とコインを青年に差し出す少女。
 同時にバタバタと少年達も駆け寄り、同じように紙幣と硬貨を差し出す。

 それらを前にして。

「わかった。これだけもらうよ」

 青年は紙幣ではなく、硬貨だけを掬い上げた。

「え?」

「これで十分」

 青年は硬貨を掴んだまま、改造外套を翻し、立ち去ろうとする。
 そして、それを見届けていた少女の後ろから声が響いた。

「なあアンタ! 先生のアンタ! 名前を、せめて名前を教えてくれよ!!」

 それはリーダー格の少年の叫び声。

「ギーだ」

 それに青年――ギーは静かに答えた。
 無表情に、変わることの無い顔のままで。

 それは巡回医師。

 廃棄都市を歩き回り、意味もなく、何の理由もなく手を差し伸べ続ける医者の物語。
 その正体は誰も知らない。
 どこから来たのかも。
 その力がなんなのかも。
 ただ分かっているのは。

 彼は人を救うということだけだった。

340 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 00:00:25 ID:KWXEdO8L
支援

341 :リリカル! 夢境学園 ◆CPytksUTvk :2008/06/27(金) 00:00:55 ID:QYE5UA6u
 肉が焦げる音がした。
 骨が砕ける音がした。

「ひ、ひぃ!」

「お前、今なんて言った?」

 それは暴力。
 それは苦痛。
 人を救う物語、それと同じ舞台で人を苦しめる物語があった。
 灰色の崩れ落ちそうな廃棄都市の一角。
 そこに一人の異形の男が、血を流し悶え苦しむ男の胸に足をめりこませていた。
 その男には両手がなかった。
 肩の付け根から先はなく、細い布切れと化した袖を揺らした異形の男。
 逆立てた白髪に、鷲を思わせる鋭い目つき。その口元には酷く不味そうにたゆたう紫煙の煙。

「お前、今俺にこういったよな? 生意気だと、うざいとか」

 ギリギリ。
 ミシミシ。
 骨がひび割れる、肉の繊維が千切れていく、絶叫がそれらを塗り潰すように響いて。

「てめえ、何様だ?」

 絶叫。
 絶叫。
 耳ざわりなたった一人の大合唱による。
 血の泡を吹き、悶え苦しむその男の胸板にさらに靴底がめり込もうとした瞬間、制止する声があった。

「――時間です」

「あ?」

「クライアントの約束の時間には、そろそろ出発する必要があります」

「ちっ」

 足を振るい、その足元の男を蹴り飛ばすと、異形の男は袖を翳して背を向けた。

「勘違いするなよ」

 異形の男は語る。
 瀕死の男に、侮蔑するように告げる。

「俺が殺さなかったのは運がいいわけじゃねえ。お前がつまらなかっただけだ」

 純粋に、ただそう思い、異形の男はそう告げた。

「いくぞ、女」

「ハイ」

 その後を追う人影。
 それは帽子を被った人形。
 どこまでも精密に、人の形をした――人形だった。
 それは金属で作り上げられた自動人形。

 そして、巡回殺人者と呼ばれる男だった。

342 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 00:01:59 ID:Ryrnd3nZ
支援

343 :リリカル! 夢境学園 ◆CPytksUTvk :2008/06/27(金) 00:02:54 ID:QYE5UA6u
 



 踊る。
 踊る。
 それは踊り続ける。
 楽しませるために。
 怖がらせるために。
 そして、狂わせるために。

 それは踊り続ける。

 視界の隅で。
 闇の中で。
 街道のどこかで。
 雑踏の中で。

 そして、こう囁くのだ。

「こんばんは、***」

 と。


 狂気は舞い降りる。
 幻想は語られる。
 人々は忘れない。
 恐怖を。
 御伽噺を。

 これはどこまでも美しく、恐ろしい寓話の始まり。



344 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 00:03:36 ID:KWXEdO8L
支援

345 :リリカル! 夢境学園 ◆CPytksUTvk :2008/06/27(金) 00:05:09 ID:QYE5UA6u
投下完了です。
支援ありがとうございました。

なお、この作品のタイトルは【赫炎のクラナガン】
クロス元はライアーソフトの”赫炎のインガノック”です。
明日の8時頃に一話目を投下予定ですが、それ以後は手直しなどで時間がかかると思いますが、一応全て書き上げてありますので
それほど時間は掛からないと思います。
マイナーなクロス元ですが、どうか楽しんでもらえるように頑張ります。

ありがとうございました。

346 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 00:14:52 ID:REctxD7S
喝采せよ! 喝采せよ!

おお、おお、 素晴らしきかな!
嘘予告だったものが、ついに階段を昇るのだ!
現在時刻を記録せよ(ry


問題は嫁が出るかどうかだw

347 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 00:15:26 ID:0kDXQdFC
赫炎クロスだと!?
支援できなかったのが本当に悔やまれるぜGJ
彼は階段を登り切る前か後なのか、彼女はどうなってるのか
ワクテカしながら待ってます!

348 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 00:18:33 ID:k7FUXfhi
ひゃっほおおおお!!
HDの肥やしになってたのをやらないとな!!
マスクド上海に夢中になってたよ、こっちもおすすめだぜぃ!

349 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 00:34:57 ID:Ia+D6xM/
GJこそが私の愛の終焉である!

嘘が真になるとはこのことか。
相変わらず氏はクロス先が絶妙過ぎるw
完結への階段を昇り切る事を期待しておりますww

350 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 01:13:53 ID:57EVD3XG
アティは?アティはでるよね?彼女を幸せにしてやってくれよ・・・

351 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 09:05:51 ID:QPndewMV
……R-TYPE(´・ω・`)

352 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 09:29:50 ID:2cOH0ATw
>>351
せかすなって
病み上がりで無茶されたら困る。

353 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 09:49:21 ID:4v9yNtbv
>>351
氏はスぺランカーでリハビリ中だ。

354 :名無し@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 10:18:53 ID:1HkJLjNn
なの魂、マダー?

355 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 12:30:38 ID:WPojtOLi
そういう催促はほどほどにしとけや

356 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 13:08:38 ID:IwRfBcdO
Stylishマダー?

357 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 16:32:47 ID:cj9+UUb3
ミッドナイトマダー?

358 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 17:08:19 ID:lmHOwL3N
リリカルユーノマダー?

359 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 17:38:02 ID:2XhtGVbL
>>353
それはそれで読みたい(w


360 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 18:32:15 ID:f29X4GoZ
スペランカーとどうやってクロスするんだよw

361 :名無しさn@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 18:56:38 ID:yOfw3oeB
>>354
すいませんでした。

362 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/06/27(金) 19:15:56 ID:WChi4B66
9時頃に投下させて頂きます

363 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 19:37:18 ID:LZZSWCd1
アセリアまだーーー?

364 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 19:57:21 ID:9k9voNgX
リリカルTRIGUN氏待っていました。
確か今回の話で、ついにあの男が本格的に登場するんでしたよね。
どうなるのか今から楽しみです。

365 :リリカル! 夢境学園 ◆CPytksUTvk :2008/06/27(金) 20:05:24 ID:1mOBrB30
すみません。
8時に投下すると予約していた赫炎のクラナガンですが、ちょっと用事が出来ましたので
リリカルTRIGAN氏の後に投下させていただきます。


366 :リリカル×リリカル ◆.k7TdiLwT2 :2008/06/27(金) 20:07:43 ID:PPlv0Kal
では、私はその後に予約をば。
夢境学園氏>リリカルTRIGUN氏>リリカル×リリカル
といった順でいいのかな?

367 :リリカル×リリカル ◆.k7TdiLwT2 :2008/06/27(金) 20:09:30 ID:PPlv0Kal
ぎゃぼ
それでは、2015に予約を変更いたします。
量は約6kbと2レスで済むので、予約の時間が被ることはないと思います。

368 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 20:16:25 ID:1mOBrB30
再会して数日後に……支援

369 :リリカル×リリカル ◆.k7TdiLwT2 :2008/06/27(金) 20:16:32 ID:PPlv0Kal
 朝日がしらじらとその顔を覗かせる時分になって、高町なのはは常よりも遥かに早くその目を覚ました。額に
うっすらと汗を滲ませ、落ち着かない呼吸を持て余し、僅かに肩を上下させているその様を見れば、目覚めがど
のようなものだったかかなど問うまでもない。
 蹴飛ばした布団はベッドを転げ落ち、本来の役目を忘れているかのようだ。床を暖めてどうするというのか。

「……私も、何やってるんだろう」

 五月とはいえ、朝はまだ冷える。汗で濡れた肩を抱きしめながら、小さくなのはは呟いた。
 ジュエルシードを奪われたあの夜の光景が脳裏に焼きついて離れない。警告を無視して押し通すほどの理由が
果たして自分の中にあったのだろうか。
 覚悟がなかったわけではない。周りの人が傷付くのは許せなかったし、ユーノが一人で無茶をするのも嫌だ。
 それでも、やはり足りなかったのだ。だって、ジュエルシードを競争のように取り合うことは予想していても、
奪われるなんて予想だにしていなかったのだ。相手が形振り構わずジュエルシードを欲しているなら、そんなの
簡単に考えられたはずじゃないか。
 申し訳なかった。何のためにこれまでユーノに協力してきたのか。ユーノは協力してくれたのか。
 言うまでもない。ジュエルシードのためだ。だというのに、見通しの甘さからそれを奪われてしまった。

「多分、話しても意味がない」

 金色の少女の言葉が甦る。

「君は、戦っちゃいけない」

 クロノ少年の言葉が木霊する。
 そうだ、高町なのはは戦いになんて向いてない。戦うための覚悟が出来ていない。譲れない何か、そんなもの
考えたこともなかった。だったら、それこそ話し合ってもどうにもならない。
 彼女たちの前に、まだなのはは立ち塞がるべきじゃなかったのだ。

「顔、洗お」

 俯いたまま、部屋を出る。バスケットの中の友達を起こさないよう、そうっと。
 ……洗面台の鏡に映った顔は、彼女自身、笑ってしまいたくなるほどそれは酷いものだった。



 夢の中では、誰もが孤独だ。誰がいても、誰といても、結局はその人の脳が作り出した幻影に過ぎない。夢は
あくまで情報を整理し、脳の機能を維持するためのメカニズムでしかないのだ。
 だからこそ、クロノはこの上ない違和感を覚えていた。あるいは、夢を見ている自覚がなければ、何事もなく
夢を見続け、いつかは目を覚ましたことだろう。
 だが、気付いてしまってはそれも望めない。スクリーンに映し出された映像を無理やり見せ付けられるような
圧迫感の中、見覚えのない光景をクロノは俯瞰していた。
 底は広い緑の草原――原っぱといったほうが正しいだろうか――だった。風が吹くたびに丈の短い草々が靡き、
どこか遠くでは梢の触れ合う音が響いている。高台にでもあるのだろうか、なだらかな丘の向こうに目をやれば、
青々とした海が覗いている。空気も澄んでいるのだろう、対岸には山も見える。
 こんな景色は、見たことがない。近いものをあげれば海鳴温泉だろうが、あそこは山だ。一面平らな草原など
ない。だから、ありえない。見たことがないのだから、夢の中で出てくることなどありえない。
 その中を、クロノは歩いていた。まるで来たことがあるかのように、迷いない足取りで。その手に、青と緑の
中、一際目立つ少女の手を携(たずさ)えて。
 そうして、原っぱの中に落ちていた白のつば広帽子を手渡す。少女は笑って、クロノも笑って。

「ありがとう、――――くん」

370 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 20:17:57 ID:1mOBrB30
なのちゃんはそこにいない 支援

371 :リリカル×リリカル ◆.k7TdiLwT2 :2008/06/27(金) 20:17:59 ID:PPlv0Kal
 目覚めは、どこか緩慢だった。粘性の泥から引き上げられたかのようにねっとりと肌にまとわりつく寝巻きが
わずらわしい。夢の中に意識の一部を忘れてきたといわれれば、そのまま信じただろう。
 事実、クロノはそれまで見ていた夢の内容を忘れていた。思い出そう、という気力はなかった。
 窓に目を向ければ、カーテンの隙間から朝日が零れていた。薄暗い部屋の中に光の柱が立つ。立ち込める埃の
多さに目を細め、呼吸を躊躇った。無論、長くは続かなかったが。
 そろそろ、掃除でもする時期かもしれない――寝起きの胡乱な頭、というよりも、やけに覚醒した脳をあえて
無視するかのように、益体もない思考を走らせる。当たり前だ。そんな暇があるならば、ジュエルシードの一つ
でも探したほうがよほど有益に違いない。
 だが、もし全てを探し終えたら。
 掃除をするのもいい。どこか出かけるのもいいだろう。でも、誰と。
 思い違えてはならない。ジュエルシードはあくまで目的ではあるが、終着ではない。粗雑ではあるが膨大な魔
力を込めてはいるが、だからこそ、あくまで手段に他ならないはずだ。その力を使ってまで成し遂げなければな
らない何かがある。
 それに最後まで、クロノは関わることができるのか。いや、もっと言うなら、クロノはジュエルシードを集め
終わった後、どこに行けばいいというのだろう。
 フェイトはプレシアの娘だ。その使い魔のアルフも、行き場に困ることはないだろう。
 ただ、クロノだけは違う。今はまだいいが、この先どうなるかなど、誰にも保障されていない。
 だったら、なぜジュエルシードの探索などを手伝っているのか。これが後ろ暗いことなど、今になれば十分に
理解できる。幼かろうと、彼はそこまで愚鈍ではない。
 では、なぜ。
 拾ってもらった恩を返すためと言い聞かせてきたが、果たしてそれだけだろうか。
 考えても、答えは出ない。夢の中にその答えがあるような気がしたが、零れた水は帰らない。
 かぶりを振って、暗い考えを追い出した。嘆いても無駄なら、他にどうしようもない。

「顔でも、洗おう……」

 クロノの足先がそっと合成素材で敷き詰められた無機質な床を撫でた。冷たく固い感触が指先から伝わる。
 ベッド以外には何もないこの部屋には、絨毯すら敷かれていなかった。元は余っていた部屋を宛がわれただけ
だったし、クロノも寝具以外を必要としなかった。
 とはいえ、現実を直視するに十分以上に役立った。真綿のように包まれていては、夢から覚めることもない。
事実、元よりなかったとはいえ、記憶を求めて二度寝をする気は欠片も失せていた。
 音が出ないよう、ゆっくりと扉を開ける。無用な気遣いだ。夜中、フェイトとアルフは街へジュエルシードの
探索に出かけている。未だ日が昇りきっていない時間に戻ってくることは、この短い同居生活の中で一度として
あったことはない。
 それでも性分からか、無駄な騒音は立てないよう、クロノはゆっくりとリビングへと歩く。そして付いたとき
には、その顔に驚きを浮かべることになった。

「おや、小坊主。まだ五時にもなっていないってのに、ずいぶんと早いお目覚めだね」

「おはよう、クロノ。……ごめん、起こしちゃった?」

 リビングでは、今探索に行っているはずのフェイトとアルフがいたのだ。
 そしてクロノを本当に驚かせたのは、彼女たちがいたことではない。

「……ああ、おはよう」

 困惑しながらも、朝の挨拶が自然と口に出たことだった。
 更に言うなら、それを嬉しいと感じている自分自身に。

「……目が覚めたのは、別に君たちのせいじゃない。帰ってきたのにも気付いていなかったくらいだから」

 差し出されたミネラルウォーターに満たされたグラスを受け取り、礼を言ってから一口つける。それだけで、
どれほど喉が渇いていたのかをクロノは自覚した。

「ありがとう」

 半分ほど飲み干して、もう一度礼を言う。クロノの前では、フェイトが微かな笑みを浮かべていた。

372 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 20:18:26 ID:q/P2cm/j
しえん

373 :リリカル×リリカル ◆.k7TdiLwT2 :2008/06/27(金) 20:20:14 ID:PPlv0Kal
以上です
目覚めの対比だったり、水をあえて小道具にしたり
ああいわないでください、わかってるんです、わざわざ解説したら、何の意味もないって
でもチキンなのです、許してください(´・ω・`)

374 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/06/27(金) 21:00:20 ID:FdGdsNHx
それでは第十話「自由への扉、開くために・後編」投下します。

375 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/06/27(金) 21:01:54 ID:FdGdsNHx
闇夜が包む海鳴市。
その上空で、様々な色の光がぶつかり合い、離れていく。

光と光が触れる度に起こる轟音。
その合間に響く銃声。
雷の魔導師と烈火の騎士、そして人間台風の戦闘は延々と続けられていた。


雷の魔導師は前衛にて烈火の騎士と斬り合い、人間台風は後衛に立ち銃撃で雷の魔導師を援護する。

対する烈火の騎士は、近接戦、銃撃、二人のスペシャリストに挟まれながらも倒れる事なく善戦している。

今にも崩れそうな、危なげな均衡を保ったまま戦闘は続いていく。






何度目か分からない鍔迫り合いにデバイスが火花を散らす。
鍔迫り合いを挟み交わされる視線と視線。
シグナムとフェイト、互いに疲労の色を見せながらも戦意は衰えていなかった。

一瞬の膠着のあと、鍔迫り合いの形がゆっくりと崩れていく。

押される側はフェイト。
単純な力勝負ならシグナムの方が優勢。
そのまま押し切り斬り裂くべく、シグナムが更に力を込める。

だが、その目論見は一発の轟音に阻まれた。

轟音が響くと同時に、シグナムの持つ烈火の剣が跳ね上がり、大きく力の掛かる
方向が流れた。
その隙を見逃すフェイトでは無く、瞬時に漆黒の戦斧を振るう。
シグナムの頬を僅かに掠めた。

「くッ!」

舌打ちと共に大きく後ろに下がり距離を離すシグナム。

続いて鳴り響く二回の轟音。
シグナムは、轟音の発生源を見向きもせず、全速力で空を駆け続ける。


その轟音は、最強の射手からの攻撃の合図。
見なくても分かる。
轟音の元には、赤コートの男が銃を構えているだろう。



376 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/06/27(金) 21:03:40 ID:FdGdsNHx
確認をする暇すら勿体無い。
この銃撃を回避するには、ただ全力で、不規則に動き続けること。
脚を止めれば追撃の弾丸が飛んで来るし、何よりテスタロッサがその隙を見逃さない。

(マズいな……攻めきれん)

小さな舌打ちと共にシグナムは、こちらへと迫る金髪の少女、そして後方で銀の銃を構える赤コートの男を睨んだ。





一息つく暇さえない、熾烈な攻撃に曝されながらも、烈火の騎士――シグナムは諦めずに剣を振るい続けていた。

だが、どう立ち回ろうと圧倒的不利な状況は一向に揺るがない。

テスタロッサに浮かんだ僅かな隙をつき攻め込もうとしても、赤コートの男が放つ恐ろしいほど正確な射撃により阻止される。
後方に立つ赤コートに攻め込もうとしても、驚異的な機動力でテスタロッサに回り込まれ、阻止される。

どう動いても攻め込めない。

何時まで経っても勝機が見えない戦闘に、さしものシグナムにも疲弊が見える。
だが、それでもシグナムは諦めようとはしない。
主を救うため。

その一心で空を駆け続ける。


そして遂に、シグナムの想い、執念に応えるかの様に――その時は来た。




ヴァッシュが引き金を引いたと同時に、シグナムは猛然とフェイトに接近した。
ただ愚直に、一直線に、フェイトを目指し空を飛ぶ。

何故か、先程までと違い、その動きを阻害する弾丸は飛んで来ない。

(当たり前だ)

ようやく到来したチャンスに心の中で笑みを浮かべ、シグナムが疾走する。
誰にも邪魔される事無く、烈火の騎士は空を駆け抜けフェイトの懐へと潜り込む。
その距離はフェイト、シグナム、共に自分の力が最も発揮できる領域。

振るわれた烈火の剣を漆黒の斧が受け止める。

一瞬の膠着。

直後、反発し合う磁石の様に二人は弾け飛び、距離が離れていく。

「――逃がすかぁッ!」

弧を描くように間合いを取るフェイトに、無理矢理とも言えるほど強引にシグナムが直進し距離を詰める。



377 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/06/27(金) 21:04:37 ID:FdGdsNHx
同時に己が手の中にある魔剣から魔力の込められた弾丸を排出。
その名の如く魔剣が炎に包まれる。

カートリッジによる魔力増加。
前回の戦いではこの魔力増加に為す術もなくフェイトは圧倒された。

だが、今回は違う。

相手がカートリッジを使うのなら、こちらも使えば良い。
迫る炎刃へと戦斧を掲げ、コッキング音と共にリボルバーが回転――

「フェイト!」

――する事は無かった。
何とか金色の障壁を形成するが防ぎきれない。
直撃。
目にも止まらぬスピードでその幼い容姿がビルの屋上へと吸い込まれていった。





何故、フェイトはカートリッジを使わなかったのか?
何故、ヴァッシュはシグナムが突っ込んでいった時、銃を撃たなかったのか?

どちらの疑問も、答えは単純にして明快。

――弾切れ。

ヴァッシュの銃は弾丸を、バルディッシュ・アサルトはカートリッジを、それぞれ消費仕切っていた。

どれ程の精密射撃が出来ようと弾丸が無ければは意味を為さない。

カートリッジシステムが組み込まれていても、肝心のカートリッジが無くては意味を為さない。

敵の武装が両方共、弾切れを起こした瞬間。
それが引き起こす、大幅な戦闘力の低下。

飛び交う弾丸、カートリッジにより強化された魔法、2対1という圧倒的不利な状況。
その中で待ち続けた唯一の勝機。
目まぐるしく変化する戦いの中、現れたほんの一瞬の勝機。

その勝機を見逃す事なく、シグナムは――喰らい付いた。





弾き飛ばされたフェイトを一瞥するシグナム。

分かっている。
これ位ではあの魔導師は引かない。
直ぐさま立ち上がり再び斬りかかって来るだろう。



378 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/06/27(金) 21:06:06 ID:FdGdsNHx
(だが、それで良い)

今の一撃で、ほんの一瞬だけテスタロッサは戦場を離れる事になる。
そしてその一瞬こそ、後方にて援護に徹するガンマンと1対1になれる瞬間。

「レヴァンティン、カートリッジロード!」

咆哮と共に烈火の剣がその形状を変え、紫色に発光する。
攻撃対象は赤コートの男。

この攻撃により確実に赤コートの男を倒し、テスタロッサとの1対1の勝負に持っていく。
それが私の勝つ唯一の方法。

紫電を纏った烈火の剣を振り上げ、シグナムが吼える。

「飛竜――ッ!?」

瞬間、甲高い金属音と共に強烈な衝撃が、レヴァンティンを襲った。

(何だと!?)

暴れる剣を手離さないよう、必死に力を込め、攻撃が飛来した方を睨むシグナム。
その視線の先には、銃口から細い煙を流す銀色の銃、そして悠然とこちらを睨む真紅のコートを羽織った男。


ヴァッシュの拳銃は弾切れを起こしているはず。
だが、確かにその拳銃から弾丸は射出された。

考えられる事は一つ。

シグナムがフェイトと行った、僅か二回の斬り合いの間に弾丸をリロードし、再び狙いを付け、発砲したということ。

(早い……!)

自分の予想を遥かに越えた相手の実力に、シグナムの頬を一筋の汗が伝う。

(――だが、残念だったな。武器は手離していない!)

手に走る痺れを無理矢理に押さえ込み、シグナムは剣を振り下ろす。

「――一閃ッッ!」


叫びと共に放たれた紫電の暴風が、全てを飲み込みヴァッシュへと迫る。

対するヴァッシュが行うは、大口径リボルバーによる超速の連続射撃。

神業とも言える精密射撃と、神速の早撃ちの合わせ技。
最強のガンマン、ヴァッシュ・ザ・スタンピードだからこその超絶技巧。

一、二、三、四、五。

リボルバーに残された全ての弾丸が一寸の狂いも無く、暴風の奥で螺旋を描いている烈火の剣へと命中する。




379 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/06/27(金) 21:07:41 ID:FdGdsNHx
――だがそれでも、暴風は揺るがない。

魔法により強化された鞭状の剣は、その勢いは寸分も弱まる事なく、ヴァッシュ・ザ・スタンピードへと飛来する。

ヴァッシュが立つ場所は、逃げ場の無いビルの屋上。

紫電の暴風がビルに命中、轟音が世界を支配した。




「…………馬鹿な」

通常形態に戻ったレヴァンティンを手に、呆然とシグナムが呟いた。

「JACK POT」

額から一筋の血を流しながらも、男は飄々とした笑みを浮かべていた。
まるで何も無かったかの様に男――ヴァッシュ・ザ・スタンピードは笑っていた。




飛竜一閃。
カートリッジの魔力により強化した『シュランゲ・モード』を相手へと振るう、
シグナムが持つ魔法の中でも最高クラスの威力を有する技。

それを銃撃で防ぐ事など到底不可能。

少なくとも五発の弾丸を一ヶ所に集中させたとしても、揺らがせる事すら叶わなかった。
だが、その攻撃をヴァッシュは銃撃によって逸らし、避けた。

どのようにして?

単純な話だ。

五回の銃撃で逸らす事が出来ないのなら、さらに撃てば良い。

そう、ヴァッシュは紫電の暴風がその身に届く前に、再びリロードし、更に六発の弾丸を叩き込んだのだ。

数センチのズレも無く叩き込まれた計十一発の弾丸。
それは、遂に暴風を怯ませる事に成功する。

僅かに歪む、紫電の奥の螺旋。
それにより生まれた極小の隙間。
迷うことなく、ヴァッシュはその隙間へと身体を滑り込ませた。

神業、いや魔技としか言いようのない銃撃、身のこなし。
双方が重なる事による発生した、有り得ない回避は、数百年の戦いを経験したシグナムですら理解する事ができなかった。



必殺の一撃を避けられたシグナムは、その事実に呆然とヴァッシュを見つめる。
その姿が隙だらけという事にすら気付けずに。



380 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/06/27(金) 21:08:47 ID:FdGdsNHx
「はぁぁああああ!」
「ッ!」

幼い叫びに我を取り戻した時には、金色が視界を埋め尽くしていた。
それでも無意識に体が反応する。
反射的に剣を掲げ防御の体勢を取っていた。
だが、その様な半端な防御体勢で防ぎきれる訳もなく――

「くぁああッ!」

――シグナムは、強烈な衝撃に翻弄されながら真下のビルへと叩きつけられた。








「ヤ、ヤバかったぁ……!」

守護騎士がビルに叩きつけられた事を確認すると同時に、ヴァッシュは大きく安堵の息をついた。
その表情に先程までの飄々とした笑みは無く、代わりに、冷や汗が滝の様に流れていた。

「あれだけ撃って少し逸れるだけとか、何ちゅー攻撃だよ全く……」

実を言えば、先程の一撃をヴァッシュが避ける事ができたのには運の要素も大きかった。

ヴァッシュが幸運だった事は、シグナムが使用した魔法――飛竜一閃が『剣』を媒介にした攻撃であった事。

もしこれが純粋な魔力だけによる砲撃であったのなら、ヴァッシュに防ぐ方法は無かった。
魔力の膨大な流れの前には弾丸など意味を成さない。
勢いを弱める事も出来ないだろう。

だが、飛竜一閃は剣を媒介にした攻撃。
剣に纏う魔法はどうにも出来ないが、その奥の剣に衝撃を与える事は出来る。
それでも、大口径リボルバーから放たれる十一発の弾丸を一点に集中させる事により、何とか逸らせるといったレベルだが。




その幸運を噛み締めつつヴァッシュは、守護騎士が落下したビルへと足を向ける。

「…………やっぱり無理、かな……」

ふと、ヴァッシュの口から呟きが漏れる。
誰の耳にも届く事なく空に散ったその言葉は、深い深い悲しみを帯びていた。






381 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/06/27(金) 21:10:35 ID:FdGdsNHx


「これで終わりです、シグナム。もう抵抗を止めて下さい」

膝をつくシグナムへと金色の刃を突きつけ口を開くフェイト。
口を閉じたまま、闇夜に煌めく金色の刃を睨むシグナム。

「フェイトの言うとおり!そろそろ止めにしないかい、守護騎士さん?」

後ろから掛けられた声にシグナムは顔を向ける。
そこには、銃を構えたまま微笑みかけるヴァッシュが立っていた。

武器を持った二人の敵に挟まれた状況。
守護騎士・ヴォルケンリッターの将でも逆転は難しい。

「……まだだ」

――だがそれでもシグナムは降伏の意志を見せない。

主を救う。
その確固たる願いを叶える為、諦める訳にはいかなかい。

「……君も中々しつこい人だね……。そろそろ大人しくしてくれたらコッチとしても万々歳なんだけど」
「そいつは残念だったな……私に引く気は無いし、大人しくするつもりも無い」

嘲るような笑みがシグナムの顔に浮かぶ。

「……どうしても引いてくれないのかい?」
「シグナム、もう……」

ヴァッシュとフェイトの悲しげな声が重なった。
甘い。
なんて甘いのだろう。

二人の悲しみが含まれた視線を受けながらシグナムは思う。

「ああ、引けないな。騎士のプライド、そして我等が主のため引けない――いや、引く訳にはいかない!」




思い浮かぶあの暖かい日常。

戦う事しか知らない自分達を一人の人間として扱い、様々な事を教えてくれた心優しい主。

最初は戸惑ってばかりだった。
そのぬるま湯の如く平穏な日常に困惑するばかりだった。

だが、ある時自分達は気付く。

笑いかけてくる主を見て心に浮かぶ『それ』が、楽しそうに話しかけてくる主を見て心に浮かぶ『それ』が――『幸せ』というものなんだと。



382 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/06/27(金) 21:12:39 ID:FdGdsNHx
そして同時に思った。
この平穏な日々を護りたい、と。
暖かな、まるで太陽の様な微笑みを向けてくれる主を護りたい、と。

――心の底からそう思った。


だが、そんな気持ちとは裏腹に、あの日はやって来る。

苦悶の表情で胸を抑える主。
脂汗を流しながら、それでも「大丈夫や」と笑いかける主。

医者に言われた。
足の麻痺範囲が広がっていると。
このままでは命に関わると。

私達は気付いた。
闇の書が、主――八神はやてを蝕み続けているのだという事を。


私達は決意した。

闇の書を完成させようと。
約束に背いてでも主を救おうと。
あの暖かく平穏な日常を取り戻そうと。


――私達は決意した。




「……一つだけ教えてくれ」

前方から掛けられた言葉に、シグナムの意識は現実へと引き戻された。

気付けば、後ろにいたはずのヴァッシュが正面に回り込んでいる。
その手に握られた銃が自分ではなく、何も無い地面へと向けられている事にシグナムは気付いた。

「……何だ?」

数秒の間を挟んだ後、警戒を含んだ声色でシグナムが聞き返す。
手の中の剣が揺れた。

「何故、君達は戦う?この平穏な世界で暴れまわり、闇の書を完成させて……君達は何を望むんだ!」

吐き出す様に口から出た疑問。
終わりにつれて強くなる語気は、ヴァッシュの心の中の苛立ちを表しているのか。
その表情に先程までの飄々とした笑みは無い。

「……貴様に言う必要はない」

だが、その叫びにもシグナムは答えない。
ヴァッシュの、そしてフェイトの顔が虚しく歪んだ。



383 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/06/27(金) 21:15:32 ID:FdGdsNHx
「……シグナム、あなたを逮捕します」

金色の刃をシグナムの首元へと近付けるフェイト。
そう、シグナムが何と言おうと勝負は決しているも同然。
シグナムにとっては敗北、フェイト達にとっては勝利という形となって。
だが、シグナムはこの状況でも勝負を諦めない。

「まだだ……まだ捕まる訳にはいかない」

小さな呟き。
それは跪いている自分への叱咤。
それは側に立つ二人にも聞こえる事なく、空中に溶ける。

「私はまだ…………戦える!」

シグナムの口から飛び出た決意の咆哮と共に魔剣が動く。
最後のカートリッジから、莫大な魔力が流れ込んだ。

そして、同時に動く雷の魔導師と人間台風。

首元で静止していた金色が烈火の騎士を貫き、音速に加速した一発の弾丸が烈火
の剣を叩いた。

立ち上がる暇も無い。

二つの攻撃が騎士を無力化する―――筈だった。


「「なッ!?」」

フェイトとヴァッシュが驚愕に目を見開く。
視線の先には、金色の魔力刃を意に介さず剣を構える烈火の騎士の姿。
その身体は、淡い紫色の光に包まれている。

その光景に二人の動きが止まる。

(防御魔法!?マズい――)

その考えにフェイトが行き着いた時にはもう遅かった。

シグナムを包む光が消失、同時に迫る烈火の剣。
二人が、反射的にそれぞれの得物を掲げるも、烈火の騎士渾身の一撃は防ぎきれない。

フェイトが知覚できたのはそこまで。
灼ける様な痛みと共にフェイトの意識は闇の中へと落ちていった。





「勝った……のか」

何処か信じられない様に、シグナムが呟いた。
その視線の先には倒れ伏す真紅のコートと、漆黒のマント。
非殺傷設定とはいえ渾身の一撃、二人を気絶させるのには充分なはずだ。






384 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/06/27(金) 21:16:55 ID:FdGdsNHx
最後のカートリッジでシグナムが使った魔法は甲冑・『パンツァーガイスト』。
その驚異的な防御力は、戦斧から放出された魔力刃を無効化し、大口径のリボルバーから生み出された衝撃を無いものとした。

圧倒的に有利な状況だからこそ浮かぶ、僅かな油断。
烈火の騎士は、その隙を見逃さず、結果勝利を手に入れた。





倒れる二人を複雑な表情で見つめるシグナム。
その時、何処からともなく古ぼけた一冊の本が現れた。

「わざわざ済まないな」

その感謝の言葉に喜びを表すかの様に、古本はシグナムの周りを飛び回る。
そんな古本を見て微笑みを浮かべながら、シグナムは倒れ伏すフェイトに近付き、手を伸ばした。

同時に現れる小さな金色の光球――リンカーコア。

「……行程がどうあれ、勝ちは勝ちだ」

表情に暗い色を浮かべつつ、シグナムはリンカーコアへと闇の書を掲げた。

「蒐しゅ――」

だが、シグナムはその言葉を言い切る事が出来なかった。
何故ならその瞬間、シグナムの言葉を掻き消すかの様に銃声が鳴り響いたのだ
から。

「アイタタタ……死ぬかと思ったよ、ホント。いや、非殺傷設定様々だね」

シグナムが振り返るとそこには、右手で銃を握り、左手で肩を抑えている男が立っていた。
銃からは細い煙が天へと昇っている。

「さっきの紫色の奴にはビックリしたよ。銃弾は弾くし、フェイトの攻撃は効かないし。
魔法って奴はとことん便利だね。今度僕にも教えてくれない?」

何故だ?

シグナムの脳内を疑問が埋め尽くす。

何故立っていられる?

渾身の一撃だった。
僅かに防御されたが、それでも立ち上がれる訳が無い。
なのに何故コイツは立っている?
どうして、小憎たらしい笑みを浮かべていられる?

「僕が立っていられる事が不思議かい?
こう見えても身体の頑丈さには自信があってね。……そう簡単には倒れないよ」

そう言うと男は微笑んだまま、銃をシグナムへと向けた。

「貴様……!」

その小馬鹿にした微笑みにシグナムの脳内が沸騰する。



385 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 21:18:17 ID:UYfjlVsI
人間災害支援

386 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 21:18:45 ID:0uPMMzVX
支援

387 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 21:18:59 ID:PxPsUaXV
まだここで膝を突く訳にはいかない支援!!

388 :名無しさん@お腹いっぱい:2008/06/27(金) 21:22:43 ID:belNUBXN
支援


389 :リリカルTRIGUN 代理:2008/06/27(金) 21:27:38 ID:6nGZ/8lC
リリカルTRIGUN氏が規制食らったようなので代理投下させて頂きます

390 :リリカルTRIGUN 代理:2008/06/27(金) 21:28:12 ID:6nGZ/8lC
何故、こいつは倒れない?

飛翔する竜の一閃も、渾身の袈裟斬りも、通じない。
その小馬鹿にしたような笑みを浮かべ、立ちふさがる。

一足飛びにヴァッシュへと踏み込み、レヴァンティンを振るった。
だが、交わされる。
その笑みを崩す事すら叶わない。

「穏やかじゃないねぇ。この殺伐とした空気を和ませてあげようと思ったのに…
…。
そんな眉間に力入れてたら小ジワになっちゃうよ」

切り返しの逆袈裟も、銀のリボルバーに易々と受け止められる。

「さて、僕としてはそろそろ降参して欲しいところなんだけど……それは無理みたいだね」

交差する拳銃と剣を挟み、飛ばされる言葉。
それは降伏を望む言葉。

「当たり前だ!」

苛立ちがそのまま口から飛び出す。
飄々とした微笑みが一瞬だけ、悲しげに歪んだ。

「やっぱ、そうだよね……」

悲しげな表情は、呟きと共に再び飄々とした笑みに戻る。

常に飄々としていた男が、一瞬見せた憂いの表情に、シグナムは僅かに困惑する。


もし、この場に高町なのはが居たら気付いたのかもしれない。
――今、人間台風の顔に映る飄々とした微笑みの下に深い深い悲しみが隠されて
いる事に。


「……俺もそろそろ覚悟を決めなくちゃな……」

そう告げると、ヴァッシュは拳銃をホルスターへと戻し、今だに自分の事を睨み続けているシグナムに背中を向けた。

突然の行動に困惑するシグナムを後目に屋上の端まで歩き、振り返るヴァッシュ。
何時の間にかその顔から笑顔は無くなっている。

「一対一(サシ)なら君も納得してくれるだろ?
今日限り捨ててもらうよ、その魔剣」

何時もの間の抜けた様子を微塵も感じさせない、真剣な表情でヴァッシュが呟く。

戦慄が烈火の騎士を駆け抜けた。

「お前は……一体?」




391 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 21:29:20 ID:0uPMMzVX
支援

392 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 21:31:40 ID:PxPsUaXV
シグナム=雷泥、これは最後は彗星突だ支援!!!

393 :リリカルTRIGUN 代理:2008/06/27(金) 21:32:01 ID:6nGZ/8lC
唐突に変わった男の雰囲気に、シグナムの口から疑問が零れた。
その疑問は、前回の対峙にて鉄槌の騎士が口にした疑問と全く同じ。

「僕かい?僕はヴァッシュ・ザ・スタンピードさ」

ヴァッシュが口にした答えも、あの時と変わらない。
真剣な表情を崩し、一瞬だけ、男は飄々とした笑みを浮かべた。





人間台風は望む。
赤の他人であった自分を必死に引き止め、自分を庇う為に『優しい嘘』をつき続けてくれた心優しい少女、そしてその家族、親友たちと送る平穏な日常を。



烈火の騎士は望む。
自分達を――プログラムでしかない自分達を家族として向かい入れ、穏やかな生
活を教えてくれた心優しい主と送る平穏な日々を。



――互いに望むは、大切な人と送る平穏な日常。




切欠は一陣の旋風。
この戦いの始まりと同じ様に、シグナムが駆け出した。



394 :リリカルTRIGUN 代理:2008/06/27(金) 21:32:26 ID:6nGZ/8lC



――長かった勝負は呆気なく終わりを告げる。

空を駆けるシグナムを、微動だにせず待ち受けるヴァッシュ・ザ・スタンピード。
唯一の武器は今だホルスターの中。

瞬きをする暇すら無く二人の距離が縮まっていく。
それが意味するは、シグナムの間合いへとヴァッシュが引き込まれているという事。

だが、それでもヴァッシュは行動に移さない。
回避への前兆も見せずにただ立ち尽くす。

遂にはシグナムの間合いに入る。

シグナムが狙うは袈裟切り。
自らが出せる最高のスピード、威力で左肩から斜めに斬って落とす。

闇夜に煌めく烈火の剣が真紅のコートへと迫っていく。

(この勝負、私の――勝ちだ!)

数十センチの所にまで迫った烈火の剣。
この距離まで迫った剣は、例えフェイトの高速移動魔法であったとしても回避は不可能。
詠唱の間さえ与えてもらえないだろう。

烈火の騎士が勝利を確信するのも仕方がない。
魔導師であっても、守護騎士であっても、数十センチの所まで迫った剣を避ける事など出来る訳がないのだから。
そう、魔導師であっても、守護騎士であっても、だ。






――烈火の騎士は、それを知覚する事すら出来なかった。

395 :リリカルTRIGUN 代理:2008/06/27(金) 21:32:53 ID:6nGZ/8lC
何故か、地面へと傾く身体。
倒れまいとする意志に反するかの様に、全く力を入れる事が出来ない両脚。

地面に覆われた視界の片隅に映る烈火の剣。
手に握っていた筈の烈火の剣は明後日の方向に吹き飛んでいる。
右腕を伸ばし、ソレを掴もうとするも、両脚と同様に動かない。

瞬間、地面が完全に視界を覆う。

(何が――?)

訳の分からない状況に疑問が浮かぶが、それ以上思考を続ける事は不可能であった。

コンクリートの灰色に染まった視界が黒に変化する。
同時に、体中を駆ける凄まじい衝撃。
頭蓋に浮かぶ脳が揺れる。

「俺の……勝ちだ」

黒に染まる意識の中、何処か悲しげな男の呟きが聞こえた。







あの刹那に放たれた弾丸は六発。
狙った箇所は三つ、右腕と両腿。

それぞれに二発ずつ、全く同じ位置に弾丸を叩き込んだ。

一発目の弾丸がバリアジャケットを貫き、続いて飛来する二発目の弾丸がその奥に位置する肉体を破壊する。


剣を握るには不可欠な右腕と地を支える両の脚。
この二つを撃ち貫かれたシグナムは、大きくバランスを崩し、その突進の勢いのまま地面へと突っ込んだ。


蓋を開けて見れば何て事はない、あまりに一方的な勝負。
人間台風と烈火の騎士との一騎打ちは、人間台風の圧勝という形で幕を降ろした。


「俺の……勝ちだ」

後方で倒れるシグナムへと複雑な表情を向けるヴァッシュ。
その心に浮かぶは僅かな後悔。


話し合いで解決できれば良かった。
相手から引いてくれる事を望んでいた。

誰も傷付かないで済むなら、その方が良いに決まっている。

だからヴァッシュは呼びかけ続け、戦闘を引き伸ばし続け、説得をし続けた。
何度斬りかかられようと、途轍もない威力の魔法で攻撃されようと、ヴァッシュは、誰も傷付かないで済む方法を選び続けた。



396 :リリカルTRIGUN 代理:2008/06/27(金) 21:34:01 ID:6nGZ/8lC
――だが、ヴァッシュは気付いてしまった。





それはあの戦闘で持てた唯一の会話。

『何故、君達は戦う?
この平穏な世界で暴れまわり、闇の書を完成させて……君達は何を望むんだ!』

数分前にヴァッシュの口から出た疑問。
闇の書の話を聞いた時から、常に抱いていた疑問。
この平穏な世界を犠牲にしてでも闇の書を完成させる理由。

『……貴様に言う必要はない』

答えは聞けず、ただ一言で斬り捨てられた。
だが、この瞬間、ヴァッシュは気付いてしまった。
――騎士の瞳に力強い灯火が宿っている事に。


それは、なのはやフェイトにも宿る『決意』という名の灯火。
誰にも曲げる事ができない、消える事の無い灯火。

『引かない』

その灯火が語った。


だから、撃った。


その信念ごと彼女を止める為に、武器ではなく彼女自身へと狙いを定めて引き金を引いた。

ここで止めなければ、闇の書は完成される。
闇の書の完成。それが意味するは、世界の終焉。
駄目だ。
それだけは絶対に許せない。


だから撃った。
この選択は間違っていないはずだ。

でも――





397 :リリカルTRIGUN 代理:2008/06/27(金) 21:34:35 ID:6nGZ/8lC
ヴァッシュは何とも言えない後味の悪さに顔を歪める。
視線の先には細い煙を流す一丁の拳銃。
長年、自分と共に不殺を貫き続けた相棒が、何も言わずにこちらを見つめていた。

「まだ……だ……まだ、私は……」

その時、小さな呻き声がヴァッシュの耳に届いた。
声のした方に顔を向けると同時に、ヴァッシュの表情が後悔から驚愕へと移り変わる。

その視線の先には、満足に動かない両脚を引きずり這い進む一人の女性――シグ
ナムの姿。
脚と腕から流れる血液で灰色の屋上へと、真紅の線を描きながら、シグナムは目指す。
相棒、レヴァンティンを再びその手に握る為に、シグナムは這い進む。

「こんなところで……!主、はやての為に……私は、まだ……!」

大口径のリボルバーで四肢を撃ち貫かれたのだ。
ほんの少し動いただけでも、尋常でない苦痛が彼女を襲うはずだ。
だが、それでもシグナムは、ゆっくりとゆっくりと、相棒へと向かい這い続ける。



398 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 21:35:11 ID:6nGZ/8lC
確かに戦闘能力はズバ抜けている。
現になのはやフェイトですら手こずる守護騎士を、戦闘不能にまで追い込んだのだ。
その戦闘力は折り紙付きだ。
だが、その余りに甘過ぎる性格が邪魔している。
正直に言えば危うい。
先程だって敵に同情し、引き金を引くのを躊躇っていた。
その思想は、人間としては素晴らしかもしれないが、管理局員としては危険だ。

(何とかしなくちゃな……)

フウと、大きくため息をつき、クロノは守護騎士へと視線を戻す。

「さて、少し寝ててもらうよ」

バインドによりピクリとも動く事が出来ないでいるシグナムへと、クロノはS2Uを振り上げた。

「……ブレイク・インパルス!」

そして、僅かな躊躇いの後、振り下ろす。

蒼色の光に包まれるのを感じながらシグナムの意識は深遠の闇へと消えていった。

「……よし、一人確保。残るは二人、そして主か、もう一人の守護騎士。……ヴァッシュ、君はここでこの女を見張っていてくれ。僕は残りの騎士達を何とかする」
「……ああ、任せてくれ」
「あとフェイトの事も頼む。目を覚ましたら無理するだろうから、何とか収めといてくれ」

そう告げ再びクロノは夜空に舞い上がる。

ヴァッシュを連れて行きたくもあったが、今のヴァッシュは足を引っ張るだけだ。

そう判断し、一人で飛び上がったクロノの瞳に――信じられない光景が映った。

(ヴァッシュ!?)

まるで自分を狙うかの様に銀色のリボルバーを構えているヴァッシュの姿。

何故、ヴァッシュは銃を向けられているのか?

噴き出す疑問に体が硬直する。
その硬直を狙ったかの様に引き金を引くヴァッシュ。
轟音が鳴り響く。
バリアジャケットを貫通するまでは至らないが、凄まじい衝撃が走り、大きくバランスを崩れる。
痛みに霞む意識を必死に引き止め、ヴァッシュを睨むクロノ。
何故か、ヴァッシュ自身も信じられないといった様子でクロノの方を見詰めている。

――瞬間、巨大な白い『何か』が、先程までクロノの体が存在した空間を薙いだ。


399 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 21:36:54 ID:0uPMMzVX
支援

400 :リリカルTRIGUN 代理:2008/06/27(金) 21:37:40 ID:6nGZ/8lC
投下順を間違えました
>>398はなかったことにお願いします

「……もう止めるんだ」

その痛々しい烈火の騎士の姿に、ヴァッシュの顔が苦々しく染まる。

「お願いだ、もう……止まってくれ」

無意識の内に、ヴァッシュの本心が言葉となる。

「止まってくれ…………止まるんだ!」

怒鳴り声と共にシグナムとレヴァンティンの間に割って入ったヴァッシュは、手の中の拳銃をシグナムへと突き付けた。

「もう、君に勝ち目は無い!
君がどんなに足掻いても、その剣を手にしても、俺に勝つ事はできない!
それは君にも分かってる筈だ!なのに何でまだ戦おうとする!」

誰も傷つけずに戦いを終わらせる事が無理だと思ったから引き金を引いた。
放たれた弾丸はその四肢を貫き、確かに戦闘不能な傷を創った。

だが、それでもこの人は戦おうとする。
葛藤の末に放った弾丸でも止まらない、止まってくれない。

「黙れ!私は主のため、絶対に負ける訳にはいかない!
何も知らない管理局風情が邪魔をするな!」

騎士の瞳がヴァッシュを射抜く。
ヴァッシュは気付いた。
目の前の女が抱える『決意』が自分の想像よりも遥かに強固な事に。

百五十年の長い人生でも、これ程の執念を持った人間は見たことが無い。
彼女を支えている『主』とはそんなにも大きい存在なのか。

真っ直ぐとシグナムに向けられていた銃口が揺れる。
強く唇を噛み締め、ヴァッシュが口を開いた。

「君は――「そういう訳にもいかない。次元の平和を守る。これが僕達の仕事だ


ヴァッシュの言葉を遮り、上空から若々しい声が聞こえた。
同時に現れた蒼色の鎖が、地を這う烈火の騎士を縛り付け、拘束する。

「闇の書の守護プログラム、シグナム。君を逮捕する」

史上最年少の執務管が迷いの無い瞳を烈火の騎士へと向けていた。


401 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 21:38:04 ID:8j6/30pY
>>414が抜けてないか?支援

402 :リリカルTRIGUN 代理:2008/06/27(金) 21:38:13 ID:6nGZ/8lC



「クロノ……なんで君が……」
「エイミィから通信が入ってね、慌てて飛んで来たんだ。
…………それで、君は何をしている、ヴァッシュ・ザ・スタンピード?」

屋上に降り立ったクロノは、視線とデバイスをシグナムに向けたまま、怒りの色を含んだ口調でヴァッシュへと問い掛けた。

「どういうことだ……?」
「君は曲がりなりにも管理局員だ。敵の事情を聞いてどうする?
自分で捕まえておいて同情でもするのか?
……それは偽善と言うんだ、捕まえる側の人間にそんな事は許されない」

若き執務管の双眸が人間台風を貫く。
まだ幼い、自分の十分の一も生きていない筈の少年の瞳にも確固たる『信念』が宿っていた。

「……ヴァッシュ、これが僕達の仕事なんだ。
わざわざ敵の事情に構っていたら、次元の平和なんて守れないんだよ」
「……それでも……それでも俺は……」

クロノの言葉が正論だと理解しつつもヴァッシュの根幹を支配する信念が反抗する。

(甘過ぎる)

唇を噛み締め俯くヴァッシュを見て、クロノはそう思った。


403 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 21:39:54 ID:0uPMMzVX
支援

404 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 21:47:35 ID:MCDZNZsN
支援!

405 :リリカルTRIGUN 代理の代理:2008/06/27(金) 21:47:59 ID:8j6/30pY
確かに戦闘能力はズバ抜けている。
現になのはやフェイトですら手こずる守護騎士を、戦闘不能にまで追い込んだのだ。
その戦闘力は折り紙付きだ。
だが、その余りに甘過ぎる性格が邪魔している。
正直に言えば危うい。
先程だって敵に同情し、引き金を引くのを躊躇っていた。
その思想は、人間としては素晴らしかもしれないが、管理局員としては危険だ。

(何とかしなくちゃな……)

フウと、大きくため息をつき、クロノは守護騎士へと視線を戻す。

「さて、少し寝ててもらうよ」

バインドによりピクリとも動く事が出来ないでいるシグナムへと、クロノはS2Uを振り上げた。

「……ブレイク・インパルス!」

そして、僅かな躊躇いの後、振り下ろす。

蒼色の光に包まれるのを感じながらシグナムの意識は深遠の闇へと消えていった。

「……よし、一人確保。残るは二人、そして主か、もう一人の守護騎士。……ヴァッシュ、君はここでこの女を見張っていてくれ。僕は残りの騎士達を何とかする」
「……ああ、任せてくれ」
「あとフェイトの事も頼む。目を覚ましたら無理するだろうから、何とか収めといてくれ」

そう告げ再びクロノは夜空に舞い上がる。

ヴァッシュを連れて行きたくもあったが、今のヴァッシュは足を引っ張るだけだ。

そう判断し、一人で飛び上がったクロノの瞳に――信じられない光景が映った。

(ヴァッシュ!?)

まるで自分を狙うかの様に銀色のリボルバーを構えているヴァッシュの姿。

何故、ヴァッシュは銃を向けられているのか?

噴き出す疑問に体が硬直する。
その硬直を狙ったかの様に引き金を引くヴァッシュ。
轟音が鳴り響く。
バリアジャケットを貫通するまでは至らないが、凄まじい衝撃が走り、大きくバランスを崩れる。
痛みに霞む意識を必死に引き止め、ヴァッシュを睨むクロノ。
何故か、ヴァッシュ自身も信じられないといった様子でクロノの方を見詰めている。

――瞬間、巨大な白い『何か』が、先程までクロノの体が存在した空間を薙いだ。

406 :リリカルTRIGUN 代理の代理:2008/06/27(金) 21:48:41 ID:8j6/30pY




クロノが空に舞い上がったと同時に、ヴァッシュ・ザ・スタンピードはある異変を感じ取った。
その異変とは、そう遠くない過去にも感じた、言うなれば『共鳴』。

有り得る筈のない『共鳴』に、ヴァッシュの心を埋め尽くしていた葛藤は何処かに飛んでいき、頭の中が真っ白になった。
茫然自失の中、反射的に動く右腕。
放たれた銃弾がクロノに命中し、その幼い姿を弾き飛ばす。
そして、感じ取った通りに、クロノがいた位置を巨大な白い刃が通り抜けた。

「何で……何でお前が……」

首を右に曲げた先には一人の男――この世界にはいる筈の無い男が笑みを向けていた。

「よう、ヴァッシュ」

それは、あの時と変わらぬ笑み。
『大墜落(ビッグ・フォールの)』時に見せた、この世界に飛ぶ寸前の邂逅で見せた、狂気の笑み。

有り得ない。
次元を越えたこの世界にお前が居る訳が無い。
なのに何故――。

捨てようと決意した過去が、因縁が、心の中で噴き出す。


「……何でお前がここに居るんだ、ナイブズ!」




苦悩の末に掴んだ勝利。
開かれるかと思われた自由の扉。

だが、その先にあったのは深い深い絶望。

407 :リリカルTRIGUN 代理の代理:2008/06/27(金) 21:49:11 ID:8j6/30pY
投下終了。
ご支援感謝です!

遂に登場。
平穏な日々を完封無きまでぶっ潰す男、ナイブズ!
……てか本当に、登場しただけで終わってしまいました。
ナイブズ無双を期待していた方、誠に申し訳ないです。

まぁ、こんだけの強キャラを書かせて頂く訳ですし、やりたい放題やらせていただきます。

まったりと更新していく事になりますが、暖かい目で見守ってやって下さい。

…………あれ、なのはは?


408 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 21:50:55 ID:QmdWMkRJ
更新お疲れ様でした。
ついにナイブズが登場しましたか。

クロノはヴァッシュのおかげで命拾いしましたが、その事実にはきずくんでしょうか。
それとも、そのことにきずかずにヴァッシュを責めたり、闇の書の事件から外したり、捜査妨害の罪などで捕まえるというようなしたりしてしまわないのか心配です。
でも、アースラから見ていると思うので大丈夫ですよね。

それでは次回も楽しみにしています。

409 :リリカル! 夢境学園 ◆CPytksUTvk :2008/06/27(金) 22:14:52 ID:1mOBrB30
リリカルTRIGAN氏 GJでした!
手に汗を握るバトルの後に、遂に来た最凶兄貴w
幾らリリカル勢が居てもまったく勝てる気がしないナイブズにどう立ち向かうのか楽しみです。
それにしても、ヴァッシュが守護騎士に銃弾の重ね当てという神業を出しても奴なら出来るとナチュラルに思える自分はきっとトライガン好きw

それでは大作の後の投下で気が引けますが。
赫炎のクラナガン第一話を20分から投下させていただきます。


410 :リリカル×リリカル ◆.k7TdiLwT2 :2008/06/27(金) 22:17:17 ID:PPlv0Kal
アティはギーの嫁支援

411 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 22:18:35 ID:PxPsUaXV
シグナムVSヴァッシュ、この二人の決闘が意外なほど早く終わったのには驚いたけど素晴らしかった。
倒されたシグナムに対して非情になりきれないヴァッシュはやっぱ甘いんだろうけど、これこそヴァッシュだ。
こうやって悩みながら戦う姿こそヴァッシュ・ザ・スタンピードだよな。

しかしスーパーチートキャラであるナイブズが登場でどうなるかすげえドキドキする。
他のプラントがいない以上、融合できないから原作より強くなることはないだろうけど、それが無くても卑怯なくらい強いからな。

まあ、総じてGJ!! 次回に大期待です。

412 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 22:22:14 ID:WPojtOLi
リリカル氏はどじっこさんだなぁ支援

413 :赫炎のクラナガン ◆CPytksUTvk :2008/06/27(金) 22:22:23 ID:1mOBrB30
そろそろ時間ですので投下開始します。
出来れば支援をお願いします。






 夢を見る。
 それはとても怖い夢だ。
 世界が終わった。
 都市が終わった夢。
 黒い巨人。
 都市を砕き、犯し、破壊する巨人の咆哮。未だに幻聴に残る悲鳴のような声。
 壊れ行く世界。
 そう、それは自分にとっての世界の終わりだった。
 十年間。
 そう、思い出すことも難しい十年間を過ごしたあの都市の崩壊。
 異形都市インガノックの終末――

 そこで僕は、全てを失った。



 赫炎のクラナガン
  第一章 狂気は蔦のように根を伸ばし



414 :赫炎のクラナガン ◆CPytksUTvk :2008/06/27(金) 22:23:22 ID:1mOBrB30
 空は薄暗い。
 けれど、雨は降っていない。
 薄暗い天気の下で、彼は眼を覚ます。

「朝、か」

 空を見上げる。
 ボロボロのコンクリートの廃墟の中、毛布に包まれた体を起こす青年――ギー。
 体は僅かに痛む――硬い床を褥にしていたせいだ。
 体が冷たい――いつものことだ。
 静けさが満ちる――騒がしいほうが珍しい。

「……寝ぼけているのか?」

 浅い眠りを常とするギーは僅かに不明瞭な自分の思考に疑いを抱く。
 けれど、彼は少しだけ考えて、不意に思考を切り止めた。
 ポスンと彼の胸元に飛び込んでくるものが居たからだ。

「ナァー」

 真っ黒い塊。
 小さな動物。愛くるしいというべきだろう金色の眼を右眼に、薄い藍色の瞳を左眼に浮かべた黒い毛色の動物。
 黒猫。名前はないただの黒猫。
 ギーがこの廃墟を風雨から逃れるための宿にした時から、何故か現れた黒い猫。
 どこか、自分が失ってしまった人によく似た気まぐれな猫。
 懐いてくるときもあるし、不意に冷たくしてくる時もある。
 気まぐれな、猫の性だろうか。
 そして、今日は懐いてくる日のようだった。

「済まないが、餌は無いんだ」

 胸元に飛び込んできた黒猫を撫でながら、ギーは淡々と告げる。
 彼には黒猫を養うような金はないし、それどころか食料もあまりなかった。
 彼がここに来てから口にするのは治療した浮浪者から貰った非常食らしい湿気ったクラッカーと、不法投棄されていたらしい期限切れのインスタントコーヒー程度。
 食欲はないからさほど気にしていないが、傍目から見ればいずれ栄養失調で倒れることなど目に見えているような状態だった。

「ナァー」

 そんな彼を心配しているのか、それとも餌をくれないのが不満なのか。
 黒猫は鳴き声を上げる。
 テシテシとギーの胸を猫の肉球が叩いた。

「しょうがないな……」

 今日の巡回ルートを思い出し、丁度昼頃になら街へと出る用事があることを思い出す。
 懐には丁度猫缶の一つぐらいは買えるだけの小銭があった。
 ギーは少しだけ息を吐いて、今日の帰りに猫缶を買うことを決めた。

「少しだけ待っていてくれ」

 ゆっくりと猫の頭を撫でてギーはそう告げると、黒猫は嬉しそうにナァーと鳴いた。


415 :赫炎のクラナガン ◆CPytksUTvk :2008/06/27(金) 22:24:45 ID:1mOBrB30
 

 魔導師という言葉がある。
 魔法という言葉がある。
 魔導師とは魔法を使えるものを指し示す言葉だった。

「なぁ、リイン。魔法ってなんやと思う?」

「はい?」

 JS事件も終わり、数ヶ月ほど経ったある日の機動六課のオフィス。
 そこで一人の女性が、プラプラとペンを回しながら天井を見上げていた。

「いきなりなんです、はやてちゃん?」

 その言葉に、宙を舞いながら一生懸命ファイル整理をしていた小人の如き少女が振り返る。
 機動六課の制服に身を包んだ

「んー、ちょっとなぁ。偶にだけど、思ってことがあるんや。魔法って本当にあるんかなーって」

「ほえ? 魔法ならリインたちが普段から使ってるじゃないですかー」

 何を今更とリインが首を捻るが、はやては苦笑して言葉を続ける。

「んー、リインには昔話したことがなかったかな? うちらの世界、地球ではな。魔法って存在しないものだと思われてたんや」

 魔法。
 それは古めかしい御伽噺や神話の中でしか存在しない概念。

「けど、私がシグナムたちと出会って、なのはちゃんたちと出会って、私は魔法を知った。けどな、それって本当に魔法なんかな?」

「ほえ?」

「私が昔信じていた魔法ってのはな、もっとこう綺麗で、突拍子の無い幻想だったんや」

 地球に伝わる魔法にはリンカーコアなんて存在しない。
 呪文を唱えて、ちちんぷいぷいとなんでも生み出す奇跡。

「そもそもわたし達の使う魔法って半ば科学技術やろ? 原理も仕組みもわかってる」

 幽霊の正体、枯れ尾花とはよくいったものだ。
 どんなに夢見ていたものでも、正体を知ればなあんだと感じる。
 幻想は壊れれば、現実になるのだ。
 開拓が進んだ故に妖精も、神話も、謎も消え失せたように。

「それって本当に魔法なのかなーって思ったんや」

「むー、はやてちゃんが言っていることはリインにはちょっと分からないですー」

「まあそれもそうやろうね。なのはちゃんなら分かるやろうけど、あんまり共感はしてくれそうにないなー」

 クルクルと回していたペンを止めて、はやてが嘆息を吐いた。
 イヤだイヤだと心の中で愚痴を呟く。
 かつては華麗な魔法少女だった自分も立派に19歳。
 もはや魔法少女じゃなくて、魔女である。いや、魔女だと語呂が悪いから、魔法使いと名乗るべきだろう。

「まったく、本当に世界はこんなはずじゃなかったことばかりや」

 誰かの言葉を引用しつつ、はやてはそう締めくくった。

416 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 22:24:47 ID:0kDXQdFC
右手を支援

417 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 22:25:49 ID:0uPMMzVX
支援

418 :赫炎のクラナガン ◆CPytksUTvk :2008/06/27(金) 22:26:15 ID:1mOBrB30
「むー、どうしたんですはやてちゃん? 暑気当たりですかー?」

「夏はそろそろ終わりやで」

 時期はもう9月から10月へと移り変わろうとしている時期である。

「リインも突っ込みに遠慮なくなったなー」

「ふふん。リインは日々成長してるですよ!」

 ぺったんこな胸を張って告げるリインに、はやては内心ハンッと笑った。
 ある部位が貧相な女性は豊かな女性以上に己よりも薄い人間を嘲笑うものなのだ。

「むー。なんか嫌な視線を感じるです」

「なんのことやろねー?」

「ところで、いきなり言い出したのはやっぱり“あの件”が原因ですのー?」

 リインが唇に指を当てて告げると、はやては「そうやね」と少しだけ唇を歪めて答えた。

「あの件での視察は中々刺激的やったわー。なんというかあれぞ、魔法って感じやったもん」

「――“法術杖”って言いましたっけ? ストレージデバイスっぽかったですけど、凄かったですー」

「そやね。私らの魔法と比べると地味やけど、まったく違うもんを扱ってるから当たり前かな?」

 はやてが思い出しているのはつい数日前に本局の指示でロストロギアの回収に出向く際に協力を仰いだある研究グループとの出会いだった。
 機動六課に出向する嵌めになったある管理世界。
 それは既存の管理世界とはまったく異なる物理法則を持った世界であり、そこへの移動するために必要だったのは魔法という名の科学技術ではなく“魔法という幻想”だった。
 管理局が基本として掲げる魔法の形態としてミッド式と近年加わった近代ベルカ式の二種類があるが、その一方としてまったく異なる面から魔法へのアプローチを掛けるグループがいる。
 科学的現象による森羅万象を操作する魔法ではなく、知的生命体の意思や感情により変化を遂げる魔法の一面に注目し、
フィジカルよりもメンタルによる世界への影響を与える方法を模索していた。
 管理局としては予算を割り振ってはいるものの、さほど公になっていないために正式な名称は付いていないが、簡易的に“観念魔法”と呼ばれている。
 その考えや概念に、元は読書少女であり、多少はロマンチストな面を残していたはやては影響を受けていたのだ。

「まあそれは置いといて、ちょっと思うことがあってなー」

 そう告げて、はやてが机の脇に置いておいた新聞を取り出す。
 データベースでの管理が主流になっているとはいえ、未だに紙での新聞は流通しており、部隊を預かる人間としては主だった週間雑誌や新聞などは購読していた。
 そして、はやてが取り出したのはその中でもゴシップ性が強い新聞の一面だった。

「ほえ? えーと、『新種の伝染病か? 体から蔦を生やして、死んだ男――』 ええ、これってなんです?」

 そこに書かれていた記事によると、ある家族が連絡の途絶えた親戚の様子を見に行くと、その親戚がベットの上で絶命していた。
 死亡していた親戚の顔は恐怖に怯えた顔であり、まるで息が出来ないかのように喉元を掻き毟り、舌を突き出した見るに耐えない状態だったという。
 家族は直ちに管理局の治安部に通報したものの、やってきたのは厳重な防護服に身を包んだ部隊であり、うろたえる家族たちも防護服の男たちに連れ去られた。
 偶々近くに居た住人は「隔離する」や、「落ち着いてください。貴方達が安全かどうかの調査を」 などという言葉が聞きとれたらしく、何らかの伝染病の可能性が高いらしい。
 そして、これが最大の謎なのだが、防護服の男たちに運ばれていく絶命した男に被せられたシーツからは緑色の蔦が見えたと言われている。
 しかし、不気味なことに蔦が見えたという者とそんなのはなかったと告げる者に分かれており、それが不気味さをより深めている――

「怖いですー。けど、これって単なるゴシップじゃぁ」

「……それやったらいいんやけどな」

 はやてが笑う。
 まるでそれが夢だと告げるように。

「ついさっきな連絡があったんや。未確認のロストロギア――それも危険度Aランク以上が、ミッドチルダに混入した可能性があるってな」

419 :赫炎のクラナガン ◆CPytksUTvk :2008/06/27(金) 22:27:32 ID:1mOBrB30
 



 一人の男が叫んでいた。
 緑だ。
 夢だ。
 緑だ。
 これは悪夢だ。
 こんなはずが無い。
 こんな現実があるわけがない。
 一人の男が現実を否定するかのように叫んでいた。

「ァアァアアアアアアア!!!」

 全身から“蔦”を生やした男が叫んでいた。
 不可思議なことに皮膚を突き破ることがなく、まるで透過でもしたかのように蔦が全身から生えている。
 まるで植物と同化したかのような不可思議な情景。
 上半身の服を引き千切り、半裸となった男は己の自室――高層ビルの一室のロビーで泣き叫んでいた。

「ひや、ぁぁ、ぁああ!」

 男が全身を掻き毟っている。
 巻きつく蔦を引き千切るかのように手を伸ばし、爪を立てるも、その蔦は男の手をすり抜けるだけで、触れない、千切れない。
 ただ千切れるのは男の皮膚であり、剥がれた爪だけだった。
 血が零れる、痛みに男が呻く、けれど男の手は止まらない。
 恐怖に怯えていた。
 死への恐怖が、段々黒ずんでいき、動かない手足に怯えていた。

「これはなんだ、ぁぁ、ぁぁ……」

 男が叫ぶ。
 だが、段々とその手の動きが鈍くなっていく。
 爪が剥がれ、手を血まみれになったのが原因か? 否。
 痛みに悶え、まるでペンキを塗りたくったような状態が原因か? 否。
 それは男の血肉を拘束する蔦による停滞。
 首が絞まる、手が絞まる、脚が締まる、全身が絡め取られていく。
 緩やかで恐ろしい死のビジョン。
 全身が貪られていくような錯覚、否、絶望。

「ひいァアア、ァア、ァアア!?!」

 男の咆哮が高まる。
 絶望を打ち消すのは狂気だとでも言わんばかりに。

420 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 22:28:08 ID:PPlv0Kal
ギーの仇敵、ブラッドツリーキタ━━(゚∀゚)━━( ゚∀)━━(  ゚)━━(  )━━(  )━━(゚  )━━(∀゚ )━━(゚∀゚)━━━ !!!!

421 :赫炎のクラナガン ◆CPytksUTvk :2008/06/27(金) 22:28:21 ID:1mOBrB30
 その叫び声に、他の一室に住んでいる住人が「うるせえぞ!」 「近所迷惑だ!」 と抗議の声を上げるが、叫ぶ男の耳には届かない。
 ギチギチと絞まっていく首に、舌を突き出して悶えた。
 イヤだイヤだと叫びながら、体を振り回すけれど、全身が千切れていくようだった。
 血まみれになった皮膚が蠢いて、脳まで掻き乱されるような感覚に襲われて。

「ァァアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 この日、最大の叫び声を上げて、男が走り出す。
 窓へと向かって、彼は走った。
 空へと向かって、窓ガラスを叩き割り、飛び出した。


 薄暗い空へと一人の男が落下していった。


 最初は誰も気付かなかった。
 ただガラスの割れる音がして、湿った音が響いてただけだった。
 マンションの眼下は地面だった。
 そこにあったのは血、骨、肉、そして無数の蔦。
 ばらけた人間の部品。
 しかし、それは数秒と経たずに蠢いた。
 辛うじて原型の残る手の部品、その肌が膨らむように蠢いて――そこから黒ずんだ蔦が生えた。
 ワラワラと赤い花壇に咲き誇るように蔦が生えだして、無数の血肉の部品を飲む込むように地面へとその尖端を突き刺して――消えた。
 赤い大地だけが残って、蔦は消えた。
 まるで生きているかのように、蔦は消えたのだ。


 そして、数分後。


 そこは悲鳴が埋め尽くす場所となった。




 【41の死】がある。

 【41の大災厄】がある。

 しかし、それはここでは通用しない。

 この地は幻想を知らない。

 【美しきもの】の存在が囁かれることはない。

 ただそれでも彼は手を伸ばすのだろう。

 明日、死する存在であろうとも。

 夢すら見ない乾いた世界であろうとも。


 この世界の空は青いから。


422 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 22:28:30 ID:0uPMMzVX
支援

423 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 22:29:09 ID:0kDXQdFC
ブラッドツリーは間接的に怖いよ支援

424 :赫炎のクラナガン ◆CPytksUTvk :2008/06/27(金) 22:29:52 ID:1mOBrB30
投下完了です。
支援ありがとうございました。
一応この話のモチーフとしてはメルヘンを目指しております。
次回はもう少し長めですが、近日中に投下出来ると思います。

ご拝読ありがとうございました。


425 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 22:31:26 ID:0kDXQdFC
GJ
クラナガンも徐々に狂っていくんですね、楽しみですw
それにしても猫が物哀しい。物哀しすぎる……

426 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 22:33:34 ID:PPlv0Kal
>法術杖

おもちゃ箱ですね、わかります。わからいでか。
このアイテムが今後の西欧人の血と同じく、何らかの鍵になることを期待しています
しかし、ブラッドツリーのせいで絶望がはびこったら、ケルカン暴れそうだなぁ……
奇械なくても、いくらでもクラッキングで攻撃可能だし

ああ、それにしてもアティかわいいよ、アティ

427 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/27(金) 23:25:44 ID:REctxD7S
喝采せよ! 喝采せよ!

おお、おお、素晴らしきかな!
盲目の生贄は第1の階段を昇るのだ!

>“観念魔法”“知的生命”
“あの”力ですね。わかります。


428 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/28(土) 00:22:46 ID:ix7b6HI1
都市崩壊後ってことはキーアは出ないのかな?
しかしクリッター相手はヤバイな、あいつら咆哮だけで普通の人間動けなくなるぞ
ブラッド・ツリーの破壊方法は全身の同時圧壊だっけか、しかし超硬いから人じゃ不可能なんだっけ

429 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/28(土) 01:58:27 ID:mwSRvhEz
そーいや少し前、ユーアリすずメインで管理局アンチもの出したいという話を聞いたけど、
結局どうなったんだ?

430 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/28(土) 02:01:17 ID:5YzFKce1
>>424
GJです!マイナー作品とのクロスが一番楽しみな私。
赫炎のインガノックか。とりあえず欝でペド疑惑の医者が主人公で
スタンド使いが蔓延る世界としか知らないがwww
ただライアーソフト自体は結構歴史あるから知ってますぜ。
しかし希望もへったくれもないこの世界で6課はナニを思うのだろーか。




431 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/28(土) 08:42:34 ID:2oDj5O7X
確かナイブズがヴァッシュを本気で殺す覚悟を決めたのって原作でも最後の方だったよね?
他の人間はともかくヴァッシュを殺そうとはしないんじゃないだろうか?
あー、でもヴァッシュは全力で守る為に戦うだろうから、必然的にヴァッシュVSナイブズになるかな。

432 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/28(土) 08:43:32 ID:rFuWcfOv
>リリカル×リリカル
へへ、分かってるんだよ。世界は違っても二人の心は繋がってますって描写だろ? フラグなんだろ? 分かってるんだ!(ぉ
原作は知らないんですけど、クロノとなのはという組み合わせにはときめかずにはいられませんw
設定とかは知らない方が面白い場合もあるんですけど、こういうキャラの組み合わせって隠された意味がありそうで、やっぱり原作のリリカルなのは見といた方がいいのかな? って思いますね。
きっと知ってたらより悶えられるんだろなぁ。
前回の戦闘の余韻のようなワンシーンでしたね。これからなのはがどう立ち直っていくのか、クロノの干渉によってその過程がどうなっていくのか、楽しみですw

>リリカルTRIGUN
シグナム、お前はこれからただのガンマンの前にひれ伏す――。
本当にそうなったー! いや、見事に前衛と後衛で組めてるから逆にシグナムの勝率の方が低いとも思ってましたけど、さすがヴァッシュ、一対一でも完封しましたね。
もちろん、この結果は得物の特性というのもあるでしょうね。
近接武器みたいに接戦というものがなく、当たれば瞬時に強力な結果を出す銃弾だからこそ為し得たことで。これで一発でも外してたら、結果は違ってたんだろうなぁ。
っつか、無印ラストの時点のヴァッシュなわけだから、何気にこれって初の対剣士戦ですね。ブレードに向けた台詞をシグナムに言ってて、シグナムの暴走フラグかと焦ったww
あと、やっぱり最後までヴァッシュのキャラを貫いてるなぁと思いました。
同じ無血の勝利を望むクロノだからこそ、少し不安がる程度ですが、元の星ではウルフウッドがその危うさを随分指摘してましたからね。
それでもヴァッシュにとって他人の想いをへし折る勝利は心地良いものではない。苦悩が良く表れています。
そして……まあ、これほど登場して嬉しくない味方もそうはいないわけですがww
ナイブズきちゃいましたね。とりあえず、対峙するキャラ全ての死亡フラグ立つような不安はやめていただきたいw
当時はまだヴァッシュにはフレンドリーだったと思いますが、果たしてどんな行動を取るのか全く予想できない意思を持った核爆弾ナイブズの動きに期待と不安大です。

あと、最近さるさん喰らうことが多いですね。リアルタイムで支援できない身が歯痒いです。

>赫炎のクラナガン
こういう心霊的な現象って、魔法といっても科学の延長のようなリリなのでは脅威となるものなんでしょうね。
はやての台詞が、なんだか意味深げな複線のような気がしてならないです。
元ネタ知りませんが、内容的にホラー風味?
戦闘するとしたら、ジョジョのスタンド攻撃みたいに条件と結果で発動するタイプになるでしょうか?
となると、純粋な戦闘力ではなく知恵と勇気が必要ですなw
まだまだ展開の先が見えないので、これからどうなるか気になります。

433 :LB ◆iLSEHSvrCw :2008/06/28(土) 11:31:28 ID:SDLdZZRh
乙でした。
さて、誰もいない内に、こっそり10スレぶりの投下を……
時間も量も長くなりましたが、12:30頃からと予定しております。

434 :LB ◆iLSEHSvrCw :2008/06/28(土) 12:30:10 ID:SDLdZZRh
「――え?」

 視界の隅に入ったものが、信じられなかった。
 信じられなくて、動きが止まった。
 動きを止めて、はっきりと見た。

「……そんな……」

 漸く、状況を理解し始めた。
 出来ることなら、理解したくもなかった。




        第一章 遥か遠いところから
         〜Encounter in night〜




「ま、待って下さい!」

 すっかり暗くなった帰路の最中、突然後ろから呼び掛けられた。
 さっきの街中ならまだしも、自分がいるここは今、人通りが全くといってない。
 とすれば、呼ばれたのは自分自身。怪訝に思いつつ、茶髪の少女――高町なのはは体ごと振り返り、

「――え?」

 目を見開いた。
 視界にまず入った色は、青と白、そして金。
 先程戦った赤い瞳の少女や、最近話しかけてくれなくなった親友とも違う、後ろで一房にまとめた金髪。髪をとめるのは、大きめの青いリボン。
 青と白を基調とした服に、大きな青い瞳。人形のように整った顔と、白過ぎるくらい白い肌。
 全く面識のない、おそらく自分と同い年くらいの女の子。自分はともかく、今は目の前の少女が出歩く時間ではない。
 目の前まで走って来た少女に、早速用件を聞いてみる。

「あの……何か?」
「え、ええっと……ここは、どこなんですか?」

 一瞬、言葉に詰まる。

「どこって、海鳴市ですけど……」
「う、うみなりし……ですか?」
「は、はい」

 律儀に答えたものの、逆に少女は首を傾げる。
 まさかと思い、恐る恐る聞いてみる。

「……もしかして、迷子ですか?」
「その……はい、です」

 ものの見事に当たってしまい、気まずい沈黙がその場に降りた。
 当然、迷子の応対は初めてである。どうすればいいのか、まるでわからない。
 かといって、放っておくつもりなど毛頭ない。『困っている人がいて、助けてあげられる力が自分にあるなら、その時は迷っちゃいけない』……父親の教え通りだ。
 まずは自分一人で、出来そうなことを思案する。
 周りをみれば、自分達以外に誰もいない。少女はおそらく、迷子になったところで自分を見かけ、そのまま追いかけて来たのだろう。

 ……どうしよう。

 電柱に取り付けられた、蛍光灯の明かりを頼りに、なのはは腕時計を見ながら考え込んだ。

435 :LB ◆iLSEHSvrCw :2008/06/28(土) 12:30:36 ID:SDLdZZRh
 ただでさえ、先程起こったジュエルシードの事件で帰りが遅れているのだ。これ以上家族に心配をかけさせるわけにもいかない。

(なんだか、妙なことになっちゃったね)

 困惑するなか、肩に乗ったまま様子をうかがっていたフェレット――ユーノから念話が入る。

(どうしよう、ユーノくん)

 ここは、すぐ傍の相談できる相手――例えばこの場合、フェレットの意見を聞いてみる。

(落ち着いて、なのは。場所を聞いてきたから、今度は道順を聞きにくるはずだよ)
(あ、そっか)

 確かにその通りだ。ここがどこだかわからないようだが、それでも「目的地へ行くにはどうすればいいか」をちゃんと聞いてくるはずだ。

(何だか言い出しにくいみたいだし、こっちから聞いてみようよ)
(うん)

 そうと決まれば、後は行動あるのみだ。相手がこちらに質問できるように、こっちから促せばいいのだから。

「あの、わたしも忙しいので、言いたいことがあるなら、ちゃんと言ってくれませんか?」
「え、あ……は、はいです! ……あ、あの!」
「な、なんですか?」

 問いに対し、真剣そのもので詰め寄ってきた少女の勢いに圧され、少し怯む。それでも、ある程度の質問には対応できるだろうと考えていた。

 ――それが、迂闊だった。

「さっき、街中で何してたんですか?」
「え……?」

 咄嗟に、言葉に詰まる。
 頭の中で必死に言い訳を考えようとして、

「ですから……あんなところで魔法を使って、何してたんですか?」



436 :LB ◆iLSEHSvrCw :2008/06/28(土) 12:33:06 ID:SDLdZZRh
        *


「ん……」

 何故か重い瞼を、ゆっくりとこじ開ける。
 視界に映るのは、暗い天井を背景にして、こちらを覗き込む人……

「アルフ?」

 唯一頼りになる、自分の使い魔。

 ……ここは……

 気がついたかいフェイト、と顔を綻ばせるアルフをよそに起き上がり、周りを見渡す。
 マンションの部屋。ソファの上。後ろを見れば、ソファの端に深く腰掛けているアルフ。
 気絶した後でアルフに連れて帰ってもらい、ソファで膝枕されていたようだ。

 ……何で、気絶したんだっけ?

 思考がぼやけている。頭を掌に置き、両目を閉じ、自分の記憶を掘り返す。

 ……確か……

 ジュエルシードの捕獲に向かって、封印に成功して、あの娘と戦って、ジュエルシードの様子がおかしいから急いで回収に向かって、自分とあの娘のデバイスがぶつかって、それから……
 ――思い出した。

「アルフ……ジュエルシードは?」

 目を開き、使い魔に向き直って、淡々と問う。なんとなく結果がわかっているから、思い出してもなお、冷静でいられた。
 使い魔の笑い面が一瞬で凍りつき、反転して沈痛な面持ちで、
 首を、横に振った。

「フェイトの手から離れて、空へのぼっていって……そのままどこかへ消えちまった。多分、別の世界に行ったんだと思う」
「……そう」

 ジュエルシードの暴走を、止められなかった。その上別の世界に転移したとなれば、探すのも容易ではない。
 意気消沈した二人は揃って顔を俯かせ、

「――あの」

 聞き慣れない声が、聞こえた。

「え?」

 顔をあげ、暗闇に映る白と銀に、目を見開く。
 簡素な黒いテーブルの向こうに、見知らぬ少年が立ち尽くしている。
 うなじのところで一房に纏めた銀髪に、意思の強そうな銀の瞳。中性的かつ端正な顔のせいか、その瞳がない限り、あたかも等身大の人形と錯覚してしまいそうだ。
 着ているシャツとスラックスも、銀に近い白一色。腰の白いベルトには、鞘におさまった二本の剣が差してある。
 その腕には、何故か救急箱を抱えていて――

「あ、ああ。ありがと」

 慌ててアルフがその救急箱を受け取る。自分が気絶している間に、色々あったらしい。

「アルフ、この人は?」
「うん、まずはそのことなんだけどね。……手当てしながらだけど、いいかい?」
「え? 手当てって……」


437 :LB ◆iLSEHSvrCw :2008/06/28(土) 12:33:39 ID:SDLdZZRh
 言いかけて、フェイトはやっと右手の痛みに気付き、僅かに顔をしかめた。

「大丈夫かい? それじゃ、ちょっと我慢してねフェイト」
「あ、うん」

 こちらの曖昧な応答を合図に、アルフの治療が始められる。

 ……そういえば、素手で封印しようとしてたっけ……

 右手を見つめてぼんやりしていると、ふと少年と目が合う。
 そういえば、この人はさっきから立ち尽くしたままだ。

「えっと……とりあえず、座ってください」
「あ、どうも」

 相手は明らかに年下なのに、何故か敬語を使う少年。その姿に、少しだけ緊張が緩んだ。

 ……悪い人じゃ、ない。

「そんなにかしこまらなくてもいいですよ。……それじゃあアルフ、聞かせてくれるかな」
「うん」


         *


「ホントに、泊まってもいいんですか?」
「大丈夫。お母さんから、ちゃんと許可をもらったから」

 全く人のいない夜道を、少女二人の足音が響き渡る。


 少女の出した想定外の質問に、最初はパニックに陥りかけた。
 しかし、なのはを介していくつか質問をしていくうち、少女が次元漂流者であると判明。詳しい事情を聞くため、高町家へ連れていくこととなった。
 早速携帯で親へ連絡し、『親が忙しいからいつも一人ぼっちの、新しい友達』という形で泊めることになった。うまくやれば、二泊三泊と続けられそうだ。
 そんなわけで、今にいたる。


 ……よかった……

 思ったより早くことが運んで、ユーノは少し安堵した。
 多少戸惑ってはいるものの、少女の対応は適切だ。なのはと同様、歳に似合わずしっかり者らしい。

「えっと、それでね……家に着くまでに、言っておかなきやいけないことなんだけど……」

 言い淀みながら話すなのはに、横を歩く少女は「なんですか?」と首を傾げる。
 これからなのはが話す事は、事前に念話で相談済みだ。ユーノ自身のことは、もう少し落ち着いてから説明することになっている。

「家族のみんなには、わたしが魔法を使える事は……」
「え……もしかして」
「うん。秘密」
「は、はいです」

 神妙に頷く、金髪の少女。
 先程、こっそり魔力を調べてみたが、この世界の一般人同様、からっきしであった。
 魔法は知っているようだが、魔導士ではないらしい。
 自分がフェレット形態で、尚且つ一切少女に喋っていない以上、道中でばれる心配もないだろう。


438 :LB ◆iLSEHSvrCw :2008/06/28(土) 12:36:45 ID:SDLdZZRh
「そういえば、どうして薮から棒にあんなこと聞いてきたの?」

 次は少女の発言について、なのはが問う。他にも色々聞くべき事はあっただろうに、何故よりによってあんな質問をしたのか。

「それは……えと、いろいろ理由はあるんですけど……やっぱり、気になって」
「にゃはは、そうなんだ」

 返ってきたのは、照れたような小さい笑顔と、単純な理由。なのはもつられて笑顔をこぼしている。

「あの……ここが、わたしの住んでいたところとは違う、別の世界だって言ってましたよね?」

 表情を一転させ、今度は少女が問いを発する。

「うん。どうするかは、これから決める事だから」
「は、はいです……」

 どこか暗い面持ちで頷く少女に、なのはが眉を寄せる。
 無理もないか、と、ユーノは思った。
 知らない場所に知らない人、そこに知らない世界とくれば、少女が不安がるのはむしろ当然だ。
 次元漂流者と聞いて少女があまり動揺しなかったのは、まだ実感が沸かないためか。

「――あ、そうだ」

 唐突に、なのはが思い出したように目を丸くした。

「そういえば、まだ名前を言ってなかったね」
「あ……そういえば、そうですね」

 少女も丸い目を更に丸くして、なのはと顔を見合わせる。
 一瞬の沈黙の後、二人の顔に笑みが戻る。
 少女の不安によって生み出されたぎこちない空気は、あっという間に掻き消えた。

「それじゃあ、わたしから」

 そうして、自己紹介は始まる。


「わたし、なのは。高町なのは」
「えっと、セレスティ・E・クラインです。セラ、って呼んでくれれば」
「うん。よろしくね、セラちゃん」
「こちらこそよろしくです、なのはさん」



439 :LB ◆iLSEHSvrCw :2008/06/28(土) 12:41:05 ID:SDLdZZRh
         *


 ――マンションに着いた時に、その少年は後ろから声をかけてきた。
 最初はあの少女の仲間かと思ったのだが、いきなり「ここはどこなのか」とか、「武器は持っているが、戦闘の意思はない」と言い出してきた。
 意外な展開に拍子抜けするも、少年の様子からしてただ事ではない。言動からして次元漂流者の可能性だってある。
 関わるべきじゃないとは思うのだが、自分達が寝泊まりしているマンションは既に目の前だから、撒きようがない。
 次元漂流者だとしたら、その原因に心辺りはあるし、ついでにいうなら自分達の責任にもなる。
 どうにも無下にできないこの状況に悩んだ末、


「……やむを得ずここに連れて来た、ってこと?」
「う、うん……駄目だったかい?」

 一旦包帯を巻くのを止め、アルフは主人の様子をうかがう。
 目の前に座る主人は、首を横に振る。

「ううん、アルフは悪くないよ。それより今は、この人から話を聞くべきだと思う」
「まあ……そうなんだろうけどさ……」

 行動を再開しつつ、アルフは心の中で溜め息をついた。

 ……だから連れてきたくなかったんだよね……

 『あの人』の手伝いをしているときの無表情は、あくまで自制をきかせた仮面にすぎない。
 なんだかんだいって、自分の主人は根が優しいのだ。もしも困っている人が目の前に現れれば、だいたいこんな展開になるだろうと予想はついていた。
 そんなところが不満なわけではない。むしろ主のいいところでもあるのだから。
 問題は、別にある。

 ……よりにもよって、こんな時に……

 明日はちょうど、『あの人』に手伝いの報告へ向かう日。
 ジュエルシード三個を捕獲したことはいい結果だが、この少年は間違いなくマイナス要因だ。今後の行動にも支障が出る可能性だって充分有り得る。
 このことを報告すれば、主人が何をされるかわかったものではない。というか、自分の主人はその事をちゃんと考えているのだろうか。

 ……やっぱり、無理にでも突き放した方がよかったかな……?

 自分の判断にいまいち納得がいかないのだが、今更考えたってどうしようもない。
 すぐそばの主人にも気付かれないよう、こっそりと溜め息を吐き、

「えっと……いくつか、聞いてもいいかな?」
「え?」

 突然口を開いた少年にアルフは我にかえり、自分の主たる少女が声をあげる。

「は、はい。どうぞ」


440 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2008/06/28(土) 12:55:56 ID:gUPpgOnA
ウィザブレ久しぶり  しえん

441 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2008/06/28(土) 12:59:02 ID:gUPpgOnA
……規制かな しえん

442 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/28(土) 13:03:39 ID:n2yTvSl7
>>441
規制みたいですね。
これより代理投下を開始します。

443 :LB 代理:2008/06/28(土) 13:04:20 ID:gUPpgOnA
 慌てて返事を返す主に、「じゃあ早速」と、少年は質問を述べる。

「次元漂流者、っていうのは?」
「ええと、簡単に説明すると……何らかの事情で、全く別の世界から強制的に転移された人のこと、なんですけど……」
「そう……」

 主の説明に曖昧な返事をすると、少年は考え込むように俯く。
 暫くして納得したように頷き、すぐに顔を上げた。

「じゃあ、僕はその『次元漂流者』ってことになるんだね?」
「え……それじゃあ」
「多分、間違いないよ。僕が元いた世界とは、環境が違い過ぎるからね」

 おかしいとは思ってたんだ、と話す少年の様子に、アルフは浮かんだ疑問をそのまま口にした。

「随分、落ち着いてるねえ」
「うーん……まだ、実感が沸かないからかな?」

 言われてみれば、そうかもしれない。
 いきなり知らない場所に来て、「ここはあなたの住んでいた場所とは違う、別の世界です」と言われれば、世間一般の人はどんな反応をするのか。
 少年の場合は、おそらく半信半疑なのだろう。

444 :LB 代理投下:2008/06/28(土) 13:04:26 ID:n2yTvSl7
 慌てて返事を返す主に、「じゃあ早速」と、少年は質問を述べる。

「次元漂流者、っていうのは?」
「ええと、簡単に説明すると……何らかの事情で、全く別の世界から強制的に転移された人のこと、なんですけど……」
「そう……」

 主の説明に曖昧な返事をすると、少年は考え込むように俯く。
 暫くして納得したように頷き、すぐに顔を上げた。

「じゃあ、僕はその『次元漂流者』ってことになるんだね?」
「え……それじゃあ」
「多分、間違いないよ。僕が元いた世界とは、環境が違い過ぎるからね」

 おかしいとは思ってたんだ、と話す少年の様子に、アルフは浮かんだ疑問をそのまま口にした。

「随分、落ち着いてるねえ」
「うーん……まだ、実感が沸かないからかな?」

 言われてみれば、そうかもしれない。
 いきなり知らない場所に来て、「ここはあなたの住んでいた場所とは違う、別の世界です」と言われれば、世間一般の人はどんな反応をするのか。
 少年の場合は、おそらく半信半疑なのだろう。

「じゃあ次に……今日、何日だっけ?」
「は?」
「いや、僕が元いた世界とは、時間が全然違うみたいだから」

 少年はそういって、上に目を向ける。
 視線の先には、壁に掛かったアナログ時計が二十時を指している。

「この世界に来る前は、夜中の一時過ぎだったんだけど……」

 何日だったか忘れちゃったんだよね、と苦笑する少年。
 どうでもいい質問かと思ったが、それなら仕方ない。

「そ、そうなんだ。えっと、確か……」

 上を向き、少しだけ間を置いて、主は答えた。

「――四月の、二十六日だけど」
「……そう」

 今度は俯かずにはっきりと、少年は返す。

「質問は、それで全部かい?」

 こちらの確認に少年は「うん」と頷き、

「じゃあそろそろ、こっちの質問を聞かせてもらえるかな……えっと、その……」

 主人が急に言い淀むのを訝しんだ少年は、すぐに「ああ」と呟き、

「そういえば、お互いに名前、言ってなかったよね」
「え、あ……は、はい」

 少し遅れた、自己紹介が始まった。


「僕はディー。よろしく」
「……フェイト・テスタロッサ。この子は使い魔のアルフ」
「……よろしく」

445 :LB 代理投下:2008/06/28(土) 13:04:46 ID:n2yTvSl7
         *


 天文学的確率で発生し、最初にその力を見いだした者から『天才』と称された、遠距離戦闘タイプの魔法使い。
 高町なのはと、セレスティ・E・クライン。

 高い資質と才能を持ち合わせた『出来損ないの人形』。
 規格外の圧倒的戦闘能力を持つ『出来損ないの兵器』。
 高速接近戦型の魔法使い。
 フェイト・テスタロッサと、デュアルNo.33。


 二つの出会いは、偶然が重なっただけの、小さな波紋。

 本当に、小さな、波紋。

446 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2008/06/28(土) 13:05:28 ID:gUPpgOnA
代理かぶったww よろしくお願いします。

447 :LB 代理:2008/06/28(土) 13:13:18 ID:gUPpgOnA
LB ◆iLSEHSvrCw:2008/06/28(土) 13:05:44 ID:cAA9n0hk
投下完了。

前章はワープオンリー、今章はカラミオンリーです。
世界観や状況把握etcはこれからです。
強引な展開が続くかと思いますが、何卒宜しくお願い致します。

……他に何も言えません、すみませんorz

448 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/06/28(土) 13:26:10 ID:0rAhAcum
GJ! 似たもの同士の絡みが面白いですね。

えーと、ちょっとリリカル殺生丸に関する報告です。
本日、第11話および12話のサブタイトル「空色の誓い」を「空色の約束」に変更させていただきました。
何を隠そうこのタイトル、スバルのキャラソン「空色の約束」にちなんでつけたものだったのですが、
つい昨日まで「約束」ではなく「誓い」と誤認しており……や、ホント申し訳ありません。スバルスキー失格だよチクショウorz
そんなわけで、わざわざこの場でコテ付きで言うことでもなかったかもしれませんが、
混乱を招かないようにと、ここで報告させていただきました。お目汚し失礼します。

449 :リリカル! 夢境学園 ◆CPytksUTvk :2008/06/28(土) 18:29:27 ID:dIJiQHbC
LB氏、GJです。
ウィザーズブレインは殆ど読んだことがないんですが、独特な雰囲気ですね。
次回も楽しみです。

と、それはともかく。
19時30分から【赫炎のクラナガン】 第二話を投下したいと思います。
よろしくお願いします。

450 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/28(土) 18:34:26 ID:eULC09iq
<<毎日新聞、海外向け自社サイトにて1999年から2008年に渡りヘンタイ記事を掲載>>

<<謝罪後ヘンタイ記事を再び掲載、2chに指摘され光の速さで記事を消す>>

<<一日20万アクセスを誇るサイト(毎日談)、映画バベルの女子高生のモデルもこの記事からか?>>
<<現在もヘンタイ記事の悪を認めず(英語ではそういうニュアンスのことを主張)>>

<<記者はダッチワイフを抱え笑顔で外国人記者クラブでアニマル浜口ばりに激しく講演>>

http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1214638948/
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1214630364/
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1214630364/
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1214528483/l100
http://pc11.2ch.net/test/read.cgi/streaming/1214375128/l100

451 :赫炎のクラナガン ◆CPytksUTvk :2008/06/28(土) 19:32:44 ID:dIJiQHbC
時間ですのでそろそろ投下開始します。
容量は16KB。
支援をお願いします。
それと所注意 『観念魔法』→『法術』に名称を変更しました。
Wiki登録時には変更しますので、ご迷惑をおかけしてすみません。





 世界は夢など見ない。

 世界は奇跡など抱かない。

 何故なら、世界に住まう命そのものが幻想であり、奇跡なのだから。



 赫炎のクラナガン
  第一章 狂気は蔦のように根を伸ばし





452 :赫炎のクラナガン ◆CPytksUTvk :2008/06/28(土) 19:33:58 ID:dIJiQHbC
 

 この世界に神への信奉は無い。
 細々と失われた故人への信奉と敬愛のみが存在していた。
 けれど、それも少数派。
 大多数の人間は神へと祈るということすらも知らない。
 身近に魔法という奇跡があるが故なのか。
 それとも誰かに頼らぬほど強い心を持っているのか。
 理由は分からない。
 もしかしたら、神は居たのかもしれない。
 けれど、遥か昔に惨殺されて、それに人々は失望したのかもしれない。
 ある異形都市の住人が絶望の涙を流しながら、過去を忘れていったように。
 絶望は深く根を張り、希望という名の水分を奪うのだ。
 そして、咲き誇るのは狂気という名の花だった。

「喝采せよ! 喝采せよ!」

 狂気に歪んだ声が響く。

「今成る時を記憶せよ!」

 誰かが叫んでいる。
 ナニカが叫んでいる。
 それは狂人たち。
 それは異形たち。
 それは亡霊たち。
 晴れぬ空の下で、無数の影が踊っていた。

「これこそが我らが愛の終焉なり!!」

 まるで黒ずんだ血のような樹肌。
 全身に浮かび上がる“ゼンマイ”のような模様。
 狂おしく禍々しい異形の植物。
 その樹を信奉に、祈りの言葉を上げていた。

 数秒後に自分達が殺されることを知りながら。

 血まみれの雨をもって、祝福を伝える。



453 :赫炎のクラナガン ◆CPytksUTvk :2008/06/28(土) 19:37:52 ID:dIJiQHbC
 ――空は未だ晴れる気はないらしい。

 雨はまだ降らないが、湿った生暖かい風が頬を撫でる。
 夏の終わりかけだが、まだ寒いというわけでもなく、ただ空気が生温い。
 どんよりとした天気に、普通は気分が滅入るだろう。
 けれど、クラナガンの道角を歩くギーにはさほど関係なかった。
 彼の心は元々震えることなど少ないほうであり、彼は曇った空には慣れていた。
 否。むしろ晴れた空に違和感を覚えるほど。
 十年にも及ぶ晴れぬ空の異形都市の生活は、ギーの心に未だに残り続ける。
 瞬きをすれば直ぐにでも夢は覚め、また明日死するであろう人々に手を伸ばし続ける日々があるのではないのかとも疑う。
 しかし、未だに夢は覚めない。
 ならば、生きるしかないだろう。
 そう、ギーは決めていた。
 この地にも彼が救うべき人々はいるのだから……

 カラン。

「っ」

 不意に金属音。
 鼓膜を刺激する音に意識を戻したギーが見たのは手に持っていたビニール袋――その中に入った猫缶がガードレールにぶつかって、跳ねた光景だった。
 カチンという耳障りな音に、ギーは手元を握り直す。
 彼がクラナガンに居る理由は一つ、治療のためだった。
 酔狂な金持ちがどこからか聞きつけたのか、ギーに治療を頼んできたのだ。
 彼は何時ものように治療を終わらせ、驚きに眼を見開いた依頼者から多少の報酬を貰って、彼はペットショップで猫缶を買っていた。
 店員からは不審そうな目つきで見られたものの、ギーは気にする事無く買い物を済ませ、帰り道を辿る。
 クラナガンの雑踏を歩く人々は奇妙な外套を着たギーに少しだけ目を向けるが、すぐに目を離し、少しだけ距離を取る。
 かかわりたくないものには人は目を逸らす。
 目と耳を塞げば、心だけは護れるから。
 それが人の性だった。
 どんなに姿かたちは変わり果てても、変わらないのは人の心のみ。
 かつて居た場所と違い、キチンと人の形をした人間ばかりの街を眺めながらギーは歩いていた。
 街角を曲がり、信号を渡り、未だに覚え切れていないクラナガンと廃棄都市へのルートを思い出しながら歩く。
 そして、彼がある住宅街を通り過ぎようとしていた時だった。

「飛び降りだぁあああ!」

 騒がしい声が聞こえる。
 振り返れば、付近にあるマンション、その一角に人が集まっていた。
 自殺者でも出たのだろうか?
 ギーは微かに眉を潜めて、何気なくそちらへと目を向けた。
 見えるのは人々の切れ間から見える地面。零れた命の欠片である血の色。

 “黒い蔦”。

 地面より伸びた無数の黒ずんだ血のような樹肌を見せる異形が見えた。

454 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/28(土) 19:37:59 ID:goAQamyN
パートボイスなのは演出だからです
決してお金がないからじゃありません支援

455 :赫炎のクラナガン ◆CPytksUTvk :2008/06/28(土) 19:39:07 ID:dIJiQHbC
 
「!?」

 野次馬たちの切れ間、そこから見えた忌まわしき映像。
 見覚えがありすぎる形状。

 ――誰も気付いていない。

 ――ギーだけが見えていた。

 ――それは現実なのかそれとも幻想なのか。

 いずれにしても、ギーは眉を潜める。

「あれは、まさか……」

 それは純粋なる死。
 現象そのものを現す存在だった。







 其処は隔離された世界だった。
 時空の狭間に浮かぶ時空管理局本局。
 その特別隔離室――強装結界を応用し、幾重にも世界から隔離された空間。
 数十にも及ぶ合金で覆われた円形の壁には隙間一つ無く、あらゆる術式に由来する呪言が刻まれていた。
 ミッド式、ベルカ式、そのほかあらゆる管理世界での“閉鎖”を意味する呪いが施された其処は例えSランクの魔導師が暴れようとも傷一つ付けることが出来ずに果てる牢獄。
 そこに一つの死体が置かれていた。
 死者の尊厳を冒涜するかのように、無数の光の輪で拘束された死体。
 バインド。
 手には触れる事無く、拘束する魔法を掛けられた死体は窒息死を思わせる苦悶の表情で舌を突き出して、絶命していた。


456 :赫炎のクラナガン ◆CPytksUTvk :2008/06/28(土) 19:39:42 ID:dIJiQHbC
「あれやの?」

 その様子を、結界に織り交ぜた投射魔法によるモニターで見つめていた少女――八神 はやてが嫌そうな顔を浮かべて呟く。
 副官として一緒にやってきていたリインも嫌悪が隠せない表情だった。
 数日前、危険度Aランク以上のロストロギアの流出があったという情報が入ってきたと噂をしていた時。
 管理局本局から召集命令があったのだ。
 一室には地上本部のつい最近レジアスに代わる責任者や本局でもかなり立場の高い高官たちが集まっており、怪訝な顔でモニターを見つめている。

「あれがなんだというのだ?」

「単なる死体だろう」

「緊急事態だと聞いていたのだが……」

 高官たちが騒ぎ出すが、モニターを操作していた一人の男が振り向いたと共にそれはピタリと止まった。

「皆様、集まってもらったのは他でもありません」

 白衣を着た技術者がどことなく緊迫した面持ちで口を開いた。

「本日お知らせしたいのはミッドチルダにおける重大なバイオハザード(生物災害)の可能性です」

「なん、だと?」

 その言葉に高官たちがざわめき、はやてとリインが顔を見合わせた。
 バイオハザード。
 聞きなれない言葉、否、慣れてはいけないだろう単語。
 生物災害を意味する言葉は、その災害の名の通り甚大な被害を齎すことが分かっていた。

「いえ、正確にはイマジンハザード(概念災害)というべきかもしれませんね」

「どういうことだ?」

「これを見てください」

 技術者が機器を操作し、隔離室の中の死体へと画面が拡大される。
 そこに映っているのは先ほどと変わらないおぞましい死体が、拘束された姿。
 これの何が? とはやてが疑問に思うと、それを悟ったかのように技術者がコンソールを叩いて告げる。

「アストラルシフトに移行しろ」

 僅かに画面が歪み、その次の瞬間画面に映し出された光景にその場に居た殆どの人間が絶句した。
 死体など見えなかった。
 ただそこにあったのは――蔦だった。
 幾数、幾十、数百本にも及ぶ蔦の集合体。
 黒ずんだ血のように黒く、まるで手を伸ばすかのように蠢いて、室内を這いずり回るおぞましい化け物。
 まさしく異形だった。
 見るだけで恐怖に戦き、腰を抜かし、泣き叫びたくなるような常軌を逸した光景だった。

「な、ななんだこれは!?」

「これが皆様をお呼びした原因です」

 震える声を上げる高官に、技術者は冷静な――否、冷静さを取り繕った言葉で告げる。
 それは悪夢だった。
 夜闇への恐怖を無くすことが出来ないように、人はそれを本能的に恐れる。
 安全だとわかってはいてもどこかで影が囁くのだ。

 あれは死そのものなのだと。

457 :赫炎のクラナガン ◆CPytksUTvk :2008/06/28(土) 19:40:53 ID:dIJiQHbC
「この植物――いや、仮の定義名ですが“未確認幻想存在1号”はミッドチルダで発見されたことは既に伝わっていると思います」

 担ぎこまれた死体。
 それはクラナガンの一軒屋で見つかった死体だった。
 通報があったのがたった3日前。
 死亡した男は妻と別居中の男であり、数週間前から家族からの連絡が途絶えていたのを、心配した両親が発見したものだった。
 そこで通報された内容が「息子が全身から蔦を生やしていて死んでいる」 という言葉だった。
 何らかの寄生植物の可能性があり、防護服に身を包んだ地上の特殊部隊が直ちに確保し、“その異常性から本局に隔離された”。

「幻想存在?」

 聞きなれない名称に高官の一人が疑問の言葉を投げかけた。

「変な名前ですー」

「こら、リイン」

 相槌を打つように呟いたリインに、はやては慌ててその口を塞ぎ。

「……そうですね。説明を忘れていました」

 技術者はうっかりとばかりに手の平を叩いた。

「これは極めて稀な例なのですが、今皆さんが目にしている存在――未確認幻想存在一号は厳密には現実ではなく、“幻想”です」

「――幻想、だと?」

「ええ。具体的にいえば目で見えて、触れる幻覚だとでも思ってください。半分は物理存在ですが、もう片方は幻覚そのもの――つまり在って、居ない幽霊のようなものです」

「在って居ないって、私たち全員が見えているようだが?」

「それは本局の法術研究者のハーヴェイ氏が協力してくれたお陰です。今あの隔離世界の中は物質世界ではなく、思念の影響が受けやすい空間――“アストラルシフト”に移行しています。まあ、“幻覚を肯定出来うる夢の世界”だとでも思っていてください」

 よく分かるような分からないような技術者の説明にその場の全員が戸惑ったような表情を浮かべるが、次に技術者が発した言葉に戸惑いが吹き飛んだ。

「そして、これが一番重要なのですが、おそらく――否、確実に未確認幻想存在1号と同種の存在はミッドチルダに存在しています」

「っ、なんだと!?」

「現在把握しているこの存在でさえ、増殖の結果取り付いた分身体の可能性があります」

 技術者は淡々と告げた。

458 :赫炎のクラナガン ◆CPytksUTvk :2008/06/28(土) 19:44:01 ID:dIJiQHbC
 そして、その恐るべき事態に全員が呆然としていた最中、不意にはやてが口を開いた。

「それで、私らはどうすればええの?」

「そうだ! どうすれば防げる!」

「……幸い宿主が生存中は活動を控えているため、発見次第隔離するしかありません」

「隔離、だと?」

「ええ。というよりも、“隔離”するしか方法がないというべきでしょうか」

「どういうことや?」

 はやての疑問に技術者はただコンソールを叩く音によって答える。

「結界起動、想定ランクAAA――焼却」

 技術者が短く告げて、エンターキーを押した次の瞬間だった。
 業火が映像を埋め尽くした。
 隔離室の内部を、接続された魔力炉から供給され、壁面に織り交ぜられた術式と機械制御によるプログラムに従い魔法が発現する。
 AAAランク以上の火炎。
 それは鉄をも焼き尽くし、岩をも溶かす極炎。
 赤よりも眩しい白の光が映像を埋め尽くして――

「っ!?」

 次の瞬間、その焔は呑まれた。
 その身を焼き尽くさんと覆う業火に焼かれることもなく、黒い蔦はのたうち回り、まったく変わらぬ姿で蠢いていた。

「馬鹿な。あの炎で焼かれないだと!?」

「そう、この存在はほぼ一切の物理現象を受け付けません」

 淡々と技術者が告げ、その内容にはやては思わず口を挟んだ。

「それって魔法でもか?」

「ええ。この隔離室は非常事態に対応するために大型の魔力炉と直結しています。処分のためにSランクオーバーの魔法を内部に発生させることが出来るのですが、それらは通用しません。他にも氷結を、魔力弾を、砲撃を、振動破砕まで試しましたがまったく通用しませんでした」

「嘘やろ?」

「人では倒せない――まさしく幻想ですね」

 詩でも語るように技術者は告げるが、その内容にはやては青ざめ、リインは口ごもり、高官たちは血相を変えた。
 顔を見合わせて、発生するであろう危機に語りだす。


459 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/28(土) 19:45:00 ID:goAQamyN
ブラッドツリーの本当の怖さは倒せないことじゃなくて、■■すること支援

460 :赫炎のクラナガン ◆CPytksUTvk :2008/06/28(土) 19:46:40 ID:dIJiQHbC
「なんということだ」

「それでは対処方法がないではないか」

「隔離しても永久に閉じ込めるわけにも行くまい」

「ええ。一応現在のところ、この隔離室が突破されるようなことはありませんが、永久に隔離させ続けることは現実問題として不可能です」

 そう告げて、技術者は指を三本立てた。

「これに対抗する方法は三つです。一つは転移魔法を改良した虚数空間へのゲートを作成し、その中に“生存中の宿主”を放棄すること」

「なっ!?」

「生きている人間を放り込めというのか?」

「まだデータが足りませんからね。下手に殺して防げるかどうかの保障はありません。宿主は例外なく原型も残らない方法で処分すべきでしょう」

 さらりと告げる技術者の目には慈悲は無い。
 当たり前だ。
 彼らは物を作るだけ、技術を生み出すだけで、その結果には頓着しない。
 ただ求められる技術を作り出すだけだ。

「二つ目は先ほどのアストラルシフトを用いて、固定化すること」

「なに?」

「先ほどの焼却時は必要最低限度にしか固定化しておらず、故に物質界の現象などでは影響を与えられない状態でした」

「なっ、それならば破壊は可能なのか!?」

「一定の手段であれば。ただし、危険性を伴います。物質化するということは、ただでさえ不安定な存在なのに、こちらの物質への与える影響を固定化するということ」

 技術者は見つめる。
 おぞましい異形を見つめて、少しだけ震えた声を紡ぎ出す。

「悪夢が現実になるということです。本来ならばまだ現実へと足りえない幽霊のような存在なのにも関わらず、これらは人を殺し、今は隔離室の中で蠢きまわる」

 淡々と語りながら、技術者はコンソールを叩いた。
 画面の端に浮かんでいた青いゲージが少しずつ上昇し、同時に彼の手がまるで演奏するかのように走り回る。

「我々は魔法を使います。けれど、わたし達の魔法は幻想ではなく――科学」

 画面の中の蔦が蠢く。
 グネグネと蠢いて、まるで踊るように動き回り――1つの形を作り出した
 それは螺子。
 表面にゼンマイの模様を浮かばせた黒い蔦の塊。

『RYOOOOOOOOOOOOOOOO!!!』

 それが吼えた。
 魂すらも凍えさせるような、音すらも数十にも渡るフィルターに削られて、安全な防護策を取られているというのに。
 何人もの人間が跪いた。


461 :赫炎のクラナガン ◆CPytksUTvk :2008/06/28(土) 19:47:34 ID:dIJiQHbC
「なっ」

 激しい頭痛に見舞われる。
 されど、それはまだ優しい。
 心は打ち砕かれず、ただ震え、怯えるだけで済むだけのボイスなのだから。
 発狂はしない――直視していないから。
 大脳はまだ無事だ――直接聞いたわけではないから。
 ただその威容に心が怯えただけだ。

「皆さんは覚悟がありますか?」

 技術者は震えた手足でコンソールを叩く。

「この悪夢と直接相対する勇気が」

 映像が歪んだ。
 その異形を囲む空間がねじれて、歪んで、まるで水の波紋を広げたように歪み――

「この化け物を打ち倒す力が!」

 空間圧縮。
 Sランクオーバーにして、人では決して使いきれない膨大な魔力による破壊。
 それは超高質量で叩き潰されたかのような結果を齎す。
 防御は関係ない。
 映像の中の異形が砕かれていく。
 バラバラと、おぞましく悲鳴を上げながら、壊れていく。

「超高質量による全身の同時圧壊――それがこれに対抗する二つ目の手段の正解です」

 血にも似た破片を撒き散らしながら、砕け散っていく画面の中の異形。
 宿主であった死体すらも原型を残さずに破砕しながら、技術者は振り向く。


「そして、三つ目の方法は――」




462 :赫炎のクラナガン ◆CPytksUTvk :2008/06/28(土) 19:48:17 ID:dIJiQHbC
 廃棄都市の一角。
 そこで三人の子供達が遊んでいた。

「治ったねー」

「よかったー」

「よかったー」

 子供たちは無邪気に古ぼけたボールを投げあい、お祝いに隠し持っていた飴玉を舐めていた。
 コロコロと頬を膨らませて、嬉しげに遊んでいた。
 彼らの笑顔は未だに晴れない曇り空よりも明るくて、まるで太陽のようだった。

「ほーらよっと」

「あ」

 元気のいい少年の投擲は少し強すぎて、ボロボロの服の少女が手を伸ばすもその遥か上を通り過ぎて――転々と瓦礫の奥に飛んでいってしまった。

「なにしてるんだよー」

「悪い悪い」

 口元まで布を巻いた少しだけ厚着の少年が非難すると、元気の良い少年は苦笑を浮かべた。

「アタシ取ってくるねー」

「あ、ボクが」

「病み上がりでしょー、平気平気ー」

 そういって少女が歩き出す。
 瓦礫の奥へ、路地裏のような狭いところにゆっくりと歩いていって。

「あった」

 ボールを見つけた。
 古ぼけた遊戯道具。
 彼らの少ない遊び道具。
 それを少女は拾い上げて――見つけてしまった。

「あれ?」

 それは路地裏のアスファルトを突き出して生えた“蔦”。
 黒ずんで、風も無いのに揺れた見たことも無い植物。



463 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/28(土) 19:49:04 ID:KP7CbVek
喝采せよ! 喝采せよ!

464 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/28(土) 19:50:00 ID:y9HBPF/P
支援

465 :赫炎のクラナガン 代理:2008/06/28(土) 19:52:35 ID:goAQamyN
「食べれるのかな?」

 見たことが無い植物を引き抜こうとして、少女は手を伸ばした。
 彼女の手が植物を掴んで、その次の瞬間――

「あれ?」

 掴んだはずの植物は彼女の目から消えていた。
 キョロキョロと周りを見るが、どこにもない。
 ただ掘り返されたアスファルトとむき出しになった地面があるだけだった。

「おーい! ボール見つかったかー!」

「あ、うーん! 見つかったよー」

 少女は見つけた植物のことを忘れて、トテトテと走り出す。
 大切な友達との遊びを再開するために。


 彼女は知らない。
 その植物――“ブラッドツリー”の名を。

 彼女は気付いていない。
 居なくなったはずの植物、その蔓が自分の足首から絡まり始めているということを。


 残酷な運命は彼女を誘い込もうとしていた――


466 :赫炎のクラナガン 代理:2008/06/28(土) 19:54:40 ID:goAQamyN
投下完了です。
最後1レスで規制掛かりました orz

今回からインガノックらしさが出てきたと思います。
幻想とは何か、ギーとは何者なのか、そして現れた謎の植物とは?
原作が知らない人でも、そして原作が知っている人ならニヤリと楽しめる構成で頑張っていきますのでよろしくお願いします。
あと最近更新が途絶えているアンリミテッド・エンドラインですが、現在話の構成上続けて更新していきたいので
数話ほど書き溜めています。
もう少しだけお待ち下さい。

では、支援とご拝読ありがとうございました。

467 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/28(土) 19:59:42 ID:KP7CbVek
GJ

ブラッドツリーは他のどの幻想より悪夢してると再認識
一度に殺さずジワジワ侵食していくトコとか人の心の弱さをつくトコとか
蔓延したら殺人者の活動も活発になるだろうしクラナガンヤバイw

468 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/28(土) 21:05:32 ID:sFCzq+UI
わくわく

469 :リリカル×リリカル ◆.k7TdiLwT2 :2008/06/28(土) 21:45:51 ID:goAQamyN
嘘屋信者の俺参上。いや嘘だが。
というわけでありますが、私も少々2230に予約をば

470 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/28(土) 21:46:10 ID:y17U3g7y
僕はきみにこう言おう
――GJ

管理局がインガノックで最も恐れられた災害に接触しましたな。
“あの法律”のフラグが微妙に立った気がします。

471 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/28(土) 21:58:25 ID:eRVObVsK
支援

472 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/28(土) 22:16:14 ID:l5nSv5s6
初支援といこうじゃないか

473 :リリカル×リリカル ◆.k7TdiLwT2 :2008/06/28(土) 22:31:35 ID:goAQamyN
それでは、投下します

474 :リリカル×リリカル ◆.k7TdiLwT2 :2008/06/28(土) 22:32:51 ID:goAQamyN
 味気ないシリアルも、共に食べる誰かがいればそう悪いものではない。どこか軽い足音に耳を傾けつつ、目を
刺す朝日の眩しさに目を細めながらクロノは朝食の光景を思い返していた。
 クロノが知る限り、フェイトが朝食を取るようになったのは、あの温泉へ行ってからだった。正確に言うなら、
クロノの有用さを理解してから、だろうか。それまでは夕方に出かけ、昼近くまで帰ってこないことがほとんど
だったが、こと探査においてはクロノがフェイト以上の能力を発揮すると理解してからは、交代で動くようにな
っていた。
 九歳の児童としては十分な休息とは言えないが、それでも今までよりは休むようになったと喜ぶアルフの姿は、
クロノの記憶に新しい。千路に乱れるクロノの思考も、その素直な陽の感情の前にはなす術もなく賛同していた。
 そうして、朝や夕方の僅かな交代の合間、奇妙な食事の光景が繰り広げられることになった。
 間違いなく、彼らは家族ではない。フェイトとアルフはそう呼べるほどの絆を築いているだろうが、どこまで
行ってもクロノは外様に過ぎない。海鳴温泉に行くまでは、数えるほどしか食事を共にすることはなかった。
 では今になって何故。それはやはり、フェイトに余裕ができたからだろう。クロノはそれほどまでに有能だ。
 フェイトが自分が休んでも構わない、いや、休んだほうが効率的にことが進むと論路的に結論付けたからこそ、
彼女は休息を受け入れた。さもなければ、自滅するまで邁進し続けたろう。

 悲しいことだろうか。
 仮にクロノが無能であれば、フェイトは破滅するまで止まらなかったに違いない。アルフも止め切れなかった
だろう。そこにクロノの人格は関係なく、能力だけで計算されている。

 だが、違う。少なくとも、クロノにとっては。
 自分が彼女の役に立っているという実感は、煩悶も忘れ、打ち込むには十分以上の理由だ。つかの間の安らぎ、
それを自ら縮めるに等しい愚行だと理解していても、クロノはジュエルシードの探索に打ち込んいた。
 クロノが担当する時間は、主に朝と昼。それに夕方から夜にかけて。効率としては、最も優れた朝を任されて
いることから、その能力への信頼が伺える。
 朝の有効性は言うまでもない。フェイトやクロノが出歩いても、誰かが見咎めることはない。夕方も、学校を
終えた児童ということで、街の中に自然と溶け込める。夜は……注意さえすれば、声をかけられることもない。
場合によっては、塾のや稽古の帰りとも言い訳はできる。
 問題は昼だった。学校も習い事などの言い訳は通用しない。警察はおろか、良識のある――鬱陶しいことだが
――大人がことあるごとに声をかけてくる。
 自然、効率のいい朝と夕方をそれぞれ分け合うようなシフトが出来上がっていた。今日はいささか早く目覚め
過ぎた感はあるものの、クロノが朝を担当する日だった。
 夢見の悪さは、フェイトたちと一緒に朝食を食べたことで消え失せていた。朝の清らかな空気を胸に吸えば、
否応なしにも集中力は増していく。
 人の目に付かないようにジュエルシードの探索する方法はたった一つだ。人の目の付かない所を見つけては、
その度に探査魔法を打ち込んでいく。デバイスもなしに高精度の探査を行えないのだから、その度に一苦労だ。
ビルの谷間、公園の木、コンビニのトイレ。そうして、探査の範囲を狭めていくのだ。人目を気にしないで済む
時間帯の方が効率がいいのは当然だ。
 その中の一つを任されているという充足感が、か細いクロノの体を突き動かしていた。疲れも知らないように
辺りに探査魔法を幾度も打ち込み、その度に精度を高めていく。
 もう幾度繰り返したろうか。少なくとも、片手を超える数だったことは間違いない。クロノが及ぶ精度と範囲、
それを考えれば、その結果がどれだけ有用かは語るまでもない。何一つ見つからなかったとしても、それ自体が
一つの結果なのだ。流石に完全に休眠状態のものはそうそう見つからないが、それは相手も同じこと。となれば、
人手が多いこちらのほうが――未だ脅威が消えたわけではない――有利なのは言うまでもなかった。
 とはいえ、それで気を落とさないで済むかと言われれば話は別だ。目に見えない結果は容易に人の心を削ぐ。


475 :リリカル×リリカル ◆.k7TdiLwT2 :2008/06/28(土) 22:33:37 ID:goAQamyN
 歩く、歩く、歩く。
 太陽が徐々にその高度を上げ、影が長くなり、人も増える。くたびれたスーツ姿の男性。かしましく話し合う
セーラー服の学生。洗濯もしないで土に汚れた服で職場へ向かう土方たち。
 その中にあって、クロノはそろそろ姿を隠すべきと理解しながらも、焦る心に従って急ぎ足で歩いていた。
 次の場所はどこか。人通りの絶える間隙を探して首をめぐらせながら、大通りを歩いていく。
 時にはS2Uの助力なしですら法術を行使し、ジュエルシードを探っていく。
 いつしか、夏めいた陽気のせいか、クロノの額には玉のような汗が滲み始めていた。ふと電光掲示板を見れば、
気温は接し三十度を超えていた。道理で熱いはずだと思いながら、その下の数字を見て、思わず苦笑する。
 時刻は既に十時はおろか、程なくして十一時に差し掛かろうといったところだった。ずいぶんと集中していた
らしい。この夏日の中、休憩らしい休憩も挟まず歩き通せば倒れてもおかしくない。
 いや、それを言うなら、そもそも子供が一人こんな時間に歩いていることを注意されてもおかしくない。
 幸運というべきか、不幸というべきか。とまれ、熱中症に掛からずに済んだ。あるいは、軽度で済んだのは
確かに幸運なのだろう。クロノは身分証名称すら持っていないのだから、官憲や病院は天敵だ。
 意識してしまえば、体の疲れは顕著だった。朝飲んだだけの水では足りぬのだろう。頭は重く、茹るような
熱気に骨まで解けてしまったかのように力が入らない。微かにする頭痛は脱水症状か。一度汗を拭ってしまえば、
後に続くものはなかった。

「ふ、う……」

 いざという時のためにアルフ――意外なことに、経済感覚はフェイトよりもアルフの方が優れているのだ――
から受け渡されたお金は幸いなことにほとんど手つかずだ。飲み物はおろか、どこか店で休むこともできる。
 そうして、クロノは辺りを見渡して。
 それがよくなかった。電光掲示板は、あくまで人の目に付くものだ。つまり、クロノは今メインストリートに
いた。それも駅の真正面。そんな中で足を止めてしまっては、人にぶつかるのも道理ではないか。

「う、わっ」

 背後から来た予期せぬ衝撃に、クロノは悲鳴を上げながら吹き飛ばされた。じりじりと照らす太陽に熱された
アスファルトに、突き出した腕が削られる。熱さと痛みの中間の感覚は、腕ではなく目の奥につんとした刺激を
与えてくる。
 涙を流すほどではない。しかし、目を僅かに潤ませながらクロノは呻いた。微かに揺れる揺れる視界の中では、
アスファルトが一面全てを覆っていた。蜃気楼はないが、しかし熱い。底から逃れるように首をもたげ、そこで
クロノはようやく、自分を突き飛ばした衝撃が何であったかを理解した。

「ご、ごめん、大丈夫だった!?」

 膝を突き、謝罪の言葉を重ねていたのは、どこをどうみても日本人には見えない、長い髪を結い上げた綺麗な
ブロンド――といっても、どこか目に優しい金色だ――の女性だった。
 狼狽しているのだろう。立ち上がるのに手を貸そうと差し伸べたり、気遣わしげに肩に手を伸ばそうとはして
いるが、その度にどうすればいいのか迷って、結局は手を所在無く動かしているに過ぎない。
 そこまで観察して、とりあえず痛みは引いていた。少なくとも、痛みに耐えかねて立てないほどではない。
 すっと息を吸ってから、誰の手を借りることもなくクロノは立ち上がった。胸や腿についた土を両手で、いや、
右手は血が流れていたので、残る左手だけで払う。歩いたり走っていたわけではないのから勢いもなく、大した
怪我は負っていない。問題があるとすれば、手のつき方が悪かったのか、右の袖が敗れてしまっていることか。
 目立つのを避けたいクロノとしては、頭が痛くなるところだった。
「本当にごめんなさい、私少し余所見をしてて。ああ、怪我まで……」

 その女性は本当に混乱していた。怪我に慣れていない、というのもあるのだろう。それが慣れない土地ならば
ひとしおだ。クロノとしては騒ぐほどの怪我だとは思っていないが、それを伝えなければ、誰にもわかりようが
ない。

476 :リリカル×リリカル ◆.k7TdiLwT2 :2008/06/28(土) 22:34:35 ID:goAQamyN
「いえ……大したこと、ありませんから」

 それじゃあ、と言って去ろうとする。注意を集めるのは御免だし、誰かと関わりあうような余裕もない。だっ
たのだが、そのクロノの腕を、背後の女性はそれまで躊躇っていたとは思えない速度で掴んでいた。

「いつっ!」

「あ、ごめんなさい」

 幸い怪我をしていたほうではなかったが、それでも打っていたことには変わりない。
 小さく悲鳴を上げたクロノに、女性は更にその顔色を悪くした。考えが纏まらないのか、目まぐるしく表情を
変え。しかしそれでもクロノの腕は放さない。
 そうして瞳に理解が戻った時には、女性は謝りつつも有無を言わさぬ強引さでクロノの腕を引っ張っていった。

「着いて来て。怪我の治療をしなくちゃっ」

 言って、クロノの返事も待たず歩き出す。やはりまだ少し慌てているようだ。何かを言っても、状況はあまり
変わりそうにない。嘆息して、クロノは逆らわずに着いていく。

「でも本当にごめんね。久しぶりに日本に来たからなんだか懐かしくて。傷は痛む? ごめんね?」

 迷いなく進む足取りは、少なくとも女性がその道を知っていることを教えていた。治療をすると言ったから、
行く先は病院だろうか。保険証も持たないクロノにとっては正直勘弁して欲しいのだが、何故だかしきりに謝る
女性を見ていると、逆に罪悪感が沸いてきて、結局クロノはその腕を振りほどけないでいた。
 道行く人には、二人が姉弟のように見えたに違いない。流石に親子ほど年は離れていないが、日本人離れした
外見の二人が歩いていれば、そう捉えるのがむしろ自然だ。
 注目を、集めていた。クロノは整った顔立ちこそしているが、それほど注意を引くような養子をしていない。
だが女性は違う。整った、どころかくっきりとした目鼻立ちは明眸皓歯と言ったところか。
 服の上からでもそれとわかるほど豊かな胸に細い腰。足はすらりと永く伸び、背筋をまっすぐ伸ばして歩いて
いる様は、モデルだと言われても信じよう。
 否応なしに、道行く人の関心を集めていた。
 尤も――クロノは胸中で嘆息した。それを言うなら、フェイトだって大したものだった。腕を引く女性と違う、
目を惹きつけるような鮮やかな金髪。澄んだ瞳。体躯こそ小さいが、だからこそ人形のような愛らしさが際立つ。
 それこそ子供のモデルと言われれるまでもなく。傍らにアルフが寄り添えば、道行く人の視線は今にも増して
注がれるだろう。
 そこまで考えて、ふとクロノは一つのことに思い当たった。思えば、誰かと一緒に外、特に街を歩いたことは、
ほとんどなかったな、と。
 奇妙な反感があった。
 力を込め、すっと握られた腕を抜き出そうとして――

「着いた。ここだよ」

 そしてそれはもう遅かった。
 そこは、喫茶店だった。オープンテラスも広げ、ランチタイムということもあって、店内はおろか、外までも
結構な賑わいを見せている。
 しかし、何故喫茶店。疑問とともに、クロノは「翠 MIDORI YA 屋」と書かれた、店の看板を見上げていた。


477 :リリカル×リリカル ◆.k7TdiLwT2 :2008/06/28(土) 22:36:58 ID:goAQamyN
以上です。
この女性が誰かは、次回判明します
いや、バレバレですが
原作からのファンの方には、ちまちまといろんなサービスを加えたいなと普段から思っています

478 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/28(土) 22:43:42 ID:U3ESnpMj
フィアッセktkr!?

479 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/28(土) 22:47:16 ID:sjc3hfs+
GJ!
おおあの人が!

480 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/28(土) 23:23:00 ID:cNSqJZDt
AS−30ルシファーが来たか、ついにwwww
GJ!

481 :リリカル×リリカル ◆.k7TdiLwT2 :2008/06/28(土) 23:30:47 ID:goAQamyN
皆そんなの反応しちゃってくれて……
バスト93がそんなに好きか!!(゚Д゚)

私は大好きです

482 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/28(土) 23:36:07 ID:eRVObVsK
GJ!!です。
巨乳か・・・巨乳!!
原作を知らない私は、聞いた話でなのはさんとなのちゃんが種族的に違うぐらいしか
わからねぇぜw

483 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/28(土) 23:37:45 ID:Db0VYwwF
おっぱい!おっぱい!

484 :ジェダイ:2008/06/29(日) 00:23:57 ID:F2WhOhAR
職人の皆さんGJです。

初めてクロスSSを書いたのですが投下よろしいですか?
クロス相手はスターウォーズエピソードYでジェダイに帰還したダース・ヴェイダーの姿のアナキンです。

485 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 00:31:12 ID:VP5P2ZSw
支援

486 :ジェダイ:2008/06/29(日) 00:34:51 ID:F2WhOhAR
魔法少女リリカルなのはStrikerS−選ばれしジェダイ騎士−

プロローグ


慌ただしく兵が脱出の為に行き交う銀河帝国要塞内。

それは、支配していて皇帝自身が暗黒面からジェダイとしてアナキン・スカイウォーカーに戻った弟子のダース・ヴェイダーにより反応炉に落とされて命を絶った。
宇宙、惑星での指揮系統が乱れたからであった。


しかし、いまわの際に皇帝から放たれた死の光をヴェイダーは浴び……生命維持装置を破壊され。

もはや、生きて地を踏むことは出来ない。

彼の息子、ルーク・スカイウォーカーは父を助けようと要塞内の港まで運びだし。小型の宇宙艇に乗せるべく父を降ろして声をかける。

「父さん、今からこれに乗って脱出しよう。」

ルークの言葉にヴェイダーは静かに首を振って答える。
「私はもう助からない……。お前だけで行け。」

不気味であった呼吸音は今のヴェイダーの命の灯のように掠れていた。
気を持っていなければ涙を流してしまいそうに胸が熱くなり、ルークは悲痛な声で父に話し掛ける。
「駄目だよ、父さんを置いていけやしない……。」

「ルーク……頼みがある。マスクを外してくれないか……?」
父の口から出た言葉に「何を馬鹿なことを。」とルークは思い、悲憤な声で反対する。
「そんな……父さん、それじゃあ死んじゃうよ!」
「死ぬ前に……息子の姿を。ダース・ヴェイダーとしてでは無く、アナキン・スカイウォーカーの眼に焼き付けさせてくれ……。」

力のない声にルークは父がもう長くないと悟りたくないのに悟ってしまう。
震える手で父のヘルメットを、マスクを外し……ルークは父の素顔を見る。
かつての兄のような存在であり、師であったオビワンとの闘いでおった火傷で髪や眉すら生えなくなった父の素顔。
だが、なんとも優しい笑顔をしていた。




487 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 00:37:36 ID:5cz3izAE
支援!
スターウォーズとは凄いところを衝いて来ましたね
フォースの導きがあらんことを

488 :ジェダイ:2008/06/29(日) 00:38:27 ID:F2WhOhAR
「フフ、昔の私よりもハンサムだな……ルーク。」
ルークの頬を残った左手で撫で、ヴェイダーは語りかける。
「もう、思い残すことは……ない。」
「嫌だ、父さんを助ける!」

消して曲げない息子の優しさにヴェイダーは笑顔を絶やさずに「いいや……。」と否定する。
「すでに助けてくれた……お前の勝ちだ。お前が正しかった。
娘に伝えてくれ……あいしていた……と。
ぐ……」

頬を撫でていた手から力が抜け、するりと落ちてしまい。
旅立ったのだと感悟し……ルークは眼から涙が溢れながら父の穏やかな顔を見て理解した。

選ばれた者……アナキン・スカイウォーカー、ジェダイに帰還した。と


そして、父・アナキンを乗せ。
宇宙艇で大切な妹や友人達が待っている惑星へと降り立ち。
ルークは悲哀に包まれながらも枯木で組んだ寝台に漆黒の甲冑に身を包んだアナキンを乗せ。

別れの火を点ける。

「父さん……」

哀しみの気持ちのまま、火に包まれる父親をルークは眺めていた。

(っ、父さんの……フォース!?)

だが、突然。アナキンからフォースが辺りを吹きすさぶ。
火を巻き上げ始め……ルークは視界を遮られてしまう。
次第にフォースの波は穏やかになり、途切れた。
ゆっくりと瞼を開けた瞬間、ルークは驚く。

「父さん!?」
燃える火だけを遺して、アナキン・スカイウォーカーが居なかったのであった。
辺りを見回すが父の身体やフォースも感知出来ない。
(父さん、どこへ……?)
空を見上げ、語りかけるが虚しくも返事は帰ってこない。


しかし、アナキン・スカイウォーカーは消えたのではない……。
新たな世界に呼び寄せられたのであった。




489 :ジェダイ:2008/06/29(日) 00:43:33 ID:F2WhOhAR
静寂を保つ夜空が広がっている世界。
この地に古き造りで荘厳さを思わせる大きな教会があった。
そのなかにある中央教堂で一人の女性が希少技能を使用し、紙の束から一枚一枚光を発し、古紙が女性の周りを囲むようにして回りだしていた。


希少技能『プロフェーティン・シュリフテン』
最短で半年、最長で数年先の未来、それを詩文形式で書き出した預言書の作成を行うことができる力。

女性は周っている紙の中から一枚に書き出されたとある未来を見て、それを取り出す。
『遠い古 はるかかなたの銀河に暗黒世界をもたらした者と、その暗黒に光をもたらし。世界を救った騎士が現れる。』

「…………選ばれし者。」
その預言はそれから後……新歴0071年4月に一致する。



第162観測指定世界

今この世界において次元航行艦・アースラからかつて「PT事件」、「闇の書事件」をはじめ。
いくつかの事件、出会いを経験した時空管理局の魔導師達が遺跡発掘先から発見されたロストロギアを確保するために転送してきた。


その同じタイミング。魔導師達が目指す発掘先に突風が巻き起こる。

「なんだ……つむじ風か?」
しかし、それはただの風ではなかった。

砂が風により巻き上げられ、そこで作業をしていた発掘員達の視界を砂埃が遮る。
そして……風が止んだ瞬間。不気味な呼吸音が響き渡る。
遺跡に音の波が反響し、呼吸音は鮮明に耳に伝わっていく。
その呼吸音を発する何かがすぐ傍にいることを理解し、確かめるべく彼らが閉じていた瞼を開けたとき。

舞いっていた砂埃の中を漆黒のマントを翻し、漆黒の甲冑に身を包んだ大男が立っていた。
よく見れば右手が手首から切り落とされたのかそこに無く。切断面からコードのようなものが見える。
「っ!?」
「誰……だ。」




490 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 00:44:59 ID:VP5P2ZSw
支援、フォース首絞めの強さは銀河一さッ!!


491 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 00:45:15 ID:yvL0IH50
支援

492 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 00:47:25 ID:VP5P2ZSw
ダーンダダダァンダダダァンダーダダァン・・・支援w

493 :ジェダイ:2008/06/29(日) 00:49:08 ID:F2WhOhAR
男は辺りを見回していた……。
そして、呼吸音が止んだ瞬間。辺り一帯をカプセル型の機械兵器が多数姿を現し、青空を埋め尽くしだす。

「あ……ああ……っ!」
「ウソ……何!?」
連続に起きる突然に発掘員は混乱してしまう。
そして、機械兵器の群れはこの場に居る者が邪魔。と言うかのように大男や発掘員に飛び掛かる。

「「っ!?」」

「近くの障害物から離れるな……。」
低い男性の声が彼らにかけられたその時。
大男は静かに左手を掲げていた。
発掘員へと襲い掛かってきた機械兵器に向けて大男が左手に力を篭めて握り締める。
すると音を立てて機械兵器は空き缶が握り潰されたかのように大きく凹み……壊れた。

呼吸音を発し、静かに大男は空に浮かび自分達を見下ろす機械兵器を見据える。





〔〔現場確認、機械兵器らしき未確認体と黒の魔導師が抗戦しています!〕〕

〔〔ん!〕〕

北部の定置観測基地から到着した三人の魔導師達は発掘先のこの場所にいた大男を見て、ただの人ではないと悟る。

〔〔フェイトちゃん!救助は私が回る!〕〕
〔〔私はその魔導師とで遊撃する!はやてとリインは上から指揮をお願い!〕〕
〔〔了解!〕〕


その魔導師達のイメージをフォースで感じ取り、大男はブラスター射撃で迎撃してくる機械兵器に左手を向けて再び握り締めながら……囁く。
「救助は彼女達に任せよう……。さあ、どぎつい交渉を始めるか。」

自分は死んだはずだ。という考えを今は捨て。
ダース・ヴェイダー(アナキン・スカイウォーカー)はフォースグリップを使って眼の前のカプセルを握り潰す。

ジェダイに帰還した男は再び、闘いに身を投じていく。




494 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 00:49:53 ID:JXb78TAH
まさかの卿来訪ww

495 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 00:50:39 ID:yvL0IH50
支援

496 :ジェダイ:2008/06/29(日) 00:53:30 ID:F2WhOhAR
以上です。

とりあえず、右手無しとライトセイバー無しの状態のダース・ヴェイダーですが中身はジェダイ騎士ですw
フォースを持ったまま来ましたが、彼ならはもう間違いを起こさないし大丈夫かなと思ってます。

497 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 00:56:38 ID:VP5P2ZSw
GJ!!です。
ベイダー卿が・・・こんなに嬉しい事はないw
スターウォーズ名物、敵から飛んでくるブラスターをライトセイバーで簡単に弾くを
リリカル世界に見せてあげてw



498 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 00:56:52 ID:wbJn8w7/
フォースはジェダイとシスじゃなきゃ対抗できねぇじゃんか
どうやって戦いを成立させるか楽しみwww

499 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 00:59:28 ID:JXb78TAH
GJです
右手とセイバーなしくらいのハンデがないとスカ涙目w
しかし来訪したのが暗黒面に堕ちた状態の卿でなくてよかったww

500 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 01:06:30 ID:5cz3izAE
GJでした
ライトセイバーは公式の言をそのまま鵜呑みにするならば
レヴァンティンすら斬りかねないからなぁ
確かライトセイバーはライトセイバーじゃないと受け止められないんだっけ?

501 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 01:13:07 ID:XqbhfU5F
GJ
これからに期待
だが…これはエピソード6が終わった後…だよなあ…?
アナキンすっかりオジサンやん…

502 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 01:20:27 ID:MQKlB/Jf
つかこれ版権問題は大丈夫なのか?

503 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 01:33:58 ID:y+tfB3mN
洋画関係は危険とか聞いたことがあるような

504 :名無しんぼ@お腹いっぱい:2008/06/29(日) 01:35:55 ID:O9wVd0Xk
既にプレデターがなかったっけ?

505 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 01:44:27 ID:ox45Cjz3
ベイダーならゼロ魔クロスでもあったから大丈夫だろ

506 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 01:45:50 ID:5U4I5WB/
国内のSWの版権は小学館プロダクションにあって、
小学館プロダクションは二次創作禁止の条文を掲げている。

最も、商品として出してるわけでないし、本来の版権はルーカス・フィルムにあるわけだから
どうなるのかは判らんが

507 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 02:03:18 ID:XqbhfU5F
今更版権と言われてもなあ
ゼロ魔クロスにも洋画関係は多数あるわけで

508 :ジェダイ:2008/06/29(日) 02:07:13 ID:F2WhOhAR
>>497-501

感想ありがとうございます。ライトセイバーや年齢のことに関してはおいおい明らかにしていきます。


また、合衆国著作権のことなんですが。おっしゃられたようにゼロ魔でもクロスがあったので自分はこのまま皆さんにかけられた期待に応えていこうと思います。

509 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 02:11:28 ID:xwz7JE1O
本場米国でも二次創作活動が活発だってのに極東の島国の匿名掲示板群の1スレに対してどうこう騒ぐか?
それこそよっぽど大規模な金銭的云々がなきゃ目を付けられんだろ常識的に考えて

510 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 02:16:05 ID:xwz7JE1O
大体版権てのは利益を得ようとか考えない限り問題ないんだよ法律的に考えて
たまに版権は大丈夫か版権は大丈夫かと無責任に騒ぐ奴居るけど気になるんだったら自分で調べろ

511 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 03:04:46 ID:LI7D16Mx
ネズミのほうじゃない限りはそうそう問題は無いと思うよ。

512 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 03:25:46 ID:QZgvIoZH
ネズミでもこんなとこいちいち監視しないよ……

513 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 03:29:04 ID:bsAzji/f
いや、わからんぞ。ネズミなら


514 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 03:40:38 ID:tcze/eWe
ネズミならありうる

515 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 04:32:41 ID:Ab6upUMu
ネズミはなあ…小学校の卒業記念制作の絵を消させるくらいだからなあ

「あらかじめ申請してくれれば許可した」とか言ってるみたいだけどなあ…

516 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 05:15:34 ID:xwz7JE1O
ネズミは駄目だ
法的に権限が無くともごり押ししそうだから駄目だメルヘン的に考えて

517 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 06:16:52 ID:QG/11W6h
そういえば、ジェダイやシスがブラスターをはじけるのは、
ブラスターの弾より速く動いているのではなく、フォースの導きによる予知だったか。
なのは世界ではあの未来予知はかなりのレアスキルかな?

518 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 06:32:13 ID:QAuTPlvJ
レアスキルどころじゃなくね?
あんな正確な予知。 まさしく魔法、だよ

519 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 08:36:41 ID:J5YJyif5
メイザフォース、ビーウィズユー!

520 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 09:23:38 ID:fhte7RmJ
May the Force be with you!

521 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 09:37:33 ID:6ZU8Whqf
フォースの加護があらんことを・・・

だっけ

522 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 09:41:00 ID:sWOrf7/j
ひゃっほう! アナキン卿だ! ぼくらのアナキン卿が帰ってきた!
ライトセイバーはやっぱ後半パワーアップイベントでも起こして
装備してほしいなぁ。ジェダイといったらセイバーですよ。

フォースは色々できるからなー。予知、軽業、超跳躍、テレキネシス。
フォースそのものを武器に使うのはライトサイドじゃご法度だったかなぁ。
でもエピソード2でヨーダがやってたような。
ああ、説得というか相手を惑わすとかもできたっけ。正に魔法。
次楽しみにしてます。あ、トリップつけたほうがいいですよ。


523 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 10:39:14 ID:IyYPZZq1
>>521
フォースと共に在れ

という訳も

524 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 10:58:28 ID:SxLJ6pQO
版権て言いますと大体ネズミ、ドラえモンや小学館関係のものはいざやると感想の前に
版権〜の話が始まって削除されるんですよねえ

525 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 11:03:17 ID:V6iJ3oyV
実は魚介類家族も版権は厳しいんだぞ?
まぁクロスさせようとする人は皆無だと思うが。

526 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 11:18:33 ID:cyJqrnQU
>>523
五月四日に来ます、という誤訳があったというのはマジなんだろうか。

527 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 11:20:04 ID:xazkqKVi
>>526
スペルちゃうがなww


ウロス行こうか。な。

528 :フルメタなのは ◆JCTewlikow :2008/06/29(日) 14:03:17 ID:D9WO4AdE
いきなりですがお久しぶりです。つーか俺のこと覚えてる人いるだろうかorz
久々にリリカル鴉の続き書いてきたんですが、文字数1万3千、53KBの長い出来になってしまいました。
投下の多い夜だと迷惑になるので、前後に分けてこの後と夜の9時ごろに投下しようと思います。
多分途中でさるさんくらうので、支援をお願いします。

529 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 14:04:33 ID:OD+/Jvzp
了解しました。
楽しみにしています。

530 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 14:09:30 ID:rxItf3q/
大丈夫、ジェダイの騎士はライトセイバーを自作するのが必須だから。

問題は、材料があるかどうか、だが。

531 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 14:12:25 ID:e7tew9mS
ベーダー卿キター ライトセイバーの型をシグナム姉さんに伝授
するんだろうか?でもライトセイバーは普通の剣で受けられないんじゃ・・

532 :フルメタなのは ◆JCTewlikow :2008/06/29(日) 14:13:43 ID:D9WO4AdE
投下開始です。

 俺がシグナム達の真意を知ったあの夜から、一週間が過ぎた。
 いつも寝た振りをして感づかれないようにやり過ごしてはいるが、近頃あの四人のうち何名かが、時には全員が夜に(主にはやてが寝入った後に)家を出て行き、明け方頃に帰ってきていることも知っている。おそらく例の蒐集とやらを行っているのだろう。
 そして俺はその気配を感じる度、自身の不甲斐なさ、無力さに打ちのめされている。

 悔しい・・・
 それはあの日から幾度と無く心に浮かんでは消える言葉。
 だが浮かんだ所で何が出来る訳でもなく、苛立ちだけが募ってゆく。
 守るべき少女が苦しみ、共に生きる家族が戦っている中、自分に出来る事が無いもどかしさ。

 ・・・力が、欲しい。あいつらと共に戦える力が。このふざけた運命に突き立て、切り裂き、なぎ払うだけの力が。


第四話「戦鬼再臨」

 「みんな遅いな〜。こんな時間までかかるなんてどないしたんやろ」

 キッチンで夕食の準備をしたはやてが時計の針を見つつ言う。
 ヴィータとザフィーラは散歩に、シグナムは剣道場のコーチに行ったきり戻ってこない。
 三人が蒐集を行っているだろうことは考えなくても分かることだが。

 「だ、大丈夫じゃないですか?きっとたまたま遅れてるだけですよ」

 どこかどもりながらフォローを入れるシャマル。だが内心はきっと心臓バクバクだろう。

 「だとええんやけど・・・ゴウ、悪いんやけど、みんなの事迎えに行ってくれへんか?」
 「構わんが、携帯電話はどうした?全員に持たせてあるだろう」
 「それがな、さっき皆にかけてみたんやけど、誰にもつながらへんのや。…それに、ちょう不安に思うこともあるんよ」
 「不安?」

 ゴウと、シャマルも気を引かれたように振り向く。

 「うん。最近いつにも増して皆の帰りが遅いやろ?それで、シャマルたちには悪いんやけど、もしかしたら、何か危ないことでもしてるんやないかと思ってしもたんや」

 気付けば、微かにだがはやての体は小刻みに震えていた。

 「うちは欲張るようなことは何もいわへん。この家で皆といつまでも暮らせて行けばそれで満足や。…でも、せっかくできた家族がいなくなって、また一人になるのは…それだけは嫌なんや…」
 「はやてちゃん…」




533 :フルメタなのは ◆JCTewlikow :2008/06/29(日) 14:16:05 ID:D9WO4AdE
はやては悲しそうに、そう呟いた。
 シャマルは何も言えずに俯く。
 俺ははやてには、四人が行っている事を伝えていない。
 常に主第一で動いているような連中が、その主に隠れてまで行っている事だ。
 簡単にばらすなどできよう筈がないし、はやての性格上、もしばれたら即刻止められるのは目に見えている。それに現状ではやての命を救えるのはそれだけだと分かっている以上、心苦しくとも嘘を貫くほかなかったのだ。
 だが、いくら命を救う為とはいえ、はやて本人を不安がらせてないがしろにしていては、それこそ本末転倒だ。
 だから俺は、手を握ってやることにした。いつだったかはやてが望んだように、不安を拭い去ってやるため、俺は屈んで震えるその小さな手を握った。

 「ゴウ?」
 「大丈夫だはやて、何も心配はいらない。前にも言ったろう?お前が望むことを俺は叶えると。それはあいつらも一緒だ。お前の元からいなくなったりは絶対にしない。
だから、そんな顔をするな。俺達も、お前の悲しむ顔は見たくない」

 我ながら白々しいとは思う。シグナム達は禁じられた蒐集行為を独断で行い、俺はそれを見て見ぬ振りだ。本人の前ではいい顔をし、陰では知られてはまずいことを(平然とまでは言わないが)行っている。おこがましいと言うほか無い。
 だが言ったことは本心からだった。図々しいと理解しているからこそ、俺はこの娘を幸福にしてやりたいという本心からの言葉をぶつけた。
 そしてそんな俺の言葉を聞き、はやては微笑みを浮かべた。

 「…そうやね。家族を大切に思うんやったら、まず家族のことを信じなあかんな。ごめんなシャマル、変な事言うてもうて」
 「いえ、そんなことないですよ」

 先程とは打って変わり、明るい笑顔で言うはやて。シャマルもまた眉間の皺が取れたようだった。

 「そういうことだ。よし、それじゃあ俺はあいつらを探しに行くが、戸締りはしっかりな」
 「うん、そっちは大丈夫や。それじゃあお願いな」
 「気をつけて下さいね」

 片手を挙げて二人に答えるゴウ。振り返ることはしなかった。



534 :フルメタなのは ◆JCTewlikow :2008/06/29(日) 14:20:32 ID:D9WO4AdE
ゴウは自室へ入っていき、ハンガーにかけてあった上着を取る。
 それに袖を通してドアノブに手をかけたところで、ふと違和感を感じた。
 違和感、と言うよりも、誰かが自分を呼んでいるかのような感じだ。その感覚の元はというと、忍道具一式をしまってある戸棚から漂ってくる。

 「・・・?」

 不信感を抱きつつも、扉を開けて中を調べてみるゴウ。
 そしてその感覚は、この時代へ来た時に所持していた封印刀の変化した、あの黒い金属の羽から発せられていた。
 半ば無意識のうちに、ゴウはその羽を手に取っていた。
 そしてそれを手にした瞬間、ゴウの頭の中に膨大な量の“情報”がダイレクトに送られてきた。

 「くうっ!?」



 ──地球から少し離れた次元世界

 「おおおらぁぁっ!!」
 「ごほおっ!?」

 ヴィータの放ったグラーフアイゼンの一撃が、武装局員のガードを抜いて胴体に命中、局員は勢いのまま弾き飛ばされる。
 が、すぐさま別の局員が自分に向かって肉薄、咄嗟に身を逸らしてその一撃を回避するヴィータ。

 「ちっきしょう、こいつら数が多すぎんだよ!!」

 ヴィータは肩で息をしながら、先ほどから絶え間なく続く攻撃の嵐に、思わず悪態をつく。

 「まさか管理局の武装隊、それも一個小隊に見つかってしまうとはな。我々も運が無いな」
 「他人事みてーに言ってる場合かよ!」
 「シャマルがいなかったのが裏目に出たな。接近に気付けなかったか・・・」

 余裕ありげに話すシグナムに噛み付くヴィータ。ザフィーラはジリジリと迫る局員達を睨みつけている。

 何故この様な修羅場になっているかというと、この世界での蒐集活動を終了させた後、元の世界─97管理外世界へ帰還しようとしたところ、ロストロギアの反応を追って調査に来た管理局の調査部隊と遭遇。そのまま否応なしに戦闘に入る事になってしまったのだ。
 当然一方的に攻撃を受けるばかりではなく、互いが互いを庇い合いながら各個撃破に努めてはいるが、如何せんその戦力比は3対30以上。撃墜した分を差し引いても20人弱は残っている。“一対一なら負けは無い”と謳われたベルカの騎士でも、手に余る戦力差だった。
 今は仲間同士背中を互いに向け合いながら膠着状態に入っている。



535 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 14:24:03 ID:OD+/Jvzp
支援


536 :フルメタなのは ◆JCTewlikow :2008/06/29(日) 14:24:51 ID:D9WO4AdE
 「捕縛結界はまだ張られてねーし、シャマルに連絡して強制転移かけてもらおうぜ」
 「無理だな。例え我々の座標が捕捉出来ても、相手がこの人数だ。完全に転移するヒマなど与えてくれんだろうよ」
 「それに突然シャマルがいなくなれば、主たちに怪しまれる。今バレる訳にはゆかん」
 「チッ、めんどいったらねーぜ……って、うおっ!」

 会話している最中、一発の魔力弾が放たれ迫る。それは命中しはしなかったが、ヴィータのバリアジャケットの帽子を掠めて吹き飛ばした。
 それは他人にとってはただの帽子でも、ヴィータにとってははやてからもらった大切なもの。はやてを心から慕うヴィータにとって、それは許せざる行為だった。

 「テメェェェェェ!!!」

 激昂し、叫ぶと同時にグラーフアイゼンを構え、猛然と突っ込んでいくヴィータ。

 「馬鹿!うかつに離れるな!」

 慌ててシグナムが引きとめようとするが、時既に遅し。陣形が崩れた部分から局員がなだれ込んで来て、それの対応でヴィータの後を追えない。

 「シュワルべフリーゲン!!」

 打ち出した鉄球を誘導弾として操る魔法を放ち、なかなか距離を詰めてこない局員に叩き込むヴィータ。
 だが敵も生半可な実力ではなく、防壁や魔力弾でそれらを撃ち落し、断続的に射撃魔法攻撃を敢行してくる。
 対してヴィータは防御魔法パンツァーシルトを展開、それを前面に押し出しつつ再度突撃していく。
 ──が、突如ヴィータの背中を、強い衝撃が襲った。

 「ごっ…はあっ…」

 掠れて殆ど聞こえない声をあげながら、ヴィータは地面に向けてゆっくりと落下していく。
 何が起こったかは単純明快。局員の一人が、仲間が集中砲火を浴びせて敵の意識をそちらに向けている隙に、背後に回りこんで狙撃する。ただそれだけのことだ。
 普段なら当たる直前で気付いたかもしれない一撃。しかし、熱くなって冷静さを欠いた今のヴィータにそれは不可能なことだった。

 「ゴホッ…痛ーな、ちきしょう……」

 バリアジャケットがダメージを軽減させたのと、高度がそれほど高くなかったこともあり、落下後もヴィータは意識を失うことはなかったが、負ったダメージは軽いものではなく、なかなか立ち上がることができない。
 自身の迂闊さを呪うヴィータ。だが立ち直る隙さえも相手は与えてはくれなかった。

 「避けろヴィータ!!砲撃が狙っているぞ!!」

 未だ援護に向かえないザフィーラが危険を察知し、倒れ伏したヴィータに警告を呼びかける。声に反応して周囲を見渡すと、さっき自分を狙撃した局員が杖の先に魔力を収束しているのが見える。碌に身動き出来ない今の状態であれをくらったら確実にやられる。



537 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 14:27:41 ID:9CZO5zyM
支援

538 :フルメタなのは ◆JCTewlikow :2008/06/29(日) 14:28:37 ID:D9WO4AdE
 (冗談じゃねーぞ。アタシは絶対にはやてを助けて、あの家で皆と一緒に楽しく暮らすんだ!なのにこんなトコで・・・)

 だがいくらもがいても体は言うことを聞いてくれない。そうこうしている内に砲撃のチャージが完了し、美しい色合いの、しかし凶悪な光の奔流が放たれた。
 シグナムが血相を変えて包囲網から無理やり抜け出すが、あの位置からでは既に追いつけないだろう。

 (はやて!!)

 もう間に合わないと覚悟を決め、ギュッと目を瞑るヴィータ。
 一秒…二秒…三秒が過ぎたあたりで違和感を覚え、静かに目を開けた。その目に映ったのは、自分へ向けて撃たれたはずの砲撃を受け止める暗い色をした魔法障壁と、それと同色の衣を纏った、大きな男の背中だった。

 「ふむ、盾なんぞ初めて使ったが、存外使い勝手は悪くないな」

 抑揚の無い声で男は呟き、砲撃を完全に防ぎきる。ふと空を見てみると、シグナム達がその男を見て驚愕の表情を浮かべている。それもそのはず、本来その男がこの世界にいる事などありえないのだから。
 そしてヴィータも目の前の男の後ろ姿には見覚えがあった。

 「ゴウ……?」

 ヴィータの呟きに反応し、男がゆっくりと振り返る。

 「大丈夫だったかヴィータ?何とか間に合ったようだな」

 口元は布で覆われていたのではっきりとは分からなかったが、見慣れたその切れ長の目元は見間違えようがなかった。

 「どうして、ここに…?」
 「話は後だ。今はこいつらを倒すのが先決だろう。コイツを飲んだら早くシグナム達と合流しろ」

 ゴウは懐から小さい薬壜を出してヴィータに手渡す。

 「これは?」
 「回復薬だ。即効性だから立つことくらいは出来る筈だ。それより早く行け、此処は俺が引き受ける」
 「う、うん。分かった」

 壜の中身を一気に煽った後、何とか体を奮い立たせ、飛行魔法を発動させ飛び上がるヴィータ。慌てて後を追おうとする局員もいたが、ゴウは手のひらに一瞬で手裏剣型の魔力弾を形成し、それを投擲して動きを妨害する。

 「貴様らは俺が相手をすると言ったはずだ。行きたければここを片付けてからにしろ」
 「…お前を管理局に対する敵対者と認定し、公務執行妨害で逮捕、拘束する!」

 ゴウの言動から間違いなく敵だと判断したのか、局員達は杖を構えて一斉に攻撃をしかける。だがそれを見てもゴウは顔色一つ変えない。


539 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 14:31:53 ID:UuH+XNLT
支援

540 :フルメタなのは ◆JCTewlikow :2008/06/29(日) 14:34:27 ID:D9WO4AdE
 飛ぶ様子を見せないゴウに陸士隊が真っ先に迫ってくるが、上段から振り下ろされたポールスピア型のデバイスを、腰から瞬時に引き抜いた漆黒の刀剣でゴウは難なく受け止めた。
 そして逆にその僅かな硬直時間の間に斬撃を叩き込んで反撃する。
 脇から別の陸士が穂先を突き刺さんと襲い掛かるも、銃弾の軌跡すら見切る動体視力と反射神経でそれをかわし、返す刃をがら空きの胴に打ち込み切り伏せる。
 瞬く間に二人も戦闘不能にした男を見た隊員達は慄くが、部隊長らしき男が一喝して彼らを奮い立たせる。

 「落ち着け!相手は一人だ、一度に数名で同時にかかれ!!後衛組は砲撃の準備をしろ!」

 指示を聞き、三人の陸士がゴウの周りを囲む。近距離では敵わないと判断し、先ほど同様射撃魔法での遠距離戦に持ち込むつもりらしい。 だがそれを許すほど鈍いゴウではない。
 標的を右前方の一人に定め、そいつに向かって左腕を向ける。
 左腕の手甲は妙に大きな作りになっており、ただの装甲にしては不自然に見えた。

 ──と、突然手甲の一部が開き、そこから魔力で結われたワイヤーが発射され、陸士の体に絡みついた。陸士は懸命に身を捩るが全く外れない。
 そしてゴウはさながら荷物でも引き寄せるかのように思い切りそれを引っ張り、その隊員との距離を詰めた。いや、詰めさせたというべきか。
 ブゥン、と、ゴウの握った刀の柄頭から魔力で出来た刃が伸びる。それを自分へ向けて飛んできた相手に対し、
 ドシュッ
 そのどてっぱらへと刀身を深く沈めた。
 相手の人体の急所を斬り、又は刺し、一撃で相手を絶命させる飛鳥流忍術の奥義、血祀殺法である。

 敵が倒れるのを最後まで見届けることなく、刃を引き抜いたゴウは次の奴の元に早駆けで迫る。相手が反応を起こす前に延髄切りで意識を刈り取り、これで二人目。
 完全に萎縮してしまっている三人目には手裏剣を連続投射し、逃げることもままならなかった男はハリネズミになってゆっくりと背後に崩れ落ちた。
 鬼神の如きゴウの圧倒的な戦い振りに、部隊長は「バケモノめ!」と毒づく。

 「だがもう遅い!砲撃隊、撃てェー!!」

  倒れた三人が転送魔法で収容されたのを確認し、チャージさせておいた砲撃隊に一斉射撃を命じる部隊長。だが何故かゴウは防御どころか、避ける様子すら全然見せない。そしてさっきの倍以上の光の帯が放たれ、その場から動かないゴウを飲み込んだ。
 残った隊員達は警戒を解かず、土煙が晴れるのを静かに待つ。やがて粉塵が風に飛ばされ、そこに倒れているゴウが視界に入ってきた瞬間、隊員達は歓声を上げた。

 「やったぞ!」
 「してやったぜ、ざまあ見やがれ!」
 「浮かれるな!誰か近寄って容態を確認、手の空いてる者は本部に護送する準備をしておけ!」

 部隊長の怒鳴り声で正気に戻った隊員達は慌てて指示に従う。部隊長はキビキビと僅かながら残った隊員に指示を下す。だがそんな彼の胸中にふとある疑念が生まれる。



541 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 14:35:11 ID:VP5P2ZSw
支援

542 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 14:37:58 ID:VP5P2ZSw
支援

543 :フルメタなのは ◆JCTewlikow :2008/06/29(日) 14:38:28 ID:D9WO4AdE
 (待てよ…何故奴は最後のあの砲撃を避けなかった?あれほどの機動が出来る者が動きもしないとは……ん?動かない?)

 考えがそこまで至ったとき、無意識に彼の視線は倒れているゴウと、そこに近づく隊員達に向けられた。瞬間、彼が長年培ってきた陸士としての“カン”が警鐘を鳴らす。

 「全員、そこから離れろぉぉぉぉ!!!」

 声を嗄らしつくさんばかりの怒声を上げる部隊長。そして何事かと振り返る隊員達の足元で異変は起きた。
 地に倒れ伏していたゴウの肉体が、まるで空気に溶けるかのように薄くなり始めたのだ。
 隊員達が驚く間もなく、十秒もかからぬ内にそれは完全に消えうせる。

 「魔力で作ったニセモノだ!本体はまだどこかn……」

 カチッ
 周囲を警戒するために踏み出した足元で、聞きなれない音がしたと思った瞬間、彼らの意識はそこで途絶えた。
 鼓膜をブチ破るような轟音と、辺り一帯を吹き飛ばすほどの爆風が全てを包み込んだからだ。

 「トラップか!畜生!」

 みえみえの手に引っ掛かった自分に腹が立つが、今は状況の整理と対策が最優先だ。部隊長は背後で魔方陣の準備を行っていた隊員に指示を出すために振り返り──

 「ごふっ…あぁ……」

 ─その隊員の胸から光刃が生えているのを直視することになった。

 光刃が抜き取られ、隊員が倒れるのと同時に何も無い筈の空間がゆがみ、静かにゴウの姿が顕わになった。
 周りを見渡し、残っているのがさっきの指揮官のみだと判明すると、そのまま無言で相対する。
 部隊長の方も覚悟を決めたのか、手にした大剣型のデバイスを正面に構える。静寂は一瞬、直後に剣戟の甲高い金属音が鳴り響いた。
 右、左、回し蹴りの三段連撃をゴウは放つが、部隊長は刀身と片腕でそれを防御し、蹴りを出した際の隙を狙い反撃してくる。ゴウはバックステッップで回避し、着地と同時に手裏剣を乱射するが、またしても全弾撃ち落され、再度接近戦を挑まれる。
 大型の剣が紡ぎだす一撃は重く、受け止める度に手に痺れが走った。このまま続ければ刀を弾き飛ばされるのがオチだ。

 だがこの時、部隊長には大きな誤解と知らない事実があった。それはゴウがただの戦士ではなく、「忍」であったこと。
 そして、忍の戦いの本領は真っ向勝負ではなく、左右や後ろからの“小狡い手”にあるということだった。



544 :フルメタなのは ◆JCTewlikow :2008/06/29(日) 14:40:59 ID:D9WO4AdE
 ガキィン、と一際大きくぶつかり合った後、ゴウはとんぼ返りをうって空中から何かを投げつけた。

 「無駄だぁっ!」

 例によってまた魔力弾か何かだと判断した部隊長は手にした剣で同じ用に叩き落そうとする。が、そんな時ゴウが小さく呟く。

 「やはりな。さっきからのお前の戦い方から、“避ける”事は無いと思っていたよ」

 その発言に危機感を覚えるも、ついた勢いはすでにとまらない。そして剣の刃がソレを切り裂いたとき、中から煙が勢いよく噴出した。
 そしてその煙を空気と共に肺に達した瞬間、部隊長は足に力が入らなくなり、思わず片膝をついた。

 「グッ!き、貴様何を…!」
 「お前が吸い込んだのは『気絶玉』の煙だ。本来なら簡単に意識を奪える筈なんだがな。まぁどの道そのざまでは満足に動けんか」

 あくまで淡々とした口調で話しながら徐々に近づいていくゴウ。今ので堕ちなかった為に、魔力刃による攻撃で仕留めるつもりのようだ。

 「ぐぅぅぅ……管理局の…陸士部隊を…なめるなぁっ!!!」

 最後の力で立ち上がり、間合いに入ったゴウに向けて部隊長は横なぎに剣を振るった。
しかしゴウはある程度予想していたのか、グッと一気に体を沈めて寸前で避けきり、髪の毛が少々持っていかれただけで済んだ。
 次の瞬間、縮んだバネがもとに戻るかのように、全身の筋肉に溜め込んだ力を一気に解放し、その切っ先をあいての喉元に深く突き刺し、刺し貫いた。

 「戒めろ。おまえの全てを」
 「ゴハッ…ひ、卑怯者…が……」
 
 かすれた声で喋る男の言い分を意に介さず、刀から出る魔力刃を消すと部隊長はドサッという音と共に倒れ、他の隊員同様転移魔法により光に包まれて消えていった。

 ゴウが刀を腰の鞘に戻したところで、こちらも一通り片付けたのだろうヴォルケンリッターが降りてきた。

 「ゴウ!」
 「ん、シグナム、そっちも終わったのか」
 「ああ、一通りは片付けた。にしても、何故お前がここにいる?そのデバイスは何なんだ?どこで魔法を?」

 思いつく疑問を次々にぶつけてくるシグナム。
 そりゃあ今の今までただの人間だと思っていた男が、突然デバイスと魔法の力を携えて自分達のピンチを救ったのだ。驚くなと言うほうが無理だ。ザフィーラとヴィータもそこは同様らしく、興味津々という顔をしている。



545 :フルメタなのは ◆JCTewlikow :2008/06/29(日) 14:42:32 ID:D9WO4AdE
 「あー、うむ。その件は一応説明するが、今はこの場所から撤退するべきだろう。追っ手が掛かる可能性が高いし、それに迎えも来たようだ」

 そう言ったゴウが指差した先では、バリアジャケットに身を包んだ湖の騎士が今この場に降り立つところだった。

 「みんな、大丈夫だった!?」
 「シャマル」
 「良かった、無事だったの……ってゴウさん!?やっぱりあれはゴウさんだったの?」
 「待てシャマル、それはどういう意味だ」
 「それが……」
 「話は後にしろといってるだろ。シャマル、全員の転送を頼む」
 「あっ、は、はい」

 意味ありげな発言を聞きとがめるシグナムだったが、ゴウに止められおとなしく引っ込む。そして疲弊した皆の代わりにシャマルが転移魔法を発動させ、五人はその世界から姿を消した。




546 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 14:47:13 ID:VP5P2ZSw
支援

547 :フルメタなのは(携帯) ◆JCTewlikow :2008/06/29(日) 14:50:35 ID:5TLOzujG
ここまできてさるさん…
前半の投下はこれで終了です。支援してくれた方々に感謝です。
先ほど書いたとおり、残りは9時に投下予告しときますんで、もしよければそちらでも支援をお願いしたいです。

548 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 14:51:41 ID:vxWheTcj
待ってます。
支援

549 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 15:01:57 ID:OD+/Jvzp
GJです。
ゴウにやられてしまったとはいえ、武装隊もなかなかやりますね。

550 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 15:24:54 ID:VP5P2ZSw
GJ!!です。
負けたとはいえ武装隊が、こんなに強く見えるなんてw

551 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 18:18:02 ID:Mq8ylnUf
GJ!
なんという陸士魂!

552 :sage:2008/06/29(日) 18:34:38 ID:uL6dLdZb
>赫炎
支援。
原作後だと、ギーに攻撃能力皆無なのが難点だが…
アティもその後は公式で書かれてるので出ないだろうしなぁ…
…いや、あれだと出てきてもおかしくないのか?
期待期待。

553 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 18:38:36 ID:uL6dLdZb
ミスった…ゴメンナサイ…

554 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/06/29(日) 18:45:26 ID:UuH+XNLT
18:55から投下を行いますー。
ゲッター昴です。

555 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/06/29(日) 18:55:56 ID:UuH+XNLT
第六話「戦士の宣言 後編」

それは、本来宇宙を侵食する概念的存在。
かつて意識体の高次元存在<大いなる意志>すら取り込もうとした、宇宙的恐怖の体現。
無限の領域を持つそれ――<時天空>は、ビッグバンによる宇宙破壊すら凌ぎきり、不気味に沈黙を保っている。
だが、やがて始まる――再生した無数の宇宙を喰らう為に、その侵食空間を広げることだろう。

長い時をかけこちら側の宇宙で再生した<時天空>の一部は、受肉し幾多の惑星を破壊――自身に抗いうる可能性を持った生命を破壊してきた。
<時天空>の欠片――太陽系の直径ほどの大きさに成長したそれは、今、人間が住む星へと侵攻しようとしていた。
亜光速の巡航速度――動くたびに衛星が吹き飛び、数十万本の触手が蠢いた。巨大な口で星の欠片を吸い込み、有機物と無機物の中間体の身体を構築していく。
空気のない宇宙にも響く咆哮が、数万光年の半径に響き渡った。

青く輝く惑星――次元世界と呼ばれる人々の住処。
この星を背負い迎え撃つのは、あまりにも小さな巨人――宇宙を埋め尽くす勢いで膨張する敵と向かい合う、全長50メートルの紅い装甲。
蝙蝠の如き漆黒の翼を生やした巨人は、両手に武器を持つ。
原始的だが、最も接近戦で威力を発揮する武装――長大な両刃の戦斧/死神の得物の如き大鎌。
ゲッター線の緑色の燐光を纏った刃が、一閃。巨人を捻り潰そうと伸ばされた数百本の触手が断ち切られ、ゲッターに取り込まれた。
この世のものとは思えぬ絶叫が、音の響かぬ真空の宇宙空間に反響した。

概念的咆哮――原始的恐怖と闘争心を煽る――<大いなる意志>に兵器として生み出された人類種の宿命。
その衝動を持ち前の自制心で押さえ込み、機械の身体を持つ少女は青い髪を揺らして喚いた。
コクピット内部は機械の内臓がのた打ち回り、少女の身体と半ば融合している。

「お前なんかに、誰も殺させないっっっ!!!」

叫び――悔恨と強い決意、悲しみと怒りが入り混じった獣の如きそれが、巨人――もはや原形を留めぬほどに<進化>した機械の化け物ゲッターロボを突き動かす。
星天を駆け抜ける一機の機動兵器目掛け、数千本の触手が放たれた。
光速で迫る槍の先端のように尖った触手を切り払い、化け物じみた速度で敵の中枢――ぽっかりと開いた口の中へ突っ込む。
鋸のような歯が重力操作で轟き、口腔に進入した害虫を滅ぼそうと閉じられていく――歯に潰されたゲッターロボの姿が、暗黒に消えた。
そして――光が弾けた。

「ゲッタァァァビィィィィム!!」

腹部からの緑色のエネルギーの奔流――ゲッタービームと呼ばれるゲッターロボの最大威力の武装。
高濃度に圧縮されたゲッター線が<時天空>の欠片と溶け合い、全てをゲッター線へと還元する。
身体を異質なものに抉られていく痛みに、<時天空>の欠片は触手を四方八方に放つ、穿つ、壊す。
刃に潰されたかに見えたゲッターロボの機械仕掛けの体は、半ば<時天空>の欠片の有機物とも無機物ともつかない身体と溶け合い、同化していた。
高度に進化したゲッターの能力である、吸収/同化能力。
やがてそれは巨大な戦神を形作り、剥離する――怪物を突き破って産まれる巨大なゲッターロボ。

――私は、ここにいる。

今、この場所で、ゲッターに取り込まれながら、自我を保って戦い続ける少女を、待つ人はいない。
すべてが、滅んだから――人も、世界も、歴史も。
だから、戦っている/もう、失うものなど何も無い。
己が命すら、ゲッターに取り込まれた時から自分のものではないから。

――あたしは/私は――。

<ここにいるっっ!!!>

放たれたゲッター線が、一瞬で<時天空>の欠片の質量体を分解した。
宇宙を震撼させるその声は、まさしく■■■・■■ジ■のものだった。

556 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/06/29(日) 18:57:26 ID:UuH+XNLT
ミッドチルダ首都クラナガン近郊 海上にて。
異形の鋼が宙を舞う。鋼の塊の名は、ネオゲッターロボ。
丸太のように太い手足、寸胴といっていいほど分厚い甲冑を着込んだような正面装甲。
鋭い眼光の光学カメラとセンサー素子の詰まった頭部は、鎧兜をかぶった武者のようでもある。
翔ける――背中のバーニアユニットが殺人的推力でこの全長40メートルの巨人を飛ばし、衝撃波で海上を薙ぎ払う。
付近に航行中の船舶がいないのが救いといえば救いだ。
巨人が飛翔すると、それだけで巨大な神の掌の如きソニックブームで水面が爆散し、モーゼの起こした奇跡のように海が割れる。
刹那、蒸発。
<敵>から無茶苦茶に撃ち込まれた高出力生体レーザーが海水を気体にさせ、蒸気がむわっ、と視界を妨げる。
ネオゲッターを操縦する青い髪の少女、スバルが悲鳴を上げた。へそが丸出しの白い防護服姿で、操縦席に乗っている。
視界が利かない――つまり操縦困難。

《う、うわ! 弁慶さん、どうしたらいいんですかっ?!》

直後、メインモニター脇のウィンドウに坊主頭の極悪人面が映り、怒鳴る。
黄色い耐圧服は内に詰まった筋肉に張り裂けそうなほどであり、男の縦横共に大きい体格を如実にあらわしていた。
破戒僧の怒声。

《細かいことは気にするなっ! 隼人がいねえとまともに操縦できないのか、考えるな、感じろっっ!!》

今の台詞で、スバルはむかっ、ときた。ちなみに、先ほどから黙っているティアナは吐き気と悪戦苦闘中だ。
適正あり、とスバルや隼人ほど超人ではないにもかかわらず判断された少女は、激しいゲッターの機動に耐え切れずに死に掛けていた。
もう、さっきから仲間達が何を言っているかわからない。ついでを言うと、顔色は真っ青。
スバルの自棄になったような台詞が聞こえ、一瞬意識を取り戻す。
通信機越しに、妙に気合の入ったスバルの凛々しい顔が目に入った。

《ティア、オープンゲットを――》

オープンゲットとは、この巨人、ネオゲッターを空中で分離させ3機の戦闘機に再構築することを差す。
このときパイロットにかかるGは、戦闘機動の比ではない。
ふざけるなと一蹴する――この辺りは流石に年季の入ったコンビである。
かなり必死に、うわずった声でティアナは叫んだ。

「ちょ……今あれをやったら、私確実に死ぬわ、冗談抜きでっ!!」

《それじゃあ――》

最高に嫌な予感――引きつった笑みと共に発色の良いオレンジに近い赤毛を揺らし、つり上がり気味の眼が恐怖に歪む。
何を言うつもりだこいつは、と身構えて、つい操縦桿に力が篭る。
がたがたと震えていることに気づく――冷や汗が止まらない。

《このまま突っ込むっっ!! 中将、アインヘリアルをこの空間座標へっっ!!》

ウィンドウが開く。
髭面の肥満体――しかしその実筋肉もついている屈強な身体が、将校の服でぱつんぱつんであった。
陸のトップ、レジアス・ゲイズの超拡大映像。ただ戦闘の邪魔にならぬ程度の大きさというあたりに、娘のオーリスの苦労が窺える。
怒声が響く――その間にも巨大砲アインヘリアルの三連砲塔が海へ狙いをつけ、砲手がきりきりと痛む胃を押さえつけて照準。
炸裂弾頭が装填され、馬鹿げた速度で滑らかに砲塔が稼動し、指定された空間座標へ砲口を向けた。

「スバル・ナカジマの要請に基づき、特務法令第27条により、アインヘリアル、発射っっっ!!!」


557 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/06/29(日) 18:58:53 ID:UuH+XNLT
巨砲が吼え、馬鹿げた口径のカノン砲が魔力式加速装置でリニアカノン並の加速を叩き出した。
通常は稼動させるだけで幾つも許可が必要になる巨大非魔導兵器アインヘリアルだが、ここでも神隼人の不気味なまでの手腕が効いていた。
敵の襲撃に怯える政府高官、管理局の上層部へ赴き、その度に脅し、なだめ賺(すか)して勝ち取った地上本部特務の権限の一つが、
質量兵器所持の許可と効果的運用法の構築に伴う許可申請の簡略化である。
一刻を争う<敵>――鬼との戦いに特化した組織である特務は、ネオゲッター以外にも戦力を有する地上で最も予算を給与されている部隊だった。
砲撃兵器アインヘリアルシリーズ、空中移動母艦クジラ2005D、そして計画の中枢であるゲッターロボ。
冷遇が普通の地上の軍では異常なほど厚遇されていたが、この部隊への妬みは思いのほか少ない。
何故ならば、地上で人望厚いレジアス中将がバックにいるということもあるし、この部隊の異常なまでの錬度がそうさせるのかもしれない。
何せ、集められた人材は皆ゲッターに乗ることを前提に次元世界中から選び抜かれた猛者だったし、常に人外との熾烈な戦いに身を投じていたからだ。
誰もが恐怖する化け物との戦いは、少しずつ緘口令の穴から洩れ、地上に噂話として広がり始めていた。
そこで、クラナガンへの鬼獣の襲撃である。この部隊の必要性が全次元世界へ知れ渡った瞬間であり、神隼人の真の戦いの始動した瞬間だった。
オーリスが、口を開いた。金髪が揺れ、眼鏡が光る。

「我々は……過ぎたる力を手にしているのではないでしょうか、中将……」

父を職場では中将と呼ぶ女は、憂鬱そうに溜息をついた。
レジアスが否、と答えた。男の会心の笑みだった。

「たとえそうだったとしても、我々は力無き人々を護る義務がある――理想など捨てよう。隼人のやりかたでは人心は掴めんが、力は掴める。
今の我々は、護るべきものの為に全てを犠牲にする覚悟が必要だっっ!!」

断言した父の背中を、オーリスは羨ましく思う――強い確信を抱けるその魂の鼓動こそ、隼人とレジアスが共有するものだから。
迷い続ける自分がちっぽけに思えて、オーリスはひどく心細くなった。
ゲッター計画。その心臓部は、管理外世界の住人――隼人が集めた科学者達だけが扱うものであり、レジアスと隼人しか全貌を知らないと言う代物だった。
得体のしれない不安が、オーリスの胸中に芽生えた。

まるで、人の思惑を超えた超自然的力が働いているように思えるほど、全ての予測が当たっていく。
決められた盤上の出来事のように。その不気味さに、ただ震えるしかなかった。


この世界の人類種は、未だ知らぬ。それが何であるかを。

万物の進化を司るもの――生まれ、育ち、食い合う生命を強く導くもの。

それはこう名乗る。


――進化の意志と


やがて感じるだろう その存在を

やがて餓えるだろう 他の生命に

やがて知るだろう 滅ぼす悦びを


――喰い合え! 殺せ、進化するのだ!!


――<時天空>を斃す為に――


558 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/06/29(日) 19:01:16 ID:UuH+XNLT
銃火。
マズルフラッシュが散り、5.56ミリのライフル弾が高速で飛来/タタン、と正確な二点射撃/トーレの跳躍にかわされる。
スカリエッティを廊下に投げ出し、自身は果敢に弾丸の嵐の中を突っ切るトーレ/薄い青紫の短髪が揺れる。
隼人――5.56ミリ弾をこれでもか、と精密射撃/空薬莢が次々と廃莢され硝煙の匂いが立ち込める。
獰猛に笑う隼人――戦い甲斐のある敵との遭遇/超音速で機動する化け物――戦闘機人との一対一での戦闘。
トーレの笑み――勝利を確信した雌豹の風情。
その腕から/脚から/光の翼、もしくは刃が生える――IS発動。

「IS<ライドインパルス>!!」

瞬間的加速――人間が目で追いきれる速度を超える/残像が残るほどの高速機動。
部屋の床を、壁を、天井を足場にしながらの突撃――切れ味抜群の刃物が音速を超えて突っ込んでくるのに似た圧迫感/まるで弾丸。
隼人は突撃するそれに向けてカービン銃を投げつける/トーレの腕から生えたインパルスブレードがこれを両断。
硬質素材で作られた銃身をいとも簡単に切断する切れ味/バターナイフで斬られたバターのようにバラバラになる機関部/その部品が隼人の頬を切り、一筋血が流れた。
隼人の顔が屈辱に歪み、怪物じみた爪がトーレの左手首を抉った。激痛――猛獣の爪並みの強度のそれに、強化骨格が見えるほど深く肉を切り裂かれる。

「――ッッ?!」

驚いて後方へ跳躍するも、銃器を警戒してサイドステップする――瞬間、前方から殺意に満ちた一撃。
大口径拳銃、M500リボルバーをベースに改造された拳銃が、500S&Wの砲撃に等しい銃撃を放った。
左腕を胸の前を護るように突き出す/灼熱と衝撃が左腕を襲い、インパルスブレード発生装置が破損、火花が散った。
砕け散る機械の左腕をぶら下げ、窓を突き破って逃げる/階下に落下し、受身を取るなり不完全な<ライドインパルス>を起動。
わき目も振らず、一目散に逃走していた。仲間に通信を送る。

《ドクターは無事か、チンク?!》

《心配ない、アジトに先に転送されたところだ。負傷したのか、トーレ?》

《――左腕が使い物にならん。神隼人とは戦うな、以上だ》

《わかった――?! そういうわけにもいかないらしい、な》

チンクの焦ったような声に、トーレが珍しく動揺した。
思わず問いかけていた。

《どうした?》

《新手だ――五体満足で帰してくれる気はなさそうだ》


チンクは、小柄な体に灰色のコートを纏う銀髪の少女だ。腰まで伸びた長い銀糸の如き髪を風に揺らし、両手にスローイングナイフを構えて口の端をつりあげる。
眼前に立つ燃えるような赤毛の少年を一瞥し、その実力に頬を綻ばせた。
知らず、言葉が溢れた。

「一人で突破してきた、か。魔導師か?」

赤毛の少年は紺色のコートを翻し、袖口をチンクに向けながら笑った。覗くワイヤーブレード/鉄板を貫通する凶器。
神隼人そっくりの、尖った笑みだった。本人が聞いたら真っ先に否定しそうだが、似ているものは仕方がない。

「魔導師じゃないさ。僕はそんなものにもなりきれない、出来損ないの被造物だ」

「何故、ここに来た?」

今度こそ冷え冷えとした笑みで、少年――エリオ・モンディアルは言い放った。

「理由は必要ない――それが、僕の生き方だから」

「所詮、作り物は作り物か――プロジェクトFATEの遺産。お前を捕らえよう、ドクターが喜ぶ。死体でもな」

559 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2008/06/29(日) 19:02:53 ID:xw7fzmwd
支援

560 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 19:03:36 ID:zxczu9Tv
支援!!

561 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 19:04:46 ID:wPjHyGu8
支援 容量は大丈夫かな?

562 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/06/29(日) 19:05:29 ID:UuH+XNLT
瞬間、ナイフを投擲/銀色の孤を描いて飛んだそれが、エリオの放ったワイヤーブレードに弾かれる。
電磁圧を纏ったそれは導電体――金属製の刃を反発させ、軌道を捻じ曲げた。
チンクはISの発動を躊躇う/爆発力を調整しなければ自分も巻き込まれる間合いに。

「甘いなっ! 隼人さんほど、貴女は速くないっ!!」

「ぬかせぇ!!」

ワイヤーブレードを弾く/跳躍しながらナイフを床に、天井に、壁に突き立てていく。
少年が意味がわからないという顔をするが、こちらに向け突進してくる/計画通り。
静かに呟いた――防御障壁の準備を完了させ、己の固有技能の名を。

「IS<ランブルデトネイター>……これで終わりだ」

ナイフの刃が、白金色の光を放つ。
炸裂――金属を爆発物へと変える恐るべき特殊能力/高性能爆薬に匹敵する爆圧/粉塵が舞う室内。
確信――今の一撃で少年は吹き飛んだ/肉片一つ残さずに。

「許しは請わない……ここで朽ち果てろ」

「――嫌だねっ!!」

粉塵の向こうから伸びるワイヤー付きパイルバンカー/チンクの頬を掠める――頭部を狙った必殺の一撃。
辛うじてかわしナイフを投擲するが、目を焼くような雷光に弾かれ、粉砕される。
エリオ――全身から雷撃を放つ/無茶苦茶な魔力変換資質の使い方――攻性防壁とでも呼ぶべき雷撃の壁。
質量兵器を無力化した電磁圧の壁が、ゆっくりとチンクに迫る。
銀髪を風になびかせ、チンクは隻眼で少年を睨んだ。

「なるほどな……魔力変換資質――ドクターが欲しがるわけだ」

雷撃を放つエリオは、リンカーコアの酷使による痛みに顔を顰めながら、雷撃を集束/超高電圧の矢。
チンク――防御障壁で防ぐ/鍔鳴りにも似た音/散った雷光が空気をイオン化させた。
壁にナイフを突きたて、爆破。壁に穴を開け、その隙間から外へ逃れる。

「待てっ!」

目くらましのナイフがチンクの背後で弾け、エリオの身体を壁に叩きつけた。
頭を打ちつけ、気絶。

「――ッッ!」


563 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2008/06/29(日) 19:06:08 ID:xw7fzmwd
支援

564 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/06/29(日) 19:07:01 ID:UuH+XNLT
何時の間にか降り始めた雨を浴びながら、チンクは転送ゲートまで走った。
首都近郊にかけられた転送妨害システムを無効化するジャミング/瞬間的にアジトまで転送可能なそれへ駆ける。
ゲートに飛び込んだ瞬間、背後で鳴った銃声/障壁で弾く。
振り返る――冷笑を浮かべ、気絶したエリオを抱える長身の男/神隼人。
右手に巨大な回転弾倉の拳銃/強装弾仕様。

「スカリエッティに伝えるがいい。貴様らのつまらん野望は、私が砕く」

「……覚えておくさ、神隼人。姉が、貴様を殺す」

刹那の睨みあい――転送ゲートの消滅と共にそれは終わった。


目を覚ますと、隼人の顔が瞳に映った。痩せぎすの目つきの悪い男の顔。

「うわぁ!」

「ずいぶんとご挨拶だな、エリオ」

隼人はこともなげにエリオを観察し終えると、立ち上がって銃器をトランクケースに戻した。
己の体に異常がないか診察されていたことを悟り、エリオは顔を背けてぼやいた。
まるっきり拗ねた子供の表情。

「しなくてもいいことを……」

「そういうわけにもいかんさ。俺はお前の保護者だからな」

無言で立ち上がると、怒ったような声でエリオは言った。表面上は怒っているようだが、これで照れ隠しらしい。
燃えるような赤毛がはらり、と揺れた。

「帰りますよ、家に」

「ああ、そうだな。帰るとするか……そろそろ腹が減った」


――今はただ、戦士に休息を。

565 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/06/29(日) 19:10:35 ID:UuH+XNLT
皆様、支援ありがとうございました。

今回はイシカワサーガ最大最悪の敵の一部が登場したり、■■■・■カ■■がゲッターと同化してたりと、カオスでお送りしました。
真ゲッターロボを読んでそりゃあもう、興奮気味の私。

感想等よろしくお願いします。
ではでは。

566 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 19:19:38 ID:xp1zywpH
隼人に一瞬スイッチ入ったぁー!!GJ!

567 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 19:24:49 ID:XhpiAKCN
GJ!
石川賢サーガのラスボス出ちゃったー\(^o^)/
スバルもなんかエライカオスな状況/(^o^)\
中将をはじめ地上本部が熱い!


568 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 19:56:25 ID:tCVB0FJC
お久しぶりのゲッターロボ昴はやべえw

某最悪すぎるラスボスとのバトルは未来の光景なのか。
ツンデレエリオに、なんか新しい興奮を覚えそうですw 丁寧なエリオもいいけど、こういう反抗期真っ盛りも子供っぽくて実にいい。
次回も楽しみです。
GJ!


569 :リリカルジェダイ:2008/06/29(日) 20:13:38 ID:F2WhOhAR
いやぁ、やっぱり先輩方の作品は見所がたくさんあって良いですね。

ゲッターロボ昴さんの話つくりで反骨なエリオも良いです。
フルメタ氏の作品の続きも楽しみにしてます。

570 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 20:17:48 ID:xazkqKVi
>>569
コテ発言は疎まれる原因になるので、投下関係以外は名無しで書き込んだ方が吉ですよー

571 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/29(日) 20:53:29 ID:SLrQYx63
 著作権について
 著作権は映画だと、無断の原作改変の禁止、無償でも社会福祉目的以外のネットを使った無断公表の禁止条項、二次創作物の無断作製の禁止があります。
著作権法はほぼ国際法なので、国によって細かい差がありますが日本のものとアメリカのものはほぼ一緒です。
ただ運用については、日本アニメの二次創作は作者も業界の暗黙の了解で了承しているのが現状。
ただ実際訴訟になるとアメリカの作品だとアメリカの裁判所に行かないといけないかも。
詳しくは文化庁のホームページがいい。

572 :フルメタなのは ◆JCTewlikow :2008/06/29(日) 20:58:48 ID:D9WO4AdE
そろそろ時間ですかね
それでは後半の投下、いきます

573 :フルメタなのは ◆JCTewlikow :2008/06/29(日) 21:01:20 ID:D9WO4AdE
 ──時は数時間ほど前に遡る。

 「くうっ!?」

 自室にて黒い金属の羽を掴んだゴウの脳内に、情報が激流の如く流れ込んでくる。

 『オペレーティングシステムの起動を開始』
 『マスター・デバイス間のリンク接続・・・肉体のスキャン、および最適化を開始』
 『体内各部のスキャン完了、異常なし。これより全身への魔力供給を行う』
 『筋組織および神経系への魔力伝達を確認』
 『脊髄・脳髄へ魔力伝達。順能率96.7パーセント』 
『供給完了を確認』
 『最適化完了。ファーストフェイズ終了』
 『セカンドフェイズ開始』
 『魔法の知識・発現方法のデータおよび汎用・戦闘用魔法のデータを送信準備』
 『情報伝達回路の形成を開始・・・形成完了。オールグリーン』
 『伝達開始・・・・・・・・完了』
 『セカンドフェイズ終了。全過程終了を確認』
 『これよりマスターの表層意識における意思疎通を図る』

 
 「…っぐ……がはっ」

 わずか一瞬の時間で雷に打たれたかのような衝撃をくらい、倒れそうになる体を必死で支えるゴウ。
 自身の身に何が起こったのか、ふらつきの抜けきらない頭で考える。
 感覚としては、過去に我無乱に魂を抜かれたときに受けた衝撃に近いだろうか。
 だがあれは文字通り“抜き出される”感覚なのに対し、今のはむしろ逆、“詰め込まれる”感じがした。
 そこまだ考えていた時、不意に声が聞こえてきた。

 『はじめまして。御機嫌いかがでしょう、我が主』

 その声を聞き、ゴウは飛び上がりそうになるほどに仰天した。何せ、自分の耳がおかしくなってないなら、声が聞こえたのは今自分が手にしている羽から聞こえてきたのだ。

 「なっ!?」
 『驚かせてしまい申し訳ありません。ですが、今のは必要な処置でしたのでどうかお許しの程を』
 「何だ貴様は!」
 『私は主専用の、あの封印刀の変じたデバイス、簡潔に申しますと魔法の使用を補助するための道具です』

 魔法。その言葉に、ゴウの心は大きく揺れ動いた。

 「魔法、だと?」
 『そうです。私は主が魔法を使うための、主が再び戦うための道具にして、武器です』
「武器・・・」
 『私のことについては、今は重要ではありません。単刀直入に申し上げます。主のご家族、騎士の皆様が、現在窮地に陥っています』
 「っ!?どういうことだ!」
 『騎士たちが現在、何を行っておられるかは既にご存知ですね?』
 「ああ」
 『その蒐集作業を行っている最中、時空管理局─平たく申しますと、一種の警察機構ようなものですが、その人間に捕捉され現在は戦闘状態、戦況は芳しくない物と思われます。』
 「何だと!?」
 『脱出しようにも数が多すぎる模様、下手を打てばやられるでしょう』

 デバイスの発した言葉に愕然とするゴウ。今日という日まで共にこの家に住み、家族として生きてきた騎士たち。その彼らに危険が迫っている。そして打ちひしがれているゴウにお構いなくデバイスは続ける。



574 :フルメタなのは ◆JCTewlikow :2008/06/29(日) 21:03:22 ID:D9WO4AdE
 『私を使ってください、主。あなたはこの力を望んでいたはずです』
 
 ゴウは視線をゆっくりと掌のの上のそれに戻す。
 
 『私の内には、主の願望をかなえるに足る確かな“力”があります。主に再び戦場に出る覚悟が御ありになるなら、私は自らの力の全てを喜んで主に捧げましょう』
 
 ゴウは一瞬だけ迷う。“力”を欲したのも確かだが、今一度戦の場に出る事への恐れも、自分はまた抱いていたからだ。
 過去では自分が刀を振るう度に、人が一人、また一人と死んでいった。いや、正確に言えば、最早人を殺すことに恐れなどない。
 ゴウが真に恐れるのは、今の生活が、図らずも掴んだ“平穏”が失われることにあった。戦いを続けつつも、そこから逃げ出したいと思う自分がいることを彼は自覚していた。
 だが───

 『ご決断を。主』
 「ああ……お前の使い方を、教えろ」

 ゴウは自らの弱さを、断ち切った。
 確かに今全てに目を瞑れば、平穏ではあれるかもしれないが、それは「周りに誰もいない」平穏だ。四人を見捨てて、悲しみに暮れるはやてとだけ生きていくなど、ゴウには考えられなかった。
 その心中には、「二度と仲間を失うものか」という意思だけがあった。

 『御意。では一言唱えてください。「セットアップ」と。戦闘時に主の身体をお守りする防護服等の設計は既に完了していますので』
 「至れり尽くせりだな。・・・セットアップ」

 苦笑しながらも起動キーを唱えるゴウ。瞬間、その身が光に包まれ、今来ていた服が分子レベルにまで分解され、同時に魔力で編まれた新しい戦装束が現れる。
 深い闇色をしたそれは今までに来ていた装束に準拠したデザインで、されどところどころが流線的というか羽をあしらったかのようなイメージがあった。
 最も目がいくのは左腕の手甲で、大きめで金属的な見た目にもかかわらず重量感はさほど感じなかった。

 「これが新しい俺の服か」
 『はい。見た目こそ普通の出来ですが、受けた衝撃の分散、水中での呼吸が可能などの機能が備わっております』
 「何から驚いたらいいか分からんな。…よし、それで、どうやればあいつらのところへ向かえる?」
 『次元転移魔法を発動します。本来大掛かりな手順が必要ですが、人一人なら少しの時間で済みます』

 言うが早いか、足元に光が溢れはじめる。その光を見つめながら、ゴウはふと思ったことを口に出した。



575 :フルメタなのは ◆JCTewlikow :2008/06/29(日) 21:07:00 ID:D9WO4AdE
 「そういえばお前、名はなんと言うんだ?」
 『名前は…特にありません。魔法のプログラムの組み立てに時間を費やしていたので、自身の名前を決めている暇がありませんでした。主、私に名前を付けて頂けないでしょうか』
 「俺がか?」
 『はい。私は主のためだけに存在します。ですから是非ともお願いします』

 ゴウはしばし黙考し、やがてなにか思いついたのか顔を上げて話した。

 「陰牙、というのはどうだ」
 『いい名前だと思いますが、何か由来が?』
 「俺の二つ名は鴉、その字を分けると牙と鳥だ。鳥が俺なら牙はお前。陰に生きる俺が持つ牙、だから陰牙だ」
 『なるほど、理解できました』
 「それに業と因果なら、丁度いい組み合わせだしな」
 『皮肉ですね。ですが異論はありません、その名前を頂戴します』

 会話の終了とほぼ同時に術式の展開が完了し、身体が光に飲み込まれる。

 「行くぞ、陰牙!」
 『御意!』



 「・・・という訳だ」

 
 時間は現在に戻り、今五人は街中のとあるビルの屋上に集まっていた。
 何があったのかと四人に言い寄られたゴウは、自分の身に起きたこと、そしてあの場へと馳せ参じるまでの過程を話していた。

 「…そうか。大体の状況は把握出来た」
 「ぶっつけ本番で魔法やデバイスをああまで扱うとはな。正直驚嘆に値する」
 「全くだぜ。でもホントすげぇ闘い振りだったよな」

 シャマルに回復魔法をかけてもらいながら口々に話す一同。

 「全く驚いたわよ、突然家の中から強い魔力反応が出て、部屋に確かめに行ったらゴウさんの姿が消えてて、それで皆を支援に行ったら今度はバリアジャケット着たゴウさんがいるんだもの」
 「すまんな、だが事情を話している間も無かったんでな」
 「ハァ、まあいいですけどね」

 半ば呆れて嘆息するシャマル。しかしゴウは口調と顔つきを改めて騎士たちに言い放つ。

 「お前らこそ、俺やはやてに黙って禁止されたことを続けていたんだ。人のことは言えんだろう」

 ゴウのセリフに、その場の空気が一気に張り詰める。

 「知ったのはいつからだ?」
 「最初からさ。あの日のお前らはどこか様子がおかしかったからな」
 「…うかつだったな。全く気付けなかった」
 「忍をなめるな、気配を断って相手に近づくなど朝飯前だ」
 「なるほどな・・・で、貴様はその事実をどうする?」

 目を細めたシグナムが底冷えするような声で語りかける。隣に立ったザフィーラも同様の視線を発している。返答によっては只では済まさない、そんな感じの雰囲気だ。

 だが、ここで思わぬ人物から横槍が入った。

 

576 :フルメタなのは ◆JCTewlikow :2008/06/29(日) 21:09:36 ID:D9WO4AdE
 「二人ともそんな目すんなよ!現にゴウはあたしらを助けてくれたし、事実を知ってたのにはやてにばらしたりしなかったじゃんか!」

 間に割って入ったのはヴィータだった。シグナム達は珍しいものを見たかのような顔をしているが、それも当然。騎士たちのなかでゴウを最も嫌っていたのはヴィータだったからだ。

 「お前が助け舟を出してくれるとは思わなかったな」
 「そりゃ、その、お前にはさっき助けてもらったから・・・・」

 最後の方はゴニョゴニョとしてて聞き取れなかったが、赤く染まった頬が全てを代弁していた。

 「ヴィータの言うとおりだ、お前らのしていることをとがめたりする気は無い。はやてのことを思っての行動だろうからな。だが、一つ頼みがある」
 「?」
 「俺にも、蒐集行為を手伝わせてくれ」
 「何だと!?」
 「今まで干渉しなかったのは、お前らのように戦う為の力を持っていなかったからだ。そしてそれが手に入った以上、もう遠慮する気も必要もない。だから俺にも、はやてを助けさせてくれ」

 沈黙が全てを支配する。ゴウは騎士たちの将の返答を待ち、烈火の将はどう答えるべきかを考え続けた。どれほどの時間が経ったのか、やがてシグナムは静かに口を開いた。

 「今後人を殺さないと約束出来るか?」
 「え?」
 「先程の戦闘で見ていたが、お前、向かってきた局員を何人も刺し殺したろう。我らの流させた血によって主の人生が穢れるなどあってはならないことだ。だから「ちょっと待て、俺は一人も殺してはいない」って、何?」

 急に言われ、思わずシグナムは聞き返す。

 「おまえらがはやてのために不殺を誓ったことは知っている。だからさっきは全て非殺傷設定とやらを使った」
 「そんな、いくら非殺傷設定でも、魔力の刃で刺されて無事な訳は…」
 「ああ。そこの所は陰牙が上手くやってくれたよ」

 ゴウの説明はこうだった。確かに如何に非殺傷と言えど、そのまま体に刺されれば肉体を傷つけるので結果的に殺すことになる。しかしデバイス『陰牙』の発生させる魔力刃は通常のつくりではなかった。
 どういうことか説明すると、あの刀身の構成はどちらかというと発した魔力を人の細胞と融合させる回復魔法に近いのである。
 先に挙げたとおり、そのままの魔力では人体を損傷させてしまうので、刃そのものを身体の中に溶け合わせるような性質で、されど完全にはなくならない程度の強度を持たせて顕現させているのだ。
 例えるなら、スポンジを針で突付けば壊れるが、水を当ててもそのまま浸透し、後ろに流れていくようなものだ。
 これならばショックは有るが殺すことはなく、突き刺した後に電気のように自分の身体から魔力を発し、体内の急所に直に流せば相手を昏倒させることが可能となるのだった。



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