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リリカルなのはクロスSSその59

1 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 15:23:11 ID:p70NrcM4
ここはリリカルなのはのクロスオーバーSSスレです。
ガンダム関係のクロスオーバーは新シャア板に専用スレあるので投下はそちらにお願いします。
オリネタ、エロパロはエロパロ板の専用スレの方でお願いします。
このスレはsage進行です。
【メル欄にsageと入れてください】
荒らし、煽り等はスルーしてください。
ゲット・雑談は自重の方向で。
次スレは>>975を踏んだ方、もしくは475kbyteを超えたのを確認した方が立ててください。

前スレ
リリカルなのはクロスSSその57
http://anime3.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1206543116/

*雑談はこちらでお願いします
リリカルなのはウロスSS感想・雑談スレ1(実質33、避難所で進行中)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/anime/6053/1206676333/

まとめサイト
ttp://www38.atwiki.jp/nanohass/

避難所
ttp://jbbs.livedoor.jp/anime/6053/

NanohaWiki
ttp://nanoha.julynet.jp/

R&Rの【リリカルなのはStrikerS各種データ部屋】
ttp://asagi-s.sakura.ne.jp/index.html


2 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 15:23:52 ID:p70NrcM4
【書き手の方々ヘ】
・作品投下時はコテトリ推奨。トリップは「名前#任意の文字列」で付きます。
・レスは60行、1行につき全角128文字まで。
・一度に書き込めるのは4096Byts、全角だと2048文字分。
・専用ブラウザなら文字数、行数表示機能付きです。推奨。
・先頭行が改行だけで22行を超えると、投下した文章がエラー無しに削除されます。空白だけでも入れて下さい。
・投下時以外のコテトリでの発言は自己責任で、当局は一切の関与を致しません

【読み手の方々ヘ】
・リアルタイム投下に遭遇したら、支援レスで援護しよう。
・投下直後以外の感想は感想・雑談スレ、もしくはまとめwikiのweb拍手へどうぞ。
・気に入らない作品・職人はスルーしよう。そのためのNG機能です。
・度を過ぎた展開予測・要望レスは控えましょう。
・過度の本編叩きはご法度なの。口で言って分からない人は悪魔らしいやり方で分かってもらうの。



3 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 15:24:13 ID:p70NrcM4
【2ch専用ブラウザリンク】
・ギコナビ(フリーソフト)
http://gikonavi.sourceforge.jp/top.html
・Jane Style(フリーソフト)
http://janestyle.s11.xrea.com/

【注意】
・運営に関する案が出た場合皆積極的に議論に参加しましょう。雑談で流すのはもってのほか。
 議論が起こった際には必ず誘導があり、意見がまとまったらその旨の告知があるので、
 皆さま是非ご参加ください。
・書き込みの際、とくにコテハンを付けての発言の際には、この場が衆目の前に在ることを自覚しましょう。
・youtubeやニコ動に代表される動画投稿サイトに嫌悪感を持つ方は多数いらっしゃいます。
 著作権を侵害する動画もあり、スレが荒れる元になるのでリンクは止めましょう。
・盗作は卑劣な犯罪行為であり、物書きとして当然超えてはならぬ一線です。一切を固く禁じます。
 盗作者は言わずもがな、盗作を助長・許容する類の発言もまた、断固としてこれを禁じます。

【警告】
盗作を筆頭とする種々の問題行動により、「スーパーロボット大戦X ◆ByQOpSwBoI」は
完全追放処分がスレの総意で確定しています。レス返しなど、決して相手をしてはいけません!



4 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 15:30:00 ID:csRxuGe7
>>1乙!!です。


5 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 15:31:12 ID:p70NrcM4
sage忘れた
ちょっと首吊って来る

6 :ゲッターロボ昴 ◆J7qCZtZxmc :2008/04/05(土) 15:33:43 ID:csRxuGe7
まあ、大丈夫でしょう、多分。

投下今OKでしょうかー?

7 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 15:36:37 ID:Sae+7nvy
>>6
OK。

8 :ゲッターロボ昴 ◆J7qCZtZxmc :2008/04/05(土) 15:39:26 ID:csRxuGe7
了解。ゲッターロボ昴、幕間です。イシカワケン節が強いかも……。

幕間「虚無の下で」

 それは、悪夢だった。
新暦での大事件―――聖王の揺り篭浮上――そして、

<神>の襲来。断ち割られる大地。吹き上がる溶岩。暗雲が立ち込め、時空が歪む空。

大きな犠牲を出しながらも、これを撃退。

クラナガン、消滅。

続く、

時空管理局本局――次元の海に浮かぶ巨大建造物――の崩壊。次元世界の秩序と安寧が失われた瞬間。

その日から、次元世界群で異変が起こり始めた。

天変地異―――巨大地震が世界を襲い、空を虚数空間の虹色が覆った。

魔法は空で使えぬものとなり……多くの魔導師が命を落とした―――。


奇病が人々を蝕み、生き残った人間を、奈落の底へと突き落とそうとしていた……。



それこそが――――無限に続く戦いの、始まりだったのだ。



 雨が、降り続いていた。
黒雲から降り注ぐ雨は、大地に穿たれたクレーターを水没させ、湾へと変える。

ボロボロのレインコートを着た一団が、都市の残骸をぬうようにして徘徊していた。
先の<大崩壊>を生き延びた人々だ。
それを見咎めるようにして、二人の浮浪者が一団に声をかけた。

「おい、こんなときに何処にいくんだ?奴らに狙われるぜ」
「そうそう、命の大安売りだ!!」

眼鏡をかけた初老の男性――その顔には疲労が浮かんでいる――が答えた。

「ああ……北のほうに行くんだ。あそこにはまだ機能してる教会があるらしい……飯が、もらえるかもしれん」
浮浪者が、ぺ、と唾を吐いた。
「ケ、こんなときに神頼みかよ……どうせ聖王様たって何もしてくれねえさ」
「このままじゃ餓死しちまう……希望が欲しいのさ……」

疲れたような男の声に、浮浪者は嫌そうな顔をした。腐るほど見てきた、もうすぐ死ぬ人間の顔だったからだ。
生きる意志を無くした人間に、明るい未来など訪れない。それが、男が長い浮浪者生活で得た知恵だった。

「そうかい……ま、勝手にしな………!おい、アレッ!!」
「奴らかよ!おい、トミー、逃げるぞ」

9 :ゲッターロボ昴 ◆J7qCZtZxmc :2008/04/05(土) 15:44:02 ID:csRxuGe7
無数の影が廃ビルの屋上から屋上を跳び―――固まって移動していた人々の中心に降り立った。着地点にされた幾人かの人間の背骨がへし折られる。
ぼきゃり、と嫌な音があたりに響き――悲鳴があがった。
降り立った人影の群れは、怪物そのものだった。
灰色の濁った肌。白濁した眼球。涎を垂れ流しにする牙の生えた口。
そして―――額から生えた角。
鬼。
それが怪物たちの名だ。人を食らう異形。
それらが、一斉に咆哮した。
金属を擦り合わせたような甲高い声に、びりびりと鼓膜が震える。

「きゃあああああ!」
女の悲鳴。
「管理局の魔導師は何処だよ、畜生!」
男の助けを求める声。
「あいつらが役に立つかよ!とっくの昔に逃げてやがるさ、くそっ」
罵る声。

鉈の様な爪を剥き出しにした鬼が、その丸太のような腕を振るった。
ぞぷり。
一瞬で背骨と主要な臓器を削ぎ落とされた老婆が絶命して倒れこみ、雨に濡れたアスファルトを血で朱に染めあげる。
人々が逃げ惑う中――鬼の一匹が、子供を食らおうとその顎をかっ、と開き――頭部を7.62ミリ弾に吹き飛ばされ、即死。
質量兵器による銃撃だ。
ぎょろり、と鬼達の眼が一斉に発砲音のほうに向いた。
銃を持った男――先ほどの浮浪者だ――は突撃銃を構えながら冷や汗を垂らしていた。

「どうすんだよ、おい!眼ぇつけられたぞ」
「知るかよ!子供が殺されそうだったんだ、見捨てられるかよ!!」

さらに銃撃。
突撃銃から妙にでかい薬莢が排出され、その反動に男の腕が震えた。
着弾。
標的に食い込んだ7.62ミリ弾はその凶悪な威力を発揮し、鬼の右腕を完膚なきまでに粉砕――鬼が、鳴いた。
ぎょえええええ。
耳を塞ぎたくなるような声だ。
だが――すぐに吹き飛ばされた筈の組織の断面が盛り上がり――瞬く間に再生されていく。骨が、神経が、血管が、筋肉が、表皮が――再構成される。

「だああああ!効いてねえぞ、おい」
「頭狙え、頭!!」

鬼達は銃撃をものともせずに、突進。無数の銃撃を浴びながらも瞬時に破壊された組織を再生させ、嗤う。
ほひょ、ほひひひひ。
残虐な笑みだ。
鬼が、嗤いながら、一歩一歩浮浪者たちに近づいていく。

「弾切れだ、くそ!」
「うわあ、チクショウ!もう逃げられないぞ!!」
行き止まり――廃車や崩れたビルディングで埋まっている道路。
唯一の逃げ道――二匹の筋骨隆々の鬼に塞がれている。

鬼の爪が男達を引き裂こうと振り上げられたとき――魔力の塊がその上体を吹き飛ばした。
集束された魔力素が、弾丸より速く着弾し、鬼の上半身を弾き飛ばしたのだ。
殺傷設定の魔法――絶大な威力を秘めた攻撃。

10 :ゲッターロボ昴 ◆J7qCZtZxmc :2008/04/05(土) 15:45:58 ID:csRxuGe7
「リボルバァァ――シュートォォ!!」
短い、青い髪の少女が、叫んだ。
また一匹、鬼が上体を吹き飛ばされ、どちゃり、と倒れこんだ。
燐光が弾け、その身体を純白の防護服が覆い――ローラーブーツを履いた陸戦魔導師が一人、高速で浮浪者二人に駆け寄る。
一瞬、質量兵器――『地球』でAK47と呼ばれる突撃銃だ――のことを咎められるのかと、浮浪者が身構えるが、それは杞憂に終わった。

「早く逃げてくださいッ!!ここはあたしが――――」
右腕――機械仕掛けの篭手に覆われている――が、鬼の爪を受け止め、火花を散らした。
「引き受けますッ!!」
IS<振動破砕>発動――ぶん、という振動音とともに鬼の腕が砕け散る。
そのまま放たれた鋼鉄の篭手――アームドデバイス・リボルバーナックルの直撃により、頭部を砕かれた鬼の巨体が仰向けに倒れる。

「お、おう!嬢ちゃん魔導師か――なんだってこんなとこにいるんだよ?!」
「いいから逃げるぞ、トミーッ!」
ざ、と駆け出す二人の後姿を守るようにして、青い髪の少女――スバルは仁王立ちした。
すう、と息を吸い込み――叫ぶ。

「かかって来いッ!怪物ども!!あたしが相手だッッ!!」
残った数匹の鬼が咆哮し、飛び掛らんとしたとき―――砲弾の雨が、降り注いだ。
咄嗟に右腕を地面に叩きつけ、その反動で後ろに跳ぶ。
着地。
轟音。
見れば、砲火によって残っていた数匹の鬼は挽肉のようになって消え失せていた。
バーニアユニットの噴射音。
吹き荒れる強風と熱波を、防護服のフィールド魔法で遮りながら、ゆっくりとスバルは上空を仰ぎ見る。

ベージュ色の装甲。
全長10メートル程の巨人が、空に浮いていた。その数、3機。
動甲冑と呼ぶに相応しいデザインの、丸い曲線を描いた装甲の巨人が、炎を吹きながら巨銃を構えている。
30ミリの砲弾を吐き出す怪物じみた砲。
地上本部の質量兵器『ゴモラ』。
それが、警告を発した。

『スバル・ナカジマに告げる。お前を脱走の罪で拘束する、おとなしく武装を解除したまえ。なおこの命令に従わない場合――』
機関砲がスバルを照準に捉えた。
『ここで処刑するッ!!』
一瞬で人体を八つ裂きに出来る武装を向けられても――スバルの表情は変わらなかった。

「断るッ!もうあたしは―――ゲッターには乗らないッ!!」
機械仕掛けの巨人が一瞬怯んだ様に止まるが、すぐに通信を再開した。

『地上本部、こちら<ゴモラ7>。目標が武装解除を拒否した。これより射殺する』
『了解。隼人二佐から伝言だ。<落とされるな>だそうだ』
『OK。戦闘機人一人にやられるほどやわじゃないさ、コイツは』
AMF展開開始。
パイロット達が機関砲のトリガーに指をかけたとき―――眩い閃光が、辺りを包んだ。
戦闘機人の証である足元のテンプレート。
金色に輝く瞳。
戦闘機人タイプゼロ・セカンド――否、スバル・ナカジマが吼えた。

「うおおおおおおぉぉぉッ!簡単にぃ、やれると思うなあぁぁぁッ!!」

スバルが、跳び―――巨人の脚部に、<振動破砕>を打ち込むのと、砲火が放たれるのは同時だった―――。

11 :ゲッターロボ昴 ◆J7qCZtZxmc :2008/04/05(土) 15:47:55 ID:csRxuGe7
以上になりますー。
ゴモラのモトネタは「真説魔獣戦線」からです。

リリカルのリの字もないですね、ハハハ……。

12 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/04/05(土) 17:17:37 ID:q2V5keM0
GJ!
おおー、いきなりゲッターチームを抜けましたか。
この後は原作で同じようにチームを抜けた竜馬との出会い……かな?

さて、今からリリカル殺生丸を投下したいのですが、よろしいでしょうか?

13 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/04/05(土) 17:20:43 ID:y9S/AvNl
>>11
昴氏GJです!
そして、八時に予約を取らせてもらいます

14 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/04/05(土) 17:21:52 ID:q2V5keM0
反応ないけどいくよー


――空港火災から2週間後、ナカジマ邸。
よく晴れた日だった。広い芝生や周囲の木々の緑が、目に眩しいほどだ。
小鳥のさえずりや程よい微風の音が、清涼感をかもし出す。
そんな昼下がりのこと。
ギンガ・ナカジマは、この日も変わらず、シューティングアーツの鍛錬に勤しんでいた。
「はっ! たぁっ!」
幼い四肢から繰り出される正拳、蹴撃。構えも整っており、弱冠13歳にしては様になっている。
シューティングアーツ――亡き母クイント・ナカジマから教わった、近代ベルカ式魔法との併用を前提とした格闘技法だ。
その母親の存命の頃から、既にお馴染みの光景ではあったが、この日は少々違っていた。
「えい! えいっ!」
隣に妹スバル・ナカジマが立っていて、同じように拳を突き出していたのだ。
ギンガに比べると、幾分か遅く、型も不安定。
無理もないだろう。元々スバルは、今まで訓練をしてきたわけではなかった。
母から彼女と共に基本を教わったものの、その時点で練習は辞めてしまっている。
気弱だったスバルは、魔法で戦うことを嫌ったのだ。
そこには色々と複雑な感情が渦巻いていたのだが、この場ではまだ伏せておくことにする。
「ひゃっ!」
可愛い悲鳴が上がった。
スバルがキックを思いっきり繰り出した際に、バランスを崩して尻餅をついてしまったのだ。
「大丈夫、スバル?」
ギンガが手を止めてその身を屈ませ、倒れたスバルの顔を覗き込む。
いつものスバルならば、そのまま盛大に泣き出すであろう展開だ。実際、その表情もほとんど半泣きに近い。
しかしこの日は違った。
泣きそうになりながらもゆっくりと立ち上がり、再び練習に戻る。
少々意外に思い、目を丸くしながらも、ギンガもまた姿勢を整えた。
「ねぇスバル、どうして急にシューティングアーツを練習するって言い出したの?」
そして、問いかける。
「……くやしかったの」
返事は一拍の間の後に返ってきた。
「あたし、何もできないことがあんなにくやしかったなんて……知らなかった」
頼りない手つきで武道の型を取りながら、スバルはゆっくりと話す。
幼い語彙で上手く表現しようと、懸命に言葉を探しながら。
「だから、何かをできるようになりたいの。……あの、なのはさんみたいに」
燃え盛る空港の中、スバルは無力だった。生き延びることもできず、泣き叫ぶだけだった。
あのエース・オブ・エースが助けに来なければ、救助隊が来る前に確実に死んでいたことだろう。
きっと今までのままでは、同じことを繰り返す。無力な自分が、誰かに迷惑をかける。
だから、力が欲しかった。
それでどうこうしようというのは、今はまだ思いつかない。憧れのなのはの強さに追いつけば、何かが見えるだろうか。
そんな横顔を見て、ギンガは微笑む。
ようやくスバルも、弱い自分の殻を破る気になってくれたことが嬉しかった。
(私は……どうなんだろう)
そして、ふと気にかかった。
無力でないとは信じたい。何人かの要救助者が助かるきっかけを作ることができたのだから。
であれば、自分は微力だったのだろう。
あの時、そんなほんの僅かな力しか持たなかった自分は、間違いなく死んでいたのだ。
管理局員と、少しおかしな格好をした人の助けがなければ。
(もっともっと、強くならないと)
もっと多くの人を救えるように。それ以前に、ちゃんと自分の身を守れるように。
でなければ、守る対象だったはずのスバルに追い抜かれてしまう。それはあまりにかっこ悪い。
だから、もっと強い力が要る。そのために努力することを、ギンガは改めて胸に誓った。
あの時助けてくれた人達のように。
金髪の執務官と――銀月のごとき美しさと、絶対的な強さを持った、あの男の人のように。

しかし、4年後の現在。
いきなり現れた殺生丸は、無慈悲にも自分達に牙を向いた。

15 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/04/05(土) 17:22:58 ID:q2V5keM0
魔法妖怪リリカル殺生丸

第五話「科学者ジェイル・スカリエッティ」


市街地での戦闘が終了した後の、機動六課部隊長室。
今ここには、部屋の主たるはやてとそのデバイス・リイン、そしてフェイトとなのはの姿があった。
リインが呼び出した画像を、難しい表情で隊長陣が見つめている。
映し出されているのは、あの殺生丸の姿だ。
銀の長髪と白銀の衣を身に纏った美しき修羅が、新人達をことごとく叩きのめす姿。
リミッターによって2段階のランクマイナスがなされているとはいえ、百戦錬磨の副隊長達と素手で互角に戦う姿。
ガジェットドローンや召喚士とは明らかに一線を画した、強力なアンノウンの姿がそこにあった。
「失礼します」
と、そこへ自動ドアを開けてスバルが入ってくる。
「ギンガは?」
「大丈夫です。落ち着きました」
なのはの問いに答えると、スバルもまた4人の元へと歩いていく。
そこでようやく、映っていた映像が自分達の戦闘のものであることに気が付いた。
「やっぱり、間違いあらへん?」
はやてがフェイトの方へ視線を飛ばし、確認する。
「うん。4年前の火災現場にいた人と同一人物っていうのは、ほぼ間違いない」
「やっぱりあの時、あそこで私が追いかけてたらよかったかな……」
「あの時?」
なのはの呟きを聞いて、スバルが首を傾げた。
「ほら、スバルを助けた時に、どこかに飛んでいった人がいたでしょ?」
「えーと……んーと……、ああ!」
思いっきり頭をひねり、必死に記憶を辿ったことで、ようやくスバルは思い出す。
今隣にいるなのはに助けてもらったあの夜空、確かにもう1人、火災現場から飛び立った人影がいた。
地獄の炎からようやく連れ出された星空と、連れ出してくれたなのはの強さと優しさの印象が強すぎて忘れかけていたが、
あの時見たシルエットは、間違いなくこの殺生丸のだったと思う。
何せ右肩にあんなに目立つ毛皮をかけているのだ。見間違うはずもない。
「それでスバル、この人は確かに自分のことを『妖怪』やって言ったんやよね?」
「あ、はい。それは覚えてます」
はやての問いに答えた。
戦闘中は殺生丸にあっさりと投げ飛ばされ、ぶつけた背中が痛くて反応の遅れたスバルだったが、
意識は残っていたので、ヴィータとの対話の内容は覚えていた。そこで彼は、確かに「妖怪」だと名乗っている。
話によれば、それは地球の、空想上の化け物のことだそうだ。日系人の父ゲンヤ・ナカジマにならば、多分聞けば教えてもらえるだろう。
「つまり、やっぱり管理外世界から来た次元漂流者ってことやな」
「でも、今の向こうは平成だよ? それでも妖怪って着物を着ているものなの?」
「なのは……誰も直接見たことがないから、空想って言うんだよ」
答えようもないような質問をしたなのはを、フェイトが諌めた。
要するに、そんなこと人間に分かるはずもないだろう、と。

16 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/04/05(土) 17:25:39 ID:q2V5keM0
「失礼します」
と、そこへもう1人の人間が入ってきた。
紫のロングヘアーを揺らした、スバルよりもいくらか年上ぐらいの少女は――
「ギン姉!」
「もう大丈夫なの?」
フェイトがギンガに対して、気遣うように尋ねた。それに「はい」と短く答え、彼女らの元へと歩み寄る。
殺生丸を目撃した時のギンガのうろたえようといったら、それは相当なものだった。
驚愕のあまりその場にへたり込み、とても戦闘には加わることもできないような状況だったのだ。
無理もない。幼い心には、4年前のあの出来事はあまりに鮮明に映り、彼の存在は記憶に強く焼きついたことだろう。
殺生丸は、ギンガにとっては命の恩人。
いわば絶対的な正義と力の存在なのだ。
それが犯罪者の肩を持った――それどころかギンガに牙をむいたのだから、そのショックもかくやということだ。
ギンガの中の絶対性は崩壊した。
しかし、いつまでも引きこもっているわけにはいかない。
どうにかこうにか自分を突き動かし、ここへやって来たのだ。
「先ほどはお恥ずかしいところを見せて、申し訳ありませんでした」
「いや、気にせんでええよ。ああなるんもしゃあないし」
申し訳無さそうに頭を下げるギンガに対し、どこか困ったような笑みを浮かべてはやてが返した。
「???」
一方、事情を知らないスバルは怪訝そうな表情を浮かべるばかり。
彼女は、空港火災の折にギンガの身に起こったことを知らない。管理局の人に保護された、としか聞いていないのだ。
そもそも、なのはによる劇的な救出を受け、一念発起して魔法を学びだした当時の彼女のテンションには、
他人の身に起こったことをいちいち詮索するほどの余裕はなかっただろう。
「スバルにはまだ話してなかったっけ?」
そしてその反応に気付いたギンガが声をかける。
「うん、全然」
相変わらずの疑問の色を宿したまま、スバルが返した。
「私ね……空港火災の時、この人にも助けてもらったのよ」
「ええーっ!?」
面白いぐらいのオーバーリアクション。
今まで極悪人だと思っていた殺生丸のそんな一面を知っては、当然といったところか。
「で……でもっ、だったら何でそんな人が悪いことをするのっ!?」
と同時に、新たな疑問が浮かんできた。
人助けをするような良識ある人間が、一体何故管理局員を襲い、レリックを強奪したのか。
スバルは今まさに、あの時ギンガの思考を狂わせたのと同じ問題に直面していた。
「右も左も分からない土地での4年間……その間に、何かあったのかも」
考えたところで詳細な答えは分からない。故にギンガは、そうやって結論づけていた。
殺生丸がこの4年の間、いかなる生活を送ってきたかは想像するしかない。
元の世界に戻るためになりふり構ってはいられなくなったのかもしれないし、もしくはスカリエッティに利用されているのかもしれない。
(何にせよ、本人に会って話をするしかないわね)
そこまで思考し、内心でため息をつく。
次に会えるのはいつになるだろうか。会えば戦いになるかもしれない。
いいやそれ以前に、戦場ですれ違いになるかもしれないのだ。
自分のわがままのためだけに、周りの隊形を乱すわけにはいかない。その点でギンガはスバルに比べて幾分か大人だった。
(本当……どうして、こんなことになってるんだろう……)
もう一度、自分を助けてくれた時の緑色に光る鞭で、自分の仲間達を容赦なくなぎ払う殺生丸の姿を見た。

17 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/04/05(土) 17:26:47 ID:q2V5keM0
「はぁ〜……」
戦闘中の陽気さからは一転、心底落ち込んだようなため息をセインがつく。
暗い顔をしていたのは六課陣営だけではなく、ナンバーズの面々も同様だったようだ。
レリックケースを確保し、地下道を通ってスカリエッティのもとへ帰還したはいいものの、問題はそこからだった。
途中で開けた時に気が付いたのだが、ケースの中身は空だったのだ。
六課の幻術使い・ティアナの策略にまんまとはめられ、フェイクシルエットによって生まれた偽のレリックを掴まされたのである。
(この殺生丸を陥れるとは……)
これには無表情の殺生丸も、内心は穏やかではなかったらしい。
幻術とは、見えない物を見せるためのものではない。存在しない物を存在させるためのものだ。
ごまかされるのは視覚だけではなく、嗅覚や聴覚にも作用するものなのである。
彼の鼻が見破ることができなかったのももっともだ。先ほどまであのケースからは、ちゃんとレリックの臭いがしていたのだから。
今回発見されたもののナンバーはY番で、自分達が探している]T番とは別物なのだが、騙されていい気分はしない。
「う〜……これ絶対ウー姉に怒られるよぉ〜」
「私が叱ったのはどうでもいいということか、馬鹿者」
苛立たしげに、長身の女性が口を開いた。
ナンバーV・トーレ。彼女らナンバーズの実質的な戦闘隊長だ。
戦力の秘匿という意味合いもあって、今回の彼女の役目は監視役に留まるはずだったのだが、
狙撃失敗後、予想外の隊長陣の追撃に襲われたクアットロとディエチを救出し、そのままセインらと合流して現在に至っている。
無駄に戦力を晒す羽目になる、マテリアル奪取は失敗、レリックも偽物……厳格な三女の怒りを買うには十分な理由だった。
「あーはいはい、分かってますよトーレおねえさま〜」
テンションがた落ちといった様子でセインが答えた。
そうこう言っているうちに、スカリエッティの部屋へと辿り着く。
円柱形の足場が並び、巨大なモニターが宙に浮き、金色の光がぼんやりと足元を照らす。
はっきり言って、かなり異様な部屋だった。
「やぁ、おかえり。私の可愛いナンバーズ達」
その部屋の中で、ジェイル・スカリエッティはテーブルと椅子を用意して待っていた。
そしてそこには、ウーノを含めた3人の姿。
殺生丸の知らない、新たなナンバーズがそこにいた。
銀髪をロングにし、片目を眼帯で隠した隻眼の幼女は、ナンバーX・チンク。
赤い髪を逆立たせる、どこか苛ついた様子の少女は、ナンバー\・ノーヴェ。
「ご苦労だったな」
外見に似合わぬ大人びた口調と共に、チンクが前に出て姉妹達の労をねぎらう。
こう見えてシリアルナンバーが指す通り、ナンバーズの中では年長組だ。トーレやウーノとも、対等に会話のできる立場にある。
「あらぁ、帰ってたのねチンクちゃん」
クアットロが言った。
実は今回の作戦中、チンクは別件で動いていたので、参加することができなかったのだ。
「すまん。私がいながら、何一つ満足のいく物は手に入らなかった」
「気にするな。今回はこちらが相手の実力を侮っただけだ」
申し訳無さそうに言うトーレに対し、チンクが口を開く。
「それに……叱るのはウーノの役目だからな」
「げぇ、やっぱ怒られるんじゃん」
そして今度こそ、セインはがっくりと肩を落とした。

18 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/04/05(土) 17:27:55 ID:q2V5keM0
「さて、と……いやぁ久しぶりだねぇ殺生丸君。こうして初めて顔を合わせるのは初めてだ」
そんな中で、白衣のスカリエッティの嬉々とした声が響く。
そして案の定、殺生丸はまだ彼のこの態度が気に食わないらしい。
憮然とした態度で口をつぐみ、返事をすることはしなかった。
「おやおや、随分と嫌われたようだ」
どこまでそれを悟れているのか、はたまた悟った上で挑発しているとでも言うのか。
遠慮するような様子もなく、相変わらずの軽口でスカリエッティが言った。
どうやら彼にとっては殺生丸の機嫌取りなどどうでもいいことで、彼の存在そのものへの興味の方が重要らしい。
「さぁ、立ち話も難だろう。かけてくれたまえ」
言いながら、用意した席を促す。
どうやら座らないことには話が進まないらしい。
若干腹立たしくはあるものの、大人しく殺生丸はスカリエッティの元へと歩み寄っていった。
今はまだ我慢の時だ。元の世界へ帰るためにここまで来たのだから、話を進めてもらわねばならない。
4年も待ち続けた待望の時なのだ。台無しにすることは避けなければならなかった。
白い椅子に座り、向かい側に腰掛けたスカリエッティと向き合う。
「ルーテシアはもう少し待っていてくれたまえ。これから大人の話をするからね」
「分かった」
スカリエッティの言葉に頷くと、ルーテシアはアギトを伴い、ふらふらと歩いていった。
この施設に来たのも、初めてではないらしい。もっとも、そうでない方が考えられないことだった。
ともかくも、構造は頭に入っているようだ。
やがて秘書のような風貌のウーノが、殺生丸の目の前に飲み物を差し出す。
これは知っていた。確かジュースというもので、果実の汁から作られた飲料のはずだ。
時にはこういう色の酒もあるようだが、そうでないことは臭いで分かる。
むしろ、問題となるのは別の臭いだった。普通の果実とは明らかに違う臭いがある。この鼻を突くような感覚は――
「おい」
短く、ノーヴェに声をかけていた。
「ンだよ?」
予想通りのつっかかるような声音でノーヴェが尋ねた。
それに応えるように殺生丸は小さく手招きをするが、なかなか従おうとしない。
無理もないだろう。彼女にとっては、まだまだ殺生丸は胡散臭い不審者の域を出ないのだから。
「行きなさい、ノーヴェ」
「チッ……わーったよ、ウーノ姉」
ウーノの声によって、ようやくノーヴェは動いた。
不機嫌そうにずかずかと足音を立てながら、殺生丸のすぐ近くまで歩いていく。
それを確認した殺生丸は、コップを手に取ると、その中身を強引にノーヴェの口の中へ――流し込んだ。
「○△¥×♯◆$!?」
突然の出来事。目を丸くしてノーヴェはうろたえる。
瞬間、彼女の顔色がみるみるうちに悪くなっていく。舌を、喉を、口の中をちくちくと刺していくような酸味。
「ぶふゥッ!」
たまらず噴き出していた。
その様子を、殺生丸は無表情のまま、スカリエッティはさぞ面白そうに笑いながら見つめていた。
「なっ、何だよこれ!?」
「はっはっは……フルーツビネガーというものだよ。果物を発酵させて作る、酢の一種だ」
「す……酢ぅ!?」
どうりですっぱいわけだ。
そんな物を薄めもせず、コップ一杯分も口の中に一気にぶち込まれたノーヴェは、未だ酸味が抜けきらない様子でむせ返っていた。

19 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/04/05(土) 17:29:02 ID:q2V5keM0
スカリエッティが大層面白がる間に、ウーノが今度はちゃんとした飲み物を持ってきた。
殺生丸の口にも合うようにと配慮のなされた、緑色の日本茶だ。特に何かの混ざった様子もない。
それを確認すると、スカリエッティも再び彼の方を向く。
「さて、では本題に移ろうか」
何事もなかったかのように、余裕綽綽といった様子の笑顔で切り出した。
「貴様は人をもてなす態度というものを考えた方がいいな」
その表情に不快感を露わにしながら、殺生丸が冷たく言い放つ。
初対面の相手にいきなり悪戯を仕掛けるなどと、非常識もいいところだ。おまけに謝る素振りも見せはしない。
人間風情にそのようなふざけた対応をされたことが、殺生丸を苛立たせていた。
「ククク……私は意外と子供っぽいのだよ」
そして今も、反応を面白がるように肩を竦めている。
殺生丸と同じ金色の瞳からは、その真意は読み取れない。硝子細工のような、感情に乏しい目だ。
さぞ愉快そうな表情とは180度異なる薄っぺらな瞳は、普通の人間なら恐怖さえ覚えるようなものだった。
「面倒な遠回りは好かん。さっさと聞かせてもらおう」
そして、普通の人間ではない男――最上位の妖怪・殺生丸にとっては、それは不快感を煽り立てる。
人間のくせに、この男はどこまでも不愉快だ。
下衆な好奇心に歪んだ口元。品定めをするようにぐりぐりと動く目。蛇のようにまとわり付いてくる声。
貧弱で矮小な人間の分際をわきまえようともせず、慇懃無礼な態度で詰め寄ってくる。
誇り高き大妖怪たる殺生丸が、最も嫌うタイプの人間だった。
そう――こいつはあの忌まわしき奈落と全く同じ種類の人種なのだ。
おまけに、大した力も持たないくせにそれなのだから、忌々しいことこの上ない。
一分一秒たりとも、彼と同じ空気を吸っているのが嫌になるほど、殺生丸にとっては不愉快な存在だった。
「私を元の世界へ戻すことができるのか、できないのか」
故に、単刀直入に問いただした。
「まぁ、可能だろうね」
対するスカリエッティはあっさりと返す。
事も無げに言い放つ様子が、そんな簡単なこともできないのか、と嘲笑われているようで、それが尚のこと腹立たしかった。
「では早く私を帰らせてもらおう」
「まぁまぁ、そう焦らずに。最後までお話を聞いてくれたまえ」
強い口調で要求する殺生丸を両手を前に出してスカリエッティが制す。
「いくら何でも、タダでというのは虫が良すぎる。こちらからも条件を出させてもらいたいのだが?」
その言葉に、遂に殺生丸はその柳眉をひそめた。
鉄面皮のごとき無表情な顔立ちに、明確な嫌悪感が表面化する。
ここまでこの男が不遜な奴だとは思わなかった。こいつは人間の分際で、妖怪の自分に命令しようというのか。
「この殺生丸を顎で使うというか」
射抜くような強烈な視線。
殺生丸の鋭い猛獣の眼差しが、冷徹な殺意を宿して、静かにスカリエッティを睨みつける。
「正当な取引(ビジネス)だよ」
スカリエッティはうろたえない。
飄々とした嫌味な笑みを浮かべたまま、痛烈なまでの殺気を余裕をもって受け流す。
両者の黄金の瞳が、ただならぬ雰囲気を漂わせて向き合った。
周囲を包む空気が痛い。
張り詰めた緊張感が、近寄る者の肌を貫かんまでの鋭利さを孕む。
最強の大妖怪・殺生丸と、最凶の科学者・スカリエッティの放つ気配が、凄みをもって充満する。
たまらず、ようやく平静を取り戻したノーヴェの顔がしかめられた。

20 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/04/05(土) 17:30:18 ID:q2V5keM0
「――スカリエッティ」
緊迫した空気の中、水を打ったようにその一声が広がった。
低い男の堂々とした声が、薄暗いラボの室内にはっきりと響く。
見ればそこには、あの襤褸のような外套を纏った中年の男の姿があった。
ようやく戻ってきたゼスト・グランガイツが、ずかずかと足音を立てて歩み寄ってくる。
「やぁ、騎士ゼスト。お迎えご苦労様」
先ほどまでの凄絶な笑みが嘘のように、スカリエッティは飄々とゼストを迎え入れる。
その豹変ぶりに興が削がれたのか、殺生丸の殺気も急速に消えていった。
「あと一歩で連行されるところだったと聞いたが」
「まぁいいじゃないか。ルーテシアもアギトも助かったのだから」
「貴様……」
一方、ゼストの語気と視線は、明確な怒気を内包してスカリエッティに向けられる。
大切な旅の仲間を勝手に戦線に加えさせて、おまけに危険な目にまで遭わせたというのだ。
これが怒らずにいられるわけもなく、こげ茶の髪の大男は、さながら熊のような剣幕で睨みを利かせていた。
「そんな怖い顔をしないでおくれ。いくら私と言えども、殺されたくはないな」
おどけたような表情からは、それがどこまで本気なのかは分からない。
とことん得体の知れない男――それがジェイル・スカリエッティだった。
「……くっ」
ゼストはその烈火のごとき怒りの眼差しを逸らす。
その言葉の裏の真意を読み取ったからだ。
要するに、メガーヌ・アルピーノを助けてほしければ殺さないでくれ、と。
亡きルーテシアの母を蘇らせることこそがゼストの目的であり、アギトの目的であり、当然ルーテシアの目的でもある。
一同の総意を、他ならぬまとめ役の自分がぶち壊しにするわけにはいかなかった。
「そうそう、それでいいんだ。これからもよきパートナーとしてやっていこうじゃないか」
一方のスカリエッティは、相変わらずの傲慢不遜な態度を崩さない。
よく言ったものだ、と殺生丸は思考する。
相手の感情など知ったことではない。自分に有益な取引を、人質を盾に強引に結ばせている。
そういった冷酷な面では、殺生丸も人のことを言えないのだが、彼はスカリエッティとは決定的に異なっていた。
そもそも殺生丸は――取引なんて持ち掛けない。
所詮それは小ずるい三下が取る手段であるということを、彼はよく理解している。
卑怯者は小物だ。その発想こそが、プライド高い殺生丸がその手の手口を嫌う最大の理由だった。
「……それで、その条件とやらは何だ」
そしてその小物へ向かい、殺生丸が問いかける。
「なに、簡単なことさ。もうしばらくルーテシアらと行動を共にし、レリック探しを手伝ってくれればいい」
何でもないことのように、スカリエッティが言い放った。
再び殺生丸の顔がしかめられる。
せっかく元の世界に帰ることができると思ったというのに、これでは今までと何も変わらないではないか。
これまで人間達に同行するという行為に耐えてきたのは、ほとんど無駄だったというのか。
否、そればかりではない。今回の一件で、彼はスカリエッティのやり口を嫌というほど思い知らされた。
要するに、彼女らに同行するということは、都合のいい時に手駒として扱われるということだ。
「この殺生丸を飼い犬とするか」
「いやいや、滅相もない」
相変わらずスカリエッティは、こちらの神経を逆撫でるような笑みを絶やさない。
だからと言って、ここで怒りに身を任せるのは軽率だ。それこそ、元の世界へ帰る手段を完全に失うことになってしまう。
「……帰るぞ、ゼスト」
踵を返し、殺生丸はその場から離れていった。
いいだろう。
今はあの男の言うとおり、この奇妙な3人組と共に行動してやろう。お望みのレリックを探してやろう。
だが、それも自分が元の世界へ帰るまでだ。あの大地を踏みしめた瞬間、奴は用済みになる。
その時こそ、この殺生丸が貴様を八つ裂きにしてくれよう。欠片の一つも残すことなく、現世に生きた痕跡を消し去ってやる。
(果たして飼いならすことができるかどうか……見ものだな)
内心で皮肉げに独りごちた。

21 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/04/05(土) 17:32:19 ID:q2V5keM0
殺生丸達のいなくなったラボ。
残ったスカリエッティは、巨大なスクリーンをじっと見上げていた。
そこに映されたのは、ラボから出たルーテシア一行――その中の殺生丸。
そして、先の戦闘で廃棄区画を駆け抜けた殺生丸。
グラーフアイゼンをえぐった殺生丸。ティアナとエリオを吹き飛ばした殺生丸。シャッハを締め上げた殺生丸。
今日1日のありとあらゆる殺生丸の姿が、空間に浮かび上がった画面を埋め尽くしていた。
「よろしいのですか、ドクター?」
隣に立ったウーノが問いかけた。
「もちろんさ、ウーノ」
スカリエッティは画面から視線を逸らすことなく、答える。
「この俊敏さ、この力。どれを取っても一級品だ。加えて腰の刀を使うことなく、素手でこの大立ち回りを演じている」
前線フォワード陣をことごとく退け、副隊長陣とも互角以上の勝負を繰り広げた。
驚異的な戦果に対する評価は、機動六課側から見たそれと寸分違わぬもの。
「詳細は分からんが、これだけの実力者が頼りにするような代物だ。抜けば生前のゼストにも匹敵しうるかもしれないね」
まだ見ぬ殺生丸の刀の姿を思い浮かべるようにして、スカリエッティが言った。
「でもドクター、妖怪は人間には危険だって言ってなかった?」
銀ドクロを揺らしたディエチが問いかける。
未だに首にさげているこのネックレスは、結局今になっても、何故残しておいたのかは分からない。
当然トーレにも訳を聞かれたし、チンクやスカリエッティからも同様の反応を受けた。
それでも明確な答えを見つけることはできなかった。
何だかそれでは薄気味悪いような気がするので、結局答えがはっきりするまでは持ち続けることにしたらしい。
「ああ、確かに妖怪は危険だよ。人の命を平気で奪う、畜生以下の存在さ」
ディエチの方へ首を向け、はっきりとスカリエッティは言い放った。
いかなる伝奇を紐解いても、妖怪について好意的に書かれたものはそう多くは存在しない。
いつだって奴ら妖怪は、人間の敵なのだ。超常現象を起こして人間を捕食するような存在なのだ。
「そんな危険を冒してでも、私には知りたいことがある」
言いながら、スカリエッティは再び視線をモニターに戻す。
アップになったのは、差し出された果実酢の臭いを嗅ぐ殺生丸の姿だ。
「妖怪というのは、突き詰めれば自然界の生物の延長上でしかない。例えば、彼が犬や狼のそれであるように」
ただの悪戯にしか見えなかったあれも、実は殺生丸の実体を見極めるというちゃんとした意味があったらしい。
実際のところ、妖怪の外見が全くの創作であるケースは、ほとんど皆無と言っていい。
たとえば、九十九の蝦蟇という妖怪がカエルの化身であるように。鬼の外見でさえも、人と牛を足したものに過ぎない。
つまり、嗅覚に秀でた殺生丸は、同様に強いそれを有した犬科の動物の化身であるということだ。
「であれば、それを突き動かす最も強力な意識は、野性的な本能だ」
理性というのは、文明を持った人間の特権とでも言うべきものである。
野に生きる妖怪達の思考における比重が、そんな理性に傾くはずもない。
「見たいんだよ、私は。未だ理性で己を律している彼が、その野性をむき出しにする姿を」
いつしかスカリエッティの声には、うっとりとしたような響きが宿っていた。
「さぞ壮絶だろう。さぞ凶悪だろう。ああ、果たしてその猛威を前に文明の結晶たる魔法技術は、どこまで追いすがれようか?」
長年待ち望んだ恋人に向けるかのように、スカリエッティは言葉を紡ぐ。
「理性と野性、相反する意識……結局どちらが優れているのか? どちらの追求が正しき進化の形なのか?
 そう……それこそが私の追い求めていた最大の命題!」
理性が生み出した力を振るう管理局と、野性の力を携えて現れた殺生丸。この戦いこそ、長年彼が求めていたものだった。
管理局が勝利すれば、人間がこれまで培ってきた科学の力の正当性が証明される。
殺生丸が勝利すれば、それは生命体が持つ潜在能力の更なる可能性の証明になる。
「さぁ見せてくれ、殺生丸君!
 君の本能は、肥大化した人間の理性を打ち砕くほどに強いのか、はたまたその巨大な力に脆くも屈するのか?
 ここは今や、理性と野性の激突する戦場……この私がプロデュースする、生命科学の最高の実験場!」
狂気の笑みに口元を歪ませながら、スカリエッティが興奮気味に叫んだ。

22 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/04/05(土) 17:33:36 ID:q2V5keM0
スカリエッティのラボの入り口は、木々の生い茂る山間部に位置している。
太陽も傾いてきた今、殺生丸らはその森林の中にいた。
「やっぱ当たったなー、嫌な予感」
忌々しげにアギトが呟く。
やはり今まで2週間以上待たせたのは、殺生丸をこのメンバーになじませるためだったようだ。
別に彼の存在が嫌というわけでもない。何だかんだ言って、ちゃんと義理を通す人間であることは今回で理解できた。
問題はこの哀れな次元漂流者が、いいようにスカリエッティに使われるようになったことだった。
「別にいいよ。早くレリックを見つければいいだけ。そうすればお母さんは生き返るし、殺生丸も帰れる」
頼もしく方針を語るルーテシアだったが、その目はいつにも増して虚ろな様子だった。
無理もない。今日はたくさんのことがありすぎた。
ガリューと共にレリックを確保に向かい、その先で交戦があって、逮捕されかけて、おまけに地下道を歩いた。
結局のところ幼い子供に過ぎない彼女が疲れを覚えるのも、当然の帰結だろう。
そしてその幼い子供が求める行動は何か。
簡単なことだ。疲れを癒せるような場所を探す。
こういう疲れた日には、いつものように地面に寝転がるということはしたくない。
どうせなら、もっと寝心地のいい場所が欲しい。
理想的なのはベッドである。無論、そんなものがないことは知っている。
ならばせめて、ふかふかな物が欲しい。手触りがよく、温かい、ふわふわもふもふとした都合のいい物が――
「………」
――あった。
ルーテシアの視線の先にあったのは、木にもたれかかるようにして座る殺生丸の姿。
その肩から垂れ下がる、たてがみのようなふかふかした毛皮。
あれは大層さわり心地のよいものだろう。おまけにあれだけのサイズだ。身体を預けるのには不自由はない。
ゆらゆらとルーテシアは歩み寄り、その手にふわふわもふもふの触感を求めて、
「……?」
その毛皮へと倒れこんだ。
「あったかい……」
満足げに呟く。なかなかどうして、予想以上に心地よい代物だ。
さすが高そうな着物を着ているだけあって、こちらも最高級のベッドに勝るとも劣らない。
とは言ったものの、所詮浮浪者同然のルーテシアには最高級ベッドで寝たことなどないので、素直に毛皮の寝心地だけを賞賛する。
しかし、一方の殺生丸にとってはたまったものではない。
しばらくは何が起こったのかと怪訝そうな表情を浮かべていたが、やがて困ったように微かに眉をひそめる。
こんな風にしがみ付かれては、動くことはおろか立ち上がることさえできないではないか。
大体、何故高々2週間しか付き合っていないような娘にそんなに馴れ馴れしくされなければならない。
よって殺生丸は、強引にルーテシアの身体を払いのけようとするのだが、
「……すぅ……」
消え入るような吐息が、それを阻害した。
どうやらこの幼女は、この寝心地良好な毛布の中で、既に寝入ってしまったらしい。
微かな寝息を立てながら、歳相応の純粋無垢な寝顔を晒している。
これには殺生丸も本格的に困ったのだろう。無理に起こすのも、それはそれで面倒なことだ。
「フン……」
結局、そのまま放置することにした。
斜陽の赤い光が、殺生丸の銀髪を美しく、ルーテシアの寝顔を幸せそうに照らす。
これまでの態度と見比べればあまりに不似合いな対応を見て、傍らに立つゼストは一瞬目を丸くした。
しかし、次の瞬間には、どこかその目つきは穏やかなものになっていた。
「あ、いいなールールー。どれ、あたしも……、ぎゃっ!」
厳つい男の優しげな視線の先で、殺生丸が目線も向けずに、アギトを指先で弾いていた。

23 :リリカル殺生丸 ◆9L.gxDzakI :2008/04/05(土) 17:34:47 ID:q2V5keM0
投下終了。
これで連載における公約=毛皮もふもふを果たせたぜ、ヒャッハー!(ぇ

今回で明文化(といってもスカ博士が推測しただけですが)されましたが、
殺生丸の当SSでの強さは、素手でAAランクの魔導師クラス、爆砕牙付でSです。
要するに本気になれば、リミッター解除時の姐さんよりちょい強いくらいといったところ。
かなりの実力ですが、セフィロスのような化け物じみた強さではないということです。
彼はいくら種の中では最強クラスと言えども、いっぱしの妖怪ですから……ねぇ?

24 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 18:01:43 ID:vqS7S+k9
GJ
スカリエッティと殺生丸がついに邂逅か・・・
先が気になる。
しかし、殺生丸ロリコン疑惑にまた一つ燦然と輝く星がwww
りんのときといい、やっぱ根が優しいからだろうか。


25 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 18:03:38 ID:/YmpLMHx
乙でーす

これからどうなっていくのか楽しみですな
しかし、死者を生き返らせる天生牙に破壊のエネルギーが残り続ける爆砕牙
どっちも凄い得物ですよねぇ なのは側がどんなリアクションするのやらw

26 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 18:57:31 ID:DMiBA6Us
GJ!
犬夜叉はアニメを数回しか見たことありませんが、面白いですね!

27 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 19:30:20 ID:K9YPeJch
>>23
GJです!しかし殺生丸サマも丸くなりましたね。
りんと出会う前なら確実にキレてあの場で後先考えずに
暴れまわって強制ENDだったでしょうに。
しかし狛犬モードになったが最期スカどころか
地上本部は影も形も残らんのでは。
しかし何気にアギトが邪見爺の位置にW

28 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/04/05(土) 20:03:33 ID:L38ZIGGj
それでは投下します

29 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 20:04:15 ID:30+l7TV+
支援

30 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/04/05(土) 20:04:56 ID:L38ZIGGj
「どりゃああああ!!」
「ちょ、ちょっとタンマーッ!」

緑色に光る鎖――チェーン・バインドが体に巻き付いている。
渾身の力をこめ、体を動かそうともがくが全く身動きが取れない。
そんなヴァッシュに対し、雄叫びを上げ疾風の如くスピードでアルフが突っ込んで行く。
高速で空を飛ぶ魔導師にとっては十数mなんて距離は意味をなさない。
この数十分にわたる戦闘でヴァッシュはそれを嫌という程思い知っている。
が、体は動かない。
一瞬でアルフとヴァッシュとの距離はゼロとなり、不可避の拳が風を切りながらヴァッシュの顔面へと迫り――――


人を死なせないため、殺さないため、毎日毎日百何十年と訓練をし戦って来た。
その経験で培ってきた物は伊達ではないと思っている。
だけど今回に限ってはその経験は全く通用しなかった。
全てが予想を遥かに超えていた。
銃を構え、狙い、引き金を引く。
銃ならこれだけですむ事が、魔法ではそうもいかない。
正直言って分からない事だらけだ。
リミットまで後三日。
これで本当に魔法を使えるようになるのか?


鈍い衝撃が顔面を貫く最中、ヴァッシュはそんな事を考え、闇の中へと意識を手放した。


■□■□

あれから直ぐに、ヴァッシュは魔法を習得するため、奔走し始めた。
まず始めにヴァッシュは、フェイト、アルフ、なのは、ユーノの四人にこれまでの経緯を話し、コーチを頼み込んだ。
三者三様の驚きを見せたがみんな快く承諾してくれ、訓練室を借り早速練習を開始した。
と、ここまでは順調だったのだが、いざ特訓という段階に来て一つの大きな問題が浮上した。

それはヴァッシュが魔法について全くの無知だということ。

魔法とは理論である。
なのはの様に魔法を感覚的に捉え扱う事が出来る魔導師などそれこそ一握りしかいない。
当然、魔法について何も知らないヴァッシュが使える訳などなく、特訓は魔法についての教授から始まった。



31 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 20:05:41 ID:Iyqotdud
待ってたぜ、ヴァッシュの活躍に期待大!!

さあ全世界の内籐信者よ支援の時間だ、好きな得物で支援砲火! 俺はこのパニッシャー(マスターチャペルver)で行かせてもらう!!!

32 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/04/05(土) 20:08:31 ID:L38ZIGGj
なのはは魔法を使えない、フェイトも怪我をしている上にデバイスも故障中、ユーノはサポート役、ということでヴァッシュの相手アルフに決定した。

「んじゃ、お手柔らかに頼むよ、アルフ」
「OK!一応手加減はするけど怪我しないでね、ヴァッシュ!」


そして、模擬戦が始まった。
とはいえヴァッシュはまだ魔法も使えないヒヨっ子同然。
本気で戦ったらそれこそ大怪我を負わせてしまう。
それにこれはあくまで魔法の力を開花させる為の模擬戦だ。
アルフはそう判断し、適度に力を抜き、戦闘を開始した。



だがここで思わぬ事態が発生する。
アルフの予想を遥かに超えてヴァッシュが実力を有していたのだ。
何発、何十発と拳を飛ばしても、虚しく空を切るのみ。
当たるどころか、かすりもしない。
これに驚いたのは、離れて見ていた三人だ。

謎の襲撃者と戦闘を行った事から相当な実力を持っているとは思っていたが、実際目にしてみると、自分達の予想を遥かに越えている。

魔導師の機動力にも反応する反射速度、人間技とは思えない身のこなし。
目の前にいる化物のような人間に三人は驚愕することしか出来なかった。

そしてそれから数分後、もはや本気で戦っていたアルフが遂に音を上げた。
模擬戦の結果――
アルフ怪我なし、疲労大。
ヴァッシュ怪我なし、疲労小、当然魔法使えるようにはならず。
要するにアルフの提案したギリギリ覚醒作戦は失敗。
互いに疲労を残すだけ、という不甲斐ない結果となった。

ひとまず休憩を取りながら、これからどうするか頭を悩ますコーチ陣。

そこで再びアルフがある提案をした。

提案の内容は「一人で駄目なら二人でやればいい」。
要するに「二人で戦って追い詰め、今度こそ覚醒させちゃおう!」といったものだった。

アルフに加え、対戦相手として選ばれたのは、サポート役のユーノ。



33 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/04/05(土) 20:10:07 ID:L38ZIGGj
「今度は負けないよ!ヴァッシュ!」
「ちょっと、趣旨忘れてないよね!?」
「えっと、僕はサポートだけで良いんだよね……」
「ねぇ、フェイトちゃん。アルフさんから軽い殺気を感じるんだけど……」
「だ、大丈夫だよ。アルフも分かってるはず…………たぶん」

――そして、再び模擬戦が始まった。

だが、今回の模擬戦は先程と違い、一瞬で決着した。
まず、ユーノが不意打ち気味のチェーン・バインド。
バインドの存在を知らないヴァッシュは回避することが出来ず捕縛される。
その場に縛り付けられ身動きを封じられる。
束縛を解こうと体に力を込めるも、無意味。
鎖はびくともしなかった。
そこに矢のようなスピードで突っ込んだアルフの正拳が直撃。
ヴァッシュの意識はブラックアウト。
こうして貴重な三日の内の一日目はあまり意味のなさない模擬戦と、魔法の基礎講座にて終了となった。


■□■□

「あ、気がつきました?」

ヴァッシュが目を覚ましたのは模擬戦終了から四時間ほど経った、夜の九時だった。

「あれ……?ここは?」
「ごめん、ヴァッシュ!ここまでやるつもりはなかったんだよ!」

微弱な痛みを訴える頭を抑え体を起こしたヴァッシュに対し、アルフが物凄い勢いで謝り始める。
そんなアルフの後ろには、珍しく怒りを露わにしたフェイトが立っている。
ヴァッシュはそれを見て、自分が気絶してから起こった事を何となく察した。

「いやいや、大丈夫だって!」

涙目で謝り続けるアルフに向け、ヴァッシュは微笑みかける。
その微笑みにはどこか同情の色が入っているのは気のせいではないだろう。

「……本当?」
「ああ、大丈夫。それよりもありがとうな、良い経験になった。試験に向けて魔導師との戦闘経験を積んで置いた損はないしね」

その言葉にアルフはホッと息をつき、安堵する。

「……それよりも、今何時か分かるかい?」
「確か九時くらいだと思いましたけど」

先ほどに比べ若干怒りが収まった様子のフェイトが答える。

「九時か……もう遅いし今日はこれでお開きってことで、良いかな」
「そうだね。今日は色々とあったし……んじゃ、また明日ね〜」
「本当にすみませんでした、ヴァッシュ。アルフにはしっかり言い聞かせたんで……」
「ああ、そんな気にしなくていいって。それより、また明日も頼むよ!」

最後に二人は、なのはとユーノにおやすみと告げ、フェイトとアルフは部屋を後にした。



34 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/04/05(土) 20:11:45 ID:L38ZIGGj
「んじゃ、僕も部屋に戻ろうかな。ヴァッシュさんも完全に怪我が治った訳じゃないんですから無理しないで下さいね」
「無理言って悪かったね。あと治療してくれたのユーノだろ?ありがとうな」
「どういたしまして。それじゃおやすみ、なのは」

ユーノも部屋を出て行く。
部屋に残ったのはなのはとヴァッシュの二人のみ。

「なのはも部屋に戻った方が良いよ。まだ体の調子良くないんだろ――」
「何をやってるんですか!」

ヴァッシュの言葉を遮るように、なのはがヴァッシュに詰め寄った。
その顔には呆れとも、悲しみとも、怒りとも取れる表情が張り付いている。

「な、なにをって……」

いきなりの怒声にヴァッシュはタジタジになりながら、冷や汗を流す。

「いきなり魔法を覚えるなんて!無茶にもほどがありますよ、まったく!」
「い、いや、最初は魔法を覚える気はなかったんだけどさ……魔法覚えなくちゃ管理局には入れないってリンディが言ってたから……」
「そもそも、何で管理局に入るなんて言っちゃったんですか!?」

なのはは理解出来なかった。
昨日まで、魔法も管理局について何も知らなかった筈のヴァッシュが起こした突飛な行動を。

「いやぁ……そうすれば元の世界に戻らなくてもすむかなぁって」

ヴァッシュの答えを聞いた瞬間、なのはは自分の頭がカッと燃え上がるのを感じた。
脳内を燃やす炎の名前は『怒り』。どうしようもない怒りが心の底から湧き上がった。

「ッ……!なんでそうやって自分を犠牲にするんですか!?」

怒りに身を任せ声を荒げ、ヴァッシュを睨む。



35 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/04/05(土) 20:13:14 ID:L38ZIGGj
「だってそれ以外になのは達の世界で暮らす方法がないだろ?」

事も無げに答えたヴァッシュの顔には笑顔。
それは、空っぽでは無い中身の詰まった心の底からの微笑み。
それを見てなのはは押し黙る。
ヴァッシュが心の底から望んでこの道を選んだ事に気付いたから。

「…………いいの?本当に危険な目にあうかもしれないだよ?」
「まぁ正直言えば怖いってのもあるけど……」

そこで言葉を切ると、ヴァッシュはなのはへと向き直り真っ直ぐに見詰める。

「それでも僕はなのはの世界で暮らしたい……重い罪も過去も全てを捨てて……この平和な世界で……ね」

なのはは、自分の心臓がドキリ、と跳ねたのを感じた。
ヴァッシュの優しい微笑みの中に、一瞬とても冷たい影が灯ったのが見えたから。
その影から、底も見えない凄惨な過去を垣間見たが気がしたから。
なのはの体が一瞬だけ僅かに震えた。



36 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/04/05(土) 20:14:01 ID:L38ZIGGj
「まぁ、なのはには迷惑かけちゃうけどね。それと……ゴメンよ、さっきあんなに怒られたのにまたこんな事になっちゃって」

苦笑いをしながら両手を合わせ、深々と頭を下げるヴァッシュ。
その仕草にはさっき見えた冷たい影など欠片も存在せず、いつもの飄々としたヴァッシュだった。
その時、ポスン、とヴァッシュの頭に衝撃が走った。
頭を下げていて分からないが、何かが頭の上に乗っている。
それがなのはの手だということにヴァッシュが気付いたのは、きっかり十秒後だった。

「な、なのは?」

ヴァッシュが疑問の声を上げた直後に、なのはが口を開いた。

「…………分かりましたよ、もう!」

十割を呆れで占めているなのはの声。
この時なのはは、呆れ声とは裏腹に満面の笑みを見せていたのだが、頭を押さえられ顔を上げられないヴァッシュには見ることが出来なかった。



「な、なのは?」
「頑張りましょう、ヴァッシュさん!………………私ももっとヴァッシュさんと過ごしていたいですし」

そう言いなのはが手を離す。

「ありがとな……なのは」

顔を上げ、そう言うヴァッシュの顔にあるのは笑顔。
太陽のような微笑みを浮かべ、なのはの頭を撫でる。

「も、もう、やめて下さいよ!」

恥ずかしそうにヴァッシュの手を払い、なのははベッドから立ち上がる。

「それじゃ、また明日。……絶対合格しましょうね!」

元気にそう言い扉から出て行くなのはを、ヴァッシュは手を振って見送る。

「合格、か……頑張んなくちゃなぁ……」

誰もいない病室にてヴァッシュが呟く。

それから数秒後、ギシリというベッドの軋む音と共にヴァッシュが立ち上がる。
まだ休む訳にはいかない。三日後の試験に合格するために。
まだ生きていたい。この夢にまで見た平和な世界で。


――台風は自らの願いを叶えるために戦いへ臨む。




37 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/04/05(土) 20:15:52 ID:L38ZIGGj
■□■□

――三日後。

「さて用意はいいかしら、ヴァッシュさん?」

ここはミッドチルダの片隅に位置する廃ビル場。
そこに設置されたスピーカーから流れるリンディの声を聞き、ヴァッシュは小さく頷く。
やるべき事はやった。
後は自分の全てを出すだけだ。

ヴァッシュは正面に立つ対戦相手と思しき少年を見詰める。
見た目はなのはやフェイトより少し年上の少年といった感じだが、雰囲気は違う。
フェイト並の、いやフェイト以上に秘めた力を感じる。

「それじゃあルールの確認をします。
ヴァッシュさんの勝利条件は魔法でクロノに一撃当てること。クロノの勝利条件はヴァッシュさんを気絶させること。
後、クロノは飛行の使用は禁止。まぁハンデといったところかしらね」

クロノが首を縦に振り、それを了承する。

「よろしくな、クロノ」
「こちらこそ……手加減はしないよ」

僅か数mの距離で二人は相対する。
クロノの手にはデバイスS2U、ヴァッシュは相棒の拳銃すら持たず無手。
二人は、静かに始まりの合図を待つ。

「それでは、ヴァッシュ・ザ・スタンピードの管理局入隊試験を開始します!」

凛としたリンディの声と共にならされる試験開始の合図。

まず動いたのはクロノだった。
デバイスを起動、瞬時にバリアジャケットが形成される。
そのまま流れるような動作でS2Uの杖先をヴァッシュへと向け、魔力を集中。

対するヴァッシュは杖先から逃れるように廃ビルを目指し移動する。

「ブレイズキャノン」

後数歩で廃ビルへと辿り着く、といったところで青色の奔流が放出された。
ヴァッシュはこれに動じる事なく、大地を蹴り大きく横っ飛び。
数m横を巨大な青い光が通過する。


「……おいおい……」

ブレイズキャノンによる破壊痕を見てヴァッシュが呟く。
先程の冷静な回避行動とは裏腹に、その顔には冷や汗を流れている。
魔導師というのは本当に見かけによらない。
そんな事を再認識しつつ体勢を立て直し、再度ビルへと駆ける。

「スティンガースナイプ」

次いで攻撃したのは、再びクロノ。
青色の魔力弾を形成。
冷や汗を流しているヴァッシュへと発射。



38 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 20:16:35 ID:gC+oedBb
はるか次元の彼方、まだ見ぬ遠き場所で支援し続けられるクロス作品…支援w

39 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/04/05(土) 20:17:15 ID:L38ZIGGj
(誘導弾!)

襲撃者との戦いでも見た。術者の思い通りに動き、敵を狙い続ける魔弾だ。
ならばと、ヴァッシュは廃ビルへと飛び込み、物陰へと身を隠す。

誘導弾とは結局、術者の目を頼りに動く魔法。
術者から見えない場所に隠れれば攻撃が当たることは無いし、ここは室内、隠れる場所など幾らでもある。

ヴァッシュのその判断は間違ってはいないし、ビルへと逃げ込んだ事自体は良策といえた。

魔法の特性の一つ非殺傷設定。

非殺傷状態の魔法は物理的な破壊力を持たなくなる。
当然このような試験では非殺傷設定が用いられている。
という事は、だ。
どれほど威力を有する魔法でもビルを形成するコンクリートを破壊する事は不可能。
つまり、壁越しでの攻撃も不可能。

実力から見ると圧倒的不利な戦いだが、このビルに逃げ込めた事自体は大きなアドバンテージ。
火力、射程距離、機動力、全てに於いてクロノに劣るヴァッシュが唯一対等に戦闘を行える場所といっても過言では無い。


物陰から僅かに顔を出し誘導弾をやり過ごした事を確認すると、ヴァッシュは階段を見つけ駆け上がった。


■□■□

スティンガースナイプによる攻撃は失敗と判断したクロノは小さく舌打ちをした。

初弾の砲撃は正直当たったと思ったし、誘導弾だって相手を倒すつもりで放った。
そのどちらもが回避されるとは思わなかった。
予想を遥かに超え相手の動きが良い。
別段、足が早いとかそういった訳では無いが、攻撃に対する反応と判断力がずば抜けている。
純粋に反応と判断力だけを見たらフェイトとなのはより上、いや自分よりも上に位置するだろう。

(少し甘く見てたかもな……)

魔導師としては初心者かもしれないが、戦士としては自分以上の経験を有している。
気を抜いたら逆に負ける可能性もある。
そう判断した方がいい。

(……それにしても厄介だな)

そんな相手にビルへの侵入を許したことは正直、痛手だ。
遠距離からの砲撃と誘導弾の使用は制限され、こちらのアドバンテージを大きく潰されてしまった。

ビルの外側から非殺傷設定を解除した砲撃で攻撃する、といった事も出来るが万一、ヴァッシュに直撃でもしたら目も当てられない。
それこそ殺してしまう。
実戦ならまだしも試験でそんなことは出来ない。当然この作戦は却下。
飛行魔法も禁止されてる今、行える手は――

「これしか無いか……」

――結局は相手が陣取る廃ビル内での戦闘しかない。



40 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/04/05(土) 20:18:51 ID:L38ZIGGj
ため息を一つつき、クロノはヴァッシュが入っていった廃ビルへと近付いていく。
この時クロノは、少しばかりの高揚感を感じていた。
久し振りに自分以上の戦闘経験を持つ強者と戦える事による血湧きか、それはクロノ自身でさえ分からない感情であった。

(でも悪い気分じゃない……)

僅かに笑みを浮かべクロノは歩を進める。
その姿にはいつも以上に力が漲っていた。

■□■□

初撃のブレイズキャノン、追撃のスティンガースナイプスをヴァッシュが回避した事を確認し、なのは達は安堵した。

ここは管理者のモニター室。
前面の大型モニターにはヴァッシュとクロノの様子が逐一映し出されている。

「……ヴァッシュ、大丈夫かな?」

なのははフェイトの呟きに答える事が出来ない。
正直にいってヴァッシュに魔法の才能があるとは言えなかった。
それでも三日間本当に努力をしていた。
毎日寝る間も惜しんで訓練をしていたし、模擬戦も沢山やった。
でも不安は拭えない。
――ヴァッシュが合格する光景が全く頭に浮かばない。

「間に合ったぁ!」

と、その時モニター室の扉が開いた。
同時に聞こえたのは慌てた様子の少年の声。

「ユーノ君!」
「ようやく仕事も片付いてね。なんとか時間をもらったよ……それでヴァッシュさんは?」

手早くなのは達へと近付きモニターを見るユーノ。
その瞬間、ユーノの表情が驚愕に染まる。

「な……相手はクロノなのか!?」

クロノはAAA+クラスの魔導師。
並の魔導師ですら一撃をいれる事は不可能に近い。
事実、嘱託試験時にクロノと戦ったフェイトは一撃に攻撃に成功させることなく敗北した。

魔法初心者のヴァッシュを相手にクロノが出てくる事がユーノには信じられなかった。

「そ、それで、あれからヴァッシュさんはどんな魔法を使えるようになったの?」

あれからユーノはある仕事を頼まれヴァッシュの特訓に付き合う事が出来なかった。
何も知らないユーノは一縷の希望に縋るように、なのはへと問う。

「……射撃魔法」
「そっか……よし!」



41 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 20:19:00 ID:gC+oedBb
クロノ、お前は魔導師ではなくただのガンマンの前にひれ伏す! 支援

42 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 20:19:51 ID:POj7PP1K
支援

43 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/04/05(土) 20:20:24 ID:L38ZIGGj
射撃魔法とヴァッシュのずば抜けた身体能力があれば一撃位なら何とかなるかもしれない。
小さな希望がユーノの胸に湧く。
が、その希望は次のなのはの言葉により砕け散った。

「…………撃てないけど」
「……え?」

その信じられない一言にユーノは思わず聞き返す。
なのはは何て言ったんだ?
『撃てない』?

「ちょっ……ちょっと待った!撃てないって……魔力弾を撃ち出せないの!?」
「…………うん」

重苦しくなのはが頷く。

「しかも、魔力弾を作れるっていっても、十分位時間かけてやっと一発作れるくらいだしね……」

更に絶望的な事実をアルフが口にする。
十分かけて一発の魔力弾しか作れない、しかも撃ち出す事すら出来ない失敗作。
それは、魔法を使えないと同意義だ。
そんな状態でクロノに一撃を入れるなんて無茶だ、いや無茶を通り越して無謀だ。

「……そんな」

心が真っ黒な無情感に包まれていくのをユーノは感じた。


■□■□

僅かに息を切らしながらヴァッシュは階段のすぐ側の物陰へと身を寄せた。

ビルの最上階。
階段は屋上へと続いているが、ヴァッシュはこのフロアにてクロノを迎え撃つことに決めた。

ヴァッシュの狙いは不意打ち。
自分は魔力弾を作る事しか出来ない。しかもそれは撃ち出す事すら出来ない程に未熟。

ならばどうする?
答えは簡単だ。
撃ち出せないのなら叩きつける。
手のひらに浮かぶ小さい魔力弾を直接。思い切り。腕ごと。

ヴァッシュが考えついた作戦は策ともいえない無謀なモノだった。

(落ち着け……チャンスは一回。失敗したらもう後は無い……集中だ、集中するんだ)

それでもヴァッシュは諦めずに魔力を煉る。
本当に少しずつではあるが右手に魔力が集中していくのが感じ取れる。



44 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/04/05(土) 20:22:05 ID:L38ZIGGj
このビルはワンフロアが相当に広い。
自分――ヴァッシュ・ザ・スタンピードが何処にいるか分からないクロノはフロアを虱潰しに探索するしかない。
ワンフロアを調べ終わるのに最低でも数分は掛かるだろう。
つまり、クロノが最上階に辿り着く頃には十五分は経過している筈。
これだけ時間があれば魔力弾は充分作れる。

そしてこの位置、階段の直ぐ側。
飛行魔法が禁止されている以上、クロノが上階に辿り着くにはこの階段を使わざるを得ない。
それは確実。百%といえる。
そこを突く。

ヴァッシュは息を押し殺し魔力弾を形成するのに全神経を集中させる。

一分
二分
三分

魔導師の試験とは思えない程の静寂。
その中、ゆっくりと時は刻まれていく。

(あと七分……)

ヴァッシュは焦る事無く、ゆっくりと着実に魔力を魔力弾へと送る。

滴り落ちそうな程に貯まった汗すら気にせずに集中し続ける。

五分
六分
七分

――そこでヴァッシュにとって思いがけない事態が発生する。

足音が聞こえる。
小さな音だがしっかりと。
それは、ゆっくりとこちらに向かって近付いてくる。

(そんなバカな……早すぎる!)

まだ七分しか時間は経っていない、何でこんなに早くここに辿り着く?

そこまで考え、ヴァッシュの脳裏にある考えが閃く。

――魔法。

もし、まだなのは達が教えていない魔法が存在するとすれば?
例えば、隠れた人物の居場所を特定するような便利な魔法。
それが使われたとしたら?
自分の居場所など容易くバレるだろう。

「っ……!」

悔しげに唇を噛みながら、ヴァッシュは階段の側から、フロアの奥へと移動する。

(あと三分もあれば魔力弾の形成には成功する……なら、今は時間を稼ぐ……!)



45 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 20:22:28 ID:gC+oedBb
「まだ一発残ってるぜ、スペシャルなのがな」(CV小野坂 昌也)支援

46 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 20:23:53 ID:Nk5QgSy7
支援

47 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/04/05(土) 20:24:39 ID:L38ZIGGj
すぐさまヴァッシュは身を翻し、階段から一番離れた部屋へと逃げ込む。
ほどなくして足音も階段を登りきり止まった。
少しだけ顔を出し様子を覗き見ると、クロノが階段を登りきった所で魔法陣を展開している。

(あれが探索魔法か……?)

魔法陣の中心でクロノは目を瞑ったまま動かない。

探索系の魔法といってもすぐに見つける事は出来ないのか、僅かにヴァッシュは安堵する。

あと二分。

総量の問題か、それとも他の何かの影響か、自分の魔力は魔力弾を一発形成するだけで枯渇してしまう。
そのせいか体がダルい。
ヴァッシュは大きく息を吸い込み酸素を体へと送り、己を叱咤する。

(あと、少しだ……集中しろ、ヴァッシュ・ザ・スタンピード!)

――その時、クロノの足元に展開されていた魔法陣が消失した。
次いで再び魔法陣が展開される。
同時に青色の魔力弾が二つ現れる。先ほどと同じ誘導弾。

(位置がバレた!)

ヴァッシュがそう判断し部屋を飛び出したのと同時に魔力弾が動き出す。


一つは一直線にヴァッシュへ、もう一つは軌道を読まれないよう不規則な動作でヴァッシュを目指す。

(速すぎだって!)

心の中でぼやきながらも、一つ目の魔力弾は横にステップし回避。
時間差で襲うもう一つの魔力弾をヴァッシュは睨み、それに向かって床に落ちている瓦礫を蹴り上げる。
軌道は不規則、弾速は目にも止まらぬスピード。
だが、ヴァッシュが蹴り上げた瓦礫は魔力弾に吸い込まれるように命中。
非殺傷設定の魔力弾は瓦礫を貫く事なく消失する。

魔力弾を防いだことを確認すると、同時にヴァッシュは床に這い蹲り、後ろから迫る魔力弾を避ける。
瞬時に立ち上がり再び瓦礫を蹴り上げ、魔力弾を狙う。
命中。
消失。

「……信じられないな……本当に君は人間か?」

あまりに現実離れした魔力弾の回避法を目の当たりにし、クロノは呆然と声を上げる。

「いやいや、魔導師っていうのも人間とは思えないって……マジで」

苦々しい笑みを張り付かせヴァッシュはクロノを見詰める。




48 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/04/05(土) 20:26:20 ID:L38ZIGGj
「……悪いけど、これで終わりにさせてもらう」

クロノの足元に魔法陣が浮かび、それと共に青色の光剣が出現する。

「ここは室内。逃げ場はない……降参するんだ」
「逃げ場……か。まぁ、逃げ場は無いね」

この絶望的な状況でもヴァッシュはその飄々とした態度を止めない。

「でも、こういう手はあるんだよ……ね!」

そう言うと同時にヴァッシュはクロノに向かって真っ直ぐに駆け出す。
遂に形成し終えた真っ白な光を放つ魔力弾を背中へ隠しながら。

「スティンガーブレイド・エクスキューションシフト!」

同時に幾多に及ぶ光剣が、ヴァッシュ目掛け射出される。
それでもヴァッシュは怯まず、光剣の壁へと突き進む。
標的はこの壁の向こう側に立つ人物。

光剣はヴァッシュに触れると同時に爆散し青色の爆炎がヴァッシュを包む。
だが、それでもヴァッシュは倒れない。
体で白色の魔力弾を庇いながら嵐が過ぎるのを待ち続ける。
そして、ついに嵐は止んだ。

魔力ダメージにより今にも倒れそうな体を必死に動かす。

「う、おぉぉぉお!」

獣の如く咆哮と共に、弾かれたようにヴァッシュが走り出す。
クロノは術を放った直後、次の術を放つにも大きなタイムラグが生じる。
その隙を付き、ヴァッシュが迫る。

五メートル

体が揺れる

四メートル

膝が笑う

三メートル

それがどうした

二メートル

俺は、絶対に――

一メートル

ヴァッシュの足が止まった。
いや、足だけじゃない体も魔力弾を持っている腕も、ピクリとも動かない。

「――保険を掛けといて良かった」



49 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/04/05(土) 20:28:23 ID:L38ZIGGj
そう呟くクロノの足元には、いつの間にか魔法陣が浮かんでいる。
そこから伸びる青色の鎖はヴァッシュに絡みつき、動きを止めている。

「……ッ!」

ヴァッシュの顔が悔しそうに歪む。

「……あの攻撃を耐えるとは思ってもみなかったけど……これで、終わりだ!」

クロノがゆっくりとS2Uを振り上げる。
その間にもヴァッシュは必死に体を動かそうともがく。

(動け!動け!動くんだ!こんな所で終わってたまるか――)

「ブレイク……インパルス!」

衝撃と共にヴァッシュの意識は闇の中に消えた。

■□■□

次にヴァッシュが目を覚ました場所は、管理局本部の病室であった。

覚醒と同時に試験の事を思い出す。

「……不合格……か」

ヴァッシュは悔しげに両手を握り締めうなだれる。
結果はボロ負け。
相手から逃げ回り、隠れ続けた上、攻撃を当てる事は出来ず。
誰がどう見ても不合格だ。

「……本当に暮らしたかったのになぁ……あの世界で……」

あの世界に居たかった。
今でも心の底から願っている。

「……クソっ!」

ヴァッシュは苛立ちをぶつけるかの様に左手で壁を殴りつける。

(――ん?)

そこでヴァッシュはある事に気付いた。

(左手?あれ?何で義手がついてるの?)

そう。この一カ月存在しなかった左腕がそこにはあった。
しかも、高性能。
前の義手同様、自分の思い通りに動く。



50 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/04/05(土) 20:29:02 ID:L38ZIGGj
思わず口からそんな呟きが漏れたと同時に――

「ヴァッシュさん!」

――なのは達が飛び込んで来た。

「やったね!ヴァッシュ!」
「おめでとうございます、ヴァッシュさん!」
「凄いですよ、ヴァッシュ!」
「やったよ!ヴァッシュさん!」

みんな嬉しそうに微笑み何故か賛辞の言葉をヴァッシュへと投げかける。
まるで良い出来事が起こったかのようだ。

「あの……なんでみんな嬉しそうなの?」

当然の如く疑問が口から出る。

「なんでって……合格したんですよ、ヴァッシュ?」
「は?」
「そうだよ。最後に魔力弾を撃ち込んだじゃん」
「へ?」
「驚きましたよ、土壇場で魔力弾を打ち出せるようになるなんて!」
「え?」
「そういう事です!合格おめでとうございます!」

なのはが大きな声で告げる。
その言葉に答える事なく固まるヴァッシュ。
ヴァッシュの頭はみんなの言った言葉を理解する為にフル稼働を始めた。
――そして数瞬後。

「えぇぇええ!?嘘ぉ!?合格ぅ!?」

――ヴァッシュの大声が病室に響き渡った。




51 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/04/05(土) 20:29:59 ID:L38ZIGGj
■□■□

管理局本部休憩所、多数の自動販売機が置かれているそこにリンディとクロノは座っていた。
クロノはリンゴジュースを片手に、リンディはいつも通りの緑茶を片手にしている。

「お疲れ様。ごめんなさいね、あなたしか頼める人がいなくて……」
「大丈夫ですよ。それに僕も全力でやった結果です」

申し訳なさそうに呟くリンディにクロノが首を振る。

「それで、ヴァッシュさんはどう?」
「強い……ですね。ハンデを付けていたとはいえ僕の魔法を何回も回避しましたし」

そこで言葉を切りクロノはリンゴジュースを喉に流し込む。

そう。
あの戦いには多数のハンデがあった。
一つは試験会場。
本来、あれはリンディが独自に執り行った入隊試験。
そんなもの管理局の訓練所で済ます事だって出来た。
が、それにも関わらず試験を行った場所は、陸戦魔導師達の試験場として使われる事もある廃ビル場。
隠れる場所が多数存在するヴァッシュにとって有利なフィールドであった。
更にはデバイスに組み込まれたリミッター。
それらがクロノの魔法の威力、効果を著しく削っていた。

「そう、それは嬉しい事ね」

ハンデを付けるよう采配した張本人――リンディは嬉しそうに微笑む。

「……でも、何でこんなにややこしい事をしたんです?」
「……強いて言うなら最低限の実力を有してるかの確認を取る為……かしらね。
本気のクロノが相手じゃ、ちょっと可哀想でしょ?他に借りられる魔導師もいなかったし」
「最低限の実力ですか……」
「まぁ、それだけじゃないけどね」

そう言いクロノに微笑みかけたリンディは勢い良く立ち上がる。
少しでもヴァッシュの助けになればという気持ちが有った事は否定しない。
でも、これ位のハンデじゃ到底この試験に合格する事は無理だと考えていた。
だから、ヴァッシュが魔力弾をクロノに飛ばし、命中させた時は心底驚いた。
魔法を習い始めて三日の男がAAAランクの魔導師に一撃を入れる。
そんな信じられない事をあの男はやってのけた。

「本当に不思議な人よね……」

そう言うリンディの顔はどこか嬉しげであった。



52 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 20:30:19 ID:gC+oedBb
一瞬エンジェルアームでクロノ消し飛ばしちゃったのかと思ったw支援

53 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/04/05(土) 20:31:24 ID:L38ZIGGj
■□■□

次の日、まだ誰も目を覚ましていないだろう明朝、ヴァッシュは一人訓練所に立っていた。
理由は言わずもがな魔法の訓練。

これからは正式に管理局の魔導師としてあの襲来者達と戦うのだ、なのは達の足を引っ張る訳にはいかない。
ならば特訓あるのみ。
今までと一緒だ。

早速、ヴァッシュは訓練に取り掛かろうとし――

「あー!いたいた!ヴァッシュさんですよね!」

――突然の乱入者に、声を掛けられた。

「……君は?」

出鼻を挫かれ少々腹立たし気な顔をしてヴァッシュが振り返る。

そこにいたのは茶髪の女性。
活発そうなその顔をしているが、今は隈が浮かび上がり疲労の色を見せている。

「ああ、お話しするのは初めてですね!私はエイミィっていいます」
「エイミィか、よろしく……それで僕に何か用かい?」
「はい!艦長から頼まれまして、コレ!」

そう言いエイミィは手に持っていた箱をヴァッシュへと受け渡す。

「……これは」

それはヴァッシュにとっては馴染み深い箱。
驚いた様子でヴァッシュは箱の蓋を開ける。

箱に入っていたのは弾丸。しかも自分の銃と同じ口径。
それが所狭しと詰められている。



54 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/04/05(土) 20:32:40 ID:L38ZIGGj
「苦労したんですよ!
ヴァッシュさんの合格が決まったと同時に艦長が『管理外世界から弾丸を取り寄せて、ヴァッシュさんに渡して』なんて言い始めて、今の今までその作業で徹夜ですよ!
もう!夜更かしはお肌の天敵なのに……」

長々とエイミィが愚痴り続けるがヴァッシュの耳には全く入って来ない。

「ちょっと待ってくれ!これは違法じゃないのか!?」
「違法ですよ」

動揺するヴァッシュとは真逆に、エイミィは寸分もうろたえる事なく口を開く。

「私も止めたんですけどね。『正式に管理局入りした兵士を無駄死にさせる訳にはいかない』って艦長に言われて……何とか取り寄せたんですよ」
「ですよって……!そんなことしたら君達が!」

エイミィがチッチッと指を振る。


「ふふん、ナメないで下さいよ。私が本部にはバレないよう八方に手を尽くしましたから、百%大丈夫です!」
「だからって!」

それに、とヴァッシュを遮りエイミィが言葉を続ける。

「あんな魔法じゃ実戦では役に立ちませんよ?試験みたいに隠れてる暇はありませんし。犬死にするつもりですか?」
「うっ……!そ、それは……」

痛いところを突かれヴァッシュは押し黙る。

「だから、コレ、使って下さいよ!艦長もヴァッシュさんに期待してましたよ!」

どうすれば良い。
迷いながら、ヴァッシュは視線を弾丸の入った箱へと移す。

「んじゃ、私は寝ますから!後はよろしくお願いしますね!」

エイミィはそう言うと、眠そうに目をこすりながら訓練所から出ていく。
その後ろ姿を見ながら、ヴァッシュは悩む。



55 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/04/05(土) 20:33:19 ID:L38ZIGGj
――数秒後、何かを決意したかの様に顔を上げ、箱から弾丸を取り出す。
その数は六発。
それらを懐から取り出した銃へと、一つ一つ丁寧に込めていく。

全てを込め終えるとヴァッシュは、ゆっくりと銃を構える。


――俺は戦う。

ずっと前にそれは決意した。
だが、今回は他人の為じゃない自分の為に。
何もかも忘れて平和に暮らすため。

「レム……僕は……」

――そう、何もかも忘れて。

あの星の事も、ステラの事も、ナイブズの事も――レムの事も。
それが豚以下の生き方だとしても……俺はそう生きたい。
此処からが俺の新たな人生。

――そのために俺は絶対に誰も殺さない、殺させない。

今までと変わらない。
何十年とやって来た事だ。
その為にリンディ達の好意は喜んで受け取ろう。
重みの増した銃を片手にヴァッシュは誓う。

――砂の惑星から時空を超えたここに最強のガンマンが復活した。
彼は新たな扉を開く事が出来るのか。
歯車は動き続ける。



56 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 20:39:38 ID:h8R1PwSE
支援

57 :リリカルTRIGUN ◆jiPkKgmerY :2008/04/05(土) 20:40:40 ID:L38ZIGGj
これにて投下終了です。ご支援感謝!!
やっぱ、ヴァッシュは銃を使ってこそヴァッシュだと思うんですよね。
ってことで前回と今回はどうにかヴァッシュが質量兵器を持つことが出来るよう試行錯誤して書いたものです。
ヴァッシュの魔法を感謝していた方々スミマセンw

58 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 20:48:00 ID:j7hCqYFd
GJ
やっぱヴァッシュが非殺傷設定っでガスガス戦うのはなんか違う気がするから
これは良い展開

59 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 20:48:50 ID:Iyqotdud
以外に苦戦したな、やっぱ銃無しで魔法使えない状態で魔道師相手は辛いな。
それでもきっちりやってのける所はヴァッシュらしい。

しかしやっぱあの愛銃とは離れられない運命か。
なにせ血と硝煙の匂いはヴァッシュをどこまでも追いかけてくるからな。
例え地球に来ようが関係ない様子。

ともかくGJでした、次回以降の展開も期待大っす!

60 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 20:50:20 ID:gC+oedBb
>リリカル殺生丸
元ネタの犬夜叉は触り程度しか知らないけど、この作品が素晴らしいものだとは分かります。
だって、人間嫌いの冷徹な妖怪と薄幸の幼女なんて……素敵じゃないか!w
一匹狼だったキャラが何らかの切欠でクロスキャラと交流を得ていく、というのは王道なパターンですが、今回の殺生丸の人間嫌いをしっかりと徹底してる点がいいと思いました。
だって、ツンがキツイからちょっとしたデレがより輝くわけだしね(ぉ
ハッスルスカ山とルーテシアとの温度差が面白くて、特にラストはニヤニヤしっぱなしでした。
あと、出番少なかったけど、アギト萌えるぜ。ノーヴェも萌えるぜ。だぜ口調萌えを新たに開拓したぜw

>リリカルTRIGUN
グッド・ザ・ジョブ!(実は二重人格)
自分の中では「やっぱり最終的にはヴァッシュは元の世界に帰るんだろうな」と思って切なくなってたんですが、今回のヴァッシュの決意を見て、まさかの期待にドキドキしました。
いや、確かになのはの気持ちに応えようと決心した以上、半端な気持ちで残るつもりではないだろうと思ってたけど……これはどう転ぶのか予想できなくなりましたね。
ナイブズも来てるんだし、ここで決着でもよくね? とか考えちゃいましたよw
そして、疲れを癒しながらなのはと平和に暮らせばいいよ。原作読み直すと、本当にそう考えちゃう。
クロノとの戦闘もヴァッシュらしい戦い方で手に汗握りました。
クロノはハンデ付きって言ってたけど、デバイスもなしの素手同然で戦ったんだからこれはもっと評価されるべき。
まあ、しっかりと銃も手に入ったことだし、今後のヴァッシュの人間台風ぶりに期待ってところですねw

61 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 20:50:27 ID:Mp0mATD8
GJ
でもヴァッシュは何もかも忘れて生きていくなんて器用な生き方出来ないんだろうなあ

62 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 20:53:21 ID:h8R1PwSE
>>57
リリカルTRIGUN氏GJ
やっぱり魔法は使えるようになりませんでしたか。

ヴァッシュの儀手は管理局製の何ですかね。

ヴァッシュは質量兵器で禁止されている銃をリンディのおかげで使わせてもらえるようになりましたか。

ヴァッシュは空を飛べないので、守護騎士たちに銃があるとはいえどう対抗するんでしょう。
これからも更新楽しみにしています。


63 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 20:58:38 ID:gC+oedBb
まとめで見て、今更なんですが、今回のサブタイトルがなんかすごくいいですねぇ
いいセンスだ(オセロット

64 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 21:01:46 ID:bshNtEG6
ブラボー!おぉ…ブラボー!
確かにこれは良いセンスを感じる
しかし>>63
その発言はBIGBOSSの物であって
オセロットは言われた側だよ

65 :Strikers May Cry:2008/04/05(土) 21:16:07 ID:Iyqotdud
20分くらいになったら投下しますね。

リリカル・グレイヴ番外編の十二&ビリー&キャロの話で。

66 :Strikers May Cry:2008/04/05(土) 21:22:23 ID:Iyqotdud
それじゃあ投下しますね。

リリカル・グレイヴの番外編、「ツギハギと幽霊と女の子」の中篇です

67 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 21:22:43 ID:LTEltUai
支援だぜ

68 :リリカル・グレイヴ:2008/04/05(土) 21:23:12 ID:Iyqotdud
リリカル・グレイヴ 番外編 「ツギハギと幽霊と女の子」(中篇)


「そういえばビリーさんって足が透けてるように見えるんですけど‥‥」
「ああ、俺は幽霊だからさ」
「ゆ、幽霊!?」
「ちなみに俺は死人だしな」
「死人!?」
「ああ」
「じょ、冗談ですよね?」
「いいや」
「誰がそんな冗談なんぞ言うか」
「ええ〜!?」





十二とビリーの旅にキャロが同行するようになって、彼女にとっては驚きの連続だった。
なにせ相手は死人と幽霊なのだ、これで驚くなという方が無理だろう。
だがまあ適応能力が高いのかそれとも理解するのを早々に諦めたのか、キャロは状況をすぐに受け入れた。

西へ東へ、十二とビリーの探す“モノ”を求めて一行は方々を旅した。
時に人助けをしたり町にはびこる悪党をノシたりと波乱万丈の風来坊三人。
そして今日もまたとある町に巣食う麻薬組織を軽くボコっている最中だった。


「逝きさらせっ!!」


掛け声と共に十二の蹴りが目の前の男に炸裂する。
強烈な打撃の衝撃に男は吹っ飛びながら手にした銃を落とした。
周囲にいた他の男達は口汚く罵声を吐きながら十二に向かって鉛弾の雨を降らせる。
だがその銃弾が十二の身体を貫くことは無かった。
朽葉流忍術の悉くを極めた死人の動きは一陣の風のように素早く、疾風迅雷となって弾丸の軌跡を掻い潜り回避する。
乾いた銃声が鳴り響く中、雷撃を纏うエレキギターとその主が軽快な音色を奏でた。


「まったく、もう少し平和的に話し合いとか出来ないのかねぇ」


ギターの音色と共に銃を持った荒くれ共を電撃が襲う。
高速の凄まじい打撃を打つ十二と電撃を放つビリーの荒っぽいセッションは瞬く間に敵を残らず倒し尽くし、後には気を失った悪党共が何十人と横たわっていた。


「おいキャロ、終わったぜ」
「はぁ〜い」


ビリーの呼ばれたキャロがトタトタと物陰から走ってくる。
この奇妙な風来坊三人の中では、基本的に荒事担当は十二それに仕方なく付き合うのがビリーそしてその後始末がキャロの役目となっていた。
キャロは慣れた手つきで気を失った男達をふん縛りながら懐からサイフを抜き去っていく。

これこそが彼らの日銭の稼ぎ方。
麻薬取引の現場や悪党の溜まり場に殴り込んではボコボコにして(キャロの教育上、殺しはしない)金目の物を取っていくという最高に荒っぽいものだった。


「終わったか?」
「はい」
「んじゃ、後はサツに通報でもしてトンズラすんぞメスチビ」

69 :リリカル・グレイヴ:2008/04/05(土) 21:24:17 ID:Iyqotdud
「ちょっ、待ってくださいよ屍さ〜ん」


一人でズカズカと先行く十二にキャロが慌てて後に付いて行く。
後にはボコボコにされてふん縛られた悪党数十人を残して三人はねぐらである安ホテルへと戻った。

別に十二とビリーは宿泊施設など必要ではない、なにせ彼らは既に死んでいる身の上だ、いつもは野宿でもして夜を明かすのが普通だった。
しかし10歳に満たない少女にそれは厳しいものがある、故に十二とビリーは少ない身銭を切って宿泊施設を使用するようにしているのだ。

ホテルに帰る道すがらその事を考えるとキャロは二人に“すまない”という想いで一杯になった。
誰にも迷惑をかけたくなくて里を黙って出て行ったのに、このままでは自分は十二とビリーのお荷物でしかない。


「あの十二さん‥‥‥すいません‥」
「てめえ突然、何言ってんだ?」
「だって私‥‥お二人にご迷惑ばかりかけて‥」


シュンとなって俯くキャロ。
十二はバツが悪そうに口元を不機嫌そうに歪ませる。


「ったく、チビがんな事気にしてんじゃねえ」
「でも‥‥」
「どうせ俺らの目的にゃあ、ヤクの売人シめるのが入ってんだ。べ、別にてめえの為にやってる事じゃねえ」
「目的‥‥確か“シード”っていう麻薬でしたっけ?」
「ああ、まあ因縁のあるヤクだからな。それにアイツを探すのもな」


どこか懐かしそうに言う十二の言葉にキャロは不思議そうに首をかしげる。
今までこんな十二の顔を見たことがなかった。


「“アイツ”?」
「まあ俺らの昔の連れだ、訳あって行方不明でな‥‥もう何年も探してる」
「連れっていうかファミリー(家族)って言っても良いんじゃないか十二? 特にミカとかはさ」
「う、うるせえぞRB!!」
「?」


十二が恥ずかしそうにしている理由が分からずにこれまた首をかしげるキャロ。
そんなこんなで騒がしくしながらも3人はねぐらの安ホテルに戻っていった。





「で、なんて書いてあんだ?」
「“娘は預かった、返して欲しければ港の第八倉庫に来い”だってさ」
「ちっ! あのメスチビ、簡単に拉致られてんじゃねえぞクソがぁ」


十二とRBがほんの少し部屋を留守にしている間にキャロが攫われた。
言うまでも無く相手は十二とビリーが相手にしていた麻薬組織だろう。
置手紙を読み終えたビリーは、いつもの軽い雰囲気が嘘のように鋭い気迫に満ちた目で十二に視線を投げる。


「さて、どうするジュージ?」
「決まってんだろ、売られた喧嘩は買ってやらぁ」

70 :リリカル・グレイヴ:2008/04/05(土) 21:27:05 ID:Iyqotdud
「だな」


二人の死者は幼いファミリー(家族)を救うべく、怒りを胸に手の得物を担いで歩き出した。
こうなったこ二人は、例え悪鬼羅刹でも敵うまい。





「で、これで終わりか?」
「まったく大した事ないねぇ〜」


十二とビリーの呟きが海から吹く潮風に混じって空に消える。
場所はキャロを浚った連中に指定された港の一角、そして二人の周囲には倒された麻薬組織の悪漢共が気を失って倒れていた。
ただの銃火器で武装した程度のチンピラ連中では十二とビリーを止める事など叶わず、ただ一方的に倒されるのみ。
この有様に組織の親玉と思われる小太りの男は頬を怯えて腰を抜かしている。


「ひぃっ! て、てめえら人間じゃねえっ!!」
「当たりだぜブタ、なんせ俺ぁとっくの昔に死んでる死人だからなぁ」
「俺なんて幽霊だからな♪」


ドスの効いた声を吐く十二に陽気に喋るビリー、いつもと変わらぬように見える二人だが漂う気迫は修羅の如く鬼気迫るものだった。
それだけキャロに手を出された事は二人の怒りに火を付けていたのだ、この迫力に組織の親玉は小便すら失禁して身悶えする。


「ひぃぃっ! お、お前ら、早くこいつらを殺せえええぇぇっ!!」


その声と同時にミサイルランチャーの雨が降り注いだ。
この奇襲に即座に振るわれた十二の両手の得物、ガンブレード旋風と疾風の赤き刃が踊り絶妙な太刀筋で軌道を逸らして跳ね返す。
進行方向を狂わされたミサイルはあらぬ方向に飛んで行き、海に落ちて爆炎を上げる。
奇襲を仕掛けた新手に顔を向ければ、そこには大量のサイボーグの集団がいた。


「ったく、ゾロゾロやって来てんじゃねえぞクソがぁ!」
「ヤレヤレ、お姫様を助けに行くのはもう少しかかりそうだな」


十二とビリーは思わず苛立った言葉を漏らす。
次の瞬間には数多の銃火が二人に襲い掛かった。


そしてこの銃声と爆音に駆けつける者が一人。


「この騒ぎ、ただ事じゃないね‥‥行くよバルディッシュ」
<YES SIR>


雷光の名を持つ執務官、その名の通りに運命の出会いへと。


続く。


71 :Strikers May Cry:2008/04/05(土) 21:28:49 ID:Iyqotdud
投下終了です。

フェイトさん登場でこの番外編は次回で終わりっす。

72 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 21:29:05 ID:gC+oedBb
十二ツンデレ、全然可愛くねえwww支援

73 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 21:33:53 ID:gC+oedBb
今夜は内藤節全開だなぁ。音声が脳内再生余裕でした。
「逝きさらせぇ!」はゲームプレイしてる人にはニヤリと来る台詞ですよね。
そして、そんな風に脳内ボイスがばっちりに状態で↓

>べ、別にてめえの為にやってる事じゃねえ

の台詞が来たからコーヒー吹いたwwインパクトありすぎるwww

74 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 22:37:29 ID:uylzfQSl
罷り間違っても屍十二はツンデレでは無い

75 :なのはVSボウケン ◆eu6nimmn1k :2008/04/05(土) 22:59:56 ID:4FYUXrOC
>>反目のスバル氏
GJ!スカリエッティのハイテンションが、あの顔芸で行われてると思うと笑えます。
ルーテシアがりんの位置に当たる訳ですね。可愛いルーに、重ねてGJです。
>>リリカルTRIGUN氏
GJ!なのはとの会話にちょっとニヤニヤしました。ヴァッシュ格好いい。
まだ未読ですが、HELLSINGに続いて、ここの作品の影響で原作買ってきました。
>>Strikers May Cry 氏
>べ、別にてめえの為にやってる事じゃねえ
なんというツンデレwwww

随分とご無沙汰になってしまいました。
かなり遅ればせながら、DOD氏、反目氏を始めとする皆様、申し訳ありませんでした&お疲れ様でした、そしてありがとうございました。
23:30頃、サガフロの読切後編を投下したいと思いますが、よろしいでしょうか?
長くなったので、実験的に小分けに分割して投下したいと思います。

76 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 23:00:42 ID:tJeI2+c2
支援・アルフェニックス

77 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 23:08:02 ID:vvspMEA7
全力で支援さw
待ってたぜ!

78 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 23:28:23 ID:AnDKf0Ni
半ば諦めていたんだぜ…
遅れてやってくるヒーロー、支援させてもらう

79 :その名はアルカイザー:2008/04/05(土) 23:32:05 ID:4FYUXrOC
注意 「台詞」『固有名詞等』(思考)《技・術等》〔閃き〕【連携】

 
 少年は幼く、小さく、だが勇敢だった。少なくとも、その時の彼にとっては眩しく見えたのだ。きっとこの小さな身体の中には、途轍もない勇気が詰まっているのだろう。
痛みに震えながらも立ち上がろうとする姿、眠り姫を守る為に身を削る姿は、まさしく騎士と呼ぶに相応しかった。
 それは彼にとって、忘れかけていた何かを目覚めさせるには十分だった。それは傷ついてでも誰かを守ろうとする意志。
 たとえ命を懸けても、大切なものを守れないこと。そして奪われた悲しみ、痛みを抱え続ける苦しみ――そんなものは誰より知っていたはずなのに、ヒーローの力に胡坐を掻いて忘れていた。
 それを教えてくれた彼が、今まさに傷ついている。
 それでも力を振り絞り戦おうとしている。
 そう、出会った時と同じように。
 そのがむしゃらな思いを守りたいから――その為にこそ戦う。名乗りを上げるのは、挫けてしまいそうな意志を、勇気を甦らせる原動力となることを願うからだ。
 故に彼はこう叫ぶ。
「闇を貫き光よりの使者、アルカイザー見参!!」


リリカル・フロンティア番外編
――HERO――その名はアルカイザー
後編 【翔べ 不死鳥の如く】


「あれがヒーロー……。『アルカイザー』……?」
 闇の中に生まれた光は、今も神々しいまでに輝きを放っている。燦々と降り注ぐ陽光は暗く沈みそうになる心にも一条の光明をもたらす。
 やがてフェイトの呟きに答えるかのように、アルカイザーはフェイトとシグナムに向き直った。
「ラミアの相手は俺が引き受ける。この少年を頼む!」
「ちょ――あなたは誰なんですか!?」
「言っただろう! 俺はヒーロー、アルカイザーだ!」
 アルカイザーは、10mはゆうに超える足場を軽々と飛び降り、地竜へと走る。その度に青いマントが翻った。
 鉄球を蹴り砕いた時も驚いたが、やはり人の身体能力を遥かに上回ってる。こんな存在が管理局も把握しておらず、独自に行動しているのは些か不安ではあるが、
――でも……いけるかもしれない
 そう思う気持ちもフェイトの中に生まれつつあった。それは彼の戦闘力を見た上での計算でもあり、尚且つそれ以上に掻き立てられる何かがあった。
「シグナムは地竜に接近して攻撃! キャロは私とシグナムの後ろから援護に回って!」
 手早くシグナムとキャロに指示を出し、フェイトは態勢を立て直す。呆気に取られていた二人も我に帰り、頷いて散開した。
 そしてもう一人、足場の上で膝を突いているエリオにフェイトは目を遣る。未だ混乱と動悸が治まらないらしい。九死に一生の場面だったのだ、無理もない。
「エリオ……動ける?」
「……はい! まだ戦えます!」
 水を打ったような勢いのいいエリオの返事だが、逆にフェイトはそこに一抹の不安を隠せない。このままここで隠れさせておけば安全なのでは――そんな考えさえ頭を過ぎる。
 傷ついている上に飛べないエリオを、再度地竜に向かわせる。これがどれほど危険なことか。
しかし、動きが制限される謎の結界の中、手が足りないのもまた事実であった。子供を救わなければならない自分達がここで負ける訳にはいかない。その目的の為に自分達が躊躇は許されない。
「エリオはナシーラ所長の捕獲。……困難なら、独自の判断で非殺傷設定の解除も許可……。私達で引き付けるから背中に登って」
「……了解!」
 活きのいい返事で答えるエリオ。それはもう、いつもの素直な少年だ。少なくとも表面上は。
 フェイトは彼を完全に救えたつもりでいた。もう何の心配も無い――そう、信じ込んでいた。
 過去の闇は消えてなどいなかった。ただ忘れていただけ、隠れていただけ――彼のすぐ傍にいることも気付かずに。


80 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 23:33:01 ID:Nk5QgSy7
支援

81 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 23:34:43 ID:AnDKf0Ni
スーパーヒーロータイム支援

82 :その名はアルカイザー:2008/04/05(土) 23:34:56 ID:4FYUXrOC
フェイトが身体を掴んで降ろそうと近寄るより早く、エリオもアルカイザー同様に足場を跳んだ。
「エリオ!?」
突然の行動に目を丸くするフェイト。降下というよりも落下と言った方が適切な高さである。それでもエリオは器用に体勢を変え、ストラーダを突き立てて着地の衝撃を和らげた。
「いたたた……」
エリオは両手足を軽く振る。衝撃で痺れが残っているが問題は無い。
「エリオ、無茶しちゃ駄目だよ」
「大丈夫です!」
フェイトが嗜めるも、エリオは碌に聞いていない。立ち上がりアルカイザーを追って走り出す。
先程までの怒りに任せた暴走とは違うようだが、どこか焦っているようにも見える。すぐに暗闇に消える後ろ姿を、フェイトは目で追った。

 
 アルカイザーはエリオと同様に、地竜の足の間を縫って走る。その巨大な体躯と人の身体の差は云わば蟻と象のようなもの。単なる踏みつけでも、それは即座に死を意味する。
 地竜はナシーラの指示無しでもそれを理解している。自分の巨体は、それだけで武器なのだと。故に、何度も何度も足を踏み鳴らす。

《ふみつけ》

 しかしアルカイザーも怯むことはない。頭上を覆った足が下ろされると同時に跳躍。床を震わせへこませた足を蹴って、再度跳躍。
「はっ!」
 アルカイザーは背中によじ登りナシーラと対峙する。
「あなたが最近、ブラッククロスにちょっかいを出しているというヒーローさん?」
 絵画のように美しい顔と流れる青い髪。彫像のように妖艶な美しさを放つ裸体。反面、太くうねる尾は巨大な蛇のそれだった。
 ラミアと化したナシーラは、高く耳障りな声色で囁く。アルカイザーを前にしても余裕の態度を崩さずに。
「そういう貴様はブラッククロスの構成員か!」
「正確には組織の者じゃないわ。でも……そうね、お得意様というのが近いのかしら? だから……」
 長く伸びた尾を引き摺って、じりじりとナシーラとアルカイザーは距離を詰める。一歩近づくごとに身体に緊張が走る。
 一足飛びの距離まで近づいた瞬間――お互い同時に反応する。しかし、僅かに速かったのはナシーラだった。
「たっぷり恩を売っておかなくちゃ!!」

《尾撃》

 ナシーラの尾が、アルカイザーの側頭部目掛けて激しくしなる。
 衝撃――続いて乾いた残響音。
「くっ!」
 見えなかった――辛うじて右腕で尾を防いだものの、痺れで少し感覚が失われている。
 メットで表情が解らないのは幸いだった。きっと驚愕がそのまま表情に出ていることだろう。
 トワイライトゾーンが敵に与える恩恵とはこれほどのものか。これまで戦った敵に比べ、格段に速く、しかも重い。
 地竜は元より動きが鈍く、攻撃にも威力があった為に、防御に対してしか実感は無かった。しかし、人間大の相手と、こうして戦ってみると凄まじいものがある。
 いやらしい笑いを裂けた口に浮かべ、鋭く尖った爪を立ててにじり寄るナシーラ。暗闇の中、真赤な口が酷く恐ろしいものに見え、アルカイザーの足は自然と後ずさっていた。


「くそっ!」
 エリオは憎々しげに呟く。それもこれもこの暗闇のせいである。
 この結界の中では敵の姿を視認できない。アルカイザーとナシーラの戦闘の音、光で地竜の位置は辛うじて解るのだが、時折発射される鉄球の軌道が全く見えない。
 エリオは明かりが消える前の景色を思い出す。ドーム状の広大な地下空間――その最奥に地竜は陣取っていたはずだ。
これなら小回りの利かない巨体を補い、放射状に火力を十分に活かすことができる。


83 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 23:36:35 ID:vvspMEA7
支援!

84 :その名はアルカイザー:2008/04/05(土) 23:37:56 ID:4FYUXrOC
 一撃で全てが終わるのだ。移動が慎重にもなる。
 地竜に正面から走っていると、唐突に風を切る音が聞こえた。背筋を震わす寒気は嫌な予感としか言いようがない。身体の震えに従って、エリオは即座に左に転がる。
 抉られた床と鉄球の破片が飛礫になって顔を打つ。
「ぅうう……」
 右に転がっていれば、今頃破片になっていたのは自分の身体の方だっただろう。想像しそうになって、大きく首を振る。
 きっと想像してしまえば進めなくなってしまうから。
 遠くで光が瞬いている。魔力光からして、どうやらフェイトとシグナムは善戦しているようだが、果たして地竜にどれほどの効果があるだろうか。このままでは遠からず力尽きる。
「キャロ!」
 エリオは竜に乗った少女の名を叫び、彼女の為に標を立てる。

《サンダーレイジ》

 ストラーダが突き刺すのは敵ではなく床。弾けた雷は、闇の中に一瞬閃光の柱を立てた。
「(近くにいたら答えて! 今の雷はどの方向に見えた!?)」
「(えと……私から見て斜め右くらい? そんなに遠くない!)」
「(光の位置から左の方に飛んで! できるだけ低く!)」
 念話を送りながら、エリオはまた左に横跳びする。今まで立っていた位置に二発、鉄球が連射された。
 エリオはひたすらに左へ走る。それを追うように、背後で轟音が響く。
 続いて更に一発、着弾。まるで雨のように辺りに鉄球が降り注いでくる。ずっとこの音を聞いていたせいか、聴覚があやふやになってきた。
 光の標は地竜に対しても恰好の目印になる。そう何度も使えない。
 これは推測に過ぎないが――おそらく地竜も完全に見えてはいない。今は単に光の周囲を撃っているのだと思う。
 ナシーラには見えているかもしれないが、そこはアルカイザーが引き付けていることを祈るのみだ。
 確か、砲台は地竜の左肩に厳重に固定されていた。先程から多分地響きは聞こえていない。ならば、左に行けば行くほど狙いは付け辛い――そうエリオは踏んだ。


「(キャロ! どれくらい飛んだ!?)」
「(分かんないよ! どうする? やっぱり明かりを――)」
「(駄目だ!!)」
 念話越しでも伝わるエリオの迫力に、キャロはビクンと震えた。破片の飛礫は低く飛ぶフリードを打ち、キャロの顔にも傷を作る。
「(地竜は明かりを頼りに攻撃している。だから、それは最後の最後だ)」
 エリオは必死に頭を働かせようとしていた。しかし、そう簡単に名案が浮かぶはずもなく、そうしている内に時は過ぎていく。
キャロも向かっているはずだが、このままでは通り過ぎてしまうだろう。
――どうすればいいんだ……!
 重く低く地面が唸る。視線を向けると、巨大な影が地響きに合わせて動いている。地竜が方向転換をしているのだ。
 エリオの背中に寒気が走る。戦慄が脳天から背中へと駆け巡る。
 端に追い詰められた自分を自由に狙い撃つ地竜――そんなヴィジョンが浮かんでは消える。更に状況は厳しくなってしまった。
 キャロは近い。だが、エリオには今一つ確信が持てずにいた。
 声は聞こえず、目にも見えない。外れれば次は無い――それ故に確信無くしては動けない。
――後一つ! 一つきっかけがあれば……!


85 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 23:38:16 ID:AnDKf0Ni
焦れるエリオが一皮剥ける前のヒーローっぽくていいw支援

86 :その名はアルカイザー:2008/04/05(土) 23:42:32 ID:4FYUXrOC
 震えるエリオをよそに、鉄の擦れる音――地竜の砲台が向きを変えた。

《十字砲火》

 しかし、覚悟していた砲撃はやってこない。直後に、金色の十字架が地竜の身体を浮き彫りにした。
 フェイトがプラズマランサーをありったけ撃ち込んだのだ。これが意図したものかは不明だが、エリオの目には見事な左右対称〈シンメトリー〉の金十字が飛び込んだ。
 エリオの居場所を照らすには僅かに足りない光。それでも、迷いに曇ったエリオの頭の中に光は届いた。
「(キャロ! 今の十字砲火、どんな風に見えた!?)」
「(どんなって……綺麗でくっきり左右対称で……)」
――!
 それこそが唯一足りなかった確信――
 戸惑う様子のキャロに構わず、エリオは口元を歪め、握った腕に力を込める。ストラーダの先端に再び閃雷が迸った。
「きゃ!?」
 僅か一瞬の間に、素早く辺りを見回すエリオ。照らされた先にあるのは、短い悲鳴を上げて目を丸くする少女。
 その声を正しく聞き取れはしなかったが、互いにするべきことは瞬時に察していた。
「キャロ!」
「エリオ君!」
「飛んで!!」
「うん!」
 主の意志に呼応してフリードは舞い上がる。乗ってからの上昇では間に合わない――思い切り床を蹴って手を伸ばすエリオ。
 対して、ギリギリで掴んだ手を振り回されて慌てるキャロ。なんとかフリードの身体を掴もうとジタバタする拍子に、エリオの手が柔らかい感触を掴む。
「ご、ごめん!」
 コントを続ける二人の真下を鉄球が抉る。それはエリオの足が地面を離れた、ほんのコンマ数秒ほど後のこと――


「どこまで下がるのかしら? もう後が無いわよ」
 ナシーラは不快な笑みを湛えて、アルカイザーを追い詰めていく。地竜の首元、彼女の言うようにもう下がることはできない。
 妖しくうねる尾は、空を切って恐ろしい速さで迫る。刃物よりも研ぎ澄まされた爪を受けきれる自信は――無い。
 認めたくはないが、自分はこの女に気圧されている。それが鎖となって動きを縛り、燃え広がるように更なる恐怖を煽った。
「さあ、もう戦わないの? さあ!」
 踊りかかるナシーラを自分の視界から隠すように、恐怖から逃れるように、咄嗟に両腕を交差させるアルカイザー。

《デスグリップ》

「ぐぁぁあ!」
 爪はスーツを貫き、深深とアルカイザーの腕を突き刺した。貫いた爪は真紅に染まり、先端から赤い血を垂らす。
 傷口が熱を伴って疼く。
 実際かなり痛かったが、何故だろう? "恐怖"はそれほどでもなかった。
「あら?ヒーローでも血は赤いのね。人を超越したヒーロー、実験のサンプルにしてあげようと思ったのに、所詮は脆くてか弱い人間に過ぎないって訳」
 腕を流れる血液を見つめる。鋭すぎたせいか、それほど出血してはいない。
 痛いには痛いが、耐えられないほどではない。流れる血とは逆に、恐怖が徐々に治まっていくのを感じる。未知への恐怖は、実体を持った瞬間に崩壊していく。
「赤い血……」
 ドクン、と心臓が跳ねる度に湧き上がってくる感情は、自分でも上手く表現できない。だが、それが拳を固める力を与えてくれたことは確かだった。
 血で滑る拳を握り締め、アルカイザーはレッドとして答えた。
「ああ、お前がどう思ってるか知らないが、俺は正真正銘の人間だよ。ブラッククロスに魂を売って、赤い血を捨てて――"化け物"に成り下がったお前なんかと一緒にするな!」
 それは怯える心を隠す強がりに過ぎない。ただ怒りのままに言葉を紡いだに過ぎない。
 しかしヒーローとして口上を述べるよりも、不思議と心が駆り立てられていく。


87 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 23:44:16 ID:Nk5QgSy7
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88 :その名はアルカイザー:2008/04/05(土) 23:44:57 ID:4FYUXrOC
負けるものかと口にすればそれが心にも反映される。勝てると口に出せば、本当に勇気が沸々と込み上げてくる。
「だったら……どちらが上等かその身で試してみなさい!」

《デスグリップ》
 
「そうだ……俺は人間だ! ……人間の俺が強くならなきゃ意味が無い!」
 アルカイザーの頭に蘇る光景。それはほんの数十分前、人間の自分が無様に地に降された戦い。
――あの女の動きを思い出せ……。相手の動きに沿ってリズムを合わせろ。流れるように足を運び、懐に入れ。そして攻撃を捌いて――投げる!!

〔当て身投げ〕

 勝利を確信したナシーラの攻撃は単調そのものだった。強化された肉体の性能に酔いしれていることに加え、目の前の敵が勝手に威圧されているとなれば尚更である。
 だから戦法など考えるまでもなかった。ただ自慢の爪を振り下ろすだけで十分だった。
 最早相手に逃げ場は無い。無様に避けようとすれば尾を叩き込んでやるだけでいい。いや、既に奴を呑み込んでいるのだ。少しずつ弄ぶように刻んでやろう――と。
 しかしアルカイザーは爪を避けようとはせず、寧ろナシーラの懐に潜り込んできた。
 認識と同時に反転する視界。背中に感じる衝撃。
 勢いをそのままに投げ飛ばされ、叩きつけられたナシーラは、危うく地竜の背から転げ落ちそうになったが、きつく爪を立てて持ち堪えた。広い巨竜の背とはいえ、あまり自由に走り回れるスペースはない。
必然的に、なだらかになった肩にしがみ付いた形になっている。
「どうした、もう後が無いぜ?」
 見上げると、アルカイザーは血塗れの腕を組んで立っていた。その自信有り気な姿勢が、皮肉たっぷりに言葉を返す声が、ナシーラを激しく憤らせた。
「人間がぁぁあああああ!!」
 尾で地竜の背中を叩いて、高々と跳び上がるナシーラ。当初の余裕の表情はもうどこにもない。悪鬼の形相でアルカイザーを見下すのは、見下すべき存在に見下されたことが我慢ならなかったからに違いない。
《尾撃》
 落ちる速度も上乗せして"しなる"ナシーラの尾。しかし、今のアルカイザーには、それがどれほどの速さで、どのような軌道を描いてくるのかが容易に予測できた。

《当て身投げ》
《短剄》
【当て身短剄】

 それさえ解れば後は簡単だった。
 限界まで引きつけてこちらも跳躍。振り抜かれる寸前の尾を掴んで、空中から背に投げる。
 そして落ちながら体勢を修正。全体重に落下の重力も加えて、拳を腹に叩き込む。全てが一繋がりの流麗な動作――
「ギャァァアアアアアアアアアア!!」
 耳を塞ぎたくなるほどの叫びを上げ、悶絶するナシーラ。拳に込められた氣が体内で暴れ狂っているのだ。
 怒りは動きを単調にする。それは身を以って解っていたが、逆に相手を怒らせ攻撃を誘うことまで、意識してできるほどアルカイザーも経験が豊富ではなかった。勿論、研究者だったナシーラが知らなかった故の結果だろう。
 壮絶にのたうち回るナシーラを、アルカイザーはただ見ていた。できるならここで終わらせたい――そう思いながら。
 やがて起き上がるナシーラ。長い髪に隠れたその表情が徐々に露になっていく。そして――
 アルカイザーはその顔を見て、何かを諦めたように首を振り、軽く構えを取った。だが、それに反して声は酷く悲しげで、苦々しく――
「……かかってこい。今度こそ叩き潰してやる……!」


89 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 23:48:14 ID:AnDKf0Ni
支援

90 :その名はアルカイザー:2008/04/05(土) 23:48:42 ID:4FYUXrOC
 
 
「エリオ君! これじゃ迂闊に近づけないよ!」
 キャロは背中のエリオに叫び、彼も小さく頷く。目標の手掛かりも、ナシーラの指令も失った地竜は、闇雲に鉄球を撃ち、高温ガスの咆哮を撒き散らしている。
 フリードの大きさでは近づくのは危険だろう。エリオを降ろすだけでも難しい。
「(キャロ、そのまま行って! 私とシグナムで抑え込む!)」
「フェイトさん!?」
 フェイトが飛ぶのに合わせて、示し合わせたシグナムがそれを追う。わざと地竜の目を引きつつ、地竜の頭上に到達。同時にフェイトはバルディッシュをザンバーへと切り替え、シグナムはレヴィンティンを振りかぶる。
「行くよ、シグナム!」
「承知!」

《神速三段突き》
《ロザリオインペール》
【神速インペール】

 地竜は頭上に現れたフェイトとシグナムに高温ガスを吐き出すが、届くことなくフェイトの姿は消え、直後に顎の下から鋭い突き上げを見せた。
「ギャオオオオオ!!」
 ザンバーの先端が僅かに肉に刺さったのみだったが、顎を強打された地竜は堪らず仰け反った。
 畳み掛けるように紫の十字の光が地竜の頭に降り注ぐ。シグナムが十字の端に渾身の力で剣を突き立てるのと、フェイトの二撃目が地竜の頬に刺さるのはほぼ同時――
 最後は十字の中央に二人揃っての突き。金と紫、二つの光が美しく重なる。魔力が弾けて色鮮やかな閃光が闇を切り裂いた。
 だが――それでも倒れない地竜の頑丈さには、揃って閉口した。
「(キャロ!)」
 それでも、どうやら道は開けた。痛みに耐えかねたか、ガスの放射気管に衝撃を受けたのか、ともかく炎は止んだ。エリオとキャロを乗せたフリードは、暴れうねる地竜の背の上へと到達する。
「やっぱり危ないんじゃ……今のエリオ君傷だらけだし、フェイトさんかシグナムさんじゃ駄目なの……?」
 心配そうに見つめるキャロの問いに、ゆっくりと首を振るエリオ。
「……駄目だよ。フェイトさん達じゃないとアイツにダメージを与えられない。地竜を抑えられるのが二人だけな以上、僕が行くのが一番なんだ」
「でも……!」
 キャロは食い下がったが、エリオは既に彼女を見てはいなかった。見つめるのは、地竜の背で戦うヒーローを名乗る男だけだった。


 アルカイザーとナシーラの戦いは膠着状態に陥っていた。ナシーラもカウンターを恐れてか、深く攻め込んでこようとしない。それに気付いたアルカイザーも迂闊に攻めはしなかった。
 危ういバランスを保つ戦況を崩したのは、空から降ってきた少年。
「ぅおおおおお!」
 落ちながらストラーダを上段から打ち下ろす斬撃を、ナシーラは寸でのところで回避。惜しくも頬を掠めたに過ぎなかった。
「ちっ! 坊やも一緒になって向かってくるってこと……」
 着地したエリオは素早く跳び退ってアルカイザーに並ぶ。青い血を流す頬を押さえ、ナシーラは二人をきつく睨みつけてくる。
「あなたは何故こんなことを……。子供を攫ってどうするつもりなんだ!」
「ここは生命科学研究所。当然――実験素体に使うに決まっているでしょ?」
「実験……?」
 悪びれる様子などまったく見せずにナシーラは答えた。恐ろしい事実をしれっと口にする彼女に、エリオは恐怖すら感じた。
「知っていて? 妖魔の幼体というのは確認されていないの。その起源・発生も、上級妖魔の人と酷似した姿も、存在のほとんどが謎のヴェールに包まれている。
下級妖魔はモンスターもどきでね、弄っていても埒が開かないのよ。だからと言って上級妖魔はおいそれと手が出せない」
 次々に吐き出されるのは彼女の秘められた研究プラン。想像だにしなかった彼女の思考には、アルカイザーも動揺を見せている。


91 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 23:50:51 ID:vvspMEA7
支援

92 :その名はアルカイザー:2008/04/05(土) 23:50:59 ID:4FYUXrOC
「人と妖魔の融合というのは、なかなかに難しいのだけどね。でも不可能ではないことはあなた達が見てきたとおり。
幼体が確認できないのならここは一つ、子供と融合させたらどうなるのかしら? ってね」
「ふ……ふざけるな! なんだってそんなことを!」
 エリオは思った。この女はスカリエッティや施設の人間達と同じだ。どんな犠牲を払おうと構わず、飽くなき探究心で世界の全てを食い尽くす。
「この実験が成功すれば、また一歩妖魔とモンスターの実態に近づける。妖魔の寿命とモンスターの強靭な肉体。
そして多様化の過程、変身能力、吸収する妖魔武具の謎を解き明かせば、人は更なる進化を遂げるのよ……!」
 自らの理想に酔い痴れるナシーラは、恍惚と両手を広げた。まるでそれが自らに下された神託であるかのように。
 しかし、頭上――地竜の首元では絶えず爆音と咆哮が鳴り響き、眼下には鉄球による無惨な破壊の跡。
彼女の理想、その全てが暗闇と瓦礫の先にあることを示している。
 モンスターよりも妖魔よりも醜悪で、心の暗部を増幅させた化け物。醜く歪んだ心の様も、その行いも、また人間の在り方であることは解っている。それでも――いや、だからこそ許せない。
「サンプルは三人。成功したなら、一人は強制的に成長を促進させてみて、一人はじっくりと経過を観察。
もう一人は……青い薔薇でも咲かせてみようかしら? 妖魔の君のような高貴な存在なら、さぞかし美しい色彩が表れるんでしょうけど、あの小娘には逃げられちゃったし……。
無垢な子供の妖魔の血なら、或いは曇りの無い色合いが出るんじゃないかしら……。どう? 興味無い?」
「全く無いな。お喋りはその辺にしたらどうだ」
 即答するアルカイザー。しかしエリオには、心なしかその声に込められた強い感情を感じた。彼もまた怒りに燃えているのか。或いは――
「子供の誘拐も碌にできない木偶人形のお陰で足が付いちゃったけど、まだパトロンに捨てられると困るの。
実験の材料だって、ブラッククロスから買えばこんなことにもならないのよね。でも、パトロンにブラッククロスと取引していることがばれると流石にまずいから、ちょっとは控えなきゃ」
 自分と同じく、憎しみを抑えられないのか。
「これで私の話は終わり。最初からあなた達に理解が得られるとは思ってないわ。これで私はなんとしても、あなた達を殺さなければならなくなった。お互い多少の時間稼ぎにはなったわね」
 荒い息を整え、睨みあうナシーラとエリオ。
 頭の中がチリチリと焼かれていくような感覚と共に、思考が失われていく。そこにあるのはただ怒りのみ――
 思い知らせてやらねばならない。彼女のような人種が実験体としてぞんざいに扱った者の怒りを――恐怖を――苦痛を! それがどれほど重いものであるかを、その身で解らせてやる。
 激しい衝動に突き動かされる今のエリオが、自分とナシーラを見つめるアルカイザーの冷ややかな視線に気付けるはずもなかった。


93 :その名はアルカイザー:2008/04/05(土) 23:53:14 ID:4FYUXrOC
 
 
「少年、俺に考えがある。君の攻撃ではおそらく攻撃が通らない。だが、俺の攻撃なら奴に効くはずだ」
 正体は隠さねばならないが、親しくしている少年に対し、どう話していいものか解らない。だからアルカイザーは柄にもなく、丁寧な口調で端的に提案のみを伝えた。
勘のいいエリオならばそれだけで察してくれるだろう。
 しかし、エリオは一瞥もせずに答える。口調は重く、アルカイザーに対しての不満がありありと感じ取れた。
「そんなの……やってみなくちゃ解らないですよ!」
「おい、少年!?」
 エリオは制止も聞かず、正面からナシーラに突進していく。
「はぁあああああ!」
 ナシーラは戦闘に関しては素人だ。正面から向かえばそこに攻撃を返してくるはず。自身の肉体に自信があれば尚のこと。
 エリオの予測通り、ナシーラは一直線に向かってくるエリオに爪を繰り出す。エリオは溜めた足を踏み込み、跳躍。ナシーラの背後に回った。
 やはり速度では自分が勝っていたのだ。そしてエリオはストラーダを振り上げる。
――捉えた!

《尾撃》

 そう思った瞬間、側頭部を叩かれ、激しく脳が揺さぶられた。滞空していた小さな身体は、いとも簡単に吹き飛ばされる。
「エリオ!」
 アルカイザーは地竜の背から弾き飛ばされたエリオを追い、BJの襟を掴む。力を入れると、その身体はぶらりと腕を揺らし、驚くほど簡単に引き寄せられた。
 10mを超える高さから難なく着地したアルカイザーは、地竜から一度離れ、エリオの頬を軽く張った。
「おい、大丈夫か!」
 エリオは意識を失ってこそいないものの、衝撃で少し朦朧としている。
「大丈夫です……放してください」
 と、やがてエリオは腕の中からするりと逃れた。
「あらあら……そんな正面からの真っ正直な攻撃じゃ通用しないわよ」
 ナシーラは地竜の背の上から満足気に見下し、二人に嘲笑を浴びせる。
 やはりそういうことか――アルカイザーにはすぐに見当が付いた。ナシーラは挑発に乗り、散々カウンターを受けたばかりだ。
いくら戦闘に関しては素人といえども、馬鹿正直な突撃を疑わないはずがない。
「少年、俺に合わせてくれ。攻撃力が足りなくとも、君の機動力なら奴を上回ることができる。君と二人なら奴を倒せるんだ」
 アルカイザーはナシーラから視線を離さずに、再度エリオに協力を求めた。
「……あなたは自分をヒーローだと言った。ヒーローって……何なんですか?」
 エリオは問う。今度はアルカイザーをはっきり見つめ、そのヘルメットの下を見透かすように。
「あなたがヒーローなら……全ての人々を救う英雄なら、どうして僕を助けてくれなかったんですか……」
 最後の方は辛うじて聞き取れるほどの、か細く小さな声。だが、どれほど小さかろうと、それはアルカイザーの心深くに届いた。


94 :その名はアルカイザー:2008/04/05(土) 23:55:58 ID:4FYUXrOC
 
 
 それは今となってはおぼろげで遠い記憶。モンディアル家で暮らしていた頃、エリオの中にヒーローは存在した。
 助けを求める弱き人々を守り、平和を脅かす存在を討つ。弱きを助け、強きを挫く――彼らの勇姿は子供達の目を引き、心を惹きつける。
それはエリオも例外ではなかった。そう、あの時までは。
 我ながら馬鹿馬鹿しいと思うが、今ではそう考えられたことが懐かしくて、とても大事なことだった気がする。
 はっきりとしたことは、もう思い出せない。だが、施設に放り込まれてから一月までは本気で信じていた。何もヒーローがそのまま出てくると信じていた訳ではない。
ただ、必死で助けを求めていれば誰かが助けにきてくれる――そう思いたかったのだ。
 しかし、一年以上が過ぎてもヒーローは来てくれなかった。誰一人として優しく接してくれる者などおらず、碌に顔を見もしない物扱いの日々。数年間、太陽も見られない暗い独房と実験室を行き来する日々。
 得体の知れない電極を付けられ、どこまで電流に耐えられるかを実験されたこともあった。反抗しようとすれば、気絶するまで殴られ、骨が何本か折れるまで蹴られたこともある。
この悪魔のような研究員達から、自分を救ってくれる者をずっとずっと待ち望み、時が過ぎていった――
 救いは訪れることなく時が経ち――やがてエリオはある結論に至った。
――ヒーロー――そんなものは存在しないのだ、と。


 研究員の中には、ナシーラのように嬉々として身体を弄る者も少なからずいた。だが、ほとんどの者達は皆、一様に無表情だった。
 何の感情も浮かべず、他人を傷つけることができる者達。だが、やがてエリオは相手の表情に秘められていたものを、見抜けるようになった。
 一つは得体の知れないモノへの果てしない恐れ。もしも、逃げられでもすれば、間違いなく復讐されるだろうとでも思っていたのか。
すればするほど、憎しみは募るばかりだというのに。
 それは例えるならば、完全に息絶えるまで昆虫を切り刻み、脚を千切り、羽根を毟る子供のような――理由が、残虐な愉悦の為か、恐怖心によるものかの違いしかない。
 きっと自分こそが、彼らにとって平和と生命を脅かすモンスターなのだろう、と。だからこんなにも虐げられるのだろうか、だから誰も助けてくれないのだろうか――そう幼心に思ったものだ。
 そしてもう一つ――彼らの目の奥に暗く潜んでいたのは、自らの残酷さと醜悪さを覆い隠し、目を逸らしたい気持ちだった。
幼い子供に対する非人道的な所業から目を背けたいのは解る。しかしエリオから見れば、彼らもナシーラのような連中と何ら変わらない。
 憎しみの視線と疑問の視線、どちらも同じ――彼らはそれに敏感に反応し、怯えながらまた殴るのだから。
時には仕方ないなどと言い訳を並べながら傷つける――そんな彼らがとても不思議で、そして憎かった。
 それに、彼らが強制的に実験に参加させられているようにも見えなかった。好奇心を押さえられなかったのか、或いは『プロジェクトF』を解明して役立てたいとでも考えていたのか。
全ては想像に過ぎないし、どうでもいいことだ。
 居場所をくれたフェイトには感謝しているが、この気持ちとはまた違ったものに思える。尤も、その頃にはヒーローを信じる心など現実に擦り切れて、とうに消え失せていた。
 フェイトによって、随分とましな施設に入ってからは、徐々に世界を憎む気持ちは薄れていった。しかし、過去は消えることなく、時にエリオを苛んだ。
もう、あの頃には戻れない、ヒーローを信じていた頃には戻れないのだと。
 以来、ヒーローと云う言葉には敏感に反応してしまう。自分でもそれが嫌で堪らない。
 勝手な逆恨みであることは解っている。全てを救うなど、そんなものは子供に夢を見させる為の、聞こえのいいお題目であることも承知の上だ。
 それでも不意に思うことがある。助けを求める悲痛な叫びに応えてくれる存在がどこかにいるのかもしれないと。もしかすると――心のどこかで、今も泣き叫び続けているのかもしれないと。
 だから今、エリオは目の前のヒーローと名乗る男に問い掛けずにはいられなかった。


95 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 23:58:30 ID:cEoP5g2z
支援

96 :その名はアルカイザー:2008/04/05(土) 23:58:39 ID:4FYUXrOC
 
 
「ヒーローとは何か……か。解らないな……」
「え……?」
「俺もお前と一緒で新人なんだ。だからそれをずっと考えてる。正直、あの言葉はつい口を吐いて出ただけだ」
 しばらく逡巡した挙句、アルカイザーは正直な気持ちを答えた。ヒーローになったところで、どう振舞えばいいのか解らない。
結局は戦うしかできないことは確かでも、どのような心で戦えばいいのかが解らない。
「俺はさっきまでアイツを本気で殺したいと思ってた。いや、今でもそうだ。他人を何とも思わない、あんな連中を笑わせておくなんて絶対にできない! 心底虫酸が走る……!」
 ヒーローを謳ってみたところで、憎しみは厳然として己の中に在る。しかし、つい口を吐いたあの言葉も嘘偽りのものでは決してない。
「けど――俺と同じ顔をしてるお前を見たら、急にそっちが悲しくなった……」
 ヘルメットに隠されたアルカイザーの表情は読めない。エリオの顔を見るでもなく、彼はナシーラを見上げた。
「お前みたいに優しい、いい奴が、あんな奴を殺そうと必死になるのは……やっぱり見たくないよな」
 上ではフェイトやシグナムが地竜と激しい戦いを繰り広げている。足元の二人には気が回っていないようだが、危険なことには変わりない。
「お前の過去に何があったか、俺は知らない。過ぎてしまったことはどうにもできない……。全ての人を救うなんてできない……。それでも――」
 アルカイザーはエリオに向き直った。そして、その手を差し伸べた。共に戦う為に。
一人ならば憎しみに囚われることがあったとしても、一緒なら強くなれると信じたいから。
 それはエリオの闇を知らないからこそ吐くことができた綺麗事。それでも、それはずっとずっと――何よりも待ち望んだものだった。
「今、お前の力になることならできる」


「そんな今更……!」
 伸ばされた手――それはずっと待ち焦がれていたもの。だが、エリオは素直に手を取れず、首を横に振った。
 ずっとヒーローなどいないと思っていたのに。そう思ってきたのに、今更手を伸ばされたところでどうすればいいのだろう。
 俯くエリオにアルカイザーはそっと手を引き、語りかける。穏やかで、それでいて力強い声。
「そうだな、今更かもしれない。だってお前にはもう力があるじゃないか」
「力……」
 同年代の子供は皆、学校に通って平穏に暮らしている。それなのに無理をして魔導師を目指したのも、厳しい訓練に耐えてきたのも、全ては強くなりたかったから。
 大人=強者であったからこそ、背伸びもした。子供だと笑われると、むきになって怒りもしたのだ。
「お前はもう、非道や不条理に対して抗う力を持っている。その術を知っている。そして、これからきっともっと強くなって多くの人を救う……と思う」
 だが強くなるのは何の為だったろうか? 復讐の為か、それとも――エリオは真っ白になっている頭の中を、少しずつ探っていく。
「終わったことはどうにもできないけど、お前は自分自身で昔の自分を救ってやれるんじゃないか?」
 そうだ、強くなりたかったのは、フェイトと共に働きたかったから。そして誰かを守れるようになりたかったから。そして――
「僕が助けてあげたいのは……昔の僕?」
「辛い記憶に打ち克てるとすれば、自分の心を救えるとすれば、それはやっぱり自分だけなんだ」
 徐々に心が楽になってきたのを感じる。同時に、表情からも憑き物が落ちたように険しさが消えていく。
「お前にはもう……ヒーローは必要無いのかもな。もし仮に……ほんの少し、自分で立ち上がる為に心を奮わせる手伝いをするのがヒーローだとすれば――お前はもう立てるじゃないか。
お前に勇気を貰った奴だっているだろう。お前は誰かにとってのヒーローにだって――」
 それが、他ならぬ彼自身だと、エリオには想像もできなかっただろう。

97 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 23:59:52 ID:3noqnf0T
支援

98 :その名はアルカイザー:2008/04/06(日) 00:02:21 ID:cjknD0b4
「でも! 僕はあいつを許せそうにない。子供達を助ける目的を忘れて、ただ倒すことしか考えられなかった……。
僕の記憶が……研究と称して人をオモチャにするような、あんな人を絶対に許しはしない……」
 そんな自分にヒーローなんてなる資格があるはずがない。エリオは伸ばしそうになった手を引いて、所在無げに胸に抱いた。
「それでいいさ。俺だって憎しみも怒りも捨てることなんてできない」
「あなたも?」
 エリオは首を傾げた。彼は"同じ顔"と言った。ヒーローたる彼でさえも、怒り狂う自分を抑えられないこともあるのだろうか。
「誰だって振り返ることはある。けど、振り返った先にいる昔のお前の……その後ろを見てみろよ」
 アルカイザーはおもむろにエリオの背後を指した。
「そこには辛くて苦しくて、でも自分ではどうしようもできなくて。そんな人達が沢山手を伸ばしてるんだぜ?」
「僕と同じ人達……」
 そして自分が救いたい人達。
「ああ。見ろよ、大行列で順番待ちだ。だから昔の自分を救えたなら……次の手を取れ」
 こんな暗黒の結界の中でいるはずがない。そう、頭で解っていても、何故か振り向くのが怖かった。
 意を決して、エリオはアルカイザーの指す背後を振り向く。そこには――


「いない……」
 助けを求める人々の姿など見えはしなかった。
 そこには聳え立つ巨大な地竜の影と、それを相手に飛び回るフェイトとシグナム、そしてキャロ。
 ただそれだけ――誰の声も聞こえることはない。当然といえばあまりに当然だった。
 アルカイザーは、呆気に取られているエリオをからかう。不思議と、嫌味さは感じない。
「それはお前がまだガキだからだな。もう少し大人になれば見えるさ」
「……僕を子供扱いしないでください!」
 はっとエリオは口を押さえた。あまりに自然に出た言葉に自分でも驚いている。まるで見知った青年を相手にしているような気さえした。
「そうやってむきになるのが子供っぽいってことだ」
 アルカイザーが、にやりといたずらっぽく笑った――ような気がした。ヘルメットで表情は窺えないのに、そこにはよく知った顔が透けて見えた。
 もう少し大人になれば――その為には、この状況を勝って生き残らねばならない。もしも彼の言う通り、自分を待つ人が存在するのなら、それはこの"後ろ"にしか有り得ない。
 巨大な竜は行く手を遮る高い壁。これを打ち壊したその時、果たしてそれは見えるのだろうか――
「確かなことは……お前の未来も明日も、これを倒した"先"にあるってことだけだな」
アルカイザーも地竜を振り仰いだ。彼と並んで立ちながら、エリオはふと湧いた疑問を口にする。
「でも……何であなたは僕のことをそんなに――」
 気にしてくれるのか――そう続けようとしたところで、エリオの言葉は彼に遮られた。
「何だかお前は俺を見てるみたいなんだ。だから……その、つい……気になって仕方ない」
 アルカイザーはそっぽ向いて、照れ臭そうに言った。その仕草といい、やはり似ている。
 そういえばレッドはどうしただろうか。戦闘機人を一人で引き受けて自分を行かせてくれものの、いくら彼でも戦闘機人に勝てるとは思えない。
 それはおそらく彼も解っていただろう。それでも立ち向かえる彼こそ、本当に強い戦士なのではないか――
 そこで初めて、エリオは自分の感情に名前を与えた。嫉妬でも憧憬でもある、その気持ちの正体を知った。
「僕は……きっと羨ましかったんだ……」
 エリオの呟きはアルカイザーにも届いていたらしい。彼は穏やかな声でエリオに答える。



99 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 00:04:15 ID:cEoP5g2z
支援

100 :その名はアルカイザー:2008/04/06(日) 00:06:15 ID:4FYUXrOC
「そうか……お前はヒーローが羨ましかったのか……。いいさ、俺にだって……だけどその気持ちだって、強くなる為の原動力にできるはずなんだ」
 どうやら彼は自分の言葉を勘違いしているようだが――そんなことはもうどうでもよかった。
 ただ、その言葉だけは胸に刻んでおく。
 大事に仕舞って、忘れないように。
「僕が過去のことを振り切れたのか――まだ解りませんけど、やらなくちゃいけないことは思い出しました」
 自ら、誰の手を借りることもなく立ち上がったエリオの表情には、怯えも狂気も無く、ただ適度に引き締まった緊張感が宿っていた。
何よりも瞳がぶれることなく、毅然と顔を上げてアルカイザーを見据えている。
「お願いします。僕と一緒に戦ってください」
 エリオは今度は自分からアルカイザーに手を伸ばした。無論、それは信頼を固める握手ではない。非礼を詫びるものでもない。
「これはお前を助けるヒーローの手じゃない。それでいいんだな?」
 エリオはこくりと無言で頷き、それを受けてアルカイザーはその手を取った。
「――行くぞ、エリオ!」
「はい!」
 アルカイザーはそのまま膝を沈ませ、一気に跳び上がる。その右手は、エリオと固く繋がっていた。


※今日はここまで。これで4分の1か5分の1くらいなので、続きは明日の夜にでも、気長に行かせていただければと思います。


101 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 00:12:04 ID:cjknD0b4
忘れてた! 支援ありがとうございました。何より心強いです。

102 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 01:48:21 ID:quR7nGU8

これはいいヒーロー

103 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 02:41:02 ID:YGf6f1fP
軽い小ネタ投下OK?

104 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 02:50:49 ID:YIl+Ihme
こんな時間だけど支援する

105 :ニュー・一発ネタ:2008/04/06(日) 02:53:41 ID:YGf6f1fP
俺の名前は赤碕翔……時空管理局なんてのに所属してる……
俺がStrikerを目指した訳……? たまにはいいかもしれない……話しても……


その日……同僚の連中は皆浮き足立っていた……有名な教官が来るらしいってな……
俺には……何が凄いのか良くわからなかった……
くだらねえ……教官なんて誰がやっても同じじゃないか……そう、思っていたのさ……
そして現れた教官……俺たちと大して歳の変わらない女……ACE OF ACE……高町なのは……
そして……始まったのは……自己紹介代わりの模擬戦……

嘘みたいだった……模擬戦とはいえ、ARANK やBRANKを持った奴らが……ただ落とされていったんだ……何もできずに……
俺も……墜とされないようにするだけで……精一杯だった……

そんな時……鳴り響くアラート……現れたガジェット達……
冗談じゃねえ……こっちは半分以上撃墜されたばかりだってのに……何であいつらの相手まで……
それでも……Battleを選ばなきゃならない……それが俺たちのDestiny……
そんな時……誰よりも早く迎撃に向かう姿……教官だった……

ガジェットの群れを……たった一人で片付けていく……そんな姿を見て……震えが止まらなかった俺の身体……
怖かった訳じゃない……自分でも良くわからない……もっと……熱い何か……

その後……高町なのはについて……色々聞いてまわった……その中でこんな話を聞いた……


10年前からそいつは強かった
どんな時でも全力全開
そいつはA級ロストロギアに一歩も退かなかった
一緒に戦った奴ら、口を揃えてこう言ったね……
「あいつはクレイジーストライカー……命知らずの大馬鹿野郎だ」ってね……


俺も……あのぐらい強くなれば……あの震えの理由が……わかる様になるだろうか……?
上を目指したのは……そんな理由さ……

俺の物語は……あの時始まったんだ……
これで十分だろう……? 久しぶりに……長く話しちまった……


投下終了。
クロス元は、ポエムシステムが有名な「レーシングラグーン」

106 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 02:57:10 ID:YIl+Ihme
レーシングラグーンか
知り合いから借りたけど
独特すぎて個人的には合わなかったな


107 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 07:39:51 ID:TTYg6VNd
ググってみてあらゆる意味でフイタw
なんだこのカオスww

108 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 08:25:57 ID:RN0Oze5F
懐かしかったぜ……。
ポエムもらしいぜ……。

109 :一尉:2008/04/06(日) 16:15:18 ID:E23OCUMR
これはカオスだな、支援

110 :THE OPERATION LYRICAL:2008/04/06(日) 17:53:11 ID:UsHFN/s5
どうも、オメガ11です(謎)
1800ごろにイジェークト!(訳:投下)したいのですがよろしいですか?

111 :THE OPERATION LYRICAL:2008/04/06(日) 17:59:17 ID:UsHFN/s5
すみません、身勝手ですが投下予定時刻を1830に変更します。

112 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 18:05:40 ID:Y+OtWjTE
良し、待ってるぜ!

113 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 18:24:46 ID:dBKMIF0d
オメガ11「イジェークトはまだか!?墜落するぞ」

114 :THE OPERATION LYRICAL:2008/04/06(日) 18:27:57 ID:UsHFN/s5
ではそろそろイジェークト!

ACE COMBAT04 THE OPERATION LYRICAL


第3話 六課の新人"メビウス1"


世界が違えば人も違う―人も違えば道具も違う。


―どこかの薄暗いラボ。
白衣に身を包んだ科学者と思しき男が一人、ディスプレイに映る機動六課の面々、それにリボンのマークをつけた戦闘機を眺めていた。
「ふぅむ…アナログな質量兵器でも、ここまで来るとなかなか侮れないのだな」
送った戦闘機は彼の技術からしてみれば稚拙なものだった。燃料を爆発させて本来飛べやしない金属の塊を無理やりかっ飛ばし、武装も非殺傷
設定など出来るはずもない実体弾ばかり。
それでもあの魔導師たちが苦戦したのは、純粋にパワーとスピードが半端ではなかったからだ。
「刻印ナンバー9、護送体制に入りました…追撃戦力を、送りますか?」
サブディスプレイに映る知的な雰囲気の、まるで秘書のような女性の声に彼は「いや」と首を振った。
「やめておこう…レリックは惜しいが彼女たち、それに質量兵器のデータが取れただけでも充分さ」
落ち着いた声で言った彼は、再びディスプレイを見上げる。
―それにしてもこの子達。
ディスプレイに映るのは、金髪の若い女性に幼い少年。
「生きて動いているプロジェクトFの残滓を、手に入れるチャンスもある…」
彼はどこか歪な笑みを浮かべた。そうして思い出したかのように、サブディスプレイの秘書に問いかけた。
「そういえば、漂流者の容態はどうかね?虫の息だったが…」
「順調に回復しつつあります。すでに意識を取り戻しました」
「ほほう、それはいい」
ある日、ガジェットの生産設備に突然現れた無数の質量兵器―確か戦闘機と呼ばれるものだ―それに一人の男。
男は虫の息だったが、ラボにある医療設備のおかげでどうにか死は免れた。
「…では会ってみるとしよう」
治療していく段階で、男にリンカーコアがないことから彼の興味はほとんど無くなったが、一つ気にかかることがあった。
男は飛行服に身を包んでいた。すなわち、彼の手元にある戦闘機のことを知っているかもしれないのだ。
それを知るまでは、せいぜいこちらの手元に置いておこう―。
彼―ジェイル・スカリエッティはその場を立ち去り、男のいる部屋に向かうことにした。

115 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 18:29:07 ID:cvcbKf01
支援

116 :THE OPERATION LYRICAL:2008/04/06(日) 18:30:12 ID:UsHFN/s5
時空管理局機動六課、はやての執務室。
エイリム山岳地帯上空の戦闘から帰還したメビウス1は、はやてに向かって頭を下げていた。
「…すまない、八神。勝手に飛び出しちまって」
「ええですよ、ほら、頭上げてくださいメビウスさん。こっちは助けてもろて、感謝したいくらいなんやから」
心底反省している様子のメビウス1に、はやてはとんでもない、と首を振って答えた。
むしろ、彼女としてはメビウス1の無断出撃よりも気になることがあった。
「…それでメビウスさん、あの戦闘機が何なのか、ご存知ですか?」
突如、全滅したガジェットの仇を討つように現れた六機のMiG-29。彼らはとてつもないパワーとスピードを持って現場に展開していたスターズ、
ライトニングの各分隊を翻弄してみせた。
メビウス1が駆けつけてくれなければ、損害はヴァイスの操縦するヘリが一機中破した程度では済まなかったかもしれない。
「あれは、MiG-29と言って格闘戦に優れた戦闘機なんだが…重要なのは、国籍マークがエルジア軍のものだったことだ」
「エルジアって…話してくれた、メビウスさんの世界の?」
はやての問いにメビウス1は頷く。
エルジア共和国―ユージア大陸西部に位置する大陸最大の領土を誇る国家。一国で連合軍であったISAFの総兵力に匹敵するほどの強大な軍事力
を持つ。開戦当初、巨大レールガン"ストーンヘンジ"を持って大陸ほぼ全土を掌握下に置いたが、ISAFによる反攻作戦が始まってからは敗北を重
ね、ストーンヘンジをメビウス1に破壊されてからは弱体化、ついに首都ファーバンティも陥落しISAFの降伏勧告を受諾した。
「もっとも降伏に従わない部隊もいてな…俺もこの世界に飛ばされる直前まで、そういう連中と戦ってたんだ」
彼の脳裏に蘇るのは隕石落下を誘発させる巨大要塞メガリス、それを守るエルジア青年将校たちが操縦する"黄色中隊"と同じ塗装のSu-37。
もっとも青年将校たちの技量は総じて低く、歴戦の古強者で編成されたメビウス中隊に蹴散らされ、要塞メガリスも破壊されてしまった。
「なるほど…で、どうしてそのエルジア軍がこの世界にいるのかって話やな」
「大方、俺と同じように飛ばされてきたんじゃないのか?」
メビウス1の考えを、はやてはもっともだと感じた。メビウス1のF-22といい今回現れたMiG-29といい、どちらも九七管理外世界に存在するも
のではあるが、両方とも九七管理外世界からやって来た形跡はないのだ。MiG-29の国籍マークがそれを証明してくれている。
「…ちゅうことは、あれはメビウスさんの世界のもんと見て、間違いなさそうやな」
「だと思う」
彼女の言葉にメビウス1は頷いてみせた。するとはやては少しの逡巡の後、改まってメビウス1に向かって口を開く。
「メビウスさん、突然なんやけど」
「ん?なんだ?」
「…私らに協力してもらえんでしょうか?」

117 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 18:32:40 ID:cjknD0b4
支援

118 :THE OPERATION LYRICAL:2008/04/06(日) 18:34:07 ID:UsHFN/s5
「ティアー、あれ何してるんだろうね?」
リニアレール鉄道の戦闘から三日後、いつものように水上の訓練場に向かう途中、スバルの何気ない言葉に、ティアナは振り向いた。
スバルの指す方向では、何かの工事が行われていた。資材を乗せたトラックが何台も行ったり来たりしている。
「何って、工事じゃない。施設とかでも建てるんじゃない?」
「そうなのかな?でも施設にしてはすっごく大きいような…」
大して興味も無いように返してみたが、スバルの言葉でティアナは気付く。工事が行われている範囲が、非常に大きいのだ。小さく見積もっても
3000メートル程度はありそうだ。よく見ると工事の作業内容はみんな舗装ばかりで、辺りを生コン車がうろついていた。
滑走路でも作る気かしら?と言う彼女の疑問は正解だったが、大して気にしなかった。
むしろ、先日現れたあの戦闘機の方が彼女としては気になってしょうがない。後で調べてみると、あれは九七管理外世界の戦闘機、F-22と呼ば
れるステルス戦闘機だそうだ。
―気に食わないわね。
質量兵器に攻撃されていたところを他の質量兵器に助けられた。その事実が、ティアナの胸に重く圧し掛かる。
管理局の人間として否定すべき質量兵器の助けを受けたことは、執務官を目指す彼女にとって気分のいいものではなかった。
「どうしたの、ティア?早く行こうよ」
「…っと、ごめん。そうね、行きましょう」
スバルに急かされて、ティアナは訓練場へと向かう。
訓練場では、既に同じ新人のライトニング分隊所属のエリオとキャロ、教官を務めるなのは。それに―
「…誰だろ?」
見慣れない、一人の青年。いわゆる飛行服と言うのだろうか、緑色のつなぎを着てその上からフライトジャケットを羽織っている。
そこでティアナは気付いた。青年の着ているフライトジャケットに、あのF-22の尾翼に描かれていたリボンのマークがあることを。
「あ、来たね二人とも。それじゃあ整列!」
なのはの言葉にはっとなって、ティアナはスバルとエリオ、キャロと共に横一列に並んでなのはたち教官と向き合う。だが、視線は依然として
青年の方に向けられたまま。スバルたちも気になるのか、ちらちらと青年の方を見ている。
「今日は訓練の前に、新しい六課の仲間を紹介するね…こちら、メビウスさん」
なのはに紹介されて、青年は少し照れ臭そうに前に出た。

119 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 18:39:22 ID:iLfgDEO4
イジェクト支援。

120 :THE OPERATION LYRICAL:2008/04/06(日) 18:40:17 ID:UsHFN/s5
(視点変わるのでここ改行入ります)

「メビウスだ…コールサインは、メビウス1。みんな、よろしく頼む。今日一日、君たちの訓練を見せてもらうよ」
文字通り軍隊仕込みのビシッとした敬礼をしてみると、彼の前にいる若い新米魔導師たちは元気よく「よろしくお願いします!」と答えて答礼。
―しかし、ずいぶん若い連中だな。
メビウス1の感じた新人たちの第一印象は、当然であった。ハチマキを巻いたボーイッシュな少女とツインテールの少女はともかく、その隣に並
ぶ新人たちの中で唯一の男である少年となんだか変わった小動物―後で聞いたがこれでも立派な竜らしい―を従えた少女は、明らかにまだ小学校
に通っている年齢だ。その手の団体の人が見たら「時空管理局は少年少女にまで危険な戦闘行為を行わせている!」と騒ぐに違いない。
―まあ、優秀なら年齢問わず雇うのが管理局の体制って、八神が言っていたか。郷に入れば郷に従え、かな。
メビウス1とてISAF空軍の軍人である。異世界で保護された身とはいえ、勝手に他の組織に協力していいものかどうか。
それでもあえて協力することを選んだのは、やはりエルジア軍の存在が気になるからだ。
終戦したとはいえエルジアとISAFは敵対関係にあった。降伏に従わないエルジア軍部隊も多い。彼らがこの地で何をしようとしているのか、何の
ために六課を攻撃してきたのか調べるのも、ISAF空軍の軍人の任務の一つだろう。
ちなみに、リボンのマークのフライトジャケットはメビウス1が六課に協力するに辺り提供されたものだ。背中には機動六課の部隊章が描かれ
ていている。本来なら制服を着るべきなのだろうが、たまたまサイズに合ったものがなかったので市販のものに部隊章をつけた。
「あの…一つ質問、いいですか?」
ツインテールの少女がメビウス1に声をかけてきた。確か、エイリム山岳地帯での戦闘でMiG-29の投下した爆弾を拳銃で迎撃してみせた娘のはず。
「なんだい?一つと言わずに何でも聞いてくれ、本名以外」
雰囲気を和ませようと彼なりに笑顔で接してみたが、ツインテールの少女はもともとそういう性格なのか、あくまで真面目な表情だ。
「ティアナ・ランスター2等陸士です。三日前の、エイリム山岳地帯での戦闘で…所属不明の戦闘機が、現れました。あなたですね、メビウス
さん?」
「…ああ、そうだが?」
何故分かった?と言う疑問がメビウス1の頭に浮かんだが、自分のフライトジャケットを見て納得する。たぶん、彼女はF-22の尾翼に描かれた
リボンのマークをしっかり見ていたのだろう。
「質量兵器は管理局ではご法度なのは、ご存知ですか?」
まっすぐこちらを、どこか敵意や悪意のような感情が含まれた視線を送ってくるティアナと名乗った少女。メビウス1は苦笑いしつつ、助けを
求めるようになのはを見た。
「にゃはは…まぁ、それはおいおい説明していこうか」
それぞれ苦笑いして、なのはは話題を切り替えるように訓練を開始させた。

121 :THE OPERATION LYRICAL:2008/04/06(日) 18:42:09 ID:UsHFN/s5
―恐ろしい御稜威の王が蘇り、救うべき者を無償で救う。
「…さっぱり、分からんね」
聖王教会。カリム・グラシアのレアスキル"預言者の著書"にある日突然現れた謎の一文を見て、はやては首を傾げた。
「そもそも1年の1度のはずの予言が、こんな時期に追加されるって言うのがおかしいわ」
「ふむ、確かに…月の魔力とは関係ない、別の何か、かな」
カリムのレアスキルは月の魔力によって発動するが、それは年に1度しか起きない。にも関わらずそれを無視する形で、新たな一文。
この予言が古代ベルカ語、それも解釈によって意味も違ってくるのでよく当たる占い程度でしかないことも、この一文の難解さを深めている。
"救うべき者を無償で救う"と言うくらいなのだから、決して不吉なものではないはずだ。だが、それにしては"恐ろしい御稜威の王"と言うのが
はやてには気になった。
「…とりあえず、それは置いておこう」
そう言ったのは、同席していたクロノ・ハラオウン。機動六課の後見人にして監査役のXV級艦船「クラウディア」の艦長である。
「それよりはやて、本当に"彼"を六課に?」
どこか不機嫌な様子で聞いてくるクロノの言葉は、彼が今回はやてが六課に招いた者を心底歓迎していない証拠。
「もう決めたことや。確かに、なのはちゃんたちのリミッターを解除すればあの戦闘機にも対抗できるやろうけど…新人たちはそうもいかん」
「だが彼の機体は明らかに質量兵器だろう?リニアレール鉄道での件はもう仕方ないとして、今後も協力するならそれ相応の装備にしてもらう」
「相変わらずやな」
生真面目で厳格な彼らしい言葉に、はやてとカリムは揃って苦笑い。
「もちろん、対策は考えとるよ。どうせガス欠気味で弾薬も底を突いたそうやから、何かしら手は打たんとあかんし」
「なら、いいんだが…」
イマイチ納得しきっていない様子で、クロノは言葉を続けた。
「あの質量兵器の出所については、僕の方でも調べてみよう」
「頼むわ、情報収集は多方面でやった方がええし」

122 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 18:42:57 ID:cjknD0b4
支援


123 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 18:43:23 ID:dBKMIF0d
X−02ワイバーンはまだですか?支援

124 :THE OPERATION LYRICAL:2008/04/06(日) 18:44:01 ID:UsHFN/s5
ぼんやりと、彼はベッドの上で天井を眺めていた。
どうして自分が生きているのか分からなかった。あの時、あの瞬間、確かに自分は燃え盛る機体と運命を共にしたはずだったのに。
未だにあの時鳴り響いていたミサイルアラートの音が頭の中で続いている。
後悔はない、悔しさもない。自分は正々堂々、奴と戦い、そして敗北したのだ。それは結果だ。受け止めるしかない。
飛ぶ前にやられるのは腹が立つが、今回は万全の状態だった。それで負けたのだから仕方ない、相手が自分より強かっただけなのだ。
ただ疑問だけが沸いた。何故生きているのだと。
手元にあったはずのハンカチは無い。
「気がついたかね?」
不意に声をかけられて、彼は上半身を起こした。声の主は、白衣を着た科学者のような男だ。知的な雰囲気だったが、瞳の奥には言い知れない冷
たさが広がっているような気がした。
「私はジェイル・スカリエッティと言う。君の名を教えてくれないか?」
スカリエッティ、と男は名乗った。この男が自分を看病してくれたのだろうか。
「…俺は、生きているのか?」
「ああ、発見された時は虫の息だったが…確かに生きているよ」
「そうか…」
生きている。改めてそのことを認識した彼は、ふと思った。
生きているなら、また飛べるかもしれない。また戦えるかもしれない―奴と。
そう思うと、それが空に魅せられた者の性なのか、身体に力が湧いてくるような気がした。
「もう一度聞こう、君の名を教えてほしい」
スカリエッティが、なかなか答えてくれない彼にまた同じ質問をした。
「…13だ」
「13?それが君の名かね?」
変わっているな、と付け加えてスカリエッティは言った。だが、今の彼にとって名前なんてそれでよかった。
死んだはずが生きている。もしかしたらまた飛べるかもしれない。飛べるなら、また奴と戦えるかもしれない。それで充分だった。
「いいだろう。13、君には聞きたいことがあるんだ。答えてくれるかね?」
「その前にこっちの質問に答えてほしい」
「なんだい?」
「俺は、また飛べるか?」
スカリエッティは質問の意味が一瞬よく分からなかったが、彼が発見された時飛行服を着ていたことを思い出すと、すぐに答えを返した。
「ああ、すぐによくなるさ」
「…それは、何よりだ」
彼―黄色の13は、わずかに口元を緩ませた。

125 :THE OPERATION LYRICAL:2008/04/06(日) 18:46:35 ID:UsHFN/s5
投下終了。
メビウス1が出るならやっぱり彼も…と言う訳で出ました、黄色の13。
早く空戦シーン描きたいです。

126 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 18:50:44 ID:dBKMIF0d
GJ!
ああ空戦が待ちきれない!
しかし戦闘機に乗らないメビウス1は想像できないな。
はやてがどうやって通すのか興味ある。

127 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 18:53:37 ID:OY3qVhf4
GJ!
続きが楽しみです!

128 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 19:19:28 ID:OY3qVhf4
失礼

ティアナとの関係も気になります。

129 :なのはVSボウケン ◆eu6nimmn1k :2008/04/06(日) 20:16:55 ID:cjknD0b4
>>125
早く空戦シーン見てみたいです。戦闘機の空戦シーンとか書けるのは
それだけで凄いと思ってしまう。

昨日のサガフロの続きを、21:30辺りに投下させていただきたいと思います。
私自身が、見易く構成されていても、何十レスと続くとそれだけで敬遠してしまいがちなので、
今回、実験的に10レス前後で適当に切ってみます。

130 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 20:25:22 ID:1cqTgoaP
>>129
何十レスと書く人もいるんだからそういう事はわざわざ書き込まなくていいと思うよ

131 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 20:32:54 ID:cjknD0b4
非難するつもりは全く無く、単に自分勝手な好みの言い訳――のつもりでしたが、
それこそ書く必要はありませんね。申し訳ありません、失言でした。

132 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 20:37:50 ID:SDRbLkIk
>>130
わざわざそんな風に言うなよ、と思うのは俺だけ?

133 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 20:38:50 ID:M6XRVMhw
長くても読める作品を書く方は読者がちゃんと読んでくれるのだから
長い 短く関係なく要は「読みたいと思う内容か」だよ。

134 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 20:40:22 ID:M6XRVMhw
内容も端折るのは勘弁。

135 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 20:43:25 ID:1cqTgoaP
>>132
気分を害されたのでしたら申し訳ない、謝罪します

136 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 21:02:23 ID:cjknD0b4
仰る通りです。ただでさえ詰め気味で書いていたので、つい自分の尺度で計っていました。
不快に思われたのなら申し訳ありませんでした。
全部には少々長すぎるのですが、キリのいいところまで投下させていただきたいと思います。

137 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 21:07:23 ID:M6XRVMhw
それでは支援。

138 :その名はアルカイザー:2008/04/06(日) 21:34:25 ID:cjknD0b4
それでは失礼します。昨夜の続きからです。

「貴方達……まだやろうっていうの?」
「ああ、何度でもやってやるさ」
 戦場は魔力光と地竜の炎で仄かに照らされている。はっきりとは見えないが、爆音と剣戟の音からも、フェイト達が激しく戦っていることは伝わってくる。
 地竜の背の上で再度、アルカイザーとエリオはナシーラと対峙した。ナシーラは地竜の首筋を背にして妖しく微笑む。
 ナシーラはもとより、エリオも息を整え冷静さを取り戻している。
 その様子から一筋縄ではいかないことは、既にナシーラも察しているだろう。今のエリオは、言葉巧みに操れるただの子供ではないということだ。
 互いに睨み合い、弾かれる時を探っている。最早挑発も会話も――全ての言葉に意味が無い。僅かなきっかけで戦いが始まる、一触即発の状態。
 不規則にうねる足場は定まらず、力を入れていないとバランスを崩しかねない。
「ギャォォオオオオオ!」
 張り詰めた空気が漂う中で、戦いの号砲となったのは地竜の咆哮。フェイトとシグナムの猛攻によって、地竜は堪らず悲鳴を張り上げた。
 刹那――地竜の背が激しく振られるのに合わせて、3人が同時に飛び出した。震動を物ともせず、踏み込みを強くするアルカイザー、尾で跳ぶように走るナシーラ。
小刻みに足を動かし、器用にバランスを取るエリオと三者三様である。
「うぉぉぉおおおおおお!」
 気勢を発して、最初にエリオとナシーラがぶつかった。ナシーラはストラーダの振り下ろしを、両手の爪で受け、そのまま両腕を振り上げてエリオを押し返す。
 斬撃に勢いが乗る前に食い止めた――言葉で表せば単純だが、それだけナシーラの動きが機敏であることを示していた。加えて、ナシーラに決定打を与えるには、やはりエリオの打撃は軽い。
 斬撃は両腕の振り上げに弾かれるが、その背後からはアルカイザーが走り込んでいる。エリオが勢いを利用して自ら離れたのだとナシーラが気付くのに、時間は掛からなかった。

《シャイニングキック》

 地竜の背中とほぼ平行して滑空するキック。エリオを退けた直後だった為、ナシーラは咄嗟の反応が遅れた。
 何とか回避を試みるも、その速度は凄まじい。迷う暇も与えずに迫るキックに対し、ナシーラの選択肢は一つしかなかった。

《尾撃》

 ぶつかり合うシャイニングキックと尾撃。通常の打撃ならば、太い尾によって弾くことも容易かろうが、今回はアルカイザーのキックもそう簡単にはいかなかった。
「くぅぅぅぅぅ!!」
「フウゥォォォォォ!!」
 両者共に掛け値なしの全力同士。衝撃波で空気を震わせるほどに拮抗した激突は、時間にすれば数秒にも満たない。しかし、互いの気迫はもっと長時間の攻防を思わせる。
 終わりは意外に早く訪れた。押し負けたのは――シャイニングキック。正確には、直線のキックが横からの打撃に逸らされたと言うべきか。
 追撃を予想したのか、競り負ける直前にアルカイザーは尾を蹴り、回転しつつ後ろに跳躍。
 しかし、ナシーラが息つく暇も与えず、背後に回っていたエリオが、ストラーダを刺突の態勢に構えている。
 ナシーラは、再び尾で防戦しようとするが――
 尾が痺れて思うように動かせなかった。アルカイザーとの激突によるものだ。
 これが狙ったものであることに、何故気付かなかったのか。今更になってナシーラは自らの迂闊さを呪う。
「坊やぁ!」
 ナシーラは振り下ろされた槍を、振り返り様に左腕で庇った。直撃は避けられたものの、付け根近くまで深く切り裂かれた腕からは、青い血が舞う。
 エリオは自分の一撃に確かな手応えを感じた。が――すぐにその表情が曇る。
「なん……で……!」
 血を滴らせながらも、敢えてナシーラは左腕でエリオの右肩を抉ってみせた。貫き手に突き刺された肩からは血が滲み、それは激痛と共に広がっていく。
 怒りに燃える瞳と裏腹に口元を歪ませるナシーラ。半ば勝利を確信した喜悦の表情。状況は違えど、自分を自由に嬲り殺せる実験動物だと思っているに違いない。
 対するエリオは、一歩も引かず、ストラーダを握り直す。攻撃が効かない訳ではないのだ。まだ戦うことはできる。
「このトワイライトゾーンの中なら回復力も3倍……どう頑張ったってあなたじゃ軽すぎるのよ!」
 一人ならそうかもしれない。だが、今は違う。今は――その決定打を与えられる存在がいる。



139 :その名はアルカイザー:2008/04/06(日) 21:37:51 ID:cjknD0b4
 
《シャイニングキック》

 背後からの指示通りに頭を下げると、突風が頭上を掠めた。
「甘いわ!」
 しかし、シャイニングキックはまたも回復した尾と相殺。今度はナシーラも予測済みだった為か、下から突き上げるように尾を振り上げ、キックは容易く弾かれた。
 バランスを崩したアルカイザーは、ナシーラの頭上を越え、回転しながら飛ばされていく。
「アルカイザー!」
 エリオの叫びにもアルカイザーは答えない。すぐにナシーラの標的はエリオに向き、アルカイザーを気にする間も無くなってしまう。
 速さもさることながら、最もてこずらせているのは尾だった。まるで第三の手のように器用に動き、しかも威力は比べ物にならない。
 両腕の猛攻を凌ぐ間も、常に尾の動きを警戒せねばならず、エリオは戦闘に集中できずにいた。
 ナシーラもそれに気付いているらしく、尾を無意味に跳ねさせてエリオを威嚇する。
 光沢を放つ両の爪をストラーダで受けると、ぶつかった爪とストラーダの向こうから嫌らしい笑みが見えた。
「どうしたの坊や? そんなに私の尾が怖い?」
 エリオは何も答えなかった。挑発であることは解り切っているからだ。
 尾撃は強力である。しかし身体を半回転させる以上、大きな隙が生まれる。だからこそ確実に決まるチャンスを狙っているのだろう。
 だが、それが解っていても状況を好転させる術は思いつかない。とりあえず距離を開けるべく、後ろに跳べばナシーラも追ってくる。
それが更にナシーラを勢いづかせ、速度の乗った爪を防ぐことが困難になった。
「怖い? 怖いのね坊や?」
 ヒュン――と風を切って尾がエリオの顔に飛ぶ。
「くっ――!」
 エリオはストラーダを顔の横に立て、防御姿勢に入るが、尾は急激に失速。代わりに爪が反対の肩を浅く裂く。
 玩ぶようにからかいながらの攻撃に神経をすり減らし、離れることを許されず、エリオは次第に勢いに押されていく。
――これ以上、後ろには下がれない……。でも、突撃しても勝てるとは思えない……
 血路を見出すべく、ナシーラを睨み、その動きを観察する。
 その時、光が見えた。ナシーラの背後、何かが風を切って飛来する。暗闇を照らし、ライトグリーンに棚引く光は、まるで――流星。
 ナシーラはまだ気付いていない。こんな時、アルカイザーならどうするか。それを考えればおのずと答えは導き出された。
「脇が甘いわよ、坊や!!」

《尾撃》

 迷いを察知したエリオに生まれた一瞬の隙をナシーラは見逃さない。素早く身体を回し、エリオの脇下へ尾を叩き込んだ――それこそが狙いであるとも知らずに。
 エリオが声も無く吹っ飛び――直後、勝利を確信したナシーラの、がら空きになった背中を流星が貫いた。


 ナシーラに弾き飛ばされたアルカイザーは、空中で体勢を整え、飛ばされる方へ足を向ける。先にあるのは幹のように太い地竜の首筋。これほど上手くいくとは思っていなかったものの、無策で突撃した訳ではなかった。
 増幅された回復力、防御力を攻略する方法に頭を捻ったが、結局浮かんだ手段は一つ。回復を上回って致命傷を与えられる威力の攻撃を、防御されないように当てる――実に単純明快な方法。
 そこで思い出したのが、公園で戦った女が使った三角蹴り。正攻法でどうにかなる相手ではないのなら、搦め手から攻めるしかない。
 不意を突く為には、たとえ自分がやられても、ナシーラの注意を引いておける存在が必要になる。エリオは十分にその役目を果たしてくれた。
 アルカイザーは地竜の首に接触と同時に、身体を捻る。足を溜め、蹴り出した勢いを乗せて再び宙を舞った。


140 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 21:37:57 ID:ZPfRISLN
アルカイダ支援

141 :その名はアルカイザー:2008/04/06(日) 21:39:47 ID:cjknD0b4
 
〔ディフレクトランス〕

「ディフレクトランス! トォォッ!!」
 予想外の方向――予想外の角度――予想外の攻撃。
 高角度からのスピードと体重、更に回転を加えた三角蹴りは唸りをあげ、文字通り突撃槍(ランス)となってナシーラを貫く。
 打撃の瞬間、骨が折れる耳障りな音が響き、ナシーラは叩き伏せられた。
「ギィィィヤァァァァァ!!」
 奇声を上げて動かなくなったナシーラの前にアルカイザーは立つ。
 しかし、彼は拳を握り締めたまま動かなかった。いや――動けなかった。


 これは人なのだ。今はモンスターだとしても、数十分前までは確かに人の形をしていた。ここまでの道中で、幾人もの研究員の成れの果てを屠っていながら今更なのかもしれない。
そこに加えて、彼女の固まった恐怖の表情が決意を鈍らせる。
 ナシーラはピクリとも動かなくなった。だが、この程度で死んだとは思えない。おそらくは気を失っているだけだろう。
 今ならば拳か踵を振り降ろすだけで、容易く彼女の命を絶つことができる。だが、無我夢中の戦いの中でならまだしも、
抵抗できない相手に止めを刺すという行為がアルカイザーを縛り、拳を止めさせた。
 それは、内心ずっと考えていた状況。綺麗事で己を飾り、目を背けてきた代償。
 今、ここで殺せと言うのか? 無抵抗で気絶している相手を? それがヒーローなのか?
 できない――たとえ彼女が同じように何十人もの人々を犠牲にしていたとしても、そして今後もそれを繰り返すとしても。
 それは人としての優しさなのか、それとも、この期に及んで己で手を下せない臆病さなのか。
 倒すべき敵を前にしてなお、正義の鉄槌は振り下ろすべき時を迷っていた。
 彼女はまだ、生きている。戦闘力を奪えば、もう十分なのではないか――そんな考えすら脳裏を掠める。
 そして自ら作り出したこの状況が、彼自身の窮地を招くことになった。


 アルカイザーの奇襲から数十秒――未だ痛みは続いているが、驚異的な身体能力は既に彼女の身体を辛うじて行動可能にしていた。
 どういう訳かアルカイザーは攻撃を仕掛けてこない。ナシーラは狸寝入りを続けながらも、頭の中では冷静に、そして狡猾に反撃の機会を窺う。
 拳を見つめて動かないアルカイザーを見て、やがて一つの仮説に行き着く。こいつは命を奪うことに怯えているのだ、と。
 ブラッククロスを脅かすかもしれぬ存在が、こんな腑抜けとはなんたる僥倖。ナシーラは込み上げる高笑いを必死に堪える。それが今日、最も苦しい戦いだった。
 勝手に笑みを作る口元を見咎められないよう、身体を丸めながらチラリと様子を見ると、彼が一歩一歩近づいてくる。
 ようやく決意を固めたのかもしれないが、もう遅い。足取りも明らかに緊張している。

 一歩――まだ足りない。
 一歩――後少し。
 一歩――今!

 射程距離に入った瞬間――ナシーラが跳び上がっても、アルカイザーはまるで反応できなかった。

《グリフィスクラッチ》

 文字通り蛇蝎の如く、縮めた身体を伸ばす勢いで踊りかかり、素早く強烈な引っ掻きを繰り出す。
 真紅の爪は、アルカイザーのボディプレートも、スーツさえも切り裂いて、その胸に鮮やかな線を刻んだ。
「ぐぅっ……!」
 防御も間に合わず、呻きながらアルカイザーは倒れ込む。ナシーラは紅い血に染まった爪を舐め、妖しく微笑んだ。
「本当に甘いわね……。倒れた敵を目の前にして迷うなんて」
 自分は違う。もう何人もの人間を殺してきた。泣き叫び命乞いをする人間を、薬漬けにして改造もした。
 だから怖くない。いざ殺す段になって迷ったりするはずがない。
 爪がヘルメットの隙間――首筋を貫けばそれで全てが終わる。実に簡単なことだ。どうして彼はこんな簡単なことができなかったのだろう。
「さようなら、ヒーローさん」
 ナシーラは爪を立てて振り下ろす。しかし爪が届くことはなく、鋭く伸びた爪は半分まで切り取られている。
 暗黒の中、寸前で煌いた黄色の魔力光と雷光。それが意味するものは――


142 :その名はアルカイザー:2008/04/06(日) 21:41:54 ID:cjknD0b4
「また邪魔をするのね……坊や!」
 目の前には、ストラーダを薙いだエリオが息を荒げて立っていた。
 確かに手応えはあったはずなのに、今また、彼は立ちはだかってくる。
 アルカイザーもこの子もそうだ。このトワイライトゾーンの中で動きも力も制限されるはずなのに。自分のように特殊な回復力も持ち合わせていないのに。
 それでも、何度でも立ち上がってくる。これだけが、優れた頭脳を持つ自分にも理解できなかった。
 しかし恐れることは無い。如何に凝視が警戒されようとも、戦闘力では俄然こちらが上回っているのだ。
 ナシーラは余裕の表情でエリオを睨みつける。だがエリオも怯むことなく、正面から視線を受け止める。
「もう……殺させない!!」
 ナシーラにとっては虫酸が走るような気色の悪い言葉だった。


 もう殺させない――ただそれだけの言葉が傷ついた身体に力を与える。挫けそうな意志を支えてくれる。
――不思議だ……。口に出しただけなのに……
 口に出すことで、実際にそれが実感として湧いてくる。
 施設にいた頃は毎日のように、
――大丈夫――
――きっと助けにきてくれる――
 そればかり呟いていたように思う。そうすることで救いを信じることができた。恐怖を少しでも和らげることができた。
 やがて、それは絶望と諦めを経て、呪いと憎しみに変わっていき、心もそれに合わせて荒んでいった。
呪詛を一つ吐く度に自分から何かが零れて、その隙間が黒く染まっていった。
 無表情になる研究員達に悟られないよう無表情で、逆撫でしないように無言で痛みや辛さに耐えてきた。
 今にして思えば、諦めずに唱え続けていれば何か変わっていたのかもしれない。たとえ救いが現れずとも、絶望に染まることは――
――いや……もう止めよう……
 エリオは首を振り、追憶を中断する。振り返ることがあってもいい、でも今はその時ではない。
 多分アルカイザーだって同じなのだろう。「ヒーローとして」「人々を守る」「それが正義だ」そう信じることで、戦ってこれたのかもしれない。
傷つけられる恐怖から逃れられていたのかもしれない。
 この推理が的を射ているかも、それが正しいことかも解らない。だが、たとえそうだとしても、それを責めることはできなかった。
 これまでのエリオにとって、ヒーローとは羨望と、秘めた嫉妬の的。しかし、今日ここでアルカイザーと出会って、何かが変わった。
 完全無欠の存在ではなく、その実、彼なりの苦悩と弱さを抱えていた。不安、恐れ、迷い――それは彼が紛れもなく人間である証。
 それを知っても失望はしなかった。決して手の届かない存在でも、完成された存在でもない。今、自分が戦わなければ彼は死んでしまう。
 それが嬉しい――と言ってはおかしいだろうか。だが、そのことが無性にエリオを昂らせた。
 自分はもう救いを待つだけの無力な子供ではない。守れる力は確かにこの手にある。それでこそ、必死で強くなった甲斐があるというもの。
 それだけではない。ヒーローである彼の力になれるということ、自分も誰かのヒーローになれるということ――様々な想いが絡み合い、
混ざり合って、とても一言では片付けられない。
 フェイトによって救われた過去。それは言葉だけでなく、彼女が身体を張って受け止めてくれたからこそ。
 たとえ嘘だ偽善だと嗤われようと、"本気の嘘"ならそこに迷いは無い。誰かから言葉を貰えれば、言霊が勇気になる。守りたいから、優しい言葉をあげたいから戦う。
――たとえそれが偽善だとしても、信じたい気持ちは嘘じゃないから……
 エリオは静かにストラーダを持ち直し、大きく息を吐いた。呼吸に合わせて、弱気な思いが吐き出されていく。

「『僕が守る』……」

 誰にともなく、うわ言のようにエリオは呟いた。ナシーラはそれを怪訝な顔で見ている。

「『お前なんか怖くないぞ』……!」

 身体の震えが止まり、代わりに心が奮い立った。身体から痛みが引いていく。
 今は言葉を掛けてくれる人はいない、助けてくれる人も――だから自分で自分を鼓舞する。
 ただ――この言葉だけは嘘にはさせない。

「『絶対に負けるもんか』!!」

 ストラーダを構えたエリオは、口端を僅かに持ち上げて微笑った。



143 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 21:42:39 ID:M6XRVMhw
支援

144 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 21:43:44 ID:dJtMyvGm
アルカイザーをオルカイザーと読んでしまったぜ……支援www

145 :その名はアルカイザー:2008/04/06(日) 21:44:35 ID:cjknD0b4
 

 尾撃は、咄嗟にストラーダで庇ったおかげで大したことはない。それでも、直撃すればストラーダが損傷し兼ねなかった。
だから全てをストラーダで受け止めず、自分にもダメージを流すしかなかった。
「どうしたの? 坊や……足がふらついてるわ」
 ナシーラは、これ以上無い厭らしい顔でエリオを嘲笑った。
「……くっ!」
 事実である以上、言い返せない。尤も言い返す気も無いが。
――乗るな、これは作戦だ……
 時間を与えれば相手は回復する一方だ。ナシーラが多弁になるのは決まって時間を稼ぎたい理由があった。ということは、まだダメージは治りきっていないはず。
 アルカイザーはまだ起き上がってこない。意識があるのかも定かでない。ただ一つ、彼の行動を無駄にはできない――それだけは解る。
「はぁぁぁぁぁ!」

《スピーアシュナイデン》

 先手必勝、エリオはカートリッジをロードし、袈裟斬りに斬りかかった。カートリッジロードを警戒してか、ナシーラも爪で受けようとはせず、飛び退った。
 するとエリオも距離を詰めて身体ごと回転し、横に薙ぐ。旋風を思わせる鋭い薙ぎ払いも、ナシーラは跳躍して回避した。
 エリオは機敏に動くナシーラに対して攻めあぐねていた。
 地竜の背の上という特殊な場所――奥行きはそれなりに長さがあるが、左右にはあまり余裕が無い。だからこそナシーラも、エリオの攻撃をバックジャンプで回避していた。
 ならば刺突が有効だが、やはり厄介なのは尾の存在である。外せばストラーダを弾かれるのは必定だろう。
「ほらほら! 息が乱れてるわよ!」
 不快な挑発が降り注ぐ。ナシーラは相変わらず多弁だった。
 エリオはまだ足を残している。おそらくナシーラの背後を取ることも可能だ。
 しかし、同じ手は二度は通用しないだろう。後は使うべきタイミングのみなのだ、一撃で決まるタイミングでないと意味がない。
 エリオがなかなか思い切れないでいると、それを察したのだろう。ナシーラは一気に距離を詰め――

《回転攻撃》

 猛烈な勢いで身体を回転させる。鋭い爪と尾で形成された小さな竜巻に巻き込まれたが最期、ストラーダは砕かれ、BJごと引き裂かれるだろう。
 間違い無い――ナシーラは勝負に出たのだ。
 風圧に押されて後ずさる。すると、引き摺るように下げた足が外れて、危うく体勢を崩しそうになる。ナシーラを追い詰めておきながら、それをひっくり返されたせいで、もう後がない。
――どうする!? どうすれば……!
 恐慌しそうになる心を必死に抑え、エリオは考えを巡らせる。横には回避できるスペースは無い。上に跳んでも苦し紛れの回避では捕まる可能性が高い。
 ならばいっそ下に逃げるか? とも考えたが、逃げればアルカイザーはどうなる? 
 応援は期待できない。どの道、今倒せなければ勝機は無いのだ。
「それなら……やるしかない」
 生半可な攻撃は掻き消され、魔力の無駄にしかならないだろう。たった一撃、されど強力な一撃が要る。
 もう一度、エリオは息を吐いた。余計な考えを払拭し、全ては敵を倒す為に。
 心臓の動悸が治まると、意を決して、エリオは竜巻へ向かって飛び出す。右手に握られたストラーダからは、重く低い音が立て続けに響いた。


 強い風圧が身体を押し戻す。身体がもっと大きければ――そう思わないでもないが、言ってみたところで始まらない。
 ストラーダを突き――だが、強靭な皮膚には碌に刺さらない――支えにして跳躍。しかし、高さはナシーラの頭一つ上と、たかが知れている。
「低い! 低いわ、坊や!」
 飛び越えるにも、振り下ろすにも足りない。足が巻き込まれる寸前、エリオは叫んだ。相棒である槍の名を。
「ストラーダ!!」
『Speerangriff.』


146 :その名はアルカイザー:2008/04/06(日) 21:46:34 ID:cjknD0b4
 
《スピーアアングリフ》
 
 ノズルから噴射した魔力は、穂の向く先へ推進力を発生させた。すなわち、エリオの直上へと。
 ぶれないよう、しっかりと押さえられたストラーダごと、エリオの身体を持ち上げる。ほんの少し、ほんの少し高さを増すだけでよかった。
「ウォォォォォォォォォォ!!」
 噴射を停止、ストラーダを回転の中心――台風の目へ向けると、再噴射。エリオはこの一撃に全てを賭けていた。保険を掛けている余裕は無い、まさに捨て身の一撃。
 ナシーラは完全に意表を突かれた形になった。勢いづいた回転を急に止めることはできず、身を捩じらせるのが精々だった。
 唸って逆巻く竜巻を、ストラーダと合わせて一本の稲妻となってエリオは貫いた――


 柄を抱くように押さえ、雷を迸らせての突撃は、闇を裂いて地竜の背に突き刺さった。それも、逃れようともがいた、ナシーラの左腕ごと。
 噴き出す青い血液、ごろりと転がる片腕を見ても、エリオは、
――外した……!
としか考えられなかった。それは全ての意識を、目の前の敵を仕留めることのみに集中した結果だった。
 悲鳴を上げる暇も惜しみ、ともかく逃げようと試みるナシーラに、エリオは素早く反応した。僅か一瞬で狩る側と狩られる側は逆転し、いっそ冷徹なまでに、青く血塗られた穂先は獲物を追う。
 ナシーラの顔面は蒼白。かつて妖艶であった表情も、今は狂乱の相をありありと表している。恐怖と怯えを映した瞳を前にしても、エリオは槍を収めない。いや、そもそも顔など見ていなかった。
 荒々しい踏み込みとは裏腹に、心中は穏やかなものだった。駆り立てる衝動こそあるものの、激しい波はいつの間にか、すっかりなりを潜めている。
有る限りの力で目前の敵を"殺す"――それしかなかった。
「これで――」

《スピーアアングリフ》

「終わりだぁぁぁぁ!」
『Sonic Move』
 カートリッジはフルロード。後はもう、逃げ惑うあの背中にストラーダを突き立てるだけ。エリオは溜めていた足を一気に使い、雌伏の状態から跳びかかる肉食獣のようにナシーラに迫った。
 みるみる距離は縮まり、そのまま身体ごとぶつかるつもりでいたのだが――
 ナシーラが腰ごと捻らせて振り向いた。まだ反撃を諦めた訳ではなかったらしい。
 しなる尾が側面から飛んでくる。このままでは側面から直撃を受け、形勢はまた傾くだろう。かと云って、ここで退くこともできない。
 エリオは咄嗟に踏みとどまったが、攻撃を止めるつもりもなかった。
――このままじゃ届かない。なら!
 その思考、そして以後の一連の動作が、どれほどの時間を要したかは解らない。だが、ナシーラの尾が届くよりは僅かに早かった。
 刹那――短期間ながらも培った戦いの直感が身体を導く。エリオは両手に抱えたストラーダを右手に持ち替えた。
慣性で滑るように進んでいた身体を、踏み抜かんばかりの踏み込みで留める。
 同時に突き出される右腕。肩に激痛が走るが、そんなことが今更どうだと言うのか。ここで仕留めなければ後がない――それがエリオの力を引き出している。
 しかし、たとえリーチは伸びても、所詮は右腕一本。両腕で持ち、身体ごと突進するのとでは大きく威力に差が生じる。
 単なる片手突きを必殺の一撃に昇華させる――方法は幾つもない。この期に及んでエリオにできる術としては一つしかない。
 エリオはストラーダごと、握った右腕を激しく捻った。捻じ切れんばかりに軋む腕の動きは、ストラーダに伝わり鋭い回転を生む。
「はりゃあぁぁ!!」
 埋め込まれた杭のように不動となった左足を軸に、限界まで身体を屈める。
――まだだ!
 尾を振りながらもナシーラは後退している。片腕に切り替え、力の限り腕を伸ばしても、自分の短い腕ではなお届かないことをエリオは悟った。
――まだまだ!!
 エリオは、魔力噴射を止めず暴れるストラーダを、手の内で滑らせる。


147 :その名はアルカイザー:2008/04/06(日) 21:49:07 ID:cjknD0b4
 
〔光の腕〕

 握る力を弱め、滑らせ、尚且つ噴射を最大まで引き出す――それは、基本両腕で扱い、エリオの小さな身体なら飛ぶことすら可能にする推進力が、緩んだ枷を引き千切り暴れることを意味する。
 案の定、ストラーダは凄まじい勢いで手から逃れようとした。
 滑らせなければリーチが足りない。かといって、自由にしてしまえば武器を手放すことになる。一つの技として完成もしない。
 ブーストしたストラーダの勢いに回転が加わり、雷と魔力光を帯びた螺旋を描いて突き出される。衝撃は思うより激しく、このままでは身体ごと持っていかれるか、それとも握り続けることができずに、手の内から飛んでいってしまうか――
「くぅぅぅぅおおおおおお!!」
 歯をきつく喰い縛り、身体を弓なりに反らせて持ち堪える。決して離れないよう、狙いを最後まで違わぬよう、磨耗する掌に力を込め続ける。
 直後――尾はエリオの頭上を掠め、ストラーダはナシーラの脇腹を貫く。螺旋の動きはそれに留まらず、細い腹の臍近くまでを無惨に抉り取り、血の華を咲かせた。


 噴射が治まり、ようやく動きを止めるストラーダ。血飛沫に閉じた目を開いても、それはまだエリオの手の中にあった。といっても、辛うじて柄尻を親指と人差し指で摘んでいる状態で、技と呼ぶにはあまりにも未熟だ。
 掌は摩擦でBJの手袋ごと皮が剥けていた。袖口は魔力の反動かズタズタに切り裂かれ、その凄まじさに今頃震えが来る。まさに刹那の攻防だったことが、実感として湧いてくる。
「まだ……終わりじゃない……」
 だが、まだ力は抜けない。ナシーラは悲鳴すら上げず、倒れもせず、引き攣った笑みを浮かべている。何を考えているのかは解らない。が、その傷を見るに、致命傷であることは確実だ。
 おそらく本人もそれを解っているのだろう。立っているのが精一杯という風に見える。
 だが、まだ生きている。そして他者を虐げ、弄び、用が済めば殺すか捨てる。自分が最も憎む行為を繰り返す。だから――生かしてはおけない。
 刃を振りかざすエリオに迷いは無かった。
 目の前の相手は"敵"。そうとだけ認識し、撃破する。そうやってエリオは勝利した。故に今、正気に戻ることを心のどこかで拒否している。考えてしまえば迷いが生じてしまう。それが怖い。
 エリオは腰溜めに構え、標的を貫くことだけに集中する。
 憎んでいたナシーラに止めを刺すというのに、エリオは怒りに燃えるでもなく、歓喜に打ち震えるでもなかった。ただ、ひたすら無心に、無感情であろうとしていた。
 自分がただの槍だったならどれだけ楽だっただろう。
 目を背けるように、遠ざけるように、その恐怖から逃げるように。かつて自分を虐げてきた者達のように心を殺そうと努めた。
 ストラーダと同化し、一本の凶器として殺傷する――ただそれだけを念じて。
 それでも――止めのその瞬間、エリオを支配していたのは、どうしようもない悲しみ。
「……やりなさい! 坊や!」
 ナシーラの顔にあるのは凶喜。死を前にして彼女は眉を跳ね、血で赤みを増した唇を歪めた。
「貴方は強い。そして、勝者たる貴方は敗者の返り血を浴びるの。ごくごく当たり前のことなのよ」
 命乞いされるよりはやり易かっただろう。エリオはその笑みに、言葉に誘導されていく。果たしてそれが自らの意志によるものなのか、彼女に操られているのかさえ解らない。
 突き出す腕は、ただ一本の槍として。
「さあ――堕ちなさい坊や!!」
 呪縛のままに繰り出した槍は、ナシーラの胸に突き立ち、戦いの終わりを告げる――はずだった。
 しかし、寸前でストラーダはそれ以上に強い力で止められた。
――!!
 槍を握っているのは、倒れたはずの男。
 汚れた赤とくすんだ金に彩られた――"今は"虚飾のヒーロー。


148 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 21:49:09 ID:ltglzF96
支援

149 :その名はアルカイザー:2008/04/06(日) 21:52:02 ID:cjknD0b4
 

「アルカイザー……!?」
 胸に深く傷を刻まれ、今も血を流しているというのに、握られたストラーダはビクとも動かない。
「俺は馬鹿だ……! 守るって決めたのに、決心したはずなのに、土壇場で迷っちまった……」
 アルカイザーの、ストラーダを握る腕に力が入る。ナシーラよりもエリオよりも、何より己の体たらくに対する怒りが、ストラーダを軋ませる。
 守るということは戦うこと。だが、戦うなら相手を倒さなければならない。それが当然の事実。
「本当は気付いてた……いつかはやらなきゃいけないって。これまではたった一人で、モンスターどもとしか戦わなかった。
でも、ブラッククロスには人間の戦闘員もいる。俺の仇のシュウザーだってそうだ……」
 敵わないと知って、降参してくれればいい。あまつさえ、戦いの流れの中で倒れてくれれば――そんなことまで考えた臆病さに、心底嫌気が差す。
 ヒーローとして人々を守る――その辛さとは、強敵と戦うことだけではない。真に問われるのは、その先にあるのだ。
「でも、俺がやらないってことは誰かがやるってことなんだ……。お前みたいな奴がやるってことなんだ」
 エリオは強い。あくまで素人目だが、戦い振りも、もう立派な戦士と言えると思う。
 彼は小さくても尖ったナイフだ。戦う意志でここにいる以上、これからやることは余計なことなのかもしれない。彼がこれからも戦い続けるのなら、いつかは通る道だろう。
それでも――
「それでも……それは今じゃなくていい」
 いつかエリオが、それが原因で足を掬われても、後悔する時が来たとしても嫌だった。わがままなのは解っている。それでも――。
「今、お前が涙を流すことはないんだ……!」


「え……?」
 指摘されて始めて、エリオは頬を伝っているものに気付いた。そっとなぞると、触れた指が熱い。感覚は無いのに、涙は止め処なく流れ続ける。
「何で……」
 流れる涙を拭きもせず戸惑うエリオ。次第に押し殺していた様々な思いが甦り、ふっと力が抜ける。
 ストラーダが手から零れ落ちて、カタンと音を立てた。その音でエリオは異変に気付いた。ストラーダのアルカイザーの握っていた部分が黒く焦げていたのだ。
 アルカイザーの身体が赤い。錯覚かとも思ったが、直後に漂ってくる蒸せるような熱気。先程と比べても、明らかに赤熱している、
「だから……もう迷わない……!」

 轟――と、アルカイザーの拳を紅い炎が覆った。指先、掌、手の甲――右腕の至る所から、溢れるように燃え上がっている。
 そして、アルカイザーはゆっくりとナシーラに近づいていく。ナシーラは口許を歪め、酷くいやらしい声で笑った。
「ふふっ、残念ね……。死ぬ前に、未来ある少年の心に、消えない傷を刻んで逝くのも面白いと思ったのだけれど」
「何だと……?」
「あの坊や、あらゆる感情を排して私を殺そうとしたわ。多分、坊やも私と同じね」
「僕が……?」
 ナシーラは首だけをエリオに向けた。ギョロギョロした蛇じみた目が、そしてその言葉がエリオを竦ませる。
「私は何一つ後悔も反省もしていない。研究は止められないもの。その為なら、他人どころか自分すら使うわ。あなたも同じ。
大事な"もの"とそうでない"もの"を秤に掛けて、はっきりと選べる人間」
「違う! 僕はそんな……!」
「いいのよ、否定しなくても。おめでとう! これであなたも立派な戦士ね!」
 ナシーラは言葉に詰まるエリオが最高に面白いらしく、わざとらしく皮肉な賞賛を送ると、また高らかに笑った。
 アルカイザーの炎が更に激しく燃え上がる。ナシーラの前で、アルカイザーは静かに拳を構えた。
「それとも……出来損ないの命は、私の命を奪って完全になろうとするのかしら?」



150 :その名はアルカイザー:2008/04/06(日) 21:55:18 ID:cjknD0b4
 

 アルカイザーに気付いたナシーラは、勝ち誇った笑みを浮かべた。
「惜しかったわ。あなたがもう少し遅ければ、私の返り血を浴びた瞬間――坊やの絶望が拝めたのにね」
 もうこれ以上、喋らせてはいけない。既にアルカイザーの決意は固まっていた。
 拳の炎は勢いを増し、肘までを包む。激しい炎は、生み出したアルカイザー自身にも痛みと熱を伝え、その身を焼いた。
「そうすれば、またあなたを求める人が増えるのよ。あなたをヒーローで"いさせてくれる"弱者が。傷つき虐げられる弱者が。
いいえ、もしかするとあなたを最高に輝かせてくれる"悪"になってくれるかもしれない」
 しかし、それもじきに薄れ――激しい怒りに感覚が麻痺していく。
「あいつを救えるのはあいつ自身だ……。あいつを笑わせることができなくても――俺はもう……お前達を笑わせない!! 笑わせてはおかない!!」
 怒りが最高潮まで高まった瞬間、アルカイザーの頭に強烈な何かが生まれた。まるで電球が明滅するような、一瞬の閃きが――
 拳を振るうに合わせて、自分の中で何かが覚醒したのを感じる。しかし今のアルカイザーに、それを名付けることはできなかった。


 アルカイザーの拳が唸り、ナシーラにめり込む。同時に、炎が全身に燃え広がった。
「アハハハハハハハハハハ!!」
 炎の中からナシーラの笑い声が聞こえてくる。これ以上ないほど嬉しそうに、可笑しそうに笑っている。
 それは十数秒程度続き、じきに聞こえなくなった。
――僕達は勝ったはずなのに……。なのに、なんでこんなに気持ちが悪いんだろう……
 エリオはきつく胸を抑えた。心の底には、澱のように不快感と後味の悪さが溜まり、吐き出す場所を求めている。
 ふと上を見上げると、激しい炎と魔力光が瞬く。フェイト達はまだ戦っているのだ――加勢に行かなければならないのに、
どこかそれすら別の世界のことに感じられて、エリオは暫く呆然としてしまった。
 中に動くものがいなくなっても、まだ轟々と燃え盛っている炎。静かにそれを見つめているアルカイザーの背中が、
エリオには泣いているようにも見え、言い様のない悲しさに胸を締め付けられた。


151 :その名はアルカイザー:2008/04/06(日) 21:57:39 ID:cjknD0b4
 

 どれくらいの時間が経っただろうか。おそらく数十秒しか経っていないと思うが、呆けていた時間はそれ以上にも感じられた。
 地竜が一際大きく吼えた。口からは炎を吐き散らし、身体を波立たせる。鼓膜が破られそうな咆哮にエリオは耳を塞ぐ間も与えられなかった。
 フェイト達の攻撃が功を奏したのかと思いきや、どうやらそれも違う。解るのは、これまで拮抗していた戦況が崩れたらしいことだけだ。
「(フェイトさん!? どうしたんですか!?)」
「(解らない! 急に暴れだして……)」
 フェイトも状況が把握できないらしい。考えられる理由は幾つかあるが、何かが地竜の暴走スイッチを押したのは確かだ。
 地竜の吐く炎の勢いはこれまでの比ではない。喧しく足を踏み鳴らしながら、その首が次に向けられたのは、自らの背に乗ったエリオとアルカイザーであった。
「まさか……!」
 背筋から走ったそれは、未熟でも戦士として培った勘。そしてエリオの予想通り、緋色の炎は吸気と共に口に収束され、吐き出される。
「そんな! 自分の身体ごと!?」
 間一髪飛び降りたエリオは、自分の背中を焼く地竜に目を見張った。それさえも、地竜にとっては撫でたようなものなのだろうか。皮膚を黒く焦がしながらも、地竜は執拗にエリオを狙う。
 着地のタイミングを見計らって、鉄球が発射された。エリオは着地の勢いを利用して前に転がり、辛うじてそれを回避した。
 背中からは振り落とされ、距離が離れた。有利な位置取りも全て無になり、二度は通じないだろう。あまりに呆気なく、状況は振り出しに戻ったことになる。
 暴れるだけだと侮った結果だ。単なる暴走ではない。弱った上に飛べないエリオとアルカイザーを優先して狙っている。明らかにそれは知恵を使った――自分の能力を最大限に利用した戦法と言えるものだった。
 だが、この荒れ様はそれだけとは思えない、どこか狂気染みたものすら感じる。
「まさか……」
 そんなはずはないと頭を振っても離れない。正直、生半には信じ難いが、そう考えれば辻褄が合う。
「僕達をナシーラ所長の仇だと……?」
 ナシーラが予めプログラムした可能性もある。断末魔の哄笑然り、思い当たる理由は幾つもあった。だが、エリオにはそう思えてならなかった。主を奪われた怒りを、悲しみを仇である自分達にぶつけようとしているのではないかと。
その執念がただのモンスターに知恵を与えてしまったのではないかと――
 真実はこの際問題ではない。ただ、そう思ってしまった途端、エリオには、暴れ狂う地竜が急に痛々しく見えてしまった。
 戦うしかないと決めていたのに、それでも一瞬、ほんの一瞬エリオの足が止まる。そして地竜はその隙を見逃さず、鉄球がエリオを狙い放たれた。
 すぐさま横へ跳んだことにより、一射目はなんとか回避する。しかし、回避に十分な距離を稼げなかったエリオは、間近での激しい衝撃に足を捕られた。
 加勢に飛び込もうとしたフェイト達だったが、炎に阻まれ出遅れる。口をフェイトに向けながら、二射目は確実にエリオを捉えて発射された。

《アル・ブラスター》

 しかし間一髪、発射と同時に、鉄球は上からのライトグリーンの光弾に叩かれ、別の方向に弾んでいった。その色はナシーラと対峙した時、彼女の背後を貫いた流星の光と同じもの。
「アルカイザー!」
 地竜の頭の上に立ち、拳を突き出しているのは、紛れもなくアルカイザーだ。いつの間にあんなところに移動したのか――そんなエリオの疑問をよそにアルカイザーは言う。
 表情は解らなくとも、その声、その立ち居振る舞いに満ち満ちているのは悲壮な――そして確かな決意。
「それでも……俺達は倒れてやる訳にはいかない。俺は、俺達はお前を倒す……! 倒して――生きさせて貰う!!」


152 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 21:58:55 ID:3dqzWEAN
支援

153 :その名はアルカイザー:2008/04/06(日) 22:00:01 ID:cjknD0b4
 
《カイザースマッシュ》

 アルカイザーは、取り出した光剣レイブレードを渾身の力を込めて振り下ろした。硬い反発の衝撃も腕力で押さえ込み、剣は血をしぶかせつつ、地竜の頭を半ばほど割り開く。
 これまでで最もけたたましい悲鳴を上げ、地竜は悶絶した。長い首を振り回し、アルカイザーを頭上から追い払う。
 アルカイザーは頭上から一跳びでエリオに並んで着地した。
「ナシーラの時もそうだった。あいつらは傷を癒しているんじゃない。確かに防御は桁違いに強化されても、治癒速度が劇的に変わる訳じゃない。
麻痺させて気にならなくしているだけだ。……確信は無いがな」
「ということは、これまでの攻撃も効いてはいるんですか?」
 キャロも傍まで飛んでくる。彼女も大きな傷こそ負っていないものの、フリードには無数の小傷が刻まれ、彼女自身の疲労も相当なものだろう。
「ああ、蓄積されてはいるはずだぜ。ナシーラだってそうだったんだ」
 アルカイザーは、ナシーラには打撃でのダメージしか与えていない。時間を稼ぐ素振りを見せたのは、痛みが消えるのを待っていたに違いない。
 しかし、エリオに付けられた最後の傷は治る様子が無かった。
「地竜の奴も傷は塞がっていないんだ」
 足を止めると、すぐに鉄球が飛んでくる。三人は地竜を囲むように散開。エリオとアルカイザーは同じ方向に飛び出した
「フェイトさん達がずっと戦ってきたんです。もう少し……きっともう少しのはずです」
「だったら勝負に出よう。全員で一斉に奴に攻撃を叩き込むんだ」
 このまま、ただ走るのみでは埒が開かない。大詰めに差し掛かっているのは確かなのだ。作戦をどうこうする段階はとうに過ぎている。
「それしかないと思います。でも、仕掛ける隙が無いことには……」
 エリオはフェイトとシグナムに念話を飛ばす。
「(それなら私達が露払いをしよう。お前達は奴に向かって走れ)」
 間を置かず、シグナムから念話が飛び込んできた。腹案があるようだが、詳しく問い質している時間は無い。今は賭けてみるしかない。
「(解りました、お願いします)」
 エリオとアルカイザーは指示に従い、地竜へと一直線に駆け出した。


「ということだ、我々で奴の攻撃を止める」
 地竜は、エリオとアルカイザーを狙いつつも、上空の警戒も忘れていない。忙しなく飛び回りながら、シグナムはフェイトに言った。
「うん、解ってる。仕掛けるよ、シグナム!」
「おお!」
 フェイトとシグナムは顔を見合わせ、同時に頷く。
 フェイトとシグナムには、エリオの考えは容易に想像が付いた。おそらくあの得体の知れないヒーローとやらを――アルカイザーを切り札だと考えているに違いない。
信の置ける者かも解らないというのに、博打にも等しい。
 だが、それはシグナムも同感だった。オーラ――と言ったら笑われるだろうか。彼には、力もさることながら、理屈ではない何かを感じる。
 今はそれに賭けてみたい――そう思わせる者こそがヒーローなのだろう。ここにいる全員が、いつしかそう思い始めていた。


154 :その名はアルカイザー:2008/04/06(日) 22:02:30 ID:cjknD0b4
 

 エリオとアルカイザーは一直線に走る。暗闇の中に聳える巨大な影へと走る。
 正面から向かってくる愚かな獲物を、地竜は正面から迎え撃つ。だが、二人は鉄球の発射される轟音を耳にしてもなお、足を止めない。

《飛竜一閃》

「行け! シュランゲバイゼン!!」
 迫る鉄球は、目の前で蛇剣に雁字搦めにされ、無数の鉄片に切り裂かれた。声の主はシグナムだ。連結刃を伸ばし、援護してくれた。
 それすら織り込み済みで、降り注ぐ鉄片を避けもせずに駆けて行く。援護するという言葉を信じられるからこそ、最短で距離を詰めることができる。どんな障害が立ちはだかろうと恐れは無い。
 アルカイザーにとっても、フェイトとシグナムはエリオらの伝聞でしか知らなかった。それでも彼女達の戦い振りを見れば、言葉を交わさなくても信じられる。
エリオとキャロを含む、子供達を助けるという自らの使命に全てを懸けているのだ、と。
 後僅かというところで、地竜はフェイトを食い止めていた炎を、エリオとアルカイザーへ向けた。
「キャロ!」
 フェイトがキャロの名を叫ぶ。呼ばれたキャロは、既に攻撃を受けにくい位置――即ち二人の斜め後方に控えていた。


 たとえ力が足りなくても、想いならば決して劣ってはいない――そう信じてキャロは詠唱を続ける。
 彼女は戦場に於いての自らの役割を理解していた。フリードに乗らなければ機動力にも火力にも欠け、乗ればその大きさから的になり易い。前衛で戦う者達が傷ついていくのをただ見ているしかない。
故に、傷つきながらもひた走るエリオとアルカイザーが歯痒くさえあった。
 正面切って戦うには足りず、精々が援護することしかできない。それでも、それが勝利に繋がると、彼を助けることに繋がると思いたい。その想いを乗せて、キャロは呪文を紡いでいく。

《ブーストアップ・アクセラレイション》

 フェイトはバルディッシュをザンバーモードに変形させ、全速で地竜へ飛ぶ。キャロの魔法を受け、身体に力が漲るのを感じていた。地竜の首が向き直るより早く、飛びながらも光の大剣を取り回す。
 だが、こうして戦っている最中も、エリオのことが気になって仕方なかった。何故気付いてやれなかったのだろう――
 彼の秘めたる闇と傷が、深く重いものであることは解っていたはずなのに、救えたつもりでいた。
 そして今、エリオはしっかりと立ち上がり、戦っている。立ち上がらせたのは自分ではなく、アルカイザー。
 エリオの心中など知らず、フェイトは煩悶としていた。
 何故、彼なのだろうと。自分は彼を非人道的な研究から救い、平和な世界に帰したはずなのに――考えれば考えるほどに嫉妬が心に根を張っていく。そうなる前に、フェイトは頭を振って予防線を張った。
 速く、なお速く――今はただ、それだけを頭に残し、フェイトはバルディッシュを握る手に力を込めた。

《清流剣》

 空中を疾駆するフェイトが地竜の首、その真横をすり抜けた。一瞬の交錯は、端からはそうとしか見えなかっただろう。地竜が違和感に身を捩じらせた途端――それは起こった。
 首筋にゆっくりと線が走り、口を開くと共に鮮血が噴き出す。これには地竜も堪らず、炎を吐くどころではない。その剣閃が余りにも速く鋭かった為、身動ぎするまで傷が開かなかったのだ。


 フェイトの一撃も、決定打には至らない。しかし地竜を僅かな間スタンさせ、二人が地竜の足元まで駆け寄るだけの時間は稼ぐことができた。
 フェイトとシグナムは左右に、キャロは正面後ろ、その先の地竜に、エリオとアルカイザーはまさに届かんとしていた。
「早く! エリオ!!」
「行け! アルカイザー!!」
「お願いします!!」
 その声が背中を押す。
――あと少し、あと少しで決着が付くんだ。そう考えれば痛いのも疲れたのも我慢できる!
 それはアルカイザー以外の三人も同じはずだ。そう、エリオは信じていた。
 身体を覆う魔力光が、互いの位置を教える。暗闇が地竜に力を与え、痛みを消すなら、この光こそが自分達を繋ぎ、力を与えてくれるはずだと。


155 :その名はアルカイザー:2008/04/06(日) 22:04:35 ID:cjknD0b4
「やれ! エリオ!!」
《フラッシュスクリュー》
 横を走っていたアルカイザーが跳躍し、光を帯びた拳が直撃コースの鉄球を砕く。結果、エリオの前に道ができた。既に勝利は目の前まで来ている――力を振り絞り、エリオは槍を唸らせた。

《サンダーレイジ》

 エリオがストラーダを地竜の前脚に突き刺す。僅かでもいい。刺さればそこから電撃を奔らせる。巨体を揺るがし、一瞬で電流は駆け巡った。
 ビクビクと痙攣しながら、やがて地竜は動きを止める。その間、エリオが踏み潰されなかったのは幸運としか言いようがない。
「やった……の?」
 エリオが恐る恐る呟いた。ピタリと音が止み、一瞬の静寂が訪れる。しかし、それは本当に一瞬に過ぎなかった。
 途端に地竜の影が躍り出す。何度も何度も何度も脚を踏み鳴らすのは、眼前の敵を威圧する為か、若しくは飛べない小さな蟻を踏み潰す為か。
 咄嗟に踏み付けを回避するエリオ。しかし気付いた時、エリオは既に地竜の身体の真下に追い込まれていた。


 地竜の狙いは完全にエリオに移っている。或いは最初からそうだったのかもしれない。地竜にとってエリオは主の仇であり、今また自分を殺そうとする憎悪の対象だ。
 これまで傷つけられ、憎しみをぶつけるばかりだった自分が、今は傷つけ、憎しみをぶつけられる立場になっている。叩きつけられる脚の間を必死に逃げ回りながら、エリオの胸には悲しみと苛立ちが込み上げてきた。
 エリオを助けようと動くアルカイザー達を、地竜は炎で牽制する。
 言葉が無くとも伝わる。「邪魔はさせない」と言わんばかりの執念だ。
 あくまでも執拗にエリオを狙う様を見ては、フェイトやシグナムもそれを否定することはできなかった。


「まさか……浅かったの!?」
 フェイトは愕然としていた。雑念を振り切って振るった"つもりだった"剣は、確かに地竜の首を切り裂いたにも関わらず、今、地竜はエリオを狙っている。
 手応えが僅かに軽かった気はしたが、地竜は直後のエリオのサンダーレイジと合わさって動きを止めた。まさか、それすらも油断を誘う為の演技に過ぎなかった、とでも云うのだろうか?
 どちらにせよ、自分の詰めの甘さがエリオを窮地に追い込んでしまった。下らない嫉妬がこれまでの全てを無駄にしようとしていることには違いない。
 それが剣筋を鈍らせ、清流の集中も、濁流の勢いも足りない半端な剣となってしまった。
――アルカイザーが現れた時、私はエリオの身を案じる"保護者"としてよりも、攫われた子供を救う為、"隊長"としての責務を優先した。戦えるというエリオの言を信じ、戦えると判断した。
 その結果がこれだ。空を飛べないエリオが窮地に陥るだろうことは予測できたはずだったのに。
 地竜は砲台と口の両方を対空に使い、両足は決してエリオを狙って振り下ろされる。どちらか一方ならなんとかなったのだが、天井に届くほどの勢いで鉄球を何発も撃ち込み、隙間を火炎放射で埋めてくる。
 外れた鉄球が天井を砕き、破片が降り注ぐ。
 地竜の暴れ様は、ここで生き埋めになることを覚悟しているのかと思えるほどだ。このままでは遠からず建物自体が持たないだろう。
――そして、今また我が身を省みずエリオを助けようとしている。"隊長"として、その判断もおかしくはない……。でも、そこに"隊長"としての私は……。
 一か八か、ダメージ覚悟で飛び出すべきか迷うフェイト。
 しかし、炎の隙間から垣間見えたもの――それはまさしく、地竜の足がエリオ目掛けて振り下ろされる瞬間。
 この時、"隊長"としてのフェイト・T・ハラオウンは完全に彼女の中から消えていた。


156 :その名はアルカイザー:2008/04/06(日) 22:06:21 ID:cjknD0b4
 

 アルカイザーはというと、地竜に対して何度も攻撃を試みるものの、未だ決定打を与えられずにいた。急所があるとすれば首だろうが、それとて幹のように太い。

《スパークリングロール》

 10m以上を跳躍し、光を迸らせたフックが遠心力を加えて首にめり込む。確かな手応えはあり。だが――
「うわっ――!」
 地竜の目にギロリと睨めつけられる。さして苦しむ様子も無く、地竜は首を振ってアルカイザーを振り払った。
 効いていないはずはない。しかし、これは云わば性質の問題だ。フェイトを始めとする魔導師達の武器は全てが刃物である。
地竜が痛みに耐性ができている以上、打撃よりも斬撃の方が、まだ効果は大きいように思えた。
 地竜の吐く炎で闇は明々と照らされる。その炎もすぐに消えて、やがて闇が戻ってくる。結界の内はあくまでも無機質な研究所である。燃え移る物が無い以上、長くは続かない。
 その闇の中、仄かに淡い水色の光が浮かび上がった。それは光線剣、レイブレード。叩けないなら斬ればいい――我ながら単純だ、とアルカイザーは独り呆れた。
「オオオオオオ――!」
 再びの跳躍。振るったレイブレードが、刃渡りの分だけ地竜に傷を刻む。
 しかし――それだけだった。踏み込みもできず、腕の力だけで振るった剣は、地竜を崩すにはとても足りない。
 そしてアルカイザーは落ちていく。どれだけ高く跳べようが、それは飛行ではない。昇れば落ちる――飛行できる三人と違い、これは明らかに枷になった。
 落下する最中、地竜の瞳が向けられた。巨大な爬虫類の瞳からは何の感情も読み取れない。ただ、その運動が攻撃の瞬間を教える。
「ちぃっ!」

〔カイザーウィング〕

 アルカイザーは握ったレイブレードを投げた。ブーメランのような軌道で、回転しながら飛ぶブレードは地竜の額に刺さった。
 着地し、攻撃に備えて見上げる。火炎も鉄球もやってこない。咄嗟の判断が、無防備な状態での攻撃を避けることができたらしい。
 その代わり、レイブレードが戻ってくることもなかった。ブレードは絡め取られ、地竜の額に突き刺さったままだ。
 地竜の動きが数秒止まったものの、再度動き出した時――より悪化した状況に、アルカイザーは頭を振るしかなかった。


 柱のように太い四足の間をエリオは走り回っている。鼓膜が破れそうな轟音の地響きを、もう何度聞いただろう。
 加えて、またしてもこの暗闇が足枷になった。避けることに精一杯で、自分がどこを向いているのか、どっちに進んでいるのかが解らなくなる。
 前脚と後脚の間に隙を見つけ、なんとか逃げ出そうとしても、地竜は巧みに脚を動かしてエリオを領域内から逃がさない。
「くっ……!」
 今日何度目だろうか――もう数える気にもならないが、エリオは死が隣に張り付いているのを感じていた。
 地竜に床が踏み付けられる度に、震動が下腹部に響く。加えて、またしても耳がいかれてきた。
 だが、心臓は早鐘を打っているのに、頭の中は驚くほどに澄んでいる。
――死にかけたのが多すぎて、恐怖に慣れちゃったのかな……?
などと考えられるくらいには。
 だが、余裕は無かった。少しでも足を止めれば、一瞬で踏み潰されてしまう。
 真下にいれば、急所かもしれない腹を突くこともできるのではないか――そうも思ったが、すぐに無理だと悟った。


157 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 22:08:09 ID:ltglzF96
支援

158 :その名はアルカイザー:2008/04/06(日) 22:09:42 ID:cjknD0b4
 一つは、エリオの魔力、体力ともに、もう限界に近いこと。カートリッジも尽きた今、見上げる腹までブーストするだけの力すら残っていないことは、
悔しいが痛感している。
 もう一つは、仮に全力で腹部を突けたとして、地竜が崩れればどうなるか。下敷きになる前に逃げることは不可能だと判断した。
 やるなら全力で、でなければやるべきではない。
 ならば、今最優先することは逃げること。それだけに専心し、悲鳴を上げる身体を奮い立て、襲い来る眠気と疲労に気付かない振りをする。
 役に立たない聴覚を切り捨てて、闇に目を凝らす。その間も、スタンプにされるギリギリの線を縫い、勘頼りで足を動かす。すると――
「見えた!」
 僅かに浮かせた右前脚。落とされると同時に駆け抜ければ、すぐには動かせないはず。ほんの数秒でも、自分には十分な時間だ。
 エリオが足の裏に入るように動くと、地竜は誘導されて足を動かす。ここまで、全ては予想通りだった。
 エリオと地竜は、互いに間合いに入るや否や、同時に行動を開始する。
 視線が届くはずもないのに、地竜の足はどうしてか正確に狙いを定め落とされた。瞬時に、これまで緩急を付けていたエリオが、ぐっと身を屈めて地を蹴った。
 まるで獣のように限界まで身体を丸めて、爪先でひたすら床を"掻く"。その動作が爆発的な加速を生み、後ろ髪を掠めて落ちた足から逃れ、エリオは活路へと飛び込んだ。
――やった!

 突如、視界が反転した。

 遅れてやってくる衝撃、全身に走る痛み。
 一体何が起こったのかエリオに解るはずもなく、ただただ目まぐるしく景色が切り替わる。
 反転した視界はそのまま縦に横に回転を続け、地面が間近に迫った時、
――ああ、そうか……。僕は……蹴られて……。
 ようやく、状況を理解したエリオの視界に映ったもの。
 それは、前に突き出された地竜の足――次に一面の闇――淡く人型に浮き彫られた金色の光――これから叩き付けられるであろう、硬そうな床――
そして、あらぬ方向に折れ曲がった歪な両足。
 それを最後に、エリオの意識は途切れた。


159 :その名はアルカイザー:2008/04/06(日) 22:12:26 ID:cjknD0b4
今日はこの辺にさせていただこうと思います。
光の腕はゲームを見てもピンとこなかったので、元ネタというか、まんま鉄拳チンミの捻糸棍です。
長々と失礼しました。皆様、支援ありがとうございました。

160 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 22:14:38 ID:3dqzWEAN
GJ!!
当たり前と言えば当たり前だけど、ヒーローの背負う覚悟って壮絶だよなぁ

161 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 22:18:09 ID:ltglzF96
GJ!
アルカイザー!

162 :高天 ◆7wkkytADNk :2008/04/06(日) 22:32:48 ID:fruOquVL
エリオー!!!GJ!!!
一時間後にラクロアを投下いたします。
よろしくお願いいたします。

163 :リリカル! 夢境学園 ◆CPytksUTvk :2008/04/06(日) 22:35:07 ID:lpNITynJ
アルカイザーかっこいい!
なんたる、なんたるヒーロー!
エリオも懸命に戦い、燃える展開ですね! これぞヒーロー! 続きが気になります!

そして、高天氏の次に投下予約してもよろしいでしょうか?
久々のアンリミテッド・エンドラインの続きを投下したいのですが。


164 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 22:37:41 ID:M6XRVMhw
GJやはりヒーローはこうでなくては。

165 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 23:27:27 ID:HG+m7T30
支援、支援ノシ

166 :高天 ◆7wkkytADNk :2008/04/06(日) 23:28:40 ID:fruOquVL
魔法少女リリカルなのは外伝・ラクロアの勇者

        第五話


ナイトガンダムがこの世界に来てから初めて剣を取った戦い。
金槌を修羅のように振舞わす少女『ヴィータ』を相手に、空が飛べないというハンデを負いつつも、
ナイトガンダムは互角の勝負を繰り広げた。何時までも続くと思われた騎士同士の決闘。だが、

          「スター・・・ライト・・・・・・・ブレイカァァァァァァ!!!!!!!!」

魔力を収集されてるにも関わらずに、なのはが放った捨て身のスターライトブレイカー、
桃色に輝く砲撃が、ナイトガンダム達を閉じ込めていた結界を破壊した瞬間、この場にいる全員の戦いは終わりを迎えた。

                        そして

・時空管理局本局

                       時空管理局

独自のシステムにより各次元世界の管理し、質量兵器や危険なロストロギアの規制や各世界の監視や管理。
時には、次元犯罪者や違法研究、ロストロギア密売行為などの摘発など、次元世界で起こる様々な事態に対応するために作られた組織。
各管理世界にはそれぞれ部署が存在し、発祥の地であるミッドチルダには地上本部が存在する。
そして、次元航行艦のドックも兼ねた本局は次元空間内に存在し、常に大小様々な航行艦が忙しなく出入りを繰り返していた。
『リンディ・ハラオウン』が艦長を務める巡航L級8番艦『アースラ』も、忙しなく出入りを繰り返す航行艦の内の一つとして、ドックに入港した。
数名の負傷者と、異世界の客人を乗せて。

「検査の結果、怪我は対した事ないそうです。ただ、魔道師の魔力の源『リンカーコア』が異様なほど小さくなっているそうです」
アースラでオペレーター業務や、執務官補佐などを行なっている『エイミィ・リミエッタ』は本局内に幾つも設置されたエレベータの内の一つに乗りながら、
倒れたなのはの容態を、心痛な面持ちで報告する。
彼女にとって、なのはとの付き合いはそれ程長くは無いが、それでも知らない仲ではない。
むしろ『それ程長くない付き合い』でも彼女にとっては、なのはは可愛い妹の様な存在であった。
そんな彼女が、突然の襲撃にあい『被害者』となってしまった事に、エイミィは襲撃者への怒りと、
対応が遅すぎた自分達への怒りを抑えるのに必死だった。だからだろうか、
リンディやクロノですら、彼女から発する何時もの明るさを少しも感じ取る事は出来なかった。
「・・・・・・そう。じゃあやっぱり、一連の事件と同じ流れね」
エイミィの報告から数秒の沈黙の後、同じエレベーターに乗っているリンディ・ハラオウンは確認するように呟く。

167 :高天 ◆7wkkytADNk :2008/04/06(日) 23:29:22 ID:fruOquVL
彼女も、なのはが『被害者』になった事に戸惑いと驚きを隠せないでいた。無論、なのはの様な子供が被害にあう事件は、
様々な管理世界、それこそ地球でも珍しくはない。リンディもまた、それなりに長い管理局での仕事でその様な子供を、時には変わり果てた姿を
見たこともある。だが、それらはすべて自分とは縁もゆかりもない子供達。だからこそ、あの時は『仕事』と割り切りることで冷静でいられた。
だが、自分はまだまだだった。その事をリンディ・ハラオウンはモニター越しになのはがフェイト達によって抱きかかえられている姿を見た瞬間、
嫌というほど思い知らされた。
今回被害を受けたのは自分が知っている子。それだけで自分が磨き上げてきた冷静さや慎重さに揺らぎが出てしまった。
それでも尚、それを顔に出す事無くリンディは現場で慌てるスタッフ達を一喝、テキパキと指示を出し、なのはの収容や周囲の建物の復元などを行なわせた。
余計な時間を消費せずにスムーズにこれらの事が出来たのは、『提督』としてのリンディの実力と『子を持つ親』としてのリンディの思い、
そして、優秀なアースラのスタッフ、これらの要素の賜物である。

「やはり・・・・休暇は延期ですかね?流れ的に家の担当になっちゃいそうですし」
一通りの報告が終ったエイミィは、今度は自分が思っている事を口にする。
本来なら、階級的にこのような無駄話は御法度なのだが、リンディはこのような会話も気軽に付き合ってくれる。
だからこそエイミィは尋ねる。少しでも気分を紛らわすために。
「仕方ないわ。そういうお仕事だもの」
そんなエイミィの気持ちを感じ取ったのか、リンディはわざとらしく困った顔をしながらエイミィの方を向きながら答える。
その表情を見たエイミィは内心でリンディに感謝の言葉を呟きながらも、次の話に入る。
「あとは・・・・ガンダム君についてですね」

フェイト達と一緒にヴォルケンリッターと戦ったガンダムは、その風貌は勿論、地球の出身ではない事が直に分かったため、
事情や出身世界の特定のため、一緒に本局に来てもらう事となった。
本来なら、許可無く管理外の世界に訪れた事や、フェイト達より早く現場に居合わせた重用参考人として、
入り口にゴツい監視のついたアースラの室内に閉じ込めておくべきなのだが、
なのはやフェイトを助けた事や、ナイトガンダム自身も偶然により地球に来た事、そして自分達の指示に素直に従った事を考慮し、
今は執務官でもある自分の息子、『クロノ・ハラオウン』を『監視』に付け、なのは達の見舞いに同行させていた。
最も『監視』と言っても、後に提出する報告書対策のためであり、今回に限っては正直な所、『名ばかり』である。

「ええ。彼がいなかったらフェイトさん達も危なかったし、事件の首謀者すら特定できなかったわ。
それに彼、話しからして次元漂流者だから、直にでも彼の世界を探し出して、送ってあげたいんだけど」
「『スダ・ドアカワールド』でしたっけ?そんな名前の世界所か、ガンダム君の様な種族すら今まで見た事がありません。
これはかなり時間が掛かりますね」

168 :高天 ◆7wkkytADNk :2008/04/06(日) 23:29:48 ID:fruOquVL
ガンダムから聞いたMS族。このような種族はエイミィ達も初めて見るどころか、管理局本局のデータベースにすら存在しなかった。
正に『新種発見』と言っても過言ではないし、個人的に発表などをすれば、それこそ色んな章が貰えるだろう。
『スダ・ドアカワールド』に関しても、今までMS族という種族が発見されなかった以上、当然データベースには無かった。
正に未知の世界を探す行為。彼の世界を探す事の困難さを、エイミィは嫌という程思い知らされた。

「幸い、襲撃者・・・闇の書のプログラム達を見張るために仕掛けたセンサーに、多次元からきたと思われる光りが感知されていました。
そこから辿れば・・・・どうにか・・・・。ですけど、彼らを見張るために仕掛けたセンサーが結局は役に立たなくて、別の意味で役に立ちましたね・・・・はは」
「結果が出たという事で納得しましょ。でもごめんね、エイミィ。応援を何人かつけるからお願いね」
「分かりました。ですけど、ガンダム君って見た目からインパクトありますからね。よくなのはちゃんの世界で騒ぎになりませんでしたね」
「何でも保護をしてくれた家が、特許を幾つも持ってる有名な機械工学の人の所だったらしいわ。それで周囲には『お手伝いロボット』
として知れ渡ってるみたい。」
「なるほど、確かにガンダム君って見た目はロボットって事で通りますからね」
目的の階に着いたため、二人はエレベーターから降りる。
暫らく廊下を歩いた後、左右に分かれている所で二人は止まった。
「それじゃエイミィ、私はガンダム君の所に行って来るわ。詳しい話を聞きたいから」
「はい、分かりました。私はなのはちゃんの所に行ってきます。レイジングハートとバルディッシュの部品を発注した事を伝えておきたいですし」

・本局内一室

「ですけどよかった。なのはが軽い怪我ですんで」
「君のおかげさ、本当に感謝している」
ここに来て直に身体検査となのはのお見舞い、自分についての軽い説明など行なったナイトガンダムは、
今は本局の一室に案内され、備え付けられたソファに座りながらクロノと一緒にリンディの到着を待っていた。
「あと、なのはやフェイトと同じで、僕に対しても敬語は要らないよ。僕もその方が気が楽だ」
「わかったよ、クロノ。だが、次元世界・・・・・正直頭が追いつかないな・・・」
腕を組み、目を閉じ考え込むナイトガンダムの姿に、クロノは無意識に微笑む。
「僕としては、冷静に事態を飲み込む君の胆の大きさに関心するばかりさ。
あと詳しい説明は艦長がしてくれる。そろそろ来る筈なんだが・・・・」
一度時計を確認したクロノは扉の方に顔を向ける。すると、来客を告げるブザーと共に、右手に資料を持ったリンディが入ってきた。

169 :高天 ◆7wkkytADNk :2008/04/06(日) 23:30:31 ID:fruOquVL
リンディが入室したのと入れ替わりに、クロノは別件があるため退室。
今はリンディとナイトガンダムが、互いに座りながら詳しい説明を行なっていた。
「つまりガンダム君は『サタンガンダム』という相手によって、この世界に飛ばされたのね」
「はい。正直自ら生んだ油断の結果・・・・・お恥ずかしい限りです」
俯きながら話すナイトガンダムは、改めて自分の油断を恥じた。
あの時、サタンガンダムを倒した安心感にひたらなければ、このような事にならずに済んだ。
だが、自分は運が良い。忍殿達のように、異邦人である自分を保護してくれたり、疑いもせずに話を聞いてくれる人達に会えたのだから。
もし、奴が言ったような世界に飛ばされていたら、自分はおそらく生きてはいなかっただろう。
「そんなに落ち込まないの。貴方は自分の世界を救うために戦った。立派な事だわ」
「いえ、奴の行いを許せなかっただけです。それに仲間の皆がいたからこそ掴めた勝利。決して自分だけでは勝つことは出来なかったでしょう」
自分を真っ直ぐに見つめながら話すナイトガンダムに、リンディは笑みを漏らすと同時に彼の純粋さに好感を持った。
彼女も伊達に提督をやっているわけではない。相手が人間では無くとも瞳を見れば彼の言葉が嘘偽りでないことは直に理解でした。
「(・・・純粋な子ね・・・・フェイトさんやなのはさんの様な・・・・・)とにかく、事情は分かったわ。本当なら本局の方で
貴方を保護すのが規則なんだけれど、地球で貴方のことが知れ渡っている以上、無理強いはしないつもりよ。
それと、貴方の世界『スダ・ドアカワールド』に関しても、こちらで捜索をするわ。だから安心して任せて頂戴」
「・・・・・ありがとうございます。リンディ殿・・・・・・・何から何まで・・・・何処の物かも分からぬ私に・・・・・ここまでの事をして頂き」
己の感謝を表すため、ナイトガンダムはソファから降り、リンディの前で跪き頭を垂れた。
「いいのよ、そんなに畏まらなくても・・・・・・・それと、これはね、個人的なお願いなんだけれど・・・・・」
今度はリンディが俯き、言葉を詰まらせる。だが、数秒の間のあと、覚悟を決めたようにナイトガンダムを見据える。
「貴方の力を・・・・・・貸してもらえないかしら」
「・・・・あの騎士達の事ですね」
リンディの言葉の意味を、ナイトガンダムは直に理解した。おそらく、今日戦った騎士達の相手に自分の力を貸して欲しいということなのだろう。
正直、その申し出を受け入れる気はあった。だが、
「私も、恩義に報いるため、貴方達の力になりたい。ですが私は空を飛べない。今回の戦闘では上手く立ち回る事ができましたが
次はそうもいかないでしょう。足手まといにしかならない」
拳を握り締め、悔しそうに呟くナイトガンダムに、リンディはそっと近づき、彼の肩に手を乗せた。
「それなら大丈夫。貴方にもリンカーコアがあるから、魔法が使える筈。飛行は勿論、訓練をすれば攻撃魔法だって使える筈よ。
安心して、家には優秀な先生がいるから、だから改めてお願いするわ。貴方の力を、貸してもらえないかしら」

170 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 23:31:45 ID:ueperX5k
ラクロアの騎士支援

171 :リリカル! 夢境学園 ◆CPytksUTvk :2008/04/06(日) 23:32:28 ID:lpNITynJ
支援!

172 :高天 ◆7wkkytADNk :2008/04/06(日) 23:32:35 ID:fruOquVL
・本局休憩場

リンディからの通信により、本局休憩場に集まったアースラスタッフ。
そこにはなのはやフェイト、アルフやユーノの姿もあり、全員がリンディの到着を待っていた。
そして、足音と共にこちらに向かってくるリンディ。その隣にはナイトガンダム。
なのは達の前に立ったリンディは凛とした声でこれからの事を話し出す。
「私達アースラスタッフは、今回ロストロギア『闇の書』の捜索、お呼び魔道師襲撃事件の操作を担当する事になりました。
ただ、肝心のアースラが暫らく使えない都合上、事件発生地の近隣に臨時作戦本部を置く事になります」
この場にいる全員が予想をしていたのか、誰も驚く表情を見せずに、リンディの言葉に耳を傾ける。
「分割は、観測スタッフのアレックスとランディ」
「「はい!!」」
「ギャレットをリーダーとした捜査スタッフ一同」
「「「「「「はい!!」」」」」」
「司令部は、私とクロノ執務官。エイミィ執務官補佐、フェイトさん。以上3組に分かれて駐屯します」
大まかな内用を言い終えたリンディは一息ついた後、目線をガンダムの方に向ける。
「それと、今回の襲撃事件で、我々を助けてくれたガンダムさんを、協力者として迎え入れます」
紹介されたナイトガンダムは、一歩前に出た後、皆に向かって、跪き、頭を垂れた
「皆様、ただ今紹介に預かりましたラクロアの騎士・ガンダムです。何分、未熟者ではありますが、全力を持って、皆様の力になる事を誓います」
見た目からは想像もできない紳士的な口調に、ナイトガンダムと初めて話したアレックス達は言葉を詰まられる。だが、
「うん。よろしくね、ガンダム君!!ほら、みんなもぼおっとしてないで拍手拍手!!」
エイミィは何時もと変わらない明るい声でスタッフ達を諭す。彼女の声でわれに帰ったスタッフは、ナイトガンダムを歓迎するかのように
笑顔で拍手を送った。

・海鳴市

一通りの説明や検査を終えたなのはとナイトガンダムは、アースラの転送装置により、海鳴市へと帰ってきた。
本来なら、明日に備えて二人とも直に家に帰るべきなのだが、結界が解かれた今、堂々と玄関から入る事などできなかった。
言い訳などを考える余裕も無かった二人は、リンディたちとクロノに一時的に結界を張っても良いように頼み込んだ。
二人のあまりにも必死な瞳に、リンディは苦笑いしながらも了承。今二人は結界が張られた海鳴市の中を歩いていた。
ちなみに転送ではなく徒歩での帰宅を選んだのは、『ガンダムさんと話しがしたい』というなのはの要望からであり、
守護騎士達も管理局が介入していると知った以上、同じ所でナイトガンダムを襲う事はないだろうと考えたクロノは
なのはの軽いリハビリもかねて許可を出した。

173 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 23:32:38 ID:cjknD0b4
支援

174 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 23:32:48 ID:y3aIwUR8
スケルトンドーガ支援

175 :高天 ◆7wkkytADNk :2008/04/06(日) 23:33:00 ID:fruOquVL
「だけど、ガンダムさんが協力してくれるのは正直心強いな」
隣で歩くナイトガンダムを見据えながら、なのはは心から思った事を正直に呟く。
「そんな事はないよ。私の場合、先ずは空を飛べなければ」
「直に出来るよ。クロノ君も『回復魔法が使える以上、それ程時間を掛ける事無く飛ぶ事が出来る』って太鼓判を押してくれたし」
「そうだと良いのだけれど・・・・・」
クロノの言葉を信用しないわけではないが、自分が近いうちに空を飛べるかもしれないという事に、ナイトガンダムは未だに半信半疑だった。
腕を組みながら考えるナイトガンダムと、その光景を微笑ましく見つめるなのは。
真夜中の結果内においてはなんとも言えない光景である。
「あっ、私こっちだから・・・そういえば、ガンダムさんって何処でお世話になっているの?」
ふと、ナイトガンダムの帰る場所に疑問に思ったなのは『1割疑問・9割好奇心』というアンバランスは気持ちで尋ねる。
そんななのはの気持ちを察したのか、ナイトガンダムはわざとらしく考える素振を見せた後、
「私がお世話になっている所ですか・・・・・それは今はいえません。ですけど、すぐに分かる筈です
それまでのお楽しみという事で」
謎めいた言葉を残したナイトガンダムは、数回手を振った後、その場を後にした。

       その後、ナイトガンダムの言葉通り、なのはは知る事となる。十数時間後に

・月村家

月村家についたナイトガンダムは、リンディから貰った通信機械で結界を解除してもらうように頼む。
数分後、結界が解除された事を確認したナイトガンダムはそぉっと自室に向かおうとするが
「あれぇ〜・・・・・がんだむ・・・・・どうしたの〜」
パジャマ姿で眠そうに瞳をこすりながらとても腑抜けた声で、夢遊病患者のような足取りで廊下を歩く忍と出くわした。
「あっ・・・えっ・・・し・・忍殿は・・・・・どうしたんですか?こんな夜遅くに・・・」
傍目から見ても慌てまくっているナイトガンダムはどうにかごまかそうと忍に質問を返す。
だが、寝ぼけているのか、そんな彼の姿にも忍は特に気にせずに
「う〜ん・・・・喉かわいちゃって〜・・・・だけど、どうしたの〜・・・・・フル装備だけど・・・・」
律義に答えた忍はナイトガンダムが武器を持っている理由を含め、再び質問をする。
「あ・・・あああ・・・・これはですね・・私も騎士ですから・・・武器がある以上鍛錬を行なうのは必死。
今夜はどうにも眠れなかったので、今から行なおうと思ったのですが、さすがに深夜では皆さんの睡眠の妨げになるとと思い
やめることにしました。外には出たのですが・・・・」
あたふたしながらも、ナイトガンダムは必死に嘘を付く。表情からしてモロバレだが、寝ぼけている忍には効果があったらしく
「ふ〜ん・・・・・だめよ〜、夜更かしは〜・・・・・」
疑いもせずに信じた。

176 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 23:33:48 ID:lpNITynJ
コテ着けてしまた orz

支援!

177 :高天 ◆7wkkytADNk :2008/04/06(日) 23:34:49 ID:fruOquVL
「は・・・・はい。今から自室に戻り、眠ろうと思います。それでは失礼します」
信じてくれた事に内心でホッとしながらも、一度頭を下げた後ナイトガンダムはそそくさと自室に戻ろうとする。だが
「ちょっと待って」
突然、忍は彼を呼び止めた。その声は先程までの眠そうな声と違い、
はっきりとした透き通る声だったため、ナイトガンダムは内心で『ばれた』と思い覚悟を決める。だが、
「ねぇ、さっき外に出たって言ったわよね・・・・門の方とか見た?」
「・・・・・門ですか?はい、庭の中からですが。見た目からは閉まっていましたが、確認してきましょうか?」
「・・・ううん。いい。」
忍の質問の意味を理解する事は出来なかったが、ナイトガンダムは正直に話す。
答えを聞いた忍は、数秒考えた後、「考えすぎがな・・・・」と小さく呟く。
「ごめんね。なんでもないの。それじゃ、おやすみ」
先程の真剣な顔が嘘のような笑顔で、ナイトガンダムに就寝の挨拶をした忍は、彼の横を通り過ぎ、キッチンの方へと向かった。
「・・・・どうしたんだろうか・・・・・」
普段から明るい笑顔を振りまく忍からは想像もできない真剣な顔に、ナイトガンダムは忍を呼び止め尋ねようかと考えが、
今回の事件の事もあるため、今必要に色々聞くと墓穴を掘るかもしれないと思ったナイトガンダムは、
素直に部屋に戻る事にした。


        もし、ナイトガンダムが月村家に入る時に、門の周囲の壁に目をやっていれば、忍の表情の意味にも気付いたかもしれない。


               月村家を囲う壁には、びっしりと罵倒や卑猥な言葉の落書きが書かれていたのだから。


                    そして近いうちに、ナイトガンダムは再び剣を取る。

                      
                           月村家を戦場として



こんばんわです。投下終了です。
読んでくださった皆様、支援してくださった皆様、感想を下さった皆様、ありがとうございました。
職人の皆様GJです。
次回は本編でしたらなのは達の新型デバイス披露なのですが、
ここでは月村家にあの連中が攻め入るため、ナイトガンダムはそっちに行きます。
次回は何時になるのやら・・・・・orz

178 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 23:35:51 ID:1cqTgoaP
支援

179 :◆nTZWuJL8Pc :2008/04/06(日) 23:36:30 ID:0UrbJzPg
支援!

180 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 23:36:33 ID:3dqzWEAN
乙&GJ!
あの連中……ちょっと見当がつかないけど原作の原作がらみの話なのかな? と期待

181 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 23:40:47 ID:KbSyCLs8
乙です

>・・・純粋な子ね
ガンダムを子供扱いなのはちょいと違和感がありました

182 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 23:43:55 ID:1cqTgoaP
GJ
あの連中…誰だろう?
とらハがらみかな?



183 :リリカル! 夢境学園 ◆CPytksUTvk :2008/04/06(日) 23:48:54 ID:lpNITynJ
なんか寝ぼけた忍が可愛いw
GJでした!

それでは、自分は一時頃に投下してもよろしいでしょうか?

184 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 23:54:22 ID:y3aIwUR8
GJ!
SDと落書きで嵐を呼ぶ学園祭思い出した

185 :名無しさん@お腹いっぱい。::2008/04/07(月) 00:26:59 ID:00ptECb8
GJです
 次回はまさに飼い犬にかまれた馬鹿の登場ですか。

186 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 00:39:52 ID:ATczer/h
ヒーロータイムすげーー!!
ナイトガンダムはヒーロー! 反論は許さん!
・・・やばくない? もしかしたらとらはとかジークジオンとか来るのかも?
同時にこられたらと思うと想像できない。 ビグザムは子供頃の僕にはトラウマ的存在でした。


187 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 00:44:04 ID:kflMIimx
>>186
アレックスのエグ過ぎる最期おもいだしちまったじゃねーかorz

188 :リリカル! 夢境学園 ◆CPytksUTvk :2008/04/07(月) 01:02:26 ID:bLq3VoH8
ええと、時間なのですがそろそろ投下開始してもよろしいでしょうか?

よければ五分後に投下開始します。

189 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 01:09:35 ID:47gf3cif
支援

190 :アンリミテッド・エンドライン(12/1) ◆CPytksUTvk :2008/04/07(月) 01:11:24 ID:bLq3VoH8
それでは投下開始します。

 
 人は痛みなど知りたくはない。
 人は何かを知りたくなんかない。
 ただ護られて、安らぎに包まれて、ただ生きていければ幸せなのだと、僕は知っている。
 僕はそう認識している。
 だから。
 だから、その幸せを護るために、僕は――


                           ――ある少年の座っていた砂浜に書かれた一文より



【Anrimited・EndLine/SIDE 2−4】




 その時、少女――キャロは怯えていた。
 キャロは恐怖を感じていた。
 これからの時間がとても怖いから。
 キャロは震えていた。
 これから行うであろうことに恐怖しているだけではない、キャロが座っている場所自体が揺れている。
 彼女が今居るのは地上ではない、空の上。
 時速数百キロで移動する輸送ヘリの中。
 何故彼女がそこにいるのか。
 それは――戦うため。
 自らの意思で決めたはずなのに、彼女は来たる闘争の時間に怯えていた。

(駄目)

 自分で情けないと思う。
 自分で決めておきながら未だに迷う自分が情けないと痛感する。
 落ち着けと念じながらも、体の震えは止まらない。

(おちついて、おちついて――)

「大丈夫?」

 震えるキャロの手に重なる手があった。

「え?」

 思わず見上げた先には、いつものように笑みを浮かべたエリオの顔があった。
 


191 :アンリミテッド・エンドライン(12/2) ◆CPytksUTvk :2008/04/07(月) 01:13:03 ID:bLq3VoH8
 
「エリオ……くん」

「緊張してるの?」

 穏やかに、けれども平然としたエリオが優しく告げる。
 その顔には、その態度には同じような緊張や震えの影は見えない。

「エリオ君は大丈夫なの?」

「うん。僕は大丈夫だよ」

 そう言いながら、エリオはゆっくりと重ねていたキャロの手を掴み。
 まるで子供をあやす様な口調で、エリオは彼女に告げる。

「キャロも大丈夫。だって、“僕を護るから、君を傷つけさせないから”」

 それはまるで子供のような宣言。
 されど、そう告げるエリオは至って平然で、興奮も高ぶりも恐怖も大げさな態度でもなく、告げた。
 まるで当然のように、彼の中で決まっている物事を告げるように。
 まるで決まった内容を告げる機械のように。

 彼は告げる。

「それが僕の役割だから」

 笑み。
 優しい笑み。
 平然と、緊張も無い笑顔。
 そして、それを見たキャロは――どこかで震えていた。

(エ、リオくん?)

 戦場に対する怯えでも、力に対する忌避でもなく、何かが――どこか恐ろしい嫌な予感に体を震わせた。
 そして。
 そして、彼女は同時に思い出す。
 たった数時間前の、この場に飛び立つ前の、訓練を終えたばかりに自分の尊敬する保護者でもあるフェイトとの再会。
 そこで言われた言葉を。


「キャロ。お願い、もし戦うことになったら――“エリオを護ってあげて”」


 偽りの、けれども大切な家族との再会時に抱きしめられ、キャロの耳元で告げられた言葉。
 その時は、なんの意味なのか判らなかった。
 自分よりも強く、同じ年頃なのにしっかりしているエリオに護られるならともかく、キャロが護る。その意味は判らなかった。
 けれど。
 けれど、その意味を彼女は――キャロは数十分後に思い知る。

 フェイトの言葉の意味を、目の前で笑う少年の一面を。
 知ることとなる。


【Anrimited・EndLine/SIDE 2−4】



192 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 01:14:20 ID:P7jsdYY3
支援じゃい!!!

193 :アンリミテッド・エンドライン(12/3) ◆CPytksUTvk :2008/04/07(月) 01:14:51 ID:bLq3VoH8
 

 突如鳴り響いた緊急招集のアラート。
 それに伴い、整備課のモニターに素早く繋げられたグリフィスとはやての通信から状況の説明が開始される。

「正直にいうと、ちょっと初めての任務の割には荷が重過ぎる任務やね」

 話は簡単だ。
 ミッドチルダの各都市の間の物資を運ぶ運搬手段の一つである山岳リニアレールから緊急連絡が入った。
 内容はリニアレールに正体不明の機動兵器が取り付き、それらの異常に気が付いたリニアレールの管理機構から
武装隊に連絡が入り、そこで送られた監視用に列車内部に設置されていたモニターからの映像と同時に裏づけを取った
輸送物資の中に管理局の緊急確保対象であるロストロギア――レリックが積まれていたことが判明している。
 それらから分かった情報は三つ。
 一つ目は列車に取り付いた機動兵器は通称ガジェットドローンと呼ばれる兵器であり、その数は列車外部及び内部、
そしてその周囲に飛ぶ数を含めて数十を超える膨大な数。
 二つ目は外部からの命令は受け付けず、内部から直接リニアレールのコントロールを取り返さない限りリニアレールが止まることは
 ないこと。
 三つ目は初出撃になるであろうルーキーには過酷な任務になるであろうという事実だった。

『情報は分かったやな? 始めての任務やからといって、目を瞑ってもこなせるような簡単な任務は与えられん。下手すれば死ぬ、
正直正規の武装隊に任せたほうがいいぐらいの任務やね』

 それらの事実を踏まえて、はやては告げる。

「レリックは逃がすことの出来ない重要な確保対象やけど、それ以上にリニアレールはミッドチルダの物資郵送に重要な代物であり、
万が一路線が使用不可能になるようなことがあったらどれぐらいの被害になるか分からん。決して失敗が許されない任務や」

 希望は持たず、楽観視もせず、ただただ真摯な光を浮かべて彼女は言う。

『高町教導官。それでも、彼女たちにこの任務は任せられるか?』

 冷たい、厳しく突きつけるようなはやての発言。
 されど、それを受けたなのはは笑う。

「それは私に聞くよりも――」

 ゆっくりとなのははモニターから目を外し、サイドテールの髪をなびかせながら振り返る。

「彼女たちに聞いたほうがいいと思うよ」

 そこには強い光を浮かべた四人の少年と少女達が居た。



194 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 01:17:07 ID:47gf3cif
支援

195 :アンリミテッド・エンドライン(12/4) ◆CPytksUTvk :2008/04/07(月) 01:17:13 ID:bLq3VoH8
 
「やれるかな?」

 なのはの問い。
 それに答えるのは四つの声。

「やれます!」

 そう答えるのは、蒼い髪を靡かせ、強い意志を篭めた瞳の少女。

「いけます」

 そう発言するのは、冷静を演じようとしながらもその瞳と唇に敵意にも似た戦意を浮かべる赤毛の少女。

「大丈夫です」

 ゆっくりと口を開いたのは、穏やかに笑みを浮かべ、変わらない瞳を掲げた燃えるような髪をした少年。

「いきます!」

 最後に告げたのは、両手を握り締め、僅かに震える体を押さえつけて前に進む決心をした桃色の頭髪の少女。

 始めての実戦。
 幾度にも訓練を積んでも体験することの出来ない初めての実戦。
 未体験の恐怖。
 本当に己の力が通用するのか、分からない。
 何が起こるのか、それすらも分からない。
 それが実戦の恐怖。
 初めてのことに対する恐れであり、恐怖。
 けれども、彼女達はそれを受け止めながらも、前に進むことを決意していた。

「ふぅ……」

 そんな彼女達の言葉になのはは苦笑にも似た笑みを浮かべて――モニターのはやてに振り返る。

「彼女達は向かう覚悟があるよ。そして、教導官としての意見だけど彼女達にはちゃんと立ち向かえるだけの力はある」

 笑いながら、なのはは胸に手を当てる。

「八神部隊長、万が一の場合の責任は私が取るから――出撃させてあげて」

 その発言に四人がザワリと騒いで、はやては目を細めてなのはに目を向けた。
 けれども、なのはは目を逸らさない。
 軽々しい発言ではなく、ただ信じているからの発言なのだから逸らす必要もなかった。



196 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 01:20:06 ID:vJ4UoyNQ
支援

197 :アンリミテッド・エンドライン(12/5) ◆CPytksUTvk :2008/04/07(月) 01:21:05 ID:bLq3VoH8
 
「なるほど。了解や」

 ニヤリと悪そうな笑みを浮かべて、はやてが告げる。

「高町教導官! お呼びスターズ、ライトニング分隊フォワード陣に告げる!!」

 バシンと己の心を奮い立たせるように、はやては机を叩いて叫んだ。

「機動六課フォワード部隊――出撃!」

『了解!!!』

 カツリと足音を立てて、全員が一斉に返礼を返した。




 始めてのデバイス。
 始めての任務。
 幾つもの不確定な要素を抱え込んで、出撃する面々を出迎えたのはゆっくりとプロペラを回転させているヘリの前に佇む一人の男だった。

「来たな、新人共」

 それはフライトジャケットを纏い、僅かに鋭い目つきを浮かべながらも、人懐っこい笑みを浮かべた男だった。

「貴方は?」

 見かけた記憶のない男に、ティアナが少しだけ足を止めた訊ねる。

「ヴァイス。ヴァイス・グランセニック、ヘリパイロットをやってる。これから先お前達を輸送することになるから、よろしくな」

 そう告げて、ヴァイスを名乗った男は軽く手を振って笑った。

(あれ?)

 その姿に何故か一瞬だけティアナは戸惑いを覚えた。
 微細な違和感というか、なんとなく見覚えがあるというか、不思議な感覚が胸を突いた。
 そして、それらの正体を探ろうと思いを馳せようとした瞬間――

「こらー! こんなところで話してないで、早く準備するですー!」

 ピョコンとヴァイスの背中から飛び出してきた小柄な影に、その思考は霧散した。

198 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 01:23:20 ID:CH+sFYWE
支援

199 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 01:25:35 ID:SukJinUN
>>177
「魔法少女リリカルなのは外伝・ラクロアの勇者」の支援!
八神家にドラゴンベビーを登場させるのはどうでしょう?
しかも「炎の剣」を装備して八神はやてを守る。

200 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 01:26:43 ID:SukJinUN
>>177
「魔法少女リリカルなのは外伝・ラクロアの勇者」の支援!
八神家にドラゴンベビーを登場させるのはどうでしょう?
しかも「炎の剣」を装備して八神はやてを守る。

201 :アンリミテッド・エンドライン(12/6) ◆CPytksUTvk :2008/04/07(月) 01:26:51 ID:bLq3VoH8
 
「あ、リイン曹長!」

 銀髪の髪に、可愛らしい顔をした小人サイズの少女。
 それはスバルとティアナのBランク試験の試験官も行ったリインフォースUだった。

「元気にしてましたかー? といいつつ、さっさと乗るですー! 早く、早く! 時間ないですから」

 むきゃーと言わんばかりに慌てた態度でリインが腕を振り、スバルは再会の喜びを味わう暇もなく慌ててヘリに乗り込み、
ティアナは一瞬だけヴァイスに目を向けて同じようにヘリに乗り込む。

「ほら、キャロ。手を貸してあげるから」

「あ、ありがとう」

 ひょいっと飛び乗るようにヘリの中に入ったエリオが、まだ小柄で中に上がり難いキャロに手を貸して引っ張り上げる。

「それじゃ、ヴァイス君。操縦頼むよ?」

「イエッサー、高町隊長」

 笑みを浮かべて最後に乗り込むなのはの笑みに答えるように、軽口を叩いてヴァイスもまた操縦席に入る。

「行くぜ、ストームレイダー」

『――OK。Friend』

 己の乗り込んだ最新鋭輸送ヘリ――JAF04式の制御キーでもある相棒にヴァイスは呼びかけると、手際よく端末を操作し、
システムを立ち上げていく。
 旋回していたプロペラの速度が上昇し、周囲に暴風のような風を撒き散らしていく。

「さぁて、行きますか!」

 そう叫ぶヴァイスの手に操縦桿が握られる。
 乗り込んだ四人の新人と一人の隊長と一人の融合騎。
 それらを内包した鋼鉄の塊が、風を孕んで、暴風を撒き散らしながら空へと飛び上がった。




202 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 01:28:47 ID:47gf3cif
支援

203 :アンリミテッド・エンドライン(12/7) ◆CPytksUTvk :2008/04/07(月) 01:29:14 ID:bLq3VoH8
 


『問題の貨物車両、速度70を維持! 以前進行中です!』

『重要貨物室への突破はまだされていないようですが、時間の問題です!』

『ガジェット反応!? 空から……!』

『航空型、現地観測体を捕捉!』

 ヘリで移動すること十数分。
 窓の外を見つめ、ロングアーチから伝わってくる報告を聞いていたなのはが不意に呟いた。

「そろそろ作戦領域だね」

 優しく告げる声音だったが、その内容はフォワード四人に緊張を走らせるには十分だった。

「皆は陸士だから、空は私が抑えるしかない。だから、皆には直接列車の確保に向かってもらう」

 そう告げて、なのはは立ち上がり、四人を見る。
 それに応じて四人もまたなのはを見上げた。

「新しいデバイスだし、始めての任務だろうから、緊張しないでとはいわないよ。けれど、ただ一つ言えることがある」

 ゆっくりと胸に手を当てて、なのはは告げた。
 どこまでも染みとおるような言葉を。

「自分を信じて。ここまでの訓練を耐え切って、今も成長し続けている自分も信じて上げてね。
そうすればきっと大丈夫だから」

 そこまで告げて、なのはは目線を逸らして鋭い声を上げた。

「ヴァイス君! 後部ハッチを開けて、空に出るよ!!」

「了解! 高町隊長!!」

 ヴァイスの返答と共に、輸送ヘリの後部ハッチが重々しく開かれる。
 業風が、まるで彼女達を引きずり出すかのように、遥か下の大地へと叩き付けんと吹き荒れる。

「レイジングハート!」

『SetUp』

 待機状態から起動状態へと切り替えたレイジングハートを手に取り、なのはが吹き荒れる風を弾き飛ばすかのように光を纏う。
 純白の戦装束。
 白い、どこまでも白いバリアジャケットを身に纏い、彼女は立つ。



204 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 01:30:33 ID:47gf3cif
支援

205 :アンリミテッド・エンドライン(12/8) ◆CPytksUTvk :2008/04/07(月) 01:31:22 ID:bLq3VoH8
 
「リイン。管制は任せるね」

「ハイです!」

「ティアナ、エリオ、スバルとキャロに気を配って」

「ハイ!」

「ハイ」

 名前を呼ばれた二人は威勢よく返事を返し、それにキャロは不安そうな顔を、スバルは複雑そうな表情を浮かべた。

「よろしい」

 そんな彼女達を見て、なのはは笑いながら――空へと飛び出した。
 まるで吸い込まれたかのように、後部ハッチから後ろ向きに飛び出す。

 僅かに息を飲むフォワード陣たちの表情を見ながら、彼女は空へと落ちる。
 落ちる。
 落ちる。
 そして、笑う。

(飛ぼう)

 魔力を放出する。
 高速で変わっていく景色の中でただ唯一変わらない空を見上げながら、彼女は光の翼を生やす。

(この空は、彼女達に牙を向くものたちは居させない!)

 赤き宝玉を携えたレイジングハートを輝かせ、彼女は大気を蹴りつけながら、空を飛ぶ。

「さあ、行こうか――フェイトちゃん!」

(了解、なのは!)

 念話での通信。
 そして、見なくても分かる、空を駆け抜けてやってくる親友の存在に喜びを感じながら、なのはは杖を振り上げた。
 空を汚す、無骨な金属の塊たちを滅ぼすために。

 空を駆ける奇跡の使い手たちが舞う。





206 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 01:32:50 ID:47gf3cif
支援

207 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 01:32:57 ID:JshTGu27
支援

208 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 01:33:40 ID:47gf3cif
支援

209 :アンリミテッド・エンドライン(12/9) ◆CPytksUTvk :2008/04/07(月) 01:35:34 ID:bLq3VoH8
 


「列車まであと五分を切った! そろそろ覚悟しろ、新人共!」

 駆け抜けるヘリ。
 その中でヴァイスの怒声が響き渡る。

「任務は二つです」

 そして、後部ハッチの開かれた中でリインが声を上げた。
 最後の確認とばかりに説明を告げる。

「一つはガジェットを全機逃走させずに破壊すること。もう一つはレリックを無事に確保すること!」

 リインはそう言って、手の平にディスプレイを浮かべる。

「全員、レリックの位置は覚えてるです?」

「貨物室七号車ですよね?」

「覚えてます!」

「よろしいです! それじゃ、これからの流れは?」

 リインが手を叩き、静かに先を促す。

「スターズ分隊が列車前方から、ライトニング分隊が後方から制圧していくんですよね?」

「そうです! 突破力に長けたスターズ分隊は私と一緒に列車コントロールの奪取を優先に! 製圧力に長けたライトニング分隊は
後方からガジェットを撃破すること! レリックの確保は辿り付いた分隊が確保するです! 質問事項はないですか!?」

「無いです!」

「ありません!」

「大丈夫です」

「いけます!」

 四人の威勢いい返答にリインは満足そうに頷いて。

「それじゃヴァイス陸曹! レッツラGOです!!」

「簡単に言ってくれます、ね、と!!」

 リインの声にヴァイスが返事を返した瞬間、グンとヘリの震動が強まる。
 高度を下げ、速度を上げながら、JF704式が凄まじい速度で列車に近づいていく。



210 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 01:37:54 ID:47gf3cif
支援、原作より改造されたGDの性能に期待w

211 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 01:39:25 ID:47gf3cif
支援

212 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 01:40:42 ID:ntJV/oRS
ピート・ビートがフォルテッシモから逃げながら支援

213 :アンリミテッド・エンドライン(12/10) ◆CPytksUTvk :2008/04/07(月) 01:41:29 ID:bLq3VoH8
 
「降下位置は確保してやる! 後は、自力で、なんとかしろ!」

 一定距離まで近づいた瞬間、列車外壁に取り付いていたガジェットたちが向けるレンズ。
 そこから発せられる光学兵器の雨を避けながら、ヴァイスが怒声を張り上げる。

「了解! キャロ、準備をして」

「え、はい!」

「ギャウ?」

『SetUp!』

 手を引っ張りながらエリオの体を、引っ張られながらキャロの体を光が纏う。
 今まで着ていた服ではなく、共通したデザインを思わせるバリアジャケットに。
 肉体強化を施し、むしろ抱えるようにエリオが後方ハッチに足を掛けると、

「ヴァイス陸曹! あと、もう少し左に――」

「りょう、かい!」

 グンとたたき上げるような動きと共にヘリの位置が動いた瞬間、エリオは床を蹴っていた。

「え、ぇえええ!」

 キャロを抱えて、エリオが飛んだ。
 言葉にすればそれだけだったのだろうが、あまりの思い切りの良さに中に残された三人が目を丸くし――

「次行くぞ! つうか、これ以上はやばい、やばい、ヤバイッ!! ノワァアア!!」

 数秒後、正気を取り戻した。悲鳴交じりのヴァイスの叫び声によって。

「スバル!」

「うん!」

「いくです!」

 スバルとティアナはバリアジャケットを、リインは騎士服を装着する。


214 :アンリミテッド・エンドライン(13/11) ◆CPytksUTvk :2008/04/07(月) 01:43:52 ID:bLq3VoH8
 
「わー! 新しいデザインだ!!」

 そのデザインに、スバルが両手を上げて喜びを表現しようとするが。

「喜ぶのは後! さっさと、行くわよ」

 ティアナはそれを一蹴し、後方ハッチに足を掛ける。
 その表情は厳しく、僅かに浮かぶ汗には余裕の無さが現われていた。

「うー、了解!」

 それに続くスバル。
 彼女もまた浮かれた表情から真剣な目つきに変わる。

「いくですよ!」

 リインが声を張り上げ、彼女らを先導するように飛び出す。
 それを追って二人も飛び出した。

 そして、それらを後押しするように。

「こんちくしょぉおおがぁああ!!」

 悲鳴混じりの罵声を上げるヴァイスの苦闘があったのは言うまでも無い。


215 :アンリミテッド・エンドライン(13/12) ◆CPytksUTvk :2008/04/07(月) 01:44:46 ID:bLq3VoH8
 
 相対距離、微小。
 肉体強化不要、されど抱えるキャロを保護するために身体操作は最優先に行うべし。
 準備、準備、操作、操縦、対応、成功。
 僅か数瞬の滑空の後、高速で動き続ける列車の屋根に降り立ったエリオが立てた足音はとても小さなものだった。

「え?」

 バチンとかドカンとかゴスンという激しい足音と衝撃を予測していたキャロが目を丸くして、同時に自分を抱えるエリオに戸惑いの声を上げる。

「え、エリオくん!」

「あ、ごめん」

 姿勢を低くしてから、エリオがキャロを離した。
 轟々と吹き付ける風圧は纏ったバリアジャケットが自動的に緩和するが、それでも震動する列車の衝撃と吹き付ける風は体を揺らし、不安定にさせる。
 それをキャロは肌で実感し、そしておもむろに立ち上がるエリオに声を上げた。

「あ、危ない!」

「え?」

 エリオはただ普通に立っていた。
 震動する列車の床も、吹き付ける風も関係ないように。

「え? あ、大丈夫だから」

 心配そうに目を丸くするキャロの意図が分かったのか、エリオは起動状態にしたストラーダを持ちながら、笑みを浮かべる。

「一応風圧用の簡易フィールドを組んで、起動しているから。動きには支障ないよ、多分ティアナさんとスバルさんも同じのを張ってるはずだし」

 そう告げるエリオは知らない。
 うっかりそれを忘れていたスバルが、列車に飛び乗った途端、風に流されて落ちかけているということを。


216 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 01:45:42 ID:47gf3cif
支援

217 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 01:46:33 ID:ntJV/oRS
NSUで支援を感知

218 :アンリミテッド・エンドライン(13/13) ◆CPytksUTvk :2008/04/07(月) 01:46:58 ID:bLq3VoH8
 
「あ、そう、なんだ」

 任務に対して頭が一杯だった彼女はそんなことすらも思いつかなかった。
 普通に考えればそれぐらいは常識なのに。
 頭が、頭が、緊張で蝕まれて、どうしょうも無かった彼女は視野が狭くなっていた。

「ギュルー?」

 その傍に降り立ったフリードが、首をかしげて声を上げる。
 元は風を受け、空を舞い、魔力を行使する生命体である竜。その幼竜とはいえ、呼吸をするように魔力結合を行い、
簡易フィールドを発生させることが出来るフリードもまた風の影響を受けずに空を飛んでいた。

「ごめんね、フリード」

「ギュル?」

「私、まだ足手まとい――」

「違うよ」

「え?」

 キャロの言葉を否定して、エリオは前を向く。
 列車の前を向きながら、彼は手に持つストラーダを構えて告げた。

「それが普通だから――“僕とは違って”」

 そう呟いた瞬間、エリオが動いた。
 ガタン、ガタンと揺れ動く列車の上を走り、同時にその床を突き破って現われる無数のガジェットたちに、
彼はどこまでも腕を捻らせ、足を動かし、笑いながら、笑いながら――叫ぶ。

「さあやろうか」

 魔力結合を否定するAMFを展開し、迫ってくるガジェット。
 その装甲に ――“残像が残るほどの速度で”刃を叩き込み、彼は叫ぶ。

「立ってキャロ」

 彼は刀身を伝い、魔力変換させた電撃を流し込みながら、彼は叫ぶ。

「僕に!」

 砕き、引き裂き、今までの訓練にはなかった激しい口調でエリオは叫ぶ。

「君を、護らせてくれ!!」

 まるでそれが喜びのように。
 まるでそれが行うべき使命のように。
 エリオは叫んだ。

 己の存在意義をまた一つ満たすために。


 ―― To Be Next Scene SIDE 2−5

219 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/04/07(月) 01:48:59 ID:bLq3VoH8
投下完了。
途中でコピー分量をミスり、1レス増えてしまいました orz
今回は列車襲撃編の前編、次回が中篇の予定です。
次回こそスーパー? エリオ君タイムの予定です。

この山場を越えればジワジワとブギーポップ部分が増えてくるので、お楽しみにw
こんな真夜中ですが、支援ありがとうございました!


220 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 01:50:05 ID:47gf3cif
GJ!!です。
エリオ・・・いい感じにぶっ壊れてるぜw
本編とは違うところが、自然にあったので面白かったです。
ナンバーズも何人か配置されてるのだろうか?それとも今回は情報収集に
勤めるのだろうか・・・次回も楽しみにしてます。

221 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 01:53:11 ID:mrvz/VIZ
GJ!
エリオ君が……エリオ君が怖い……
今まで表面的に狂ったキャラ達(黒い人やら両手義手の人やらアインストの人やら)に恐怖を覚えたことはありますが……
まさかこんなに「平静な様子」が恐ろしいとは思いませんでした。
キャロが救ってくれると信じたいです、ハイ。

222 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 02:08:40 ID:DdJ2I/Xq
GJです!
狂ったエリオとウサギ狩りにも全力なスカに期待w

223 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 02:30:16 ID:pL7Trimk
GJ!!
ああ、歪だ、歪すぎるぞエリオ!!
ある意味で英雄らしい要素を持っちゃいると思われるんだがw
原作と違いやる気に満ちている博士にすごく期待してしまう今日この頃w
次回も楽しみにしています。

224 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 10:02:19 ID:uxf31e0P
GJ!!
エリオの歪みっぷりが気になりますねー。

・・・一番気になるのはスカの動向ですが。

225 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 10:30:28 ID:jygrXi+K
いいぞもっとやれ、逆シンの金的な歪み方は嫌いじゃないw

226 :ゲッターロボ昴 ◆J7qCZtZxmc :2008/04/07(月) 12:04:34 ID:uxf31e0P
予約等無いようですので投下したいのですがOKでしょうかー?

227 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 12:19:37 ID:P7jsdYY3
カモンベイビー

228 :ゲッターロボ昴 ◆J7qCZtZxmc :2008/04/07(月) 12:22:09 ID:uxf31e0P
それじゃいきまーす。

魔法少女リリカルなのは 闇の王女 第四章中編

蠢く。闇の中、復讐鬼という名の獣がぎちぎちと歯を鳴らし続ける。
それは人に非ず。
その心は悪鬼羅刹の如く。その身は修羅。心の原風景―――狂い、ねじれた空間。吼え続ける憤怒の感情。やり場の無い悲しみ。
悪夢―――かつて眼前で繰り広げられた人体実験の数々。

断末魔の悲鳴。
被検体ナンバー86。
頚椎を無理やり機械と接続させられた人間の痙攣する足――垂れ流される汚物。漂う異臭。
科学者――ジェイル・スカリエッティの子供のような笑み。

『へえ。こうなるのか。ウーノ、データを引き続き取ってくれ――ああ、大丈夫。有効活用させて貰うよ』
『やめろぉ!もうやめてくれぇぇッ!!』
吐かれる血の泡。
舌が絡まっていき、ろれつの怪しくなっていく男。
『安心するといい。君のデータは向こうの彼女に――引き継がれるから』

こちらに向けられる犠牲者の眼。哀願、苦痛、怒り―――そして、
―――哀れみ。

やめて。私をそんな眼で見ないで―――犠牲者にすら哀れまれる境遇。
待つのは生き地獄のみだと解りきっているから―――ここで死ぬ己に安堵した、という表情。
数十分後、訪れるそのとき。
拒絶反応に身体を蝕まれながら死にゆく男。その骸は、顧みられることもなく、うち捨てられた。

被検体ナンバー97。
生体強化の実験―――今年二十歳になったばかりだという女性が、四肢を固定され、全身の筋肉を<強化>される。
術式、成功。
だが、筋肉の強化により異常な筋力を得たナンバー97は、筋力に骨格が追いつかず全身を粉砕骨折、死亡した。
ナンバー105の時には気をつけないとね――とこちらを見てスカリエッティが笑った。

被検体ナンバー104。
胸にロストロギアを移植される人間――あらかじめ実験動物のビデオを見せ付けられている――体内を駆け巡る<力>に耐え切れず破裂する哺乳類。
猿の異常行動と数分後の炸裂。塵一つ残さずに消滅した。
泣き喚く少年――管理局航空隊の出身だとなのはに話してくれた子だ。
勝気そうな目つきだった少年が、助けてくれ、と泣き叫ぶ。そこに反抗心は欠片も残っていない。
あるのは、死への恐怖のみ。
慈悲をたたえた瞳で、スカリエッティが言った。

『何も心配することは無いよ――上手く適合すれば君は力を得られるんだ――何を恐れるんだい?』
術式実行。切開。丸見えになる臓器――ドクン、ドクンと血の通うそれを、狂人は慣れた手つきで掻き分けていく。
埋め込み開始―――掴まれる宝玉。きらん、と輝き吸い込まれていく宝玉――ロストロギア。
リンカーコアと直結。修復開始―――完了。
あとは被検体が眼を覚ますのを待つばかり、と男は言う。

『彼がどうなるか、楽しみだねえ、高町なのは。君がこれから受ける術式を彼には行ったんだ。上手くいけば最強の二人の完成さ』
悪戯っぽく微笑むスカリエッティ。
なのはが喚いた。
『ふざけるなぁ、必ず、必ず殺してやるッ!お前だけはぁぁッッ!!』
ふふふ、という声。
『おお、怖い、怖い。是非、その言葉を叶えて欲しいものだね』
退室していく男。


229 :ゲッターロボ昴 ◆J7qCZtZxmc :2008/04/07(月) 12:23:50 ID:uxf31e0P
目覚めた少年――ぱっちりと眼を開き、一言。

『苦しい――――』
上体の拘束が緩み、少年の顔がなのはのほうを向いた。青黒い顔――眼から血涙がつう、と流れる。
爪の間、眼、鼻、口から血を吹き出し、ごぽごぽと血で溺れる。
そのしなやかな肢体が鬱血し、皮膚が裂けていく。どろり、と溢れる血。
『痛いよ―――』
青い魔力光――胸のロストロギアが輝き―――身体が、弾けた。眩い光。暴走する魔力の塊。
なのはは思わず眼を閉じた。
再び眼を明けると、そこには、

なにもなかった。
消失。抉れ、クレーターになっている床だけが、少年の存在の残滓を伝えていた。

眼球を抉り出し、鼓膜を突き破りたいと思うほどに、狂気に彩られた光景。
そうなれたらどんなにいいだろうか。
狂いに満ちた術式――崩壊し、磨耗していく理性、感情。麻痺していく優しさ。代わりにつのる憎悪。
それこそが―――あの頃の地獄だった。

 明かりを消した室内で、高町なのはは呻いていた。
きりきりと音を立てて狂っていく思考。嗚呼、何を望んでいたのだっけ。
何も――わからないのだ。
長い長い時をかけて、心を蝕んでいった狂気は虚ろな心を覆い、女の精神を暗黒へと失墜させようとしていた。
楔であり、支えである紫色の髪の少女、ルーテシアの存在さえも、亡き者にしようとするほどに、虚無は拡大していたのだ。
必死に意識を繋ぎとめる。
何もかもが反転しようとするのを、押さえつけ、歯を食い縛り、呻く。
不意に、なのはが顔を上げた。僅かな電子音。
電子メール。差出人、クロノ・ハラオウン。
端末を開き、内容を確認する。
掃討任務。
本局でのクーデター、持ち出されたアルカンシェル、追撃部隊からの連絡――<敵の狙いはクラナガン>――。
――<ベルカの再興>。馬鹿げた理想。それを目にしたなのはの手が、固く握り締められた。
(今更―――何を犠牲にしたいの?貴方達はッ!)
怒り。
大昔に滅んだ国の民が―――何故、今更事を起こすのだ。今を生きる数百万の命を犠牲にしてまで、亡霊が何を願うのだ。
いや。
(それは私も同じか―――)
3提督の走狗に成り果てると知りながら、己が復讐の為に多くの人間を犠牲にする。その在り方は、クーデターを起こしたベルカ騎士達とまるで同じだ。
だが。
眼前で行われる人殺しを容認できる程、自分は腐っていない。
この手を汚してでも―――皆を守ろう。

230 :ゲッターロボ昴 ◆J7qCZtZxmc :2008/04/07(月) 12:25:50 ID:uxf31e0P
悲壮な覚悟とともに、なのはは自室から出た。

『マスター?』
「ううん、レイジングハート―――ごめん、力を貸して―――」
『私はマスターと共に在り続けます。忘れないでください』
ふっ、と微笑む。
何時だって不屈だった頼もしい相棒に―――。

「そうだね―――それじゃあ――」
後ろを振り向き、そこにいるでろう<それ>に話しかける。

「ルーテシアを頼んだよ、ガリュー」
ぶん、と空間が歪み――不可視だった<それ>が現れ、腕を組んだ。光学迷彩を解除した、召喚蟲――ガリューが、二本足で歩き、ゆっくりとなのはに近づいた。
主であるルーテシア以外に迷彩を見破られたことに、驚いているらしい。

「気配でわかるよ。不可視っていうのも、万能じゃないってこと」
納得したように頷くガリュー。彼には人間と同等の知能があるのだ――こちらの話すことを理解できるほどに。

「心配――してくれてたんだよね。――ありがとう、もう大丈夫」
ガリューが、甲殻に覆われた手でなのはの手を握った。
一人で行くのか――という問い。

「うん―――これは、私の闘争だから」
そうか、とガリューが頷き手を離した。たとえこれが永久の別離であろうとも、主を守り通す、という強い意思。
それに安心して――なのはは笑った。

「ありがとう――でも安心して。あの子を泣かせるような真似だけは、絶対にしないから―――」
呟くと、なのはは転送ポートへ向かって歩き始めた。
修羅の後姿を見送ったガリューは、一人溜息をついた。

もしも、彼女が暴走することがあれば―――止めるのは、己の役目だ。
体内の生体兵装の調子をチェックしながら、ガリューは主の眠る部屋へと向かった。

―――守る為に。

231 :ゲッターロボ昴 ◆J7qCZtZxmc :2008/04/07(月) 12:31:03 ID:uxf31e0P
クーデター軍の分遣艦隊――こちらの僅か半数、四隻しかいない艦隊に、マーティンは不気味なものを感じていた。
自分の予測が正しければ―――アルカンシェルは地上に、クラナガンに照準されている筈だ。
<ベルカの再興>。とうの昔に滅んだ国の民、それがすることなど、決まっている。
復讐だ。
かつて己が国を併合した世界に対する憎悪。それが、彼らを突き動かしているように思えてならなかった。
(今更――何もかも遅いんだよ、阿呆どもが)
心中で毒づきながら、艦を動かしていく。

「敵艦隊主力は何処に行った?予測で良い」
「はい――衛星軌道上、アンノウンの目標ポイントに向かったと思われます。転移は長距離移動用の術式ですから、ほぼ間違いないかと」
顎鬚を弄びながら、マーティンは思考の隅に引っかかるものを感じていた。
強烈な違和感。
おかしい。
いくらなんでも、敵の行動が速過ぎる。管理局ですら未だに事態の全貌を掴めていないというのに―――。
まるで、『すべてを予知する』預言者でもいたかのような―――。
唐突に鳴り響いた非常警報が、マーティンの思考を断ち切った。

「艦長、敵艦隊前方に何かが転移――これは、魔導師?!」
マーティンが目を剥いた。

「一人だけか?」
「はい―――こいつは!例の襲撃事件の奴と同一ですッ!映像記録と一致、間違いありません」
部下からのレポート―――ロストロギア輸送船団ばかりを襲う謎の戦闘艦とその正体。
退役艦、アースラ。
そして黒い魔導師。全てが告げること――この事件はやばい。3提督の狗どもの仕業、と勘が告げていた。
それが、何故。
(このタイミングで俺達の前に現れる?)
何が目的だ―――とマーティンは思わず爪を噛みそうになった。

「全艦に命じる。副砲の照準を奴に合わせておけ」
「了解。照準完了」
そのとき――閃光が、辺りを包み込んだ。戦艦すらすっぽりと覆い隠す大きさの魔方陣。

「敵艦から魔導兵器の解放反応が―――これって!地上に向けアルカンシェル、発射されましたッ!!」
悲鳴じみた報告に、マーティンは毒づきながら指示を出した。

「糞ったれッ!主砲、アルカンシェルへ向け発射ッ!」
当たらないと知りながらも、そう命じずにはいられなかった。
妻子の顔が頭に浮かんでは消えていく。殺させて―――。

「たまるかよぉッ!!」
8発の主砲が、最強の魔導兵装を止めんと、解き放たれた―――。

232 :ゲッターロボ昴 ◆J7qCZtZxmc :2008/04/07(月) 12:32:31 ID:uxf31e0P
クーデター軍分遣艦隊の艦長も、また、混乱の最中にいた。突然現れた黒い魔導師の存在に、だ。

「Cの予言にあった、<闇の王女>か?!―――撃ち落せ!」
「<闇の王女>、魔力集束開始――間に合いませんッ!」

漆黒の影が、突如として閃光を放った。集束、集束、集束――魔力素がぎゅるぎゅると渦のようになって影の周りに集まり、圧縮されていく。
まるで星の如き眩さの魔力光。
展開されるミッドチルダ式の証たる円陣。
『マスター、集束完了しました』
インテリジェントデバイスの機械音声――如何なる時も主を守るという固い意志の込められた、魔法の杖。
発射。
砲撃魔法―――桃色のエネルギーの奔流。その名は――。

「スターライトォ、ブレイカァァァ――――ッッッ!!」
星光の如き明るさの魔力光――それが、解き放たれた破壊の化身、アルカンシェルを打ち砕かんと迫る。
発射されたXV級主砲の魔力素すら取り込んで、膨張したエネルギーが全てを噛み砕こうとする怪物を飲み込んだ。
術式暴走。
目標地点到達前に、解放。

ぎぎぎぎぎぎ、と空間が焦げ付き、湾曲していく――――。
反応消滅。
七色の光を放ち、怪物が半径数十キロの空間を殲滅する。
恒星の終焉を思わせる爆発を起こしながら、アルカンシェルがクラナガン上空で消滅した。その爆発の余波で、XV級の群れが揺れた。

マーティンは信じられない、という顔で呆然とモニターを見上げていた。
いや、ブリッジ内の、誰もが同じ心境だった。
たった一人で奇跡を起こして見せた魔導師に対する感想は――――。

感謝よりも、超越者に対する畏れ。

「あれが―――噂の黒い魔導師だってか……?悪い冗談だ、くそッ!全艦、敵部隊を殲滅するぞ、一匹も逃すなッ!!」
最初に立ち直ったのは、マーティンだった。
己のなすべきことを思い出し、命じる。たとえ救いの神であれ――今はお祈りするよりも、馬鹿どもを始末するときだ。

「主砲、副砲、全艦一斉発射!!」
『了解ッ!!』

全部で24発の光の奔流が、着弾。
集束された魔力素が機関部を貫き、膨大な魔力を噴出させる。
無線。全周波数での、最期の通信だ。

《ベルカに栄光あれぇぇ――――ッッ!!》

4つの光球が生まれ、弾けた。
四隻の船が、跡形も無く消し飛んだ。

マーティンは、転移魔法で姿を消した黒い魔導師を眺めながら、溜息をついた。
(やるしかないみたいだな、ウルリッヒ――馬鹿野郎がッ!!)
もう一度、心中でかつての友を罵り―――マーティンは泣いた。


管理局の秩序そのものを揺さぶり、崩壊させんと暗躍する無数の影、影、影。
これが、後に<ジェイル・スカリエッティ事件>―――またの名を<ベルカ事変>と呼ばれる事件の始まりだった。

233 :ゲッターロボ昴 ◆J7qCZtZxmc :2008/04/07(月) 12:34:32 ID:uxf31e0P
以上で投下完了。

次回からまたなのはたちがメインの話に戻る予定です。
感想等よろしくお願いします。

234 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 12:42:08 ID:DdJ2I/Xq
GJ!です。
ナンバーズの動向も気になりますねぇ。
トーレはどうなった?

235 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 12:51:41 ID:UgrYFaZp
リアルタイムGJ!
なんというなのはの過去。
マーティンが熱い!!

236 :ゲッターロボ昴 ◆J7qCZtZxmc :2008/04/07(月) 13:42:53 ID:uxf31e0P
>>234
ナンバーズも取り扱うのでお楽しみにー。
>>235
オヤジ、大好きです!!
・・・過去の人体実験はちとやりすぎましたが。

237 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 14:04:24 ID:ist2a1KX

過去がなかなかきついのう……。

238 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 14:10:19 ID:jIncemkS
GJ!
過去の手術でされ竜のアナピヤエピソードを思い出してしまった/(^o^)\

239 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 14:26:38 ID:lKMOVRxx
職人の皆様、GJです。
自分もやっと出来ました。がんばります。

というわけで、新人です。予約がないようですので、予告の投下宜しいでしょうか?
16:00頃に携帯から、コテ付けてトリは付けない……という形ですが

240 :ゲッターロボ昴 ◆J7qCZtZxmc :2008/04/07(月) 14:29:36 ID:uxf31e0P
>>237
書いた後にエグサに気づいたり。
>>238
トラウマを刺激しただと?!すいません。

そして>>239に期待してますー。

241 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 14:49:48 ID:QaHbHhxu
まったくゲッター昴氏の天然黒さは恐ろしいで
あのエグさを自覚無しで書けるなんて

242 :リリカラー劇場:2008/04/07(月) 15:00:31 ID:p2yVV18z
予告を糖化します。

1stガンダムとのクロスです。

アムロ「シャア、なぜ邪魔をする!」
シャア「私はある魔導師にニュータイプの革新を見たから手を貸している!」

互いに交わらせるデバイス、『ガンダム』と『キャスバル』。

シャア「プレシア、貴様は純粋過ぎた!その純粋さはいずれ世界を滅ぼす!」
プレシア「貴方達なんかに娘を失った私の何がわかる!?」
ぶつかる二人の思惑。

リンディ「『一年戦争』に出てくるニュータイプ(新たな魔導師)……アムロ・レイ、シャア・アズナブル。まさか、貴方達が……」
二人のエースの存在に気付くリンディ。


アムロ「なのは、信じて声をかけ続けるんだ。可能性はいくらでも見つけられるから」
なのは「はい、アムロさん」

シャア「今こそ君は、ニュータイプと成りえた。フェイト・テスタロッサ」
フェイト「私が……ニュータイプ」
シャア「魔導師として一人の人間として君はなのはの言葉を受け、君自身を取り戻した。それは革新でもあるのだよ」

紡がれる4人の魔導師。

魔法少女リリカルなのはA.C.

君は……生き延びることが出来るか?


>>239
投下待ってます。

243 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 15:09:14 ID:47gf3cif
>>239
投下支援w
何とのクロスか楽しみです。

244 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 15:28:29 ID:2iu1l3BC
>>239
支援……!圧倒的支援……!

245 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 15:55:11 ID:lKMOVRxx
投下5分前。
皆様、投下前から支援ありがとうございます。感謝です。

出来れば、その期待を裏切りたくはないのですが……どうなることやら。

とにかく。
最悪の事態を想定してなお、自らたてた宣言を通すため、たった3レスの予告を投下致します。

――自分からしてみれば明らかに『爆弾』ですが。

246 :リリカル・ブレイン:2008/04/07(月) 16:00:17 ID:lKMOVRxx
予告 その名は
〜Wizard's Adventures in Wonderland〜


……止まれ……止まれ、止まれ……

 握る両手の中から溢れる、まばゆいばかりの光。同時に流れるのは、膨大な魔力。
 止められるのか、と過ぎった不安を無理矢理心の中から追い出し、手中の青き宝石へと、湯水の如く膨大な魔力を流し込む。
 ――そして。
「あっ――」
 思わず声をあげたのは、誰だったのだろうか。
 宝石が放った圧倒的な力によって、少女は弾き飛ばされ……
 青き宝石は急速に天へと昇り、閃光と共に消えた。

 ――二十一世紀初頭、四月二十六日の夜。日本、海鳴市にて。

 † † † † † † † † †

「……ん?」
 点在する瓦礫。その一つからほとばしる青白い光に、その男は目を見開いた。
 ジャンク目当てにもう随分とこの辺りを歩いたが、あんなものは初めてだ。
 早速近寄り、発光する瓦礫の中を覗いてみれば、
「ほう……」
 ――狭い空間の中で、小さな青い宝石が光っていた。

247 :リリカル・ブレイン:2008/04/07(月) 16:01:34 ID:lKMOVRxx
 これは売れば高くつく……いや、隊商では駄目だ。シティに売れば莫大な金に……交渉次第ではもしかすると、シティの永住パスも夢ではない。
 欲望のままに手を伸ばして取り出そうとするも、ぎりぎりで届かない。
 今度は肩まで瓦礫に入れ、宝石を掴もうと指を伸ばし、その指先が宝石に当たり――
「あっ――」
 外部からの運動エネルギーを受けた宝石が、更に奥へと転がっていき、

 ――小さな隙間が生み出した、小さな穴へと落ちていった。

「ツイてねえな……」
 折角こんな夜にまでジャンク漁りに来たというに、運が向いてきたと思ったらこれだ。
「しょうがねえ。他あたるか」
 ジャンク屋の男は、その場を立ち去った。
 ――余りにも、あっさりと。

 † † † † † † † † †

 からんころん、と。
 瓦礫の隙間のただ中で、転がる音を響かせながら、光る宝石は際限無く落ちていく。
 いつまでも続くかと思われた転落劇。しかし、永遠なんて何処にも無い。
 やがて青き宝石は、穴の底へとたどり着いた。
 これまでとは違う、広い空間。ちょうどその中心に、宝石は転がり込んだ。


248 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 16:01:51 ID:47gf3cif
支援

249 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 16:02:09 ID:frSRcjsf
……ウィザブレ!? 支援!

250 :リリカル・ブレイン:2008/04/07(月) 16:03:36 ID:lKMOVRxx
 ついに動きの止まった宝石は、次第に光を弱めていき……

 一つ、大きく鳴動した。

 光が宝石を包み、宝石は天井と床の中間点へと浮かぶ。
 宝石を包む光は床へと伸び、伸びた光は幾つも分岐し、床から壁へと別々に伸びていく。
 壁へと伸びた光は、最初から壁など無いかのように、壁の向こうへと伸び続ける。

 ――それはまるで、種子が大地に根を張るように。

 地表へと芽吹くことなく、大きな樹木の幹であるかのように、光は種を頂点として直立する。

 ――それはまるで、大きな培養槽のように。

 根はより深く、より遠くへと広がっていく。幹はこれ以上太くはならないのに、根は際限無く広がり続ける。

 ――それはまるで、全てを覆うように。

 青き宝石は、規則的な鳴動を始めた。
 誰かが慟哭をあげているような、奇妙な鳴動。

 ――それはまるで、生き物のように。

 気付く者など、誰もいない。千里眼の少女ですら気付くことなく、微弱な情報制御を発しながら、過去の遺物は侵食を開始した。

 ――世界への侵食を、静かに開始した。

 ――西暦二一九八年、四月二十六日、夜。某シティ跡地の、遥か地下にて。



251 :リリカル・ブレイン:2008/04/07(月) 16:05:10 ID:lKMOVRxx
 ‡ ‡ ‡ ‡ ‡ ‡ ‡ ‡ ‡

 ――これが、すべての始まりだった。

「わたし、なのは。高町なのは」
「えっと、セレスティ・E・クラインです。セラ、って呼んでくれれば」
「うん、わかった。よろしくね、セラちゃん」
「あ、いえ、こちらこそ」

 ――運命とは、かくあるべきなのか。

「僕はディー。よろしく」
「……フェイト・テスタロッサ。この子は使い魔のアルフ」
「……よろしく」
「? アルフ、どうしたの?」
「いや……何でもないよ、フェイト」
「そう? なら、いいけど……」

 ――波紋は広がる。共振が起こる。

「君は、一体……」
「――セレスティ・E・クラインですよ、クロノさん」

 ――止める術は、ない。

「貴方は……一体、何なの?」
「――デュアルNo.33」



252 :リリカル・ブレイン:2008/04/07(月) 16:06:02 ID:lKMOVRxx
 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 全ては小さな願いから。
 望むものは家族か、笑顔か……それとも過去か。
 悲哀と寂寥が青き宝石へ届いたその時、運命の歯車は……

 舞台は日本、海鳴市。
 未来より来たるは、『光使い』と『双剣』。

 二十六日、不思議の国のアリス(Alice's Adventures in Wonderland)のように、二人の魔法士は過去の世界へと迷い込んでいきます。

 とうとう、準備が終わりました。

 それでは、「リリカル・ブレイン」を、始めましょう。





253 :リリカル・ブレイン:2008/04/07(月) 16:20:56 ID:lKMOVRxx
以上で、投下終了です。

……もう、やっちゃったな気分ですね。
クロス元の原作者(以下将軍)もh&pで書いていたように、キャラや設定が似ています。だからこそ書いてみました。

そして自分は将軍並の遅筆っぷり。予告通りに始まるかどうかも危ういところです。
こうして書くだけでも10分以上かかってますし(汗

それでは、この辺で失礼致します。
クロス元は電撃文庫の「ウィザーズ・ブレイン」より。

254 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 16:21:37 ID:ugWgGJGf
ウィザブレ来ター!!超GJ!!
俺が今書いてるウィザーズブレインとのクロスより全然面白そうだぜorz

255 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 16:49:59 ID:GZhz4kjP
自分もWBとのクロスを考えていたんですが、
戦闘時のバランスが、
通常地の50倍以上の運動速度と反応速度とか、
一人で対艦隊戦で圧倒できる荷電粒子砲(超低出力でも4キロ先を精密狙撃可能)とか、
永遠に落ち続ける空間に閉じ込めるやら、光の99%で移動したりとかで
どうすりゃいいんだと、プロットで止まってます、
いや書きたいんだけどね

256 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 16:55:05 ID:2iu1l3BC
GJ
ウィザブレとは……これは続きが気になる

257 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 17:43:32 ID:UlFZd4NK
GJ WBと聞くと俺はホワイトベースと変換されるw

258 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 18:05:47 ID:ATczer/h
257 安心しろ 俺なんか WGで ホワイト・グリントだ!
・・・俺フロム脳に犯されてるな

259 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 18:26:24 ID:rvKPZgGE
>>257>>258
おまえらってやつは…尊敬に値する

ウィザーズ・ブレインおもしろそうだな、原作読んでみるか



260 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 18:32:25 ID:wvTdam9l
やめとけ、後悔するぞ


将軍のあまりの遅筆に

261 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 18:46:51 ID:9MHoInzV
WBは面白いんだが、執筆が絶望的に遅いんだよなぁ・・・
魔導師はWBの錬と同じ汎用型のような扱いではどうかな?

262 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2008/04/07(月) 18:49:42 ID:O6fRRyyt
遅筆っぷりを確認してみた。
1巻 2001年2月
2巻 2002年1月(11ヶ月)
3巻 2002年10月(9ヶ月)
4上 2003年12月(1年2ヶ月)
4下 2004年1月(1ヶ月)
5上 2005年5月(1年4ヶ月)
5下 2005年9月(4ヶ月)
6上 2006年12月(1年3ヶ月)
6中 2007年4月(4ヶ月)
6下 2007年10月(6ヶ月)


263 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 18:55:45 ID:8xuet0Hm
>>257
やあ、俺w

264 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 19:06:12 ID:EqK8uate
遅筆がどうした!

トリニティ・ブラッドは永遠に完結しないんだぞ……orz

265 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 19:09:23 ID:lC9RzwGZ
>>262
結構出てるだろw
世の中には書かれない続きを待ち続ける連中もいるからそれに比べれば幸せだ

266 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 19:11:59 ID:DdJ2I/Xq
「皇国の守護者」にくらべれば…
漫画しか買ってないが。

267 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 19:27:49 ID:rvKPZgGE
>>260
世の中には「続ける意欲がなくなりました(意訳)」と、後書きに書く小説家もいるから
それに比べればなんともないぜ

268 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 19:33:55 ID:gydWDWeB
>>266
あれは、もはや老害の域に達した御大のお陰で二度と続きがでないからな。

269 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 19:46:24 ID:QUSjxTXD
ウィザースブレインは俺の青春。
龍使いの話でマジ泣きしたのも良い思いで。
そしてシティニューデリーの将棋指し、あんたは立派な漢だよ・゚・(ノД`)・゚・

270 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 20:06:28 ID:mg1j2tgj
年単位で出ない作品ってあるよなー。


・・・・清松さん、混沌の大地Xはまだですかー?orz

271 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 20:22:18 ID:5njIuX37
十二国記も……というかウロスに行くべきでは?

272 :一尉:2008/04/07(月) 20:36:33 ID:8IveGMnM
ふむ支援たな。そうえはF−22は艦載機たよ。

273 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 21:09:41 ID:6bsnPEgD
遅レスだけどウィザードブレインクロスに乾杯!

274 :リリカル! 夢境学園 ◆CPytksUTvk :2008/04/07(月) 21:21:07 ID:bLq3VoH8
えーと、今空いてますか?
今夜の十二時ぐらいにアンリミテッド・エンドラインの投下予約したいのですが。
よろしいでしょうか?
ちょっとペースが速すぎて、不安です。

275 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 21:48:52 ID:47gf3cif
うひょ〜w支援です。改造GDの力を見せてくれw

276 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 22:11:12 ID:rzk1SoEY
支援の準備を致して起きます

277 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 22:41:10 ID:5DJX0ENx
ウィザブレGJ!!
しかもセラとディー! 続き読みたい。超読みたい

278 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 22:54:13 ID:hhp4wSEq
>264
言いたい事は痛く分かる。
火浦ファンもガルちゃんを13年待ったが、待つ事さえ許されないなんて……

279 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 23:03:58 ID:UlFZd4NK
俺支援する。
GDはジュエルシード内臓だから動力炉暴走させて
拠点に転移させて自爆させればノーマルでも厄介な気がする。

280 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2008/04/07(月) 23:08:40 ID:O6fRRyyt
そういえばディーって、非殺傷設定じゃとまらないよな。
森羅起動時は脳以外のすべてがやられても戦闘を続けるって言うし。

281 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 23:33:11 ID:2iu1l3BC
てか痛覚無視とか出来るから非殺傷設定じゃ誰も止まらない気がするw

282 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 23:35:08 ID:7QnUs5Ay
芳樹先生、何時になったらアルスラーン戦記は終わるんですか?タイタニアの続きはまだですか?

283 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 23:39:31 ID:Rg9wFmDs
ソルジャークイーンシリーズの完結編はどーなったんだ・・・

284 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 23:39:31 ID:RPUMNMfs
フォーチュンクエ…ごめんなんでもない

285 :魔術士オーフェンStrikers:2008/04/07(月) 23:43:58 ID:n3ti3EEf
失礼します。オーフェンの5話後半書きあがったんで
1時くらいに投下させてもらってもよろしいですか?

286 :リリカル! 夢境学園 ◆CPytksUTvk :2008/04/07(月) 23:53:32 ID:bLq3VoH8
あ、お先に投下してもいいですよ?

ちょっと推敲に時間がかかっていまして、三十分ほど遅れそうです(汗
その分内容が凄いことになってますが。


287 :魔術士オーフェンStrikers:2008/04/08(火) 00:00:15 ID:oaNqetZS
あ、そうですか?
では夢鏡学園氏には申し訳ないですが
先に投下させてもらいますね。
お目汚し失礼します。


288 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 00:02:28 ID:GscjoYw+
グロ魔術士殿支援

289 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 00:03:41 ID:OY6Hxy/5
支援

290 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 00:04:40 ID:iT6vIZCP
支援

291 :魔術士オーフェンStrikers:2008/04/08(火) 00:05:32 ID:oaNqetZS
魔術士オーフェン5話(後編)

機動六課の訓練場―――

「じゃあスバルはヴィータ副長から近接戦闘の指導、ティアナは私と中距離での射撃訓練だよ」
「ライトニングスは二人で基礎体力の強化ね」
「「「「はい!」」」」
各隊長の指示にフォワードの四人が元気な声で返す。

「・・・・・俺はどうすんだ?」
「お前は私とだ」
オーフェンの所在なさげな呟きに凛とした声が答える。
その場の全員が振り向くとそこには普段訓練場ではまず見ない顔があった。
「シグナム!?」
「珍しいな、オイ・・・」
フェイトとヴィータが驚きの声をあげる。
「何、オーフェンのデバイスが出来たんだろう?調整の手伝いをしてやろうと思ってな」
その言葉にヴィータが驚きから一転、呆れたような顔になる。
「ま〜た始まった・・・戦闘狂も結構だけどな、たまには新人の戦技指導にも顔出せっての・・・」
「あいにく教えられる事が少ないのでな。それに手加減ができない性分だ」
それでは困るだろう? と薄く笑ってからオーフェンに向き直る。オーフェンもその目を見つめ返す。手の中で彼のデバイス「フェンリル」を弄びながら―――
「・・・要するに模擬戦をかねて「コイツ」がどれくらい使えるか見てみようって事か?」
「そういうことだ」
簡潔に答えてくる目の前の騎士。微笑を浮かべてはいるが瞳には隠しきれてない高揚が炎の様に揺らいで見える。
断言してもいいがデバイスの調整など間違いなく方便だろう。
彼女を見据えながら暫し黙考する。彼女は管理局内ではトップクラスの実力者だというのははやてから聞いている。
(彼女と戦えば俺がこの世界でどの程度戦えるか分かる・・・か?)
安易な考え方をしている自分に気づき胸中でわずかに苦笑する。別に彼女に勝てたからといって彼女以下の相手に必ず勝てるというわけでもないだろうに・・。
だがそれでも―――
(断る理由も特に見当たらないな・・・)
デバイスを使った戦闘はどのみち経験しておかねばならないし、なにより魔術だけでどれだけ戦えるのか確かめておかねばならないのは本当だ。
そこまで考えてオーフェンは口を開いた。
「そうだな・・・。付き合ってくれるか?」



「なのは・・・いいの?」
「う〜ん・・・」
心配そうな声で尋ねてくるフェイトになのはは手元のパネルを叩きながら答えにならない呻きで返す。
「確かにデバイスを使った模擬戦はいずれやってもらわなくちゃならないけど、相手がシグナムっていうのは、やっぱり・・・」
相手が強すぎるんじゃないか、とフェイトは暗に言っている。横で見ているヴィータ、フォワードの面々も同感と言った面持ちだ。
ベルカの騎士の長「烈火の将」の二つ名を持つシグナム。
リミッターにより実力を制限させられているとはいえ魔法を覚えてわずか一週間足らずの彼にどうにかできる相手では到底ない。
なのはとて頭では分かっている。
「う〜〜ん・・・」
だがなぜだろう?止めようという気が少しも起きなかった。
(これはつまり心配しなくても大丈夫ってことかな・・・?)
自分でもよくわからないが「まぁ、危なくなったら止めればいいか」という事で見守る事にした。


292 :魔術士オーフェンStrikers:2008/04/08(火) 00:07:54 ID:oaNqetZS
「ところで」
「あん?」
荒廃した市街地に設定されたそこで二人はやや距離を取りながら向かい合っている。
シグナムはすでに己の甲冑と刀剣を顕にしていた。こちらを見据えながら問いかけてくる。
「デバイスの使い方は知ってるんだろうな?」
「ああ、その事か。まぁ多分な。俺にも魔力が備わってるってのはなのはから聞いたし起動の言葉もさっき教えてもらったよ」
フェイトや新人達と少し離れた所で見物を決め込んでるなのはに視線を向ける。
「一緒に教えてもらった飛行魔術に関してはまだ浮かぶのがやっとって所だがね」
「そうか・・」
再び視線を目の前の騎士に戻し、呟く。
「セットアップ・・・」
その言葉と同時に黒い極光がオーフェンの体を包む。一瞬後、オーフェンの服装は一変していた。
黒いジャケットにズボン、革の手袋に無骨で頑丈そうなブーツ、頭には赤いバンダナが巻いてある。オーフェンがこの世界に来た時と寸分違わぬデザイン。
これはオーフェンの希望だった。
唯一違うのは腰のベルトに括り付けられて鞘に収まる刃渡り30cm程の黒い短剣。
装飾らしい装飾はないが柄の腹に黒いひし形の宝石が埋め込まれている。
「・・・なるほどな」
自分の状態を一通り見回し、満足とも呆れともとれるため息をつく。
(聞いてはいたが・・・とんでもない技術だな)
そう、「今更」な感想を胸中で呟いていると―――

「用意はできたか・・・?」
「――――――――ッ!」
直後、そんな何でもない言葉と共に凄まじいプレッシャーが叩きつけられた。声の主へと目を向ける。
そこにはさっきと変わらずに紺紫の剣士が立ち尽くしている。何も変わらない、が―――
(違う・・・)
姿カタチは同じだが雰囲気が先ほどとは一変していた。こちらに向けて溢れんばかりの闘気を放っている。
「ったく、やる気満々だなオイ」
悪態をつきながら鞘からフェンリルを抜き、構えをとる。
構えと言っても何も大仰なものは必要としない。精々相手に対して体を横に向ける程度。フェンリルは前にある左手で逆手に構える。
「そうでもないさ」
そう答えながらシグナムもレヴァンティンを下段に構える。上体はやや前傾、重心も前に出した右足に偏っている。
その姿はさながら地に伏して獲物に飛び掛ろうとする猛獣を連想させた。
「――――――――」
「――――――――」

緊張が場を支配する。
まばたきすら忘れて睨み合う。
――――カラッ
どこからか瓦礫の落ちる音がした。それを開始の合図と判断したのか、シグナムの体が沈む。
「シッ!」
―――瞬間、シグナムの体が爆ぜた。
否、「爆ぜたように見えた」 そうとしか思えぬ加速を持って彼女はオーフェンの間合いあっさり侵略する。
(ッッッ、速ぇっ!!)
5mはあった距離を一瞬で潰された。その事に軽く驚愕しながらも全力で後退する。下からの切り上げが髪の毛を数本さらっていく。
それを皮切りに更に距離を詰めながら怒涛の剣戟を放ってくるシグナム。
それをオーフェンは何とかフェンリルで捌いていく。しかし、
(・・・剣じゃ勝てねぇ!)
十合も刃を合わせない内に悟る。腕力ではさすがに勝っている、剣速は同程度か向こうが少し上、しかし技量の上で比べ物にならないほどの差があった。
――――連撃は加速していく。


293 :魔術士オーフェンStrikers:2008/04/08(火) 00:10:16 ID:oaNqetZS
左からの切り下ろし、そのまま更に踏み込み全く同じ軌道の右からの切り上げ、避けきれずフェンリルで受け止め、捌く。
すかさずしゃがみこみ体を一回転させながらその勢いで足狙いの切り払い。跳んで避ければ地面につくまでの間無防備になる。
後方に跳ぶ。刃が足に少し掠っていくがバリアジャケットのおかげで怪我は負っていない。
(距離を稼ぐ。接近戦じゃ勝負にならない)
そう考えバックステップで距離をとろうとする。だがその考えを阻むかのようにシグナムが一足で間合いを詰め、稲妻のような突きを放ってくる。
舌打ちをしながら左への体捌きでかわす。が、
「甘い!!」
その叫びと同時、剣を左片手に持ち直したシグナムの左への切り払いが追尾するようにオーフェンに迫る。
(くっそ・・・!!)
避けきれない、首を狙った魔剣の一撃を右手のフェンリルで受け止める。そのまま体を押し付け鍔迫り合いの形に持っていく。
「やるな・・・接近戦でベルカの騎士についてくるのか・・・」
息のかかりそうな距離でシグナムが呟く。その口元には微笑が浮かんでいた。
(ハッ、何が楽しいんだか!!)
胸中でそう罵りながらオーフェンも口の端を吊り上げる。
(隙がないなら作るまでだ!)
接近戦用の魔術の構成を編み上げる。そして自由な左腕を振り上げ―――叫んだ。
「我掲げるは降魔の剣!!」
するとオーフェンの左手の掌から光の剣のようなものが現れる。
「何ッ!!」
シグナムの顔に初めて驚愕のようなものが浮かぶが構わずオーフェンは光剣を振り下ろす。
「チィッ!!」
シグナムはそう呻くと一旦体を離し後方に退がる。当然、光剣は空を切る、が
「我は跳ぶ天の銀嶺(ぎんれい)!!」
それを見越して編んでいた構成を解き放ち、オーフェンは後ろに跳んだ。
重力制御―――重力の枷から解放されたオーフェンは一気に数十メートルの距離を離す事に成功する。いかにシグナムといえどこの距離を一瞬では埋められない。
そう確信してオーフェンはシグナムに向け右腕を振り上げ魔術を―――
「レヴァンティン!!」
『schlangeform!』
突如、背筋に悪寒を感じると同時に凄まじい速度で「伸びてきた」剣の切っ先に阻まれた。
「っんだと!?」
編んでいた構成を霧散させ咄嗟に横に避ける。我が目を疑いシグナムの方に視線を移すと彼女は剣を突き出した姿勢のまま硬直している。間合いは依然離れたまま。
だが先ほどまでと彼女の武装が一変していた。さっきまで確かに刀剣だったものが柄を残して刃の鞭、蛇腹剣へと姿を変えている。
(形状変化の魔法・・・って所か?やっかいな)
舌打ちをしながらオーフェンはフェンリルを構え直す。光の剣はすでに消えてしまっている。
音声魔術であるための必然。声は保存しておけないため術の効果を長い間持続する事はできないのだ。
「・・・少し驚いたぞ。何だ今のは?」
遠い間合いから彼女が問うてくる。「今の」というのは自分が使った魔術の事か?
「・・・『超力場の剣』接近戦専用の魔術だよ、俺が作った、な」
話ながらジリジリと距離を詰める。もはや遠い間合いでも有利とは言えなくなった。
苦々しく認める。
「なるほどな・・・ただ力を放つだけが能ではなかったか・・・」
だが対するシグナムも心中穏やかではない。
(まさか『シュランゲフォーム』まで晒す事になるとは・・・)
先の蛇腹剣での一太刀はシグナムにとって不本意なものだった。オーフェンの機転により距離を開けられた時、
相手に中距離で必殺の威力を持つ技があるのを知っていた事により生まれた焦り。それによって半ば反射的に放った一刀だった。
無意識で最良の選択が出来るというのは戦士として卓越した技能なのだが「格下相手への不意打ちじみた一撃を放った」という事実が彼女の誇りを傷つける。
だがその苦い思いも次の瞬間には消し飛んでいた。なんと彼は高速で迫る一刀をこともなげにあっさりかわして見せたのだ。

(目がいいのか・・・勘がいいのか・・・。加えて接近戦でベルカの騎士と渡り合うほどの腕、更に戦術的にも恐ろしく長けている、か。
全く、侮っているつもりはなかったんだがな・・・。)
気を吐き、己の意識を引き締め直す。もはや格下などとは思わない。
「行くぞ!」
彼女はそう吼えると鋼の蛇に鞭を入れた。


294 :魔術士オーフェンStrikers:2008/04/08(火) 00:14:36 ID:oaNqetZS
(来る―――!!)
そう感じた時にはオーフェンはすでにその場を飛び退いていた。一瞬前に自分がいた地面を鞭と化した剣の切っ先が抉る。更に蛇は止まらず地面を掘り返し、
蛇行しながらこちらを追尾してくる。
オーフェンは走りながら思考する。
このままでは間違いなくやられる。複雑な軌跡を描いて襲ってくる蛇腹剣の避けづらさは刀剣の時の比ではない。
(ならどうする!?)
近距離で勝てない事は実証済みだ。ならやはりこの距離で撃ち合うしかない・・・が、ある予感がオーフェンに魔術を使う事を躊躇わせていた。
(魔術を放つ瞬間を狙っている・・・)
確信があるわけではない。だがどのみちこの状況では狙い打ちなどできない。動きを止めればあっという間に捕まるし、
何よりこういう時の自分の予感は不幸な事に大体「正しい」
(・・・ならどうする?)
意図的に同じ言葉を繰り返して自身に問う。
[キリランシェロ、人と戦う時には敵を超えようなどとは思わないことだ。それよりも―――]
瞬間―――頭の隅に閃くものがあった。
「――――――――」
フェンリルを順手に持ち直し走る方向を変える、シグナムの方へと。
「・・・・」
予想の範囲内だったのか彼女は動じず、レヴァンティンを振るう。

斜め後ろからの強襲を勘だけを頼りに身を捻ってかわす。だが通り過ぎた切っ先が弧を描いて跳ね戻ってくる。フェンリルで弾き返す。
距離を詰めるごとに蛇の往復は速さを増していく。
肩に、頬に、足に、腕に、わき腹に、致命傷とはならないが体の至る所に蛇の爪痕を残しながらそれでも走る。
(あと、少し・・・)
五感を研ぎ澄ましながら師の教えを思い出す。
[―――そう、それよりも敵の弱点を見つける事だよ。弱点を見つけたらあとは実行を恐れない事だ。
それがなんであれ、たった一つでも弱点と呼べるものがあるのならば―――]

「・・・・・それこそ、打つ手は無限にある」
その言葉自体には意味なんてない。だがオーフェンは自分の意識が極限まで冴え渡るのを感じていた。
1m手前まで迫った所でシグナムは鞭を収め、再び刀剣を構える。かまわずオーフェンはフェンリルで斬りつけるが、それをいとも容易く捌きながら彼女は怒りの表情を見せる。
「何か策があるのかと思えばただの特攻か・・・舐められたものだ。剣の勝負なら勝てるとでも思ったか!」
叫びながら再び連撃を放ってくる。その様子にオーフェンは胸中でほくそ笑んだ。
(・・・策?―――あるさ!!)
剣戟を受けながら隙を窺う。チャンスは一度、こんなもの二度も使えばこの剣士は必ず対応してくる。
「ハァッ!!」
裂帛の気合と共に振り下ろされる大上段の一撃を両手で握り直したフェンリルで受ける。
そのまま力を込めてくるシグナムに拮抗するようにこちらも短剣を握る両手に力を込める。
噛み合った刃が火花を上げて擦れあう。
(ここだ!)
オーフェンが仕掛ける。レヴァンティンを受けている腕を残してしゃがみこみ、体を反転させ足払いを繰り出す。
「ッ!」
予想外の攻撃に反射的に跳んでかわしてしまう。
オーフェンはその隙に再び後退しながらフェンリルを投げつけた。
「舐めるな!!」
だがシグナムは至近距離から放たれた投剣を鬼神じみた反応速度で打ち落とす。
オーフェンはそれを見越していたのか更に距離を離し呪文を紡ぐ。
「我は―――」
先ほどと同じシチュエーション。シグナムは当然距離を稼ぐつもりなのだろうと思い己が愛機に変形を命じる。
「無駄だ!レヴァンティン!!」
『schlangefolm!』
カートリッジから排莢しながらレヴァンティンが吼える。
(かかった!!)
心中で歓声を挙げながらこの時の為に編み上げていた構成を解き放つ。

「我は踊る天の楼閣(ろうかく)!!」


295 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 00:15:11 ID:1OkVEQH5
支援

296 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 00:17:16 ID:OY6Hxy/5
支援、恩師の言葉が不吉な予感・・・ティアナ関連で。

297 :魔術士オーフェンStrikers:2008/04/08(火) 00:19:31 ID:oaNqetZS
瞬間、オーフェンの姿が世界から掻き消え、一瞬後に現れた場所はシグナムの目の前だった。

「疑似空間転移」
彼の師、チャイルドマン・パウダーフィールドが三大秘奥の内の一つにしてオーフェン自身の切り札の一つだった。
「――――ッ!!」
一瞬で、―――否、一瞬以上の速さで自分の前に現れた男に驚愕しながらも剣を構えようとして、気付く。自分がすでに変形を命じてしまっていたことに。
「シュランゲフォーム」では打ち合いなど望むべくもない。
(―――やられた!最初から「コレ」が狙いか!!)
相手の企みを看破するが遅い。息がかかるほどの超至近距離でオーフェンは身を屈め彼女のわき腹に手の平を押し当てた。
反射的に後ろに飛び退こうとする。が、同時にオーフェンの足元から凄まじい踏み込み音が響く。
「ぐ、―――っあ!」
バリアジャケット越しでも伝わる衝撃に苦悶の声を漏らす。気付けば彼女は地面と平行に「飛んでいた。」
そのまま数メートルも吹き飛ばされ、受身も取れずに地面に背中をしたたかに打ち付ける。
「がっ―――はぁ、あ・・・」
肺から空気を搾り出される苦しみに意識が飛びそうになるが堪え、必死に立ち上がろうとする、が―――
「終わりだ」
その時にはオーフェンはすでに王手に入っていた。シグナムの眼前に指先を突きつけたまま続ける。
「・・・・悪いな。今回は俺の読み勝ちだ」
「・・・・・・・・」
地面に膝をついた状態でその指先を見つめたままシグナムはしばし押し黙り、口を開く。
「・・・もし、私が」
「うん?」
「もし私があの時・・・レヴァンティンを変形させずに「見」に徹していたらどうしていた?」
「その時は遠慮なく魔術で狙い撃ちだな。あんたの敗因は俺のラストカードを見誤った事じゃない。俺に二度目の接近を許しちまった事さ。」
「そうか・・・」
その言葉に納得する。思えばあの突然の接近から全て彼の計算通りだったのだろう。自分はそれにまんまと踊らされてしまっていた。
なるほど、これは確かに・・・
「ああ、私の読み負けだ・・」
口元に自嘲の笑みを浮かべ、騎士は紙一重でも敗北を受け入れた。


「凄い・・・」
ティアナ・ランスターはその場を動く事が出来なかった。いや、おそらく自分以外の誰もがその光景に絶句しているだろう。
熱心なオーフェン党(ティアナが勝手に命名)のスバルでさえ目を見開いて唖然としている。当たり前だ。あまりにも予想外の結果なんだから。
なのはさんだけは「私の勘も捨てたもんじゃないなぁ」などと小さく呟いていたが
意味が分からなかったので無視しておこう。先ほどの戦いを思い返す。
(序盤は防戦一方だった。剣の腕でも明らかに負けてたし、距離を離してからも劣勢は続いていた。ていうか最初から最後まで攻められっぱなしだったかも。・・・でも)
終盤、前の攻防を囮に使った転移魔法、加えてデバイスの形態変形の隙をつくというオマケつき。相手の行動を二手三手先まで読みきっていないとこれはできない。
才能一つで出来る事じゃない。膨大な戦闘経験からなる予測、弱所を見抜くセンス、相手を自分の土俵に引きずりこむ駆け引き、一瞬のチャンスを逃さず物にする能力。
少なくともこれだけのものがなければまず実践するのは不可能に近い。
そこまで思い至った時、彼女は脳髄に強い痺れのような物を感じた。
「―――凄い」
意図せずに同じ言葉を繰り返す。声には先ほどよりもわずかに熱が篭っていた。


298 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 00:20:00 ID:wRHCIEhZ
自分より遥か格上との戦いばっかやってたよなオーフェンって支援

299 :魔術士オーフェンStrikers:2008/04/08(火) 00:21:58 ID:oaNqetZS
その後、午前の訓練が終わりオーフェンはなのは達と食堂で昼食を摂っていた。普段は一人かたまにヴァイスと二人で食べるかだが、
今日は訓練終わりに彼女達に誘われたのだ。
「で?・・・何でお前まで居るんだ?」
オーフェンは隣に座っているはやてへ半眼を向けながら呻く。その言葉にはやてがコーヒーを飲みながら同じく半眼で返す。
「・・・ウチの勝手でしょう。」
「・・・・まぁ、そうだけどよ。」
はやてとは午前の訓練を終わらせ基地に戻る途中で合流した。なぜか息を切らせて訓練所に向かって駆け込んできたのだ。
「でもホンマなん?シグナム相手に勝ったなんて・・・ちょっと信じられへんのやけど」
疑わしげにこちらを見ながら呟いてくるはやてに苦笑する。
「まぁ、奇策で拾わせてもらったみたいな勝ちだけどな。次同じことやったら俺の方が地面に転がってるよ」
「・・・怪我とかせんかったん?」
「あん?いや、そこらじゅう斬られまくったけどな。例の非殺傷設定とやらのおかげで怪我らしい怪我はねぇよ。」
便利なもんだよな、とこぼしながらパンを口に運んでいくオーフェンの方を見ながら独り言のように小さく呟く。
「ふ〜ん・・・・心配のしがいないなぁ・・・」
「は?・・・何だって?」
「別に〜?「何や、つまらんなぁ」って言うたんやけど?」
「・・・テメェ」
「ま、まぁまぁ、落ち着いてオーフェンさん。」
剣呑の雰囲気を醸し出したオーフェンをなのはが止める。そんななのはにフェイトが助け船を出す。
「なのは、あの話あの話!」
「え?あ、そっか。オーフェンさん!ちょっとお話があるんですけどいいですか?」
「・・・なんだよ、話って」
とりあえず落ち着いた様子でオーフェンが席に座りなおす。それを見てなのはがホッとした様子で咳払いを一つして話し始める。
「単刀直入に言うとですね、オーフェンさんには新人の子達の指導に回ってもらおうと思うんですけど。主にスターズの子達の」


300 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 00:23:21 ID:GscjoYw+
オーフェンに殺せないものはない。支援

301 :魔術士オーフェンStrikers:2008/04/08(火) 00:25:13 ID:oaNqetZS
「・・・正気か?」

信じられずに呟く。
「俺は魔法で教えられる事なんか・・・」
「教えてほしいのは魔法じゃないよ。オーフェンに教えてもらいたいのは主に戦術方面の事。
あの子達がどんな状況でも最適な判断が出来るように鍛えてあげてほしいの」
「特にティアナはその点でオーフェンさんからは学べる事がたくさんあると思うんです」
フェイトが間髪入れずに補足を入れてくる。それを聞いてオーフェンはわずかに考えるそぶりを見せる。
「・・・何か俺の事買い被ってねぇか?シグナムに勝てたのは―――」
「マグレだなんて言ったら怒りますよ?」
笑顔100%で言い切られた。バツが悪そうに頭を掻きながら言葉を捜す。
「・・・・いや、でもあいつらが嫌がるんじゃねぇかな?後から入った奴にアレコレ言われるのなんてよ―――」
「あ、その辺は大丈夫ですよ。ちゃんとみんなからアンケート調査済みです。賛成4の反対0で圧勝でした。人気者ですね」
「シグナムと同等クラスの人からの指導だもん。後とか先とか関係ないよ」
こちらの逃げ道を塞ぐようななのはの言葉にフェイトが乗っかる。・・・いや、逃げ道というのは語弊があるか。
多分その位置が機動六課にいる間の俺が一番有意義に動ける場所なのだろう。一応飛行魔法の習得という課題がある事にはあるが、
進み具合からして実戦投入できるのはいつになるやらというところだ。
それならモノになるのかどうかも分からない技術を磨くより自分の技術をフォワードの連中に叩き込んでやったほうがずっと建設的だろう。
そこで思考を切り、横でおかわりのコーヒーを注いでいるはやてに「どう思う?」と視線で問うてみる。
「・・・ええんちゃう?やってみても」
そう言って澄まし顔でカップに口を付けるはやてを見やりながら
「・・・そうだな、やってみるか」
やってみることに決めたらしい。

魔術士オーフェン 第5話(後編) 終


302 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 00:25:58 ID:EKRb1B3z
とりあえず、はやての一人称は私だったはず・・・支援

303 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 00:28:27 ID:OY6Hxy/5
GJ!!です。
原作は知りませんが非常に面白かったです。
オーフェンみたいな人が、しぶとく生き残るんだろうな。
強い奴が勝つのではなく、勝った奴が強いか。

304 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 00:29:00 ID:wRHCIEhZ
オーフェンは教師としての才能はあるのかね。マジクを見てるとなんかパッとしない気が。

305 :魔術士オーフェンStrikers:2008/04/08(火) 00:29:45 ID:oaNqetZS
投下終了です。
支援の方、どうもありがとうございました!

今回はけっこう難航してた気がします・・・。

でも戦闘書くのは楽しかったなぁ。

306 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 00:30:01 ID:wRHCIEhZ
おっとすいません。GJを入れ忘れました。

307 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 00:31:50 ID:GscjoYw+
GJ!
びっくりアタックは初見の相手には強いよなw

308 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 00:34:52 ID:Lqyu3yxI
GJ!

オーフェンの戦術って完全にナンバーズの上位互換だからな。
……って言うかなのはも兄と姉、もしくは叔母を呼べばいいのに。

309 :リリカル! 夢境学園 ◆CPytksUTvk :2008/04/08(火) 00:35:20 ID:iT6vIZCP
GJです!
さすがはオーフェンw 策を練り、相手を嵌め、勝利をもぎ取る男w

それでは、自分は一時より投下開始させていただきます。
スーパーエリオタイム&ティアナタイムの予定です。

つうか、過去最大のアクション話の予感(汗

310 :魔術士オーフェンStrikers:2008/04/08(火) 00:38:15 ID:oaNqetZS
おお!
たくさんのGJありがとうございます!
活力になるなぁ、これは。

311 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 00:41:49 ID:OY6Hxy/5
>>309
申し訳ない、もう寝なくては。
そういう訳なので、最後の支援ッ!!

312 :リリカル! 夢境学園 ◆CPytksUTvk :2008/04/08(火) 01:00:59 ID:iT6vIZCP
そろそろ投下よろしいかな?
ぶっちゃけ凄い量です。25KBってなんだ orz

けれど、その分力を篭めました。
長いので、どうか支援よろしくお願いします!

投下してもいいですかな!?

313 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 01:03:12 ID:vaYIOMs2
世界の敵の敵 支援

314 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/04/08(火) 01:04:59 ID:iT6vIZCP
長すぎて、レス数が20を超える模様です。
支援よろしくお願いします!

 
 戦いは怖い。
 争いは悲しみを生むと知っているから。
 力は争いしか呼ばないから。
 私はそう教えられ、そう信じていた。
 けれど。
 けれど、それは違った。
 本当に、本当に怖いのは――
 力を、意志を、知恵を、心を手に入れて狂ってしまった人の心だ。


                           ――降り注ぐ雨の中で泣き叫ぶ少女の慟哭より





 僅か数秒にも満たない滞空時間。
 その終点である着地の衝撃は思っていた以上ではなかった。
 ガタガタと揺れるリニアレールの屋根に着地したスバルは、ゆっくりと言葉を紡いだ。

「凄い」

 今までのローラーブーツとは比べ物にならないサスペンション。
 僅かに足を動かしてグリップを試してみるが、イメージ以上に切れのある動きをしてくれる。

「凄いね、マッハキャリバー!」

『THANK YOU』

 足に嵌めたマッハキャリバーの本体から電子音で返事が返ってくる。
 それは心地のいい響き。
 物言わぬ機械ではなく、自らの意思を持つインテリジェントデバイスの声。
 もう一人の相棒と呼ぶに相応しいパートナーにスバルが笑みを浮かべた。
 瞬間だった。

「どきなさぁーい!」

「え?」

 上から聞こえる罵声。
 それに上を見上げて、認識するのは落下してくる相方の姿。
 ――の足。


315 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/04/08(火) 01:06:54 ID:iT6vIZCP
「うきゃぁっ!」

 咄嗟に飛び退いて、それを躱すスバル。
 それを掠めるようにドスンと着地するティアナ。爪先から降り立って、踵を、膝を、腰を曲げ、さらには両手を付いて
衝撃を逃がす着地体勢。

(あ、士官学校で教わった着地体勢覚えてたんだね)

 仰け反った体勢のまま、同じことを教わったはずのスバルがそう思いながら口を開こうとして。

「まったく、いつまでも突っ立てないでよ――」

 ズル。

「え?」

 仰け反った体勢から体を引き戻そうとしたスバルの体に風が吹いた。それは未だに張っていなかった耐風圧用のフィールドが
無い故に届いた大気の壁。
 それに押されると同時に丸みを帯びた列車の縁から片足が滑り落ち、味わうのは僅かな落下感。
 具体的に言おう。

 ――スバルが落ちた。

「ひゃぁー!」

「この、馬鹿!」

 成すすべもなく列車から滑り落ちようとしかけたスバルの手を、咄嗟に駆けつけたティアナが掴む。

「お、重いっ! アンタ、太ったんじゃないの?!」

「ひどーい!」

 体重に文句を言われたスバルが状況も忘れて反論しようとした瞬間、それ以上に響き渡る罵声がそれを叩き潰した。

「馬鹿言ってないで、さっさと上がりなさい!!」

「っ、了解!」


316 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 01:07:25 ID:UzpDe2lr
支援!

317 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/04/08(火) 01:10:15 ID:iT6vIZCP
 
 魔力供給。
 列車の壁を蹴りつけて、同時にホイールを回転。
 脳裏に三次元空間を連想、素早く足場の展開位置を思考し、体に刻み込まれたプログラムに素って魔法の呪文を唱える。

「ウイングロード!」

 たった1パネル。
 片足乗せられればいいほどの足場を蹴り出した足の下を形成し、スバルは宙返りをするように列車の屋根に二度目の着地を行う。
 高速で動き続ける列車の空から飛び立ったことで、慣性の法則に従い、ガリガリと火花を散らしながらスバルがブレーキを
掛けて止まる。

「うー、死ぬかと思った」

「こんな馬鹿なことで死んでどうするのよ!」

 涙目のスバルに、ピキリとこめかみに青筋を浮かべて怒るティアナ。

「えーと……さっさといくですよ〜」

 それを見ながら、管制役であるリインが静かにため息を付いた。

 もう片方の分隊とはまた異なるスタートを見せて、彼女達の戦いも始まった。




【Anrimited・EndLine/SIDE 2−5】




318 :魔術士オーフェンStrikers:2008/04/08(火) 01:10:42 ID:oaNqetZS
しーえーん!しーえーん!

319 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/04/08(火) 01:12:34 ID:iT6vIZCP
 
 走る、走る、走る。
 群のように、雨のように、降り注ぐ閃光の雨を、彼女はまるで滑るように、限りなく低い体勢で掛けながら、左手を掲げる。
 その手には輝く障壁。
 シールドを携えたまま突撃する盾兵のように、それでいて騎兵のような速度で、彼女は突っ走りながら、叫んだ。

「ティアナ!」

「OK!!」

 突撃する純白の烈風。
 それを援護するのは華々しく咆哮を上げる“二挺”の獣の雄叫び。
 右手に使い慣れたアンカーガンを、左手に新型デバイスであるクロスミラージュを構えながら、彼女は次々と弾丸を吐き散らす。
 それは無節操に見えて、スバルには当たらない軌道。
 上へと、左へと、右へと、打ち放つ弾丸は大まかな弾道制御を受けて、湾曲な軌道を描いて閃光を放つ無骨な金属塊たち
――ガジェットドローンへと撃ち込まれていく。
 されど、その一発一発はガジェットたちが展開するAMFに阻まれ、数瞬の時間を掛けながら分解され、本体には届かない。
 しかし、それでいい。
 それでいいのだ。
 何故ならば――

「おぉおおおお!!!」

 負担の掛かったAMFフィールドを紙切れのように貫く生粋のアタッカーが、彼女の相棒なのだから。
 迫る、走る、飛ぶ。
 ぶち抜いた侵入した列車内部の床を蹴り飛ばし、高速回転するローラーから火花を散らせながら、スバルは“壁を走る”。
 まるで重力を無視するかのように、彼女は足を踏み込めて、下へと引きずり込む重力の楔以上の力を回転するローラーに叩き込み、
 彼女は壁をも地面へと返る。
 曲芸のような軌道、時速60キロを越える速度で舞う魔道師に、ガジェットたちの襲撃は間に合わない。
 ただただ拳を振り上げて、迫る凶器の振るい手の襲撃を待つばかり。

「らぁっ」

 一番最初に迫った小型のガジェットが胴体から貫かれ。

「ぁあああ!!」

 それを貫いたまま、旋回するスバルの腕の旋回上に居合わせたガジェットが殴り飛ばされて。

「ぁあああああああああああああっ!!!!」

 カートリッジロード!
 薬莢を排出し、その手に巨大な拳と化したガラクタを携えたまま、スバルが咆哮を上げて拳を振り上げる。
 回りながら、廻りながら、繰る、狂、狂、狂、狂、と。

「ぶっとべええええ!!」

 もはや火花ではなく、烈火と呼ぶに相応しい豪快なスリップを刻みながら、スバルは空へ、
天へ、無数のガジェットたちが集う場所へと拳を振り抜いた。

320 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/04/08(火) 01:14:28 ID:iT6vIZCP
 
 生まれるは轟音。
 持たされるのは破壊の後。
 それはまさしく暴風。
 或いは嵐。
 下から上へと振り上げた腕の軌道上に沿って床板が剥がれ飛び、同時に放たれたリボルバーシュートの衝撃破が
複数のガジェットたちを巻き込みながら天井を破砕した。

「よしっ!」

 空が見える天井から壊れたまま飛んでいったガジェットたちを見つめて、スバルがガッツポーズした瞬間、その後頭部を
鋼鉄の凶器が殴り飛ばした。

「よし、じゃない!」

 ゴスンと鈍く痛々しい音を立てたのは、ティアナが振り上げたアンカーガンのグリップだった。

「あう! 痛いよぉ、ティアナ〜。なにするの?」

「幾ら列車へのダメージが許可されてるからって、破壊してもいいわけじゃないの! やりすぎて、線路を壊したら元も子も
ないのよ?!」

「壊したら駄目なのですよー!」

「ご、ごめん!」

 二人に責められてペコペコと頭を下げて謝るスバルに、ティアナは右手のアンカーガンを肩に乗せながらため息を吐いた。

「まったくもぅ〜」

 深く噛み締めるようにティアナはため息を吐いて、同時にカチャリと二挺のデバイスのトリガーに指を掛けた。

「休んでる暇はないみたいね」

「ほえ?」

「っ! 下ですの!!」

 ティアナが呟き、スバルが首を捻り、リインが叫んだ瞬間。
 それは起こった。



321 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 01:18:13 ID:vaYIOMs2
支援

322 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 01:18:25 ID:vHoxDhS7
支援する

323 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 01:19:37 ID:hDTAYXtC
夢境学園の続きはまだですか 支援

324 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/04/08(火) 01:20:02 ID:iT6vIZCP
 
 慌てる必要は無い。
 無駄は必要ない。
 ただ歩けばいい、速すぎず、遅すぎず、必要な速度で駆け抜ければいい。

「ストラーダ」

『Empfang』

 右手に握る己の道具であり、相方であり、己の手足となるべき武具の返答が返ってくる。

「行くよ」

 ビュン、と一瞬前まで頭の有った場所を貫く閃光を躱しながら、エリオは告げる。
 踊るように、ガタガタと揺れる列車の震動の流れに乗りながら、彼は手足を動かし、次々と襲い来る鉄腕を捌き、
躱し――掴んだ。
 高速で伸びる鉄の腕、その表面を掴み、皮膚表面に対する魔力コーディングがAMFで剥がれる、擦過傷で血が溢れる、
僅かな痛み、しかし問題は無い。

「切り裂け」

 伸びきった鉄腕を掴みながら、エリオは右手に持ったストラーダの穂先を下から振り上げるようにガジェットの胴体に
叩き込み――掴んだ鉄腕を重心に、撥ね上げた靴底をストラーダの刀身に叩きつける。
 列車の床を蹴り飛ばし、その反動も重ねた衝撃はガジェットの胴体に食い込んで――続いて起きる筋力強化と流れるように
鉄腕からストラーダを両手で握り、跳んだ。

「らぁっ!!」

 それは小柄な体だからこそ出来る技。
 誰が思いつくだろうか、己が突き刺した槍の刀身に、己の槍の握りを支えに逆上がりのように飛び上がり、その刀身に
蹴りを叩き込むというのを。
 一撃で切り裂けない、二撃でも壊せない、ならば三撃で切り裂く。
 非力だからこその発想だった。
 そうして、鋭い穂先を誇るストラーダの刃は下から天へと伸び上がり、ガジェットを切り裂いた。
 しかし、当然の報いとしてそれは受身も取れずに落下することになる。
 天へと伸ばした足を上げたまま、床へと背中から落ちたエリオを襲うかのように無数のガジェットたちが節足のように
鉄腕のアームを動かして、飛び掛る。
 このままであれば躱すことも出来ないエリオは無残な屍を晒すことになるだろう。



325 :魔術士オーフェンStrikers:2008/04/08(火) 01:20:26 ID:oaNqetZS
支援

326 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 01:23:44 ID:oaNqetZS
またやっちまった・・・支援

327 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/04/08(火) 01:23:51 ID:iT6vIZCP
 
「キャロ!」

 しかし、それは叶わない。
 ガジェットたちが飛び掛るよりも早く、エリオの腕を掴み、彼を脱出させる鋼鉄の鎖があったのだから。
 それはアルケミックチェーン。

「我が戒めの鎖よ! 果敢なる戦士を導く糸となれ」

 召喚と無機物操作を組み合わせた魔法。
 至近距離でガジェットに触れないかぎり、彼らが発するAMFに影響されない鋼鉄の鎖。
 それに掴まりながら、エリオは駆ける。
 躱すために大きく横にずらされ、列車の外へと飛び出たまま、その列車の壁を蹴りつける。
 ダン、ダダンと踊るように走って、走って、そして上へと引き上げる動きに従って、エリオは飛んだ。
 丁度ガジェットたちの後方の位置を陣取るように、少年の体が空を舞う、

「キャロ! 伏せて」

 言葉共に操作を放棄されるアルケミックチェーン。
 その一瞬前に固定化されていた鎖を蹴り飛ばし、エリオは旋回しながら、ストラーダの刀身に魔力結合を開始。
 大気を纏い、刃を纏い、鋭き、真空の刃を生む。
 願うは全てを切り裂く刃。

「ルフト」

 キャロが身を伏せるのを加速化された意識の中で見る。
 その安全を確認し、彼は己の役割を満たすために手を振るい――“その速度を上げる”。
 たった一瞬だけ、誰にも見えないほどの電撃の迸りを、皮膚表面に泡立てて。

「メッサー!」

 未熟な腕の筋肉繊維が千切れる悲鳴と共にストラーダを振り抜いた。
 それはいつか訓練の時に発した刃とは比較にならない鋭き刃。
 その斬撃はAMFを展開しているはずのガジェットたちを両断し、同時に起きるソニックブームに舞い上げられながら、
遥か彼方の列車後方へと吹き飛んでいく。


328 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/04/08(火) 01:26:56 ID:iT6vIZCP
 
「あ」

 同時に、グンと列車の慣性からも解放されたエリオも空中で後方へと流されかけて。

「エリオくん!」

 そのまま風に流されて、遥か彼方の列車後方に落ちようとしていたエリオの腕を、高速召喚したアルケミックチェーンが掴んだ。
 スルスルと慎重な動きで拘束の鎖が、エリオを列車の屋根にまで運び、着地させる。

「だ、だいじょうぶですか?」

 脳裏に落下死のビジョンを思い浮かべかけたキャロが、恐る恐るエリオに無事を尋ねた。

「うん、助かったよ。ありがとう」

 けれども、エリオはまるで何も感じてないように笑みを浮かべる。
 キャロは未だに気づいていない。
 その手から溢れる内出血の痛みすらも感じてないように。
 千切れた筋肉繊維が齎す激痛すらも悟られずに。

「それじゃ、行こうか−―って?」

 その瞬間だった。
 遥か先の車両の天井が吹き飛んで、その中から無数のガジェットの残骸が飛び出したのは。
 それらは幸いにもエリオたちの場所を通過する事無く、まるで不法投棄のような勢いで列車の左右に飛び散り、
未だに走り続ける線路の上へとガラン、ガランと落下していった。

「スバルさん……」

「ティアナさん……」

『派手にやってますね』





329 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 01:27:31 ID:0ItCqg69
支援


330 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 01:29:01 ID:UzpDe2lr
せっかくだから俺はアンリミテッド・エンドラインを支援するぜ!

331 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/04/08(火) 01:30:09 ID:iT6vIZCP
 
 などと後方のライトニング分隊に言われていることも知らずに、スターズの二人ともう一人は突然の奇襲に慌てていた。
 バリ、バリ、バリ! 床板から、壁から、天井の残骸から、銀色のアームが飛び出てくる。それは数十機にも及ぶ
ガジェットたちのアーム。
 それはまるで地獄へと誘う墓場の下の亡者たちの手のように、無数に、無数に、無数に飛び出て――彼女達に襲い掛かってくる。

「このぉ!!」

 トリガーを引きっぱなしに、無節操に魔力を供給しながら、掃射撃のようにティアナはその鋼鉄のアームを撃ち砕きながら、
その場を飛び退り。

「ひゃぁああ!」

 リインは慌てて空へと舞い上がって、難を逃れ。

「きゃぁあ!」

 反応が遅れたスバルの足に鋼鉄のアームが絡みつき、それを引き千切ろうとした瞬間に、その数を超えるアームが
彼女の体に絡みつく。
 その足に、その腕に、その腰に、その胸に、伸びたアームが拘束具のように彼女を縛り上げた。

「く、マッハキャリバー!」

『Axel!』

 魔力供給を開始し、マッハキャリバーが己の出せる最大回転速度でローラーを動かすも、その戒めは千切れない。
 疲れることを知らない、冷たい金属のアームがギリギリとスバルの体を破砕しようと強まって。

「前習え――前!」

「へ?」

 その瞬間聞こえた声に、スバルは反射的に従っていた。
 引き千切ろうとしていた腕を前に伸ばし、前習えの姿勢。
 そして、その瞬間駆け抜けたのは両手の僅か下を突き抜ける魔力弾の閃光。

「て、ええええ!」

「早く退くっ!」

 手の真下、すぐ真下を駆け抜けた魔力弾の輝きと微妙に焦げた手の痛みに怯えながら、スバルア慌てて床を蹴り上げて、
回転するローラーを魔力強化し、アームを切り裂き蹂躙する刃と変える。
 飛び上がりながら旋回する足の一撃に、伸ばされていたアームが薙ぎ倒されて、彼女はそれを見ながら――空を蹴って、
後方に下がった。

『Wing Road』

 蒼色の光の道を走り抜けて、彼女はティアナの元へと降り立つ。


332 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/04/08(火) 01:32:52 ID:iT6vIZCP
 
「あ、危ないよ、ティア!」

「しょうがないでしょ! 他に方法がなかったんだから!」

「あとなんで前習え、前なの!?」

「分かりやすいでしょ! ベルカ式の人、全員よくやってたじゃない!」

「それは教官が体育会系だったからなのにー!」

「そんなこと言ってる場合ですかー!!」

 どこもでもマイペースというよりも同じ態度な二人に、無数のガジェットたちに迫られているリインが泣き声交じりの悲鳴を上げた。
 そして、その声に二人がようやく回りを見渡し――目を合わせた。

「まったく、それじゃ仕方ないわね……あれやるわよ」

「うん!」

「へ?」

 あれ。
 意味深な言葉にリインが首をかしげた瞬間、その体をバシリとティアナが掴んだ。

「へ?」

 当然の事態にリインが首を傾げた瞬間、まずスバルが頭を下げた。

「リイン曹長! ごめんなさい!!」

 そして、ティアナが静かに告げた。

「下を噛まないでくださいね」

「へ、へ、へ?」

 そして、スバルが迫るガジェットたちを見つめながら、両手を組んで下に構える。
 そして、ティアナがそれに足を掛ける。

「いくわよ」

「おう!」

 迸る魔力の光。
 そして、リインがその意味に気づいた瞬間だった。

「脱出!」

 スバルの腕が撥ね上げられ、ティアナと掴まれていたリインが跳んだ。
 空高く。
 列車の屋根を突き抜けて。


333 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/04/08(火) 01:36:40 ID:iT6vIZCP
 
「ふえぇえええええ?!」

「アンカーワイヤー!」

 声を上げるリインを無視し、走り続ける列車の屋根に対し右手のアンカーガンを向ける。
 そして、トリガーを引いた。
 無機物操作が組み合わされたそのアンカーはまるで弾丸のような速度で列車の屋根に突き刺さり、同時に引かれるウインチによってティアナとリインの体が高速で落下する。

「ひゃぁあああああ!!」

 まるで列車による凧にでもされたかのような気分に、リインは悲鳴を上げて。

「リイン曹長、捕まって!」

「は、はいです!!」

 リインを胸元に押し付けてから、左脇下のホルスターに指したクロス・ミラージュを抜き放つ。
 ダン、ダン、ダンと低速の魔力弾を上空に撃ち放ち。

「HEVEN TO――HELL!」

 比較的簡易な逆ベクトルへの弾道操作を行い、ティアナとリインがアンカーで駆け抜けた後に、落下する魔力弾が
追撃しようとしていたガジェットたちに降り注いだ。
 ロクに狙いも付けていない弾丸だったが、それは直線的に追いすがるガジェットたちに直撃する。
 新型デバイスクロス・ミラージュの収束率はアンカーガンとは比べ物にならない精度を誇る。
 故にたった二発の魔力弾ですらAMFは分解しきれずに、その装甲に陥没を空けた。
 その成果を見る事無く、ティアナとリインは再び列車の屋根に降り立って。

「っ!」

「きゃぁ!」

 ドスンと殺し切れなかった衝撃にティアナは歯を噛み締めて、リインは悲鳴を上げた。

「ティアナ!」

 そこに、ティアナを飛ばした瞬間に、ウイングロードで追いかけてきたスバルが合流する。

「どうする!? 数が多いよ」

「そうね、とりあえず――」

 ワラワラと迫ってくるガジェットたちを見ながら、ティアナは告げた。

「このままだと切りがないから、予定通り先にコントロールを奪い返す! そして、その後に――エリオとキャロも交えて
全部ぶち壊すわ」

「わかった!」

「だから、まずは引く!」

「OK!!」

 そう叫んでティアナとスバルは奥の車両へと走り出す。

「うー、どう考えてもなのはさんの全力全開に影響されてるです〜」

 そして、その後を必死に追いかけながらリインは涙混じりに呟いた。

334 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 01:37:40 ID:+qJPPAL6
支援

335 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/04/08(火) 01:40:49 ID:iT6vIZCP
 
 ……やっぱり凄い。
 目の前で戦う少年を見て、キャロは思う。
 補助魔法を掛けているとはいえ、ただ一人でガジェットを切り裂いていく少年の姿に、キャロは尊敬と畏怖の混じった瞳を
向けていた。
 恐れる事無く立ち向かう勇姿は、キャロの理想だった。
 力に怯える事無く戦うことは、キャロにとって届かない世界だった。

 そして。

「はぁあああ!」

 頬を切り裂かれながら、ガジェットに刃を突き立てるエリオの姿はキャロにとって恐れでもあった。
 彼は何故戦うのだろう。
 彼は何故痛みを恐れないのだろうか。

「キャロ!」

「ハイッ!」

 口では答え、魔力を用いてアルケミックチェーンを操作しながら、彼女は思う。
 性別も、戦闘スタイルも、性格もまるで違うのに、同じ年頃の少年を。

「はぁああああ!」

 キャロが呼び出した鎖を掴み、自由自在に列車の上を走りながら、ストラーダを振るう少年。
 その速度は限界がないのか。
 その勇気に制限は無いのか。
 僅かに足を踏み出しただけも死に至るキルゾーンでありながら、彼は何時ものように、ただ平然と、相手を解体する。

「ギャウゥ!」

「フリード。駄目」

 己も戦いたいように唸り声を上げるフリードを宥めすかせる。
 フリードの火炎は至近距離で戦うエリオをも巻き込む。
 そして、同時に彼女達がいるのは列車の後方であり、進むべきは前方。
 つまり強風吹き荒ぶ風下。
 そこで魔力によって具現化された炎とはいえ、そのブレスが味方に牙を向く可能性が高い。
 だからこそ、キャロはただ一人エリオを戦わせるはめになっている。

「これで、どうだ!」

 思索を重ねながらも操作を続けたアルケミックチェーンに戒められたガジェットの胴体に、渾身の力を篭めたストラーダの穂先が
深々と突き刺さる。
 同時に目に見えるほどの紫電が放出され、ガジェットの内部から火花が吹き上がった。

336 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/04/08(火) 01:44:20 ID:iT6vIZCP
 
「大体、これぐらい、かな?」

 目に見えるガジェットが居なくなったのを確認し、エリオが呟く。

「そうですね、もう見える範囲にはいないみたいですし」

 軽く索敵魔法を起動。

 ――結果、熱源反応及び魔力反応無し。

 あるとしたらスバルとティアナが居る先頭車両付近に反応があったけれど、索敵している間にも次々と反応が消失しているから
大丈夫だろう。

「えっと、怪我は大丈夫ですか?」

「え?」

「頬の傷……あと、手も」

 切り裂かれた頬の傷、ポタリと血を垂らしていた手。
 それが心配でキャロはゆっくりとその手を見ようとしたのだが。

「え?」

 “そこに傷はなかった”
 有るのは赤く固まっただけの血の残骸。
 傷はどこにもない。

「どう、して?」

 ワケが分からずに、キャロが見上げた先にはいつもの笑みを浮かべたエリオの顔があった。
 そして、気づく。
 先ほどまで流れていたはずの血が――“止まっていることに”。

「大丈夫だから」

 優しく、教えるように、エリオは告げる。

「僕の体は――“今を生きるための肉体だから”」

「え?」

「さ、レリックを回収しよう」

 キャロの疑問を振り払うように、エリオは踵を返して、レリックが積まれているとされる七号車に足を近づけた。
 僅か数メートル。
 ただそれだけ近づいただけなのに。

『起動反応!?』

「え?!」

『反応パターン――アンノウン! 気をつけて、新型よ!!』

 それは目覚めた。
 凶悪な機械の手足を生やした、無骨な、鋼鉄の守護者が咆哮を上げた。


337 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 01:47:02 ID:vaYIOMs2
逆襲のガジェット 支援

338 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/04/08(火) 01:48:05 ID:iT6vIZCP
 
 それは今までに無いサイズだった。

 丸っこいボディには六本にも及ぶ節足動物のような足が生え、まるで列車を住処としていた化け蜘蛛かとキャロは一瞬錯覚する。
 ギチギチと震えるボディに備え付けられたアイカメラは赤い光を放ち、それはまるで血のように赤かった。
 そして、感じるのは無機質な殺意。
 重厚な金属を見た人間特有の恐怖。
 人は戦車を、飛行機という、動くはずの無い巨大な金属の塊を始めた見た瞬間、萎縮するという。
 それは人間に本能に刻まれたありえないものへの忌避。
 そして、百年もの質量兵器を禁じ、魔法文化を発達させた世界の住人にして、本来は科学文明とは相容れない部族の暮らしを
行っていたキャロに、それは恐怖を感じさせるのには十分だった。

「ぁ、あ、ぁ」

 歯がカチ鳴る。
 心臓が爆発したかのように鳴り響く。
 汗が吹き出す。
 恐怖に心が、本来は脆い心が潰れそうになる。

 されど、それを繋ぎとめたのは。

「ギャウー!」

 彼女を愛しみ、彼女と共にあり、彼女を護ると誓った幼き竜の咆哮だった。

「フリード……」

 いつもいつも支えられた幼竜の声に、キャロは唇を噛む。
 そして、目の前を見る。
 決してくじけぬために。

「――大丈夫?」

 そして、それらをただ静かに見ていたエリオが口を開く。

「ハイ!」

 キャロは答える。
 力強く、意志を篭めて、負けないように勇気を振り絞りながら。

「そう、ならよかった」

 ガシャン、ガシャンと足を動かして迫る新型ガジェット。
 その前に立ち塞がりながら、エリオは静かに告げる。

「でも、大丈夫だよ」

 彼は告げる。
 鋼の武器を手に、平然とした表情を貼り付けて、いつものように告げる。

「君は傷つけさせないから、僕に課せられた役目がそれだから」

 それは本当にキャロを思っているのだろうか。
 ただただ役割を重視し、ただただ戦う彼は何を見ているのだろうか。


「それがガードウイング。エリオ・モンディアルが演じるべきロールだから」

339 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/04/08(火) 01:49:40 ID:iT6vIZCP
 
 
 その言葉が戦いの始まりだった。
 言葉が終わった瞬間、振り上げられた脚の一本。
 それがエリオを叩き潰そうと振り下ろされ、同時に残像が残る速度で消えたエリオの元居た場所を砕く。

『Sonic Move』

 速度に遅れて、無機質な電子音がその場に響き渡る。
 それは声すらも置いて行く高速機動の始まり。
 そして、残像を残すほどの速度で走るエリオに迫るのは無数の脚だった。
 擦れるような足音と破砕する足音がタップダンスのように踊り狂う。
 振り下ろされる足を横に躱し、薙ぎ払うように迫る蹴撃を跳ねて回避し、並ぶように迫る脚部を高速で刻むステップで避ける。

「ぁあああああああああああ!!!」

 避けながら、エリオはストラーダを振り抜く。
 加速に乗って、ガジェットの自重を支える脚の一本を切り裂かんと振り抜いて――

「っ!?」

 返ってきたのは切断の感覚ではなく、硬い痺れるような衝撃。
 見れば入ったのは切り傷程度の損傷のみ。到底入ったとはいえない威力。

「エリオくん!?」

「硬い!!」

 キャロが悲鳴を上げて、エリオが動揺の声を上げた瞬間、降り注ぐのは執拗な脚だった。
 串刺しにせんと迫る鋼鉄の柱たち。
 まるでくい打ちきのようにエリオの立っている場所に次々と突き刺さり、その度にギリギリで避けるエリオのバリアジャケットが
千切れ飛んで、同時にそのかすっただけとはいえ味わう衝撃に吹き飛ばされる。
 最後の足をよけ切った時には、かわしきれずにエリオはゴロゴロと列車の上を吹き飛んで。

「フリードォオ!」

「ギャゥウウ!!」

 涙を浮かべながら叫ぶキャロの絶叫に答えるように、真っ赤に燃え滾る火炎を凝縮したような紅がフリードの前に集い。

「≪ブレスト・フレア≫!」

 解放された烈火が、真正面からガジェットに直撃した。
 それは鋼鉄すらも焼き焦がす紅蓮。
 少しは通じたか、そう願ったキャロの目に見えたのは。

「え?」

 いささかの動きも止めずに、歩き出すガジェットの姿。
 真っ赤に燃える炎を物ともせずに、キャロとフリードに迫る巨影。


340 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/04/08(火) 01:50:29 ID:iT6vIZCP
 
「く、アルケミックチェ−ン!!」

 召喚し、呼び出した鋼鉄の鎖。
 それがガジェットを拘束したかと思った瞬間、あっさりと引き千切られる。

「嘘」

 打つ手がなくなった。
 そして、迫る、迫る、迫る巨影。
 その脚が、その影が、その重圧が、キャロに牙を向けようとした瞬間。

「ギャゥウウウ!!!」

「フリード!?」

 飛びつきながら炎を吹き付けるフリード。
 幼い体で主を護ろうと、敵を焦がさんと、炎を吹き付ける。
 されど、無駄。

 無機質なセンサーの動きと共に跳ね上がれた脚が、その幼竜の体を弾き飛ばす。
 悲鳴を上げて、大切な友達が傷つけられる。

「フリードォ!」

 落下していく幼竜に手を伸ばそうとした気づいた。
 目の前まで迫っているガジェットの姿に。

「いや、いや、いや!」

 心が壊れそうになる。
 恐怖が心を押し潰す。

(壊してしまえ)

 と誰かが囁いた。

(幼竜を、フリードを解放しろ)

「駄目! あの子は、あの子は!」

 未だに未熟な自分では破壊するだけだ。
 悲しみを生むだけだ。
 それを知っていて、わたしは、わたしはそれをしたくない。

 けれど――

(死にたいの?)

 死にたくない。
 死にたくないしにたくないシニタクナイ。

 ァア、ァア、アア、あああああああああああああああああああああああああああ!!!!

「フリィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ」


「――させないよ」

341 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/04/08(火) 01:52:09 ID:iT6vIZCP
 
 
 壊れるままに、怯えるままに、心を解放しようとした瞬間、目の前に誰かが立った。

「え?」

「言ってたじゃないか」

 それは槍を構えた一人の少年。
 大きな影の前に立つたった一人の戦士。

「僕は」

 そう告げる、ガジェットがゆっくりと装甲を開く。
 まるで何かを取り出すかのように。

「君を」

 そして、開かれた先には――


 ――バァンッ!


 ベチャリ。

「え?」

 キャロが感じたのは温かい液体だった。
 そして、耳に響いたのは轟音だった。
 そして、見えたのは赤い、赤い雨だった。

 目の前に立っていた少年が、赤い雨を散らした瞬間だった。

「エ、リオくん?」

 彼女は知らない。
 今ガジェットから放たれたのはショットガンと呼ばれる散弾銃の一種なのだと。
 その散弾が、一瞬でバリアジャケットを貫通し、少年の血肉を弾き散らしたのだと。
 けれど、分かることがある。
 それは痛みを伴う、血を撒き散らす、怪我なのだということに。

「ァあ、ぁあ、あああああああああああ!!」

 絶叫が響き渡る。





342 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/04/08(火) 01:57:04 ID:iT6vIZCP
 
「スバル?!」

「聞こえた!!」

「行きます!」

 それは先頭車両で戦っていた三人の耳にも届く絶叫。
 そして、彼女達は急ぐ。
 目の前で群がるガジェットたちを蹴散らしながら。
 けれど、間に合わない。

 ――その瞬間には。




 壊れる。
 彼女が壊れる。
 目の前で傷つく人の存在に、彼女は悲しみに心を引き裂かれかけて。

「大丈夫だよ」

 声がした。

「え?」

 傷ついた人が、血まみれの少年が、声を上げる。

「僕は、これぐらいじゃ――死ねないんだ」

 血を流しながら、エリオはストラーダを構える。
 散弾の大半を防ぐ盾となった槍を構えて、告げる。

「硬いよね」

 彼は告げる。

「力が足りないよね」

 彼は言う。

「だから」

 動き出すガジェットに笑いながら、彼は電撃を迸らせる。

「足す」

 それはまるで人間を止めたかのようだった。

343 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/04/08(火) 01:58:08 ID:iT6vIZCP
 
『Sonic Move』

 静かな電子音。
 それが響くと同時にエリオが血を撒き散らしながら姿を掻き消して――同時に“その足場が陥没した”。
 キャロにそれが見えたのは霧のように迸る赤い影のお陰だったのかもしれない。

 それは一言で言えた単純な刺突だった。
 赤い影が一直線に、ガジェットに激突した。
 一言でいえばただそれだけ。
 ただ違うのは――その速度のみだった。

 それはあまりにも速過ぎた。
 弾丸のように、風のように、砲弾のように。
 否、そんな形容詞ですら追いつかない速度。
 ただただ速くて、音速の壁すらも突破するかのような馬鹿げた速度。
 人が認知することも許されない、絶対的な速度で、それは行われた。

「さようなら」

 硬かったはずの装甲。
 貫けなかったはずの敵。
 その胴体を、深々と切り裂いて、貫いて、彼は立っていた。

 全身から血を流しながら、両手から血を溢れさせながら、毛細血管を破裂させた脚で立ちながら、彼は告げた。

「僕の敵」

 紫電が迸り、眼前の機械を破砕させた。
 いつまでも変わらない表情を浮かべたままで。




344 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 01:58:16 ID:vHoxDhS7
睡魔支援

345 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 01:58:36 ID:IDX9LgVp
GDは試作の多脚か、

346 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/04/08(火) 01:58:48 ID:iT6vIZCP
 
「列車内部に熱源反応なし! 無事任務達成しました!!」

 その瞬間、ロングアーチの面々が沸いた。

「うんうん、はらはらすることもあったけど、なんとか解決やね」

「そうです、ね」

 はやてとその副官であるグリフィスが苦笑を浮かべる。
 なんとか任務が終わった。
 あとは空のガジェットを掃討するだけだが、それも時間の問題だろう。

「エリオ君ずいぶんと怪我してるみたいやから、医務室のシャマル用意しておいてな」

「はい」

 そのままテキパキと任務後の指示をはやてが告げようとした瞬間だった。

「え?」

 レーダーを見つめていたアルトが声を上げた。

「待ってください!!」

「っ!? なんや!」

「熱源反応が突如出現!! 進路――リニアレールに向かってます!」

「なんやって!?」

「モニター出します!」

 そう告げられて、操作されたモニター。
 そこに映し出されたのは――




347 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 01:58:51 ID:+qJPPAL6
寒気のするエリオ支援

348 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 01:59:18 ID:vzV7S01Y
支援

349 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/04/08(火) 01:59:41 ID:iT6vIZCP
 
「ほらほら、目的地が近いッスよー」

「うるせえ! 黙って運転しろ!」

 走る、走る、走る。
 線路に沿って、一台の奇妙な機械が空を浮かんで疾走していた。
 それはリニアレールの速度にも及ぶ高速。
 そして、その上には風景に溶け込むようなシーツが被せられていた。

「んー、そろそろッスかね?」

「あー、見えてきたな」

 二人の声。
 それは疾走する奇妙な機械の上から響く二人の女性の声だった。
 その進路の先には未だに疾走を続けるリニアレールの姿。

「んじゃ、そろそろ」

「ああ、行ってくるわ」

 機械がバーニアを吹かし、線路から滑走していた位置からいっきに山脈方向へと駆け上がる。
 そして、それ共にグングンとリニアレールとの距離を縮めた瞬間。

 バサリと、シーツの中から一つの影が飛び出した。
 それは人影。
 高い高い高度から飛び降りた一つの影。

 それは一直線にリニアレールへと下降し。

「アンカーチェーン!」

 その“右手”から飛び出した一本の鎖が、列車の屋根に突き刺さる。
 同時にそれを引き寄せながら、人影が落下する、落下する、飛んでくる。
 風を切り裂いて、音を切り裂いて、笑い声と共にそれは舞い降りた。


350 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/04/08(火) 02:02:00 ID:iT6vIZCP
 
「え?」

 そして、見上げるマヌケな顔をした奴を笑いながら、その人影は脚に備え付けられたノズルを吹かしながら――着地した。

「なっ!?」

 轟音を立てて、歪な傷跡を刻みながら、それは列車の屋根に降り立った。
 火花を散らしながら、狂、狂、狂、狂、クルクルと。
 回りながら、それはようやく止まる。
 それは歪な鋼鉄で覆われた左手を持っていた。
 それは無骨なガントレットで覆われた右手を持っていた。
 上半身にはタクティカルベストと呼ばれる防弾ベストも兼ねたベストを付けて、その下に動きを制限しないスパッツを履いた――少女。
 そう、それは少女だった。
 目に付けたゴーグルで顔は隠れていても、その僅かに膨らんだ胸は、しなやかな肉体は、紛れもない少女のもの。
 そして、彼女は告げる。

「さあて、始めようか」

 ニヤリと笑みを浮かべ、彼女は笑う。

「追加ラウンドの始まりだ!」

 そう告げて、彼女は手足から熱い蒸気を噴き出す。

 それが彼女達機動六課――奇跡を行使する魔導師たちと。

 奇跡には届かない人造人間たちのファーストコンタクトだった。



 ―― To Be Next Scene SIDE 2−6



351 :アンリミテッド・エンドライン ◆CPytksUTvk :2008/04/08(火) 02:05:26 ID:iT6vIZCP
ようやく投下完了……
28KBもの大容量でした。
今夜夜更けまで支援ありがとうございます。

原作とは違い、ナンバーズは早期投入です。
次回は列車編の後編。
そして、新たなステージへのプロローグです。
三番目の正義がようやく姿を現します。
何故エリオがこれほどまでに壊れているのか、そしてその戦闘能力の秘密はいずれ分かる予定です。
ご拝読なさってくださったみなさん、ありがとうございました!
(独り言、三時間で28KBも書くもんじゃないな)

352 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 02:09:32 ID:IDX9LgVp
会社のES書きながらGJします!
お疲れ様です。

353 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 02:16:56 ID:UzpDe2lr
GJっしたー!

エリオ君に鳥肌がスタンディング!!
そしてヒロインしているキャロに燃えた(誤字に非ず)

次回もクールでブギーな展開を期待してますぜ!

354 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 02:50:33 ID:D+vauqte
この感じはなんだろうなあ……幼女の前で自覚的すぎるというか、
……ああそうだ。エリオが子どもだって事忘れてたんだ、私。っとGJ

355 :炎の魔剣とツバメの魔剣 ◆dD8Oyl4Ch. :2008/04/08(火) 05:27:12 ID:+URv4iL1
 道のない道を歩く、というのはいかなシグナムにとっても初めての体験だった。
 無論、彼女とて魔法使いだ。空を飛び、虚空を踏みしめることなど児戯にも等しい。
 だが、それはあくまでも魔法に頼った上での話だ。翼のない鳥が、エンジンのない飛行機が空を飛べないよう
に、人はただそれだけでは重力からは逃げられない。
 つまり、シグナムは今空を飛んでいない。「足場のない道」を歩いているのだ。
 それも、彼女が意図しないところで。
 そこは白い闇と暗い光に覆われた一つの世界だった。人が理解できる色彩を遥かに凌駕凌駕凌駕。瞳が捕らえ
るものは何もなく、だというのに先が見通せるという矛盾。
 上もなければ下もなく。
 どこまでも昇っているようでもあり、どこまでも沈んでいるようでもある。
 恐らくは、時間の概念すらもここでは通じない。シグナムはもはや自分がいつからここにいるのか。どれだけ
この閉じられた世界にいるのか、理解できなくなっていた。
 正気、なのだろうか。
 暗がりに閉じ込められれば、人は容易く狂気に落ちる。いかなヴォルケンリッターといえど、その精神力には
限りがある。
 まして、シグナムはいつから、どうしてここにいるのかすら理解できていないのだ。
 なら、彼女がもう狂っていたとしても何の不思議もない。
 だが――
 それを全て斬り捨ててこそシグナムはシグナム足りえる。
 どのような困難であろうと、彼女は心の中に一振りの剣があれば事足りる。
 万難に全力を賭して当たってこそのベルガの騎士。
 彼女を狂わそうとするのなら、それこそ主を奪うより他あるまい。
 ならば、

「レヴァンティン」

 己が相棒が自らの声に答えることがなくとも、そしてなぜか魔法が使えなくとも、ただ刃があるだけでシグナ
ムが正気を保つには十分だった。
 そう。正気を保っているからこそ、彼女はこの闇の先に誰か/何かいることに気付いたのだった。
 あえて動かぬ相棒に声をかけたのは、己の体に染み込んだ戦闘前の儀式のようなものであり、そしてこの声が
この先の何かに届くようにと狙ったからだ。
 声に反応し襲い掛かってくるならそれでよし。襲い掛からぬならそれもまたよし。
 今シグナムが必要とするのはこの世界の情報。それこそ右も左もわからぬとあっては、受身でいられるはずも
ない。
 剣を構え、シグナムはこの世界に来て初めて足を止めた。一秒、二秒と通用しない元の世界での時間を心の中
で数える。三秒たってもまるで反応がないようならば、こちらから打って出るつもりなのだ。
 だが、結果としてその思いは無駄になった。

「……へえ、ずいぶんと変わった剣を持ってるんだな」

 その声に答えるように、闇が茫、と開く。その間を縫って出てきた相手の姿を認めると、シグナムはわずかに
眉を顰めた。
 白いシャツに黒いズボン。それはまだいい。しかし、その上に女物の赤い小袖を羽織るとは一体どういう了見
なのだろうか。ましてそれを着ているのが男などと。
 とはいえ、シグナムの注意を真にひきつけたのはその突拍子もない格好ではない。実際、男の顔はどこか中性
的な色を持つ少年のようなので、それほど忌避感はない。
 その顔に相反するのは、腰元に刀を帯びた刀である。

356 :炎の魔剣とツバメの魔剣 ◆dD8Oyl4Ch. :2008/04/08(火) 05:28:00 ID:+URv4iL1
「貴様、何者だ。まさか、ここの主か?」

 警戒もあらわに、まだ距離はあるというのに切っ先を向けるシグナムに、男は笑って手を振った。

「いや、俺はそんな上等なもんじゃない。しかし主か。そんな言葉が出てくるってことは、アンタここは初めて
みたいだな。
 なるほど、それじゃあ確かにこんな真っ暗闇を歩いていたのにも合点がいく」

 わずかに嘲笑の色を顔に残したまま、男――やはり少年と呼ぶには難しい――は、どうしたもんか、つぶやき
左手で刀の柄頭をとんとんと叩いた。
 シグナムが見たところ殺気は、ない。純粋にただ考え事をしているだけのようだった。

「……どういう意味だ」

「そうだな、わかりやすくやってみようか」

 そういうと、男はすっと息を吸い、瞳を閉じた。
 瞬間、

「なっ!?」

 世界は一変していた。
 あわててシグナムは目の前の男への警戒も忘れて辺りを見回した。
 打ち捨てられたどこかの高層ビルなのだろうか。むき出しの鉄筋とかなりの年月に晒されたからだろう風化し
ひび割れたコンクリート。空を見上げれば、崩落した天井から満天とはいかないが夜天に星が覗き、満月の光が
うっすらと差し込めている。
 無論、時間はおろか重力もその役割を取り戻していた。間違いなく、ここは実世界と同じ法則で動いている。
たった先程まで、あれほど異邦だったというのにだ。

「どうよ、綺麗だろ?」

 その笑みを含んだ声に、シグナムはようやく正気を取り戻した。と同時に男から距離を取るために大きく一歩
飛びずさる。

「……やはり貴様が主か」

 幻術か、結界か、あるいは本当に世界を一つ作ったのか。
 そのどれでもよかった。ただ目の前の相手が敵であると言う確証さえ持てるなら。

「残念。違うって言ったろ。人の話はきちんと聞きましょうって教わらなかったのかよ。
 ただまあ、完全に間違いって訳じゃあない」

「なら――」

 どうして私をここに呼んだ――そういおうとしたシグナムの機先を、突き出した男の手のひらがさえぎった。

「完全に間違いじゃないって言うのはだアンタもここの主だっていう意味だ。いや、俺やアンタだけじゃない。
 ここにいるやつらは全員、この世界にいないやつも全員この世界の主なんだよ。だからまあ、思えば大抵のこ
とは何とかなる」

 飄々と男は続ける。

「なんだっけ。あんたは聞いたことないか? 世界中の人間は根っこのところで全員意識がつながってるって話。
 俺も死ぬ前はそんなこと信じてなかったんだけどさ、どうやらここがそうらしい」

 シグナムを煙に巻くように話しているのだろうか。要領を得ない――あるいは要領を得すぎているからこそ単
純な言い方に、シグナムの理解が追いつかない。

「どういう、ことだ?
 ……それに、私は死んだのか?」

357 :炎の魔剣とツバメの魔剣 ◆dD8Oyl4Ch. :2008/04/08(火) 05:28:27 ID:+URv4iL1
「いや、俺も詳しくは知らねえし、わかることもねえよ。たまたまここで斬り合ったヤツがそういうのに詳しか
ったから教えてもらっただけだ。
 で、まあ俺なりに簡単に言うと、だ。ここは斬り合いの聖地みたいなものだ。世界中の生きてるやつ、死んで
るやつ。その中でも斬ったはったばかりやって多様なやつがここに来るらしい。あんたが死んだ記憶がないんな
ら、闇討ちでもされてない限り生きてるんじゃないか?
 まあ、俺は本当に死んでるんだが」

 全く、迷惑な話だ――と、男は唾を吐き捨てた。

「俺は伊烏だけで十分だってのによ」

 ぎり、と歯軋りの音が放れたシグナムのところまで響く。
 これが演技だとしたらたいしたものだが、おそらくはこの怒りは本物なのだろう。これまで見せてきた感情が
全て偽物と思えるほど、それはどこまでも純粋だった。
 だからこそ、わからないことがある。

「望んでここにいるのではないのか?」

 そう。斬り合いをした、とまでいうのなら、それこそ男はこの世界を受け入れているように見える。
 そしてそれは真実なのだろう。この廃墟を生み出す手際は随分手馴れていた。

「おいおい、よく考えてしゃべれよ。あんたはここに望んできたのか?」

 なるほど。確かにとシグナムはうなずいた。
 彼女がここにいるのは彼女のあずかり知らぬところでの出来事である。自分がそうなのだから他人もそうであ
ると考えるのは早計だが、自分だけが特別だと考えるのも同じことだ。

「そうか。失礼をした。しかし望んでいないものまでどうして――」

「言ったろ。世界中の人間の意識が繋がってるって。本人が望まなくてもどっかの誰かが、あー、こいつこうい
うところにいないかな、って考えればそれで十分なんだよ。
 それこそ、そいつが生きているか死んでいるか、過去も未来も関係なく無理矢理な」

「なるほど。確かに迷惑な話だ」

 男の言の通りだ。望まぬものまで無理やり引き込むとなれば、そこはもはや聖地でなく、地獄にも等しい。
 人々の想念が作り出した世界。つまり、この場にいる全員が意識だけのデッドコピー。
 肉も心も持たず、ただ虚ろに斬り合いの果てに消えていくだけ。
 ここでは本物も偽者の区別もない。百の想念が千の妄想が至る先では、一人の意識などまるで意味を成さない。

「なるほど、つまりわざわざこうして説明してくれたのも、その誰かの望みであり――」

 シグナムが腰を落とす。峰を下に刃を上に。弓を引き絞るように体を捻り、半身になって男に対峙する。

「話が早くて助かる。嫌なことはさっさと済ませちわないとな」

 言いながら、男の左手が鞘に伸び、唾鳴りも立てずに静かに鯉口を切った。
 シグナムの剣とは違う、白々と月光を映す刀日本が夜の中に輝く。

「騎士の礼儀だ。名乗ろう。ヴォルケンリッターがシグナム、参る」

「名乗り、ね。そんなものには意味はないが……。武田赤音だ。せいぜい地獄に行ったら忘れてくれ」

 そうして、二人の剣士の戦いが始まった。

358 :炎の魔剣とツバメの魔剣 ◆dD8Oyl4Ch. :2008/04/08(火) 05:29:15 ID:+URv4iL1
 低く重心を落としながら、すり足で徐々に間合いをつめる。
 剣道場での経験が役立った。
 シグナムが納めた剣術は、やはり主に魔法を前提としたものである。無論魔法がなくとも他の追随を容易く許
すようなものではないが、それでもやはり、根底には魔法やバリアジャケットの存在が大きく根ざしている。
 翻って今はどうか。魔法は使えず、デバイスも動かないためバリアジャケットとしての機能は望むべくもない。
 純粋に剣の技量だけがこの勝負を決めるのだ。わずかな経験でも命がかかっているともなればありがたい。
 つ、と緊張で額に汗が流れた。
 真剣勝負ともなれば、その重圧は精神を削り、容易く体力を奪う。まして今ここは敵が作り出したシグナムの
見知らぬ場である。
 無論、斬り合いを望まれているこの場にて罠があろうはずもないが、わずかではあるが、知っているか知らな
いかという違いは、命をはかりにかけていることを考えればとてつもなく大きい。
 その差は、体力という面において長くなれば長くなるほど重くのしかかってくるだろう。
 それゆえ、シグナムは短期決戦を望んだ。
 幸い、獲物の間合いはシグナムが持つレヴァンティンの方が赤音が持つ刀よりも幾分長い。体格も160センチ
に届くか届かないかといった赤音では、シグナムとさほど差はない。
 体重もそれほど極端な差はないようで、それは純粋な筋力においても同様と言えた。
 つまり、単純な斬撃の威力ならば、獲物のさも考えればシグナムのほうが優れていると言っていい。先手を狙
うには十分すぎるほどの理由だ。
 腕を捻ったようにレヴァンティンを突き出すこの構え。初動にわずかなラグを生むが、表裏を問わず、袈裟懸
けで打ちかかる際にはこれが大きな威力に繋がる。
 ましてそれがシグナムのレヴァンティンの一撃ともなれば、細身の日本刀では受けることすら困難を極めよう。
 シグナムが先手を取る限り、彼女の勝利は揺るがない。だからこそ機を見極めるために慎重に間合いを詰めて
いるのだ。
 一方の赤音といえば、抜いた刀を右肩の上、柄頭を持つ左手を顔の高さまであげた八双にも似た構えを取って
いた。その攻撃的な構えが意味するところは、彼もまた同じく先手を狙っているということ。
 恐らくはわかっているのだろう。受身に回れば自身が不利になることを。
 とはいえ――
 シグナムは苦笑した。確実に先手を狙っているともなれば、それこそ相手に不利を教えているようなものでは
ないか。
 わかっていても避けられないようなものというのは確かに存在する。
 たとえば高町なのはのディバインバスター。広範囲をあまねく破壊するあの砲撃を前にすれば回避はほぼ不可
能に近い。もっとも、防ぐことは不可能ではないし、発動前に効果範囲から抜け出すこともできなくはない。
 だが、剣ともなれば話は別だ。刃が届くのはその切っ先が触れるまで。魔法でも使えば話は別だが、この場に
おいてそれを考える必要はない。
 剣とは畢竟騙しあいに尽きる。どれだけ剣速を磨こうと、その狙いを看破されては駄剣に落ちる。
 後の先をもらう――あっさりとシグナムは当初の狙いを変えた。お互いが似たような獲物ともなれば、多少の
間合いの差こそあれ、相果ててしまっても不思議はない。ならば、
より安全に勝てる方があると言うのならそちらを選ぶべきだろう。
 大きくひざを曲げたまま、シグナムは一刀一足の間合いにすっと足を運んだ。

「ッシッ」

 短く呼気の漏れる音が耳に届く。しかし音よりも早く、シグナムは曲げた膝を後ろへと伸ばし、体を大きく後
ろへと引いていた。
 これで仕舞いだ。間合いを狂わされては、いかな剛剣と言えど意味はない。先手を奪うことばかりに気をとら
れ、焦って飛び込んできた相手の剣は空を斬り、その後の一瞬の隙をシグナムは見逃さない。
 随分とあっさりとした決着だが、実際のところ真剣勝負とはそのようなものだ。張り詰めた緊張が続いた後、
あっさりと一合で決まることなど珍しくない。
 武田、赤音か――夢のように忘れると言われたことを思い出し、せめてわずかなひと時だけでも相手の名と顔
を覚えてやろうと、意識をわずかにそちらへ向けた。

359 :炎の魔剣とツバメの魔剣 ◆dD8Oyl4Ch. :2008/04/08(火) 05:30:00 ID:+URv4iL1
 その瞬間、シグナムの背筋に戦慄が走った。
 その顔に、嘲笑が浮かんでいるのだ。読みきったのは俺だ。負けるのはお前だ、と。
 事実、シグナムの目測よりも――わずかに、赤音の輪郭が大きい。なぜ、と思う必要はなかった。
 剣術が騙しあいというならば、その要ともなる間合いを奪う技などいくらでもあるのは当然だ。
 大事なのは、シグナムは今まさに斬られんとしている。その一点だけである。

「く、そっ!!」

 つぶやいた悲鳴は言葉にもならず。後の先の狙いも捨ててシグナムは無理矢理更に体を後ろに伸ばした。体勢
が乱れ、相手の続く二撃目に対処できないような避け方であり、悪手と言ってもいい。
 だが、しなければ死ぬと言うのであれば他に手はない。
 剣先が外れるように、とシグナムは祈った。いや、外れぬまでもない。せめて致命的な一撃さえ避けれれば。
 襲い来る痛みに備え歯を食いしばり、銀閃が過ぎるのを待つ。
 それは刹那にも満たない時間ではあったが、死を前にした集中が何倍にも引き伸ばした。
 だが、一秒を七十五度数えられるほど時が過ぎても、襲い掛かる痛みはやってこない。
 賭けに勝ったのだ。読み負けた上で傷一つ負わなかったのだ。
 あの嘲笑。それが赤音から勝利を奪ったのだ。あれさえなければ、シグナムとてこうも見事にかわしきれはし
なかっただろうに。
 そして、今度こそ――本当に終わりだ。
 一合ではなく、二合ではあったが、それでも生半な十合の打ち合い以上内容の濃い戦いだった。
 いや、しかし。やはり、一合で決着がついたと言うべきなのかもしれない。
 なぜなら、赤音の振るった剣は、一撃にして二撃。彼だけに許された必殺の魔剣/システム・オブ・アーツだ
ったのだから。


「ふう、これで終わりか」

 切り上げた己が刀についた血を振るって赤音は息を吐いた。
 薄氷の上を歩くような勝利だった。相打ち覚悟で相手も先手を狙えば勝てたとは限らなかったし、そもそも初
撃は赤音の主観では完全に捉えたはずの一撃だったのだ。
 そうでなければ嘲笑など浮かべはしない。鍔目返しに切り替えられたのは、超反応を持つ赤音をしてもぎりぎ
りのタイミングだった。もしできなければ、それこそ無様に斬り捨てられていたに違いない。

「全く、本当に俺は伊烏だけで腹いっぱいだってのに、これ以上食わせて胃もたれしたらどうするんだ。食べす
ぎで太ってこの美貌が失われたら世界の損失だぞ、こら」

 言って、彼は懐から包帯を出した。
 血に濡れた刀の中ほどを、器用にくるくると巻いていく。
 ――この先の結末を語る必要はない。
 彼はいつものように腹に収めたものを吐き出すだけだ。


暗転/


 そうしてシグナムは目を覚ました。目覚ましもなく、鳥の声も聞こえない。
 時計を見るまでもなく、部屋の中の薄暗さから未だ夜明け前だと見当をつけた。ここまで早い時間に目覚めた
ことは、シグナムの記憶に久しくない。
 鼓動はわずかに激しく、そっと服の上から押し当てただけでも乱れていることが感じ取れた。
 何か悪い夢でも見たのだろうか、と胸に手を当てながら思う。だが、その内容はもはや指の間をすり抜ける水
のように失われていた。
 それを証明するかのように、胸の鼓動も、聞き入っているうちにすぐに収まった。
 だが、手の平から水が零れても、濡れたことには変わらない。
 どくどく、と自分は生きていると証明するかのように力強く脈打っていた心臓の鼓動が手に乗り移ったかのよ
うに汗ばむ手をぐっと握ると、シグナムはふと呟いた。

「柄ではないとは思っていたが……戦いがどういうものかぐらい教えるのもいいかもしれんな」

360 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 05:32:36 ID:+URv4iL1
終わりです
元ネタは刃鳴散らすですが、夢の世界どうこうってのは一切出てきません
ただ斬り合いをさせたかったのですが、それじゃああんまりなので適当にでっち上げただけです

361 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 09:02:35 ID:iLWbgWNE
>アンリミテッド・エンドライン
エリオ君、素敵っ!(黄色い悲鳴
もうずっとルーキーのターンでしたね。
クロスの方のネタは知らないけれど全然面白かったし、ネタが分からないっていうのも次に何が来るのか予想できなくて、また一つの楽しみ方が出来ました。
でも、ネタも分かりたいから原作見てみようかな?
ラストに登場したのがノーヴェなのか、クロス先のキャラなのか、ヒントだけでも手に入るかもしれない。
ノーヴェの乳はそんな僅かなもんじゃないから、格好違うだけじゃなくて素直に別キャラなのか?w
エリオの強さと危うさは、なんかヒーローしてるって感じがしましたね。
少年キャラがやると悲劇もまたカッコよさのスパイスね。キャロや仲間による補完を楽しみにしてますw
ああ、あとティアナとスバルとリインのトリオのやりとりは無条件でニヤニヤしたから。コミカルテンポがツボだからww

>炎の魔剣とツバメの魔剣
これもやっぱり元ネタ知らないけど、珍しい作品ではありますね。
いや、シグナムがニート脱しようとしてるのがね(ぉ
それは冗談ですが、シグナム主役なのは意外と珍しいかも。彼女の戦闘をメインにおいたのはあまりないですからね。
クロスキャラとの腕試しはよくありますが、こういう剣士としての吟味を前に出したシンプルな内容いいですね。
サムライの世界って感じです。
……しかし、やはり一番の衝撃はラストのシグナムの意識改革か。訓練っていってもこれじゃあ模擬戦しかしなさそうだがw



362 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 11:08:53 ID:B23XRo9C
>>360
これは凄い……。
こういうのは、大好きです。

363 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 13:56:40 ID:OY6Hxy/5
>>351
GJ!!です。
エリオが再生能力もちとは・・・怪我を恐れないはずだ。
そして、ティアナがアンカーガンとクロスミラージュを一丁ずつ持つとは
新しいw
新型GDは壊されてしまったが、真打ちのナンバーズ登場、次回も楽しみにしてます。


364 :ゲッターロボ昴 ◆J7qCZtZxmc :2008/04/08(火) 15:35:09 ID:9l/X7O/7
3時のオヤツ代わりにちょいと投下。スバルスキーに贈る物語。


365 :ゲッターロボ昴 ◆J7qCZtZxmc :2008/04/08(火) 15:38:50 ID:9l/X7O/7
また魔改造やっちまった・・・


魔法少女スバル・ヴェロシティ プロローグ

 次元世界ミッドチルダ、首都クラナガン近郊――廃棄都市区画。
つらなる廃棄されて久しい劣悪な建築物群、ひび割れたアスファルト――戦闘を行う二人の魔導師――二人の女。
構成される光の道、魔力弾の雨。

短い青い髪の女――灰色のコート。両手を覆う篭手。
ただ一撃で最悪の重圧を生み出す鋼の拳―――リボルバーナックル。製造時の呼び名――戦闘機人タイプゼロ・セカンド。
光の道―――魔力素の集合体による足場の連続、ウィングロードにより空中を駆け抜ける。
その足には無骨なローラーブーツ――魔力駆動に特化したストレージデバイス。

発色の良い、オレンジの髪の女――下ろした髪を風になびかせて、手にするは二挺の拳銃――クロスミラージュ。白い防護服。
敵の足のローラーブーツ――かつての相棒(バディ)、マッハキャリバー。

蒼穹の如き色のローラーブーツ=意思を持つデバイスの姿に、

(マッハキャリバーは、あたし以上の使い手を見つけられるかな?)
かつての記憶が不意にフラッシュバック――交わされた約束。ここが終着点だという思い。

拳銃の女が、苦々しげに顔を歪めながら高速で地面を滑る――踊るように、華麗に。

ウィングロードにより、空中から飛び掛る――破滅の一撃――凝縮された魔力素をぶちまけながら。

「リボルバーシュート」
拳銃の女――ティアナは、後ろに滑りながら回避。アスファルトが粉砕され、こちらに拳銃を照準してくる。
発射。
銃撃。
跳び退った女の太腿を、激痛が襲った。それは実体を持たない圧縮された魔力素の弾丸。
肉を跳び散らし、露になった機械仕掛けの強化骨格―――人外の証。
それを気にも留めずに、戦闘続行――痛覚をカットする、機械の身体ゆえの芸当。互いに咆哮しながら交差する鋼と鋼――クロスミラージュとリボルバーナックル。

366 :ゲッターロボ昴 ◆J7qCZtZxmc :2008/04/08(火) 15:39:32 ID:9l/X7O/7
「クロスミラージュ、ダガーモードッ!!」
『了解』 

機械音声の返答。
拳銃を包むようにして形成された魔力刃――クロスミラージュの第二形態。接近戦に対応した魔力のダガーだ――が鋼の拳とぶつかり合う。
目も眩む炎の輝き――魔力と鋼の押し合い――ティアナの右足が跳ね上がり、マッハキャリバーのつま先が女の左腕を粉砕した。
痛覚カット。肘から先の感覚が無くなる。
横に跳び、だらりとぶら下がった左腕を引きちぎり―――振動破砕。破壊の衝撃が、リボルバーナックルを、内部の機構を粉砕し、スパークさせる。
投げつける――爆砕。粉塵と化した左腕の残骸が、一瞬ティアナの視界を塞ぐ。

突進する――ティアナ、かつて相棒であり、友であった存在めがけて。
爆音――振動破砕がバリアーに突き当たり火花を散らし、衝撃波でアスファルトが瘡蓋のようにめくれ返った。
土煙――肘から下で、女の血が強固に編まれた魔力の壁を濡らした。

(貴方は最高の<相棒>です)
マッハキャリバーの声=過去のもの。
(あんたは無茶しすぎなのよッ!)
怒った様な声=ティアナの心配の仕方。
遠い過去が、空洞のような心に響き続ける。

「そんなこと……ないよ」 
ぎりぎりと右手をティアナの顔のあるあたりに押し込んでいく。
ISを再度発動=再び破壊の予感。

にわかに魔力の壁が無くなり、爆発。防護服のリアクティブ・アーマー機能。
爆煙の中から突き出される銃身――クロスミラージュ第三形態、狙撃砲=対物狙撃銃の如きフォルム。
吐き出される超長距離狙撃用の高密度魔力弾/右腕を直撃。

右手のリボルバーナックルが、砕け散る―――最後に残った魂の欠片が、粉砕された。爆発――バラバラに砕ける鋼が、失われた命たちの記憶と重なる。
変形――右手の拳銃に転じたクロスミラージュが、女の喉元に突きつけられる。
悲しみに満ちたティアナの瞳――いったい何に向けられたものなのか、女にはわからない。
女は、拳を握り締めた。指の中に残った魂の欠片の残骸を手放した。
(これが、貴方達の新しい相棒。大事にしてあげてね)
全ての始まりが、胸に蘇る。

367 :ゲッターロボ昴 ◆J7qCZtZxmc :2008/04/08(火) 15:40:29 ID:9l/X7O/7
拳を、構え、拳銃を奪い取り、遠くに捨て去る。からん、という音。

『止してください、<相棒>―――ッ!!』
マッハキャリバーの制止=既に無意味。動き出した歯車は――誰にも止められない。
呆然としているティアナへ向け、拳を振り上げる――IS<振動破砕>――発動までのカウントダウン。着弾と同時に振動するイメージ。
諸共砕け散れ、という意思を、マッハキャリバーが感じ取った。
振り上げられるティアナの右脚――全速力の蹴り/マッハキャリバー自身の意思。
直撃――女の胸を、ローラーブーツの一撃が貫通していた。
溢れる鮮血。
生命維持に支障がでる位置=戦闘機人の急所。

もう助からないな―――とぼんやり思う。
ゆっくりと倒れこみながら、傷口を触ろうとのろのろと腕を動かす。
自分の運命を、感じさせてくれないだろうかと、期待して。
噴出す血――動くのをやめる身体。

ティアナが急いで駆け寄ってくる――交わされる言葉と言葉。
感謝と、最後の願いを言った。
何が受け継がれるかは問題ではない――ただ、生きた証が欲しかった。


女から光と音が失われ、<迎え>が来た。
再開する懐かしい顔ぶれ。

信念を共にした仲間達/生まれを同じくする敵。

女の冥界へと向かう魂は、記憶の奔流の中を駆け抜け、

(■■■――――)

死へと至る時の狭間で、全人生を追憶し、駆け抜けた。

失われたものと、失われなかったもの―――虚無へと至る軌跡を、胸に抱いて。


――――魔法少女スバル・ヴェロシティ、始まります―――――。


368 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 15:42:08 ID:9l/X7O/7
以上で投下完了。

うん、かなり無茶がありますね。

しかし、闇王女終了後の連載化を狙っていたり。

369 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 15:44:50 ID:g9a61loN
ヴェロシティとはまた渋いwwwwww
ネズミに期待

370 :ゲッターロボ昴 ◆J7qCZtZxmc :2008/04/08(火) 15:56:19 ID:9l/X7O/7
あ、追記

クロス先はマルドゥック・ヴェロシティです。

ネズミ=マッハキャリバーです。

371 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 18:07:49 ID:SbeTjLcw
>>351
一時的な身体能力のごまかしみたいなもんでしょうか、エリオのは。
ナンバーズも合成人間の技術持ってるのかな。本編だとISはしょっぱいのが多かったけど、このスカさんだと彼らも強化されてそうですしねぇ。
しかしはやてが冷静で黒く見えるw

>>360
>剣とは畢竟騙しあいに尽きる。
文全体もそうですが、ここがいかにも原作通りですね。
ネタが割れて使いどころを誤れば、どんな奥義も稚拙な芸と。某ザコが示すとおり。

372 :キャロとバクラの人 ◆2kYxpqWJ8k :2008/04/08(火) 19:15:34 ID:IA4WjW3W
どうも、こんにちわ。
先日投下したモンハンのクロスで「轟竜じゃなくて良かったねw」と言う感想がありました。
そう言えばそっちもあったな〜と思い……書いてみた。イヤ、前回のお話の各所を弄っただけなんですがね?

投下予約して良いかな? 二番煎じだけどw

373 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 19:23:17 ID:OY6Hxy/5
支援w個人的にはG級の赤フルフル編もみたいwww

374 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 19:23:26 ID:kZEVXecP
管理局涙目支援

375 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 19:28:40 ID:x37r28Wh
支援

376 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 19:44:22 ID:oiT7ZGtr
おっしゃー支援するぜ。 
次回はヤマツカミ(タコ竜)とかもどうですか?

377 :一尉:2008/04/08(火) 19:51:55 ID:sDqK+a4Q
ふむ支援

378 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 19:54:23 ID:JT7dP8Va
支援

379 :キャロとバクラの人 ◆2kYxpqWJ8k :2008/04/08(火) 19:58:32 ID:IA4WjW3W
スマソン、遅れた。
何度も言うが二番煎じだからさ、あんまり大したことないw
それじゃあ投下します。

380 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 19:59:46 ID:JT7dP8Va
支援w

381 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 20:00:10 ID:OY6Hxy/5
渾名がどう変わるのかw支援

382 :キャロとバクラの人 ◆2kYxpqWJ8k :2008/04/08(火) 20:00:58 ID:IA4WjW3W
『異常震域』って知っているかい? 天変地異の名前? 確かにらしいが、そうじゃないんだ。
コイツはある魔道師の二つ名なんだよ。聞いた事がないって? まぁ、アンタみたいなお行儀の良い管理局員には縁が無い奴だ。
奴は管理世界でも紛争が続いているような世界で仕事をしてる。いわゆる傭兵って奴だ。
そうだろ、お前も思うよな? 『腕が良いなら何処でも仕事ができるだろう?』って。
でも出来ないんだよ。アイツは『手加減』をしらねえからさ……『非殺傷設定』だって!?
ハッハッハ! そんな器用なことが出来るんならあの腕前だ。とっくにお前さんの同僚になってるさ。
異常震域を市街地で使ったら成果1に対して10の残骸と死傷者を出すぜ? まるで地震みたいにな。
だからアイツは人がゴミくらいの価値しかなくて、碌な建物なんてない場所でしか仕事をしないんだ。
そうとも、お察しの通りさ。片手と片足を潰して魔道師引退させてくれたのは異常震域さ。


―ある元傭兵魔道師の供述―




383 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 20:01:33 ID:Wyh8T/Dt
大暴れ支援

384 :キャロとバクラの人 ◆2kYxpqWJ8k :2008/04/08(火) 20:01:46 ID:IA4WjW3W
「で? その異常震域っちゅう凶悪な魔道師がクラナガン入りすると?」

「そういう事。本局調査部の情報だから信じて良いよ」

八神はやて一等陸尉はクラナガンに程近い次元航行船発着港湾、略して『次港』のターミナルで、とある旅客船の到着を待っていた。
隣に立つ飄々としたイケメンはヴェロッサ・アコース捜査官である。

「確かにソレは宜しくない事態やけど、地上本部に黙って動く理由はあるん?」

「どうやら四本の角を呼び出したのが地上本部、しかも上層部が秘密裏にらしい」

「っ! なるほど……」

二つ名と危険な性質のみが伝えられる魔道師を地上本部が極秘裏に呼び出す。確かに何か有りそうな匂いがプンプンする。
若いながらも色々と積みたくない経験も多大に積んでいる二人としては無視できない内容だった。

「その為に地上本部が手配したのがもうすぐ到着する『CDT クラナガン次元輸送』の37便と言うわけだ。
 ちなみにこれが乗客名簿だよ」

「本当に抜け目ないな〜ロッサは」

はやては手渡された資料をペラペラと捲る。そこには魔道師である可能性を持つ人物に印が着けられていた。
推測は至って簡単。デバイスは基本的に手荷物扱いで次元航行船には持ち込めない。テロの可能性があるからだ。
故にデバイスは乗船時に預け、下船時に返却される。その預かり証が添付されている人物が魔道師、強いては四本の角である可能性が高いと言う事になる。

「けど異常震域を見つけてもこっちは勤務時間外や。緊急性を要する事もない。何も出来ないとおもうんやけど?」

「もちろんその通り。僕はただ見てみたいだけなんだ。監察官としてではなく、一個人として。
 管理局の意向の及ばない場所に存在する強者の姿って奴をさ」

任務もヘラヘラしながらこなすくせにこんな時だけ真面目な顔をする友人に、はやては大きくため息を吐く。
だがそれが嫌いと言うわけではない。それすらも好ましく思えてしまうのがこの男の魅力だった。

「ほんまに物好きやな。でも私を呼び出したのはどうしてなん?」

「う〜ん、好奇心を満たすのと同時に君と次湾デートと洒落込もうかと思ってさ」

次元航行船を降りてきた者が最初に通る税関、その向かいにあるカフェにて二人は座す。
身を包むのは何処にでもあるお互いの私服であり、間にはカップが湯気を立てていた。
傍から見れば何処にでもいるカップルが、搭乗する便を待っているように見える普通の光景。
だがそれも一つのアナウンスにより劇的な変化を生む。微笑み合っていた二人の目に一気に鋭くなる。
ターゲットのご到着を知らせるアナウンス。彼らの目の前の窓口へ船から降りてきた人々が順に列を作り始めた。


385 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 20:01:48 ID:JT7dP8Va
ラオシャンロン?

386 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 20:04:44 ID:BZ0ibh8J
所々四本の角ってあるけど支援

387 :キャロとバクラの人 ◆2kYxpqWJ8k :2008/04/08(火) 20:05:56 ID:IA4WjW3W
「あの船に乗っていた魔道師は3人や」

束から取り出された3枚の書類。それぞれ顔写真とある程度の個人情報、デバイスの特別預かり書が添付されていた。

「さっそく一人目だ」

まずは金髪にサングラス、スーツとコートに身を包んだキャリアウーマン。
確かに仕事は出来そうだが埃っぽい紛争メインに仕事をしているように見えない。

「う〜ん、ちょっと違うかな。名前は……リニス?」

はやてはもう一度写真に目を落とす……趣味の悪いネクタイ。黒地に派手な黄色の稲妻なんて正気を疑う。
そう言えば親友に一人居たな……こんな趣味の人。

「ちゃうねん……」

「そうだね。ちょっと違うかな」

二人の間には僅かにニアンスのズレが生じていたりする。


数分後、受付に現れた二人目の魔道師は筋骨隆々な大男だった。
禿げ上がった頭に浅黒い肌。そこには無数の傷が刻まれている。
唯のチンピラでない事はその身から滲み出る風格で解る。ちなみにデバイスはベルカ式。

「これは当たりかな?」

「う〜ん、でも近接戦闘を得意とする刀剣型のアームドデバイスや。
これじゃあ市街地じゃ戦えないなんてこと無いと思うんよ」

「確かに」

ベルカ式のスタンダートであろう戦闘スタイルが、非殺傷設定を出来ないようには見えない。
つまり噂の四本の角である可能性は低いだろう。名うての魔道師である事に代わりは無いかもしれないが。


「……と言う事は消去法であの子が異常震域と言う事なんか?」

「まさか……」

三人目の魔道師は小柄な少女。桃色のワンピースを着て、頭には真っ白な縁の広い帽子。
背中にはリュックサックを背負い、犬や猫を移動させるためのケージを持っていた。
都会や人混みには馴れないようで、あっちにフラフラ・こっちにフラフラしている。

「デバイスは……ブーストデバイス? 単体での戦闘は無理やな」

「ハズレだね。調査部の情報が間違っていたのか、異常震域がアポを蹴ったのか」

契約を破るというのも無法の傭兵魔道師なら充分にあり得る可能性だ。残念そうにロッサは自分のカップに口をつける。


388 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 20:06:17 ID:kZEVXecP
角で単語検索して漏れが無いかチェックしてから投下すべきだったかもね支援

389 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 20:06:21 ID:OY6Hxy/5
四本の角が多少残ってるぜw支援
今日は角竜と轟竜でダブルドラゴンwww

390 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 20:06:27 ID:oiT7ZGtr
多分それは改訂の取りこぼし支援

391 :キャロとバクラの人 ◆2kYxpqWJ8k :2008/04/08(火) 20:07:31 ID:IA4WjW3W
はやてもそれに習い、悪友との休日のイタズラが終了した事を知る。だが落ち着かない様子だった少女が気になり、そちらへと目を向ける。

「誰かと待ち合わせかなぁ」

キョロキョロと辺りを見渡しては、時計を気にするその様子。
そう言えば足元に置いたカゴが激しく揺れている。中のペットが暴れているのだろう。
『田舎育ちの少女が都会で暮らす親類や兄弟でも尋ねてきた』そんな平和なシナリオをはやては脳内で描く。
幼い頃から肉親と言う存在が遠かった彼女らしい憧れに似た感情。だがそれは少女を迎えに来た人物によって壊される事になる。

「ロッサ……あの子」

「え?」

自分で口にしたのだが手に持ったカップが震えているのをはやては認識する。
その恐ろしい事実に確証を与える者こそが少女を迎えに来た人物。
彼女の中では親や親戚、もしくは兄や姉が迎えに来るはずだった。だが来たのは……

「気付かれんようにゆっくり振り向いてえな。あの迎えに来た女性、プレイボーイとしては忘れられん顔やろ」

尋常じゃないはやての様子にヴェロッサは視線をズラして、驚愕する。
現れたのは鋭い目付きと鉄仮面をサングラスで隠し、何時もの管理局の制服からスーツに変えてはいるが忘れられないだろう女性。

「驚いた……オーリス・ゲイズじゃないか」

地上本部のトップ、レジアス・ゲイズの娘にしてその右腕、つまり地上の実質的bQ。
異常震域を呼び出したとされるのが地上本部の上層部。そしてオーリスと接触している少女こそが……

『非殺傷設定を知らず、市街地で使えば一の成果に十の被害を生む魔道師』


「あの子が異常震域や」


392 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 20:08:19 ID:JT7dP8Va
ホントだ4本の角ってあるw
支援

393 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 20:08:39 ID:Wyh8T/Dt
四本の角のままですよ支援

394 :キャロとバクラの人 ◆2kYxpqWJ8k :2008/04/08(火) 20:11:25 ID:IA4WjW3W
はやてとヴェロッサを驚かせたオーリスだが、彼女自身も驚愕を隠しきれずにいた。
面倒な案件を始末する為に地上本部の上層部が秘密裏に雇ったフリーの魔道師。
一般的には名前を知られておらず、その実力を折り紙つき。そんな魔道師を探してみれば出てきたのが『異常震域』と言う二つ名。
コンタクトに成功し、報酬でも折り合いがついた。そしてクラナガンに呼び出し、都会慣れしていないと言うから迎えに来てみれば……

「わ〜! 大きな建物〜」

彼女が運転する車の助手席で、目を輝かせながらクラナガンの町並みを見る一人の少女。
桃色のショートヘアにお揃いのワンピース、足元には黒いパンプスを履いている。
先程まで背負っていた若干痛んでいるキャラクターモノのリュックは膝の上。

「アレはビルと言うのよ。異常震域」

「あの……私はキャロっていう名前があるんですけど〜」

どうやらキャロと言うらしい本名を聞いてもオーリスはその表情と態度を崩さない。
そう! あのどう見ても悪人&死亡フラグな父親と長年一緒にいるわけではないのだ。
オーリスは落ち込んだ様子のキャロには目もくれず、ふと後部座席でガタガタと揺れているケースをミラー越しに確認。

「ところでアレは何?」

「あれには『地震の源』が入ってるんです」

「?」

丁度余りにも暴れすぎたせいか留め金が、バチンと弾けた。
中から飛び出してくるのはドラゴン。四本の足で地を捉え、大きな頭を持つオレンジ地に青い模様が走る竜種。

「ピギャ〜!」
「ギャルルル〜」

あたりの見慣れない光景に二匹とも困ったような鳴き声を上げる。

「ドラゴン……」

「はい! フリードリッヒって言います。私の竜です!」

「二匹居るように見えるけど?」

そう、一つのケージから飛び出してきたのは二匹。造形は同じだし、色も同じ。
しかし見分けをつける為か手には水色と薄桃色に塗られた鎖が巻かれている。

「一匹分の名前しか考えてないの、召喚したら二匹だったんです。だから……」

水色の鎖を巻いた固体を指差して……「こっちがフリード」
次に薄桃色の固体を……「そっちがリッヒってことにしてます」

「なるほど」

オーリスは暴れまわる二匹の小さな暴君たちに、シートが破壊されないか心配しながらも冷静に考えを巡らせる。
珍しい竜召喚士、しかも二匹の竜を呼び出すとなればその実力は計り知れない。

「なんで……異常震域なのかしら?」

不意に出たオーリスのそんな疑問。答えはすぐに目の前に映し出される事に成る。




395 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 20:13:07 ID:Wyh8T/Dt
ちょw使い回しww支援

396 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 20:13:18 ID:JT7dP8Va
モンハン全然やってないから分からん
支援

397 :キャロとバクラの人 ◆2kYxpqWJ8k :2008/04/08(火) 20:13:49 ID:IA4WjW3W
クラナガンはミッドチルダ式魔法文明の中心地として繁栄している。それは間違いない。
だがその繁栄に堕ちる影、誰もが目を背ける闇がある。『廃棄都市区画』。
いくつかの理由で放置され、復興も取り壊しも行われず、朽ち果てた元市街地だ。ボロボロのビルは未だにその形を保っているが故に寂寥感を増す。
もちろん問題は景観や土地利用の問題だけでない。その管理局の目が届かない場所には普通の場所では生きていけない存在が集まる。
違法移民や犯罪者たちが寝床や生活の場所、時には悪事の隠れ蓑としてその場所を利用する。

管理局地上本部が対処に困っているテロリストもそう言った類の一例に過ぎない。
そのテロリスト達が何をやってきたのかを語るのは止めよう。余りにも普通のテロリズムだからだ。
様々な経緯を経てその集団がクラナガンにてテロを計画している事が判明、実行前に確保しようとしたが逃亡。
その逃げ込んだ先が廃棄都市区画の元著名なホテルの廃墟だった。ソコが唯の廃墟ならば制圧は難しくは無かっただろう。

だがそのホテルは各次元の代表クラスが会談をする事まで想定された場所だったのだ。
つまり『攻めるに難く、守るに易し』を地で行く構造なのである。
周囲数百メートルには建物が無く、視界が確保されている為に秘密裏に進入が効かない。
悪い事に放置されていた非常用魔力炉により警備システムが起動され、無数のカメラと迎撃用スフィアが動き出す。
地下の貯蔵庫には非常食が積まれていたらしく、兵糧と言う面でも万全。シャッターが閉まり、正面突破も阻まれている。
無謀な突撃を試みたが隠し通路が存在するらしく背後を取られ、数人のベルカ式魔道師にメタメタにやられる結果になった。
廃棄都市区画に関する多くの情報が失われている今、その元ホテルは誰もが全容を知らない迷宮と化してしまった。

以上の場所を攻略するのは、高ランク魔道師不足に悩む地上本部にとって簡単ではない。
既にテロリストが篭城を始めてから一週間がたち、数度行われた突入作戦は悉く失敗。
表向きは人質が居ない事、被害が無い事からも緊急性はない。だがテロリスト相手に手間取るというのはそれだけで色んなものに傷がつく。
もちろん本局に増援を頼むなり、某タヌキの個人所有戦力を動かさせるなり、手段が無いわけではない。
しかしそれは地上本部の威信が、如いてはレアスキル嫌いなレジアスのプライドに傷をつけることになる。
その結果として『名が知られていないが実力は確かな魔道師を雇ってこっそり解決する』と言う手段が選択されたのだ。


「以上が状況よ。何か質問は?」

ホテルからある程度離れた場所に設置された対策本部で、オーリスは現在の状況を異常震域 キャロに説明を終えた。
終始目元や唇がピクピクしているのは、相手が真面目に話を聞いていたように見えないから。
キャロはテーブルに置かれたインスタントコーヒーへ、砂糖とミルクを溶かす作業を必死に行っている。
その足元では二匹の竜がじゃれ合っていたが、その声がやたらに鬼気迫った迫力があり、愛らしい行動との矛盾。

「よく解りませんでしたけど、つまり……『噛み砕け』ってことですよね?」

「えっ……えぇ、そういう言い方も……できるわね」

オーリスは不覚にも自分の背に走る寒気を認識した。こんな十年も生きていないだろう小娘に?
『噛み砕け』
確かに彼女が指示した内容とは大きく離れてはいない。四本の角に求めたモノは『突破力』なのだ。
監視や迎撃をものともせず、一定以上の強度を守り続けるホテルに突入の穴を開けること。

「じゃあ、さっそくやりましょう」

渡された地図を眺めつつ、コーヒーをチビチビと啜っていたキャロは唐突に言った。
朗らかな笑顔でこれから散歩にでも行くというくらい軽い気持ちを露わにしながら。
そんな様子にオーリスは自分の寒気の正体が理解できた。目の前に居るのが『危険な傭兵魔道師』であると言う事実。
そしてソレを忘れてしまうほどに子供らしくて可愛い様子。まるで噛みあわないのだ。
『この娘は一体どんな人生を送ってきたのだろうか?』


「ダメね……ビジネスライクで行くつもりだったのに」


398 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 20:14:10 ID:oiT7ZGtr
その事は前もって言ってあったじゃないか支援

399 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 20:14:48 ID:JT7dP8Va
噛み砕けで四本の角支援w

400 :キャロとバクラの人 ◆2kYxpqWJ8k :2008/04/08(火) 20:15:24 ID:IA4WjW3W
キャロは前方に聳え立つビルを見上げていた。その周りだけは他の建物は無く、視界は開けている。
視界は彼女が戦闘を行うのに重要な要素だ。もっとも開けていなかったら無理やりにでも『開く』のだが……

「セットアップ、ストライプストライク」

取り出したのは紐でとめられた二つの牙。待機状態のデバイスである。
その名前の意味をキャロは良く知らない。ただ偶々出会った『ハンター』なる職業の人が熱心に勧めてきた名前を採用しただけ。
『その竜を二匹も従えるお嬢ちゃんの武器にこそ相応しい名前だ』
どういう意味だろう? しかも自分の二匹の竜を知っているような口ぶりだった。

「もう、後の祭りか」

もう会うことも無いだろうハンターなる人に思いを馳せつつ、キャロは己の身を包む衣服 バリアジャケットを検分する。
適当に着崩した黒のワイシャツに同色のスカート。その上にはオレンジ地に青い稲妻模様と言う竜とお揃いのロングコート。
手にはブーストデバイスとして本来の姿、中央に真紅のダイヤ状結晶を抱いた牙色のグローブとして装着されている。

「行くよ、フリード! リッヒ!」

「ギャウ!」
「ギャワウッ!!」

二匹の竜が短く吼える。そこには先程の戯れとは比べようが無い闘志が宿っていた。
キャロは掌を開いて左右に突き出し、唱える。ここに異常震域が揺れ始めた。

「砂漠を揺るがす二つの怒涛。我が槌となり、地を砕け。
来よ、我が竜たち! フリード、リッヒ!! 竜魂召喚!!」

二体の幼き竜たちの足元に展開される魔法陣。そんな光が二匹を包み、大きく膨れ上がり……弾ける。光の中から現れた二匹は今までとは大きく異なっていた。
構造的には大きな変化は無い。だがサイズが巨大になった分、今まで気にならなかった特徴が大きなインパクトへと変わる。

身を覆う鱗は橙色に濃紺色の紋様が走り、硬度に裏打ちされて鈍く光る。
巨大な頭部とソレを真っ二つに走る広い顎。並ぶのは押さえつけて噛み千切る鋭い牙。
大きくなった頭部を支えるシッカリとした四つの足、前肢には飛行する為の皮膜がある。
目は小さく溢れ出す様な怒気を孕み、長い尻尾は士気を湛えてブンブンと奮われた。
本当の姿を取り戻した様子から彼らはこう呼ばれている……『轟竜』と。


「「■■■■■■■■■■■■■!!!!」」

二匹の轟竜 『ティガレックス』とある世界では呼ばれている竜が天を仰ぎ、信じられないようなボリュームで咆哮する。
余りに揺さ振られた空気は衝撃波を生み出し、それにより地震が起きたような錯覚と小さな瓦礫が堪えきれずに宙を舞う。
想定外の音量をぶつけられたカメラが自壊し、それにより残ったカメラが一斉機動。スフィアと傀儡兵が起動し、迎撃体制が整えられていく。
注目を集める事は決して作戦のプラスには成らないだろう。だがキャロからすればそれはマイナスにも成りはしない。
何時でも何処でも彼女の、彼女達がするべき事に変化は無いのだから。

「逝けぇ!!」

命令はそれだけで充分だ。主の言いたいことも、自分達の成すべき事もティガレックス達は知っている。
故にただ前へ……奔り出した。



401 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 20:16:23 ID:JT7dP8Va
ディガだったのか・・・・・・・w
支援w

402 :キャロとバクラの人 ◆2kYxpqWJ8k :2008/04/08(火) 20:16:29 ID:IA4WjW3W
二匹の竜と言う異常の出現にホテルを包囲していた局員も、外の様子を窺っていたテロリスト達も注目した。
「どんな手段を用いて活路を開くのか?」と局員達は胸を高鳴らせ、テロリストたちは顔を青くした。
だが二匹の竜はブレスを吐くわけでも、空を飛ぶでもなく……走りだしたのだ。ホテル目掛けて真っ直ぐに。
姿勢は四本の足で這いずるような動きであり、余り見てくれも良いとは言えない。
その動きに局員は首をかしげ、テロリスト達は嘲笑う。そんな事をしても迎撃システムの餌食だと。

「ダメだ!」

突然近づいてきた大きな物体に射撃用スフィアがシールドを展開し、魔力弾を一斉に発射する。
起動した傀儡兵が武器を構えて、迎撃の態勢を整えた。誰かの上げた悲鳴通りならば数秒後、二匹の巨体は地に伏していただろう。
だがそうは成らなかった。

『弾いてしまった』

多くの射撃魔法が鱗にその威力を削がれ、余りの早さに弾かれて瞬く間に霧散してしまう。
次の魔力弾が放たれる前に、最前線のスフィアから順に踏み潰されてスクラップ。
巨体からは想像できない速度で、巨体ゆえの質量をそのままインパクトと加速に変換する。

「化け物が!!」

しかもただ突進している訳ではない。ある程度の場所で方向転換。
四本の足で『飛ぶ』ように『跳び回り』勢いを殺さず、狙いを付けさせない。
無茶苦茶な機動により振り回された尻尾は、意図せずに大破壊の道具足りうる。広範囲の傀儡兵やスフィアを薙ぎ払うのだ。
大威力の突進の勢いを殺さず、方向転換する強靭な四肢は地面を抉る巨大な槌。

「強いって……こう言う事だ」

誰かが呟いた。人間で言えば魔道師のランクがどうとか、竜で言えばブレスが吐けるとか、そう言ったことではない。
そんな難しい事ではないのだ。『大きくて、早くて、重い』それだけで事足りてしまう。


403 :キャロとバクラの人 ◆2kYxpqWJ8k :2008/04/08(火) 20:17:34 ID:IA4WjW3W
「アッハッハッハ! 粉砕! 玉砕! 大喝采!!」

自分の唯一の友にして、剣である竜達の活躍と言う名の殺戮を見渡して、キャロは叫ぶ。
コレで良いのだ、何時も通り。提示された『モノ』を踏み潰し噛み砕き、報酬を貰う。
村を追い出されてから数ヵ月、普通を貫こうとしてきた。普通の人間を目指していた。
でもダメだった。唯の世間知らずの小娘など世界では余りにも無力。嫌な経験などもはや忘れるほど積み重ねてきた。
気色悪い笑みと撫で回される体の感触。女としての大事なものを容易く奪われる屈辱。
思い出しただけで鳥肌が立つがキャロは哀れなテロリストたちを蹂躙する事で発散する。
なにが魔道師だ! 何が魔法だ! 踏み潰されてひき潰されるそれらは等しく無価値。

「結局! 強い奴が正しいんです!!」

力なき娘など陵辱の対象だが、力ある娘は違った使い方をしたいと思うのが人だ。
そんな風に命を繋いだ元闇の書の主やプロジェクトFの遺産。彼女たちが管理局で相応の地位に居るのだから、キャロの至った答えは間違ってはいない。
数年の経験と修練により、独学であるが竜使役を完全にマスターした。そしてその余りにも単純な暴力を使う手段が紛争。
それが運の悪かった強者の行き着く可能性。八神はやてのようなケースなど稀であり、世界はこんな筈じゃなかった事ばかりなのだ。


「我が乞うは疾風の翼。轟く咆哮に、駆け抜ける力を」!
『Boost Up  Acceleration』

キャロの左手に装着されたストライプストライクが光を放つ。
己の半身が荒らす戦場を彼女は軽いステップで闊歩する。歌うように唱えるのはブースト魔法。
それこそがキャロの大事な役割だ。

「荒々しき御身に、力を与える祈りの光を」
『Boost Up  Strike Power』

まだまだ詠唱は終わらない。キャロは的確に二匹のティガレックスの様子を見ながら歌う。
早い相手には加速補助、砕け難い相手には攻撃力強化、心配な攻撃を前にして防御力アップ。

「我が乞うは城砦の守り。轟く方向に、清銀の盾を♪」
『Enchant Defence Gain』

必死で放たれた大威力の砲撃魔法は容易く弾かれ、避けられる。一瞬で野性の本能が射撃点を導き出し、突き出された前の腕。
瓦礫を砕くよりも容易い音がしてまた一人、容易く命が掻き消える。



404 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 20:18:18 ID:mIHHK+gH
異常振域はソロハンターには鬼門以上、まさに「じ、冗談じゃ……」と言いたくなる
支援

405 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 20:19:17 ID:JT7dP8Va
盾を♪w
キャロこえぇぇぇぇっぇぇぇぇぇぇぇ
支援w

406 :キャロとバクラの人 ◆2kYxpqWJ8k :2008/04/08(火) 20:19:26 ID:IA4WjW3W
だが絶望的な虐殺の過程でも絶望していないテロリストがいた。彼は用心棒として雇われたベルカの騎士クズレ。
他の誰よりも魔法と戦闘に優れ、それだけの修練と経験を積んでいる。そんな彼だからこそ気がついた。
自分達を蹂躙する者達の弱点を。それは……『使役者である少女』。つまりキャロ。
一対一ならばドラゴンともやりあう自信がある彼だが、今はテロリストたちを守り二匹の竜を相手にしなければならないのは厳しい。
故にこの作戦が採用されたのだ。隠し通路からこっそり外に出て、二匹の轟竜に気付かれないようにキャロへと斬りかかる。

「貰った!」

必殺の射程だったのは間違いない。男が握るトマホーク型のアームドデバイスがキャロを捉える。
空の薬莢が弾き出され、爆発的に高まった魔力がキャロの命を刈り取る。その寸前に……割り込む巨体さえなければ。

「なっ!? 不覚!!」

キャロに近い位置で虐殺していたティガレックス、水色の鎖を前足に巻いたフリードがその巨体で包み込むように彼女を守ったのだ。
男は気がついていなかったのだろう。二匹のティガレックスは考え無しに暴れているように見えたから。
だがそうではない。常にどちらか一方がキャロをガードできる位置におり、そちらにも目を向けていたのだ。
ソレは主を守るという使命感だろうか? それともキャロが居なくなると自分達の生存が危うくなるという本能だろうか?

「グルゥゥウ……」

ゆっくりと包み込むような防御を解くフリード。その前足と頭部には男の一撃により生じた深い傷が走っている。
その様子を見て男は自分の一撃がドラゴンへと効果がある事を確信した。だが同時にターゲットだった少女が自分に向ける眼差しに疑問を感じる。
そこには命が危険に晒された事による恐怖もソレが生み出す怒りも在りはしない。キャロが浮かべる表情の名前は『同情』。

「■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■!!!!!」

続いて響いた爆発音のような咆哮に、男は耳を塞ぐ暇も無く吹き飛ばされた。
痛む耳を押さえながら何とか立ち上がった彼が見た。余りにも解り易い『怒り』を体中で表現する暴竜の姿。
熱しすぎた体温により巨大な口から漏れる息は色を成し、眼だけではなく前身に走る紅い血潮の流れが透けて見える。
燃えているのは炎ではなく闘志であり殺気。

「このぉお!!」

だが所詮は獣の怒り。男は冷静にハルバードを構えなおし、更に追撃を加えようとして……避けられた。
冷静な回避運動によるものではない。純粋に、驚異的に上昇した速度の結果。

「なんだ、これは!!」

ティガレックスと対峙した誰もが直面する驚愕。空も飛ばず炎も吐かない。
早い動きにも慣れてきて、適度なダメージを与え始めた頃……轟竜は真に覚醒する。
ソレは正しく破壊の『怒轟』。冷静さ等と言う人間の戯言を一笑に伏す圧倒的な力。
素早く、重く、怯まない。動きを止めずに強力な四肢で跳び回り、肉食動物特有の巨大な顎が……

「くそっ!?」

男はキャロが浮かべていた『同情』の表情の意味を理解した。つまり「怒らせるなんて可哀想に」と言う意味だろう。
それでも男はデバイスを振るい、回避連続の合間に小さな反撃を加えてはいる。だがそれはティガレックスの手を止めるには至らない。
何度目かの回避の瞬間、ガクンと下へと引っ張られる感覚。自分に何が起こったのか男は理解できただろうか?

「ヒッ!?」

自身の足に絡みつく草臥れた鎖。その使い手は勿論、テロリスト自身が命を刈り取ろうとした小娘。
小娘 キャロが浮かべている表情は笑顔。仕事を完遂し、寝床と食事を得た労働者としての朗らかな笑顔。

「バクンッ」

笑顔の先で一人のベルカ騎士クズレが凶暴な口に飲み込まれ……一瞬遅れて主を失ったデバイスとそれを握っていた手だけが地面に落ちた。


407 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 20:21:26 ID:hgb4tuZF
支援?

408 :キャロとバクラの人 ◆2kYxpqWJ8k :2008/04/08(火) 20:22:12 ID:IA4WjW3W
「これで……良いですか?」

キャロは振り向いて唖然とする管理局員たちにそう問うた。

「突入だ! テロリスト共を逃がすな〜!!」

慌てて駆け出す部下たちを見送り、オーリス・ゲイズは仕事を終えた傭兵に報酬を渡す『つもりだった』。
しかしその前にキャロのある言葉を聴いてしまい、ソレができなくなってしまう。
小さな姿で返ってきた二匹の竜 フリードとリッヒを撫でて褒めながら呟いた小さな一言。

「これでご飯が食べられるね?」

『ビジネスライクで行きたい』そんな言葉は既にオーリスの中では掻き消えていた。
幼い傭兵の一言一言が『管理局の大儀』や『地上の平和』で倫理武装された彼女の心を打った。

「ゴメンなさい……」

「あのっ……どうしたんですか?」

打たれた心の反響が生む不協和音、それを打ち消さんが為に思わず彼女はキャロを抱き締めていた。
何が管理局だ! 何が次元世界の安定だ! 小さな娘がこんな惨い事をしなければ生きて行けないと言うのに。
そんな状況を改善する為ならば質量兵器だろうが、悪の天才科学者だろうが利用してやる。

「この後はお暇かしら?」

「あっはい! しばらくクラナガン観光でも……と」

「じゃあディナーをご馳走するわ。もちろん私持ちで」

しかし今すぐできる事はそれくらいだ。依頼主の提案にキャロは嬉しそうな顔で頷いた。
もしこの少女が何処までも非道の傭兵ならば、こんな気持ちには成りはしないとオーリスは分析する。
だがキャロは今でも必死に普通を目指しているから……放っておけないのだ。

「あの教導官や執務官、闇の書の主にも解って欲しいものね。力の特別視、そしてソレが生む悲劇を」

キャロはその一例だ。誰もが持たざる力を持つと言う事は、それだけで多くの可能性が何も言わずに憑いてくる。
今まであの若手三人組は正しく順風満帆、良い方の可能性だけでここまでやって来た。そうする要素が多かったことも幸いして。
だがちょっとでも道を踏み外せば、彼女達が歩く道はキャロがひた走っている死体と瓦礫の道となりうる。
管理局が否定する『誰もが使える力』こそが『誰もが持たざる力』の価値を無くし、幸か不幸か『力を持ってしまった者』を救う手段。

異常震域の揺れとは即ち、世界を知り恐怖で震え続ける少女のソレ。


「いつかその危険な地震が収まると良いわね」

「ギャウ!」
「ギャワウ!!」

「ちょっ! フリードとリッヒ拗ねないで〜」

抱いていた肩を離してオーリスが呟いた夢物語。それに辿り着くまで異常震域は砕き続けるのだろう。


409 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 20:22:28 ID:ULW16yes
異常震域は一人じゃ無理だった支援

410 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 20:22:37 ID:j4nUctiO
異常震域はソロで頑張って弓でクリアしたな…支援。
次は絶影か? それとも天と地の怒りか?w

411 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 20:22:47 ID:JT7dP8Va
キャロがえぐすぎるw
支援w

412 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 20:23:26 ID:WeXSBBWw
食うとかえぐいよなぁ……

異常震域は同士討ちと爆弾でクリアしたな。

413 :キャロとバクラの人 ◆2kYxpqWJ8k :2008/04/08(火) 20:23:55 ID:IA4WjW3W
異常でした(誤字にあらず
そしてスイマセン! 見直した気満々だったのですが、そこかしこに「四本の角」が生息してます。
皆さんのステキな頭脳を駆使し、その部分を異常震域に変換してお楽しみ下さい(脱兎

414 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 20:24:06 ID:9l5ai4Dw
なんとなく次はアカム&ウカムを召喚してほしいww
支援w

415 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 20:26:05 ID:Wyh8T/Dt
GJ!
食ったーーーーー!?

416 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 20:31:11 ID:OY6Hxy/5
GJ!!です。
一匹は今日のご飯はいらないよw


417 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 20:33:22 ID:JT7dP8Va
いっそ型月最強種をキャロに召喚してもらいたいw
ORTとか紅い月とかアリストテレスとかw

418 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 20:33:34 ID:mIHHK+gH
GJ!

さあ、ミラルーツ(ミラバルカン)をパートナーにしているやたら神々(禍々)しいキャロを妄想する作業に移るんだ

419 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 20:37:21 ID:j4nUctiO
>>418
ルーツとバルカンをパートナーって、あいつら無茶な威力の広域攻撃使える上にタフで硬く、
さらに体力が一定を下回ったら爆弾や榴弾以外全てのダメージ90%カットするから
六課総出でも止められないんじゃないか?w

420 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 20:37:40 ID:l8tGVrp/
>>417
ORTは無理だろう…侵食固有結界的な意味で

421 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 20:38:11 ID:oiT7ZGtr
そもそも専用スレはあるし。

422 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 20:48:30 ID:WKZiH/J3
それ以前にどいつもこいつも竜じゃNEEEE

423 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 20:49:44 ID:+XKYdwix
>>422
いや・・・・でもよくねえ?アルザスの侵魔召喚士、キャロ。


・・・・あれ?

424 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 20:50:26 ID:Kp9Z5yXK
>>423
追放されて当然な件

425 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 20:50:42 ID:9l/X7O/7
NWじゃねえか!!

426 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 20:54:47 ID:oiT7ZGtr
モンハンにも古龍種とか言いながら
どう見てもタコにしか見えんヤマツカミなんてのもいるぞw
ミラバルカン ミラルーツは最初から硬質化されたらアウトだな。

427 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 20:56:31 ID:/9JsS24N
そろそろウロス行ったらどうかと

428 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 21:01:57 ID:9l5ai4Dw
>>417
つーか、設定だけのキャラだから
職人的にもかなり無理があるんじゃね?
そして月厨自重しろ

429 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 21:08:25 ID:JT7dP8Va
>>428
すんませんしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
いやぁ月房と言うわけではないんですが今日ORTの設定
見てたらNotesの存在を知って他にも最強種がいると知ったんで
つぃw
ほんとすんませんしたァァァァァァァァァァァ


430 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 21:15:11 ID:9l5ai4Dw
>>429
いやいやそんな、お気にせずに。
まぁキャラマテのORTはかっこよかったし、召喚してもらいたいという
思いはわかるんですが、設定だけなので職人の想像とか解釈にゆだねるしかなくなると
いうのが困りどころですよね。

テンション高くないですか?

431 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 21:15:48 ID:7GF4pZdk
>>419
実は毒弾と麻痺弾も肉質無視でダメージ入るがなw
ルーツの雷とか普通にプレシアママンより強そうで困る

432 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 21:16:11 ID:iJ/T4eAt
キャバクラの人乙でした
ティガなんて攻撃くらわねーよwwwww


くらわない位置からしか攻撃しないからな

433 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 21:24:21 ID:WKZiH/J3
言動からして最終的にはもう一匹ティガが増えるんですよね。わかります

ティガ3匹同時とか……冗談じ(ry

434 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 21:25:10 ID:7GF4pZdk
ティガにはランスか双剣でしか勝てない俺参上

435 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 21:36:20 ID:9l/X7O/7
ウロスー。

436 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 21:38:59 ID:9l/X7O/7
すまん、sage忘れた。

437 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 22:31:04 ID:4SNV+Qk9
異常震域ね。
友人に手伝ってもたおうとしたら、そいつらついてくるだけで発掘とかで手伝ってくれねぇでやんの。
ソニックボウでよく勝てたよな

438 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 22:31:55 ID:VanoPIgS
おれは信じている。双壁を召喚するキャロの存在を!

439 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 22:32:23 ID:XNcI8aQ+
キャバクラの人乙
個人的にはグラビモスとグラビモス亜種がみてみたい。
粉塵爆発と薙払いのグラビームがやばい。

440 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 22:42:38 ID:su/qjfFO
いっそのこと、キリンなんてどうだろ?

441 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 22:58:23 ID:+z37KaXi
異常震域なんぞ慣れれば楽さ
まあそろそろウロス行こうぜ

442 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 23:00:42 ID:hiFLJPKg
>>439粉塵爆発はテオとナナだけの技だったような………

443 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 23:04:47 ID:jvoKUmye
>>439
グラビモスのはガスだぞ

444 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 23:11:33 ID:LYyATzGT
でも、使い回しにはちょっとガッカリ

445 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 23:17:28 ID:QIeXHpYA
よし、ラーとドジリスを召還するんだキャロ

446 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 23:25:45 ID:0htoQePH
>>445
オベリスク「………」

447 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 23:45:34 ID:kmGoqhii
やっぱりナンバーズ対ロックマンXの主人公三人見たい俺が居る

ゼロ「滅べと言われて、黙って滅びてやる気はない!」
アクセル「ためらうことないよエックス…こいつらは敵だ。」

448 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 00:02:24 ID:1H6fLkVF
>>447
ヤバイヤバイ懐かしいなオイ!
ボカぁ3人組より個性豊かなボス共とVAVAが好きだったがね。
そういやロクゼロとなのはのクロスがここ以外にもどこかにあった記憶が。
つーかΣウイルスとか出てきたら対抗しようがないんジャマイカ?
X5で人類とレプリロイドの半数が死滅したんじゃなかったっけ?

449 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 00:33:49 ID:g45ckmT8
流れを切る形で失礼します。
新人です。プロローグの投下をしたいのですがよろしいでしょうか?
よろしければ1時頃に投下を開始したいと思います。

450 :魔法少女リリカルなのはStylish:2008/04/09(水) 00:37:55 ID:r56vN6lx
さすがに深夜だと誰もいないですかね?
第十一話完成したんで、投下したいんですが。
今回はちょっと短いですけど、支援は必須なので、反応無かったら明日に控えます。

451 :魔法少女リリカルなのはStylish:2008/04/09(水) 00:40:43 ID:r56vN6lx
おっと、どうやら先約が出来たようだ。
お先にどうぞ。君を、『祝福』しようッ!

452 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 00:41:24 ID:RD/jeri2
>>450
いますよwwww(ヒョコッとな)
来たれstylish氏!

453 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 00:42:40 ID:cAwMaqbp
支援

454 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 00:46:33 ID:B2y6Z8tl
>>449
さあ来なさい。
そして皆の者よ、新たなる同士の来訪に心からの祝福を!

455 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 00:54:15 ID:RD/jeri2
おっと!先約がいたかww
支援しよう新たなる同士よ!!

456 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 00:55:51 ID:ZudPMx6w
祝福しますよぉ〜
支援

457 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 00:56:53 ID:g45ckmT8
偉大な先輩方に祝福され心臓が口から出てきそうな状態です。
少々早いですが投下開始しようと思います。


458 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 00:57:07 ID:ceZzoasg
祝福をしよう!
さあさあさあ、支援の〜時間だ!

459 :時の地平線 ◆gIPWFRjycg :2008/04/09(水) 00:58:35 ID:g45ckmT8
序章



――建興12年8月23日。

一人の男が中国・五丈原にてその生涯を閉じようとしていた。
嘗て『臥龍』と呼ばれたその男は正に時代を走る龍だった。全ての人の熱が男の下に集まってきた。
時に凄まじいまでの熱に道を失いかけることもあったが、その度に周りの人に助けられてきた。

――何故平和を求めているのに、人を殺さなければならないのか?

世に才覚を表してからずっと男はその矛盾に苦しんできた。
自国の民を守る為とはいえ、十万の兵士を己が計略によって焼き殺した事もある。
男の人生の半分は後悔の念に支配されていた。
しかし――それでも男は理想を目指していた。いや一石を投じたいと思っていた。
『力』こそが全てと言われていた時代に、『力』を否定し『平和』への道を構築する事。
男の考えは当初青臭い理想論、所詮は戦を知らぬ青二才と一笑に付された時期もある。
しかし志を同じくする主君と仲間に支えられ――その多くは既にこの世の人ではなかったが――それでも少なくない犠牲を出しながら
男は平和への道を模索し続けた。
男の長年の努力によるものか、それとも必然か……時代は漸く乱世を終えようとしていた。
だが時代は無慈悲にも男に平和な世を見させることはしなかった。

男の人生はこれにて幕を下ろす筈だった。
親友である医者――華佗に看取られ、安らかに眠る筈だった。
だが何の因果か……時代の龍は男に人生の休息を与えることを良しとしなかった。
今まさに死出の旅へというその時――五丈原の陣に一匹の龍が舞い降りた。向かうは男の居る幕舎。



460 :時の地平線 ◆gIPWFRjycg :2008/04/09(水) 01:01:15 ID:g45ckmT8
その場に居た華佗は唖然とした。仙人の養子だった華佗には『人の熱の走る道』である龍が見えていた。
龍は床に臥している男を見つけると、その魂と体を蛇のように長い自らの体に宿し、時の地平線へと消え去った。

(龍がこことは違う別の時代…別の世界へ引き寄せられていく…。
 まだ孔明を必要としている時代があるというのですか……)

華佗は呪術も学んでおり、医術に関しては『死者を生き返らせる』との評判を与えられたほどの名医である。
しかしその華佗をもってしても『天命』には逆らえなかった。
嘗て自分が心の底から助けたいと思った曹操の子、曹沖……そして孔明。あらゆる手を尽くしているのに、天はいとも容易くその命を奪う。
何故肝心なときにいつも……あの時も、そして今も自分は何も出来ない。
孔明が死ぬ――その事実を前に彼は涙を流すことしか出来なかった。
しかし今の状況……時代の龍が孔明をその体に宿し、別の時代へ飛んでいくのを彼は確かに見た。
今ここにあるのは主を失った寝床だけ……。

華佗は自らの不甲斐無さと、孔明が新たな世界へ旅立ったという事実にしばし呆然としていた。
だがやがて思い出したかのように孔明の寝床へ行き、枕元に落ちていた彼の毛髪を数本手に取る。
華佗は懐から術が書かれた小さな紙を取り出し、孔明の毛髪を巻きつけた。
その紙を寝床に置き、やがて何やら詠唱を始めると、紙は見る間に肥大化し、やがて孔明の体を形作った。
勿論これは抜け殻である。これで傍目には孔明の体が消えたとは思われないだろう。
幕舎から外へ出た華佗は龍が飛んでいった地平線を遠くに眺めつつ、親友の新たな人生を案じた。

(孔明……貴方の行く先にはまだまだ険しい道が待ち構えているようです。
 それでも……どうかまた貴方に救いの手がありますように)



建興12年8月23日。諸葛孔明五丈原に没する。
その夜……雲一つ無い澄み切った夜空から巨大な星が三度落ちる光景を人々は目にしたという。
星は天の涙か、はたまた三国の世がいずれ終わるという暗示だったのか。
だがそれはその世界に書かれた歴史の一つに過ぎない。
孔明の魂は天には昇らず、龍によって新たな時代へと旅立っていった。その事を知る者は極僅か……。

龍が引き寄せられた先は異世界――ミッドチルダ――


魔法少女リリカルなのは×諸葛孔明 時の地平線
始まります。

461 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 01:01:23 ID:Ap8NDdQV
支援

462 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 01:02:16 ID:XfIbc8RX
どの作品の孔明だろ?支援

463 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 01:04:47 ID:/92juTdB
待て慌てるなこれは孔明の罠だ・・・・支援

464 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 01:06:28 ID:r56vN6lx
>>463
やべえ、先に言われたw支援

465 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 01:08:01 ID:/b+6Lqpd
すぐさま思い浮かぶのは真・三国無双と横山光輝の漫画三国志。
でも意表をついて三国志演義そのものとかからと言うのもありえる

466 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 01:09:25 ID:/b+6Lqpd
『諸葛孔明 時の地平線』(プチフラワーコミックス)

467 :時の地平線 ◆gIPWFRjycg :2008/04/09(水) 01:09:52 ID:g45ckmT8
投下終了です。
折角支援を頂きながら僅か2レスで終わってしまい申し訳ありません。

クロス元はプチフラワーコミックス「諸葛孔明時の地平線」です。
いわゆる三国志物の一つでタイトル通り諸葛孔明を主人公として描かれています。
少女マンガの王道を踏まえつつ作者独自の解釈で描かれた孔明は他とは一線を画します。

未熟者ですが以後宜しくお願いします。

468 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 01:14:02 ID:r56vN6lx
最後に行く先が確定している以外にクロス要素が無いので、ちょっと物足りなかったかな。
感想は、次回の第一話までとっておきますw
しかし、なかなか大胆なクロスネタだと思いました。
元ネタも三国志もあまり知らないけど、孔明は有名ですからね。やっぱり頭脳系のキャラ? 珍しいです。

469 :魔法少女リリカルなのはStylish:2008/04/09(水) 01:22:33 ID:r56vN6lx
では、私の方は40分に投下してもいいですかね?
投下数は17になる予定です。

470 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 01:27:54 ID:GCvK4csI
ここからはウロボロス社 魔剣教団の提供でお送りします。

471 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 01:39:05 ID:4Jb5mVdp
いって下さい

472 :魔法少女リリカルなのはStylish(1/17):2008/04/09(水) 01:41:46 ID:r56vN6lx
それでは、そろそろ投下します。
今回は割と短い。そんなに支援は必要ないです。様子見ながら投下しますしw
もし規制くらったら、例の如く避難所へ行くのでお気になさらず。

473 :魔法少女リリカルなのはStylish(1/17):2008/04/09(水) 01:42:55 ID:r56vN6lx
 着古したパーカーを羽織った少女が走っている。
 唐突に視界に飛び込んできたその光景にティアナは一瞬自分が夢を見ているのでは? と訝しがり、何処かで見たことのある少女の後姿と周囲の建物を見回してからようやく納得した。
 ああ、夢だ。
 フワフワと奇妙な浮遊感を感じる今のティアナの視点は、本当に浮いているかのように見下ろす位置にあった。
 眼下を走る少女の背中を追うように、何もしないのに移動していく。
 もう一度周囲を見回せば、視界を流れていく建物のどれもに見覚えがある。そしてそれらははっきりと確認出来るのに、空の天気や路地裏の奥に続く道はぼやけたように分からない。
 当たり前だ、自分はそこまで細かい部分を『覚えていない』のだから。
 ティアナはこれが『自分の過去の夢』だと理解し始めていた。
 目の前を走る少女の背中。自分の背中を見たことはあまりないが、髪の色と二つに縛った髪型はよく覚えがある。
 それは、丁度13歳ぐらいのティアナ自身の姿だった。
 その<ティアナ>は一心不乱に走っていた。ただ、焦るのではなく、呼吸を一定のリズムに保って汗を搾り出すように。
 魔導師になる為の基礎体力作りだ。朝と夜のランニングは訓練校に入る前の自分の日課だった。
 やがて、走る先に古ぼけたアパートが見えてくる。
 廃棄都市街に隣接するこの近辺は、都心からも離れて治安も悪い。
 首都と比べれば信じられないほど汚い場所だが、決して裕福ではない家族の遺産だけで少女が暮らせる程度に安い家賃は数少ない魅力だった。

 ―――本当は、寮制の魔法学校に入ることも考えていた。
 死んだ兄が管理局員ということもあり、費用も多少は管理局の方が負担してくれる。そこで魔法を学ぶのも一つの道のはずだった。
 だが、ティアナは此処を選んだ。
 あの男が事務所を構える廃棄都市区に程近い、この場所に住むことを。

「……あっ」

 走りながら、<ティアナ>が何かに気付いたように声を上げた。
 過去の自分の視線を手繰りながら、そこに佇む人影を見て、ようやく思い当たる。
 これは、きっとあの日の記憶だ―――。

「よお、精が出るな」
「―――ダンテ」

 今の自分と過去の自分の呟きが重なった。
 アパートの玄関の段差に腰掛けていたのは、ティアナの一番新しい記憶よりも幾分若いダンテだった。
 今とは違う、特注品ではない市販の赤いコートを着て、片手にはワインボトルをぶら下げて過去の自分に笑いかけている。
 その笑みを自分以外の者へ向けることに少しだけ苛立ちを覚える。これは記憶であり夢だというのに。

「ランニング始めたの、何年前からだっけ? 世間のダイエットにいそしむ奥様に見せたい姿だな。努力ってのはこうあるべきだ」
「体力つける為の運動なんだから、痩せたら逆に困るわよ」
「女版ロッキーって感じだな」
「ロッキーってなに?」

 言葉を交わすどころか気付かれもしない自分を尻目に、過去の二人は気心の知れた者同士、軽口を交し合う。
 汗だくで呼吸も乱れたままの<ティアナ>は、それでも言葉とは裏腹に嬉しそうに笑っている。
 確かに、事務所でなかなか来ない仕事待っているか、物騒な場所を好んで出歩いているダンテが自分に会いに来るのは珍しい。
 しかしはて、自分はこの時ここまで分かりやすい顔をしていたのか?
 自分で自分を見ることなど出来ないが、無意識に自覚していたということだろうか。ティアナは一人、顔を赤くした。

474 :魔法少女リリカルなのはStylish(2/17):2008/04/09(水) 01:44:03 ID:r56vN6lx
「何か用?」

 呼吸を整えながら、過去の自分は素っ気無く尋ねた。
 そうだ、それくらいでいい。クールな調子がベストだ。主に過去を振り返る時の為に。

「まあ、座れよ」

 愛想の無い反応に慣れきった様子で、ダンテは椅子代わりの段差をポンポンと叩いた。

「なんで? まだ外は冷えるわよ。汗もかいてるし……」
「なら、部屋に上げてくれるか? 散らかった部屋でお前がシャワーから上がるまで待っててもいいぜ」
「ち、散らかってない!」

 ダンテの言葉に色々な種類の恥ずかしさを感じながら、怒りに任せて彼の隣へ腰を降ろす。
 ああ、そうだ。今も昔も、こうやって自分は彼に敵わなかった。

「……で?」
「訓練校に入る為の試験が近いらしいな」
「世間話しに来たんなら帰って。その通り、最近いろいろ忙しくてあたしも暇じゃないから」

 軽口の度を過ぎた剣呑な返事に、ティアナは過去の自分に対して舌打ちした。
 自分自身の醜態とは、思い返すとこんなにも苛立つものなのか?
 ダンテが知らずナーバスになっている自分を気遣っているのだと、今の自分ならよく分かるというのに。
 しかし、ティアナの記憶どおり、あの日のダンテはそんな自分の焦りを全部理解しているように穏やかだった。

「やれやれ、自分が背負い込んだもののことなると焦りが前に出るのはお前の悪いクセだぜ」
「別に、焦ってなんかないわ」
「そうかい? なら、クールにな。人生には余裕が必要だ」
「余裕なんて……」
「楽しめってことさ、人生をな」

 そう言って笑う彼は、一体何度愚かな一歩を踏み込もうとした自分を押し留めてくれただろうか。
 兄の死と、その魂に受けた屈辱を胸に刻んでから幾度も焦りは襲ってきた。
 この胸に抱いた誓いを果たす為に必要なものはたくさんあるのに、凡人の自分ではどれも遠く手が届かない。
 少しずつ積み重ねてきて、だけど不安はいつも燻っていて―――それが爆発しそうになった時、新しい考え方を教えてくれたのはいつもダンテだった。
 一人で学んでいたらきっと知らなかった大切なことを、彼は自分に教えてくれていた。
 
「ティア、お前今日が自分の誕生日だって覚えてるか?」
「え……あっ!?」
「やっぱり忘れてたな。それが余裕が無いって言うんだよ」

 ダンテが呆れたように肩を竦める。
 あの時は驚いた。確かに自分の誕生日さえ忘れるほど日々に余裕の無い自分に代わって、そういうのには無頓着そうな彼が言い出したのだ。
 過去の自分が困惑する様が、その心情も交えてよく理解出来る。

「で、でも……ダンテにあたしの誕生日なんて教えてないし……」
「戸籍関係の書類を管理してるレナードが偶然話振らなかったら、俺も今日の今日まで知らなかったぜ。お前な、スリーサイズじゃないんだからそれくらい教えろよ」
「でも、教えたところで誕生日パーティー開いてくれるようなガラじゃないでしょ?」
「確かに、ガラじゃないな。だが、無視するほど他人でもないだろ? 俺とお前は」
「あ……ぅ。ごめん……」

475 :魔法少女リリカルなのはStylish(3/17):2008/04/09(水) 01:45:00 ID:r56vN6lx
 ダンテはストレートな好意の表現を嫌っていた。自分と同じで、恥ずかしいのだ。
 だがそれでも、親しい人間への配慮を怠るようなことはしなかった。
 彼も、子供の頃に家族を亡くしている。
 だから気持ちはなんとなく分かる。
 だから、彼が自分に親愛を向けてくれる時はいつも恥ずかしさと胸に迫る熱い感情で苦しくなるのだ。今の目の前の自分のように。

「まったく、本当にギリギリ今日知ったばかりだからな、プレゼントの一つも用意してないぜ?」
「……いいわよ、リボンつけた箱片手に来られた方がビックリするわ」
「確かに、そいつも俺のガラじゃないな」

 そう言って笑い合う二人に、今度こそわだかまりはない。
 試験を前にした焦りも消えていた。

「ねえ、ところでさっきから気になってたんだけど、その瓶は何?」
「これか? さすがに手ぶらで来るのもなんだったからな、レナードからくすねて来た。それなりの高級品らしぜ」

 笑いながらダンテはワインのコルクを抉じ開けた。
 それから、コートの裏から魔法のようにコップを取り出し、そこへ中身を注ぐ。

「飲むか、ティア。ケーキじゃないが、お前特別甘い物が好きってわけでもなかったろ?」
「未成年者……って言っても、聞かないわよね?」
「背伸びしたがるお嬢さんに大人の味を、さ。体も少しは暖まる」

 差し出された安物だが頑丈で無骨なコップを、宝物のようにそっと受け取った。
 琥珀のように美しい中身とそれが放つ芳醇な香り―――だが、それよりもずっと素晴らしくて暖かいものが手の中に在るような気がした。

「乾杯は、何にするの?」
「ティアナ=ランスターの誕生に」
「むず痒いからやめて」
「なら、試験の合格に……栄えある執務官への第一歩に」
「それならいいわ」

 瓶とコップが小さくぶつかる音が聞こえる。
 これは夢だ。でも、そんな小さな音まで鮮明に覚えている。
 あの時二人で飲んだ、ほろ苦い味と喉を通っていった冷たい熱の感触も―――。



 そして数ヵ月後、独学というハンデを乗り越え、自分は訓練校の試験に問題なく合格した。




476 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 01:45:07 ID:XfIbc8RX
17partは短いとは言わないと思うよ支援w

477 :魔法少女リリカルなのはStylish(4/17):2008/04/09(水) 01:45:59 ID:r56vN6lx
 背負ったものは今も変わっていない。その重みも。
 だけど進んできた道、刻んできた時間の中、今の自分となるまでの間で手にしたものは幾つもあって―――。
 自分は確かに、成長している。
 その実感もある。
 だが―――。


 あの時、自分を鍛えることに苦痛などなかった。
 あの時、誓いを果たすことに焦りなどなかった。

 ―――今は、どうなのだろうか?







魔法少女リリカルなのはStylish
 第十一話『Omen』







「おはようございます、ボス。頼まれたもの買って来ま……うわ」

 我らが機動六課の偉大なる部隊長のオフィスへと足を踏み入れたグリフィスは目の前の光景に驚愕した。
 むしろ呆気に取られたといった方が正しいかもしれない。一言で表すならまさに『うわ』であった。

「ん〜、おはよーさん。ちょぉ、見苦しいけど堪忍してなー」

 死人が出せる声があるとしたらきっとそれだろう覇気の無いはやての返事が返ってくる。
 はやてはリクライニングチェアーに深々と背を預け、白タイツに包まれた美脚をデスクに乗せて惜しげもなく晒していた。
 スーツは上着を脱ぎ捨て、シャツの胸元を僅かに開いている。
 半分瞼の下りた眼でグリフィスを流し見る仕草も相まって、それは饒舌し難い色気のある姿―――。
 ただ一つ、その眼が完全に死んでいるということを除いて。

「ひょっとして、寝てないんですか?」
「あー、分かる?」
「すごい隈です。っていうか、むしろ濁ってます」

 その原因がただの寝不足だけなく、眼を酷使したせいであるとグリフィスは察することが出来た。
 デスクに幾つも表示されたディスプレイと、そこに羅列される文字の山がその証拠だ。

「ちょっと調べ物しててなぁ」

478 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 01:46:32 ID:GCvK4csI
実はティアナの下は黒だと知ってしまった俺w支援

479 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 01:46:55 ID:4GkwCEak
イケメン兄妹がいるときいて(ry


480 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 01:46:57 ID:g45ckmT8
支援です。

481 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 01:48:00 ID:iD49SQWM
支援

482 :魔法少女リリカルなのはStylish(5/17):2008/04/09(水) 01:48:11 ID:r56vN6lx
 手元の情報記録用ボードをデスクに投げ出し、デカイ欠伸をしながら足をボリボリと掻く。
 世界の美術品をタワシで磨くかの如き蛮行。色気など欠片も存在しない。
 今のはやては女としても死んでいた。

「……お願いしますから、他の職員の前でそういうことするのやめてくださいね」

 グリフィスは割と切実にお願いした。
 出来れば自分の前でもやめてもらいたい。幻滅とかイメージ崩壊とか以前に、何か本気で泣きたくなるから。
 彼があまりに悲壮な表情をしていたからか、はやては眼を擦りながら足を下ろして苦笑した。

「いやー、ごめんごめん。グリフィス君にはちょぉ刺激的な格好やったね」
「別の意味で、ですね。
 部隊長が過労で倒れたら洒落になりませんよ。無理しないで下さい。資料が必要なら、言ってくだされば整理して提出します」
「うん、でもこればかりは具体的に命令できんことやからな」

 椅子から立ち、グッと背伸びをしてポキポキ骨を鳴らしながらはやてが言った。
 グリフィスはデスクの方へ回り込み、表示されているディスプレイの文章に視線を落とす。

「……これは、例の襲撃事件のファイルですか?」

 複数の画面に表示されていたものは、数年前から発生し始め、奇妙な関連性から<謎の襲撃事件>として一纏めにされている事件の報告書や情報だった。
 管理局内でも不穏な噂となり、そして機動六課にとってはもはや他人事ではない。
 先日のリニアレールの暴走事故で遭遇したアンノウンとその戦闘―――これらも謎の襲撃事件と関連付けられたのだった。

「やはり、襲撃者に共通点が?」
「車両を乗っ取った蟲の方は初めて確認されたタイプみたいやけどね、上空に出現した<死神>の方は複数の目撃例があるみたいや」
「目撃例って……ひょっとして、これまでの事件のファイル全部に眼を通そうとしてたんですか!?」
「流し読みやけどなー。約7年分やけど、遡るほど事件の頻度は下がっとるし……」
「だから! 無意味な無理はやめて下さい、そんなこと個人でやるものじゃないですよ! 命令してくれれば……!」
「それが、そうもいかんのよ」

 はやては言葉を交わしながらオフィス備え付けの洗面所に向かい、蛇口を捻った。
 冷水を叩きつけるようにして顔を洗えば、朦朧としていた意識も多少戻ってくる。

「……私らも体験した襲撃事件。感想はどうや?」
「感想、とは?」
「現実感が無い―――そうは思わんか?」

 タオルで顔を拭いた後、再び交えたはやての視線は鋭く、そこには時折グリフィスを緊張させる上司としての迫力が混じっていた。

「六課の全員が襲撃の状況をリアルタイムで把握しとるし、細部は無理でもシャマルの観測魔法が捉えた記録は残っとる。交戦したフォワードの報告もある」
「……はい」
「記録も記憶もある―――なのに物的な形跡だけが何も残っていない。それがこの事件全体を虚ろにしてる原因やと、私は思う」

483 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 01:48:47 ID:iD49SQWM
支援

484 :魔法少女リリカルなのはStylish(6/17):2008/04/09(水) 01:49:26 ID:r56vN6lx
 グリフィスは、内心の懸念を指摘されたような気分だった。
 事件の現場となった車両内に残っていたのは破壊の跡のみ。
 敵の痕跡は肉片や血痕一つ無く、あの時シャマルによって直接モニターされていなければ、司令室の人間は全員が疑っていただろう。
 ―――本当に敵は存在し、襲って来たのか?
 はっきりとその姿を確認した後でも確信を保っていられない。
 怪物。悪魔。そんな比喩しか当て嵌まらないような常識を超えた存在との遭遇はあまりに非現実的だった。
 あの時感じた恐怖は確かに覚えているのに、それが夜中に背後で感じた気配や誰もいない暗闇の中に潜む者を幻視した時のように、錯覚だと自分を納得させてしまいそうになる。
 得体の知れない恐怖を、『在り得ないものなのだ』と自分に思い込ませる。

「陳腐な話やと思わんか? まるで心霊事件や。
 今回の事件を含む全ての襲撃事件を調べてて感じた共通点やが、どれもこれも未解決で、中では被害者も出てるのにその事件性すら疑っとるものもある。
 『何も分からない』という共通点―――いや、誰も分かろうとせん。状況報告や映像記録だけで、読んでる私にも具体的なイメージや現実感が全く感じられへんのや」
「具体的な命令が出来ないというのは、そういうことでしたか」
「怪しいと言えば、どの事件も怪しい内容ばっかりなんやけどなぁ……。
 霞を掴むみたいに、どれもこれも要領を得ん。直接目を通せば現場の直感で何か閃くと思うたけど、駄目、さっぱり。答えどころか問題さえハッキリせんクイズや」

 事務処理だけの局員には無い、実戦や事件を体験した者だけが持つ勘の働きを期待したはやてだったが、夜通しの努力も無駄に終わったらしかった。
 再び椅子に腰を下ろし、もう一度大あくびをするはやてを労うように、グリフィスは手に持っていた栄養ドリンクを差し出した。
 はやてに頼まれた物で、彼女の地元世界ならば『ユン○ル』とか『リポ○タン』に相当する市販のドリンクだ。

「レリックとは別に、今回の襲撃事件の報告は全て上に回しているはずですが。痕跡が無いとはいえ、数年も続いている事件ですし」
「ん……んぐっ。一応、担当してる執務官がいるみたいやけどな、成果は見ての通り上がっとらん。
 今回の事件も、記録を見る限り一番大規模なものみたいやけど得られた情報はやっぱりどれも不十分や。進展は期待できそうにないなぁ……げふ」
「事態は思った以上に深刻なのかもしれませんね。ゲップしないでください」
「このドリンク、ウマー」

 栄養ドリンクを美味そうに飲み干すはやてに、もはや彼女の女としての醜態に慣れたグリフィスが冷静に突っ込んだ。

「まあ、何にせよ私らの手が伸ばせる範囲はここまでや。<悪魔>の正体を探るのは機動六課のお仕事やあらへん」
「そうですね。とりあえず、今回は無事に乗り切れた事です」
「次があった場合、無事に乗り切れる確信はないけどな」

 そう言って笑うはやての表情は、自分自身を戒めるような厳しさを含んでいた。
 思わず、グリフィスは口を噤む。

「何も改善出来とらん。結局、次があっても現場の人間が対処するしかないわけや。……上の無能やな」

 それが、顔も知らない事件担当の執務官に対するものではなく、部隊長である自分自身に向けている嘲りであることは明白だった。

「<ここ>が今の私の戦場やというのに、何の戦果も上げられんわけや」
「……実戦のように、結果がすぐに出る戦いではありませんよ」
「それまでは、この焦りと無力感とも戦わなあかん。上司いうんは、キツイもんやな……」

 実戦で、無力の代償は分かりやすく現れる。敗北や痛み。だが、上司の無力は何の罪も無い部下達に降りかかる。
 八神はやてにとって自分を犠牲にすることは単なる苦しみでしかないが、他人の犠牲を背負うことは耐え難い罪悪感を伴うものだった。
 はやてには、すでに背負った罪がある。
 この仕事を選んだ理由に、それを償うことが含まれているのは否定出来ない。
 自ら戦火に飛び込み、戦えばどれだけ楽だろう。
 痛みは罪悪感を紛らせてくれる。傷は償いを証明してくれる。
 人の上に立ち、誰かに命ずる度に後ろめたさが、その結果に犠牲が出れば耐え難い後悔が襲ってくるのだ。

485 :魔法少女リリカルなのはStylish(7/17):2008/04/09(水) 01:50:32 ID:r56vN6lx
「―――でも、これも自分で選んだ戦い方か。ごめんな、グリフィス君。愚痴ってしもうて」
「いえ。貴女の負担を軽くすることが、自分の任務です」
「あ、それカッコええ台詞やな。女やったらコロッといってしまうで」
「本心ですよ?」
「わかっとるよ。だから、グリフィス君はいい男や」

 控え目に笑い合うはやてとグリフィスと間には、先ほどとは違い穏やかな空気が漂っている。
 男女を越えた奇妙な信頼関係が二人にはあった。

「さあて、ひとっ風呂浴びてスッキリしてこうかな!」

 胸に燻っていたネガティブな思考と、頭に残る懸念を振り払うようにはやては立ち上がる。

「今日は外回りがありますからね。陸上警備隊のナカジマ三佐との会合の予定です」
「ああ、あの人気前いいからなぁ。上手くすれば、お昼ゴチになれるな!」
「六課設立でもいろいろお世話になってるんですから、くれぐれも浅ましい真似はしないでくださいね」
「何言うとんねん。いい女は男に貢がせるもんやで?」
「分かりましたから、せめてちゃんとした格好していってくださいよ」
「訂正。グリフィス君は『いいお母さん』やね」

 全く悪びれずに、未だ開いたままだったシャツの胸元を閉める。
 指摘したグリフィスの方が頬を赤らめていた。どれだけズボラでもはやては若い女性、しかも美しい。
 気まずげに視線を彷徨わせていたグリフィスは、デスクに表示されていたままだったモニターをもう一度見る。
 改めて事件のファイルを眺め、グリフィスは一つのことに気付いた。

「この事件、首謀者が……」
「ん? ―――ああ、それな。決定的な共通点でもないけど、目に付いたからな」

 謎の襲撃事件―――それらは大半、管理局の部隊が何らかの事件の捜査や戦闘中に遭遇するケースものだった。
 そしてモニターに表示されていた事件は、いずれも容疑者や確定した首謀者が共通するものだった。
 もちろん、それらは全ての襲撃事件の中の一部分に過ぎず、襲撃事件との関連性は全く証明できない。
 しかし、共通点であることに間違いはなく、何よりもそれらの条件を抜きにしても目に付く大物の犯罪者だった。


「<ジェイル=スカリエッティ>―――ロストロギア関連を含む数多くの事件で広域指名手配されている次元犯罪者や」


 後日、機動六課の初任務となった事件にもその人物が関わっていることを、はやてはフェイトから知らされる。
 その時彼女は、確証も無く、ただ運命的な予感を感じずにはいられなかった。
 数年の歳月をかけて時空管理局を静かに蝕んでいた謎の襲撃事件―――。
 その渦中に機動六課が巻き込まれていくことを、この時は誰もが予想すらしていなかったのだった。






486 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 01:50:59 ID:GCvK4csI
残念ながら人は己の知る事しか知ろうとしない支援

487 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 01:51:12 ID:iD49SQWM
支援

488 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 01:51:49 ID:XfIbc8RX
やっと読むのが追いついたw支援

489 :魔法少女リリカルなのはStylish(8/17):2008/04/09(水) 01:54:30 ID:r56vN6lx
「はーい! じゃあ、夜の訓練オシマイ!」

 教導官の言葉と共に、半日以上続いた訓練はようやく終了した。
 すでに日は完全に落ちている。
 なのはの終了宣言で許しを得たスバル達はへたり込む。訓練漬けの日々が続いているが、その日の終わりには皆例外なく体力を使い果たしていた。
 ティアナも自分がリーダー役でなければ腰を降ろしたい気分だった。
 しかし、堪える。人を動かす立場にある者が下の者に弱みを見せるべきではない。そう信じていた。

「疲れてるだろうが風呂には絶対入れ。しっかり疲れを取って、明日に備えろ。熟睡するのも訓練だと思えよ」

 個別教導に入ってから訓練に合流するようになったヴィータの言葉に全員が若干覇気の抜けた返事をする。
 口調こそ厳しいが、ヴィータの忠告には新人達を案じる気持ちが多分に含まれていた。

「それじゃあ、今日は解散。―――あ、ティアナはちょっと残ってね」
「え……?」
「ティア?」
「ティアナさん?」

 いつも通り自室へ帰ろうとしたスバル達三人は、その言葉に思わず緊張を走らせた。
 なのはの声は怒気など含んでいない気軽なものだったが、訓練の後に一人居残らせることに根拠の無い不安を感じる。
 個別教導に移って以来、訓練の最中で他の仲間の様子が分からなくなることはどうしてもある。
 知らない所で、ティアナが何か失敗をしてしまったのだろうか?
 全員がそんな嫌な予感を漠然と感じていた。特に、相棒のスバルの心配は殊更強い。

「―――分かりました。皆、先行ってて」

 しかし、当人だけは普段通り、憎らしいくらい冷静に頷くだけだった。
 最初の出撃以来、ティアナの様子が少しおかしいという懸念を頭の片隅に残しているスバルが、縋るように手を掴む。

「ティア、大丈夫?」
「何が?」
「だってさ……」
「いや、なんでそんなに不安そうなのよ? あたしが怒られるのは決定なわけ?」

 心底不思議で、むしろスバルの勝手な思い込みに不機嫌な表情を浮かべるティアナの言葉に、なのはの方が苦笑を浮かべた。

「そんなに深刻は話じゃないよ。ティアナにちょっと意見を聞きたかっただけだから」
「だそうよ。っていうか、エリオもキャロも釣られて不安そうな顔するんじゃない」
「ご、ごめんなさい!」
「すみません……」

 恐縮するキャロとエリオの背を押し、まだ不安そうな顔をするスバルを連れて行くように促すと、ようやくティアナはなのはに向かい合うことが出来た。
 三人の姿が遠のき、傍らのヴィータが黙っていることを確認して、なのはが口を開く。

「―――ティアナは、今回残された理由が分かってるかな?」
「はい」

 責める口調ではない。ただ純粋に尋ねるなのはに対して、ティアナは淀みなく答えた。

490 :魔法少女リリカルなのはStylish(9/17):2008/04/09(水) 01:56:11 ID:r56vN6lx
「今回の訓練の主旨に背いていたからです」
「今回、メインに行った訓練の主旨は?」
「足を止めての精密射撃による迎撃と制圧です。敵の攻撃に対して回避を控え、予測と先攻によって無駄の無い反撃を行うことです」
「うん、正解。完璧だね」

 なのはは生徒の解答を褒めるように満面の笑みで頷き、その朗らかな雰囲気を保ったまま尋ねた。

「それじゃあ、そこまで理解しながら訓練の主旨を実行しなかった理由は?」
「意味が無いからです」
「おいっ!」

 簡潔なティアナの返答に、なのはよりもヴィータの方が怒りを露わにした。
 表情にこそ表れていないが、ティアナの上官に対する応答は不遜そのものだ。オブラートに包まない率直なティアナの言動が完全にマイナスに出ていた。
 しかし、身を乗り出すヴィータを優しげな表情のままのなのはが制する。

「その結論に至った理由、聞かせてもらえる?」

 普段通りの敬意を失っていないティアナの真剣な眼差しと、苛立ちや怒りなど欠片も見えないなのはの穏やかな視線。
 傍で見ているヴィータには、二人の心境がいずれも全く分からなかった。

「高町教導官の想定する訓練の主旨と、自分の戦闘スタイルが異なっていたからです。
 自分は射撃型の魔導師ですが、立ち位置を固めての精密射撃型ではありません。移動、回避を行いながら射撃を行うスキルを持った変則的な機動射撃型です」

 客観的に自身の能力を解析したティアナの言葉は普段以上に公私の壁を感じさせる。
 もちろん、管理局員として必要な分別ではあるが、なのははそこに拒絶にも近い強さを感じずにはいられなかった。

「静止状態での射撃能力の向上は理解できますが、この場合運動性を殺すデメリットの方が大きいと判断しました。
 自分は、動いて撃つタイプです。それが長所であると理解しています。よって、今回の訓練には意味を感じられません」
「……うん、なるほど。いいね、自分の戦い方を正確に把握してる。凄いことだよ」

 はっきりと断言するティアナの強硬な姿勢に、しかしなのはは反発することもなくあっさりと受け入れた。

「でも、どんな訓練にだって意味はあるんだから、今度からはしっかり従ってね。試しにやってみて損は無いと思うよ?」
「……」
「それじゃあ、わたしからの話はここまで。もう行って良いよ。ゆっくり休んで、明日も頑張ろうね」
「…………高町教導官」

 初めて、ティアナの声に感情が滲み出た。
 それは苛立ちだった。
 自分の態度に叱りもせず、ニコニコと笑顔のまま話を終わらせようとするなのはに、ティアナはその時初めて苛立ちと不満を感じていた。

「それだけ、ですか?」

 なのはの考えがティアナには理解できなかった。
 傍らでこちらを睨んでいるヴィータの方が、よほど分かりやすい。
 教導に逆らっているのだから、叱られても仕方ないと思っていた。
 自分の戦闘スタイルを正確に理解して、それでもなおこの訓練を行うのなら、その理由を教えて欲しかった。
 新人の身で生意気にも意見する自分に怒りを感じ、訓練で叩いて欲しかった。
 しかし、なのはの返した反応はあまりにも緩い。

491 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 01:56:39 ID:GCvK4csI
何度見てもデモノコーラスは大仏にしか見えないぜ支援

492 :魔法少女リリカルなのはStylish(10/17):2008/04/09(水) 01:58:55 ID:r56vN6lx
「あたしの戦い方を理解しているなら、訓練を改善してください」
「うん、長所は伸ばしていこうと思ってるよ。でも、とりあえず今は回り道してみよう?」
「意味が、分かりません……っ」
「説明すれば頭では理解できるかもしれないけど、心はなかなか変えられないからね。今は黙って従ってみて」
「理由を説明してください!」

 暖簾に腕押しななのはの態度に、ティアナはとうとう声を荒げていた。
 苛立ちは募っているが、頭は回っている。自分は冷静だ。
 なのに、自分の理屈に理屈で答えてくれない。こんなの無駄だ。無駄は嫌いだ。嫌いだ。

「―――ティアナ、焦ってるから」

 冷水を頭からかぶせるような言葉を、なのはは告げていた。

「……何、を」
「ティアナは今、焦ってる。何故かは分からないけど、強くなることに急いでる」
「……先日の出撃で痛感したからです。いつ実戦に参加するか分かりません。強くなることを急ぐのはいけないことですか?」
「ううん、貪欲になることはいいことだよ。でも、強くなることは自分を追い詰めることじゃないと思うから」
「分かりません」

 ティアナにはなのはの言っていることが本当に理解出来なかった。
 彼女の言っていることに矛盾さえ感じていた。
 力を求めること。強くなること。複雑なことなどない、シンプルな欲求だ。
 そこに疑問を挟む余地など無いはずだった。
 故に、ティアナにはなのはの言葉の意味が理解出来ない。

「分かり、ません……」

 いつの間にか苛立ちは消え、奇妙な虚しさが胸を支配していた。
 なのはに対するわずかな失望感もそれに含まれている。

「うん、だから結果でティアナに教えてあげる。今は、わたしを信じて」
「……はい」

 その返答が、納得や理解などではなく、諦めによるものだと半ば理解していたが、なのはがそれ以上言及することはなかった。
 言葉だけで全てを伝えることは難しい。
 また余計な懸念をティアナが感じないよう、表情にこそ出さなかったが、なのはの心は歯痒さで満ちていた。

「それじゃあ、また明日。訓練で」
「はい」
「ティアナ。信じてね、わたしを」
「……はい」

 心なし、肩を落としたティアナの背を見送りながら、なのはは自分の拳を知らず握り締めていた。
 彼女が自分を信じているかどうか―――そんなこと、これまでの付き合いで分かっていることなのに。
 どうすれば分かってもらえるのか。どうすれば心を通わせることが出来るのか。いや、そもそも自分はいつからこうして考えながら人と付き合うようになったのか。
 子供の頃、他人を向き合う時はいつも心でぶつかっていた。
 アリサやフェイト、それにヴィータ。最初は壁のあった人達と、いつだってぶつかり合うことで分かり合ってきた。
 そこに迷いなど無く、恐れなど無く―――ただ信じていた。
 なのに今は、ティアナに対して正しいとか間違ってるとか、自分の判断を選んで迷っている。
 それが大人になった証で、短絡的だった自分の成長で、そして失くしてしまった子供の頃の力だった。 
 人は変わらずにはいられない。根本はそのままでも、それらを囲う世界や心は変化していく。
 あの激動の子供時代から10年、なのはは自分の重ねた歳月を噛み締めていた。

493 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 02:01:03 ID:iD49SQWM
支援

494 :魔法少女リリカルなのはStylish(11/17):2008/04/09(水) 02:01:10 ID:r56vN6lx
「……のは。おい、なのは!」
「え!? な……何、ヴィータちゃん?」

 思考に没頭していたなのはは、ヴィータの怒鳴り声にようやく我に返った。
 すでにティアナの姿が見えなくなった方向へ彷徨わせていた視線を、傍らの彼女へ移す。

「ボーっとしてんじゃねーよ。気にしてんのか? ティアナの言ったこと」
「ああ、うん。もっと上手く説明してあげればよかったかな、って」
「何言ってんだ、あんなクソ生意気な口利かれたんだから一発かましてやれよ。っつか、もっと厳しくいってもいいと思うぞ」

 感情的なヴィータの物言いに、なのはは苦笑した。
 ティアナの言い分が正しいことはヴィータも理解している。ただ、それを抜きにして態度に純粋な怒りを感じていた。
 ヴィータの考え方はいつだってシンプルだ。
 思慮が浅いわけではなく、ただ自分の感じたことを隠そうとしない。
 その率直さが欠点であり、同時に余りあるくらいの美点であることをなのは知っている。

「……ヴィータちゃんがティアナを教えた方がいいのかも」
「おいおい、オメー何弱気になってんだ? しっかりしろよ」

 冗談とも取れないなのはの発言に、ヴィータが本気で顔を顰める。

「らしくねーぞ。まさか、本当にティアナのこと持て余してんのか?」
「ううん、ティアナのことはよく分かってるよ。
 ティアナは確かに戦闘力は高いけど、自分でも言ってる通り『動く戦い方』だからね、どうしても周りへの視野が狭くなってるんだ。
 あの娘は自分で戦って勝つことを第一に考えてる。フォワードとしては間違った考えじゃないんだけど、指示を出す現場リーダーとしては、一歩下がった視点も持って欲しい」
「だったら、今言った内容そのまま話してやれよ。アイツ、頭いいから理解できると思うぜ?」

 ヴィータは断言する。ティアナへの苛立ちを露わにしながらも、彼女を認めていることは確かだった。
 しかし、なのはは首を振った。

「さっきも言った通り、ティアナは自分で戦うやり方に納得してる。それが今の強さに繋がってるんだ。
 説明をしても理解するのは頭だけ、あくまで『わたしが頼んだやり方』として受け入れるだけだよ。きっと、戦う上での優先順位は下のままだ」

 今回の訓練データを整理する片手間で、独白するようになのはは自分の考えを吐露した。

「今のままじゃ、ティアナは自分から突っ込んでいく戦い方をやめられない」
「昔のなのはみてぇに、か……」
「わたしと違う点は、ティアナはその無茶がもたらす結果を分かってるってことかな。それを納得した上で、やめない」
「性質わりーな。頭の良さが裏目に出てやがる」
「ティアナが命を賭けることを、その覚悟を、止める方法は思いつかない……。ただ、気付くのを待つしかないよ」

 ―――生きることは、一人で始まり、一人で終わるものではないということを。
 自分の命を蔑ろにすることが、どれほど親しい者達に悲しみを与えるのかを。
 理解して欲しい。強制は出来ないが、強く願う。
 ティアナを想う人間の一人として、自分も含めて。

495 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 02:02:25 ID:iD49SQWM
支援

496 :魔法少女リリカルなのはStylish(12/17):2008/04/09(水) 02:03:05 ID:r56vN6lx
「……正直、迷ってもいるんだ。
 ティアナは強くなりたい。究極的に、あの娘が求めるものはそれだけなんだから、別におかしなことじゃないかなって」
「鍛えるだけが、教導官じゃねえだろ。正しく導いてやるのが仕事だ」
「でも、ティアナはわたしが思うよりずっと冷静だし、頭が良いよ。間違ってるのは、わたしなのかも」
「……」
「ティアナに会って、自分の未熟さを改めて実感したよ。わたしは、自分に好意を持たれた関係に、慣れすぎてたんだね」
「なのは……」
「難しい、ね」

 悲しげに笑うなのはの顔を、ヴィータは久しぶりに見た。
 エース・オブ・エースと讃えられ、エリートと持ち上げられる少女が、強者の仮面を外して自分に見せることを許した弱みがこれだ。
 それを僅かに嬉しく思い、気の利いた言葉も掛けてやれない情けなさを強く思う。

(スバル、エリオ、キャロ……それにティアナ。お前ら、自分がどれだけ幸せか、早く分かれよ)

 夜空の下、ヴィータは切に願った。

(自分達が好き勝手に戦っている時にも、なのはに守られてるっていう幸せを―――)

 それぞれに戦う理由があると思う。たった一つの命、賭ける時はそれぞれの自由だ。
 その上で、行く末を案じることは押し着せがましいのかもしれない。
 でも、理解して欲しい。
 家族でも友人でもなく、赤の他人として出会い、部下として扱う者を相手に、心底親身になろうとするこのお人好しの想いを。
 ただそれだけは、汚れない本気の想いを―――。

(迷わず進めよ、なのは。お前のことは、あたしが守ってやる)

 いつの間にか見上げるようになった、それでも芯はきっと変わっていない背中を見つめ、鉄槌の騎士は自らの尊い誓いをたった一人の少女へ捧げた。






 その日の夜、ティアナは寝付くことが出来なかった。
 なのはの言葉が、いつまでも頭に残って離れない。
 かつて、強くなることに苦痛は無く、焦りは無く―――でも今は?

「……スバル、起きてる?」
「うん、何?」

 囁くような小声だったが、二段ベッドの上からはすぐに返事が返ってきた。
 暗くなった部屋の闇にも目が慣れ始めるくらいの時間は経っていた。
 普段のスバルならとっくに爆睡している時間だ。寝惚けた声でもない。
 ティアナは少しだけ驚いていた。

497 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 02:03:59 ID:iD49SQWM
支援

498 :魔法少女リリカルなのはStylish(13/17):2008/04/09(水) 02:04:07 ID:r56vN6lx
「あのさ、あたし……変かな?」

 普段なら、きっとこんな弱みは見せない。こんな縋るような声は出さない。
 だから、やはり今の自分は変なのだと、ティアナは奇妙な実感をしていた。

「あたし、焦ってるかな……?」

 ティアナの漠然とした問いに、スバルはしばらく沈黙を保っていた。
 その沈黙の間に、途端に後悔と恥ずかしさが込み上げてくる。普段あれだけ偉そうなことを言っている自分が、一体何を弱気になってるんだ?
 少なくとも、このヘッポコな相棒に見せるべき弱さではなかった。
 ティアナはスバルが何かを答える前に慌てて前言撤回しようと口を開き―――。

「うん、最近のティアはちょっと変かな」

 はっきりと告げられたスバルの言葉に、思わず口を噤んだ。

「ティアが<悪魔>って呼んでた敵。アイツらと戦ってる時から、何かおかしいって感じてたよ。
 焦ってる、とかは気付かなかったけど、様子がおかしいのは思ってた。何に焦ってるのかは分からないけど、でも……アイツらが原因なんだよね?」
「……まあね」
「聞かないよ。なんか、教えてくれないと思うし」
「…………そうね」

 ティアナがそう答えてから、少しだけ間が空いた。
 予想していたとはいえ、ティアナの返答に少しだけショックを受けたのか。それとも。
 スバルが何を考えているかは分からない。

「……わたしよりずっと頭が良いティアの悩みなんて、きっとわたしには解決できない」

 普段と比べて驚くほど感情の抜けた、静かな声だった。

「だから、待ってる」

 何を?
 尋ねる代わりに、ティアナは視線だけを上に向けた。

「ティアが心配してること。それが上手くいっても、失敗しても、全部終わるまで、わたしは待ってるから」
「……スバル」
「何か間違って、失敗しても、いいじゃん。全部終わったらさ、あとはもう一回始めるだけなんだから。やり直せるよ、幾らでも」

 ティアナは疑問に思わずにはいられなかった。
 いつもあれだけガキっぽい奴なのに、なんでこんなに泣きそうなくらい穏やかで優しい声を出すんだろう?

「わたしがいっぱい失敗した時、いつもティアが助けてくれたからさ。だから、一度くらいわたしの方が助ける」
「……」
「ティアは、迷わず進めばいいよ。わたしが支える。二人でなら、大丈夫」
「……うん、ありがとう」
「いえいえ」

499 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 02:04:33 ID:iD49SQWM
支援

500 :魔法少女リリカルなのはStylish(14/17):2008/04/09(水) 02:04:57 ID:r56vN6lx
 ティアナはかろうじて声を絞り出すことが出来た。
 スバルの気遣いに、胸から込み上げてくる熱い感情が頭まで昇って溢れそうだった。
 それが眼から涙になって流れそうになるのを必死に堪える。代わりに、口元に浮かぶ笑みは消せない。
 スバルには見えないのにそれが恥ずかしくて、枕に顔を埋めた。


 かつて、強くなることに苦痛は無く、焦りは無く―――今は?
 大丈夫。
 二人なら、きっと大丈夫。






 その夜。
 街灯と走り抜ける車のヘッドライトが照らす街の暗闇を、歩く影が二つ。
 ―――いや、三つ。
 いずれもフードの付いた外套を深く被り、この夜の闇の中へ更に紛れて人目を避けるよう密やかに歩く。
 人のあまり出歩かない深夜。道路を駆け抜けてく車のドライバー達も、三つの影とすれ違い、そして誰も気付かない。
 気付いた傍から、頭に留めず、忘れていく。
 在り得ないはずのものを、錯覚だと思い込むことが普通であるように。

 死人が歩くことなど在り得ない。
 親を失った子供など忘れてしまう。
 そして、<悪魔>の存在など信じない。

 大柄な<男>一人。
 幼い<少女>一人。
 美しい<女>一人。
 影が三つ、夜の街を彷徨うように歩き、消える。

 三人の歩みが、一つの事態の前兆であることは確かだった。







501 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 02:05:35 ID:iD49SQWM
支援

502 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 02:05:48 ID:4GkwCEak
時空神像とレッドブチャイク支援

503 :魔法少女リリカルなのはStylish(15/17):2008/04/09(水) 02:06:46 ID:r56vN6lx
 クラシックな屋敷の片隅に置くだけで結構なアンティークになる骨董品のジュークボックスからは、現役を主張するようにメランコリックな歌声が流れていた。
 それはこの<Devil May Cry>―――悪魔も泣き出す男ダンテの事務所に相応しくない静かな歌だった。

「女々しい歌だぜ……」

 お気に入りのデスクが崩壊してしまったので、中古品に買い換えたソファーで寝転がっているダンテもぼやかずにはいられない。
 <ドクター>の襲撃を受けて半壊した事務所の中で、奇跡的に息を吹き返したジュークボックスは、しかしアレ以降何故か静かで物悲しげな曲しか流れなくなったのだ。
 中のディスクを交換する機構がイカレたのか、どれだけいじっても似たような曲しか流れない。
 かくして、ロックをこよなく愛する悪魔狩人の住処は中高年が足げなく通うジャズバーのような穏やかさへと変貌してしまったのだった。

「クソッ、いい加減自殺しちまいそうな歌声だ。何言ってるかも分からねえ」
「死んだ恋人を惜しむ悲しい女の歌さ。知らねぇのか? 古いが、レア物の歌だぜ」

 唐突に返ってきた答えに、ダンテは顔にかぶせていた雑誌を除けた。
 玄関には見慣れたビア樽腹が立っている。

「あいにく<こっちの世界>の流行には疎くてね。ノックしろよ、レナード」
「ドアがあればな」

 ダァム、と悪態を吐くと、ダンテはもう一度雑誌を顔に被せて不貞寝を決め込もうと躍起になった。
 ここ一週間程、この店はいつになくオープンだ。そのままの意味で。
 爆風で吹き飛んだ全ての窓は、応急処置として透明なビニールで塞いであるが、両開きのドアがあった玄関だけは手のつけようがなかった。
 おまけに、ほとんど全滅した家具と板切れで塞いだ床の穴のせいで、さながら廃屋のような様相と化している。
 ジュークボックスとソファー、それに床に転がした電話だけが生活臭を放っていた。

「いつまでこのボロ屋に住むつもりだ?」
「オイ、俺の店をボロ屋扱いするんじゃねえ」
「『元』だな。あるいは『店の跡』だ。直す目処は立っちゃいないんだろ?」
「寝室とシャワーと電話を直したら金が底を着いたんだよ」
「その後で骨董品の修理代とコートのスペア買ってちゃあな、自業自得だ」
「うるせえ」

 バカにした笑みを隠そうともしないレナードの顔を、不愉快そうに本で遮り、ダンテは唸った。
 結局直らなかった上に、予想以上の料金が掛かったジュークボックスの音楽が憐れむように流れる。
 なんとも惨めな事態に陥ってしまったが、先立つものが無くてはどうしようもない。
 この状況を作り出した犯人に対する怒りを沸々と沸き立たせながら、同時に何とも虚しい気持ちになって、ダンテはここ数日電話が鳴るのをただ待つ時間を過ごしていた。

「そんな憐れな貧乏人に、このレナード様が金になる仕事を持って来てやったぜ。ケツにキスしな!」

 高揚を隠さず、嬉々として告げるレナードの言葉に、普段なら無視しているはずのダンテは渋々体を起こした。
 自他共に認める小悪党であるこの男が持ってくる仕事は、どれもこれも胡散臭いものばかりだ。
 大金をチラつかせて、割に合わないリスクを背負わせる。
 それがレナード自身の姦計であったり、本当に不運なトラブルであったりする点がどうにも救えない。早い話が金を持ってくる疫病神だ。
 しかし悲しいかな、今のダンテにとって必要なのはその金であり、真の危機はこの店が本格的に潰れることだった。

「……どんな依頼だ?」

504 :魔法少女リリカルなのはStylish(16/17):2008/04/09(水) 02:11:04 ID:r56vN6lx
 ダンテは不本意を分かりやすい形にした表情で尋ねた。
 いつになく素直なビジネスパートナーの態度に、いたく上機嫌でレナードは饒舌に答える。

「数日後にクラナガンのホテルで行われるオークションの警護さ」
「オイ、即日じゃないのかよ?」
「そこまで贅沢言うんじゃねえ。
 だがな、金持ちが集まって無駄金叩き合うオークションだ。払いもいいぜ、前金でも結構な額が貰える」
「もう貰ってるんだろ? 俺の取り分で玄関のドア、直しといてくれ」
「へへ、受けるんだな?」
「……詳しい内容を話せよ」
「そうこなくっちゃな!」

 ダンテの好みではない退屈そうな依頼だったが、背に腹は代えられない。
 差し出された依頼内容のコピーを、渋々受け取る。

「依頼主は―――<ウロボロス社>?」

 そこに書かれた見慣れない名前に、ダンテは僅かに眉を顰めた。
 会社ぐるみでの依頼とは、なんとも大げさな話になってきたものだ。

「オイオイ、その会社を知らねぇのか? ミッドチルダでも有数の企業だぜ」

 レナードは無教養な人間を嘆くように肩を竦めた。

「島一つ分の街を丸ごと支配しちまうような大企業だ。今回のオークション参加者でも一番の大物だな」
「料金を奮発してくれるのは嬉しいが、それ以外は興味ないぜ。それで、俺はその参加者のケツを守れば良いのか?」
「さすがにそいつは専属のボディガードがやるよ。お前さんは、少し離れた所で襲撃に備える」
「用心深いことだな」

 言いながらも、ダンテはシークレットサービスの真似事をやらずに済んでホッとしていた。
 金持ちの護衛など、一番苦手な仕事だ。
 もちろん、それが見た目麗しい令嬢の相手なら喜んでするのだが、あいにくと護衛対象の写真は男だった。

「最近、謎の襲撃事件も頻発して物騒だからな。
 オークションには時空管理局も護衛に来るらしいが、私的にガードを雇う金持ちも多いのさ」
「時空管理局だって?」

 一瞬、ダンテの脳裏に久しく連絡を取っていない妹分の顔が思い浮かんだ。
 しかし、すぐにその懸念を打ち消す。二人の仕事が重なる可能性などほとんど無い。
 ダンテはこの時、自らが持つ因縁の強さをまだ知りもしないのだった。

「仮にもお偉いさんの集まる場所へ行くんだ、そんな派手な格好してくんじゃねえぞ?
 特別に仕事着を用意してやるから、いつもの店へ来な。この部屋は仕事の話をするには向かねえ、俺の高級な鼻が腐っちまうわ」

 もうすでに仕事を達成したかのような浮かれ具合で、レナードは笑いながら事務所を出て行った。
 過ぎ去った後にも快晴など無い嫌な嵐が過ぎると、ダンテは遠ざかっていく笑い声を見送ってため息を吐いた。
 まったく、世知辛い世の中だ。

505 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 02:11:08 ID:iD49SQWM
支援

506 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 02:11:17 ID:GCvK4csI
アルゴサクス、ザ、ケイオス盛り合わせ支援

507 :魔法少女リリカルなのはStylish(17/17):2008/04/09(水) 02:12:23 ID:r56vN6lx
「泣けるぜ」

 どんなに情けなくても、クールさだけは失くさない声で呟き、ダンテはもう一度依頼のメモに目を落とした。
 オークションに参加する護衛対象の情報が載っている。
 といっても、それは詳細な個人情報などではなく、新聞の切り抜きを付けた大雑把な物だったが。
 しかし、廃棄都市街の何でも屋程度には情報を気安く渡せない程に、その人物は会社でも高位の人間だった。
 大企業ウロボロス社のCEO(最高経営責任者)―――。

「名前は<アリウス>か……」

 死人のような顔色と野獣のような瞳を同居させた、異様な男だった。






to be continued…>






<ダンテの悪魔解説コーナー>

シン・サイズ(DMC1に登場)

 <罪>の名を持つこの悪魔は、やはり物質の媒介なしにはこの世に具現化できない低級な奴らだが、その半実体化した希薄さのせいで体への攻撃は擦り抜けちまう。
 それだけじゃなく、壁や床まで透過できるってのはちょいと厄介な特性だぜ。
 唯一実体化している大鎌は、魔力を集中することで攻防一体の強力な武器だ。
 動き自体は決して速い方じゃないが、近接攻撃に対する反応速度は相当なもので、対剣士の戦法を熟知した古強者ってワケだ。
 <死神>と称される見た目も相まって、歴史を感じさせるオーソドックスな悪魔の代表だな。
 しかし、古い物は良いなんて懐古主義じゃあ現代では生き残れないぜ。
 コイツらの媒介が<仮面>である以上、弱点なんて言うまでもないよな?
 時代遅れの<死神>には近代兵器で『時代の新しさ』ってヤツを味わってもらうとしようぜ。

508 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 02:12:45 ID:XfIbc8RX
合流フラグktkr支援

509 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 02:17:28 ID:GCvK4csI
シンサイズの説明よく考えたらセインの存在意義が危ういぞ支援

510 :魔法少女リリカルなのはStylish(17/17):2008/04/09(水) 02:18:41 ID:r56vN6lx
こんな真夜中に、支援してくれた皆! ありアリアリアリアリーヴェデルチ!(さよならだ)
投下は以上です。ありがとうございましたw

今回は動きの無い話ですね。
アクション好きな方には退屈だったかもしれませんが、個人的には以前の戦闘だらけの十話と同じくらい書いてて楽しかったり。
こういうキャラを掘り下げるのって、好きなんですよねぇw
可能な限り、アニメと変更無く、文章だからこそ補足できる心理描写などを目指して書いてます。
なのはさんはね、例え10年経っても良い子よ、きっと。
十話までを第一部とするなら、次回からは第二部になります。そろそろダンテ以外のキャラも出てくる予定。
でもDMCはキャラが少ないから登場前の伏線とか張り辛いですなw

511 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 02:23:18 ID:XfIbc8RX
GJ!
ティアナがヒロインしててよかった!
ところで…
>「泣けるぜ」
それ違う人w

512 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 03:45:35 ID:ZyQGgdYs
ティアナの悩み、なのはさんの悩みが其々もっともらしくていいと思います、GJ!


513 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 04:33:13 ID:oSm0ftkj
GJ!

スタンドアローン的思考なガンスリンガーのティアナ乙!
しかし真っ向から上官にたてつくとは……ティアナ、恐ろしい娘。
金欠な兄貴分との再開も近いからとにかくKO……COOLに頑張れ!

そしてなのはさん。
優しくて親切なのは結構なんですが……やっぱり会話のキャッチボールは重要でっせw
そして自身も言うように今は『自分に好意を持たれた関係』では無いんすから、せめて上官と部下としてビシッと行きましょうや。
あとヴィータ、お前の主ってなのはさんでしたっけ?な展開に女を放棄しつつあるはやて涙目かもよw

514 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 05:49:02 ID:z04sCo38
GJです!お疲れ様でした。
凄い!本編を見て、多分、皆が疑問に思っていた所を的確に突いている。
相変わらず、芸の細かい作者殿に脱帽します。


515 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 07:08:53 ID:LTHx4U2d
GJ!やっぱり貴方の作品は最高だ!

今回のなのはとティアナに関しては、ティアナのほうが正論な気がする。
いままでの自分のスタイル変えろって言われたら誰でも受け入れられないだろうしなぁ。

なのはは今回のティアナみたいなことを言われて受け入れられるのか?

516 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 07:30:31 ID:WQzLakyi
GJ!
悩むものですよね
カプコンつながりでどっかの白い悪魔みたくできるわけでもないですし

517 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 07:30:37 ID:DHY5+yEW
GJ

遂に合流フラグがキター!
ティアナがイイ感じに成長してるな。
でもやっぱり突撃指向は治って無いか…つうかダンテの影響受けたならひどくなっててもおかしくないな…。

というかStylish氏のティアナの可愛さは毎回毎回異常
Sティアナ可愛いよSティアナ


518 :名無しさん@お腹いっぱい。::2008/04/09(水) 08:00:56 ID:D+is15x1
GJ!です
 DMCのヒロインさんがちらっとお見かけしたので近いうちにダンテに遭遇するときが楽しみです

519 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 09:26:48 ID:HZh2uxgY
GJ!
確かに自己流でも努力をしていれば相当強くなれると思います。
でもこれからの戦いを考えると、どうしても限界が出てくると私は思います。
なのはの教導でティアナがどう変わっていくか、楽しみです。

520 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 10:05:24 ID:7ID31nZT
GJ!
教導というのならティアナの持ち味を引き出させてほしいものです。

521 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 10:15:29 ID:ClDCLdDU
>>510
GJ!なのはやティアナ、ヴィータの人物描写が秀逸。
ティアナ・なのは、それぞれの思いが伝わってきて、読みふけってしまった。
本当にGJ

522 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 10:30:38 ID:YZFS6akN
戦術の幅が広がることは視野が広がることに繋がり、つまりは戦略性の向上と安定した勝利に繋がる。
果たしてティアナはどこで気付くのか。どこで気付かされるのか。

やっぱり丁寧に描写された流れは読んでて安心できますな。次回を楽しみにしています

523 :メガトロン:2008/04/09(水) 10:34:09 ID:1CeKA2f5
職人の皆、GJだ!
突然だがBeastStrikerSを投下するぞー。

524 :メガトロン:2008/04/09(水) 10:36:49 ID:1CeKA2f5
タランス「皆久しぶりっスね〜。アチシの事覚えてるぅ?タランスっスよ。良い子も悪い子も画面を見る時は部屋をあかるくして出来るだけ離れて見るっスよ。BeastStrikerS始まるっス、ウッシャッシャッシャッ♪」


第11話「機械竜の鼓動」

シルバーボルト「Σあぁっ!?心臓バクバクしてまっすぅ〜」
ブラックウィドー「さあ、いい子だから私に見せるっシャよ〜うふん」

コンボイ&なのは「コラそこR指定だぞ(なの)!」


なのは「前回のリリカルなのはは−−


はやて「ビックコンボイさん、リインを助けてくれてありがとな……おかげで笑ってはいけないシリーズが盛り上がるわ」

ビックコンボイ「さぁな、彼女を助けたのは俺の同僚だ。何もしちゃいない、じゃあな」

リインフォース「必ず生きて帰ってこいビックコンボイ」


インフェルノ「好きですごっつんこ!」

ライオコンボイ「Σグアァァ!…………はぁ、はぁ。ごめん……なさい」

彼の声に全く耳を傾ける事もせず、インフェルノの口から想いが放たれ、ライオコンボイのスパークを青白い光が拘束する。
そして気を失った彼はメガトロンに捕われ……

メガトロン「ふふふ、今から貴様は我がデストロン戦士。ナンバーズ13・トランスフォーマーになるのだ」

ライオコンボイ「サー、イェッサー」

サイバトロンのデータをデストロンに書き換えられた彼は悪のトランスフォーマーとして生まれ変わったのだった。

そしてそれはワスピーターを抹殺し自身をワスピーターと偽るスタースクリームの退場となるの予兆であった……。

新歴0071年04月
ライオコンボイ、ランページがメガトロンの傘下に入ってから数ヶ月が経ったある日。



『タランス、クイック・ストライク。例のTFはどうなっている?』



525 :Bsts:2008/04/09(水) 10:39:49 ID:1CeKA2f5
ここはクラナガン、首都防衛隊 隊舎 保管室。

様々なモニターや本棚が並ぶ薄暗い部屋。
タランスの端末に通信していたのは防衛隊の長官、レジアス・ゲイズ中将であった。
「ウッシャッシャッシャッ、調整はあと少しで終わるっスよ。」

「ブラブラブラ〜、調整が済めばコイツに乗り換えれるんだな〜」
嬉しそうにクイックストライクは自身のボディを撫でて言う。

「正解、このボディで首都を防衛するっスよ〜。」

『タランス』
「はい?」
『まさか、謀ってはいないだあろうな?』
「ウッシャッシャッシャッ、まさか〜アチシはからっぽのトランスフォーマーを土産に入ってきたんスよ?」
『……まあ、良い。では調整が済み次第、連絡しろ。それと、スタースクリームには臨海第8空港にビークルモードの姿で来るようにと伝えておけ。出迎えるのはお前達だ』

「了解っス」
「了解ブラ」

通信が途切れてからタランスはモニターにコードを繋いでいく、その先には部屋の中央に横たわる機械の竜がいた。

「ウッシャッシャッシャッ、さてと。これで起動ワードを入れて駆動系をメンテナンスするだけっス。」
「しかし、メガトロンもマヌケブラ〜。まさか、からっぽで、しかもレリック付きのボディを俺達にまんまと取られるんだからな、ブラブラー♪」

「そ〜れ〜は〜バカトロンだからっスよ♪ウッシャッシャッシャ♪」
「それもそうかぁブッラッブッラ♪」
薄暗い光の中、二人の高笑いが保管室に響き渡る。
そして、モニター上で竜のメンテナンスを済ませたタランスは今だメガトロンの基地に居るスタースクリームへと連絡を繋ぐ。


新デストロン基地。スタースクリームの部屋。

『−−と言う伝言っス。』
レジアスからの言づてをスタースクリームはタランスから受け取った。

「……ふふふ、あのからっぽのトランスフォーマーのメンテナンスは終了したか。よく分かったタランス。戦闘機に擬態して空港に向かおう」
『待ってるっスよ〜』




526 :Bsts:2008/04/09(水) 10:40:55 ID:1CeKA2f5
タランスからの連絡を切り、スタースクリームは直ぐさま部屋を出てメガトロンの元へと向かう。
理由をつけてメガトロンから離れる為だ……。

すでに彼の頭は新しく強力なボディが手に入ることでいっぱいであり、自然と口の端を吊り上げていた。

−さて、メガトロンの隙を討って逃げるか……いや。奴が持っているロストロギアを土産にするのも吉か。

ここのところ、自分やナンバーズ。ルーテシア達やライオコンボイらを使い、メガトロンの手元には着々とロストロギアが集まりつつあった。
レリックだけではなく、今は亡きスカリエッティの名を使い。時空管理局最高評議会に潜伏しているドゥーエ、ジャガーから既に局に回収された別のロストロギアも手中にある。

それは何の為か……近くでメガトロンを監視していたスタースクリームでさえも解らない。
しかし、彼の野望でこの世界の方針が決まるのはつまらなくもあり、腹立たしい。

−ふん、野望が叶えるのはメガトロンではなくこのスタースクリームだ!



同基地、中央ホール。
メガトロンは相変わらず宙に浮く椅子に腰掛け、巨大なモニターから映しだされている立体地図を鋭い視線で見ていた。


それはミッドチルダ全域の地図……。

「ち、どれだけ遺跡を探ってロストロギアを集めても。戦艦も憎きサイバトロンの先祖も見つからんか。」

苛立ちを募らせながら、メガトロンは別のモニターを開いてゴールデンディスクに記されている古代地図と今の地図を見比べる。

「やはり、この第8空港に何か、があるな……」
以前、ノーヴェに探らせた時の映像も表示して呟く。


−ん? 誰か来る。スタースクリームか……。
彼だと確信し、メガトロンは早々と表示していた地図、モニターを閉じて彼の到着を待つと案の定スタースクリームが中央ホールに入ってきた。


「メガトロン様〜」

「なんだ、ワスピータ。おやつのチョコビはまだよん。」

「おやつはほしいなぁ〜、でも今は別の用があってきたぶ〜ん♪」
「別の用だと?」

「はいです、実は先程。ルーテシア達から空港にタランス達が居たと聞いたんですぶ〜ん♪そこで僕ちゃんがロストロギアを囮に誘い出す作戦を考えましてメガトロン様に許可をいただきたくやってきましたぶ〜ん」



527 :Bsts:2008/04/09(水) 10:41:48 ID:1CeKA2f5
その報告にメガトロンは悪辣な笑顔を一瞬浮かべるが、直ぐに表情を引き締める。まるでスタースクリームに見られないように。

「そうか……ルーテシアが、な。
うすあじのないカールみたいな貴様だけでは物足りんが。せっかくの新しいボディだ、コイツで見事に罠を張れ。」
そう言い、スタースクリームの前に浮かばせたのは結晶体のロストロギア。
「了解ですぶ〜ん。」
メガトロンに敬礼し、スタースクリームは受け取ったロストロギアを内心では半信半疑ではあるがそれを持って転送を開始する。


「ふん、芝居を見たからにはお返しをせんとなぁ。ライオコンボイ!ルーちゃん!」

スタースクリームがこちらを盗聴していないなら今動くしかない。

「は!」
『何……?』

メガトロンの呼びかけにライオコンボイは黒い身体を影から切り離し、
ルーテシアは念話を繋いで尋ねる。


「ルーテシア、ライオコンボイを空港に転送出来るな?」
『うん……出来る。ところでメガトロン様、スタースクリームに何を渡したの?』

「ふっふっふっふ……タランスへの土産だ。あのアイスクリームは渡したものをロストロギアだと信じていないだろうが。あれはモノホンだ……綺麗な花火があがるぞ。ルーテシア、ライオコンボイを転送しチャイナ。チャイナはお隣りさん」
メガトロンの指示に、ルーテシアは頷き。転送魔法を開始する。


「ではメガトロン様。ごきげんよう!に行ってまいります。」
「目覚める小堺さんに『洗剤をよろしく』と伝えてちょ」

意味深な言葉を向け、ライオコンボイが足元に発生した魔法陣に沈み込むように消えてゆくのをメガトロンはる先程スタースクリームに向けたものよりも邪悪な笑みを浮かべていた。
それは……逆臣に連れていかれた遠くにいる破壊大帝の鼓動を聞こえての笑みであった。

ドクンッ……





528 :Bsts:2008/04/09(水) 10:42:58 ID:1CeKA2f5
「ダイノボット、どうしたんですか?」

ライオコンボイが転送された同じ頃、聖王教会。

先程から中庭で遠くの空を眺めているヴェロキラプトルの姿のダイノボットがいた。
「ダイノボット…?」
シャッハの言葉に気付かないのか、細長い瞳はずっと空を映している。


−なんだ……また嫌な予感がしやがる。デストロンの匂いダァー……。
「シャッハ……ちょっとケツがいてぇから薬局行ってくる。」

「おケツの薬は……たしか切らしてましたね。」
「いや、お前がケツとか言うな。んじゃ、ちょっくら行ってくるぜ」

「あ、はい「待って、ダイノボット」

シャッハの許しを得て中庭から出ようとすると、目の前には金髪の女性が厳しい表情で立っていた。

「何の用だカリム……」
「気を……つけてね」
(必ず、生きて帰ってきてね。)

ふっ、と微笑むカリム。
そんなことをコンボイ達以外から言われたのがダイノボットは恥ずかしかった。

「じゃあ、な……ダァ」

乾いた鱗が赤く染まった様など見られたくねぇ……。
自然と脚は前へと踏み出していた。


ドクンッ……ドクンッ……

『誰ダ……ワシノ身体を持ッテイルノハ……』


臨海第8空港。

その日は空港を利用する、出迎える沢山の人が賑わっていた。そんな光景の中。
ターミナルへと何かが景色に姿を隠しながら降り立った。
人々は気付いていない……。

−ここが、第8空港か……。

そう呟き、何かは辺りを見回す。
−タランスめ……まだ着ていないのか?
ステルスを解き。戦闘機が姿を現し、ロボットへと変身する。

そして同じ頃、タランス、クイックストライクも姿を隠すようにメタルスタランチュラと機械竜の姿でターミナルに降り立つ飛行機に張り付いていた。
「ウッシャッシャッシャ♪アイスクリームが居たっスよ」

スタースクリームの姿を発見し、タランスとクイックストライクは飛行機から離れひっそりと彼を見据える。
「ブラブラブラ〜♪この新しいボディでやつを仕留めるよジャムおじさんブラ〜♪」

「これでスタースクリームともおサラバするっスよ……クックックッ、ウッシャッシャッシャ」
だが、その時……。



529 :Bsts:2008/04/09(水) 10:47:48 ID:1CeKA2f5
「グギアァァァ!!」
突然、悲鳴をあげるクイックストライクにタランスは驚きながらも彼に視線を向ける。
「どうしたっス!?」

「わ、わかんねブラ!突然、痛みが−−…………」
その言葉を最後にクイックストライクはグラリとその巨体を地面に倒す。

「な、何がどうなってるっス……ドッキリのカメラは!?」

ドクンッ……ドクンッ……

鼓動が……辺りに響いていた。
『誰ダ、貴様ハ誰ダ……』


「お前はライオコンボイ……」
「呼ばれて浮き出てパーコー麺〜」

クイックストライクが倒れ込む数分前、スタースクリームの前には黒いライオンが魔法陣から浮き出るように姿を現していた。
だが、スタースクリームにはこれは予測の範囲内であった。タランスらと引き合わせてここで手を出してロストロギアを取り返す。と。
「ふん、やはりメガトロンは何かを企んでいたのか……だが、このロストロギアは本物だぞ!手を出せば−−」

「ああ、お前。には用はない。」
黒いライオンはそうつげると、たて髪からキャノンを展開し砲身に黒い力を収束し。
「アンゴルモアキャノン東MAァッX!!」
スタースクリームが持つロストロギアに発砲した。

……ドクンッ…ドクンッ…

「な、なんだと!?」
発砲した音に辺りの空港内外の人々は自分達に気付いている。

発砲された結晶は細かい亀裂が走り、一気に崩壊してしまう。
「ちっ!」
スタースクリームは強大な爆発を悟り、直ぐ様トランスフォームし。離脱を試みる。

しかし……スタースクリームは空に飛び立つことが出来なかった。

何故なら。

「グアッ!!」

何処からか飛来した機関砲がスタースクリームを撃ち落としたからだ。
煙りが立ち込め、地面へと墜落し爆散する戦闘機の姿に見向きもせず。
黒いライオンは機関砲が飛来してきた方角を見遣り……その場を後にする。

爆散し、ボディは跡形もなく燃え尽きた中。
スパークは空へと飛び上がる。


530 :Bsts:2008/04/09(水) 10:49:10 ID:1CeKA2f5
−ち、誰が俺を……!?
自分を撃ち落とした何かをスタースクリームは見つける。
それは……。

タランスと暗黒の雲の中から赤い目を輝かせて自分の身体を見下ろしている何か……


「ウッシャッシャッシャ♪流石はガルバトロン様、スタースクリームを一撃で撃ち落としたっスねぇ♪」

『……マダダ、マダ寝覚メニハ暴レ足リン!!』
−ガルバトロン……だと−−

スタースクリームのスパークは雲から姿を現した竜の翼に宇宙まで跳ね飛ばされる。


『……フハハ、ガハハハハ!』
その姿はマントのような翼を翻し、かつてライオコンボイをその攻撃力で圧倒した機械の破壊竜……。

『我は……破壊大帝ガルバトロン!!』
臨海第8空港の上空に彼が復活した。


その姿をモニター越しにメガトロンはほくそ笑んで観賞している。

「フフフ、スタースクリーム……貴様に礼を言わんとな貴様が居なければこうも早く予言を再現出来なかったわ。さぁ、竜よ。破壊してやれい!!がっはっはっはっはっはっは。」

だが、この時メガトロンはこの第8空港に『闘姫』が居たことを。彼は見落としていた。


続く。
次回予告


デプスチャージ「え、もう終わったのか?うわぁ、続きが気になるじゃん?」
チータス「下手なモノマネすんなよー。卑弥呼です。」
なのは「チータスくんもやってるし。」

ビッグコンボイ「ち、ガルバトロン。あいつが蘇るとはな……勝てるのか?」
ダイノボット「勝つしかねぇよ。ガンダムゥー!」
カリム「ちょっと、あなたはそっちじゃなくてホバートラックの方よ!」

ガルバトロン「あ、どうも皆さんお久しぶりです。ガルバトロンです。次回12話「吠えろダイノボット」ワンッワフッ、ホノボ〜。さんはい」

一同「パート1〜」
メガトロン「くっそー、あと少しで洗剤セット当たったのになぁ〜」
ライオコンボイ「ガルバトロン、あんな喋り方だったか?」

スタースクリーム「あれ、何気にレギュラー落ちの俺は無視?」
ルーテシア「所詮は、アイスクリーム……」

アギト「ルールー、ひどい。」

531 :Bsts:2008/04/09(水) 10:50:12 ID:1CeKA2f5
以上。

サラバだ。

532 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 11:40:03 ID:qBe898y9
投下乙!
ついにビーストガル様降臨か。
続きが気になる!

533 :黒の戦士:2008/04/09(水) 12:40:34 ID:ju9qtFt0
予約が無いようなので投下。

クロス元は「七つの海のティコ」と「人造人間ハカイダー」なり。

534 :黒の戦士〜ペペロンチーノ号リリカル奇談〜:2008/04/09(水) 12:42:06 ID:ju9qtFt0
「お前だけが消えろ……」
そのロボットは無慈悲にそう告げて、プレシアを殴り、アリシアの亡骸を奪った。
結果、プレシアだけが消えていった。
それからしばらくして……。
「なのはー!!!」
翡翠屋の店主、高町士郎の手に握られていた手紙にはこう書かれていた。

一身上の都合により七つの海を旅してきます。探さないでください。 なのは

第一幕「Twinkle Talk」

海鳴市の沖合い約10km。
ぺペロンチーノ号の甲板で、高町なのはと、プレシアを殴ったロボット、ハカイダーが潮風を浴びていた。
「……」
「ハカイダーさんは何故この船に?」
「……スコットに、一緒に来ないか? と誘われてな。断る理由が無かったから同行することにした」
「そうなんだ……」
「……」
会話が途切れるのと同時に、ハカイダーを呼ぶ声が響いた。
「ハカイダー、ちょっと来てくれ」
この声に無言で反応したハカイダーはそのままエンジンルームに行った。
「アルフォンゾ、どうした」
「お前さんの銃、直ったぜ」
「助かる……」
アルから受け取ったハカイダーショットのグリップを握り締め、ハカイダーは礼を言った。
「試し撃ちは……駄目か?」
「海賊に襲われた時にしてくれ」
「わかった。ところで、例のアレは?」
「エンジンの複製がやっと終わったところだ。後は残りの部分を造って組み上げるだけだ」
「そうか」

甲板では、ナナミとなのはが談笑していた。
「なのは、ハカイダーっていつもああなの?」
「初めて会った頃よりは口数は多くなった方だよ」
「……あれで?」
「うん」
「ナナミ、なのは、どうした?」
甲板に戻ってきたハカイダーが、ナナミとなのはに声をかけた
「ハカイダーさん」
「今ちょうどね……」
自分の口数の事でナナミとなのはが話していたことを聞かされ、ハカイダーは少し感慨深げだった。
「そうだな……。あの頃と比べると俺は、お喋りになった方だな」
どんどん見えなくなっていく海鳴市を、ハカイダーはずっと見続けていた。

535 :黒の戦士〜ペペロンチーノ号リリカル奇談〜:2008/04/09(水) 12:48:49 ID:ju9qtFt0
夕飯時、キッチン。
「……と、こんな感じだ」
アルがなのはとハカイダーに料理を教えながら夕飯を作っていた。
「そうなんだ……」
「ふむふむ」
なのはだけでなくハカイダーもエプロンを着けていたが、不気味なまでに似合わなかった。
「そういえば何でハカイダーさんも料理を習っているの?」
「アルフォンゾとお前が病気なり怪我なりで、料理を作れなくなったときに備えるためだ」
ハカイダーのその一言に、アルは思わず感心してしまった
「しっかり考えてるんだな……」
十数分後、今日の夕飯が出来上がり、食卓に上った。
その中には、なのはとハカイダーが作ったナポリタンがあった。
「これがナポリタンか。洋子から聞いたことはあったんだが」
「口に合う合わないは別にして、まずは食べてみてくれ」
ハカイダーに促されたスコットは、小皿に分けたナポリタンを口にした。
「旨いな」
その一言を合図に、ナナミとアルも食べ始めた。

数時間後、無事に領海、更に排他的経済水域も抜け、ペペロンチーノ号は台湾目指して外海を突き進んでいた。
操舵席にいるスコットが不意にハカイダーに話しかけてきた。
「ハカイダー、少し聞いていいか?」
「何だ?」
「もといた世界に帰りたいと思ったことは、無いのか?」
「毛頭無い。当て所なくさすらい続ける以外にやる事が無いあの世界より、この世界の方が好きだからな」
「そうか」
「一体どうした? 唐突に」
「……何となくさ」
二人の会話をよそに、夜の海を進むペペロンチーノ号目掛けて、一隻の奇妙な船が100ノット以上のスピードで海上を走っていた。
それに気付いたハカイダーが、大声を上げた。
「スコット、妙に細長い船がこっちに向かって来るぞ!!」
ハカイダーの声に反応したスコットは、ハカイダーが指差した先を遠目で凝視した。
「カスピ海の怪物だ!」
スコットが叫ぶのと同時に、色とりどりの光線がペペロンチーノ号目掛けて飛んできた。
「攻撃魔法だ!!」
ハカイダーの叫び声と、光線が海面に着弾する轟音で目を覚ましたナナミ、なのは、アルが慌てて甲板に出てきた。
「スコット、カスピ海の怪物とは何だ!?」
「正式名称は「エクラノプラン」。ロシア語で「ホバークラフト」という意味で、冷戦時に旧ソ連が開発した特殊な船舶だ。ちなみに、「カスピ海の怪物」という名前は祖国の諜報員が付けたあだ名だ」
攻撃魔法が飛び交う中、スコットがエクラノプランの説明をした。
「なるほどな」
「二人とも何のんきに話してんだ!!」
アルの怒声が聞こえ、我に帰ったスコットとハカイダーは、エクラノプランの方を向き直した。
「あのエクラノクラフト、何が目的なんだ?」
「恐らく、俺となのはを狙っているのだろう」
レイジングハートを起動させようとしたなのはに「俺に任せろ」と言って、ハカイダーはいつの間にか左手に持ったハカイダーショットをエクラノプランに向けた。
「……航海初日からこれとは、胸糞悪いな」
その一言と共にハカイダーショットから発射された、超高周波炸裂弾は白く光っていた。
弾が直撃したエクラノプランは一撃で破壊され、直後に(核爆発や火山の噴火よろしく)キノコ雲が発生した。

536 :黒の戦士〜ペペロンチーノ号リリカル奇談〜:2008/04/09(水) 12:50:11 ID:ju9qtFt0
ペペロンチーノ号から数キロはなれた海域。
エクラノプランの破壊と、キノコ雲の発生の一部始終を見ていた高速艇がいた。
「テスタロッサ博士の仮説以上の威力だな……」
一人の大柄な男が呟いた。
その男は、右手が鋼鉄製の義手だった。

「自分がデバイスになっていた事を忘れていた……」
キノコ雲を見ながら、ハカイダーは呟いた。
「スコット、どうする?」
「全速力でこの海域から離れる。アル、エンジンを頼む」
「オーキードーキー!」
ティコと並んで、全速力で進むペペロンチーノ号の甲板で呆然と星を見ていたハカイダーに、ナナミは声をかけた。
「どうしたの?」
「……星のささやきが聞こえた、気がしたんだ」
台湾は、まだ遠い。

返り血ですら滑り落ちる黒いボディ。
返り血をも弾く白いドレス。
黒の戦士に幼き魔王と人の言う。
ミッドチルダの裏社会じゃ賞金首。
信念有用、情無用のトラブルメーカーズ。
賞金総額は台湾元で30億以上。
次回「Chase The Wind」
台湾は中国より中華料理が美味いらしい。

537 :黒の戦士〜ペペロンチーノ号リリカル奇談〜:2008/04/09(水) 12:51:49 ID:ju9qtFt0
投下終了。
ハカイダーがなのはの仲間になったり、プレシアを殴ったりした理由は物語の途中で書こうかと。

538 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 13:54:24 ID:B2y6Z8tl
>>510
リリカルなのはStylish 十一話GJだった〜!!

ティアナの突撃思考がアニメ版を遥かに超えるくらい過激になってるみたいだ。
この先どうなるかマジ期待大!!

しかしまさかアリウスまで出てくるとは‥‥もう予測がまったく出来ない状態になって来たな。

539 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 14:39:15 ID:z/9ZPM0S
>>510
GJ!
こととしだいによっては、全く別のスタイルに進化というのも
面白いかもしれませんね。

540 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 14:44:44 ID:e+nMphZ2
>>510
GJ!!です。
本編でも入れてほしかったような会話でした。
本編もなのはが教導官であることとは別に、彼らを心配している言動とかあれば
ヴィータが言った台詞もすんなり理解できたよ・・・。
なのはさんはティアナに、頭ではなく心で理解してほしいのか。これはペッシのように
イベントがないと難しいですね。意見としては両者共に間違ってはいないんだけどなぁ。
次回も楽しみにしてます。


541 :反逆者  ◆RZP/Mr4asU :2008/04/09(水) 17:03:39 ID:wCz38ygP
思いついたネタが一気に書けちゃうと扱いに困るよね。
続くかどうかは未定。続けられたら良いなあ。
*********************************

 キャロ、エリオの攻撃をも跳ね除けて猛威を振るう新型ガジェット。
 無論ノーダメージというわけではあるまい。
 が――AMFの前では、果たして魔法がどれほど通用するだろうか。
 このままでは目的であるレリックを盗まれてしまうのも時間の問題。
 そう判断したスバルが、パートナーへと声をかける。

「ティアナ! 先にレリックを!」
「わかった!」

 二挺拳銃を手に七番車両――重要貨物車へと飛び込む。
 厳重なロックも、今では殆どが壊れてしまい用を為していない。
 危なかった。間に合わなければ奪われていたかもしれない。
 冷や汗をぬぐいながら扉を開ける
 
 其処にあるレリックこそがドローンが狙い、彼女たちが護ろうとした存在。
 レリックだと聞かされていた。重要な物資だと。
 だからそれを護るのだと、そう思っていた。
 
 だが――レリックではなかった。

 其処にいたのは一人の人間だった。椅子に腰掛けた男。
 撫で付けられた黒髪。装飾の少ない、まるで神父服のような衣服。
 それだけならば、単に実直で、神経質な人間だと受け取ったろう。
 だが、その一切を裏切っているものがあった。
 深淵を覗き込んだように暗い瞳。
 およそ「単に実直で神経質な」男の目ではない。

「え? え、えぇと……?」

 目の前の現実を一瞬理解できず、不思議そうに首をかしげるティアナ。
 が、戸惑っていられるほど事態は穏やかではない。
「ティアナ、後ろ!」
 叫び声に振り返る。――しまった。
 スバル達を掻い潜ってたどり着いてしまったのだろう。
 無機質なドローンの姿が、其処にあった。

542 :反逆者  ◆RZP/Mr4asU :2008/04/09(水) 17:04:41 ID:wCz38ygP
「伏せるんだ」
「え?」

 たった一言。その静かな呟きにティアナが反応するよりも早く、男の両腕が動いた。
 手首のフラップをはずし、射出型ホルスターから飛び出してきた格闘用拳銃を二挺握り締める。

 ガジェットが動く。触腕六本。接近兵装。機体中央に熱線砲を確認。
 各腕の配置より連続した白兵攻撃と予想。軌道演算開始。近距離より目標を優先して撃破。
 光量等から熱光線発射まで3プラスマイナスコンマ秒と判断。問題無し。
 各目標のコンマ1秒後、コンマ1,5秒後の位置を演算。完了。射撃開始。

 二挺拳銃が火を噴いた。
 マズルフラッシュは十字。聖なるリヴリアの紋章である。
 まずは一射。水平に持ち上げたまま、左右から迫りくる触腕を迎撃。
 銃撃で弾き飛ばした刹那、すかさず両腕を交差し、続く二つの攻撃を退ける。
 更に重ねて振るわれる残り二つの触腕を身を屈めることで回避しながら、
 まるで羽を広げるかの如く左右に腕を伸ばし、それを付け根から銃撃で吹き飛ばす。

 ここまで2秒。
 立ち上がった男は銃を胸の前で上下に交差させ、流れるような動きで右腕を伸ばす。
 左腕は肘のところで折り曲げられ、半身に構えた体を中心に、左右の銃が平行線を描く。
 蛇咬の型。攻夫を基にしたこの構えは、そう呼ばれている。
 そして徐々に光を増し、射撃に移ろうとする熱線砲を鋭く銃弾で貫く。

 その光景を――ティアナを助けようと駆けつけたスバル・ナカジマもまた目撃していた。
 見たことのない武術。
 だが、聞いたことのある武術。

 そう、いつだったか彼女の父親が話してくれた。
 あれは何年か前の――そう、朝食の時だったろうか。
 辺境の土地で起きた動乱を知らせるニュース。
 何故そんな事が起きたのか、気になったスバルは父に問いかけたのだ。

「――管理局は、先の戦争における原因のすべてを質量兵器であるとした。
 だが、それとはまったく違う選択を取った者もまた、存在していたんだ……」

 彼らが害悪と断じたのは『感情』。
 怒り、憎しみから、喜びや愛情、情熱といった心まで。
 そのすべてを封印し、押し殺した社会を築き上げた。
 それが正しいか、間違っているかは、誰にもわからない。
 唯一言えるのは、その管理国家――リヴリアは長きに渡って平安を保ち、
 たった今、感情を取り戻すべきと主張した叛乱勢力の手によって崩壊を迎えたという事。

 そして、そのリヴリアの秩序を保ち、同時にリヴリアを崩壊に導いた存在がある。

「スバルも、ギンガも、格闘技を扱うならば覚えておいた方が良い。
 銃の弾道すら見切り、たった一人で数十人を相手取って勝利する。
 気合や直感、気配といった曖昧模糊なものに頼らず、
 計算と理によって勝利する存在。彼らの身に着けた武術」

 グラマトン・クラリック。
 その戦闘技術ガン=カタ。

 そして、リヴリアを滅ぼした男。
 特一級クラリック、ジョン・プレストン。
 現在広域指名手配犯であり、その危険度は「レリック級」とされる人物。
 今回、機動六課が保護を命令された――その正体であった。

543 :反逆者  ◆RZP/Mr4asU :2008/04/09(水) 17:05:05 ID:wCz38ygP
以上。
続き、書けたら、いい、な、ぁ……

544 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 17:18:10 ID:e+nMphZ2
GJ!!です。
ガン=カタの最大の特徴はマスターすれば飛躍的に戦闘力が上がる事とされていて
基礎の動きをマスターするだけで攻撃力(攻撃の能率)は少なくとも120%上昇、
また一撃必殺の技量も63%上昇するとwikiに書いてあったのでティアナが習得するにはいいかもw
ティアナは近中距離戦をすることが多いし、ダガーモードも無駄になら無そうだw




545 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 17:19:21 ID:cqlO8Gco
うおおい、レジアス・クラリック書きましたが――これは、イイッ!!

是非連載を!ガン=カタ最高!!


546 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 17:38:04 ID:B2y6Z8tl
これ良いですねえ、GJです。

だが個人的にはこのまま短編で終わった方がすっきりしてて良いと思いますよ。

547 :ゲッターロボ昴 ◆J7qCZtZxmc :2008/04/09(水) 17:42:25 ID:cqlO8Gco
おいどん、投下してもいいでごわすか?!

・・・次スレの立て方わからないけど。

548 :ゲッターロボ昴 ◆J7qCZtZxmc :2008/04/09(水) 17:43:24 ID:cqlO8Gco
あ、すいません。リアルの都合で延期します。

549 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/04/09(水) 18:02:50 ID:cqlO8Gco
ちょっとトリを変更。
そして投下してOKでしょうかー?

550 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 18:06:21 ID:B2y6Z8tl
カモン

551 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/04/09(水) 18:08:30 ID:cqlO8Gco
全て、女が悪い by隆慶一郎・・・冗談です。

魔法少女リリカルなのは 闇の王女 第四章後編

時空管理局が揺れ、混乱の最中にあったとき―――ミッドチルダ、北半球ベルカ自治領。
堅牢な造りの伝統的建築物がならぶ町並み。道行く人々の肌は、皆白い――ベルカ系住人の居住地域。
その中でも一際目立つ、巨大かつ豪奢な聖堂――何本もの塔が天空を目指して突き出ている――聖王教会本部の一角。
騎士達の居住区の一室。
そこに、長い金髪をゆったりと垂らした、優しげな顔つきの女性が椅子に座ってにこにこと微笑んでいた。
手元には、空中展開式モニターから送られてくる立体映像の数々。

そこには、おおよそ教会に似つかわしくない映像が映っていた。
時空管理局内部のクーデターの様子――血河が流れる阿鼻叫喚の地獄絵図。

ベルカ騎士達による反乱の様子だ。凶刃と化したアームドデバイスの斬撃に、一人、また一人と切り倒されていく局員達。

離反し、抜け出る管理局の最新鋭艦からなる船団――クーデター軍の様子。その砲撃戦とアルカンシェルの顛末。クラナガン上空で炸裂する殲滅兵器の生み出す光球。

ふう、と溜息をついて、不意に金髪の騎士――カリム・グラシアが口を開いた。

「結局、裁きの雷は腐敗の都に落ちず、ですか。残念ね、シャッハ」
秘書官であり、護衛でもある女にカリムは声をかけた。
短髪の修道女が、いえ、と声をあげた。

「まだまだ機会はあります、カリム。それに、ウルリッヒ提督は優秀です。<揺り篭>上昇までの時間は稼いでくださるでしょう」
こちらも微笑をたたえての返答――不気味なほど会話の内容にそぐわない穏やかな空気。
カリムが、キーボードを叩きながら言った。

「そうですね―――今は<C>として活動するとしますか――。それに、面白いものも見れましたし」
モニターに幾つか開かれていたウィンドウが消え、代わりに大きく拡大された映像が流される。

黒い魔導師の登場と、魔力集束―――人外の速度。
放たれた光の柱――圧倒的な魔力の砲撃が、戦艦の主砲すら貪欲に取り込んで膨らみ、アルカンシェルを消し飛ばす様子。

次々と沈んでいくクーデター軍の戦艦。

《ベルカに栄光あれぇぇ――――ッッ!!》
最期の願い。
同胞達の声。それを聞いてもなお、女二人の笑顔は変わらなかった。

「見ました?今のが真(まこと)の予言――<預言者の著書>にあった<闇の王女>ですよ――面白いとは思いませんか、シャッハ。
ただ一人世界の流れに逆らい、私達に抗い続ける復讐に狂える鬼。なんて愚かで、愛しいんでしょう」
シャッハが待機状態のデバイス――2枚のプレートを指で摘みながら、

「非才の身ながら、お望みと有らば今すぐ騎士団を率い、ヴィンデルシャフトで抹殺しますが。騎士カリムの敵は、教会の敵です」
獰猛な笑みを浮かべた――戦闘狂の笑み。
ゆっくりと首を横に振って、カリムは儚げに笑う――シャッハのそれと対照的な笑みだ。

「その必要はないわ、シャッハ。、<闇の王女>はスカリエッティの獲物、です。我々教会が手を出すべきではありません」
そう言い、砂糖をたっぷり入れたミルクティーを飲む。
美味しいですね、とカリムが言った。




552 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/04/09(水) 18:11:15 ID:cqlO8Gco
突然、激しい足音と制止の声が聞こえた。
「今、騎士カリムはお休み中です、お引取りくださいッ!」
教会の修道女の声。
幾分か焦っているようだ。怒鳴るような声。
「今はそれどころやない! 一刻を争うときなんやッ!!」

この声は―――。
ドアがノックもされずに勢いよく開かれ、二十歳前後の女性と青い毛並みの狼が飛び込んできた。
管理局の人間であることを示す茶色の制服。階級は二佐。
短い栗毛が、窓から入る日差しによく映えた。
シャッハが無言で人払いをし、ドアを閉めカリムの脇に立った。
カリムが微笑みながら問うた。

「あら……?今日はどうなされたんですか、はやて、ザフィーラ」
渋い男の声が、問いに答えた。
狼――盾の守護獣、ザフィーラだ。

「貴殿も知っていると思ったがな、騎士カリム。ベルカ系の騎士達が反乱を起こした。よりによって―――」
はやてが続ける。顔を愁いに曇らせながら。

「ロストロギア、<聖王の揺り篭>が浮上したときに。彼らこういっとったそうや―――<ベルカの再興を>てな。教会はこの件をどう考えとるん、カリム」
ぴたり、とカリムの動きが固まり、シャッハが軽くはやてを睨んだ。構わずに話を続ける。

「私は話が聞きたいだけなんや、教会側の見解を。管理局は浮き足立ってて使える兵も少ない。今この事態を乗り切るには、聖王教会の協力が必要なんやッ!」
はやてはまくしたてた後に、ふう、と息を吸い込んだ。話すべきことを話し終えた、というふうに。

カリムがゆっくりと金髪を揺らしながら、顔を上げ――微笑んだ。

「そういうことでしたか、はやて。教会の見解は―――」
ごくり、とはやてが唾を飲み込む。

「関与しない、です。今は慎重になるべきとき、ですから」
はやてが思わず叫ぶ。相手の理解不能な言動に。

「何をいっとるんやッ!そんなこと言ってたら―――」
「<揺り篭>が月の魔力を受け蘇る、ですか。伝承通りなんですね、あれは」
余裕を崩さないカリムの微笑み――何時も通りの慈母の如きそれが、今のはやてには悪い夢のような気がした。

「事態がどちらに転ぶかわからない今、私達は教会の存続を第一に考えねばならないのです。お察しください、騎士はやて」
シャッハが諌めるように言う。ひどい違和感に、はやては目眩がした。
なんなのだ―――これは。性質の悪い冗談か。

「さて―――お話はそれだけですか、はやて。教会にもできないことが―――」
「なら、せめてリミッターを外してえなッ!自力で何とかしてみせる――だから!!」
ふう、とカリムが溜息をついた。

553 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/04/09(水) 18:14:24 ID:cqlO8Gco
「貴女もつくづく諦めの悪い人ですね―――でも、そういうところが好ましい」
はやてが、ぱっ、と顔を上げ喜んだ。もしかしたら、協力が――そうでなくとも、リミッター解除が貰えるのでないかと、はやては気を持ち直した。
しかし、ザフィーラの嗅覚は、嫌な予感を告げていた。
人間から発せられる体臭には、ある程度そのときの感情が混じる事を、狼であるザフィーラは経験から知っている。
今までは、自重して――それがマナーというものだ――使っていなかった嗅覚が全力で働く。
喜び―――はやてのもの。
警戒―――シャッハのもの。

そして―――慈愛と殺意。
殺意?
これは―――カリムのものだ。

カリムが、言った。

「――――ゆえに貴女は危険です、はやて。殺しなさい、シャッハ」
だん、と床が蹴られ、シャッハの双剣型アームドデバイス、ヴィンデルシャフトが起動した。展開されるトンファーに酷似した形状の双剣。
驚愕に見開かれるはやての瞳目掛けデバイスが振りかぶられ―――。
シャッハの鋭い突きを、筋骨隆々の大男が腕で防ぎ、反撃に膝蹴りを見舞った。腹に綺麗に入った膝。
吹き飛ばされ、教会の壁面に叩きつけられる修道女――シャッハ。

「主はやて、怪我はない―――」
違和感。
咄嗟にはやてを抱え、後ろに跳び退る。
にわかに地面の下から躍り出たシャッハの左手の刃が、先ほどまではやての顎があった空間を貫いた。
まるで海面下から飛び出した飛魚の風情。
着地。
双剣が構えられる。

「やりますね―――守護獣ザフィーラ。貴方のような古強者とやりあえるとは、真に喜ばしいことです」
「物質透過に身体強化魔法か―――」
にやり、とシャッハが笑った。戦闘狂の笑み。

「それだけが―――取り柄でしてねッッ!」
ザフィーラの叫び。

「主はやて、転移魔法を! 鋼の軛ッッ!!」
古代ベルカ式の術式―――床から幾本もの拘束条が発生し、カリムとシャッハの身体の自由を奪う。
シャッハのデバイスに突き刺さる軛――ひび割れる刃。カートリッジが、暴発する。
苦悶の絶叫――シャッハのものだ。溢れ出した魔力が、皮膚を焼いているのだ。

「ザフィーラッ!」
はやての叫び――転移術式の完成の合図だ。
ザフィーラがはやての傍に駆け寄り―――二人の姿が、掻き消えた。
一拍遅れて、緊急事態を感じとったセンサーによってAMFが展開される。魔力結合阻止フィールド――魔法の天敵だ。
あとには、苦悶の呻きと――女の笑いだけが残った。

「はやて……やっぱり貴女は最高ですね……」
果たして、女――カリム・グラシアは狂っているのか―――それは、誰にもわからない―――。



554 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 18:14:58 ID:6UCjldj1
>>Bsts殿
最後のルールーのギャグGJ!
youtubeでstsのOP(後期)に、BWUのOP曲(GET MY FUTUER)を
差し替えで流してる…なんてのを確認。一度見る事をお勧め。

>>反逆者殿
元ネタは見てないけどGJ!
『その他3』に、同じクロス元のがあったような(下から探せば早い?)
一見肥満体系なレジアスだが、実は(ゼストと競い合った)マッチョだったという罠。

555 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/04/09(水) 18:16:13 ID:cqlO8Gco
 L級次元航行艦改『アースラ』。
その艤装は、旧アースラのそれと大きく異なっていた。
まず、コントロールシステムが違う。数名のクルーによる操縦が行えた旧アースラと異なり、たった一人――もしくは無人でも動き、
戦闘可能であるようにする必要があったのだ。

乗組員が任務の性質上、たった二人しかいないという問題点――これを補うべく、実地試験も兼ねて

極秘裏に製造された管制デバイス――自動操縦及び自己判断を行う高度なAI――その名を、<オモイカネ>という。

この高度な自動化があって初めて、高町なのはは単独機動戦闘が可能になるのである。
そうでなければ、高町なのはは数年もの間単独で戦うことなどできなかっただろう。

第二の変更点は、艦の武装そのものである。
装備自体をXV級のそれと交換した結果、船としての性能は向上し、小回りが利き高い火力を持つ戦艦となったのだ。
防御術式発生装置は、試作段階――しかし既に実戦で運用済み――のものであり、大型のバリアーを発生させ艦を堅く防御させることに成功していた。

そして第三の変更点――それが、鹵獲したガジェットドローンシリーズの改良型を艦載機として扱う機能の追加だ。
当初これには高町なのはが難色を示したが、ガジェットが己の復讐の手段として有益だと知ると考えを改めた。
所詮、道具だと割り切ったらしい。
これらの改装によってア−スラはワンオフの戦艦としては驚異的な性能――高い転移性能、火力、高度な自動化、機動性、艦載機の運用母艦という異色の性能を持つに至ったのである。
もはや艦のシルエットが同じだけで、厳密に言えば新型の試作艦といった方が近いかもしれない。
実際、そういう意味合いも多分に含まれているのだが―――。
3提督の持てる資財を注ぎ込んだ船、それがアースラだった。

そして今、アースラは次元の海を猛スピードで航行していた。
ブリッジには、三つの人影。
黒衣の女、高町なのはと紫色の髪の少女、ルーテシア、そしてその召喚蟲ガリューである。
なのはが口を開いた。

「管理局、クーデター軍からの追っ手は無いんだね、<オモイカネ>」
『はい。本艦の索敵装置ならびに、偵察に出した使い捨てのT型にも反応はありませんでした。おそらく追跡よりも攻撃を優先した為と思われます』
<オモイカネ>の報告。
レイジングハートも情報を受け取り、高速で処理する。
分析、完了。
『マスター、問題はありません。報告に誤りはないかと』
<オモイカネ>の反論。
『当然です。僕がこんなロートル(RH)に遅れをとる筈がありませんからね、シップマスター』
『……若輩者は黙るべきですよ。それにマスターは私のマスターです』

なのはは苦笑しながら二つのインテリジェントデバイスの喧嘩を仲裁する。

「こらこら、二人ともいい子だからやめて、ね」
『でも…このロ−トルが……』
『そうです!この若造が……』

睨みつけながら言う。

「やめよう、ね」
《すいません》
二つのデバイスが異口同音に謝った。

『シップマスター、<聖王の揺り篭>、衛星軌道到達まであと3時間です』
「もう時間がない、か」

なのはは、黒衣を翻してレイジングハートを―――己の相棒を宙にかざした。

「戦いの、始まりだね………」
闇が、嗤った。

556 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/04/09(水) 18:19:53 ID:cqlO8Gco
以上で投下完了。

やったーッ!!ついにナデシコクロスらしく<オモイカネ>が出せた――ッ!!
ちなみにアースラ改は要は、<ユーチャリス>管理局版です。

こいつらなら短編も書けるぜ・・・!!(コミカルな内容で)
感想等よろしくお願いします。


557 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 18:38:46 ID:B2y6Z8tl
カリムやべえ‥‥このままリミッター解除できずに戦闘になったらかなり苦戦しそうだな。
相変わらずまったく先の展開が予想できない。

ともかくダークネス・カリムに惜しみないGJを、できればこのまま狂った敵役として大いに活躍してほしいです。

558 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 19:06:08 ID:e+nMphZ2
GJ!!です。
このカリム・・・素晴らしいw
アンデルセーンッ!!って叫びそうなほどイスカリオテwww


559 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 19:11:03 ID:qWSj9/BD
GJ!
こんな聖王教会を待っていた!
設定からして黒幕臭がプンプンするもんw
カリムがYabeeee!はやて立ち直れないんじゃね。

560 :ゲッターロボ昴 ◆yZGDumU3WM :2008/04/09(水) 19:35:55 ID:cqlO8Gco
>>557
拙作ではスカの同類ですから>カリム
>>558
書いてるときは意識してなかったんですが・・・読み直すと笑える。
>>559
ですよね。黒幕だ、絶対(断言)

561 :一尉:2008/04/09(水) 20:36:16 ID:bTYmC4Sm
黒幕支援

562 :リリカル! 夢境学園 ◆CPytksUTvk :2008/04/09(水) 20:44:35 ID:ceZzoasg
やばい……黒なのはの後に予約するのは気が引けるけど。
十一時半頃にアンリミテッド・エンドラインの続きを投下してもよろしいでしょうか?
ログを軽く見たところ、予約はなかったようなのですが。

あ、一応その間に投下があれば先に投下してもらっても構いません。
十一時半以降に投下出切ればいいので。

……早く出しすぎて、ちょっと自重したほうがいいのかと心配 orz

563 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 20:48:43 ID:feZaoHTe
おk

564 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 20:49:24 ID:cqlO8Gco
どうぞー。

565 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 21:24:16 ID:GCvK4csI
更新ペース早くて嬉しい限りだぜ。 俺は待ってるぜ。

566 :リリカル龍騎@携帯 ◆YHOZlJfLqE :2008/04/09(水) 21:28:36 ID:EfRhvHo8
職人の皆様GJです

・・・既にウロス等で知っているとは思いますが、我が家のPCが死にました
しかも、修理代次第では直さないという可能性も出てきました

そこで本題です。どなたかまとめ編集をやってもいいという酔狂な方はいらっしゃいませんか?
それなら万一の時も安心していられますから・・・

ちなみに現在、まとめの編集権限は「誰でも編集可能」というようにしてあるので、問題なく編集できると思います

567 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 21:37:07 ID:GCvK4csI
GJしかしどいつもこいつも陰謀渦巻く奴らばかりだ。
聖王教会カリムの次なる行動は そしてヴェロッサは。

568 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 21:37:45 ID:KSkfIwD1
投下前に新スレを立てることをオススメしておいたほうがよいかと

569 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 22:00:30 ID:pR4dnRLO
微力ながら編集に協力させてもらいます。

570 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 22:05:29 ID:8vTPHaS0
>>566
PCご臨終ご愁傷様です
さて、まとめWikiに関してなのですが、編集は可能なのですが、「新規ページ作成」が不可能なため、新たな登録ができません
わずかながらご助力を、と思っていたのですが、現状管理権限(ログイン)ができないとどうにもできません……
よろしければ、そちらのほうの権限開放もお願いいたします

571 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 22:05:58 ID:d0FJKcF1
>>566
センセー!
編集が出来ても新規作成が出来ないので、SSが溜まっていく一方です!
……携帯からでも、なんとか新規作成の許可だせませんか……?

572 :リリカル龍騎@携帯 ◆YHOZlJfLqE :2008/04/09(水) 22:34:53 ID:EfRhvHo8
携帯からの新規作成は・・・どうやら@wikiのシステム上不可能になっているようです
新規作成の権限は・・・明日学校のPCからなんとかしてみます

573 :リリカル! 夢境学園 ◆CPytksUTvk :2008/04/09(水) 23:07:06 ID:ceZzoasg
えーと、容量が微妙にオーバーしそうなので。
新スレが立ってから投下しますね(汗)
また……長いので orz

誰か投下するつもりでしたら、先にどうぞ!

574 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 23:08:34 ID:e+nMphZ2
では、スレ立てに逝ってきます。

575 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/09(水) 23:17:44 ID:e+nMphZ2
サンクチュアリを立てましたぜ!!
http://anime3.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1207750499/
セイント聖矢クロスとファイズ正伝が読みたいです。


576 :リリカル龍騎@携帯 ◆YHOZlJfLqE :2008/04/10(木) 18:07:43 ID:VPmYEnpD
報告
まとめの新規作成の権限を解放しました。これでSSの追加が可能です

577 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/11(金) 00:07:46 ID:aTIaBSAk
>>576
御疲れ様です。

578 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/11(金) 00:19:03 ID:c3SckWXB
ume

579 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/11(金) 01:08:17 ID:KWBs7PaD
          \                       /
           \                    /
             \                 /
              \              /
                \           /
                 \∧∧∧∧∧/
                  <      私 >
                  < 予  し  >
                  <      か >
────────────< 感  い >───────
                 <      な >
                 <  !!!   い >
                 /∨∨∨∨∨\
                /            \
              /               \
                   '"´ ̄ ̄ ̄ ̄`   、
                /                \
                /                . :\
             /  . ; -‐  ̄ ̄ ̄ 丶、 : : : : : : : ヽ
              ,'  : /  イ ̄ ̄ ̄`丶、\ : : : : : : : ',       /}
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          N.::∨:::::,'|::::|l:::::|:::::::\::ヽ ::|: ::::|∨|⌒) : : ,′/::.::.∠  
          ヘ:.:l :::/::|::::|l: ∧ヽ ::`ト-ヘ:|ヽ-|∧|_,人: :/ /::.::.::.::.:フ   
             '、|::::l::::|:::l|-孑ヘ:|\| 三三.Y:::::|、 ∨/::.::.rー'´
               |::::|::::l:小.=彡     |  | l|:::::l::\ \ー'´            
               |::∧:::V:ヘ | │ x.   |  | リ!:::|:/l:∧厂  く
          く  ヽ{ハ:::マ:个ーtz‐r-r=彳´「|:::厂  ̄`\  す
            す    \∨^ ̄ ヾ∨ ̄ 》/´|/___  ヽ  ん
              ん     /ニ二二ニ}〕亢〔 |´-―――-、\ハ  :
            ___:__ | /⌒ヽ/  ̄`ヽ       \∨_____
        /::.::.::.::.::.::.::.::∨   /      j〉==ミヾ    j/::.::.::.::.::.::.::.::.::.. 二ニ=-
       __⌒つ=ーz:.:_//レ─-、レ―- 、 ,/    }斗─-'´ `⌒ヽ厂`ヽ、_:.\
   ∠ ̄:.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::. 7{」___,,」,___ V    /゙寸_》\.::―:―.::.::‐.::―::. :::―:.-: ._
.      ̄ ̄⌒Z_:.::-=っ/{ ̄ ̄¨{ ̄ ̄ ¨`{-一'´  八___》\-、.::-っー、_:.::.::っ-‐─‐一`
     __/:.::.::.:://{____{.__  ∧     /小、 ̄  \>、 

580 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/12(土) 12:10:14 ID:VJ981+ht
保守

581 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/12(土) 14:45:46 ID:YDxhTeFN
ええええwwwwww
保守するのかwwwwww
埋めようよwwww

582 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2008/04/12(土) 16:04:08 ID:yNS1yPQn
では、埋めに何か雑談のネタとかありますか?

583 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/12(土) 16:30:33 ID:8m5igTUa
なら
管理局ってスカウトや専門学校からのエレベーター以外にはどういう新人採用してんだろうな?
外部からの入局とか。
やっぱパンフとか作って受付においてたり、就職情報誌に載せたりしてるのかねww
自衛隊のポスターみたいに、管理局のポスターが町中に張ってあったりwww

584 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2008/04/12(土) 17:23:23 ID:yNS1yPQn
>>583
そんな感じだろうね。
なのはやフェイトがモデルになっているんだろうなやっぱり。


585 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/12(土) 17:27:15 ID:fRm+OsAT
>>584
管理局内見学とかではなのはの教導とかを見学できたりするのか
あとは、公開演習とかもしてたりして

586 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/12(土) 19:24:35 ID:ycfpSvgI
>>584
彼女らは公式にファンクラブあるしなw

587 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/12(土) 19:26:49 ID:vZ7GyTJ2
>>586
彼女ら専門の追っかけの記者とか妄想したwwww
たとえ過酷な戦場でも、己の身ひとつで突貫し、少女たちの姿を報道する鋼の記者www

588 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/12(土) 19:30:02 ID:AvDlfzYH
それはまたの名を時報というのか?

589 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/12(土) 19:32:33 ID:ycfpSvgI
なのはたちの戦闘中はパンチラゲットしようとするオタが集結。

590 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/12(土) 19:35:42 ID:vZ7GyTJ2
>>589
フェイトはもはやそんなの関係なくね?

591 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/12(土) 19:39:01 ID:ycfpSvgI
PTAから苦情が…

592 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/12(土) 19:51:24 ID:I+meMesi
>>583
こんな感じか。
ttp://homepage2.nifty.com/muraji/circle/i_want_you.jpg

593 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/12(土) 19:52:22 ID:TB1V0NPw
よりにもよってその画像をポスターに使うのかよw

594 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/12(土) 19:56:22 ID:D+duz4My
>>592
うはwwwww何というwwwww

595 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/12(土) 20:00:35 ID:wmorZuyU
で、そこから何とクロスするねん。
事件記者コルチャック?
ウルトラQ?
種死アストレイ?

596 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/12(土) 20:12:37 ID:WgQ9G5GZ

       / /           ヽ \
      / /             ヽ  \
     /  |  ●       ●  |    \
    /   |              |      \
   /    |              /       \
  /     \    ━━━    ./          \     
    .∩    ∩´
        //       | |
        //       | |
        | |"((`へ´))"// <うるせぇ、フェイトぶつけんぞ
        \      /
          |   /
         /   /
     __  |   |  __
     \   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   \
     ||\            \
     ||\|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄||
     ||  || ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄||



    /   /   /               `ヽ、
   ,′  |   :/ / / /         ヽ \   `ーイ
   l   │  l | /  /   /|  |  l   |\ー 一'´
    |    /l   -| 十! /- イ /  |  |  ,'  j  ヽ       _         |  // _/__
    |    l |   W|_l_/| / |l ,'  / メ/|: /   /ハ: |     ()),, ̄),,       |\    /  /
    |  :/こ|   レ行ifヾ八{ /xく/ |/  /   | j        ̄ヾヽ  ,    |     /  /  ツ
    |  {{^ |   |!込,,ソ    イf巧トV  /   :/∨         `ヾ、 ;
    |   |ヽ.|   |   `      込,ソ/ /   /      
    |   l  |   |        ,  `ア7/ / j/                 ヽ、  うるさいよ
    |   l  |   |     r- _   / レ/           ヾ、ヾ、 ー - ... ヾヽ _
   |.  l _/|   |\  `ー ´  イ │           ヾ、` lllllll` ー -==':::::::::>` ー - .. 、 _
   /  i::::::|   |` ヽ、_.  ∠ |  │            i`` ` ー - .. 、 _ `ー' ` ー - .. 、 _   
  /   ,ノ;;;;;;\/;;;;:ロ|二|;;;;;!iレl| \ /         /^ヾ`>ー - 、    ` ー - .. 、 _
//^ ̄二三//⊂⊃、ヽ三ミヾゝ、      ___,,〃  ` ''''':::::;;;;; _ ` ー - ..、 _   〃 ̄ `
 /:::::::イLl‐,.///:::8:::::ヾヽ\,..-一'´ ̄ ̄フ/::::::::::〃          ` ー - 、 _ニニフ ̄ > ー
/::;イLl//´⌒´ ̄^ ̄`ヽy'::::::::::::::::::::::::/./:::::::::::::/ i     =  、__  ! __[`ノ ,r'ー‐'
;イLl-//:::::::::;:::::::::::/⌒7´:::::::::::::::::::::::/./:::::::::::::::i  !     、  、   ̄! ̄ノ  ̄`ー‐'
イLl/::/::::::::∠::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/./:::::::::::::::::i  ヽ        `ー―‐〈



597 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/12(土) 20:49:17 ID:YX95jUvw
>>596
ちょwwwめちゃめちゃ質量兵器じゃないですか、フェイトさんwwww

598 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/12(土) 20:50:48 ID:b+UYjdBq
>>595
激写ボーイしかないだろう、常考。

599 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/12(土) 20:55:42 ID:SUnHBi77
>>598
27歳の出番かwww

600 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/12(土) 21:51:03 ID:WgQ9G5GZ
@そろそろ埋めまする

            _/⌒ ̄⌒`´ ̄`〜ヽ'ー--、
           _/      ιυっ ̄~つyへつ
         /    フっιつ人´ / /つυ^っへ  っっ
       /   /つつ。o/ / / /  ^つっへυっつ
      _/     〉o°o。   。 / /  /°>つっっっつっっ
     /      \γ、。 o 。 /o。/ /つっっつっつ
__/           `⌒ヽっ/ 。/  / っつ) っつっつ
=/     っっ       τ-っつつっ、。|    つ  っつつつ
 ̄     っっ )) )       っつつつ。|          っっつつ
  つつっιつ) ⌒つっ)   っつっつ。 °|  °           o 。
  っつっo °。 υつ っ つっυ。o。°| ° °           °。
 っ\\っoっ。  °° つ。°°。o。o。\o。° 。°°。       。°。
  つっつ _o°°。 ° ° 。o/⌒\。 o\°°o  。     /У\°
 )へ)つ\///`ー、_ ° °。_/    \°。\。 。°°   /WMW、\
  へ)。°|\\\\`ー、 ,〜´ へっυ   ̄ ̄ ̄\°°__/______\ ____/
 ( ̄o°oヽ、 \\,O、/~   つっへっ   \ へ  \ ⊂≡⊂=
  \__/ ̄ ̄ ̄ ̄    っっつ         へ ⊂≡⊂=⌒*(・∀・ )*⌒=  津波?
           \  っつっっつ             ___ へ \ ⊂=⊂≡  O)   RH無しでボコボコにしてやんよ!
        っ   フつ   っ  つっつっ     \\   ババババ (   ヽ
  /つっつつっ ⌒っ⌒つ    つ   っ つ\。° \ヽ______∪ ̄\)ΟΟΟΟ/
 /。 ))  つっつ  つっゝ  つっ つ  つ つ\°。 \^/^/^/^^^^  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/〜
 | |。|。°|°。つっつつつっ   っつ  つ  っつ\。° \―・――・――・――・/  〜
,/ |。|°。|。。(°(。(  フつつ    っフ    つ   っ\    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄//〜〜




601 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/12(土) 21:51:59 ID:WgQ9G5GZ
  ヽl   ,、 l/
  〃"ナ'⌒ ~´ヘヘ^
  // ,ハノノソヽソハ
 ハ  ヾl.゚ ヮ゚ノ!. ノ   )) 卩__
o=====○===∩====[]コ[i(●==>
    ./ソ、j、iヾ.   ))  |ノミ´⌒《ヽ
    /~(_>!(_>~´チャリーン_(((ノハc八
       _| ::|_       | |Θ|( l!)ソ ) )
  | ̄ ̄ ̄| ̄ ̄|_ |_|_|と   ((
  |___|__|_|  |_|  しーJ`


  ヽl   ,、 l/
  〃"ナ'⌒ ~´ヘヘ^              ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
  // ,ハノノソヽソハ             .;;;''''
 ハ  ヾl.゚ ヮ゚ノ!. ノ   )) 卩__  ,.';;''
o=====○===∩====[]コ[i(●==>
    ./ソ、j、iヾ.   ))  |ノミ´⌒《ヽヽ;,,    
    /~(_>!(_>~´    _.__(((ノハc八 ''''';;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
       _| ::|_       | |Θ|( l!)ソ ) )  
  | ̄ ̄ ̄| ̄ ̄|_ |_|_| ∪  ((    バシューーーーーーーーーーーン!!!!!!!!!!!
  |___|__|_|  |_|  し^J `


  ヽl   ,、 l/
  〃"ナ'⌒ ~´ヘヘ^
  // ,ハノノソヽソハ
 ハ  ヾl.゚ ヮ゚ノ!. ノ   )) 卩__
o=====○===∩====[]コ[i(●==> )
    ./ソ、j、iヾ.   ))  |ノ ̄,'`》⌒`彡
    /~(_>!(_>~´    _.__ ノ,ィ∝ノノ)))
       _| ::|_       | |Θ|.( ( ゞッ(l!ノ  ・・・
  | ̄ ̄ ̄| ̄ ̄|_ |_|_| ノ)| U
  |___|__|_|  |_|  '´ `uu'.


602 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/12(土) 21:53:25 ID:WgQ9G5GZ
@異次元対策
______________________________________
   ,. ': : : : : :/: : : : : :/: : : :,ィ´: : :〃: /"ナ‐= ラ-ナ l: : :| : : l : : : l:|
- ': : : : ,: : /: : : : : :/: : : 〃 ,. =  ̄   =.くヾ/:/    |r、:| : : l: : : :ヽ
-‐ ' |:/: : : : : :/: ://: ,イi;;:    i舎i  ヽ/゙    , -l:`ト=-ヽ: : : :ヽ
    /: : : : : :/:/:l // ヾ;;:    ミシ    〉      ォ=l.、ヽ、: \: : : \━━━━━━━━━━
 /: : : _: -: ´/^\│   k ヽ;:.   ,  _      ´ 僉 ;ヽl: 丶._\ー _:\
─  ̄l:|:::::::::/ ノ入 ヽ    `ミ、、  ̄ ;彡'´     、 `~ / ト、: : : :ヾ`    ̄
     |:|::::::::{ l :l::::>                  ミョー_.,;i!l  丶、: \
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
      _                              ヽl ,、   l/ 
.     , '(フ^^^ヘ                           ^ヘヘ`~⌒`ナ"^    
    j∠ノ人ヘゝ  .                     /,  ' ハノソノヾソハ,ヾヽヽ   . 
  _、ノ_,(l(.゚)ヮ゚ノヽ,_                 __/=-  ( リ、゚ヮ ゚ |ノ  ハ       /.\
  ´ ⊂ミ,,W,ミつ`                く===●=]=[_]===∩===○====o     | 0 0 |
    /j,(〉、,〈}、                    ̄ ̄\=-     ソ,j,i,ヾ\          ̄| ̄
    ん'-ヽし'-ゝ                       \`    ~<_)!<_)~\ .        | 
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     .                V',:.: /:.:.:.|:.:.l:.:.:.|<圷示 ∨|ー-|:./」_:|:.:.|:.:./:.:.:/  :|   | |:.:.:.:.:.:.:',
     .                !:∨:.:.:.:.:|:.:.|、.:|l ゞ='   ヘ| 'イ圷示/|: /:/'^レ   ∨  |:.:.:.:.:.:.:.:',
━━━━━━━━━━━━ |:.:.:.:.:.:.:. |ヽ| ヽ|    ,    ゞ=' ′|/:/|r;/      \. |:.:.:.:.:.:.:.:.:',
.                      |:.:.: / ̄ ̄\ヘ.    ′       /イ:.:.|/、   ___ヽ|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:',
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       .             /       //|:.:.| \__ .. イ |,|/  l|:| |      ∧:.:.:.:.:.:.:.:.:
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



603 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/12(土) 21:55:31 ID:WgQ9G5GZ
_ゝヽ   、     \       l、 l.l 。   /l    //´::.`:...、.j'´: l-'::.ヽ ` `、 、. , '/       _.'"
   \   \、    ヽヽ    ヽ.、`    l:.:l. , '.::.::.::_.::.:::.::.:::`ヾ´::.::.::.::.F、、__  ̄ i'b ,.,ク  う Lヲ
 ______________    ヽ:V::.::.::.::.::.::.::``:.'‐.._ヽ::.::.::.::.l ,`'..-, ./l 々::i- '" `,
/                     丶   i´、'´::.::.、:__:`,.ニ=弌-:.`::.::.,. ',  ' /'ュ3'"ヒニ'^冗辷
l フェイトちゃんは私の嫁なの!! |丶、l::.::\::.:ヾiーlハ  ヽ,. ',  '   / /--   `ヽ l l
ヽ                     / ヽヽ.l::.l::.、`::.::.ヽ.ソ  _. l`'疋、 ,,-'. /    ``ヽ  'lリ
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\l ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   "`l:.:ト、ヽ.:ヽーi- `/r'}†y-‐‐--' '、l       ヽ    _
-┬ ─ ─ ─- 'ァ _.._ _.-=y`:.:`-..._へ     ヽ:l ヽヽ` ー`"`' '゙   _ 凡._ _ ヽ         /
`. -..、\  /''´ /  ,ィ  /:.:.:,.:,:.:.:.:.:.:.:,ィ`,.i:...- .._ ヾ、 `` ,.'.´__    ~- - "   }r, ,..イ     /  テ
  ゝ __ヽゝ、 ̄ __ /'′,..l:.:./:/:.,:.,~≧、/;;l:l:.:.:./:.:.l:l:.,、'' ‐ァl    丶、     _/ l;゙'     l  ス
   Y'' `ヽ_ヽ._- 、 ` く l:.レ':.://、  i!ヾリ:.://l:.:.l:l:.:N-'´'"l_, - 、 _   丶、  l_, 彡'ュ.     |  タ
..,-、":ヽ、  `'` ヾ:.、\ l´l:./イ:'l_ミ` = ' l:イ/;;;l},. ァ,:フ'' }.- ^ 、.‐ 、     , ''"´    `   |  ロ
.l:=.、ヽ: :ヽ 、   `:l  ,.l ̄ r::ァイ  r_- ´,  ' ,. //-.、' `  、._` ー--`‐_ノ,-、:'':....‐-...  _ |   ッ
  `.l::l: : :l、丶   l::l l 弋 r-'ヽ ,`‐ ",. ‐"レ´:ィコ´-ヽ_5'゙マ ` - ̄フ-´!l´  ,り::::::::::::   ヽ   サ
    l:l: : :ト、l ト_  l:l ,.l "> l:: ,. ‐" , ‐.<_, 'l゙/' 片う:::::::::::::゙:.、,  /  /4、/":::::::::::::::,      |  は
__..ノ:::l: : ト、`__`_.>' `., ‐" ,、‐'>人 lニ´._ レ_ __ )::::::::, '´   , 'v.ァ.l 丶::__: - "メ-     |  渡
==ュー ''゙く `ー'." ‐,. ‐" ,. .イ:ミ}:{彡::l    |ヾ=''=''- i::::´l   , >''゙∀ ,.     }:::::,      l  さ
ニニニl.  r'_' ,. ‐" ,. ‐"  リ:::::l l:::::::\  l./ / ,':::::/'"´     、   レ    ,...:',. '      l.  ん
-ァ::,.-.、=.,. ‐" , - "    __人、::ヽ/::::::::::::\' / /-'´ー'┃          ,..._,__' ,_   _    | !!
.rl:::::::X´ヽ- "     , ‐ ´ ヾ.、:ll::::::, ._=ヽ;;`,,く       ,. ‐ ─ 、  `''´rく ,.イ r-3   丶 _
ヽ::× ヽ/   ,. - "       i:r, ´'´    l、;;;;;;;;;ヽ  , '´         Y ´ :} j.コ' -‐ ''
`.'゙.> '´- _, '"l三三≡=-‐ ' /´/〉     ノ ` _、;;ゝ´       _  ,. '- ' ,.、___, --'´_ //
´   。    |       〈:::/,'  ュ-ァ '′ __/.r    ,. ‐";; ̄;;;;;;;;;; =三テ='ゥ_ニフ三-'´  //
       j'ニ、 ,ャ_⌒:々  l::l:l/〃,イ_,.、 /,..l::i  , ‐"  ̄ ̄ ̄ " '' =-' )'-'´-‐. " - ─
D      `"  l ,-': : r'    l::ll.' '  /:::/ // ,l::l '      ,. ‐ " ,},'' -´' ´
        'i_,.l、: :,.iノ  , '´.戈レ ´ ー',.//'´.-'  ,. ‐ ´    /
       n_>'l_-' ./ " ∠ ' ミ,`ー:ニィァ '´, ‐ "         /
         }_::":::: ̄::::):j  l::「¨ ノ,レ' "             /
     。    ,j ` ー‐ ' ´ l:::l, ‐"                /


604 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/12(土) 21:55:58 ID:WgQ9G5GZ
私が事務処理を行うと…
      )
..,'`》'´⌒`彡
ノ,ィ∝ノノ)))))
.( ゝ(l! ゚ -ノ|l ピピ ピ
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
  \/     /
     ̄ ̄ ̄
   ボオォォォォン!!
..,'`》'´⌒(;; (´・:;⌒)
ノ,ィ∝ノ(;. (´⌒` ,;) )
.( ゝ((´:,(’ ,; ;'),`(´
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
  \/ 从从 /
     ̄ ̄ ̄
爆発仕様もないものが爆発する…

ティアナに代わって端末を触った時も…
      )
  ,'`》'´⌒`彡  /´(´д`)`\ ありがとうございます
  ノ,ィ∝ノノ)))))
 ( ( ゝ(l!_゚ -ノ|l うむ
 ノ) /ゝ〔三d

     )
  ,'`》'´⌒`彡,,(' ⌒`;;)’
  ノ,ィ∝ノノ)(;; (´・:;⌒)
 ( ( ゝ(l!(;. (´⌒` ,;) ) ’ドゴォォォォン!!
 ノ) /ゝ〔((´:,(’ ,; ;'),`
やはり爆発した…(しかも、他の局員が使っていた端末まで…)



そんな私の隣に乗ってくれるのは…高町隊長だけだ…
                 ,... -――――――,−--、 __  彡
           .  ,,..-''"(ー´)\(∀・)*\,//   、\皿#,,\
       ,,.. - ''"゙゙;>ー―---――;=''''"゛゛⌒ヽ, ̄ ̄ ̄7〉  ''´ ̄`i  彡
    ,,. '"  ,,. '"        /    /   ヽ   /▲ /,r'⌒!'
  ∠二フ/___,___/∠二フ/  r'⌒ヽヽ_/´   // ∩ i
  〔`゙`ー―――――――――'''''"゙´   ノ/ ∩ |   ̄__!/ノ ∪ノ  彡
  〉同〉―― [二二] ―――j同>=:;つ_ノ ∪ノ/ ̄   `ー―''´
   ̄ ̄ー― ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  `ー―''´



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